(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180488
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/02 20060101AFI20231214BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A47C7/02 A
A47C7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093844
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 駿介
(72)【発明者】
【氏名】西上 真凪
(72)【発明者】
【氏名】網浦 愛理子
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084GA00
(57)【要約】
【課題】椅子の座に関し、ユーザーが簡単に交換できる技術を提供する。
【解決手段】座4は、合成樹脂製の座インナーシェル13と座クッション体とを有しており、座アウターシェル8,9に取付けられている。座インナーシェル13の後ろ部分13bは、係合爪45と係合枠部46とからなる係合手段によってリア座アウターシェル9に取付けられており、座インナーシェル13の前部分13aは、拡張式プッシュリベット48等のファスナによってフロント座アウターシェル8に取付けられている。フロント座アウターシェル8はその一部がフロント座アウターシェル8の下方に露出しているため、ユーザーは取付け構造を容易に理解できる。係合手段も併用しているため、取付け・取り外しの手間を軽減できる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座、背もたれ、肘当てのうちの少なくとも1つを含む身体支持要素が、着座者の押圧力が掛かるインナーシェルと、前記インナーシェルを支える受け部材とを有し、
前記インナーシェルは、当該インナーシェルを一定方向に移動させて機能させる係合手段と、前記受け部材に対して前記インナーシェルと反対側から挿通されるファスナとにより、前記受け部材に離脱不能に取付けられている、
椅子。
【請求項2】
着座者の押圧力が掛かる座インナーシェルと、前記座インナーシェルを下方から支持する座受け部材とを有し、
前記座インナーシェルは、当該座インナーシェルを後ろ向きに移動させると機能する係合手段と、前記座受け部材に対して下方から挿通されるファスナとにより、前記座受け部材に離脱不能に取付けられている、
椅子。
【請求項3】
前記係合手段として、前記座インナーシェルにおける下面の左右複数箇所に、側面視鉤状の係合爪が突設されて、前記座受け部材に、前記係合爪が下方から嵌合する左右複数の係合バー部を形成している、
請求項2に記載した椅子。
【請求項4】
前記座受け部材のうち前記係合バー部よりも手前の箇所に、前記係合爪が前後移動自在に嵌まるガイド溝を形成している、
請求項3に記載した椅子。
【請求項5】
前記ファスナは、ビス又は拡張式プッシュリベットである、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項6】
前記係合手段は前記座インナーシェル及び座受け部材の後部に配置されて、前記ファスナは前記座インナーシェル及び座受け部材の前部に配置されている、
請求項2又は3に記載した椅子。
【請求項7】
前記座及び座受け部材のうち前記ファスナが貫通する箇所に、互いに嵌合する凸部と凹部とを前記ファスナと同心状に設けている、
請求項6に記載した椅子。
【請求項8】
前記座受け部材は、前記座インナーシェルの全体又は大部分が上から重なる大きさの座アウターシェルである、
請求項2又は3に記載した椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、座や背もたれのような身体支持要素がインナーシェルを備えている椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子の座や背もたれは様々な構造になっているが、インナーシェルにクッション体を重ね配置して、インナーシェルをアウターシェル等の受け部材に固定している構造が多用されている。
【0003】
その例として特許文献1には、上下に開口した枠状のアウターシェル(外殻部材)に、起立片の上端から上板を前向きに突出させた逆L形の被係合部を周方向に複数形成する一方、座インナーシェルには、アウターシェルの被係合部に前から嵌入する連結部を形成した基本構成において、座インナーシェル及びアウターシェルの前部に位置した第1被係合部の手前に第1壁部を立設し、座インナーシェルの第1連結部を鉤状に形成して、第1連結部を弾性変形させて第1壁部に係合させることが開示されている。
【0004】
特許文献1の構成では、座インナーシェルは、後ろ向きに移動させて各連結部を被係合部に嵌め込むことにより、外殻部材に簡単に取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-131711公報(特許第6440310号公報)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、椅子の座は汚れたりクロスが擦り切れたりすることがあり、そこで、ユーザーが座のみを交換したいと欲することがある。或いは、汚損していなくても、異なる色に変更したいと欲する場合もある。
【0007】
