(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180482
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】貯湯式給湯システム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/315 20220101AFI20231214BHJP
F24D 17/00 20220101ALI20231214BHJP
F24H 1/18 20220101ALI20231214BHJP
F24H 15/223 20220101ALI20231214BHJP
【FI】
F24H15/315
F24D17/00 L
F24H1/18 A
F24H15/223
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093837
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】入谷 あかね
(72)【発明者】
【氏名】三鬼 拓也
(72)【発明者】
【氏名】弓削 力也
【テーマコード(参考)】
3L073
3L122
【Fターム(参考)】
3L073AA07
3L073AA18
3L073AB09
3L073AD01
3L073AD03
3L073AE06
3L122AA02
3L122AA12
3L122AA23
3L122AA54
3L122AB22
3L122AB33
3L122BA02
3L122BA04
3L122BA12
3L122BA14
3L122BA22
3L122BB03
3L122BB25
3L122BB31
3L122CA02
3L122DA13
3L122EA01
(57)【要約】
【課題】給湯の停止中において、給湯の開始時に貯湯タンクから出湯する湯水の温度の推定値として使用し得る温度を適切に取得し、その温度を用いて作動制御等の処理を適切に行い得る貯湯式給湯システムを提供する。
【解決手段】貯湯式給湯システム1の制御装置70は、給湯対象部への給湯の停止中に、貯湯タンク11の側面の上部に装着された第1温度センサ12aによる温度検出値と、給湯路41の上流端寄りの箇所の第2温度センサ46による温度検出値とのうち、高い方の温度検出値を逐次取得し、当該取得した温度検出値を用いて貯湯式給湯システム1の作動制御又は作動状態の監視に関する処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置により加熱された湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの上部から出湯する湯水であるタンク出湯湯水に給湯用水を混合させ得ると共に、該タンク出湯湯水と該給湯用水との混合比率を調整し得るように該貯湯タンクの上部に接続された混合部とを備え、該混合部で得られる湯水を給湯対象部に給湯し得るように構成された貯湯式給湯システムであって、
前記貯湯タンクの側面の上部に装着された第1温度センサと、
前記貯湯タンクの上部に前記混合部を接続する流路の上流端寄りの箇所又は該貯湯タンク内の上部に配置された第2温度センサと、
該第1温度センサ又は該第2温度センサで検出された温度を用いて当該貯湯式給湯システムの作動制御又は作動状態の監視に関する処理を実行する機能を有する制御装置とを備えており、
前記制御装置は、前記給湯対象部への給湯の停止中に、前記第1温度センサによる温度検出値と、前記第2温度センサによる温度検出値とのうち、高い方の温度検出値を逐次取得し、当該取得した温度検出値を用いて当該貯湯式給湯システムの作動制御又は作動状態の監視に関する処理を実行するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項2】
請求項1記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記制御装置は、前記混合比率を、前記混合部に流入するタンク出湯湯水の流量と給湯用水の流量との総和の流量に対する該給湯用水の流量の比率と定義したとき、前記給湯対象部への給湯の停止中に、前記高い方の温度検出値が高いほど、前記混合比率を大きくするように該混合比率を制御するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項3】
請求項2記載の貯湯式給湯システムにおいて、
前記制御装置は、前記給湯対象部への給湯中に、前記混合比率を制御することを、前記第1温度センサによる温度検出値を使用せずに、前記第2温度センサによる温度検出値を用いて実行するように構成されていることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱された湯水を貯える貯湯タンクを備える貯湯式給湯システムでは、貯湯タンクから出湯する湯水であるタンク出湯湯水に水(非加熱状態の給湯用水)を混合し得るように貯湯タンクに接続された混合部を備え、給湯対象部への給湯時に、混合部で温調制御した湯水を燃焼式熱源機を経由させて、又は燃焼式熱源機をバイパスさせて給湯するシステムが知られている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に見られるシステムでは、混合部での混合比率の制御等に用いる温度センサとして、貯湯タンクの側面部に高さ方向に間隔を存して取りけられた複数の温度センサや、貯湯タンク内の上部に設けられた温度センサ、混合部への給水路に設けられた温度センサ等が備えられている。
【0004】
そして、給湯対象部への給湯時においては、燃焼式熱源機の燃焼運転を行うか否かを、貯湯タンク内の上部の温度センサや貯湯タンクの側面部の上部の温度センサで検出される温度に基づいて判断することが行われると共に、混合部での混合比率の調整用の混合弁の作動制御が、貯湯タンク内の上部の温度センサで検出される温度や、給水路に設けられた温度センサで検出される温度を用いて行われる。
【0005】
また、給湯対象部への給湯の停止中においては、貯湯タンク内の上部の温度センサで検出される温度が所定温度(50℃)よりも高いか否かによって、混合弁の作動が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に見られるシステムでは、給湯対象部への給湯の停止中において、混合部の混合弁の作動のために、貯湯タンク内の上部の温度センサ(以降、タンク内上部温度センサということがある)で検出される温度を用いている。従って、特許文献1に見られるシステムでは、給湯の開始時に貯湯タンクから出湯する湯水(給湯対象部に供給される湯水)の温度が、その給湯の開始直前にタンク内上部温度センサで検出される温度に一致もしくはほぼ一致するとみなして、給湯の停止中に、タンク内上部温度センサで逐次検出される温度を用いて混合弁を作動させるようにしている。換言すれば、給湯の停止中に、タンク内上部温度センサで逐次検出される温度を、該温度の検出直後に給湯が開始されたときに、貯湯タンクから出湯する湯水の実際の温度の推定値として用いて混合弁を作動させるようにしている。
