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特開2023-180467インプリント装置、インプリント方法及び物品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180467
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093817
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 敏彦
【テーマコード(参考)】
5F146
【Fターム(参考)】
5F146AA31
(57)【要約】
【課題】型と基板との重ね合わせ精度の点で有利な技術を提供する。
【解決手段】型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、前記基板との間の圧力が独立に制御される複数の保持領域を含み、前記複数の保持領域で前記基板を保持する基板保持部と、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる際に前記型に与えられる押付力に関する第1情報を取得する第1取得部と、前記第1取得部で取得された前記第1情報に基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が許容範囲に収まるように、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させた状態における前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御する制御部と、を有することを特徴とするインプリント装置を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板との間の圧力が独立に制御される複数の保持領域を含み、前記複数の保持領域で前記基板を保持する基板保持部と、
前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる際に前記型に与えられる押付力に関する第1情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部で取得された前記第1情報に基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が許容範囲に収まるように、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させた状態における前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記型と前記基板上のインプリント材とが接触し、前記押付力が前記型に与えられている状態において、前記基板がフラットになるように、前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の保持領域のそれぞれにおいて、当該保持領域と前記基板との間の圧力と、前記押付力とがつり合うように、前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記型のパターン面の全面と前記基板上のインプリント材とを接触させた状態における前記型と前記インプリント材との接触面積に関する第2情報を取得する第2取得部を更に有し、
前記制御部は、前記第2取得部で取得された前記第2情報にも基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が前記許容範囲に収まるように、前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記押付力をPP、前記接触面積をCAとすると、
前記制御部は、前記複数の保持領域のそれぞれにおいて、当該保持領域と前記基板との間の圧力を、PP/CAに制御することを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記基板保持部に保持された前記基板の前記基板保持部における位置ずれに関する第3情報を取得する第3取得部を更に有し、
前記制御部は、前記第3取得部で取得された前記第3情報にも基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が前記許容範囲に収まるように、前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御することを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記第3取得部は、
前記基板に設けられたマークの位置と、前記基板の外周端部の位置とを計測する計測系を含み、
前記計測系で計測された前記マークの位置及び前記外周端部の位置から前記位置ずれを求めることを特徴とする請求項6に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記複数の保持領域は、同心円状に区画された領域であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記複数の保持領域は、矩形状に区画された領域であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項10】
前記複数の保持領域のそれぞれは、前記基板上の1つのショット領域よりも小さい領域であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項11】
前記基板保持部に設けられ、前記複数の保持領域を区画する複数の隔壁を更に有し、
前記複数の隔壁のうち、最も外側の隔壁の高さは、他の隔壁の高さよりも低いことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項12】
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント方法であって、
前記基板との間の圧力が独立に制御される複数の保持領域を含む基板保持部で前記基板を保持する工程と、