これらの場合は、ユーザーが座を取り外して付け替えることになるが、特許文献1の構造では、第1連結部と第1被係合部とは座インナーシェルとアウターシェルとの間に隠れているため、どのようにしたら座インナーシェルを取り外しできるのか、外観からは理解不可能である。
【0008】
この点については、取り扱い説明書に取り外し方を記載しておいたらよいと考えられるが、取り扱い説明書を読んでも第1連結部の係合解除を簡単に行えるとは云い難い。また、取り扱い説明書を紛失したり誤って捨てたりすることがあるが、この場合は、手掛かりが無くなってしまう。
【0009】
本願発明はこのような現状を背景に成されたものであり、座等の身体支持要素を簡単に交換できるユーザーフレンドリーな椅子を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明に係る椅子は、
「座、背もたれ、肘当てのうちの少なくとも1つを含む身体支持要素が、着座者の押圧力が掛かるインナーシェルと、前記インナーシェルを支える受け部材とを有し、
前記インナーシェルは、当該インナーシェルを一定方向に移動させて機能させる係合手段と、前記受け部材に対して前記インナーシェルと反対側から挿通されるファスナとにより、前記受け部材に離脱不能に取付けられている」
という構成になっている。
【0011】
ここに、身体支持要素が座である場合は、座インナーシェルを後ろ向きに移動させて係合手段を機能させるのが合理的で、身体支持要素が背もたれである場合は、背インナーシェルを下向きに移動させて係合手段を機能させるのが合理的である。身体支持要素が肘当てである場合は、肘当ては前後方向に長い姿勢であることが多いため、肘インナーシェルを後ろ向き又は前向きに移動させて係合手段を機能させるのが合理的である。
【0012】
係合手段は、インナーシェルに設けた係合部と座受け部材に設けた被係合部との嵌まり合いや引っ掛かりを内容とするが、係合部と被係合部とは、係合爪と係合バー部との組合せ、係合爪と係合穴との組合せ、係合爪同士の組合せなどの様々な態様を採用できる。座にしても背もたれにしても肘当てにしても、係合手段によってインナーシェルを左右動しない状態に保持するのが好ましい。すなわち、係合手段にガタ付き防止機能を持たせるのが好ましい。
【0013】
請求項2の発明は座に適用している。すなわち、請求項2の発明は、
「着座者の押圧力が掛かる座インナーシェルと、前記座インナーシェルを下方から支持する座受け部材とを有し、
前記座インナーシェルは、当該座インナーシェルを後ろ向きに移動させると機能する係合手段と、前記座受け部材に対して下方から挿通されるファスナとにより、前記座受け部材に離脱不能に取付けられている」
という構成になっている。
【0014】
請求項3の発明は請求項2の発明の展開例であり、
「前記係合手段として、前記座インナーシェルにおける下面の左右複数箇所に、側面視鉤状の係合爪が突設されて、前記座受け部材に、前記係合爪が下方から嵌合する左右複数の係合バー部を形成している」
という構成になっている。
【0015】
請求項4の発明は請求項3の展開例であり、
「前記座受け部材のうち前記係合バー部よりも手前の箇所に、前記係合爪が前後移動自在に嵌まるガイド溝を形成している」
という構成になっている。
【0016】
請求項3,4のように座インナーシェルに鉤形の係合爪を設けた場合、座インナーシェルを座受け部材に重ねた状態で後ろ向きに移動させることによって係合爪を係合バー部に係合させることもできるし、座インナーシェルを少し起こした状態で後退させてから倒すことにより、係合爪を係合バー部に係合させることもできる。
【0017】
請求項5の発明は請求項1又は2の展開例であり、
「前記ファスナは、ビス又は拡張式プッシュリベットである」
という構成になっている。
【0018】
請求項6の発明は請求項2又は3の展開例であり、
「前記係合手段は前記座インナーシェル及び座受け部材の後部に配置されて、前記ファスナは前記座インナーシェル及び座受け部材の前部に配置されている」
という構成になっている。
【0019】
請求項7の発明は請求項6の展開例であり、
「前記座及び座受け部材のうち前記ファスナが貫通する箇所に、互いに嵌合する凸部と凹部とを前記ファスナと同心状に設けている」
という構成になっている。
【0020】
請求項8の発明は請求項2又は3の展開例であり、
「前記座受け部材は、前記座インナーシェルの全体又は大部分が上から重なる大きさの座アウターシェルである」
という構成になっている。
【0021】
請求項2~8の発明は座に具体化しているが、これら請求項2~8で特定した特徴は背もたれや肘当てにも適用できる。すなわち、背もたれの場合は座インナーシェルを背インナーシェルに置き換えて、前後方向を上下方向に変更して後ろ向きを下向きに変更したらよい。肘当ての場合は、座インナーシェルを肘インナーシェルに置き換えて、後ろ向きを「後ろ向き又は前向き」に変更したらよい。
【発明の効果】
【0022】
さて、インナーシェルをファスナのみで受け部材に取り付けていると、インナーシェルの取付け作業及び取り外し作業において、ファスナの回転操作や嵌脱操作に手間がかかる。他方、特許文献1のように部材の弾性を利用した抜け止め構造では、既述のとおり、取付けは簡単であっても取り外しは非常に厄介である。
【0023】
これに対して本願請求項1の発明では、インナーシェルを有する身体支持要素の取付けは、係合手段とファスナとの協働作用によって行われるため、ファスナのみによる取り付けに比べて取付け・取り外しの手間を軽減できる。