【0008】
しかしながら、給湯対象部への給湯の停止中には、貯湯タンク内の温度分布が貯湯タンク内の湯水の加熱状態や放熱状態等に応じて変化することや、貯湯タンク内に存在する空気等に起因して、タンク内上部温度センサで検出される湯水の温度は、給湯の開始時に貯湯タンク内から出湯する湯水の実際の温度に一致もしくはほぼ一致するとは限らない。
【0009】
このため、給湯の停止中に、タンク内上部温度センサで検出される温度を用いて混合弁を作動させることや、システムの状態監視等の処理を行うと、その処理が不適切なものとなる虞がある。例えば、給湯の開始時に貯湯タンク内から出湯する湯水の実際の温度が、該給湯の開始直前にタンク内上部温度で検出される温度よりも高い温度になる場合もある。
【0010】
そして、このような場合には、特許文献1に見られるシステムでは、給湯の停止中における混合弁を、貯湯タンクから出湯する湯水の流量を多めにするように作動させてしまう場合がある。ひいては、給湯の開始直後に得られる湯水(貯湯タンクから出湯する湯水と給湯用水との混合により得られる湯水)の温度が過剰に高い温度になってしまう虞がある。
【0011】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、給湯の停止中において、給湯の開始時に貯湯タンクから出湯する湯水の温度の推定値として使用し得る温度を適切に取得し、その温度を用いて作動制御等の処理を適切に行い得る貯湯式給湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の貯湯式給湯システムは、上記の目的を達成するために、加熱装置により加熱された湯水を貯える貯湯タンクと、前記貯湯タンクの上部から出湯する湯水であるタンク出湯湯水に給湯用水を混合させ得ると共に、該タンク出湯湯水と該給湯用水との混合比率を調整し得るように該貯湯タンクの上部に接続された混合部とを備え、該混合部で得られる湯水を給湯対象部に給湯し得るように構成された貯湯式給湯システムであって、
前記貯湯タンクの側面の上部に装着された第1温度センサと、
前記貯湯タンクの上部に前記混合部を接続する流路の上流端寄りの箇所又は該貯湯タンク内の上部に配置された第2温度センサと、
該第1温度センサ又は該第2温度センサで検出された温度を用いて当該貯湯式給湯システムの作動制御又は作動状態の監視に関する処理を実行する機能を有する制御装置とを備えており、
前記制御装置は、前記給湯対象部への給湯の停止中に、前記第1温度センサによる温度検出値と、前記第2温度センサによる温度検出値とのうち、高い方の温度検出値を逐次取得し、当該取得した温度検出値を用いて当該貯湯式給湯システムの作動制御又は作動状態の監視に関する処理を実行するように構成されていることを特徴とする(第1発明)。
【0013】
かかる第1発明によれば、制御装置が給湯対象部への給湯の停止中に逐次取得する温度検出値は、その取得直後に給湯対象部の給湯が開始した時に貯湯タンクから混合部に出湯する湯水の温度よりも低い温度検出値になるのが防止され得ると共に、当該出湯する湯水の温度と同程度の温度になる可能性が高い。
【0014】
従って、制御装置は、給湯の停止中において、前記高い方の温度検出値を、給湯の開始時に貯湯タンクから出湯する湯水の温度の推定値として使用し得る温度として適切に取得し得る。ひいては、該温度検出値を用いて、貯湯式給湯システムの作動制御等の処理を適切に行うことが可能となる。
【0015】
上記第1発明では、前記制御装置は、前記混合比率を、前記混合部に流入するタンク出湯湯水の流量と給湯用水の流量との総和の流量に対する該給湯用水の流量の比率と定義したとき、前記給湯対象部への給湯の停止中に、前記高い方の温度検出値が高いほど、前記混合比率を大きくするように該混合比率を制御するように構成されているという態様を採用し得る(第2発明)。
【0016】
なお、本発明において、給湯対象部への給湯の停止中における混合比率は、より詳しくは、該給湯の停止中に給湯対象部への給湯を開始した時に混合部で実現される混合比率を意味する。
上記第2発明によれば、給湯の開始直後に混合部で得られる湯水の温度が過剰に高い温度になるのを的確に防止することが可能となる。
【0017】
上記第2発明では、前記制御装置は、前記給湯対象部への給湯中に前記混合比率を制御することを、前記第1温度センサによる温度検出値を使用せずに、前記第2温度センサによる温度検出値を用いて実行するように構成されていることが好ましい(第3発明)。
【0018】
ここで、給湯対象部への給湯中においては、第2温度センサによる温度検出値は、貯湯タンクから混合部に出湯する湯水の実際の温度に相当するものとしての信頼性が高い。このため、第3発明によれば、貯湯タンクから混合部に出湯する湯水の実際の温度に応じて混合比率の制御を行うことが可能となる。ひいては、混合部で得られる湯水の温調制御を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態の貯湯式給湯システムの全体構成を示す図。
【
図2】実施形態の貯湯式給湯システムに備えた制御装置による混合比率の許容範囲の設定処理(第1実施形態での設定処理)を示すフローチャート。
【
図3】実施形態の貯湯式給湯システムに備えた混合弁の動作特性を例示するグラフ。
【
図4】実施形態の貯湯式給湯システムに備えた制御装置による給湯時の制御処理を示すフローチャート。
【
図5】実施形態の貯湯式給湯システムに備えた制御装置による給湯停止時の制御処理を示すフローチャート。
【
図6】実施形態の貯湯式給湯システムに備えた制御装置による混合比率の許容範囲の設定処理(第2実施形態での設定処理)を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を
図1~
図5を参照して以下に説明する。本実施形態の貯湯式給湯システム1は、加熱された湯水を貯える貯湯タンク11が搭載されたタンクユニット10と、貯湯タンク11内に貯える湯水を加熱する加熱装置としてのヒートポンプユニット20と、図示しない給水源から供給される給湯用水を貯湯タンク11に供給し得るように構成された給水回路30と、貯湯タンク11内の湯水を台所や浴室、洗面所等の給湯対象部(図示省略)に供給し得るように構成された給湯回路40と、給湯回路40で給湯対象部に供給される湯水を加熱し得るように構成された燃焼式熱源機50とを備える。
【0021】