前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる際に前記型に与える押付力に関する情報を取得する工程と、
前記情報に基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が許容範囲に収まるように、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させた状態における前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御する工程と、
を有することを特徴とするインプリント方法。
【請求項13】
請求項12に記載のインプリント方法を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどを製造するためのリソグラフィ技術として、型を用いて基板上のインプリント材(硬化性組成物)を成形するインプリント技術が知られている。インプリント技術を用いたインプリント装置では、型と基板上のインプリント材とを接触させた状態でインプリント材を硬化させ、硬化したインプリント材から型を引き離すことで、基板上にインプリント材のパターンを形成することができる。
【0003】
インプリント装置では、型のパターンを基板に高精度に転写することが要求されている。そこで、型(のパターンが形成されたパターン領域)と基板(の転写領域(ショット領域))とを高精度に重ね合わせる(位置合わせする)ための技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、基板の形状情報、或いは、重ね合わせ情報に基づいて、基板を保持する基板保持部の圧力を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-92178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、型と基板との重ね合わせを調整する際に、型を押し付ける力(押付力)を変化させると、かかる変化に起因して型や基板が変形し、重ね合わせ精度を意図した精度に収めることができなくなる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、型と基板との重ね合わせ精度の点で有利な技術を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としてのインプリント装置は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、前記基板との間の圧力が独立に制御される複数の保持領域を含み、前記複数の保持領域で前記基板を保持する基板保持部と、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる際に前記型に与えられる押付力に関する第1情報を取得する第1取得部と、前記第1取得部で取得された前記第1情報に基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が許容範囲に収まるように、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させた状態における前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、例えば、型と基板との重ね合わせ精度の点で有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一側面としてのインプリント装置の構成を示す概略図である。
図2】基板と、基板保持部の構成とを説明するための図である。
図3】インプリント処理における型や基板の形状を模式的に示す図である。
図4】インプリント装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図5】基板保持部を上面から示す図である。
図6】基板保持部に保持された基板の位置ずれを説明するための図である。
図7】物品の製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。更に、添付図面においては、同一もしくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
図1は、本発明の一側面としてのインプリント装置100の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、物品としての半導体素子、液晶表示素子、磁気記憶媒体などのデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に採用され、基板にパターンを形成するリソグラフィ装置である。インプリント装置100は、型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント処理を行う。具体的には、インプリント装置100は、基板上に供給(配置)された未硬化のインプリント材と型とを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、型のパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。
【0013】
インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する材料(硬化性組成物)が使用される。硬化用のエネルギーとしては、電磁波や熱などが用いられる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、具体的には、赤外線、可視光線、紫外線などを含む。
【0014】
硬化性組成物は、光の照射、或いは、加熱により硬化する組成物である。光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて、非重合性化合物又は溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。
【0015】
インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に付与されてもよい。また、インプリント材は、液体噴射ヘッドによって、液滴状、或いは、複数の液滴が繋がって形成された島状又は膜状で基板上に付与されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下である。
【0016】
基板には、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂などが用いられ、必要に応じて、その表面に基板とは別の材料からなる部材が形成されていてもよい。具体的には、基板は、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスなどを含む。
【0017】
本明細書及び添付図面では、基板が配置される面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系で方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸及びZ軸のそれぞれに平行な方向をX方向、Y方向及びZ方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転及びZ軸周りの回転のそれぞれをθX、θY及びθZとする。
【0018】
インプリント装置100は、本実施形態では、インプリント材の硬化法として、光を照射することでインプリント材を硬化させる光硬化法を採用するが、これに限定されるものではない。例えば、インプリント装置100は、インプリント材の硬化法として、熱を与えることでインプリント材を硬化させる熱硬化法を採用することも可能である。
【0019】
インプリント装置100は、図1に示すように、プリアライメント部7と、ディスペンサ8と、オフアクシスアライメント計測系9と、アライメント計測系10と、を有する。また、インプリント装置100は、光透過部材13と、制御部14と、コンソール部15と、照射部16と、充填モニタ17と、型ステージ50と、基板ステージ60と、を有する。
【0020】
照射部16は、型3を介して、基板上のインプリント材に光(例えば、紫外線)を照射する。照射部16は、例えば、基板上のインプリント材を硬化させる光を射出する光源部161と、光源部161から射出された光を基板上のインプリント材に導くための光学部材162と、を含む。光学部材162は、光源部161から射出された光をインプリント処理に適切な光に調整するための光学素子を含む。
【0021】
型3は、矩形の外周形状を有する。型3の基板1に対向する面(パターン面)には、3次元状のパターン3aが形成されている。型3は、照射部16からの光(紫外線)を透過させることが可能な材質、例えば、石英ガラスなどで構成される。型3は、パターン3aの変形を容易にするためのキャビティ(凹部)3bを含む。キャビティ3bは、円形の平面形状を有し、その深さ(厚さ)は、型3の形状や材質に応じて適宜設定される。
【0022】
キャビティ3bの上方には、光透過部材13が配置されている。光透過部材13は、キャビティ3bと、型ステージ50に設けられた開口領域の一部とで囲まれる空間12を密閉空間とするための部材である。空間12に接続された圧力調整装置(不図示)を介して空間12の圧力を調整することで、型3のパターン3aを変形させること、例えば、型3のパターン3aを基板側に凸形状に変形させることができる。
【0023】
型ステージ50は、真空吸引力や静電力によって型3を保持する型保持部51と、型保持部51をZ方向(上下方向)に駆動する型駆動部52と、型変形機構53と、を含む。型保持部51及び型駆動部52(型ステージ50)は、その中心部に、照射部16からの光を基板上のインプリント材に照射するための開口領域が設けられている。
【0024】
型駆動部52は、例えば、ボイスコイルモータやエアシリンダなどのアクチュエータを含む。型駆動部52は、基板上のインプリント材に型3を接触させたり、基板上のインプリント材から型3を引き離したりするために、型保持部51(に保持された型3)をZ方向に駆動する。なお、型駆動部52は、Z方向だけではなく、X方向やY方向に型保持部51を駆動する機能(即ち、型3のX方向やY方向の位置を調整する機能)を有していてもよい。更に、型駆動部52は、型保持部51のθZ方向の位置を調整する機能や型保持部51の傾き(チルト)を調整するための機能を有していてもよい。
【0025】
型変形機構53は、型保持部51に保持された型3の側面に外力又は変位を与えることで、型3(のパターン3a)を変形させる(型3の形状を補正する)。型変形機構53は、例えば、複数のアクチュエータを含み、型3の各側面の複数の箇所を加圧するように構成されている。
【0026】
基板1には、複数のショット領域がマトリクス状に配列されている。ここで、ショット領域とは、1回のインプリント処理で型3のパターン3aが転写される領域(転写領域)を意味する。本実施形態では、基板1の有効面積(型3のパターン3aが転写される領域の総面積)を最大にするために、基板1の内側のショット領域だけではなく、基板1の外周を含む周辺ショット領域にもインプリント処理を行う。周辺ショット領域とは、一部が欠けている(基板1の外周からはみ出す)ショット領域であって、欠けショット領域とも称される。
【0027】
基板ステージ60は、基板1を保持する基板保持部2と、基板保持部2(に保持された基板1)をX方向及びY方向に駆動する基板駆動部61と、を含む。基板駆動部61は、例えば、リニアモータを含み、粗動駆動系や微動駆動系などの複数の駆動系から構成されていてもよい。また、基板駆動部61は、X方向及びY方向だけではなく、Z方向に基板保持部2を駆動する機能(即ち、基板1のZ方向の位置を調整する機能)を有していてもよい。更に、基板駆動部61は、基板保持部2のθZ方向の位置を調整する機能や基板保持部2の傾き(チルト)を調整するための機能を有していてもよい。
【0028】
