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特開2023-180507ホットランナー内蔵金型のゲート構造及びホットランナー内蔵金型
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  • 特開-ホットランナー内蔵金型のゲート構造及びホットランナー内蔵金型 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180507
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ホットランナー内蔵金型のゲート構造及びホットランナー内蔵金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/28 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B29C45/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093870
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】390029218
【氏名又は名称】世紀株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123559
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 俊和
(74)【代理人】
【識別番号】100177437
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 英子
(72)【発明者】
【氏名】戸田 寿之
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AM36
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK03
4F202CK06
4F202CK07
(57)【要約】
【課題】バルブピンへの樹脂材料の衝突に起因するウェルドラインの発生や樹脂焼けの発生を防止し、樹脂供給の圧力損失の低減を実現し得るホットランナー内蔵金型のゲート構造、ホットランナー内蔵金型及び射出成形機を提供すること。
【解決手段】Y方向に沿って延び、中空であり、中空内部1cに可動物を有さず、Y方向に沿って樹脂材料6を流動させるプローブ21と、プローブ21の端部近傍に配置され、Y方向と平行に樹脂材料6をプローブ21から外部へと吐出するゲート22と、ゲート22を開閉することにより、樹脂材料6の外部への吐出と遮断とを切り替え可能な開閉部23と、を有し、開閉部23は、ゲート22を開放する開状態と閉鎖する閉状態とに切替え可能なシャッター部材24と、シャッター部材24を開状態と閉状態とに駆動する駆動手段25と、を有する、ホットランナー内蔵金型のゲート構造5。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に沿って延び、中空であり、かつ、その中空内部に可動物を有さず、前記所定方向に沿って樹脂材料を流動させる樹脂流路と、
前記樹脂流路の端部近傍に配置され、前記所定方向と平行に前記樹脂材料を前記樹脂流路から外部へと吐出する吐出口であるゲートと、
前記ゲートを開閉することにより、前記樹脂材料の前記外部への吐出と遮断とを切り替え可能な開閉部と、を有し、
前記開閉部は、
前記ゲートを開放する開状態と閉鎖する閉状態とに切替え可能なシャッター部材と、
前記シャッター部材を前記開状態と前記閉状態とに駆動する駆動手段と、を有する、ホットランナー内蔵金型のゲート構造。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記シャッター部材を前記所定方向に平行な方向に沿って駆動可能であり、
前記シャッター部材を前記樹脂材料が流動する流動方向に向けて駆動したときに前記シャッター部材が前記閉状態を実現し、
前記シャッター部材を前記流動方向と逆方向に向けて駆動したときに前記シャッター部材が前記開状態を実現する、請求項1に記載のホットランナー内蔵金型のゲート構造。
【請求項3】
前記シャッター部材が複数であり、
