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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180515
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両盗難判定装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/25 20130101AFI20231214BHJP
   G01C 21/26 20060101ALI20231214BHJP
   G06F 21/32 20130101ALI20231214BHJP
【FI】
B60R25/25
G01C21/26 A
G06F21/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093886
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 太良
(72)【発明者】
【氏名】山根 龍一
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129EE94
2F129EE99
2F129FF12
2F129FF15
2F129FF19
2F129FF80
2F129GG03
2F129GG05
2F129GG06
2F129GG17
(57)【要約】
【課題】車両のユーザーの認証において利便性と防犯性を両立させる。
【解決手段】車両盗難判定装置1は、車両のユーザーの生体情報を取得する生体情報取得部10と、取得された前記ユーザーの第1生体情報と予め登録された生体情報との第1生体情報類似度が第1閾値以上である場合に、前記ユーザーが本人であると判定する判定部30と、前記車両を運転する前記ユーザーの運転特徴を取得する運転特徴取得部20とを備え、前記第1生体情報類似度が前記第1閾値未満である場合に、前記運転特徴取得部により取得された運転特徴と予め登録された運転特徴との運転特徴類似度が所定値以上であれば、前記生体情報取得部が前記ユーザーの第2生体情報を取得し、前記判定部は、前記第2生体情報と前記予め登録された生体情報との第2生体情報類似度が、第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、ユーザーが本人であると判定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のユーザーの生体情報を取得する生体情報取得部と、
取得された前記ユーザーの第1生体情報と予め登録された生体情報との第1生体情報類似度が第1閾値以上である場合に、前記ユーザーが本人であると判定する判定部と、
前記車両を運転する前記ユーザーの運転特徴を取得する運転特徴取得部と
を備え、
前記第1生体情報類似度が前記第1閾値未満である場合に、前記運転特徴取得部により取得された運転特徴と予め登録された運転特徴との運転特徴類似度が所定値以上であれば、前記生体情報取得部が前記ユーザーの第2生体情報を取得し、
前記判定部は、前記第2生体情報と前記予め登録された生体情報との第2生体情報類似度が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、前記ユーザーが本人であると判定する、
車両盗難判定装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記第2生体情報類似度が前記第2閾値未満である場合に、前記ユーザーが、利用可能な前記車両の機能が本人に比べて制限されたゲストユーザーであると判定する、請求項1に記載の車両盗難判定装置。
【請求項3】
前記運転特徴類似度が前記所定値未満である場合に、前記生体情報取得部が前記ユーザーの第3生体情報を取得し、
前記判定部は、前記第3生体情報と前記予め登録された生体情報との第3生体情報類似度が、前記第1閾値よりも小さく前記第2閾値よりも大きい第3閾値以上である場合に、前記ユーザーが、利用可能な前記車両の機能が本人に比べて制限されたゲストユーザーであると判定する、
請求項1又は2に記載の車両盗難判定装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記第3生体情報類似度が前記第3閾値未満である場合に、前記車両が盗難に遭っている可能性があると判定する、請求項3に記載の車両盗難判定装置。
【請求項5】
前記運転特徴類似度が大きい値であるほど前記第2閾値が小さい値に設定される、請求項1又は2に記載の車両盗難判定装置。