プリアライメント部7は、基板1を搭載するプリアライメントステージ(不図示)と、プリアライメントステージに搭載された基板1の位置を計測するプリアライメントセンサ(不図示)と、を含む。プリアライメントセンサは、基板1に設けられたノッチやオリエンテーションフラットを検出することで、基板1の位置を計測する。プリアライメントセンサの計測結果に基づいてプリアライメントステージが駆動され、その位置で、プリアライメントステージに搭載された基板1を搬送ハンド(不図示)に渡す。そして、搬送ハンドは、基板1を基板保持部2に配置する。なお、プリアライメントステージを駆動する代わりに、プリアライメントセンサの計測結果に基づいて、プリアライメントステージから基板1を受け取る搬送ハンドの位置(受け取り位置)や搬送ハンドから基板1を受け取る基板保持部2の位置を変更してもよい。
【0029】
基板ステージ60の位置は、本実施形態では、筐体に設けられたスケールと、基板駆動部61に設けられたヘッド(光学機器)と、を含むエンコーダシステムを用いて計測されるが、これに限定されるものではない。例えば、基板ステージ60の位置は、筐体に設けられたレーザ干渉計と、基板駆動部61に設けられた反射ミラーと、を含む干渉計システムを用いて計測されてもよい。
【0030】
オフアクシスアライメント計測系9及びアライメント計測系10は、型3と基板1(の各ショット領域)との相対位置を計測するための事前アライメント計測に用いられる。オフアクシスアライメント計測系9及びアライメント計測系10は、それぞれ、制御部14の制御下において、装置座標を基準として基板1及び型3の位置を個別に計測する。アライメント計測系10は、型3に設けられたマークを検出(観察)することで、アライメント計測系10の位置基準で型3の位置を計測する。一方、オフアクシスアライメント計測系9は、基板保持部2に保持された基板1に設けられた複数のマークを検出することで、基板保持部2の位置基準で基板1(の各ショット領域)の位置を計測する。そして、基板1の全てのショット領域の位置座標を推定するための統計計算処理(グローバルアライメント)が実施される。
【0031】
更に、アライメント計測系10は、基板1に設けられたアライメントマークと型3に設けられたアライメントマークとのX方向及びY方向の位置ずれ(即ち、基板1と型3との位置ずれ)を計測する。制御部14の制御下において、アライメント計測系10で計測された位置ずれに基づいて基板ステージ60の位置を調整することで、型3(のパターン3a)と基板1(のショット領域)とを重ね合わせる(位置合わせする)。
【0032】
ディスペンサ8は、基板上にインプリント材を配置(供給)する機能を有する。ディスペンサ8は、例えば、基板上の各ショット領域に対して、インプリント材の液滴を吐出する。ディスペンサ8は、基板上の複数のショット領域に対して、各ショット領域にインプリント材を個々に配置してもよいし、幾つかのショット領域にインプリント材を一括して配置してもよい。
【0033】
充填モニタ17(スプレッドカメラ)は、基板上(のショット領域)に配置(供給)されたインプリント材と型3との接触状態を観察する。充填モニタ17で基板上のインプリント材と型3との接触状態を観察することで、パーティクルやインプリント材の未充填による欠陥箇所を特定することが可能となる。充填モニタ17は、例えば、光源と、撮像素子と、光学系と、を含む。光源には、インプリント材が感光しない波長の光を発するLEDなどが用いられ、撮像素子には、CCDセンサなどの2次元センサが用いられる。光学系は、光源からの光で基板1(のショット領域)を均一に照明する照明系と、基板1と撮像素子とを光学的に共役にする結像系と、を含む。
【0034】
制御部14は、例えば、CPUやメモリなどを含むコンピュータで構成され、メモリに格納されたプログラムに従ってインプリント装置100の各部を統括的に制御してインプリント装置100を動作させる。
【0035】
制御部14は、本実施形態では、型3を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成する(型3のパターン3aを基板上のインプリント材に転写する)インプリント処理及びそれに関連する処理を制御する。ここで、インプリント処理は、典型的には、配置工程と、接触工程と、充填工程と、硬化工程と、離型工程と、を含む。配置工程は、基板上にインプリント材を配置(供給)する工程である。接触工程は、基板上のインプリント材と型3とを接触させる工程である。充填工程は、基板上のインプリント材と型3とを接触させた状態で、型3のパターン3aにインプリント材を充填させる工程である。硬化工程は、基板上のインプリント材と型3とを接触させた状態で、インプリント材を硬化させる工程である。離型工程は、基板上の硬化したインプリント材から型3を引き離す工程である。
【0036】
コンソール部15は、キーボードやマウスなどの入力装置及びディスプレイを備えるコンピュータを含み、インプリント装置100(制御部14)とユーザとの間で情報を共有するためのインタフェースである。コンソール部15は、ユーザによって入力されたインプリント処理に関する情報を、制御部14に出力(送信)する。コンソール部15に入力されたインプリント処理に関する情報は、ログとしてインプリント装置100に記録され、インプリント処理の前後で確認することが可能である。ここで、インプリント処理に関する情報は、基板上にインプリント材のパターンを形成する際の種々のインプリント条件が記述されたインプリントレシピを含む。インプリントレシピは、例えば、型3と基板上のインプリント材とを接触させる際に型3に与える力(押付力(押印力))、基板上のショット領域の配列を示すショットレイアウト、基板上に配置すべきインプリント材の液滴の配列を示すドロップパターンなどを含む。
【0037】
図2(a)乃至図2(e)を参照して、基板1と、基板保持部2の構成とを説明する。図2(a)は、基板上のショット領域の配列を示すショットレイアウトを示す図である。ショット領域は、基板上の区画された領域であって、各領域にインプリント処理が行われる。なお、図2(a)において、基板上の複数のショット領域のうち、ショット領域11は、これからインプリント処理を行う対象のショット領域を示している。
【0038】
図2(b)乃至図2(e)は、基板保持部2の詳細な構成を示す図である。図2(b)は、基板保持部2を上面(基板1を保持する保持面)から示す図である。基板保持部2(の保持面)は、図2(b)に示すように、隔壁21a、21b及び21cで区画(規定)された複数の保持領域22a、22b及び22cを含む。複数の保持領域22a、22b及び22cは、図2(b)では、同心円構造、即ち、同心円状に区画された領域である。