前記駆動手段により複数の前記シャッター部材が前記流動方向に向けて駆動されるにつれて前記複数のシャッター部材同士が相互に近接しつつ前記ゲート内に挿入され、
前記駆動手段により前記複数のシャッター部材が前記逆方向に駆動されるにつれて前記複数のシャッター部材同士が相互に離間しつつ前記ゲートから抜脱される、請求項2に記載のホットランナー内蔵金型のゲート構造。
【請求項4】
前記複数のシャッター部材は、前記閉状態において互いに密着して前記閉状態を実現し、
前記閉状態において、前記複数のシャッター部材の外形を包絡する包絡形状の少なくとも一部が、前記ゲートの内面形状と一致しており、
前記閉状態において、前記複数のシャッター部材は前記ゲートから前記外部に突出しない形状とされている、請求項3に記載のホットランナー内蔵金型のゲート構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載のホットランナー内蔵金型のゲート構造を備えたホットランナー内蔵金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットランナー内蔵金型のゲート構造及びホットランナー内蔵金型に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックの射出成形技術は、産業の様々な分野で製品や部品の製造手段、造形手段として利用されており、高い精度を要求される分野にまで拡大している。このような射出成形においては、成形機とともに金型が重要な役割を果たしている。
【0003】
近年、省資源化、リサイクル化等、資源をより有効に利用するために、射出成形の分野でも様々な試みがなされている。中でも、樹脂流路を加熱するホットランナー方式の成形方法が広く採用されるようになっている。ホットランナー方式は、ランナーレス方式とも呼ばれる。ホットランナー方式の成形(以下、「ホットランナー成形」ともいう)では、溶融樹脂を金型の内部へ注入するための流路が射出成形用の固定金型(ホットランナー内蔵金型)の内部に位置し、樹脂の溶融状態が維持されるよう加熱されている。そして、ホットランナー成形では、加熱された溶融樹脂が固定金型側の吐出口(ゲート)から固定金型と可動金型との空間(金型内部)へと直接注入される。固定金型内では、スプルー流路やランナー流路内において、樹脂射出後においてもスプルーやランナーが加熱により溶融状態となっているため、従来の成形において副次的に生成されていたような固形状のスプルーやランナーは生成されない(例えば、特許文献1)。スプルーやランナーが生成されないホットランナー成形は、省資源、原価低減の観点から有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-160265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のホットランナー成形では、樹脂材料が流動する中空のプローブ内にバルブピンが配置され、そのバルブピンの上下動によりゲート開閉を実現していた。そして、樹脂材料は、マニホールドを介してプローブ外からプローブ内に横方向に、又は斜め方向に供給されるのが一般的であった。
【0006】
しかしながら、従来の樹脂材料の供給方法では、プローブ内に供給された樹脂材料がバルブピンに衝突し、バルブピンで分岐して回り込むようにして流れつつゲートに向かって流れることとなる。バルブピンに衝突して分岐し、その裏側に回り込んで再び合体する樹脂材料は、その部分でウェルドラインを生じてしまう場合がある。
【0007】
分岐した樹脂材料が合体するバルブピン裏側位置の近傍では、樹脂材料の流速が遅くなり、場合によっては、樹脂材料が滞留する等の状況を生じることもある。このような状況は、熱履歴が重畳を生じ得、樹脂焼けの原因となり得る。また、供給された樹脂材料がバルブピンと衝突すると、樹脂供給の圧力損失の原因ともなり得る。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、バルブピンへの樹脂材料の衝突に起因するウェルドラインの発生や樹脂焼けの発生を防止し、樹脂供給の圧力損失の低減を実現し得るホットランナー内蔵金型のゲート構造及びホットランナー内蔵金型を提供することを例示的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の例示的側面としてのホットランナー内蔵金型のゲート構造は、以下の構成を有する。
