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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180503
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ヘッドレスト取り付け用ブラケット
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/882 20180101AFI20231214BHJP
   B60N 2/874 20180101ALI20231214BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20231214BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60N2/882
B60N2/874
B60N2/90
A47C7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093864
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】河西 純
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DB13
3B087DC09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シート枕として使用していない時の収納スペースを確保することを不要として、その収納スペース分の車室内のユーティリティの低下を抑制する。
【解決手段】ヘッドレスト取り付け用ブラケット90は、第1のヘッドレスト10が第1のヘッドレストステー12を介して第1のシートバック20に取付けられている第1のシートに、第2のヘッドレストステー42を介して着脱自在に第2のシートバック60に取り付けられている第2のヘッドレスト40を取り付けるためのブラケットであって、第1のヘッドレストステー12を保持可能な第1の保持部71と、第2のヘッドレストステー42を保持可能な第2の保持部81とを有する。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のヘッドレストが第1のヘッドレストステーを介して第1のシートバックに取付けられている第1のシートに、第2のヘッドレストステーを介して着脱自在に第2のシートバックに取り付けられている第2のヘッドレストを取り付けるためのヘッドレスト取り付け用ブラケットであって、
前記第1のヘッドレストステーを保持可能な第1の保持部と、
前記第2のヘッドレストステーを保持可能な第2の保持部とを有する、
ヘッドレスト取り付け用ブラケット。
【請求項2】
前記第1の保持部に保持される前記第1のヘッドレストステーが前記第1のシートバックに取り付けられている状態において、前記第2の保持部に前記第2のヘッドレストステーを保持させることにより、前記第2のヘッドレストが前記第1のシートに保持される、
請求項1に記載のヘッドレスト取り付け用ブラケット。
【請求項3】
前記第1の保持部として形成された前記第1のヘッドレストステーが貫通可能な第1の穴部を有する本体部と、
前記第2の保持部として形成された前記第2のヘッドレストステーが挿通可能な前記第2の穴部を有する展開部と、を有し、
前記本体部に対して前記展開部は折り畳み可能に連結され、
前記展開部が展開された状態においては、前記第1の穴部の軸方向と前記第2の穴部の軸方向が所定の角度を成し、
前記展開部が折り畳まれた状態においては、前記第1の穴部の軸方向と前記第2の穴部の軸方向が平行となり、且つ、前記ヘッドレスト取り付け用ブラケットの厚さと前記本体部の厚さが等しい
請求項1、又は請求項2に記載のヘッドレスト取り付け用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト取り付け用ブラケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、自動車シートのヘッドレストに装着するシート枕であって、その芯材から成る円柱部と平板部とを有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3091897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、乗客の頸部を支え、体に加わる負担を軽減するシート枕を開示している。しかし、シート枕を使用していない時にはシート枕を収納するスペースを確保する必要があり、その収納スペース分の車室内のユーティリティが低下する恐れがある。