【0024】
また、ファスナを取り外すと、身体支持要素は一定方向に移動させることで受け部材から離脱するが、ユーザーが身体支持要素を取り外したいと思ったら、まず、受け部材を裏側から見て取り外しの手掛かりを探すのが普通であり、この行為により、ファスナの一部が目に入る。そこで、ユーザーは、取り扱い説明書を見なくても、身体支持要素の取り外しのためにはファスナを抜き外したらよいことを理解できる。
【0025】
そして、ファスナを抜き外した後は、身体支持要素をいずれかの方向に動かして外そうとするのが普通であり、座の場合であると、上に持ち上げてみたり手前に引いてみたりするが、ファスナの抜き外ずしによって係合手段は解除可能な状態になっているため、ユーザーが力を掛ける方向が一定方向と一致すると、身体支持要素は座受け部材から離脱する。従って、身体支持要素は、ファスナを取り外した後のユーザーの無意識的な操作によって座受け部材から簡単に取り外される。
【0026】
身体支持要素をいったん取り外すと、ユーザーは身体支持要素の取付け構造を理解するため、新しい身体支持要素の取付けはスムースに行える。従って、ユーザーであっても身体支持要素の交換を簡単かつ確実に行える。座や背もたれのみを交換したくて取り外し方が判らないために椅子全体を買い換えることも有り得るが、本願発明では座や背もたれのみ交換を容易に行えるため、資源の有効利用にも貢献できる。
【0027】
特許文献1の場合、インナーシェルを取り外そうとして強引に力を掛けてしまい、インナーシェルやアウターシェルを破損させてしまうことが懸念されるが、本願発明では、取り外しのきっかけとしてのファスナは一目瞭然であると共に、ファスナを抜き外した後はユーザーの自然な動きで身体支持要素が座受け部材から外れるため、身体支持要素や座受け部材を破損させる問題もない。
【0028】
請求項2の発明は座に適用しているが、請求項1と同じ効果が発揮される。また、座受け部材の下面を通常の状態で人目に触れないため、座受け部材の下面にファスナの一部が露出していても、見た目が悪くなることはない。従って、美感を損なうことなく座の交換を容易に行える。
【0029】
また、請求項2の座に関しては、ユーザーは、ファスナを抜き外した後は、座を上に持ち上げるか手前に引くのが普通であり、手前に引くユーザーの自然な操作によって、座インナーシェルを座受け部材から取り外しできる。従って、座を迅速に取り外すことができると共に、座インナーシェルや座受け部材を破損させるような不具合も皆無である。
【0030】
請求項3のように、係合手段を係合爪と係合バー部とで構成すると、係合爪は座インナーシェルの下面に下向き突設できるため、係合手段を無理なく形成できる。従って、設計の自由性は高い。また、係合爪が座インナーシェルの下面から下向きに突出していると、係合爪の視認性がよいため、座インナーシェルを取付けるに際して位置決めを容易に行える利点もある。
【0031】
請求項4のように座受け部材にガイド溝を形成すると、座インナーシェルの位置決めを正確に行えるため、座インナーシェルの取付けを迅速に行える。また、ガイド溝によって係合爪の左右動を規制できるため、座インナーシェルを左右にガタ付かない状態に保持できる利点もある。
【0032】
請求項5ではファスナとしてビス又は拡張式プッシュリベットを採用しているが、いずれにおいても、座インナーシェルは、ファスナの箇所で上向き離反不能及び水平動不能に保持される。そして、ビスは高い締結強度を有しているため、ガタ付き防止機能の点で優れており、他方、拡張式プッシュリベットは、ロッドを押すだけで締結機能を発揮できるため作業性に優れている利点と、ナット等の雌ねじが不要であるため加工コストを抑制できる利点とがある。ビスには、ドリルスクリューやタッピングスクリューも含まれている。
【0033】
係合手段とファスナとの配置態様は任意に選択できるが、請求項6のように係合手段を座インナーシェル及び座受け部材の後部に配置すると、特に係合爪を座インナーシェルに設けた場合に、座インナーシェルを起こした姿勢にして係合爪を視認しながら座受け部材の係合バー部等に係合させることができるため、取り付けを迅速かつ正確に行える利点がある。
【0034】
また、ファスナを取り外した後は、ユーザーは、座インナーシェルを取り外そうとして、座インナーシェルを持ち上げながら手前に引くのが普通であるが、係合爪等の係合手段が後部に配置されていると、ユーザーが採る自然な動きによって座は起きた姿勢で手前に引き動かれて座受け部材から離脱する。従って、座の取り外しも無理なくスムースに行える。
【0035】
請求項7のように、凸部と凹部とを形成して嵌め合わせると、座インナーシェルと座受け部材とは前部において水平動不能に保持されるため、ガタ付きをしっかりと防止できる。つまり、ビスにしても拡張式プッシュリベットにしても、少なくとも座受け部材の取付け穴は挿通の確実性のためファスナとの間に多少のクリアランスを設けることが普通であり、このため、座インナーシェルと座受け部材との間に水平方向の滑りが生じることが懸念されるが、請求項7のように互いに嵌合する凸部と凹部とを設けると、ビスやプッシュリベットの挿通の確実性を損なうことなく、座インナーシェルを座受け部材に対して左右動不能に保持できる。
【0036】