ヒートポンプユニット20は、貯湯タンク11との間で湯水を循環させる循環路21を介して貯湯タンク11に接続されている。該循環路21は、貯湯タンク11内の湯水を貯湯タンク11の下部からヒートポンプユニット20に流すように配設された往路21aと、ヒートポンプユニット20から貯湯タンク11の上部に湯水を流すように配設された復路21bとを備え、ヒートポンプユニット20(又はタンクユニット10)に搭載された図示しないポンプの作動により、ヒートポンプユニット20と貯湯タンク11との間で湯水を循環させることが可能である。なお、復路21bには、逆止弁22が組付けられている。
【0022】
そして、ヒートポンプユニット20は、貯湯タンク11との間での湯水の循環時に、該ヒートポンプユニット20で流通する湯水を、公知のヒードポンプ動作(冷媒の蒸発(吸熱)、圧縮、凝縮(放熱)、膨張を繰り返す動作)によって加熱し得るように構成されている。
【0023】
給水回路30は、給水源から給湯用水が供給される上流給水路31と、上流給水路31の下流側に分岐されたタンク給水路32及びバイパス給水路33とを備える。タンク給水路32は、給湯用水を上流給水路31から貯湯タンク11の下部に流入させるように配設され、バイパス給水路33は、給湯用水を上流給水路31から貯湯タンク11を経由させずに給湯回路40の混合部44に流すように配設されている。該混合部44は、貯湯タンク11から出湯する湯水であるタンク出湯湯水に、バイパス給水路33から供給される給湯用水を混合させる部分である。
【0024】
そして、タンク給水路32及びバイパス給水路33には、逆止弁34,35が各々組付けられている。さらに、バイパス給水路33には、該バイパス給水路33を通って混合部44に流れる給湯用水の流量である給水流量を検出する流量センサ36が組付けられている。また、上流給水路31には、給水源から上流給水路31に供給された給湯用水の温度である給水温度を検出する温度センサ37が組付けられている。
【0025】
給湯回路40は、貯湯タンク11内の湯水を該貯湯タンク11の上部から混合部44に流すように配設された第1給湯路41と、混合部44から燃焼式熱源機50に湯水を流すように配設された第2給湯路42と、燃焼式熱源機50から流出する湯水を図示しない給湯対象部に供給するように配設された第3給湯路43とを備える。
【0026】
混合部44には、貯湯タンク11から第1給湯路41を通って流入する湯水とバイパス給水路33から流入する給湯用水とを混合して第2給湯路42に流出させ得るように構成された混合弁45が組付けられている。該混合弁45は、図示しないステッピングモータを動力源として有する電動式の三方弁等により構成され、貯湯タンク11から第1給湯路41を通って第2給湯路42に流れる湯水の流量(タンク出湯湯水の流量)と、バイパス給水路33から第2給湯路42に流れる給湯用水の流量との比率である混合比率を可変的に調整し得るように構成されている。かかる混合弁45の作動制御によって上記混合比率を制御することで、該混合弁45から下流側の第2給湯路42に流れる湯水の温度(混合弁45から燃焼式熱源機50に供給する湯水の温度)を調整することが可能である。
【0027】
補足すると、上記混合比率を制御するための弁装置は、上記混合弁45に限られない。例えば、第1給湯路41及びバイパス給水路33のそれぞれに流量制御弁を設け、これらの流量制御弁により混合比率を調整することも可能である。
【0028】
第1給湯路41には、貯湯タンク11の上部から出湯する湯水の温度であるタンク出湯温度を検出する温度センサ46と、逆止弁47と、貯湯タンク11から混合部44に流れる湯水の流量であるタンク出湯流量を検出する流量センサ48とが組付けられている。温度センサ46は、第1給湯路41の上流端寄りの位置で第1給湯路41に組付けられており、貯湯タンク11内の上部のうち、第1給湯路41の上流端の接続部近辺の箇所の湯水の温度の検出用の温度センサとしての機能を持つ。
【0029】
また、第2給湯路42の上流端寄りの箇所(混合部44の近辺箇所)には、混合部44から燃焼式熱源機50に供給される湯水の温度である混合給湯温度を検出する温度センサ49が組付けられている。
【0030】
また、貯湯タンク11の側面(図示例では、外側面)には、複数(例えば3個)の温度センサ12a,12b,12cが、上下方向に間隔を存して装着されている。これらの温度センサ12a,12b,12cは、それぞれの高さ位置近辺での貯湯タンク11内の湯水の温度の検出用の温度センサである。すなわち、温度センサ12aは、貯湯タンク11内の上部の湯水の温度の検出用の温度センサ、温度センサ12bは、貯湯タンク11内の上下方向中間部の湯水の温度の検出用の温度センサ、温度センサ12cは貯湯タンク11内の下部の湯水の温度の検出用の温度センサである。なお、温度センサ12a,12b,12cは、貯湯タンク11の内側面に装着されていてもよい。
【0031】
燃焼式熱源機50は、入水路51と出湯路52と熱交換器53とバーナ54とを備え、出湯路52が熱交換器53の通水路53aを介して入水路51の下流側に連接されている。そして、入水路51の上流側に第2給湯路42が連接され、出湯路52の下流側に第3給湯路43が連接されている。
【0032】
さらに、入水路51と出湯路52との間には、入水路51から熱交換器53を経由させずに出湯路52に湯水を流すためのバイパス路55が熱交換器53の通水路53aと並列に接続されている。そして、入水路51とバイパス路55との接続部には、該接続部の上流側の入水路51から流入する湯水を、下流側の入水路51とバイパス路55とに分配し得るように構成された分配弁56が組付けられている。
【0033】
該分配弁56は、電動式の三方弁等により構成され、上流側の入水路51から下流側の入水路51に流れる湯水の流量(=熱交換器53の通水路53aに流れる湯水の流量)と、上流側の入水路51からバイパス路55に流れる湯水の流量との比率であるバイパス比を可変的に調整し得るように構成されている。
【0034】
補足すると、上記バイパス比を制御するための弁装置は、上記分配弁56に限られない。例えば、分配弁56の代わりに、バイパス路55と出湯路52との接続部に、上流側の出湯路52から流入する湯水とバイパス路55から流入する湯水とを混合して下流側の出湯路52に流出させ得ると共にその混合比率を調整し得るように構成された電動式の混合弁を組付けて、該混合弁によりバイパス比を調整することも可能である。あるいは、熱交換器53の通水路53aを経由する流路(入水路51とバイパス路55との接続部よりも下流側の入水路51、又は、出湯路52とバイパス路55との接続部よりも上流側の出湯路52)と、バイパス路55のとの両方又は一方に流量制御弁を組付けて、該流量制御弁によりバイパス比を調整することも可能である。
【0035】
また、燃焼式熱源機50は、出湯路52から第3給湯路43に流れる湯水の温度である熱源機出湯温度を検出する温度センサ57を備える。該温度センサ57は、出湯路52とバイパス路55との接続部よりも下流側の出湯路52に組付けられている。