【0039】
図2(c)乃至図2(e)は、図2(b)に示す基板保持部2のA-A断面図であって、基板上のショット領域11に対応する部分のみを示している。基板保持部2の複数の保持領域22a、22b及び22cは、それぞれ、管23a、23b及び23cを介して、圧力調整部26に接続されている。圧力調整部26は、複数の保持領域22a、22b及び22cのそれぞれと基板1(のショット領域11)との間の空間SPa、SPb及びSPcの圧力を調整する機能を有する。換言すれば、圧力調整部26は、複数の保持領域22a、22b及び22cのそれぞれにおいて、基板1の裏面に作用させる圧力を調整する機能を有する。本実施形態では、複数の保持領域22a、22b及び22cのそれぞれと基板1との間の空間SPa、SPb及びSpcの圧力は、制御部14の制御下において、圧力調整部26を介して独立に制御される。
【0040】
例えば、図2(c)は、基板1がフラットになるように、複数の保持領域22a、22b及び22cのそれぞれと基板1との間の空間SPa、SPb及びSpcの圧力が制御されている状態を示している。また、図2(d)は、図2(c)に示す状態から、保持領域22aと基板1との間の空間SPaの圧力を陽圧側に変化させ、基板1(の端部)を上向きに変形させた状態を示している。図2(e)は、図2(c)に示す状態から、保持領域22aと基板1との間の空間SPaの圧力を負圧側に変化させ、基板1(の端部)を下向きに変形させた状態を示している。
【0041】
このように、基板保持部2における複数の保持領域22a、22b及び22cのそれぞれと基板1との間の空間SPa、SPb及びSpcの圧力を制御することで、基板1の形状を比較的自由に変化させることが可能である。そこで、本実施形態では、このような機能を用いて、型3(のパターン3a)と基板1(のショット領域11)との重ね合わせ精度を向上させる。なお、型3と基板1との重ね合わせ精度は、例えば、アライメント計測系10を用いて計測することも可能であるし、インプリント装置100の外部装置である重ね合わせ検査装置を用いて計測することも可能である。
【0042】
図3(a)乃至図3(c)は、インプリント処理、具体的には、接触工程や充填工程における型3や基板1の形状(変形)を模式的に示す図である。接触工程や充填工程において、基板1は、型3に与えられる押付力5や保持領域22a及び22bのそれぞれと基板1との間の空間SPa及びSPbの圧力6a及び6bに応じて変形する。型3の基板上のインプリント材4と接する面には、上述したように、基板1に転写すべきパターン3aが形成されている。
【0043】
図3(a)は、型3に与えられる押付力5が小さい状態を示している。図3(a)を参照するに、型3に与えられる押付力5に起因して型3が上向き(凹形状)に変形するため、基板1に対して、型3(のパターン3a)が相対的に伸びるように変形している。
【0044】
図3(b)は、型3に与えられる押付力5が大きい状態を示している。図3(b)を参照するに、型3に与えられる押付力5が大きいため、型3はフラットになる一方、基板1が下向き(凸形状)に変形することで、基板1の上面が相対的に伸びるように変形している。なお、本実施形態のように、基板保持部2の複数の保持領域22a乃至22cを区画する隔壁21a乃至21cのうち、最外周(最も外側)の隔壁21aの高さが他の隔壁21b及び21cの高さよりも低い場合、基板1の下向きの変形が顕著となる。
【0045】
図3(c)は、型3に押付力5を与えるとともに、保持領域22a及び22bのそれぞれと基板1との間の空間SPa及びSPbの圧力6a及び6bを制御(与圧)した状態を示している。図3(c)を参照するに、型3に与えられる押付力5と、空間SPa及びSPbの圧力6a及び6bとをつり合わせることで、型3及び基板1をフラットにすることができる。具体的には、空間SPaの圧力6aは、基板上のショット領域11における型3と基板上のインプリント材4との接触面積211に応じて、以下の式(1)から求めることができる。空間SPbの圧力6bについても、圧力6aと同様に求めることができる。式(1)において、PPは、押付力5であり、CAは、接触面積211である。
【0046】
圧力6a(6b)=PP/CA ・・・(1)
なお、本実施形態では、基板1がフラットになるように、基板保持部2における複数の保持領域22a乃至22cのそれぞれと基板1との間の空間SPa乃至Spcの圧力を制御しているが、これに限定されるものではない。例えば、押付力5によって基板1に生じる変形が許容範囲に収まるように(基板1が目標形状となるように)、基板保持部2における複数の保持領域22a乃至22cのそれぞれと基板1との間の空間SPa乃至Spcの圧力を制御してもよい。
【0047】
図4を参照して、インプリント装置100の動作(インプリント方法)の一例について説明する。かかる動作は、上述したように、制御部14がインプリント装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0048】
S101では、インプリント装置100に型3を搬入する。具体的には、型搬送部(不図示)によって、インプリント装置100に型3を搬入して、かかる型3を型ステージ50(型保持部51)で保持する。
【0049】
S102では、インプリント装置100に基板1を搬入する。具体的には、基板搬送部(不図示)によって、インプリント装置100に基板1を搬入し、かかる基板1を、プリアライメント部7を介して、基板ステージ60(基板保持部2)で保持する。
【0050】
S103では、基板上のショット領域11における型3と基板上のインプリント材との接触面積(図3(c)に示すように、型3のパターン面の全面と基板上のインプリント材4とを全体的に接触させた状態での接触面積211)を取得する。具体的には、制御部14は、コンソール部15を介して入力されたインプリント処理に関する情報、即ち、インプリントレシピから、ショットレイアウトを取得する。そして、制御部14は、ショットレイアウトから基板上の各ショット領域の面積を抽出し、かかる面積を、型3と基板上のインプリント材との接触面積として取得する。なお、基板上のショット領域11の全面にインプリント材が配置されない場合、例えば、ショット領域11の外周から所定の幅の領域(余白領域)にはインプリント材を配置しない場合も考えられる。このような場合には、制御部14は、インプリントレシピからドロップパターンを取得し、ショットレイアウトに加えて、ドロップパターンも考慮して、型3と基板上のインプリント材との接触面積を求めればよい。このように、制御部14は、型と基板上のインプリント材とを接触させたときの型とインプリント材との接触面積に関する情報(第2情報)を取得する(第2取得部としても機能する)。