【0005】
本開示の目的は、シート枕として使用していない時の収納スペースを確保することが不要となり、その収納スペース分の車室内のユーティリティの低下を抑制するヘッドレスト取り付け用ブラケットの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係るヘッドレスト取り付け用ブラケットは、第1のヘッドレストが第1のヘッドレストステーを介して第1のシートバックに取付けられている第1のシートに、第2のヘッドレストステーを介して着脱自在に第2のシートバックに取り付けられている第2のヘッドレストを取り付けるためのヘッドレスト取り付け用ブラケットであって、第1のヘッドレストステーを保持可能な第1の保持部と、第2のヘッドレストステーを保持可能な第2の保持部とを有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、シート枕として使用していない時の収納スペースを確保することが不要となり、その収納スペース分の車室内のユーティリティの低下を抑制するヘッドレスト取り付け用ブラケットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、5人乗り車両の車室内のシートを左後上方から見た斜視図である。
図2A図2Aは、本実施形態に係るブラケットの一部材ある本体部70の正面図である。
図2B図2Bは、本実施形態に係るブラケットの一部材である本体部70の平面図である。
図2C図2Cは、本実施形態に係るブラケットの一部材である本体部70の側面図である。
図3A図3Aは、本実施形態に係るブラケットの他の一部材である展開部80の正面図である。
図3B図3Bは、本実施形態に係るブラケットの他の一部材である展開部80の平面図である。
図3C図3Cは、本実施形態に係るブラケットの他の一部分である展開部80の側面図である。
図4A図4Aは、図2A図2Cの本体部70に図3A図3Cの展開部80を取り付け、展開部80を折り畳んだ状態のブラケット90を示す斜視図である。
図4B図4Bは、図2A図2Cの本体部70に図3A図3Cの展開部80を取り付け、展開部80を展開した状態のブラケット90を示す斜視図である。
図4C図4Cは、図2A図2Cの本体部70に図3A図3Cの展開部80を取り付け、展開部80を折り畳んだ状態のブラケット90を示す側面図である。
図4D図4Dは、図2A図2Cの本体部70に図3A図3Cの展開部80を取り付け、展開部80を展開した状態のブラケット90を示す側面図である。
図5A図5Aは、前席用ヘッドレストステーに図2A図4Dのブラケット90が取り付けられ、且つブラケット90の展開部80が展開された状態を示す正面図である。
図5B図5Bは、図1の後席用シートバック60から取り外されたヘッドレスト40を、図5Aのブラケット90に取り付ける際のヘッドレスト40の姿勢及び挿入方向を示す斜視図である。
図5C図5Cは、図5Bのヘッドレスト40がブラケット90に取り付けられた状態を右上方から見た斜視図である。
図5D図5Dは、図5Bのヘッドレスト40がブラケット90に取り付けられた状態を右前方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[シート構造]
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るヘッドレスト取り付け用ブラケット(以後、単に「ブラケット」と呼ぶ場合がある。)、当該ブラケットの利用に連携したヘッドレスト高さ調整方法及び乗員支援方法ついて説明する。本発明の実施形態に係るブラケットを説明する前に、図1を参照して、ブラケットを利用可能なシート構造の一例を説明する。図1は、5人乗り車両の車室内のシートを左後上方から見た斜視図である。なお、図1に示す「前」及び「後」は車両の前後方向の前方及び後方を、「右」及び「左」は車両の左右方向の右方及び左方を、「上」及び「下」は車両の上下方向の上方及び下方をそれぞれ示す。図5A及び図5Bについても同様である。なお、以下の説明では、車両の前後方向の前方、後方、車両の左右方向の左方、右方、車両の上下方向の上方、下方を、それぞれ「車両前方」、「車両後方」、「車両左方」、「車両右方」、「車両上方」、「車両下方」と称することとする。また、同一の機能を有する異なる部位に関しては同一の符号を付し、重複する場合はその説明を省略する。