【0036】
バーナ54は、例えばガスバーナであり、図示しない燃料供給装置と送風機(ファン)とにより燃料ガスと燃焼用空気とが供給される。そして、バーナ54は、その燃焼運転により発生する燃焼熱(顕熱及び潜熱の一方又は両方)により熱交換器53を加熱し、ひいては、該熱交換器53の通水路53aを流れる湯水を加熱し得るように配置されている。なお、バーナ54はガスバーナに限らず、灯油等の液体燃料を燃焼させるバーナであってもよい。
【0037】
燃焼式熱源機50は、上記のように構成されているので、給湯回路40の第2給湯路42から供給される湯水の全体又は一部を入水路51から熱交換器53の通水路53a及び出湯路52を経由させて第3給湯路43に供給する(ひいては、給湯対象部に供給する)ことが可能である。このとき、バーナ54の燃焼運転を行うことで、第2給湯路42から供給される湯水を加熱して昇温させることが可能である。さらに、バーナ54の燃料量とバイパス比との両方又は一方を調整することで、熱源機出湯温度を調整することが可能である。
【0038】
貯湯式給湯システム1は、さらに、該貯湯式給湯システム1の作動制御等を行う機能を有する制御装置70を備える。該制御装置70は、例えば、マイコン等のプロセッサ、メモリ、インターフェース回路等を含む1つ以上の電子回路ユニットにより構成される。例えば、制御装置70は、タンクユニット10、ヒートポンプユニット20及び燃焼式熱源機50のそれぞれに各別に搭載され、且つ、相互に通信を行い得る複数の電子回路ユニットの集合体として構成され得る。ただし、制御装置70は、単一構成のものであってもよい。
【0039】
制御装置70は、貯湯式給湯システム1の運転操作をユーザが行うためのリモコン75と有線又は無線による通信を行うことが可能である。該リモコン75は、複数の操作スイッチを含む操作部75a、貯湯式給湯システム1の運転に関する様々な情報を表示する表示部75b等を含む。
【0040】
リモコン75の操作部75aの操作によって、給湯対象部への給湯を行う給湯運転のオン/オフ操作、目標給湯温度(詳しくは、熱源機下流給湯温度の目標値)の設定操作等を行うことが可能である。また、リモコン75の表示部75bでは、目標給湯温度の設定値(以降、給湯設定温度という)や、貯湯式給湯システム1の運転状態等を表示することが可能である。
【0041】
そして、制御装置70は、実装されたハードウェア構成及びプログラム(ソフトウェア構成)により実現される機能によって、タンクユニット10、ヒートポンプユニット20及び燃焼式熱源機50の各制御対象機器の作動制御を行うことが可能である。この場合、タンクユニット10の制御対象機器には混合弁45が含まれ、ヒートポンプユニット20の制御対象機器には、図示しないヒートポンプ動作用の機器(圧縮機、膨張弁等)、湯水の循環用のポンプ等が含まれる。
【0042】
また、燃焼式熱源機50の制御対象機器には、バーナ54、分配弁56等が含まれる。なお、バーナ54の作動制御は、より詳しくは、図示しない燃料供給装置、送風機(ファン)、及び点火装置の作動制御を通じて行われる。
【0043】
さらに、制御装置70は、タンクユニット10、ヒートポンプユニット20又は燃焼式熱源機50の各監視対象機器の作動状態(異常の発生の有無等)を監視することが可能である。この場合、監視対象機器には、例えば第1給湯路41に組付けられた逆止弁47等が含まれる。
【0044】
次に、本実施形態の貯湯式給湯システム1の作動に関して説明する。制御装置70は、貯湯タンク11の湯切れ状態が検知された場合等、所定の条件下で貯湯タンク11の湯水を加熱するように該ヒートポンプユニット20を作動させる。この場合、貯湯タンク11内の湯水の全体又はほぼ全体が所定温度以上(例えば45℃以上)の温度になるようにヒートポンプユニット20の作動制御が行われる。
【0045】
なお、貯湯タンク11の湯切れ状態は、貯湯タンク11内の所定温度以上の湯量が所定量以下に低下した状態である。そして、貯湯タンク11の湯切れ状態であるか否かは、給湯対象部への給湯の停止中は、例えば、貯湯タンク11の側面に装着された温度センサ12a,12b,12cの出力に基づいて判断され得る。また、給湯対象部への給湯中は、例えば、第1給湯路41に組付けられた温度センサ46で検出される温度(貯湯タンク11から出湯する湯水の温度)に基づいて判断され得る。
【0046】
次に、タンク出湯湯水(貯湯タンク11から第1給湯路41に出湯する湯水)と給湯用水(バイパス給水路33から混合部44に供給される給湯用水)との混合部44での混合比率の許容範囲の設定処理に関して説明する。なお、本実施形態の説明では、混合部44での混合比率は、貯湯タンク11から混合部44に流入するタンク出湯湯水の流量と、バイパス給水路33から混合部44に流入する湯水の流量である給水流量との総和の流量(=混合部44から下流側に流れる湯水の全流量)に対する給水流量の比率(=給水流量/全流量)である。
【0047】
本実施形態では、リモコン75で貯湯式給湯システム1がON状態に設定されている場合に、給湯対象部への給湯中であるか否かによらずに、制御装置70は、混合比率の許容範囲を設定する処理を、
図2のフローチャートで示す如く実行する。なお、貯湯式給湯システム1のON状態は、給湯対象部への給湯の待機状態(給湯対象部への通水が開始されることに応じて、給湯対象部への温かい湯水の供給(給湯)が開始される状態)、あるいは、給湯対象部への給湯中の状態である。
【0048】
STEP1において、制御装置70は、貯湯タンク11内の湯水の温度としてのタンク内湯温の検出値を取得する。ここで、本実施形態では、第1給湯路41に組付けられた温度センサ46と、貯湯タンク11の側面の上部に装着された温度センサ12aとがタンク内湯温の検出用の温度センサであり、該温度センサ46,12aのいずれか一方で検出される温度が、タンク内湯温の検出値として取得される。
【0049】
具体的には、本実施形態では、給湯対象部への給湯中においては、第1給湯路41の温度センサ46で検出される温度がタンク内湯温の検出値として取得される。また、給湯対象部への給湯の停止中においては、第1給湯路41の温度センサ46で検出される温度と、貯湯タンク11の側面の上部の温度センサ12aで検出される温度とのうちの高い方の温度がタンク内湯温の検出値として取得される。
【0050】
ここで、タンク内湯温の検出値を上記の態様で取得するのは次の理由による。すなわち、給湯対象部への給湯時には、温度センサ46で検出される温度は、貯湯タンク11から実際に出湯して給湯対象部に供給される湯水の温度を示すものとして信頼性が高いものとなる。このため、本実施形態では、給湯対象部への給湯中においては、制御装置70は、混合部44での混合比率の許容範囲の設定や該混合比率の制御等に用いるタンク内湯温の検出値として、温度センサ46で検出される温度を取得する。
【0051】