【0010】
所定方向に沿って延び、中空であり、かつ、その中空内部に可動物を有さず、前記所定方向に沿って樹脂材料を流動させる樹脂流路と、
前記樹脂流路の端部近傍に配置され、前記所定方向と平行に前記樹脂材料を前記樹脂流路から外部へと吐出する吐出口であるゲートと、
前記ゲートを開閉することにより、前記樹脂材料の前記外部への吐出と遮断とを切り替え可能な開閉部と、を有し、
前記開閉部は、
前記ゲートを開放する開状態と閉鎖する閉状態とに切替え可能なシャッター部材と、
前記シャッター部材を前記開状態と前記閉状態とに駆動する駆動手段と、を有する、ホットランナー内蔵金型のゲート構造。
【0011】
本発明の他の例示的側面としてのホットランナー内蔵金型は、上記のホットランナー内蔵金型のゲート構造を備えている。
【0012】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下添付図面を参照して説明される好ましい実施の形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バルブピンへの樹脂材料の衝突に起因するウェルドラインの発生や樹脂焼けの発生を防止し、樹脂供給の圧力損失の低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る射出成形機に用いられるホットランナー内蔵金型の概略構成図である。
図2図1のホットランナー内蔵金型及びその周辺を拡大して示す概略構成図である。
図3図2のゲート構造におけるゲート近傍の構造断面図であって、(a)はゲートの開状態を示し、(b)はゲート閉状態を示す。
図4図3のシャッター部材の外形図である。
図5】本発明の変形例に係るゲート構造の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[実施形態]
<射出成形機1>
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。図1は、実施形態に係る射出成形機1に用いられるホットランナー内蔵金型の概略構成図である。射出成形機1は、ホットランナー成形を行うためのものである。射出成形機1は、プレス装置2を有しており、固定金型(ホットランナー内蔵金型)3と可動金型4とを取付け可能に構成される。
【0016】
可動金型4は、プレス装置2により固定金型3に対して移動可能である。可動金型4を固定金型3に密着するように移動させて型締めした状態で、両金型内に構成される空隙10(図1参照)に樹脂材料が吐出され、空隙10の形状に応じた樹脂成形が行われるようになっている。プレス装置2は、例えば油圧シリンダーやサーボモーター等のアクチュエータにより構成され、数10t~数100tのプレス圧で型締めを行う。
【0017】
なお、樹脂材料タンク等、射出成形機が有するその他の構成については、公知であるので、図示及び説明を省略する。また、ホットランナー成形における樹脂成形のプロセスについても、本発明に関する部分を下記にて説明するが、その他の部分については公知であるので、説明を省略する。
【0018】
図2は、射出成形機1に取り付けられた固定金型3及びその周辺を示す概略構成図である。図2には、射出成形機1に取り付けられたゲート構造5及び固定金型3が示されている。射出成形機1の供給口1aはブシュ1bを介して固定金型3と接合される。射出成形機1側の図示しない樹脂材料タンクから供給口1aを介して供給された樹脂材料6は固定金型3へと至り、マニホールド7内の中空内部7aを流動してゲート構造5内へと流動する。ゲート構造5内を流動した樹脂材料6は、ゲート(吐出口)22から固定金型3と可動金型4とで構成される空隙10へと射出(吐出)されるようになっている。なお、本明細書においては、射出成形について説明しているので、吐出と射出とを略同義で用いている。
【0019】
<固定金型3>
固定金型3は、可動金型4と型締めされることで、樹脂成形品用の空隙10を構成するものであり、プレス装置2によって射出成形機1に取り付けられる側、すなわちプレス装置2によって可動されない側の金型である。固定金型3は、例えば、取付け板11、スペーサブロック12、バックプレート13、キャビティプレート14を有して構成されている。
