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  • 特開-柱梁接合構造 図1
  • 特開-柱梁接合構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180464
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】柱梁接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20231214BHJP
   E04B 1/30 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E04B1/58 504F
E04B1/30 E
E04B1/58 504Z
E04B1/58 504H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093813
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】澤口 香織
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA03
2E125AA13
2E125AB01
2E125AB13
2E125AC15
2E125AC29
2E125AG43
2E125BC05
(57)【要約】
【課題】せん断剛性を向上させることができる柱梁接合構造を提供する。
【解決手段】柱梁接合構造1は、鋼管21の内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管造であって建物の外周Aに沿って配置された外柱2と、外柱2の上端部に接合されるH形鋼の梁3との接合部の柱梁接合構造であって、梁3における建物の外周A側に位置する端面3aに設けられる補強板4を備え、補強板4は、梁3の上側フランジ31の端面31a、ウェブ33の端面33a及び下側フランジ32の端面32aに接合されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管造であって建物の外周に沿って配置された外柱と、前記外柱の上端部に接合されるH形鋼の梁との接合部の柱梁接合構造であって、
前記梁における前記建物の外周側に位置する端面に設けられる補強板を備え、
前記補強板は、前記梁の上側フランジの端面、ウェブの端面及び下側フランジの端面に接合されている柱梁接合構造。
【請求項2】
前記補強板は、前記上側フランジの端面、前記ウェブの端面及び前記下側フランジの端面に溶接されている請求項1に記載の柱梁接合構造。
【請求項3】
前記補強板の幅は、前記梁の幅の1/2以上である請求項1または2に記載の柱梁接合構造。
【請求項4】
前記補強板の厚さは、前記ウェブの厚さ以上である請求項1または2に記載の柱梁接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱梁接合構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、CFT造(コンクリート充填鋼管造)の柱とS造(鉄骨造)の梁とを組み合わせたRCST(Reinforced Concrete Steel Tube)構造が知られている(下記の特許文献1参照)。RCST構造では、上下の柱鋼管どうしを溶接せずに、柱鋼管内部に柱主筋を配置した後にコンクリートを打設して、上下階を接合する。これによって、柱主筋は、コンクリートに定着される。
【0003】
最上階では、柱主筋が柱内部で折曲げてコンクリートに定着されたり、柱主筋が柱頂部に機械式定着されたりする。また、梁貫通形式接合で外柱の柱梁接合部のうち梁が接合しない側では、梁を柱フェース(柱の外面)から50mm程度突出させる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-191920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外柱且つ最上階の柱梁接合部では、柱梁接合部のせん断弾性剛性が他の接合部形状と比較して著しく小さい。外柱且つ最上階の柱梁接合部では、柱に対して梁が直交する十字形の柱梁接合部のせん断剛性を与える設計式に対して約0.2倍となる場合があるという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、せん断剛性を向上させることができる柱梁接合構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る柱梁接合構造は、鋼管の内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管造であって建物の外周側に沿って配置された外柱と、前記外柱の上端部に接合されるH形鋼の梁との接合部の柱梁接合構造であって、前記梁における前記建物の外周に位置する端面に設けられる補強板を備え、前記補強板は、前記梁の上側フランジの端面、ウェブの端面及び下側フランジの端面に接合されている。
【0008】
このように構成された柱梁接合構造では、梁の自由端側となる端面に補強板が接合されている。よって、梁のウェブのせん断剛性が増大し、接合部のせん断剛性を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係る柱梁接合構造では、前記補強板は、前記上側フランジの端面、前記ウェブの端面及び前記下側フランジの端面に溶接されていてもよい。
【0010】
このように構成された柱梁接合構造では、補強板は、上側フランジの端面、ウェブの端面及び下側フランジの端面に溶接されている。よって、補強板を上側フランジの端面、ウェブの端面及び下側フランジの端面に容易に接合することができる。
【0011】
また、本発明に係る柱梁接合構造では、前記補強板の幅は、前記梁の幅の1/2以上であってもよい。
【0012】
このように構成された柱梁接合構造では、補強板の幅は、梁幅の1/2以上である。よって、補強板の剛性を高めることができる。
【0013】
また、本発明に係る柱梁接合構造では、前記補強板の厚さは、前記ウェブの厚さ以上であってもよい。
【0014】