一方、給湯対象部への給湯の停止時においては、温度センサ46で検出される温度は、貯湯タンク11内の湯水の温度の分布状態や、ヒートポンプユニット20による貯湯タンク11内の湯水の加熱状態等の影響で、給湯開始時に貯湯タンク11から出湯する湯水の温度と同一もしくはほぼ同一の温度になるとは限らない。
【0052】
また、給湯の停止時において、貯湯タンク11の側面の上部の温度センサ12aで検出される温度は、貯湯タンク11内の湯水の温度の分布状態や、貯湯タンク11内の空気、ヒートポンプユニット20による貯湯タンク11内の湯水の加熱状態等の影響で、給湯開始時に貯湯タンク11から出湯する湯水の温度と同一もしくはほぼ同一の温度になるとは限らない。
【0053】
そして、給湯の停止時において、タンク内湯温として、実際の温度よりも低い温度を用いて混合比率の許容範囲を設定することや、混合比率を制御することを後述の如く実行すると、給湯の開始直前における混合弁45の動作状態に対応する混合比率が、貯湯タンク11から出湯する湯水の実際の温度に応じた適切な混合比率よりも小さくなり、ひいては、給湯の開始直後に混合部44で得られる湯水の温度(混合給湯温度)が目標温度より高くなってしまう虞がある。
【0054】
そこで、本実施形態では、給湯の停止中においては、制御装置70は、混合部44での混合比率の許容範囲の設定や該混合比率の制御等に用いるタンク内湯温の検出値(詳しくは、給湯の開始時に貯湯タンク11から出湯する湯水の温度の推定値を示すものとして使用し得るタンク内湯温の検出値)として、温度センサ46で検出される温度と、温度センサ12aで検出される温度とのうちの高い方の温度を取得する。なお、本実施形態では、温度センサ46が本発明における第2温度センサに相当し、温度センサ12aが本発明における第1温度センサに相当する。
【0055】
次に、STEP2において、制御装置70は、STEP1で取得したタンク内湯温の検出値が所定の第1閾値温度Tth1以下の温度であるか否かを判断する。該第1閾値温度Tth1は、本実施形態では、リモコン75で設定し得る目標給湯温度の上限値(例えば50℃)よりも若干高い温度(例えば55℃)である。
【0056】
そして、STEP2の判断結果が肯定的である場合(タンク内湯温≦Tth1である場合)には、制御装置70は、STEP3において、混合弁45のステッピングモータの回転角を規定するステップ数の許容範囲を、例えば250~2600の範囲に設定する。
【0057】
ここで、本実施形態では、混合弁45のステッピングモータのステップ数に応じて混合部44での混合比率が規定される。この場合、該ステップ数と混合比率との間の関係は、
図3のグラフで例示するように、ステップ数の増加に伴い混合比率が単調増加する関係である。従って、ステップ数の許容範囲を設定するということは、混合比率の許容範囲を設定することと等価である。STEP3で設定されるステップ数の許容範囲(250~2600)は、混合比率の許容範囲に換算すると、0~100%の範囲である。
なお、ステップ数と混合比率との間の関係を表す相関データは、演算式又はマップ等の形態で制御装置70にあらかじめ記憶保持されている。
【0058】
STEP2の判断結果が否定的である場合(タンク内湯温>Tth1である場合)には、制御装置70は、次に、STEP4の判断処理を実行する。この判断処理では、STEP1で取得したタンク内湯温の検出値が所定の第2閾値温度Tth2以下の温度であるか否かが判断される。該第2閾値温度Tth2は、第1閾値温度Tth1よりも高い温度、例えば58℃である。
【0059】
そして、STEP4の判断結果が肯定的である場合(タンク内湯温≦Tth2である場合)には、制御装置70は、STEP5において、混合弁45のステッピングモータのステップ数の許容範囲を、例えば470~2600の範囲に設定する。この許容範囲は、混合比率に換算すると、5~100%である。
【0060】
この場合、混合比率の下限値に対応するステップ数の下限値(470)は、混合弁45のステッピングモータを当該下限値のステップ数で作動させた状態において、タンク内湯温≦Tth2あれば、混合部44で得られる湯水の温度が所定温度(例えば55℃)を超えることが無いようにあらかじめ実験等に基づいて決定される。
【0061】
STEP4の判断結果が否定的である場合(タンク内湯温>Tth2である場合)には、制御装置70は、次に、STEP6の判断処理を実行する。この判断処理では、STEP1で取得したタンク内湯温の検出値が所定の第3閾値温度Tth3以下の温度であるか否かが判断される。該第3閾値温度Tth3は、第2閾値温度Tth2よりも高い温度、例えば65℃である。
【0062】
そして、STEP6の判断結果が肯定的である場合(タンク内湯温≦Tth3である場合)には、制御装置70は、STEP7において、混合弁45のステッピングモータの回転角を規定するステップ数の許容範囲を、例えば550~2600の範囲に設定する。この許容範囲は、混合比率に換算すると、10~100%である。
【0063】
この場合、混合比率の下限値に対応するステップ数の下限値(550)は、混合弁45のステッピングモータを当該下限値のステップ数で作動させた状態において、タンク内湯温≦Tth3であれば、混合部44で得られる湯水の温度が所定温度(例えば55℃)を超えることが無いようにあらかじめ実験等に基づいて決定される。
【0064】
また、STEP6の判断結果が否定的である場合(タンク内湯温>Tth3である場合)には、制御装置70は、STEP8において、混合弁45のステッピングモータのステップ数の許容範囲を、例えば650~2600の範囲に設定する。この許容範囲は、混合比率に換算すると、20~100%である。
【0065】
この場合、混合比率の下限値に対応するステップ数の下限値(650)は、混合弁45のステッピングモータを当該下限値のステップ数で作動させた状態において、タンク内湯温>Tth3であっても、混合部44で得られる湯水の温度が所定温度(例えば55℃)を超えることが無いようにあらかじめ実験等に基づいて決定される。
【0066】
制御装置70は、以上の如く、混合弁45のステッピングモータのステップ数の許容範囲を設定する処理(換言すれば、混合比率の許容範囲を設定する処理)を貯湯式給湯システム1のON状態で逐次実行する。
【0067】
上記のように混合弁45のステッピングモータのステップ数の許容範囲の設定(混合比率の許容範囲の設定)が行われることで、タンク内湯温≦Tth1である場合、Tth1<タンク内湯温≦Tth2である場合、Tth2<タンク内湯温≦Tth3である場合、Tth3<タンク内湯温である場合のそれぞれの場合において、ステップ数の許容範囲に対応する混合比率の許容範囲がそれぞれ、0~100%、5~100%、10~100%、20~100%に設定される。
【0068】
