(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180477
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ノズル装置、液浸露光装置及び液浸露光方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093828
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】前川 幸弘
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA12
2H197CD12
2H197DB27
(57)【要約】
【課題】構造を簡略化しながら液の供給及び回収が可能なノズル装置、それを用いた液浸露光装置及び液浸露光方法を提供する。
【解決手段】液浸露光装置に用いられる本開示のノズル装置1は、露光対象物4に対向する対向面1aと、露光用のエネギービームが通過する開口部15とを備える。更に、開口部15内に液体を供給する液体供給路2と、対向面1aに開口部15を囲むように設けられ、液体を保持する液体保持溝5と、液体保持溝5に連通して設けられ、空気を取り込む空気穴7と、液体保持溝12に連通して設けられ、液体を回収する液体回収路8とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液浸露光装置に用いられるノズル装置であって、
前記ノズル装置は、
露光対象物に対向する対向面と、
露光用のエネギービームが通過する開口部と、
前記開口部内に液体を供給する液体供給路と、
前記対向面に前記開口部を囲むように設けられ、前記液体を保持する液体保持溝と、
前記液体保持溝に連通して設けられ、空気を取り込む空気穴と、
前記液体保持溝に連通して設けられ、前記液体を回収する液体回収路とを備えることを特徴とするノズル装置。
【請求項2】
請求項1のノズル装置において、
前記液体保持溝は、1つ又は複数の溝部からなり、当該溝部の端部同士が仕切り部を挟んで並ぶことにより前記開口部を囲むことを特徴とするノズル装置。
【請求項3】
請求項2のノズル装置において、
前記溝部の一端に前記空気穴が設けられ、
前記溝部の他端に前記液体回収路が設けられていることを特徴とするノズル装置。
【請求項4】
請求項1のノズル装置において、
前記対向面において、前記開口部から前記液体供給路の側に伸びるスリットを備えることを特徴とするノズル装置。
【請求項5】
請求項4のノズル装置において、
前記スリットは、前記対向面において長方形状又は半円状の形状を有することを特徴とするノズル装置。
【請求項6】
請求項1のノズル装置において、
前記対向面における前記液体保持溝の外側に設けられた補助回収口を備えることを特徴とするノズル装置。
【請求項7】
請求項1のノズル装置において、
前記対向面に、開口部と前記液体保持溝との間に伸びる液誘導溝を備えることを特徴とするノズル装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1つのノズル装置と、
前記露光用のエネルギービームを出射する投影光学系の光学素子と、
露光対象物が載置されるステージとを備えることを特徴とする液浸露光装置。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1つのノズル装置と、
前記露光用のエネルギービームを出射する投影光学系の光学素子とを用い、
前記露光対象物と前記対向面との間に液体を保持しながら、前記エネルギービームによって前記露光対象物にパターンを露光することを特徴とする液浸露光方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ノズル装置と、これを用いた液浸露光装置及び液浸露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は集積回路(IC)の製造等に用いられる装置であり、通常は、基板の目標部分上に所望のパターンを形成する。その場合、マスク又はレチクルと呼ばれるパターニング機器が、ICの個々の層における回路パターンの生成に使用される。
【0003】
パターンの形成は、シリコン・ウェハ等の基板上に塗布された放射線感光材料(レジスト)の層上に画像を形成することにより行われる。
【0004】
周知のリソグラフィ装置としては、ステッパとスキャナとがある。ステッパでは、基板の各目標部分についてその全パターンに一度に照射を行う形で露光する。スキャナでは、所与の方向(走査方向)に平行に又は逆平行に同期して基板を走査しながら、上記走査方向に放射線ビームを通してパターンを走査することにより、各目標部分に照射を行って露光する。
【0005】