【0010】
本実施形態に係るブラケットは、特に限定はされないが、例えば、図1に示すような自動車等の車室内に配置されたシートに用いられる。車室内のシート構造は、車両の左右方向に離隔して配置された2脚の前席用シート(10、20、30)と、前席用シートよりも車両後方側に配置された1脚の後席用シート(40、50、60)とを含む。前席用シートの各々は、車両後方からの衝突の際に乗員の頭部が後方へ倒れるのを防止する前席用ヘッドレスト10と、前席用ヘッドレスト10がその上端部に取り付けられた前席用シートバック20と、前席用シートバック20の下端部が当該下端部を回転軸として回転可能に取り付けられた前席用シートクッション30とを備える、乗員1名分のシートである。後席用シートは、車両後方からの衝突の際に乗員の頭部が後方へ倒れるのを防止する3つの後席用ヘッドレスト40と、3つの後席用ヘッドレスト40が車両左右方向に離隔して取り付けられた後席用シートバック60と、後席用シートバック60の下端部が取り付けられた後席用シートクッション50とを備える。後席用シートは、車両左右方向に乗員3名分の座席が連続したシートであるため、後席用ヘッドレスト40は座席の数(3名分)だけ用意されているが、シートバック20、シートクッション30はそれぞれ一つの部品として用意されている。
【0011】
ヘッドレスト(10、40)、シートバック(20、60)、シートクッション(30、50)は、特に限定はされないが、例えば、金属製のフレームに樹脂製のクッション材を覆い、さらにその上から樹脂製或いは本革等の表皮材で覆うことで構成してもよい。
【0012】
本実施形態に係るブラケットが利用可能な車室内のシート構造は、図1に示す例に限らず、例えば、車両前後方向に3列以上のシート列が配された構造、又は後席用シートが乗員1名分毎に分離した構造であってもよく、更に、前席用シートが車両左右方向に複数名分の座席が連続したシートであってもよい。
【0013】
図1に示すように、後席用ヘッドレスト40(第2のヘッドレストの一例)は、後席用ヘッドレストステー42(第2のヘッドレストステーの一例)を介して着脱自在に後席用シートバック60(第2のシートバックの一例)に取り付けられている。詳細には、後席用ヘッドレストステー42は後席用ヘッドレスト40に固定され、後席用ヘッドレストステー42がヘッドレストホルダー(図示しない)を介して後席用シートバック60に対して着脱自在に取り付けられている。後席用ヘッドレストステー42とヘッドレストホルダーの取付け位置は調節可能であり、後席用シートクッション50の座面からの後席用ヘッドレスト40の高さは乗員の頭部の位置に合わせて所望の高さに変更することができる。図1では、車両左右方向の中央の後席用ヘッドレスト40の着脱自在な様子を示すが、残りの2つの後席用ヘッドレスト40も、同様にして、後席用ヘッドレストステー42を介して着脱自在に後席用シートバック60に取り付けられている。図1には示さないが、前席用ヘッドレスト10(第1のヘッドレストの一例)は、ヘッドレストステー(第1のヘッドレストステーの一例)を介して着脱自在に前席用シートバック20(第1のシートバックの一例)に取り付けられている。前席用シートクッション30の座面からの前席用ヘッドレスト10の高さは乗員の頭部の位置に合わせて所望の高さに変更することができる。前席用ヘッドレスト10は、更にヘッドレストホルダーを介して着脱自在に前席用シートバック20に取り付けられていてもよい。
【0014】
[ヘッドレスト取り付け用ブラケット]
本実施形態に係るブラケットは、図1に示したシート構造において、前席用シート(10、20、30)に、後席用ヘッドレスト40を取り付けるためのブラケットである。ブラケットは、前席用ヘッドレストステー(第1のヘッドレストステー)を保持可能な第1の保持部と、後席用ヘッドレストステー42(第2のヘッドレストステー)を保持可能な第2の保持部とを有する。これにより、ブラケットを介して、前席用シート(10、20、30)に後席用ヘッドレスト40を取り付けることができ、後席用ヘッドレスト40は、前席用シート(10、20、30)のシート枕として利用可能となる。シート枕として使用していない時、後席用ヘッドレスト40を、元の位置、すなわち後席用シートバック60に取り付けてヘッドレストとして機能させることができる。このため、シート枕として使用していない時の収納スペースを改めて用意する必要がなく、収納スペース分の車室内のユーティリティの低下を抑制することができる。