【0051】
S104では、型3と基板上のインプリント材とを接触させる際に型3に与えられる押付力を取得する。具体的には、制御部14は、コンソール部15を介して入力されたインプリント処理に関する情報、即ち、インプリントレシピから、ショットレイアウトを取得する。そして、制御部14は、ショットレイアウトから型3と基板上のインプリント材とを接触させる際に型3に与える力を抽出し、かかる力を、押付力として取得する。このように、制御部14は、型3と基板上のインプリント材とを接触させる際に型3に与えられる押付力に関する情報(第1情報)を取得する(第1取得部としても機能する)。なお、型ステージ50にロードセルが設けられている場合には、型3と基板上のインプリント材とを接触させる際にロードセルで得られる計測値(実測値)を、押付力として取得してもよい。
【0052】
S105では、S103で取得された接触面積と、S104で取得された押付力とに基づいて、基板保持部2の複数の保持領域22a乃至22cのそれぞれと基板との間の空間SPa乃至SPcの圧力を決定する。具体的には、制御部14は、S103で取得された接触面積とS104で取得された押付力とを、上述した式(1)に代入することで得られる値に従って、空間SPa乃至SPcのそれぞれの圧力を決定する。
【0053】
S106では、S105で決定された圧力に従って、基板保持部2における複数の保持領域22a乃至22cのそれぞれと基板1との間の空間SPa乃至Spcの圧力を設定する。具体的には、制御部14は、圧力調整部26を介して、基板保持部2における複数の保持領域22a乃至22cのそれぞれと基板1との間の空間SPa乃至Spcの圧力をS105で決定された圧力に制御する。
【0054】
S107では、基板上にインプリント材を配置(供給)する配置工程を行う。具体的には、制御部14は、ディスペンサ8を介して、基板上のショット領域11にインプリント材を配置する。
【0055】
S108では、型3と基板上のインプリント材とを接触させる接触工程を行う。具体的には、制御部14は、光透過部材13とキャビティ3bとで規定される空間12に接続された圧力調整装置を介して、型3のパターン3aを基板側に凸形状に変形させた状態で、型3と基板上のインプリント材とを接触させる。そして、圧力調整機構から空間12に与えている圧力を徐々に小さくすることで、型3の全面を基板上のインプリント材に接触させる。
【0056】
S110では、基板上のインプリント材と型3とを接触させた状態で、型3のパターン3aにインプリント材を充填させる充填工程を行う。具体的には、制御部14は、型3のパターン3aにインプリント材が充填されるまで、型3の全面を基板上のインプリント材に接触させた状態を維持する。この際、アライメント計測系10の計測結果に基づいて、型3と基板1との重ね合わせ(位置合わせ)も調整するとよい。
【0057】
S110では、基板上のインプリント材と型3とを接触させた状態で、インプリント材を硬化させる硬化工程を行う。具体的には、制御部14は、基板上のインプリント材と型3とを接触させた状態で、インプリント材に対して照射部16から光を照射して、基板上のインプリント材を硬化させる。
【0058】
S111では、基板上の硬化したインプリント材から型3を引き離す離型工程を行う。これにより、基板上に硬化したインプリント材のパターンが形成される。
【0059】
S112では、基板上の全てのショット領域にインプリント材のパターンを形成したかどうかを判定する。基板上の全てのショット領域にインプリント材のパターンを形成していない場合には、次のショット領域にインプリント材のパターンを形成するために、S104に移行し、S104乃至S112を繰り返す。一方、基板上の全てのショット領域にインプリント材のパターンを形成している場合には、S113に移行する。
【0060】
S113では、インプリント装置100から基板1を搬出する。具体的には、基板搬送部(不図示)によって、各ショット領域にインプリント材のパターンが形成された基板1を、基板ステージ60からインプリント装置100の外部に搬出する。
【0061】
このように、本実施形態では、型3と基板上のインプリント材とを接触させる際に型3に与えられる押付力に基づいて、基板保持部2における複数の保持領域22a乃至22cのそれぞれと基板1との間の空間SPa乃至Spcの圧力を制御する。これにより、インプリント処理、具体的には、接触工程や充填工程において、押付力によって基板1に生じる変形を許容範囲に収めて、例えば、基板1をフラットにすることができる。従って、本実施形態によれば、型3(のパターン3a)と基板1(のショット領域)との重ね合わせ精度を維持及び向上させることができる。このような制御は、最外周の隔壁21aの高さが他の隔壁21b及び21cの高さよりも低く、型3に与えられる押付力によって基板1に生じる下向きの変形が顕著となる周辺ショット領域において特に有用である。
【0062】
また、接触工程及び充填工程において型3に与えられる押付力を時系列的なデータとして取得することで、例えば、型3と基板1との重ね合わせを調整する際に、押付力を変化させた場合にも、重ね合わせ精度を維持及び向上させることが可能となる。なお、型3と基板1との重ね合わせを調整する際に、押付力を変化させた場合には、上述したように、型ステージ50に設けられたロードセルで得られる計測値を押付力としてリアルタイムに取得するようにしてもよい。
【0063】
また、本実施形態では、図2(b)に示したように、基板保持部2の複数の保持領域22a、22b及び22cを同心円状に区画された領域としているが、これに限定されるものではない。例えば、基板保持部2の複数の保持領域は、図5(a)及び図5(b)に示すように、矩形状に区画された領域であってもよい。図5(a)及び図5(b)は、基板保持部2を上面(基板1を保持する保持面)から示す図である。