特許文献1は、液体内では露光放射線の波長が短くなることを利用する液浸露光に関して開示する。液浸露光では、水のような屈折率が比較的高い液体にリソグラフィ投影装置の基板を浸漬し、投影システムの光学素子と基板との間の空間を液体で満たして露光を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第WO2004/053955号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術では、露光の際、投影光学系とステージ上の基板との間にノズルによって液体が供給され、且つ、その液体がノズル外部に漏れないように回収されることが必須である。これは、液体がノズル外部に漏れると、蒸発する際の気化熱により雰囲気中に温度分布が生じたり、雰囲気の屈折率が変化したりするので、ステージの位置を計測するレーザ干渉計の誤差の原因となるからである。液体の漏れを抑制するには、液体の供給口及び回収口の位置、液体の供給量及び回収量を調整するためのバルブの開度等について、基板の移動方向に合わせて複雑な制御が必要である。このためには、各種のセンサ、配管、バルブ等が必要となり、ノズルの小型化が困難であった。
【0008】
本開示の目的は、構造を簡略化しながら液の供給及び回収が可能なノズル装置、それを用いた液浸露光装置及び液浸露光方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
液浸露光装置に用いられる本開示のノズル装置は、露光対象物に対向する対向面と、露光用のエネギービームが通過する開口部と、開口部内に液体を供給する液体供給路と、対向面に開口部を囲むように設けられ、液体を保持する液体保持溝と、液体保持溝に連通して設けられ、空気を取り込む空気穴と、液体保持溝に連通して設けられ、液体を回収する液体回収路とを備える。
【0010】
本開示の液浸露光装置は、本開示のノズル装置と、露光用のエネルギービームを出射する投影光学系の光学素子と、露光対象物が載置されるステージとを備える。
【0011】
本開示の液浸露光方法は、本開示のノズル装置と、露光用のエネルギービームを出射する投影光学系の光学素子とを用いる。露光対象物と対向面との間に液体を保持しながら、エネルギービームによって露光対象物にパターンを露光する。
【発明の効果】
【0012】
本開示のノズル装置によると、液の供給及び回収に複雑な制御を要しないことから、構造を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の液浸露光装置の要部外観を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の液浸露光装置に用いるノズル装置の外観を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の液浸露光装置を示し、特に、ノズル装置の断面を模式的に示す図である。
【
図4A】
図4Aは、ノズル装置を対向面側から見た外観を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、ノズル装置を対向面側から見た各構成要素の配置を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、露光を行う際のノズル装置による液体の保持及び回収について説明する図である。
【
図6】
図6は、ノズル装置に設けられた液体保持溝の断面形状を例示する図である。
【
図7】
図7は、液体保持溝が複数備えられる例を示す図である。
【
図8】
図8は、液体保持溝及び仕切に関する構成例を示す図である。
【
図9】
図9は、変形例1のノズル装置について説明する図である。
【
図10】
図10は、変形例1のノズル装置について説明する図である。
【
図11】
図11は、変形例2のノズル装置について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の技術について、図面を参照して説明する。但し、以下の説明は例示であって、これらに限定するものではない。また、効果を発揮する範囲内において、適宜変更可能である。
【0015】
(第1の実施形態)
本開示のノズル装置及びこれを備える液浸露光装置について、
図1~
図3、
図4A及び
図4Bに示す。
図1は、本開示の液浸露光装置を示す図であり、ステージ16(
図1では図示省略、
図3を参照)上に載置された基板4と、露光のためのエネルギービームを出射する投光光学系3と、ノズル装置1とを示している。
図2は、ノズル装置1だけの外観を示す図である。
図3は、ノズル装置1の断面を模式的に示す図である。
図4Aは、ノズル装置1を対向面1aの側から見た外観を示し、
図4Bは、対向面1a側の各構成要素の配置を模式的に示す図である。
【0016】
図2に示すように、ノズル装置1は、投光光学系3が配置され、露光用のエネルギービームが通過する開口部15を備えた環状に構成されている。