座受け部材は座インナーシェルを支持する機能を有しておればよく、従って、板金製や合成樹脂製のフレーム構造体であってもよいが、請求項8のように座アウターシェルを採用する、座アウターシェルは通常の状態で人目に触れるため、座アウターシェルに美粧機能を持たせて椅子の美感を向上できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】実施形態に係る椅子の外観図であり、(A)は前上方から見た斜視図、(B)は後ろ上方から見た斜視図、(C)は前下方から見た斜視図、(D)は後ろ下方から見た斜視図である。
【
図2】(A)は背もたれと座インナーシェルとを分離した斜視図、(B)は座を分離した斜視図、(C)は部分的な側面図である。
【
図3】座インナーシェルと座アウターシェルとを分離した斜視図である。
【
図4】(A)は座アウターシェルと後部ばね受けとの分離斜視図、(B)は支持機構部の分離斜視図、(C)は背アウターシェルとベースとの関係を示す斜視図である。
【
図5】(A)(B)は座アウターシェルとベースとの関係を示す斜視図、(C)は主として背インナーシェルを後ろから見た斜視図である。
【
図6】(A)は昇降操作機構と傾動ロック機構とを示す斜視図、(B)は支持機構部と背アウターシェルとの関係を示す分離斜視図、(C)はロック機構を中心にした斜視図である。
【
図7】(A)は座部の左右中間部の縦断側面図、(B)の
図3の VII-VII視方向から見た断面図、(C)は(A)の部分拡大図である。
【
図8】(A)は座インナーシェルの取付け手順を示すための分離斜視図、(B)は座インナーシェルを裏側から見た斜視図、(C)は多機能ブラケットを下方から見た斜視図である。
【
図9】(A)は座インナーシェル及び背クッション体を省略した状態での斜視図、(B)は背インナーシェルを分離した斜視図、(C)は部分的な正面図である。
【
図10】(A)は背インナーシェルの平面図、(B)は背インナーシェルを分離した斜視図である。
【
図11】背もたれの別例を示す図で、(A)は斜視図、(B)は背インナーシェルの部分的な正面図、(C)は背インナーシェルを分離した斜視図である。
【
図12】(A)は背インナーシェルを分離した斜視図、(B)は背インナーシェルを裏側から見た部分的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下の説明で方向を示すため「前後」「左右」の文言を使用するが、これらの前後・左右の文言は、椅子に普通の姿勢で着座した人が向いた方向を基準にしている。正面図は着座者と対向した方向から見た状態である。
【0039】
(1).概要
まず、概要を説明する。本実施形態の椅子は、事務用に多用されている回転椅子であり、
図1,2に示すように、椅子は、主要要素として、脚支柱(ガスシリンダ)2及び複数本の脚羽根を有する脚装置1と、脚支柱2の上端に固定したベース3と、ベース3の上方に配置した座4と、ベース3に後傾動自在に連結された背もたれ5を備えている。脚装置1を構成する各脚羽根の先端にはキャスタを設けている。
【0040】
ベース3の下面のうち脚支柱2よりも手前の部位には、肘用ブラケット6を介して肘掛け7が取付けられている。図では肘掛け7は左側に1つしか表示していないが、左右一対取付けられる。肘掛け7はオプション品であり、取付けない場合もある。肘掛け7を取付けない場合は、肘用ブラケット6も取付けない。従って、肘用ブラケット6は肘掛け7を取付けるための専用品である。
【0041】
例えば
図2(A)(C)に示すように、椅子は、座4が上から取り付くフロント座アウターシェル8及びリア座アウターシェル9と、背もたれ5が前から取り付く背アウターシェル10とを備えており、リア座アウターシェル9と背アウターシェル10とは一体化している。また、フロント座アウターシェル8の後端とリア座アウターシェル9の前端とは、
図2(C)に示す左右長手の連結軸11によって相対回動可能に連結されている(詳細は後述する。)。フロント座アウターシェル8及びリア座アウターシェル9は、請求項に記載した受け部材の一例である。
【0042】
図2(A)や
図3に示すように、椅子の支持機構部はリクライニング用弾性支持手段の一例として、前後方向に伸縮するばね(圧縮コイルばね)12を有しており、背もたれ5はばね12に抗して連結軸11を支点にして後傾する。また、背もたれ5の後傾動に連動して座アウターシェル8,9は前進する。
【0043】
また、リア座アウターシェル9は背アウターシェル10と一体化しているため、リア座アウターシェル9は背アウターシェル10と一緒に後傾動するが、フロント座アウターシェル8は後傾せずに前進動のみする。従って、背もたれ5の後傾動に連動して、フロント座アウターシェル8(座4の前部)とリア座アウターシェル9(座4の後部)とが相対回動する。
【0044】
そして、
図2(A)や
図3に示すように、座4を構成する合成樹脂製の座インナーシェル13が、フロント座アウターシェル8に重なる前部分13aとリア座アウターシェル9に重なる後ろ部分13bとを屈曲可能なヒンジ部14で連結していることにより、フロント座アウターシェル8とリア座アウターシェル9との相対回動を許容している。従って、背もたれ5のリクライニング(ロッキング)に際しては、座4は、全体として前進しつつヒンジ部14を支点にして屈曲する。
【0045】
座インナーシェル13のうち前部分13aはフロント座アウターシェル8に取付けられて、後ろ部分13bはリア座アウターシェル9に取付けられる。本実施形態では、この取付け構造に特徴がある。なお、前部分13aと後ろ部分13bとの前後の文言は、2つの部分が前後に分かれているという意味で使用しており、前部分13aと後ろ部分13bとが前後中間部を境にして分離しているという意味ではない(図示の例では、前部分13aの前後幅は、後ろ部分13bの前後幅よりも少し大きくなっている。)。