【0015】
図2A図4Dを参照しながら、本実施形態に係るブラケットの構造及び機構について説明する。本実施形態に係るブラケットは、長手方向の両端部が円弧状72の形状を有する略長方形状の板状部材であり、本体部70と展開部80とを備える。図2A図2Cは、ブラケットの一部材ある本体部70の正面図、平面図、側面図である。図3A図3Cは、ブラケットの他の一部材ある展開部80の正面図、平面図、側面図である。図4A及び図4Cは、図2A図2Cの本体部70に図3A図3Cの展開部80を取り付け、展開部80を折り畳んだ状態のブラケット90を示す斜視図、側面図である。図4B及び図4Dは、図2A図2Cの本体部70に図3A図3Cの展開部80を取り付け、展開部80を展開した状態のブラケット90を示す斜視図、側面図である。
【0016】
図2A図2Cに示すように、本体部70はブラケット全体の輪郭形状を成す外側部材であり、長手方向(X方向)の両端部が円弧状72の形状を有する略長方形状の板状部材である。本体部70は、第1の保持部の一例として、長手方向の両端部の近傍に前席用ヘッドレスト10の前席用ヘッドレストステーが貫通する1対の第1の穴部71を有する。第1の穴部71は、長手方向に対して垂直な方向(Z方向)に本体部70を貫通する1対の円形の穴であり、1対の前席用ヘッドレストステーの間隔又はピッチと同じ間隔又はピッチで本体部70上に形成されている。第1の穴部71の径は、前席用ヘッドレストステーの径以上であればよい。好ましくは、第1の穴部71の径と前席用ヘッドレストステーの径との差が、人間の力で前席用ヘッドレストステーを第1の穴部71に挿入可能な程度の差であること、更に好ましくは、前席用ヘッドレストステーを第1の穴部71に挿入した状態のブラケットが自重によって前席用ヘッドレストステーから脱落しない摩擦力が発生する程度の差である。ブラケットの自重による脱落を防ぐために、第1の穴部71の側面の全体又は一部に、シート状のゴム又はシリコンからなる滑り止め部材が塗布又は接着されていてもよい。
【0017】
本体部70は、折り畳まれた状態の展開部を収納する凹部74を有していてもよい。凹部74aは、1対の第1の穴部71に挟まれた部分に形成された、長手方向(X方向)に延びる直方体形状の窪みであり、直方体の六面のうち、Z方向に向く一側面及びY方向に向く一側面が解放されている。換言すれば、凹部74aは、Z方向に向く他の一側面、Y方向に向く他の一側面、X方向に向かい合う1対の側面を有している。X方向に向かい合う1対の側面のZ方向の端部には、それぞれ円柱状のダボ穴73が形成されている。ダボ穴73には、後述する展開部80の凸部82が挿入されている。
【0018】
図3A図3Cに示すように、展開部80は、その短手方向の一方の端部が円弧状80cの形状を有する、長手方向(X方向)に延びる略直方体形状の板状部材であって、本体部70の凹部74aに収納可能に構成されている。展開部80は、第2の保持部の一例として、その長手方向の両端部に配置された1対の第2の穴部81を有する。第2の穴部81には、後席用ヘッドレストステー42を挿通することができる。第2の穴部81は、長手方向に対して垂直な方向(Z方向)に展開部80を貫通する1対の円形の穴であり、1対の後席用ヘッドレストステー42の間隔又はピッチと同じ間隔又はピッチで展開部80上に形成されている。第2の穴部81の径は、後席用ヘッドレストステー42の径以上であればよい。好ましくは、第2の穴部81の径と後席用ヘッドレストステー42の径との差が、人間の力で後席用ヘッドレストステー42を第2の穴部81に挿入可能な程度の差であること、更に好ましくは、後席用ヘッドレストステー42を第2の穴部81に挿入した状態の後席用ヘッドレストステー42及び後席用ヘッドレスト40が自重によってブラケットから脱落しない摩擦力が発生する程度の差である。後席用ヘッドレストステー42及び後席用ヘッドレスト40の自重による脱落を防ぐために、第2の穴部81の側面の全体又は一部に、シート状のゴム又はシリコンからなる滑り止め部材が塗布又は接着されていてもよい。
【0019】
展開部80は、その長手方向(X方向)に向かい合う1対の側面の各々に配置された円柱状の1対の凸部82を備える。凸部82が図2A図2Cに示した本体部70のダボ穴73と嵌め合うことにより、展開部80は本体部70と連結されている。短手方向の端部に形成された円弧状80cの形状は凸部82を中心とする円形状である。これにより、展開部80は、1対の凸部82を通る直線を回転中心として本体部70に対して回転可能に支持されている。