図3に示すように、ノズル装置1は、ステージ16上に載置された露光対象物である基板4に対し、対向面1aを近接させて配置される。
【0017】
ノズル装置1は、投光光学系3と基板4との間に液体を供給するための液体供給路2と、液体を回収するための液体回収路8とを備える。
【0018】
対向面1aに、開口部15を取り囲むように、液体保持溝5が設けられている。液体回収路8は、液体保持溝5に連通しており、液体保持溝5内から液体を回収する機能を有する(この際、空気も吸収される)。また、ノズル装置1には液体保持溝5に連通する空気穴7が設けられている(
図3の断面には現れていない)。更に、ノズル装置1における液体保持溝5よりも外側に、対向面1aと基板4との間に存在する液体を回収するための補助回収路10が設けられている。
【0019】
図3に示すように、液体供給路2には液体供給管17、液体回収路8には液体回収管18が接続され、それぞれ液体の供給及び回収を行う(他の図では省略)。液体回収路8は、ポンプにより吸引される。補助回収路10に対しても配管が設けられているが、図示は省略している。
【0020】
投光光学系3が収容される開口部15は、対向面1a側において、反対側(
図2及び
図3における上面側)よりも開口が小さくなる形状を有する。また、対向面1aにおいて、開口部15から液体供給路2の側に伸びるスリット6が設けられている。従って、
図4Aに示すように、対向面1a側では、ノズル装置1の反対側に比べて小さい開口部15の開口面に、スリット6が接続された形状の開口となっている。尚、スリット6は対向面1aにおいて長方形状であるが、これに限定はされず、半円状、U字状等であっても良い。
【0021】
図4Bに示すように液体保持溝5は円形状の溝であるが、本実施形態の例では一箇所に仕切9が設けられている。従って、液体保持溝5は一周繋がった構造ではなく、2つの端部を有する一本の溝となっている。但し、仕切9の下面は、対向面1aよりも凹んでいても良い。
【0022】
このような液体保持溝5の一端に液体回収路8が連通して設けられ、他端に空気穴7が連通して設けられることが好ましい。
図4Bに示すように、仕切9を挟んで両側に液体回収路8及び空気穴7が配置されることになる。
【0023】
上記の構造のノズル装置1において、液体供給管17から液体供給路2に液体が供給される。液体としては、例えば水(純水)が用いられる。また、液体回収管18にはポンプが接続され、液体回収路8から液体が回収される。ここで、液体回収路8による液体の回収能力を、液体供給路2による液体の供給能力よりも大きくする。このためには、各種ポンプの出力、バルブの開度等を設定する。
【0024】
このようにすると、複雑な制御を要すること無しに、過剰な量の液体だけが回収され、投光光学系3と基板4との間に安定して液体を保持することができる。これを以下に説明する。
【0025】
図5A~
図5Eには、
図3と同様にノズル装置1、投光光学系3及び基板4を示す。ステージ16、液体供給管17及び液体回収管18等については省略している。
【0026】
図5Aに示すように、液体供給路2によって供給された純水等の液体は、投光光学系3と基板4との間に流入する。この際、仮にスリット6が無い場合、投光光学系3の周囲から同じ程度に液体が流入し、投光光学系3と基板4との間において中央付近に気泡が残ることがある。このような気泡は、適切な露光が妨げられる原因となる。これに対し、スリット6を設けると、スリット6側からの液体の流入が多くなり、上記の気泡の発生を抑制できる。
【0027】
更に液体が供給されると、
図5Bに示す状態となる。ここでは、液体保持溝5よりも内側の領域に液体が溜まり、投光光学系3と基板4との間の空間は液体で満たされる。更に、投光光学系3とノズル装置1との間の空間にも液体が満たされ、基板4からの液位が上昇する。
【0028】
更に液体が供給されると、
図5Cに示す状態となる。液体がより多くなり、一定量を超えると、投光光学系3の範囲から溢れて液体保持溝5に溜まり始める。
【0029】
液体回収路8は、装置の動作時には常にポンプにより吸引されている。液体保持溝5の液体回収路8とは反対側の端には空気穴7が配置されており、空気穴7から液体保持溝5に空気が供給される。液体保持溝5内に溜まった液体が少ない状態では、空気穴7からの空気が液体回収路8に吸引されている。
【0030】
液体保持溝5に溜まる液体が多くなると、
図5Dに示すように、液位が上昇して液体回収路8に達する。その結果、液体保持溝5の液体は液体回収路8に吸引され、回収が開始される。
【0031】
液体の回収は、液体保持溝5の他端に設けられた空気穴7から供給される空気が、液体回収路8に到達するまで継続される。空気が液体回収路8に到達すると、液体の回収から空気の回収に切り替わる。この状態が
図5Eに示されている。液体回収路8は吸引され続けるが、液位が低下して液体回収路8に触れない状態となっている。その結果、空気穴7から供給される空気が吸引され、液体は回収されない。従って、必要以上に液体が回収され、投光光学系3と基板4との間において液体が不足することはない。