図1に示すように、背アウターシェル10の上端にオプション品としてのハンガー15を取り付けることができる。
【0046】
(2).支持機構部の詳細
次に、各部位の詳細を説明する。まず、ベース3を中心にした支持機構部を説明する。例えば
図3や
図4(B)(C)、
図6(B)に示すように、ベース3は板金製であって底板と左右側板3aとを有する上向きに開口の箱状の形態であり、前後方向に長い形状である。
図6(B)や
図7(A)に示すように、ベース3の内部にコ字形の補強ブラケット18を介してブッシュ19を固定しており、ブッシュ19に脚支柱2の上端を下方から嵌着している。
図3や
図4(B)(C)等に示すように、ベース3を構成する左右側板3aの上端には、前後方向に長い左右外向きのサイドフランジ3bを設けている。
【0047】
図7(A)に示すように、座4は、既に述べた樹脂製の座インナーシェル(座板)13とその上に配置した座クッション体20とを主要要素としており、座クッション体20はクロスやレザー等の表皮材で覆われている。例えば
図8(B)に示すように、座4のヒンジ部14は、下向きに湾曲したU形の多数の連結片で構成されており、隣り合った連結片の間はスリットになっている。
【0048】
例えば
図2(A)に模式的に示すように、背もたれ5は、合成樹脂製の背インナーシェル(背板)21と、その前面に配置した背クッション体22とを主要要素としており、背クッション体22はクロス等の表皮材で覆われている。背インナーシェル21が既述の背アウターシェル10に取付けられている。
【0049】
既述のとおり、背アウターシェル10の下端にはリア座アウターシェル9が一体に形成されているが、例えば
図6(B)に示すように、リア座アウターシェル9はベース3の左右両側に分離している。従って、リア座アウターシェル9は二股状になっている。
【0050】
そして、左右リア座アウターシェル9の前端に設けた軸受け部に、既述の連結軸11が軸受けを介して掛け渡されている一方、
図4(A)(B)に示すように、フロント座アウターシェル8の後端に、左右に並んだ複数の下向きリブ23が下向きに突設されて、下向きリブ23に、左右の後ろ向き側板24aを有する板金製の平面視コ字形の後部ばね受け24が前から重なっており、後部ばね受け24の側板24aとフロント座アウターシェル8の下向きリブ23とに連結軸11が貫通している。
【0051】
従って、リア座アウターシェル9の前端とフロント座アウターシェル8の後端とが、連結軸11によって相対回動可能に連結されている。
図4(C)から理解できるように、左右のリア座アウターシェル9の内側部9aは、ベース3のサイドフランジ3bに下から重なるようになっている。従って、リア座アウターシェル9は、連結軸11を支点にして下向きには回動するが、上向きには回動しない(背もたれ5は、後傾しても前向きには回動しない。)。
【0052】
例えば
図4(B)に示すように、ばね12の前端は前部ばね受け25によってずれ不能に保持されている。前部ばね受け25はベース3の前壁に設けた穴に嵌着されている。
【0053】
例えば
図5(A)(B)に示すように、ベース3の後端部は斜め上向きに延出した張り出し部3cになっており、張り出し部3cの後端に、左右長手の傾動ガイド軸26をその両端がベース3の外側に露出するようにして固定し、傾動ガイド軸26の露出部に樹脂製のスライダ27を装着している一方、例えば
図6(B)に示すように、背アウターシェル10の下端部に、スライダ27がスライド自在に嵌まる円弧状の傾動ガイド溝28を形成している。
【0054】
従って、背もたれ5は、傾動ガイド溝28にガイドされて後傾及び下降しつつ下端が前進していき、これに連動して座4は前進する。このため、背アウターシェル10の下部は座面よりも下方に入り込んでおり、リクライニングに際して、背アウターシェル10の下部はベース3の下方に入り込んでいく。
図6(B)に示すように、傾動ガイド溝28の前端(下端)には、椅子の組み立てに際してスライダ27の嵌め込みを可能にするための逃がし溝29が連通している。
【0055】
なお、傾動ガイド溝28の下部はリア座アウターシェル9まで延びている。すなわち、傾動ガイド溝28は、リア座アウターシェル9と背アウターシェル10との両方に跨がった状態に形成されている。
【0056】
例えば
図5(B)に示すように、ベース3の上部前端には、左右長手のガイドバー30がその左右両端をベース3の外側に露出させた状態で固定されている。他方、同じく
図5(B)に示すように、フロント座アウターシェル8は角形の開口を有する平面視四角形の枠状に形成されているが、開口31を囲う下向き壁32の左右内側面に、ガイドバー30がスライド自在に嵌まる前後長手のガイド溝33を形成している。フロント座アウターシェル8は浅い皿状の基本形態であり、内部には多数のリブを形成している。
【0057】
従って、フロント座アウターシェル8は、ガイドバー30に支持されて前後動すると共に、ガイドバー30によって上向き移動不能に保持されており、かつ、連結軸11に支持された状態でも前後動する。この場合、連結軸11は、座4のサイドフランジ3bの上面をスライドするが、リア座アウターシェル9がベース3のサイドフランジ3bに下方から近接していることによって連結軸11は上向き移動不能に保持されているため、フロント座アウターシェル8も、全体として上向き離反不能に保持されている。
【0058】