【請求項6】
前記予め登録された運転特徴は、本人であると判定された者が運転する前記車両が走行した特定の経路に関するものであり、
前記運転特徴類似度は、前記ユーザーが運転する前記車両が走行する経路と前記特定の経路との類似度である、
請求項1又は2に記載の車両盗難判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両盗難判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両用個人認証システムの構成を、顔画像撮影カメラと、顔認証制御部と、カーナビゲーション制御部とを備える構成とすることが記載されている。顔認証制御部は、顔認証において使用する閾値の大きさを設定する閾値設定部を有しており、カーナビゲーション制御部は、時間情報取得部、車両位置情報取得部、閾値設定条件判定部を有している。そして、閾値設定条件判定部に、時間情報取得部、車両位置情報取得部が取得した時間情報、車両位置情報を、閾値設定条件と比較して、閾値を変更すべき条件に該当するか否かを判定させる。さらに、閾値設定部に、閾値設定条件判定部の判定結果に基づいて、閾値をデフォルト値から変更させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-306191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
顔認証によって防犯性を高めることができるものの、顔認証の判定に用いる閾値を高く設定してしまうと利便性が損なわれてしまう。そのため、特許文献1には、車両の位置情報が所定の位置(例えば、自宅等)である場合に、顔認証判定用の閾値を下げることが記載されている。
【0005】
その一方で、顔認証の際のサンプル情報が写真及び画像等を通じて第三者の手に渡る可能性がある。仮に車両の盗難が上記所定の位置で発生した場合、顔認証の判定に用いる閾値が比較的低くなるために防犯性が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、斯かる状況に鑑み、車両のユーザーの認証において利便性と防犯性を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両盗難判定装置は、車両のユーザーの生体情報を取得する生体情報取得部と、取得された前記ユーザーの第1生体情報と予め登録された生体情報との第1生体情報類似度が第1閾値以上である場合に、前記ユーザーが本人であると判定する判定部と、前記車両を運転する前記ユーザーの運転特徴を取得する運転特徴取得部とを備え、前記第1生体情報類似度が前記第1閾値未満である場合に、前記運転特徴取得部により取得された運転特徴と予め登録された運転特徴との運転特徴類似度が所定値以上であれば、前記生体情報取得部が前記ユーザーの第2生体情報を取得し、前記判定部は、前記第2生体情報と前記予め登録された生体情報との第2生体情報類似度が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、前記ユーザーが本人であると判定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両のユーザーの認証において利便性と防犯性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車載システムの構成例を示すブロック図である。
図2】車両盗難判定装置が行う処理を示すフローチャートである。
図3】車両盗難判定装置のコンピュータハードウェアの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0011】
図1に示すように、車載システムSは、車両盗難判定装置1と、車両盗難判定装置1に接続された前方カメラ2及びドライバーモニターカメラ3とを備えている。車両盗難判定装置1は、生体情報取得部10と運転特徴取得部20と判定部30と制御部40とを備えている。各部が行う処理については後述する。
【0012】
図2に、車両盗難判定装置1が行う処理の流れを示す。
まずステップS11にて、生体情報取得部10は、ドライバーモニターカメラ3が捉えた車両のユーザーの第1顔画像データを取得する。判定部30は、第1顔画像データと、予め登録された本人(当該車両の所有者など当該車両を正当に利用する権利を有する者)の顔画像データとの類似度を算出し、この類似度が第1閾値以上であるかどうかを判定する。この第1閾値は後述する第2閾値及び第3閾値よりも大きい閾値である。算出された類似度が第1閾値以上である場合にステップS12が続いて行われ、さもなければステップS21が続いて行われる。