このように構成された柱梁接合構造では、補強板の厚さは、ウェブの厚さ以上である。よって、補強板の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る柱梁接合構造によれば、せん断剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る柱梁接合構造を示す上面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る柱梁接合構造を示す鉛直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る柱梁接合構造について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る柱梁接合構造を示す上面図である。図2は、本発明の一実施形態に係る柱梁接合構造を示す鉛直断面図である。図1では、外柱2を水平断面で示している。
図1に示すように、本実施形態の柱梁接合構造1では、建物の外周Aに沿って配置される外柱2の上端部(最頂部)と梁3との接合部10の構造である。柱梁接合構造1は、補強板4を備えている。
【0018】
水平方向に沿う一方向をX方向とする。水平方向に沿い一方向と直交する他方向をY方向とする。接合部10では、外柱2に対して、Y方向の両側に梁3が接合されるとともに、X方向の一方側(図1に紙面右側)に梁3が接合されている。X方向の他方側(図1の紙面左側)は、建物の外周A側に位置している。接合部10は、外柱2の内部を梁3が貫通する構成である。
【0019】
外柱2は、鋼管21の内部にコンクリートが充填されたコンクリート充填鋼管造である。外柱2は、鋼管21と、複数の主筋22と、コンクリート部23と、を有している。鋼管21は、鉛直方向を軸線方向として円筒状に形成されている。図2に示すように、鋼管21は、梁3の下方に配置される鋼管本体21bと、梁3と同じ高さに配置されるふさぎ板21cと、を有している。
【0020】
図1に示すように、主筋22は、鋼管21の内側に沿って配置されている。主筋22は、周方向に間隔を有して配置されている。主筋22は、鉛直方向に延びている。主筋22の本数は、適宜設定可能である。コンクリート部23は、鋼管21の内部に充填されている。主筋22は、コンクリート部23に定着されている。
【0021】
梁3は、H形鋼で構成されている。図2に示すように、梁3は、上側フランジ31及び下側フランジ32と、ウェブ33と、を有している。
【0022】
上側フランジ31と下側フランジ32とは、上下方向に離間して配置されている。上側フランジ31及び下側フランジ32は、板状に形成されている。上側フランジ31及び下側フランジ32の板面は、上下方向を向いている。
【0023】
ウェブ33は、上側フランジ31と下側フランジ32とを連結している。ウェブ33は、板状に形成されている。ウェブ33の板面は、水平方向を向いている。
【0024】
本実施形態では、Y方向の延びる梁3(「梁3B」とする)に対して、X方向の両側にX方向に延びる梁3(「梁3A」とする)が接合されている。なお、梁3Aに対して、Y方向の両側に梁3Bが接合される構成であってもよい。
【0025】
接合部10では、梁3の上側にスラブ5が設置されている。主筋22の上端部は、機械式継手25を介してスラブ5のコンクリートに定着されている。なお、主筋22の上端部は機械式継手2を使用せずに折り曲げてコンクリートに定着させてもよく、主筋22の上端部の定着方法は適宜設定可能である。
【0026】
接合部10では、梁3Aにおける建物の外周A側に位置し、外周Aを向く端面3aは、外柱2のふさぎ板21cよりも外周A側にわずかに突出している。補強板4は、梁3Aの端面3aに接合されている。補強板4は、梁3Aの上側フランジ31の端面31a、下側フランジ32の端面32a及びウェブ33の端面33aに、溶接等によって接合されている。なお、補強板4は、上側フランジ31の端面31a、下側フランジ32の端面32a及びウェブ33の端面33aに、スプライスプレート等を介して接合されていてもよい。
【0027】
補強板4は、鋼板で構成されている。補強板4は、板状に形成されている。補強板4の板面は、X方向を向いている。補強板4の厚さB1は、梁3のウェブ33の厚さC1以上である。なお、補強板4の厚さB1は、梁3のウェブ33の厚さC1未満であってもよい。
【0028】
図1に示すように、補強板4の幅B2は、梁3の幅C2の1/2以上である。なお、補強板4の幅B2は、梁3の幅C2の1/2未満であってもよい。
【0029】
図2に示すように、補強板4の上下方向の長さB3は、梁3のせいC3よりもわずかに長い。補強板4の上端部4uは、上側フランジ31よりも高い位置に位置している。補強板4の下端部4dは、下側フランジ32よりも低い位置に位置している。
【0030】
このように構成された柱梁接合構造1では、梁3の自由端側となる端面3aに補強板4が接合されている。よって、梁3のウェブ33のせん断剛性が増大し、接合部10のせん断剛性を向上させることができる。したがって、架構変形が増大したり、所定の部位に応力が集中したりすることを抑制することができる。
【0031】
また、補強板4は、上側フランジ31の端面31a、下側フランジ32の端面32a及びウェブ33の端面33aに溶接されている。よって、補強板4を上側フランジ31の端面31a、下側フランジ32の端面32a及びウェブ33の端面33aに容易に接合することができる。
【0032】
また、補強板4の幅B2は、梁3の幅C2の1/2以上である。よって、補強板4の剛性を高めることができる。
【0033】
また、補強板4の厚さB1は、ウェブ33の厚さC1以上である。よって、補強板4の剛性を高めることができる。
【0034】
なお、上述した実施の形態において示した組立手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0035】
例えば、上記に示す実施形態では、柱梁接合構造1では、外柱2に対して、Y方向の両側に梁3が接合されるが、本発明はこれに限られない。Y方向の一方側が建物の外周側に位置し、外柱2に対して、Y方向の一方側にのみ梁3が接合された接合部にも適用可能である。この場合には、梁3が接合されていないY方向の他方側の端面に補強板4を接合すればよい。
【符号の説明】
【0036】
1 柱梁接合構造
2 外柱
3,3A,3B 梁
3a 梁の端面
4 補強板
10 接合部
21 鋼管
31 上側フランジ
31a 上側フランジの端面
32 下側フランジ
32a 下側フランジの端面
33 ウェブ
33a ウェブの端面
A 外周
B1 補強板の厚さ
B2 補強板の幅
C1 ウェブの厚さ
C2 梁幅
図1
図2