図5(B)に明示するように、フロント座アウターシェル8のガイド溝33の後部には切欠き34を形成しており、切欠き34は、上からフロント座アウターシェル8に装着されるプラグ35で塞がれている。これは、フロント座アウターシェル8の組み付けを可能にするための措置である。
【0059】
すなわち、組み立てに際して、ガイド溝33の前端と連通するように下向き壁32に形成した逃がし溝33aからガイドバー30の左右端部に挿入し、その後、プラグ35で切欠き34を塞ぐことにより、フロント座アウターシェル8の前後スライドを許容している。プラグ35は座インナーシェル13によって上向き動不能に保持されているため、上から嵌め込んだだけで抜け不能に保持される。
【0060】
(3).昇降操作・傾動ロック
図6(B)に示すように、ベース3の内部のうち補強ブラケット18の後ろの部位に、昇降機構用マウント材38をビスで固定し、昇降機構用マウント材38の右側部により、脚支柱2のプッシュバルブを押動する昇降操作レバー39の支軸部39aを回動可能に保持している。そこで、昇降機構用マウント材38の右側部には、昇降操作レバー39の支軸部39aが嵌まる軸受け溝38aが形成されている。
図1(D)に示すように、昇降操作レバー39は、ベース3の下面部に設けた穴から外向き(右向き)に露出している。
【0061】
図6(A)(C)に示すように、昇降機構用マウント材38には、傾動ロック体40の下端部が嵌入しており、傾動ロック体40の下端部は、傾動操作レバー41の基端部によって昇降機構用マウント材38に連結されている。傾動操作レバー41の基端部は傾動ロック体40に対して相対回動不能に嵌入しており、傾動操作レバー41の回動操作によって傾動ロック体40が回動する。
【0062】
傾動ロック体40は、その回動により、背アウターシェル10における下部の内面に固定された多機能ブラケット42に対して当接する傾動ロック姿勢と、多機能ブラケット42に対して当接しないフリー姿勢とに切り替わる(傾動ロック体40が下向きに回動すると、フリー姿勢になる。)。当然ながら、ロック姿勢では背もたれ5は後傾動不能に保持されて、フリー姿勢では背もたれ5は後傾動自在に保持される。
【0063】
(4).座インナーシェルの取付け構造
次に、座インナーシェル13の取付け構造を説明する。
図8に示すように、座インナーシェル13における前部分13aの下面には、フロント座アウターシェル8に載る複数の板状ボス体44を突設している。
【0064】
他方、座インナーシェル13における後ろ部分13bの後端部の下面に、後ろ向きの鉤部45aを有する側面視鉤状(L字状)の係合爪45を下向きに突設している一方、リア座アウターシェル9には、係合爪45の鉤部45aが下方から嵌入する係合枠部46を形成している。
【0065】
係合枠部46は、係合爪45の鉤部45aが係合する(引っ掛かる)係合バー部46aと、係合バー部46aの左右両端に繋がった側枠部46bとを有して平面視コ字形の形態を成している。左右の係合爪45の鉤部45aがそれぞれ左右係合枠部46の内部に下方から嵌入することにより、座インナーシェル13の後ろ部分13bは、リア座アウターシェル9に対して、左右動不能及び前向き移動不能でかつ上向き動不能に保持される。
【0066】
例えば
図8(A)や
図7(B)に示すように、リア座アウターシェル9のうち係合枠部46の手前側には、係合爪45が係合枠部46に嵌入することをガイドするガイド溝47が形成されている。ガイド溝47の底面は、後ろに向けて低くなるように傾斜している。なお、ガイド溝47はリブによって形成されている。
【0067】
従って、座4を(座インナーシェル13を)、その前端とフロント座アウターシェル8との間に間隔が空くようにある程度起こした傾斜姿勢にして係合爪45をガイド溝47に嵌め入れ、嵌め入れきってから座4を倒すと、座インナーシェル13の後ろ部分13bは、左右動不能及び上向き移動不能でかつ後ろ向き移動不能に保持される。
【0068】
そして、例えば
図3に示すように、座インナーシェル13には、その前部のうち左右中間部と左右側部との3か所に上向きに膨れたランド部56が形成されており、ランド部56の箇所が、拡張式プッシュリベット48によってフロント座アウターシェル8に連結されている。
【0069】
そこで、座インナーシェル13の前部に下向きボス部49を形成している一方、フロント座アウターシェル8には、下向きボス部49が上から当接する受け座50を上向きに膨出形成して、受け座50に、下向きボス部49が殆ど隙間無しに嵌入する筒状の上向きボス部51を形成している。下向きボス部49と受け座50には取付け穴52が空いている。
【0070】
拡張式プッシュリベット48は、基端にフランジ53aを設けると共に先割れした外筒53と、外筒53にその基端から嵌め入れたロッド54とを有しており、ロッド54を後退させて外筒53を窄めた状態で、当該外筒53を取付け穴52に下方から挿入し、次いでロッド54を押し込むと、ロッド54の先端部に形成したテーパ面の作用によって外筒53が拡開する。これにより、座インナーシェル13の前部はフロント座アウターシェル8に対して上向き移動不能で水平動不能に保持される。
【0071】
本実施形態では、下向きボス部49は請求項に記載した凸部になって、上向きボス部51は凹部になっている。受け座50を上向きの凸部と成して、座インナーシェル13の前部分13aに、受け座50に外側から密嵌する筒状の凹部を形成することも可能である。
【0072】