【0020】
図4A及び図4Cに示すように、展開部80全体を本体部70の凹部74内に収納することで、展開部80を折り畳むことができる。この時、第1の穴部71及び第2の穴部81の向きは、同じ方向(Z方向)に向きている。図4Cに示すように、展開部80の一表面80aは、凹部74の底面74aに対して略平行に対向している。そして、図4B及び図4Dに示すように、展開部80を1対の凸部82を通る直線を回転中心として本体部70に対して回転させることにより、展開部80は本体部70から展開することができる。詳細には、1対の第2の穴部81を含む展開部80の一部分が本体部70の凹部74の外へ展開することができる。展開部80の展開により、第2の穴部81の軸方向は、第1の穴部71の軸方向に対して所定の角度を成す。このような展開部80の折り畳み及び展開の機構により、展開部80を展開した状態においてヘッドレスト取り付け用ブラケットとして機能させつつも、展開部80を折り畳んだ状態においてZ方向(厚さ方向)のブラケットの寸法を短く抑えることができる。「所定の角度」は、ブラケットにより保持された後席用ヘッドレスト40が前席用シート(10、20、30)のシート枕として機能する限りにおいて許容される、90度を含む角度範囲を意味している。
【0021】
[ヘッドレスト(シート枕)の取り付け]
図5A図5Dを参照しながら、本実施形態に係るブラケットを用いて後席用ヘッドレスト40(第2のヘッドレスト)をシート枕として前席用シート(第1のシート)に取り付ける方法について説明する。図5Aは、前席用ヘッドレストステーに図2A図4Dのブラケット90が取り付けられ、且つブラケット90の展開部80が展開された状態を示す正面図である。図5Bは、図1の後席用シートバック60から取り外されたヘッドレスト40を、図5Aのブラケット90に取り付ける際のヘッドレスト40の姿勢及び挿入方向を示す斜視図である。図5Cは、図5Bのヘッドレスト40がブラケット90に取り付けられた状態を右上方から見た斜視図である。図5Dは、図5Bのヘッドレスト40がブラケット90に取り付けられた状態を右前方から見た斜視図である。
【0022】
図5Aに示すように、ブラケット90の本体部70に形成されている1対の第1の穴部71の各々に前席用ヘッドレストステー12が挿通された状態で、前席用ヘッドレストステー12が、ヘッドレストホルダー21を介して前席用シートバック20に対して取り付けられている。ブラケット90の本体部70は、ブラケット90の自重によりヘッドレストホルダー21の上面に当接する。ブラケット90の展開部80は展開している。よって、前席用ヘッドレストステー12の向きに対して、第2の穴部81の向きは略90度を成している。図5Aの例では、第2の穴部81は凡そ車両前方を向いている。勿論、第2の穴部81の向きは、シートクッションに対するシートバックの角度によって変化する。なお、前席用ヘッドレスト10の前席用シートバック20に対する高さは、乗員の頭部の位置に合わせて予め調整されている。
【0023】
図5B及び図5Cに示すように、後席用シートバック60から取り外された後席用ヘッドレスト40のヘッドレストステー42を、車両前方側から展開部80の第2の穴部81に挿通し保持させる。このようにして、第1の保持部を介して保持される前席用ヘッドレストステー12(第1のヘッドレストステー)が前席用シートバック20(第1のシートバック)に取り付けられている状態において、第2の保持部に後席用ヘッドレストステー42(第2のヘッドレストステー)を保持させることにより、後席用ヘッドレスト40(第2のヘッドレスト)が前席用シート(第1のシート)に保持される。このとき、後席用ヘッドレスト40は、前席用シートバック20及び前席用ヘッドレスト10の各シート面を繋ぐ仮想面よりも車両前方へ突出する凸形状を成す。「シート面」とは、前席用シートに着座する乗員の背中及び頭部が当接する前席用シートバック20及び前席用ヘッドレスト10の表面を示す。このようにして、前席用シート(第1のシート)に、後席用ヘッドレスト40(第2のヘッドレスト)を取り付けることができる。よって、例えば、前席用シートバック20を車両後方側へ倒して乗員が休息を取る際に、凸形状を成す後席用ヘッドレスト40が乗員の頸部を支えることができ、乗員の頸部に加わる負担を軽減することができる。すなわち、後席用ヘッドレスト40(第2のヘッドレスト)を、前席用シート(第1のシート)のシート枕として機能させることができる。