【0064】
図5(a)では、基板保持部2の複数の保持領域27を格子状に区画している。複数の保持領域27のそれぞれは、例えば、基板上の1つのショット領域と同一の形状及びサイズを有する領域であってもよい。また、複数の保持領域27のそれぞれは、基板上の1つのショット領域よりも小さい領域であってもよい。これにより、基板保持部2における複数の保持領域27のそれぞれと基板1との間の空間の圧力を制御することで、基板1の形状をより自由に変化させることが可能となるため、型3と基板1との重ね合わせにおいて、より優位な精度を提供することができる。なお、複数の保持領域27のそれぞれが基板上の1つのショット領域と同一の形状及びサイズを有する領域である場合には、押付力と接触面積から単純に圧力を設定(決定)することができる。従って、基板保持部2における複数の保持領域27のそれぞれと基板1との間の空間の圧力の制御をより簡素化することができる。
【0065】
図5(b)では、基板保持部2の複数の保持領域28を短冊状に区画している。図5(b)に示す基板保持部2(保持領域28)の構造は、図5(b)に示す基板保持部2(保持領域27)の構造をより簡素化したものである。このように、基板保持部2の構造を簡素化することで、基板保持部2のコストが低減されるとともに、基板保持部2における複数の保持領域28のそれぞれと基板1との間の空間の圧力の制御をより簡素化することができる。これは、圧力制御の応答性の向上に寄与する。
【0066】
また、インプリント装置100においては、図6に示すように、基板1を基板保持部2に保持させた際に、基板保持部2に対して、基板1の位置ずれが発生する場合がある。例えば、図6では、基板1の中心位置1aと基板保持部2の中心位置2aとがずれることで、基板1の位置ずれ(ΔCx、ΔCy)が発生している。基板保持部2に対する基板1の位置ずれは、例えば、基板上のショット領域11a、11b及び11cのそれぞれにおいて、型3と基板上のインプリント材との接触面積(ショット領域の面積)の変化をもたらす。その結果、型3に与えられる押付力から求められる基板保持部2における複数の保持領域のそれぞれと基板1との間の空間の圧力に誤差が生じ、型3と基板1との重ね合わせ精度を低下させる要因となる。
【0067】
基板保持部2に対して基板1の位置ずれが発生している場合、本実施形態では、オフアクシスアライメント計測系9によって、基板1に設けられているアライメントマークの位置と、基板1の外周端部の位置とを計測する。オフアクシスアライメント計測系9での計測結果から、制御部14において、基板1の位置ずれ(ΔCx、ΔCy)を求めることができる。このように、オフアクシスアライメント計測系9と制御部14とは、基板保持部2に保持された基板1の基板保持部2に対する位置ずれに関する情報(第3情報)を取得する(第3取得部として機能する)。また、基板保持部2に対する基板1の位置ずれ(ΔCx、ΔCy)が求まれば、かかる位置ずれ(ΔCx、ΔCy)に基づいて、型3と基板上のインプリント材との接触面積を得る(再算出する)ことが可能となる。このようにして得られた接触面積を、上述した式(1)に代入することで、基板保持部2における複数の保持領域のそれぞれと基板1との間の空間の圧力を、基板1の位置ずれに起因する誤差を生じることなく、決定することができる。これにより、基板保持部2に対して、基板1の位置ずれが発生している場合であっても、型3と基板1との重ね合わせ精度の低下を抑制(防止)することができる。なお、基板1の外周端部の位置を計測する計測器は、オフアクシスアライメント計測系9に限定されるものではなく、基板1の高さを計測する測長センサなどを用いてもよい。
【0068】
インプリント装置100を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは、各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型などである。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMなどの揮発性又は不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAなどの半導体素子などが挙げられる。型としては、インプリント用のモールドなどが挙げられる。
【0069】
硬化物のパターンは、上述の物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入などが行われた後、レジストマスクは除去される。
【0070】
次に、物品の具体的な製造方法について説明する。図7(a)に示すように、絶縁体などの被加工材が表面に形成されたシリコンウエハなどの基板を用意し、続いて、インクジェット法などにより、被加工材の表面にインプリント材を付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材が基板上に付与された様子を示している。
【0071】
図7(b)に示すように、インプリント用の型を、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材に向け、対向させる。図7(c)に示すように、インプリント材が付与された基板と型とを接触させ、圧力を加える。インプリント材は、型と被加工材との隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型を介して照射すると、インプリント材は硬化する。
【0072】
図7(d)に示すように、インプリント材を硬化させた後、型と基板を引き離すと、基板上にインプリント材の硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材に型の凹凸のパターンが転写されたことになる。
【0073】
図7(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材の表面のうち、硬化物がない、或いは、薄く残存した部分が除去され、溝となる。図7(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材の表面に溝が形成された物品を得ることができる。ここでは、硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子などに含まれる層間絶縁用の膜、即ち、物品の構成部材として利用してもよい。