拡張式プッシュリベット48を構成するロッド54の基端にもフランジ54aを設けており、ロッド54を押し込むと2つのフランジ53a,54aが重なるが、ロッド54の基端にもフランジ54aは外筒53のフランジ53aよりもやや小径であると共に、外筒53のフランジ53aには、ロッド54のフランジ54aに爪先等を引っ掛けできるようにするための逃がし溝55を形成している。
【0073】
従って、座4を交換するに際しては、ロッド54を後退させて拡張式プッシュリベット48を抜き外したらよい。受け座50は下向きに開口した凹所になっているが、凹所は、人が爪先をロッド54のフランジ54aに引っ掛けできる程度の大きさに設定している。ロッド54の後退は、ピンセットのような引っ掛け具を使用して行うことも可能である。
【0074】
拡張式プッシュリベット48は様々な構造のものを使用できる。例えば、ロッドとしてフランジを備えておらずに軸の中途部にくびれ部を有するタイプを使用して、ロッドをその後端面が外筒の後端面と略同一面を成す状態まで押し込むと、外筒の拡張部が拡開して取付け穴52から抜け不能に保持される一方、ロッドをピン状の部材で更に押し込むと、外筒の拡張部がロッドのくびれ部に嵌入して拡張部の拡開が解除され、これによって外筒及びロッドを取付け穴52から抜き外し可能になるタイプを使用できる。弾性変形して窄まる拡張部を予め複数設けている1パーツ方式のものも使用可能である。
【0075】
(5).座の取付けに関する纏め
本実施形態では、座4の取付けは、当該座4を傾斜姿勢にして係合爪45を係合枠部46に嵌め込んでから倒し、次いで、3本の拡張式プッシュリベット48を下向きボス部49と受け座50の取付け穴52に押し込む、という単純な作業で行える。従って、座4の取付けを迅速に行える。
【0076】
そして、リア座アウターシェル9において、係合爪45が係合枠部46に対して水平動不能及び上向き動不能に保持されていることと、フロント座アウターシェル8において、下向きボス部49と上向きボス部51とがきっちり嵌合して水平動不能に保持されていることとにより、座4は座アウターシェル8,9に対してガタツキのない状態に保持されている。
【0077】
他方、座4を取り外すに際しては、椅子を裏返すと、3か所の受け座50の箇所において拡張式プッシュリベット48におけるフランジ54a,53aが露出しているため、ユーザーは、ロッド54のフランジ54aを引っ張ったら座4の前部の固定が解除されることを把握できる。
【0078】
そして、拡張式プッシュリベット48を抜き外した後は、座4を上向きに起こしたり手前に引いたりしてみるのが普通であり、すると、係合枠部46に対する係合爪45の係合が解除されて、座4は簡単に取り外される。従って、部材の損傷をもたらすことなく、座4を簡単に取り外すことができる。すなわち、座4の取付け構造について予備知識が全くないユーザーであっても、常識的な作業によって座4を簡単に取り外すことができる。従って、座4の交換を簡単に行える。
【0079】
実施形態のように、リア座アウターシェル9にガイド溝47を形成すると、係合爪45が正確に位置決めされるため、リア座アウターシェル9への取付けを簡単かつ正確に行える。また、係合爪45はリア座アウターシェル9の後端部に設けているため、座4を少し起こした状態にして、係合爪45を視認しつつガイド溝47に嵌め込みできるため、取付け作業を更に容易に行える。
【0080】
(6).背部の構造
次に、背もたれ5及び背アウターシェル10を説明する。
図10(B)に示すように、背インナーシェル21の後面には、上下長手で略全高に亙って延びる左右一対の縦長メインリブ58が形成されており、
図5(C)に示すように、縦長メインリブ58の下部に設けた下向き開口のトンネル部58aに、補強パイプ59の上部59aが下方から挿通されている。
【0081】
補強パイプ59は、上下方向に長い上部59aと、前後方向に長い下部59bと、両者を繋ぐ傾斜部59cとを有しており、下部はリア座アウターシェル9に上から重なって、傾斜部59cは、主として背アウターシェル10の下部に重なっている。そして、多機能ブラケット42に設けたフラップ42aにより、背アウターシェル10から離脱しないように保持されている(多機能ブラケット42によって押さえ固定してもよい。)。
図10(B)から理解できるように、補強パイプ59の下部59bは、係合枠部46の内側に位置している。
【0082】
図10(B)に示すように、左右の縦長メインリブ58は上下に離れた一対の横長リブ60によって連結されており、縦長メインリブ58と横長リブ60とで囲われた内部に、クロスリブ61を設けている。同じく
図10(B)に示すように、背インナーシェル21の後面のうち上部かつ縦長メインリブ58の内側には、左右一対の第1雄形キャッチ62を設けている一方、背アウターシェル10の上部には、第1雄形キャッチ62が上から嵌まる第1雌形キャッチ63を設けている。
【0083】
図10(B)に示すように、背インナーシェル21のうち縦長メインリブ58の外側の部位には、上から順に、第2雄形キャッチ64と第3雄形キャッチ65と第4雄形キャッチ66とが、後ろ向きに突設されている。他方、背アウターシェル10の前面には、第2雄形キャッチ64が上から嵌まる第2雌型キャッチ67と、第3雄形キャッチ65が上から嵌まる第3雌型キャッチ68と、第4雄形キャッチ66が上から嵌まる第4雌型キャッチ69とが前向きに突設されている。
【0084】