【0032】
装置の動作中は液体が供給されるので、液体保持溝5に溢れる液体は再び増加することがある。その結果、液体が液体回収路8に達すると、再び液体の回収が開始される。つまり、
図5C~
図5Eの状態が繰り返される。
【0033】
以上のようにして、投光光学系3と基板4との間を液体で充填しながら、不要な液体を回収できる。これは、液体回収路8による液体の回収能力を液体供給路2による液体の供給能力よりも高くすること、及び、液体保持溝5、液体回収路8、空気穴7等の構造により実現している。溢れた液体の量、液位等をセンサにより検知すること、その検知結果に基づいて液体の供給量/回収量を制御すること等は不要である。従って、ノズル装置1を簡略化及び小型化することができ、また、ノズル装置1の動作及び制御も簡略化することができる。
【0034】
投光光学系3と基板4との間に安定して液体が保持された状態において、投光光学系3から露光用のエネルギービームが出射され、露光対象物(基板4)に設けられた放射線感光材料の露光が行われる。
【0035】
尚、上記のように液体保持溝5よりも外側に液体が漏れることを抑制しているが、仮にそのような液体の漏れが発生した場合には、補助回収路10によって回収される。補助回収路10は、1つ又は複数が設けられ、例えば、基板4の移動方向に応じて、開口部15に対して前方及び/又は後方に設けられても良い。
図4B等では断面が円形の補助回収路10を示しているが、楕円、半円、四角形、多角形等の他の形状でも良い。
【0036】
尚、ノズル装置1は特に限定されず、例えば、ステンレス、アルミニウム等の金属、又は、ポリエチレン、ナイロン、塩化ビニル等の樹脂材料であってもよい。ノズル装置1について、フッ素コーティング、高親水性クロムメッキ、高親水性コーティング、ブラスト処理等の表面処理を行っても良いし、微細な凹凸加工を施しても良い。表面処理は、ノズル装置1の下面(対向面1a)だけに行う等、部分的に行っても良い。ノズル装置1と基板4との間に水を安定して保持するためには、基板4の表面よりもノズル装置1の表面の方が高い親水性を有することが好ましい。以上の表面処理、加工により、これが実現できる。
【0037】
液体保持溝5の望ましい幅及び深さは、使用する液体、流量等によって異なる。液体として純水を用い、流量が0~300mL/分の場合、幅を1mm以上で且つ10mm以下、深さを1mm以上で且つ10mm以下とすることが好ましい。
【0038】
また、液体保持溝5の断面形状について、
図6に4つの例を示す。5aのような長方形状、5bのような半円状、5cのような対向面1a側の広い台形状、5dのような対向面1a側の狭い台形状等、特に限定されない。
【0039】
更に、以上では液体保持溝5は一重にのみ設けられているが、
図7のように、二重に設けられていても良いし、更に多く設けることも可能である。
図7の例では、外側の液体保持溝5に補助回収路10が配置されている。
【0040】
また、液体保持溝5に仕切9が1つだけ設けられ、液体保持溝5が1つの溝部を有する例を説明したが、これには限らず、2つ以上の仕切9が設けられていても良い。
図8には、仕切9を2つ備える例を示す。
図8において、上下2箇所に仕切9が設けられ、液体保持溝5は左右2つの溝部に分かれている。2つの溝部は、それぞれの端部同士が仕切9を挟んで並び、開口部15を囲む液体保持溝5を構成している。分けられた液体保持溝5のそれぞれの溝部において、一端に液体回収路8、他端に空気穴7が設けられている。これにより、それぞれの液体保持溝5は、これまでに説明したように機能する。ノズル装置1の大きさ、液体の供給量及び回収量等に応じて、仕切9(及び液体回収路8、空気穴7)の数を設計することが好ましい。
【0041】
液体保持溝5が上記の幅及び深さを有する場合、仕切9の高さは1mm以上10mm以下であることが好ましい。また、仕切9の下面は、対向面1aと同等でも良いし、対向面1aよりも凹んでいても良い。例えば、仕切9の高さが、液体保持溝5の深さに対して50%以上で且つ100%以下となっていることが好ましい。
【0042】
次に、空気穴7は、液体保持溝5に空気を供給し、液回収路8による液体の回収が適正に行われることを補助する。このためには、以下に述べるように、空気穴7の面積(基板4に平行な断面における面積)を望ましい値に設定する。
【0043】
前記の通り、液回収路8による液体の回収は、空気穴7から供給された空気が液体保持溝5に沿って液回収路8に到達するまで継続される。この際、空気穴7による空気の供給が不十分になると、ノズル装置1と基板4との間に液体保持溝5の外側から空気が入り込み、液体回収路8に到達して、意図しない空気の流れとなる可能性がある。このような空気の流れは、液体保持溝5に沿った液体の回収(吸引)を妨げる。
【0044】