【0020】
取付け板11には中空のブシュ1bが取付けられ、供給口1aから供給された樹脂材料6は、ブシュ1bの中空内部1cへと流動する。スペーサブロック12内にはマニホールド7が配置されている。マニホールド7内には、樹脂材料6を流動させるための中空内部7aが形成されており、中空内部7aは、ブシュ1bの中空内部1cと連通している。マニホールド7と接続されてゲート構造5が取り付けられる。ゲート構造5のプローブ(樹脂流路)21は中空であってその中空内部21aは、マニホールド7の中空内部7aと連通している。このように、中空内部1c、7a、21aは相互に連通して樹脂材料6の流路Fを構成し、射出成形機1の供給口1aから供給された樹脂材料6を空隙10へと射出可能に構成されている。
【0021】
<ゲート構造5>
ゲート構造5は、ホットランナー内蔵金型としての固定金型3に用いられるもので、固定金型3又は射出成形機1に取り付けられて使用され、空隙10へ向けての樹脂材料6の射出と遮断とを切り替える機能を有する。ゲート構造5は、プローブ21、ゲート22、開閉部23を有して大略構成される。
【0022】
プローブ21は、中空であり、かつ中空内部21aに例えば、バルブピン等の可動物を有していない。プローブ21は、図2中Y方向(所定方向)に延びるように配置されており、その中空内部21aを流れる樹脂材料6もY方向に沿って流動する。Y方向は、図2中では上下方向として示されており、具体的には、ゲート22から樹脂材料6が射出される方向である。Y方向は、可動金型4のプレス装置2による移動方向と平行であってもよい。
【0023】
マニホールド7側の流路Fからプローブ21側の流路Fへと樹脂材料6が流動する。従前の一般的なバルブシステムでは樹脂材料6の流動方向が変更されるが、本実施形態では、プローブ21の中空内部21aにおいて樹脂材料6が流動方向を変更しない。プローブ21の略最後端部(略最上流部)から中空内部21a内へと樹脂材料6を流動させることができ、プローブ21の延長方向における途中から横方向に又は斜め方向に樹脂材料6を中空内部21aに供給する必要がなくなるので、樹脂材料6の流れが円滑となり、流路における圧力損失の低減を図ることができる。プローブ21の中空内部21aに可動物が存在しないので、樹脂材料6が可動物に衝突することがなく、そのような流動状態に起因するウェルドラインの発生や流動速度低下による樹脂焼けの発生も予防することができる。
【0024】
なお、実施形態のゲート構造5においては、バルブピン等の中空内部21a内の可動物を配置する必要がないので、バルブピンの駆動のために一定の厚さが必要であった取付け板11の厚さを薄くすることができ、固定金型3全体の小型化に寄与することができる。また、バルブピンを配置する必要がないために、マニホールド7の中空内部7a内にバルブピン用の開口孔を形成する必要もなくなる。
【0025】
図3は、ゲート構造5におけるゲート22近傍の構造断面図である。ゲート22は、プローブ21の端部近傍に配置され、Y方向と平行に樹脂材料6をプローブ21の中空内部21aからプローブ21の外部へと吐出する吐出口である。樹脂材料6を、固定金型3と可動金型4とで構成される空隙10へとゲート22から射出することによって、空隙10の形状に応じた樹脂成形品を製造することができる。
【0026】
ゲート22は、典型的には、略円筒形状をしており、その中空内部22aはプローブ21の中空内部21aと連通している。ゲート22の中空内部22aは、典型的には、略円形断面形状を呈している。本実施形態では、後述する2個のシャッター部材24がその中空内部22aに挿抜されることにより、ゲート22の開状態(射出可能状態、図3(a)参照)と閉状態(遮断状態、図3(b)参照)との切替えを可能としている。
【0027】
開閉部23は、シャッター部材24と駆動手段25とを有して構成される。シャッター部材24は、ゲート22の中空内部22aに挿入されることによりゲート22を閉鎖する閉状態を実現する。また、シャッター部材24は、ゲート22の中空内部22aから抜脱されることによりゲート22を開放する開状態を実現する。
【0028】
実施形態では、2個のシャッター部材を使用しているが、個数に限定はなく、1個でもよいし3個以上であってもよい。シャッター部材が複数の場合は、それらが協働して中空内部22aに挿入されて閉状態を実現する。