【0074】
本明細書の開示は、以下のインプリント装置、インプリント方法及び物品の製造方法を含む。
【0075】
(項目1)
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント装置であって、
前記基板との間の圧力が独立に制御される複数の保持領域を含み、前記複数の保持領域で前記基板を保持する基板保持部と、
前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる際に前記型に与えられる押付力に関する第1情報を取得する第1取得部と、
前記第1取得部で取得された前記第1情報に基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が許容範囲に収まるように、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させた状態における前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御する制御部と、
を有することを特徴とするインプリント装置。
【0076】
(項目2)
前記制御部は、前記型と前記基板上のインプリント材とが接触し、前記押付力が前記型に与えられている状態において、前記基板がフラットになるように、前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御することを特徴とする項目1に記載のインプリント装置。
【0077】
(項目3)
前記制御部は、前記複数の保持領域のそれぞれにおいて、当該保持領域と前記基板との間の圧力と、前記押付力とがつり合うように、前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御することを特徴とする項目1又は2に記載のインプリント装置。
【0078】
(項目4)
前記型のパターン面の全面と前記基板上のインプリント材とを接触させた状態における前記型と前記インプリント材との接触面積に関する第2情報を取得する第2取得部を更に有し、
前記制御部は、前記第2取得部で取得された前記第2情報にも基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が前記許容範囲に収まるように、前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御することを特徴とする項目1乃至3のうちいずれか1項目に記載のインプリント装置。
【0079】
(項目5)
前記押付力をPP、前記接触面積をCAとすると、
前記制御部は、前記複数の保持領域のそれぞれにおいて、当該保持領域と前記基板との間の圧力を、PP/CAに制御することを特徴とする項目4に記載のインプリント装置。
【0080】
(項目6)
前記基板保持部に保持された前記基板の前記基板保持部における位置ずれに関する第3情報を取得する第3取得部を更に有し、
前記制御部は、前記第3取得部で取得された前記第3情報にも基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が前記許容範囲に収まるように、前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御することを特徴とする項目4又は5に記載のインプリント装置。
【0081】
(項目7)
前記第3取得部は、
前記基板に設けられたマークの位置と、前記基板の外周端部の位置とを計測する計測系を含み、
前記計測系で計測された前記マークの位置及び前記外周端部の位置から前記位置ずれを求めることを特徴とする項目6に記載のインプリント装置。
【0082】
(項目8)
前記複数の保持領域は、同心円状に区画された領域であることを特徴とする項目1乃至7のうちいずれか1項目に記載のインプリント装置。
【0083】
(項目9)
前記複数の保持領域は、矩形状に区画された領域であることを特徴とする項目1乃至7のうちいずれか1項目に記載のインプリント装置。
【0084】
(項目10)
前記複数の保持領域のそれぞれは、前記基板上の1つのショット領域よりも小さい領域であることを特徴とする項目1乃至9のうちいずれか1項に記載のインプリント装置。
【0085】
(項目11)
前記基板保持部に設けられ、前記複数の保持領域を区画する複数の隔壁を更に有し、
前記複数の隔壁のうち、最も外側の隔壁の高さは、他の隔壁の高さよりも低いことを特徴とする項目1乃至10のうちいずれか1項目に記載のインプリント装置。
【0086】
(項目12)
型を用いて基板上にインプリント材のパターンを形成するインプリント方法であって、
前記基板との間の圧力が独立に制御される複数の保持領域を含む基板保持部で前記基板を保持する工程と、
前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させる際に前記型に与える押付力に関する情報を取得する工程と、
前記情報に基づいて、前記押付力によって前記基板に生じる変形が許容範囲に収まるように、前記型と前記基板上のインプリント材とを接触させた状態における前記複数の保持領域のそれぞれと前記基板との間の圧力を制御する工程と、
を有することを特徴とするインプリント方法。
【0087】
(項目13)
項目12に記載のインプリント方法を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された前記基板を処理する工程と、
処理された前記基板から物品を製造する工程と、
を有することを特徴とする物品の製造方法。
【0088】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0089】
1:基板 2:基板保持部 14:制御部 22a、22b、22c:保持領域 100:インプリント装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7