【0024】
また、乗員の頸部を支える部材(シート枕)として後席用ヘッドレスト40を利用することができるため、乗員の頸部を支えるための専用の部材を用意する必要がなく、部品点数の増加を抑制することができる。加えて、後席用ヘッドレスト40をシート枕として利用しない、例えば乗員が車両を運転する時等のシート枕を必要としない場合には、後席用ヘッドレスト40を、元の位置、すなわち後席用シートバック60に取り付けてヘッドレストとして機能させることができる。よって、シート枕として使用していない時の収納スペースを改めて用意する必要がなく、収納スペース分の車室内のユーティリティの低下を抑制することができる。例えば、休息時等にシートバックをリクライニング機能によって倒し、シート枕を必要とするときには、後席用ヘッドレスト40(第2のヘッドレスト)を前席用ヘッドレストステー12(第1のヘッドレストステー)にブラケットを介して保持させることができる。この場合には、乗員の頸部が他のヘッドレストに当接して他のヘッドレストが頸部を支え、乗員は安楽姿勢をとることが可能となる。
【0025】
また、ブラケットは、第1の保持部として形成された前席用ヘッドレストステー12が貫通可能な第1の穴部71を有する本体部70と、第2の保持部として形成された後席用ヘッドレストステー42が貫通可能な第2の穴部81を有する展開部80とを有する。本体部70と展開部80は折り畳み可能に連結されている。展開部80が展開された状態においては、第1の穴部71の軸方向と第2の穴部81の軸方向が所定の角度を成し、展開部80が折り畳まれた状態においては、第1の穴部71の軸方向と第2の穴部81の軸方向が平行となり、且つ、ブラケットの厚さ(Z方向の長さ)と本体部70の厚さ(Z方向の長さ)が等しい。展開部80を折り畳んだ状態においては、厚さ方向(Z方向)の寸法を短く抑えることができる。このようにすることで、前席用ヘッドレスト10をより最下点に近い位置まで可動することができる。加えて、休息時と走行時の切り替わりにおけるブラケットの脱着作業を要することがなく、乗員の利便性の向上に繋がる。「平行」には枕として機能することができる角度範囲を含むものとする。
【0026】
本実施形態では、後席用ヘッドレスト40を前席用ヘッドレストステー12にブラケットを介して取れ付けた例を示した。このほかにも、例えば、図2A図4Dに示した構造のブラケットをそのまま用いて、前席用ヘッドレスト10を後席用ヘッドレストステー42に取り付けることもできる。また、前席同士、或いは後席同士の間で、一方のヘッドレストを他方のヘッドレストステーにブラケットを介して取り付けてもよい。この場合、ヘッドレストステーの間隔又はピッチが同じとなるため、1対の第1の穴部71の間隔又はピッチと1対の第2の穴部81の間隔又はピッチも同じになる。この場合、例えば、1対の第1の穴部71の中心と1対の第2の穴部81の中心を、ブラケットの長手方向(X方向)にずらせばよい。
【0027】
他の変形例として、ブラケットは、ダボ穴73と凸部82との嵌合による折り畳み及び展開の機構が無くても構わない。換言すれば、本体部70と展開部80とが展開した状態で一体構造を成していてもよい。この場合、一体構造のブラケットは、約90度を成す第1の穴部71及び第2の穴部81を備えている。
【0028】
本実施形態では5人乗り車両を例として取り上げているが、本発明の適用は5人乗り車両に限定されず、ヘッドレストがヘッドレストステーを介してシートバックに着脱自在に取付けられるシートを2脚以上含む車両に適用することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 前席用ヘッドレスト(第1のヘッドレスト)
12 前席用ヘッドレストステー(第1のヘッドレストステー)
20 前席用シートバック(第1のシートバック)
40 後席用ヘッドレスト(第2のヘッドレスト)
42 後席用ヘッドレストステー(第2のヘッドレストステー)
60 後席用シートバック(第2のシートバック)
70 本体部
71 第1の穴部(第1の保持部)
80 展開部
81 第2の穴部(第2の保持部)
90 ブラケット(ヘッドレスト取り付け用ブラケット)
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D