従って、Tth1<タンク内湯温となる状況では、混合比率の許容範囲の下限値がタンク内湯温≦Tth1である場合よりも大きくなると共に、タンク内湯温が高いほど、該下限値が大きくなるように混合比率の許容範囲に対応するステップ数の許容範囲が設定されることになる。なお、本実施形態では、第1閾値温度Tth1が本発明における閾値温度に相当する。
【0069】
次に、給湯対象部への給湯時の作動を説明する。制御装置70は、給湯対象部の図示しない給湯栓の開栓等によって、給湯対象部への通水(所定流量以上の通水)が開始されると、該通水が停止されるまで、
図4のフローチャートに示す処理を実行する。
【0070】
この場合、給湯対象部への通水が開始されたか否かは、流量センサ36,48によりそれぞれ検出される流量(給水流量及びタンク出湯流量)の総和の流量が第1の所定流量以上(例えば2.4リットル/分以上)になったか否かによって判断される。また、給湯対象部への通水が停止されたか否かは、流量センサ36,48によりそれぞれ検出される流量(給水流量及びタンク出湯流量)の総和の流量が第1の所定流量よりも小さい第2の所定流量以下(例えば1.8リットル/分以下)になったか否かによって判断される。
【0071】
なお、例えば、上流給水路31、あるいは、第2給湯路42、あるいは、燃焼式熱源機50の入水路51(バイパス路55との接続部よりも上流側の入水路51)、あるいは、燃焼式熱源機50の出湯路52(バイパス路55との接続部よりも下流側の出湯路52)に流量センサが備えられている場合には、該流量センサにより検出される流量に基づいて、給湯対象部への通水が開始されたか否か、及び該通水が停止されたか否かを判断してもよい。
【0072】
給湯対象部への通水が開始された場合、制御装置70は、STEP11において、タンク内湯温が給湯設定温度以上の温度であるか否かを判断する。この場合、給湯時(給湯対象部への通水時)におけるタンク内湯温としては、本実施形態では、第1給湯路41の温度センサ46で検出される温度(貯湯タンク11から第1給湯路41への出湯温度)が用いられる。ただし、例えば、貯湯タンク11内の上部に温度センサが備えられている場合には、該温度センサにより検出される温度をタンク内湯温として用いてもよい。
【0073】
STEP11の判断結果が肯定的である場合(タンク内湯温≧給湯設定温度である場合)には、制御装置70は、STEP12において、混合弁45による給湯温度の温調制御を実行する。この温調制御では、制御装置70は、まず、温度センサ49で検出される湯水の温度(混合給湯温度)を給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致させ得るように、混合部44における混合比率の仮目標値(暫定的な目標値)を決定する。
【0074】
この場合、混合比率の仮目標値は、温度センサ46で検出されるタンク内湯温(貯湯タンク11からの湯水の出湯温度)と、温度センサ37で検出される給水温度(混合部44に供給される給湯用水の温度)と、混合給湯温度(混合部44から下流側に流れる湯水の温度)の目標値とから次式(1)により算出される。そして、混合給湯温度の目標値として、給湯対象部に対する目標給湯温度の設定値である給湯設定温度が用いられる。
混合比率の仮目標値
=(タンク内湯温-混合給湯温度の目標値)/(タンク内湯温-給水温度)
……(1)
【0075】
さらに、制御装置70は、この混合比率の仮目標値が、
図2に示した処理により現在設定されている許容範囲内に収まっているか否かを確認し、収まっている場合には、該仮目標値をそのまま混合比率の目標値として決定する。また、混合比率の仮目標値が、現在設定されている許容範囲から下限値側又は上限値側に逸脱している場合には、該許容範囲の下限値及び上限値のうち、仮目標値に近い側の境界値を混合比率の目標値として決定する。
【0076】
そして、制御装置70は決定した混合比率の目標値を実現するように混合弁45のステッピングモータを作動させる。この場合、制御装置70は、混合弁45のステッピングモータのステップ数と混合比率との関係を示す相関データを参照しつつ、現在の混合比率に対応するステップ数から目標比率に対応するステップ数までステッピングモータのステップ数を変化させるように該ステッピングモータを作動させる。
【0077】
これにより、混合比率が目標値になるように混合弁45の作動制御が行われる。ひいては、混合比率が許容範囲を逸脱しない範囲内で、混合部44で得られる混合給湯温度が給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致するように、又は、混合給湯温度が給湯設定温度に近づくように温調制御される。なお、混合比率を許容範囲内に収め得る状況では、給湯設定温度と温度センサ49で検出される混合給湯温度の検出値との偏差に応じて(該偏差をゼロに近づけるように)、上記目標値から微調整するようにしてもよい。
【0078】
一方、貯湯タンク11の湯切れ等により、STEP11の判断結果が否定的になる場合(タンク内湯温<給湯設定温度である場合)には、制御装置70は、STEP13において、燃焼式熱源機50による給湯温度の温調制御を実行する。
【0079】
この温調制御では、制御装置70は、温度センサ49で検出される混合給湯温度が、燃焼式熱源機50の燃焼運転時用の所定の目標温度に一致もしくはほぼ一致するように、混合部44における混合比率の仮目標値を決定する。さらに、制御装置70は、混合比率の仮目標値を、
図2に示した処理により現在設定されている許容範囲内に適宜制限することで、混合比率の目標値を決定し、その目標値に応じて混合弁45を制御しつつ、バーナ54の燃焼運転を開始させる。
【0080】
そして、制御装置70は、バーナ54の燃焼運転の開始後、温度センサ57で検出される湯水の温度(熱源機出湯温度)が給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致するように、バーナ54の燃焼量及びバイパス比を制御する。この場合、バーナ54の燃焼量の制御は、図示しない燃料供給装置及び送風機(ファン)の作動制御を通じて行われ、バイパス比の制御は、分配弁56の作動制御を通じて行われる。
【0081】
また、混合給湯温度に関する燃焼運転時用の所定の目標温度は、その温度に温調制御された湯水を燃焼式熱源機50に供給しつつ、バーナ54の燃焼運転を最小燃焼量で行ったと仮定した場合に、熱源機出湯温度が給湯設定温度を超えないように決定される。該所定の目標温度は、例えば、温度センサ46で検出されるタンク内湯温(貯湯タンク11からの湯水の出湯温度)、温度センサ37で検出される給水温度、流量センサ36,48で検出される流量の総和の流量、給湯設定温度等から所定の演算式やマップ等を用いて決定される。
【0082】