【0029】
駆動手段25は、シャッター部材24を開状態と閉状態とに駆動するものであり、例えば、モータ、エアシリンダー、油圧シリンダー等のアクチュエータが適用可能である。実施形態では、駆動手段25がシャッター部材24をY方向に平行な方向に沿って駆動可能であり、シャッター部材24を樹脂材料6の流動方向、すなわち下流方向であって図3中下方向に向けて駆動したときにシャッター部材24が閉状態を実現する。シャッター部材24を樹脂材料6の流動方向と逆方向、すなわち上流方向であって図3中上方向に向けて駆動したときにシャッター部材24が開状態を実現する。
【0030】
実施形態では、ゲート機構5は、リンク部材26を更に有しており、シャッター部材24はリンク部材26を介して駆動手段25に連結している。また、2個のシャッター部材24は下流方向に狭まり、上流方向に広がる大略V字形状を呈するガイド部27に沿ってY方向に移動する。そのため、2個のシャッター部材24は、駆動手段25によって流動方向(下流方向)に向けて駆動されるにつれて相互に近接しつつゲート22の中空内部22aへと挿入され、閉状態を実現する。2個のシャッター部材24は、駆動手段25によって流動方向と逆方向(上流方向)に向けて駆動されるにつれて相互に離間しつつゲート22の中空内部22aから抜脱され、開状態を実現する。
【0031】
2個のシャッター部材24は、ガイド部27に沿って相互に近接・離間するようにY方向に移動するので、シャッター部材24は、ガイド部27が呈する大略V字形状に沿って斜めに延びる形状とされていてもよい。その場合、中空内部22aは、斜めに延びる2個のシャッター部材24によって閉状態を実現すべく、上流に向けて拡がり下流に向けて狭まる円錐断面又は円錐台断面を有してもよい。
【0032】
また、駆動手段25は、リンク部材26をY方向に沿って移動させるが、リンク部材26がピン28により駆動手段25に連結されていて、リンク部材26がピン28周りに回転可能(図3中の紙面を含む面内で)とされていてもよい。それにより、リンク部材26に結合したシャッター部材24がガイド部27に沿ったV字形状に移動するのを許容してもよい。また、駆動手段25とリンク部材26との連結部であるピン28が左右方向、すなわちY方向に直交する方向であって、ゲート22の円断面における半径方向にスライド移動可能であってもよい。
【0033】
なお、シャッター部材24は、閉状態においてもゲート22から突出しないような先端形状を有することが好ましい(図4参照)。本実施形態では、2個のシャッター部材24の先端がそれぞれ斜めにカットされた先端面24aを構成し、閉状態の際に、ゲート22の外部側面と先端面24aとが面一となるようになっている。
【0034】
また、閉状態において、2個のシャッター部材24同士が密着するように、相互の対向面24bがカットされて平坦面とされている。もちろん相互の密着性が確保されれば、必ずしも平坦面である必要はなく、一方が凸面で他方が凹面であって閉状態の際に相互に噛み合うようになっていてもよい。これら、先端面24aや対向面24bの形状は、シャッター部材24のゲート22に対する取付け角度、駆動手段25やリンク部材26によるシャッター部材24の移動方向、シャッター部材24の個数等に応じて適宜調整される。
【0035】
このように、ホットランナー用の射出成形機において、バルブピンを廃し、本実施形態で説明したゲート構造を採用して、樹脂材料をプローブの略最上流部から流動方向に沿って流動させることで、バルブピンへの樹脂材料の衝突によるウェルドラインや樹脂焼け等の種々の不具合の発生を防止することができ、樹脂成形品の品質を向上させることができる。
【0036】
バルブピンの廃止により、樹脂供給の圧力損失を低減することができるので、樹脂供給のための動力源の負担を軽減することができ、ひいては装置全体の小型化や低価格化に寄与する。バルブピンの廃止により、マニホールドにバルブピン貫通用の開口孔を形成する必要がなくなり、また、バルブピンの駆動部を取付け板11に設置する必要もなく、取付け板を薄くすることもでき、固定金型側のサイズを小型化することができる。
【0037】