【0013】
ステップS12にて、判定部30は当該ユーザーが本人であると判定する。続いてステップS13が行われる。
【0014】
ステップS13にて、運転特徴取得部20は、本人であると判定された当該ユーザーの運転特徴(運転の癖)を取得する。
【0015】
運転特徴の取得は以下の処理を含む。
1.高頻度経路の判定
本人であると判定されたユーザーが運転する当該車両が走行する経路のうち、走行頻度が高い順に、例えば上位30%の経路を保存する。上位30%という数値は一例であり、車両に搭載されたナビゲーションシステムの仕様に応じて変更可能である。
2.高頻度経路の道路特徴の読込み
読み込まれる道路特徴の例は以下のとおりである。
・制限速度
・渋滞の発生状況
・道路勾配
・横断歩道、信号機、交差点の有無
・一時停止標識の有無、トンネルの有無
・時間帯、当該道路が存在する国、車線の数、道路の種別、地理的位置
3.前方カメラの情報の読込み
前方カメラ2から得られる情報の例は以下のとおりである。
・先行車との車問距離
・道路信号の状態
・各システムの稼働頻度
・各システムの設定特徴
・その他、前方カメラ2により認識される情報
4.運転特徴の取得
高頻度経路の道路特徴と、前方カメラの惰報と、車両情報(車速、ヨーレイト、車体加速度、ブレーキ有無、アクセル開度変化率等)とを用いて、機械学習を行う。学習済みモデルにより取得される運転特徴の例は以下のとおりである。しかし、あくまでも例であって、DNN(ディープニューラルネットワーク)技術等を利用する場合には特徴の算出も機槭が行うため、運転特徴はこの例に限られない。
・横断歩道前後のアクセル開度変化率及び車速
・交差点右左折時のヨーレイトあるいはヨーレイト変化率
・坂道前後のアクセル開度変化率
・特定区間の平均車速
・交差点前後の車両加速度
・一時停止標識までの距離と車両加速度、車速及び停止位置の分布
・ACC(アダプティブクルーズコントロール)のメインスイッチがオンになってからの、車速設定、アクセルがオフとなるまでの速度等
【0016】
なお、走行頻度の低い経路を走行している際は、本来の運転特徴に対して外乱が多く含まれる可能性があるため、運転特徴を取得しないようにすることができる。また、取得された運転特徴は車載システムに登録されるが、登録された運転特徴は本人にも開示しないとすることができる。
【0017】
ステップS13が完了すると、処理は終了する。
【0018】
前述のとおり、ステップS11にて算出された類似度が第1閾値未満である場合、ステップS21が続いて行われる。ステップS21にて、判定部30は、当該ユーザーがゲストユーザーであると判定する。ゲストユーザーは、利用可能な車両の機能が本人に比べて制限されたユーザーである。続いてステップS22が行われる。
【0019】
ステップS22は、前もってステップS13が少なくとも一回は実行されていることを前提としたステップである。このステップS22にて、運転情報取得部20は、ゲストユーザーであると判定されたユーザーの運転特徴を取得する。そして、判定部30は、運転情報取得部20により取得された、ゲストユーザーであると判定されたユーザーの運転特徴と、ステップS13により取得された、本人であると判定されたユーザーの運転特徴との類似度を算出する。算出された類似度が所定値以上である場合には、当該ユーザーは本人の可能性があるとして、ステップS23が続いて行われ、さもなければステップS31が続いて行われる。
【0020】
ステップS23にて、生体情報取得部10が、ドライバーモニターカメラ3がステップS11よりも後のタイミングで捉えたユーザーの第2顔画像データを取得する。判定部30は、第2顔画像データと、予め登録された本人の顔画像データとの類似度を算出し、この類似度が第2閾値以上であるかどうかを判定する。この第2閾値は、ステップS11における第1閾値よりも小さい閾値である。算出された類似度が第2閾値以上である場合にステップS12が続いて行われ、さもなければステップS32が続いて行われる。
【0021】
このように、ステップS11及びS21により本人ではないと判定されたユーザーの運転特徴が本人の運転特徴と一定程度類似しているとステップS22にて判定され、かつステップS23にてステップS11よりも緩やかな顔認証をパスすると、ステップS12にて当該ユーザーが本人であると判定される。
【0022】