各雌型キャッチ63,67~69は、左右間隔が前に向けて狭まるように少なくとも外面が平面視で傾斜している。他方、第1雄形キャッチ62と第2雄形キャッチ64、第4雄形キャッチ66には、左右外向きの係止フラップ70を設けている。このため、第1雄形キャッチ62と第2雄形キャッチ64と第4雄形キャッチ66の箇所で、背インナーシェル21は(背もたれ5は)前向き離反不能に保持されている。背インナーシェル21のトンネル部58aに上から嵌め込むと、下向き動により、各雄型キャッチ62,64~66が雌型キャッチ63,67~69に嵌入する。
【0085】
多機能ブラケット42は合成樹脂製であり、
図6(C)に示すように、背アウターシェル10にビス(図示せず)で固定される基部71と、基部71から下向きに突出していて傾動ロック体40が当接するロック受け部72と、基部71から上向きに突出した囲い枠部73とを有している。
【0086】
図6(B)から理解できるように、円弧状の傾動ガイド溝28は、背アウターシェル10の下部とリア座アウターシェル9とに連続して延びる突条74の内側面に形成されているが、多機能ブラケット42の基部71は突条74の頂面にビスで固定されている。そこで、多機能ブラケット42の基部71にはビス挿通穴が空いていて、突条74の内部に、
図8(C)に示すナット75を装着している。
【0087】
図10(B)に示すように、多機能ブラケット42の囲い枠部73は、左右の側板73aとこれに連続した背板73bとを有しており、背インナーシェル21の下端に左右のアーム状リブ76aを介して設けた下向きフラップ76が、囲い枠部73の背板73bにビス(図示せず)で固定されている。囲い枠部73の背板73bにビスが螺合するタップ穴を形成してもよいし、ナットを装着しておいてもよい。ビスを使用せずに、座4の場合と同様に拡張式プッシュリベット48を使用してもよい。
【0088】
図9(C)に明示するように、背インナーシェル21の下向きフラップ76は背クッション体22の下方に露出している。従って、下向きフラップ76を固定するビス又は拡張式プッシュリベット48も、その頭が背クッション体22の下方に露出している。そこで、ユーザーが背もたれ5の交換するに際しては、ユーザーは、ビス又は拡張式プッシュリベット48を取り外したらよいことを即座に把握できる。
【0089】
そして、ビス又は拡張式プッシュリベット48を抜き取った後は、ユーザーは、背もたれ5を手前に引いたり上に引いたりしてみるのが普通であるため、ユーザーは、取り扱い説明書を読まなくても背もたれ5を簡単に取り外して交換できる。なお、座4を取付けた状態では下向きフラップ76は人目に触れないため、美感を悪化させることはない。
【0090】
(7).背部の構造の別例
図11,12では、背部の別例を示している。この実施形態では、まず、背インナーシェル21の下部に凸形の刳り抜き穴78を形成して、刳り抜き穴78の箇所に、係合爪79を一体に形成している。係合爪79は、弾性変形可能なアーム80と、アーム80の先端に設けた横向きの係合部81と、アーム80の先端から手前に突出した1つのボタン82と、アーム80の前後中途部から左右に突出した戻り防止片83とを有している。
【0091】
他方、背アウターシェル10には、係合爪79の係合部81が下方から係合する左右一対の内向き突起84を設けている。内向き突起84はブラケット85に形成されており、係合爪79の係合部81は、内向き突起84の奥側まで移行しうる。
【0092】
そして、ボタン82を押すと、係合爪79のアーム80が撓み変形して係合部81が内向き突起84の後ろに逃げ移動して、係合部81と内向き突起84との係合が解除されるが、背インナーシェル21に、係合爪79のアーム80が撓み変形すると戻り防止片83が載るストッパ86を設けている。このため、アーム80は撓み変形した状態に保持されて、背もたれ5を上向きに移動させることができる。
【0093】
ブラケット85の前面は、下に向けて手前にずれる傾斜面85aになっている。そして、背インナーシェル21の取付けに際しては、係合部81がブラケット85の傾斜面85aにガイドされて弾性変形していったん前向きに回動し、背インナーシェル21が下降しきると、係合爪79が弾性復元力によって戻り回動することにより、係合部81が内向き突起84の下面部に移行し、これにより、背インナーシェル21は上向き動不能に保持される。
【0094】
以上、本願発明の実施形態を説明したが、本願発明は他にも様々に具体化できる。例えは、本願発明は背もたれにも適用可能である。この場合は、背もたれに対して後ろからファスナを挿通したらよい。係合手段の構造や配置箇所、ファスナの構造や配置箇所などは適宜選択できる。図示の実施形態では、座アウターシェルはフロント座アウターシェルとリア座アウターシェルとに分離していたが、全体として一体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本願発明は、椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0096】
3 ベース
4 座
5 背もたれ
7 肘掛け
8 受け部材を構成するフロント座アウターシェル
9 受け部材を構成するリア座アウターシェル
10 背受け部材の一例としての背アウターシェル
11 連結軸(支軸)
12 リクライニング用ばね
13 座インナーシェル
21 背インナーシェル
45 係合手段を構成する係合爪
46 係合手段を構成する係合枠部
46a 係合バー部
47 ガイド溝
48 ファスナの一例としての拡張式プッシュリベット
49 凸部の例としての下向きボス部
50 受け座
51 凹部の一例としての上向きボス部
52 取付け穴