なお、シャッター部材の個数は1個でも複数個でも構わないが、シャッター部材を複数個とすることで、シャッター部材の動作距離を短縮しても同様の性能を発揮することができる。比較的出力やトルクの低い駆動手段を適用することができるので、駆動手段の選択自由度が向上し、装置の小型化や低価格化に寄与する。また、シャッター部材が1個の場合と比較して個々のシャッター部材の動作距離を短縮することができるので、同様の動作時間を実現するための各シャッター部材の動作速度を低速とすることができる。この点も、比較的出力やトルクの低い駆動手段の適用を可能として駆動手段の選択自由度向上に寄与し、また、動作の確実性向上にも寄与する。
【0038】
[変形例]
図5は、変形例に係るゲート構造5の概略構成図である。この変形例において、実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。変形例においては、駆動手段25が固定金型3の側方から挿入されるロッド25aと、ロッド25aの挿抜によりY方向に沿って移動可能なブラケット25bと、ロッド25aを側方向(すなわち、図5の紙面内でY方向に直交する方向)に挿抜可能に駆動するアクチュエータ25cとを有して構成される。ブラケット25bの端部はリンク部材26とピン28により連結されている。
【0039】
アクチュエータ25cによりロッド25aを挿抜することにより、ブラケット25bのY方向に沿った上下移動が可能となり、それによりリンク部材26を介してシャッター部材24が移動し、ゲート22の開状態と閉状態とを実現する。
【0040】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。例えば、本発明は以下の趣旨を含むものとする。
【0041】
(趣旨1)
所定方向に沿って延び、中空であり、かつ、その中空内部に可動物を有さず、前記所定方向に沿って樹脂材料を流動させる樹脂流路と、
前記樹脂流路の端部近傍に配置され、前記所定方向と平行に前記樹脂材料を前記樹脂流路から外部へと吐出する吐出口であるゲートと、
前記ゲートを開閉することにより、前記樹脂材料の前記外部への吐出と遮断とを切り替え可能な開閉部と、を有し、
前記開閉部は、
前記ゲートを開放する開状態と閉鎖する閉状態とに切替え可能なシャッター部材と、
前記シャッター部材を前記開状態と前記閉状態とに駆動する駆動手段と、を有する、ホットランナー内蔵金型のゲート構造。
【0042】
(趣旨2)
前記駆動手段は、
前記シャッター部材を前記所定方向に平行な方向に沿って駆動可能であり、
前記シャッター部材を前記樹脂材料が流動する流動方向に向けて駆動したときに前記シャッター部材が前記閉状態を実現し、
前記シャッター部材を前記流動方向と逆方向に向けて駆動したときに前記シャッター部材が前記開状態を実現してもよい。
【0043】
(趣旨3)
前記シャッター部材が複数であり、
前記駆動手段により複数の前記シャッター部材が前記流動方向に向けて駆動されるにつれて前記複数のシャッター部材同士が相互に近接しつつ前記ゲート内に挿入され、
前記駆動手段により前記複数のシャッター部材が前記逆方向に駆動されるにつれて前記複数のシャッター部材同士が相互に離間しつつ前記ゲートから抜脱されてもよい。
【0044】
(趣旨4)
前記複数のシャッター部材は、前記閉状態において互いに密着して前記閉状態を実現し、
前記閉状態において、前記複数のシャッター部材の外形を包絡する包絡形状の少なくとも一部が、前記ゲートの内面形状と一致しており、
前記閉状態において、前記複数のシャッター部材は前記ゲートから外部に突出しない形状とされていてもよい。
【0045】
(趣旨5)
上記のホットランナー内蔵金型のゲート構造を備えたホットランナー内蔵金型。
【0046】
(趣旨6)
上記のホットランナー内蔵金型のゲート構造を備えた射出成形機。
【符号の説明】
【0047】
F:流路
Y:所定方向
1:射出成形機
1a:供給口
1b:ブシュ
1c:中空内部
2:プレス装置
3:固定金型(ホットランナー内蔵金型)
4:可動金型
5:ゲート構造
6:樹脂材料
7:マニホールド
7a:中空内部
10:空隙
11:取付け板
12:スペーサブロック
13:バックプレート
14:キャビティプレート
21:プローブ(樹脂流路)
21a:中空内部
22:ゲート(吐出口)
22a:中空内部
23:開閉部
24:シャッター部材
24a:先端
24b:対向面
25:駆動手段
25a:ロッド
25b:ブラケット
25c:アクチュエータ
26:リンク部材
27:ガイド部
28:ピン
図1
図2
図3
図4
図5