そして、混合給湯温度を上記所定の目標温度に一致もしくはほぼ一致させるための混合比率の仮目標値が前記式(1)により決定される。この場合、混合給湯温度の目標値として、上記の燃焼運転時用の目標温度が用いられる。そして、混合比率の仮目標値と、該混合比率の許容範囲とから混合比率の目標値を決定する処理と、該混合比率の目標値に応じた混合弁45の制御とが、STEP12と同様に行われる。
【0083】
これにより、混合比率が目標値になるように混合弁45の作動制御が行われる。ひいては、混合比率が許容範囲を逸脱しない範囲内で、混合部44で得られる混合給湯温度が燃焼運転時用の目標温度に一致もしくはほぼ一致するように、又は該燃焼運転時用の目標温度に近づくように温調制御される。そして、燃焼式熱源機50のバーナ54の燃焼量及びバイパス比の制御によって、熱源機出湯温度が給湯設定温度に一致もしくはほぼ一致するように温調制御される。
【0084】
次に、給湯対象部への給湯の停止中における作動を説明する。本実施形態は、給湯対象部への給湯の開始後、混合部44での混合比率を速やかに所要の目標値(前記STEP12又は13で決定される目標値)に制御できるようにするために、制御装置70は、給湯の停止中においても、混合比率を調整するように混合弁45の作動制御を行う。この作動制御の処理は、
図5のフローチャートに示す如く行われる。
【0085】
STEP21において、制御装置70は、貯湯タンク11が湯切れ状態であるか否かを判断することを逐次実行する。この判断結果が否定的である場合(湯切れ状態でない場合)には、制御装置70はSTEP22において、混合給湯温度の目標値として給湯設定温度を設定する。
【0086】
また、STEP21の判断結果が肯定的である場合(湯切れ状態である場合)には、制御装置70はSTEP23において、混合給湯温度の目標値として、燃焼運転時用の目標温度を設定する。ただし、この場合の燃焼運転時用の目標温度は、前回の燃焼給湯(燃焼式熱源機50のバーナ54の燃焼運転を行いながらの給湯)の終了直前に決定された目標温度(前記STEP13の温調制御で決定された燃焼運転時用の目標温度)である。
【0087】
STEP22又は23の処理に続くSTEP24において、制御装置70は、上記の如く決定した混合給湯温度の目標値と、タンク内湯温の検出値と、給水温度の検出値と、
図2に示した処理により現在設定されている許容範囲とから、該許容範囲内で混合比率の目標値を決定する。
【0088】
具体的には、制御装置70は、まず、混合給湯温度の目標値と、タンク内湯温の検出値と、給水温度の検出値とから、前記式(1)の演算により、混合部44での混合比率の仮目標値を決定する。この場合、給湯の停止中であるので。タンク湯温の検出値としては、第1給湯路41の温度センサ46で検出される温度と、貯湯タンク11の側面の上部の温度センサ12aで検出される温度とのうちの高い方の温度の検出値が用いられる。また、給水温度の検出値としては、温度センサ37で検出される温度が用いられる。
【0089】
そして、制御装置70は、混合比率の仮目標値と、該混合比率の現在の許容範囲とから、該許容範囲内で混合比率の目標値を決定する処理を、STEP12と同様に行う。
【0090】
次いで、制御装置70は、STEP25において、混合弁45のステッピングモータのステップ数と、混合比率との関係を示す相関データを参照しつつ、ステッピングモータのステップ数に対応する混合比率とSTEP24で決定した目標値との差の絶対値が所定の閾値th以下の範囲内に収まるまで、ステッピングモータのステップ数を変化させる。これにより、混合部44での混合比率が目標値に一致もしくはほぼ一致するように制御される。以後、STEP21からの処理が繰り返される。
【0091】
本実施形態では、以上説明した如く、給湯対象部への給湯時に、混合比率が許容範囲を逸脱しないように(許容範囲の下限値を下回ることがないように)制御されるので、混合部から下流側に流れる湯水の全流量のうち、タンク出湯湯水の流量が多くなりすぎる(給水流量が少なくなりすぎる)のを適切に防止できる。
【0092】
また、混合比率の下限値は、タンク内湯温が高いほど、大きくなるように設定されるので、タンク内湯温が第1閾値温度Tth1よりもさほど高くない状況で、混合部から下流側に流れる湯水の全流量のうちのタンク出湯湯水の流量の比率の上限値を過剰に少なめに制限してしまうのを防止することができる。ひいては、混合部から下流側に供給される湯水の温度の制御範囲が過剰に狭くなるのを防止することができる。
【0093】
また、給湯の停止中において、前記した如く混合弁45の作動制御が行われるので、給湯の停止中におけるタンク内湯温の変化や、給湯設定温度の変更の有無によらずに、給湯対象部への給湯の開始直前における混合弁45の作動状態(ステッピングモータのステップ数)は、給湯の開始時に要求される混合比率に対応する作動状態に一致もしくはほぼ一致する作動状態になる。
【0094】
このため、給湯対象部への給湯の開始直後から速やかに混合比率を目標値に制御することができる。ひいては、混合部44から下流側に供給される湯水の温度を、給湯の開始直後から速やかに、給湯対象部に給湯設定温度の湯水を供給する上で適切な目標温度に制御し、あるいは、過剰に高い温度にならないようにすることができる。
【0095】
また、給湯の停止中に、混合比率の目標値を決定するために用いるタンク内湯温の検出値として、温度センサ46,12aで検出される温度のうちの高い方の温度を用いることで、給湯の開始直後に混合部44で得られる混合給湯温度が、目標温度よりも高い温度になってしまうのを、極力回避することができる。
【0096】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を
図6を参照して説明する。なお、本実施形態は、混合比率の許容範囲の設定処理だけが第1実施形態と相違するものであるので、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0097】
本実施形態では、制御装置70は、貯湯式給湯システム1のON状態において、
図6のフローチャートで示す処理により混合比率の許容範囲を逐次設定する。STEP31において、制御装置70は、タンク内湯温の検出値と、給水温度の検出値とを取得する。この場合、タンク内湯温の検出値は、第1実施形態と同様に、給湯対象部への給湯中においては、第1給湯路41の温度センサ46で検出される温度、給湯の停止中においては、第1給湯路41の温度センサ46で検出される温度と、貯湯タンク11の側面の上部の温度センサ12aで検出される温度とのうちの高い方の温度である。また、給水温度の検出値は、上流給水路31の温度センサ37で検出される温度である。
【0098】
次いで、STEP32において、制御装置70は、タンク内湯温の検出値と、給水温度の検出値とから、混合給湯温度を、所定温度以下の温度、例えば前記第1閾値温度Tth1(55℃)以下の温度にさせ得るように混合比率の許容範囲の下限値RLを算出する。この場合、該下限値RLは、次式(2)により算出される。