これを防ぐためには、空気穴7から十分な量の空気が供給されることが好ましい。例えば、空気穴7を通じて空気が流入しようとする際の抵抗を、ノズル装置1と基板4との間から空気が流入しようとする際の抵抗よりも小さくすることが望ましい。空気が流入する際の抵抗の大きさは経路の面積に依存する。従って、空気穴7の面積は、ノズル装置1と基板4との間の距離に液体保持溝5の外周を掛けた値よりも大きいことが望ましい。
【0045】
尚、空気穴7について、例示している形状には限らず、円、台形等であっても良い。
【0046】
(変形例1)
次に、変形例1のノズル装置21について説明する。ノズル装置21は、
図2等に示すノズル装置1と基本的には同様の構造を有するので、以下では差異を主に説明する。
【0047】
図9は、
図4Bと同様に、ノズル装置21を対向面1a側から見た構成を示す。ノズル装置21は、対向面1aにおいて、液体保持溝5の外側且つ補助回収路10の付近に、規制溝11が設けられている。規制溝11は、液体保持溝5の外に漏れた液体の流れを規制し、補助回収路10に誘導する。これにより、補助回収路10による液体の回収効率を向上する。
【0048】
液体は、ノズル装置21が基板4に対して相対的に移動する際に、移動の後方側に漏れやすい。従って、開口部15に対して移動の後方になる位置に補助回収路10を配置し、更にその付近に規制溝11を設けることが好ましい。これにより、ノズル装置21が移動する際にも、液体がノズル装置21外に漏れて基板4上に残ることを抑制できる。
【0049】
図9の例において、規制溝11は補助回収路10の両側に1つずつ配置され、ノズル装置21の外側ほど間隔が狭くなっている。これは、液体を補助回収路10に誘導するために望ましい例である。しかし、規制溝11は他の形状であっても良い。例えば、2つの規制溝11が平行であっても良い。また、
図10には、ノズル装置21の外側に凸の弧状の規制溝11が2つ設けられ、補助回収路10の両側に配置された例を示す。
【0050】
(変形例2)
次に、変形例2のノズル装置22について説明する。ノズル装置22は、
図2等に示すノズル装置1と基本的には同様の構造を有するので、以下では差異を主に説明する。
【0051】
図11は、
図4Aと同様に、ノズル装置22を対向面1a側から見た外観を示す図である。ノズル装置22は、開口部15と、液体保持溝5における液体回収路8の位置との間に、誘導溝12を備えている。誘導溝12は、ノズル装置22の中央側(開口部15側)から液体を誘導し、液体回収路8に向かって安定した流れを確保する。この結果、液体回収路8による液体の回収がより安定し、液体の漏れを抑制できる。
【0052】
図11の誘導溝12は、開口部15から液体保持溝5まで繋がっている。しかし、これには限らない。つまり、開口部15及び液体保持溝5の一方又は両方には繋がらない凹部として形成されていても良い。また、誘導溝12は、全体が同じ深さであっても良いし、深さに勾配が付いていても良い。誘導溝12の断面は、
図6に例示した液体保持溝5の断面の例と同様に、長方形、半円形、台形等であっても良い。誘導溝12の幅は例えば1mm以上で且つ10mm以下、深さは1mm以上で且つ10mm以下としても良い。
【0053】
(変形例3)
次に、変形例3のノズル装置23について説明する。ノズル装置23は、
図2等に示すノズル装置1と基本的には同様の構造を有するので、以下では差異を主に説明する。
【0054】
【0055】
ノズル装置23は、対向面1aにおける液体保持溝5よりも内側に、内側補助回収路13を備えている。内側補助回収路13は、ノズル装置23の移動時及び移動前に、液体保持溝5よりも内側に保持された液体を回収し、液体の総量を減らすことができる。これにより、ノズル装置23の移動時に、液体保持溝5にまで溢れる液体を減らして、液体保持溝5のける液体の回収を容易にする。また、露光プロセスが完了した後に、液体保持溝5よりも内側の液体を回収することができる。
【0056】
内側補助回収路13は、基板4に対するノズル装置23の相対的な移動方向に対応して、移動方向の反対側に1つ又は複数設けることが好ましい。内側補助回収路13の形状は、図示した円形の他に、楕円形、半円形、四角形、多角形等であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本開示のノズル装置は、構造の簡略化・小型化を実現しながら液体の保持及び回収を可能とするので、液浸露光装置及び方法において有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 ノズル装置
1a 対向面
2 液体供給路
3 投光光学系
4 基板
5 液体保持溝
6 スリット
7 空気穴
8 液体回収路
9 仕切
10 補助回収路
11 規制溝
12 誘導溝
13 内側補助回収路
15 開口部
16 基板ステージ
17 液体供給管
18 液回収管
21 ノズル装置
22 ノズル装置
23 ノズル装置