混合比率の許容範囲の下限値RL
=(タンク内湯温-Tth1)/(タンク内湯温-給水温度)……(2)
【0099】
さらに、STEP33において、制御装置70は、STEP32で求めた混合比率の許容範囲の下限値を、混合弁45のステッピングモータのステップ数と混合比率との間の関係を表す相関データを用いて、ステッピングモータのステップ数の許容範囲の下限値SLに換算する。なお、混合比率の許容範囲の下限値RL、あるいは、ステップ数の許容範囲の下限値SLは、例えば、タンク内湯温の検出値と給水温度の検出値とからマップ等を用いて決定してもよい。
【0100】
そして、制御装置70は、STEP34において、混合弁45のステッピングモータのステップ数の許容範囲をSL~2600の範囲に設定する。この許容範囲は、混合比率に換算すると、RL~100%である。
【0101】
本実施形態では、制御装置70は、以上の如く、混合弁45のステッピングモータのステップ数の許容範囲を設定する処理(換言すれば、混合比率の許容範囲を設定する処理)を貯湯式給湯システム1のON状態で逐次実行する。従って、混合弁45のステッピングモータのステップ数の許容範囲の下限値RLは、タンク内湯温の検出値及び給水温度の検出値の関数値として設定される。
【0102】
本実施形態では、以上説明した事項以外は、第1実施形態と同じである。かかる本実施形態では、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。加えて、本実施形態では、混合比率の許容範囲の下限値(あるいはステップ数の許容範囲の下限値)がタンク内湯温の検出値及び給水温度の検出値の関数値として逐次設定されるので、タンク内湯温や給水温度の変化によらずに、混合部44で得られる湯水の温度が高くなりすぎるのを防止する上で、好適な混合比率の許容範囲の下限値を設定することができる。
【0103】
なお、本発明は以上説明した第1実施形態及び第2実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することもできる。以下に他の実施形態をいくつか例示する。前記各実施形態では、給湯回路40は、給湯対象部への給湯時に、給湯対象部に供給される湯水が常に、燃焼式熱源機50を経由するように構成されているが、湯水を第2給湯路42から燃焼式熱源機50をバイパスさせて第3給湯路43に流すバイパス流路を備えていてもよい。
【0104】
また、前記第1実施形態及び第2実施形態では、給湯対象部への給湯の停止中に、基本的には、前記式(1)に基づいて、混合比率の目標値を決定して該混合比率を制御するようにしたが、例えば、温度センサ46及び温度センサ12aでそれぞれ検出される温度のうちの高い方の温度が高いほど、混合比率を大きくするように、当該高い方の温度だけに応じて決定した目標値に混合比率を制御してもよい。
【0105】
例えば、給湯対象部への給湯の停止中に、
図2の処理により設定した許容範囲の下限値を混合比率の目標値として決定し、その目標値に混合比率を制御してもよい。このようにした場合でも、給湯開始直後に混合部44で得られる湯水の温度が過剰に高温になるのを防止することができる。なお、この場合、給湯対象部への給湯の停止中における混合比率の目標値の種類は、2種類以上の任意の種類数を採用し得る。
【0106】
また、前記第1実施形態及び第2実施形態では、給湯対象部への給湯中に得られるタンク内湯温(=温度センサ46による検出値)と、給湯対象部への給湯の停止中に得られれるタンク内湯温(温度センサ46,12aのそれぞれの検出値のうち高い方の検出値)を、混合部44での混合比率の制御(混合弁45の作動制御)に用いる場合を主用例として説明したが、給湯対象部への給湯中や給湯の停止中に得られるタンク内湯温度の使用例は、上記の例に限られない。
【0107】
例えば、給湯中に得られるタンク内湯温(=温度センサ46による検出値)は、貯湯タンク11が湯切れ状態になったか否かを判定するための参照パラメータとして使用したり、貯湯タンク11からの出湯温度の異常(過剰な高温)の発生の検知、第1給湯路41の流量センサ48の異常(通電線の断線等)の発生の検知、第1給湯路41の逆止弁47の異常(閉弁故障等)の検知等のための参照パラメータとして使用し得る。
【0108】
例えば逆止弁47の異常の発生の検知に関しては、燃焼式熱源機50の燃焼運転を行うことなく混合部44から給湯対象部への給湯を行っている状態で、混合弁45が混合比率が所定値以下となる状態に動作しており、且つ、温度センサ49で検出される混合給湯温度が、温度センサ46で検出されるタンク湯温と、温度センサ37で検出される給水温度との平均値の温度(=(タンク内湯温+給水温度)/2)よりも小さい温度であり、且つ、流量センサ36で検出される給水流量が所定値(例えば3リットル/分)以上であり、且つ、流量センサ48で検出されるタンク出湯湯水の流量が所定値(例えば1リットル/分)よりも小さいという条件が所定時間(例えば5秒間)、継続した場合に、逆止弁47の閉弁故障(閉弁状態に維持される故障)が発生したことが検知される。
【0109】
また、給湯対象部への給湯の停止中に給湯中に得られるタンク内湯温(=温度センサ46,12aのそれぞれの検出値のうち高い方の検出値)は、例えば、ヒートポンプユニット20による貯湯タンク11内の湯水の沸き上げが完了したか否かを判断するための参照パラメータ、あるいは、給湯開始直後に燃焼式熱源機50の燃焼運転を行うか否かを決定するための参照パラメータとして使用したり、あるいは、貯湯タンク11内の圧力が過剰に高圧になるのを防止するための過圧逃し弁の異常の発生の検知、温度センサ46,12aの異常の発生の検知等のための参照パラメータとして使用し得る。
【0110】
また、前記各実施形態では、本発明における第2温度センサとして、第1給湯路41の上流端部寄りの箇所の組付けられた温度センサ46を備えたが、例えば、貯湯タンク11内の上部に第2温度センサとしての温度センサを備えてもよい。
【0111】
また、前記各実施形態では、貯湯タンク11内の湯水を加熱する加熱装置として、ヒートポンプユニット20を用いたが、該加熱装置は、他の種類の加熱装置であってもよい。例えば、該加熱装置は、燃焼式の加熱装置、あるいは、燃料電池等を熱源として用いる加熱装置等であってもよい。また、前記各実施形態では、燃焼式熱源機50を備える貯湯式給湯システム1を例示したが、本発明における貯湯式給湯システムは、燃焼式熱源機を備えないシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0112】
1…貯湯式給湯システム、11…貯湯タンク、20…ヒートポンプユニット(加熱装置)、44…混合部、70…制御装置、12a…温度センサ(第1温度センサ)、46…温度センサ(第2温度センサ)。