ステップS23における顔認証は、顔全体ではなく、当該ユーザーの目元の画像情報などの顔の部分的な領域のみで実施することができる。例えば、当該ユーザーがマスクを着用したままでもパスできる程度に、ステップS23の顔認証はステップS11の顔認証よりも閾値が低く判定が緩やかである。
【0023】
ステップS22(運転特徴による判定)ののちに、ステップS11とは別にステップS23の顔認証を行うのは、窃盗者の運転特徴が偶然、本人と類似していると判定されてしまう可能性に備えるためである。
【0024】
前述のとおり、ステップS22にて算出された類似度が所定値未満である場合には、ステップS31が続いて行われる。このステップS31にて、生体情報取得部10が、ドライバーモニターカメラ3がステップS11よりも後のタイミングで捉えたユーザーの第3顔画像データを取得する。判定部30は、第3顔画像データと、予め登録された本人の顔画像データとの類似度を算出し、この類似度が第3閾値以上であるかどうかを判定する。第3閾値は、ステップS11における第1閾値よりも小さく、ステップS23における第2閾値よりも大きい閾値である。算出された類似度が第3閾値以上である場合にステップS32が続いて行われ、さもなければステップS41が続いて行われる。
【0025】
このように、ステップS22にて取得された運転特徴が本人のものとは異なると判定された場合であっても、ステップS11とは別の顔認証がステップS31にて行われる。これは、本人の内的な要因(焦り)等で通常とは異なる運転をしている場合と、窃盗者が運転している場合との峻別が技術的になかなか難しいためである。
【0026】
ステップS32にて、判定部30は、当該ユーザーがゲストユーザーであると再び判定する。続いてステップS33が行われる。
【0027】
ステップS33にて、制御部40は、当該ユーザーに対し、車載モニタへのメッセージ表示などにより、登録情報を更新するよう要求する。その後、処理は終了する。
【0028】
前述のとおり、ステップS31にて算出された類似度が第3閾値未満である場合には、ステップS41が続いて行われる。このステップS41にて、制御部40は、当該ユーザーに対し、車載モニタへのメッセージ表示などにより、登録情報を更新するよう要求する。続いてステップS42が行われる。
【0029】
ステップS42にて、判定部30は、当該車両が盗難に遭っている可能性があることを当該ユーザーに対して示唆する。この示唆は、車載モニタへのメッセージ表示などにより行うことができる。続いてステップS43が行われる。
【0030】
ステップS43にて、判定部30は、ステップS42における示唆から一定時間が経過したかどうかを判定する。一定時間が経過したと判定された場合には、ステップS44が続いて行われ、さもなければステップS22が再び行われる。なお、同一のイグニッションサイクルにおいてステップS42が複数回行われた場合、同ステップの第1回目の実行から一定時間が経過したかどうかがステップS43にて判定される。
【0031】
ステップS44にて、判定部30は、車両が盗難状態にあると判定する。続いてステップS45が行われる。
【0032】
ステップS45にて、制御部40は、当該車両の電動ステアリング、ブレーキ機構などに指令を送り、当該車両を強制的に停車させる。続いてステップS46が行われる。
【0033】
ステップS46にて、制御部40は、車両が盗難状態にあり、車両が強制的に停車させられていることを車両の所有者に通知する。この通知は、所有者のメールアドレスへのメール送信などにより行うことができる。その後、処理は終了する。
【0034】
このように、ステップS22(運転特徴による判定)とステップS31(第3閾値を用いた顔認証)とのいずれにおいても本人と判定されなかった場合には、ステップS41(登録情報の更新要求)が行われる。このステップS41により、当該ユーザーに対し、着用していたマスクを外してもらう、一度落ち着いてもらう、などの行為を促すことができる。ステップS42(盗難状態の示唆)から一定時間が経過すると、ステップS44(盗難状態確定)が行われ、ステップS45(車両の強制停車)が行われる。
【0035】
図2の処理において、ユーザーが最終的に本人と判定される場合は以下のとおりである。
・ステップS11(顔認証)にて本人であると認証された場合
・ステップS11(顔認証)では本人であると認証されなかったものの、ステップS22(運転特徴による判定)及びステップS23(顔認証)にて本人であると認証された場合
【0036】
図2の処理において、ユーザーが最終的にゲストユーザーと判定される場合は以下のとおりである。
・ステップS11(顔認証)では本人であると認証されず、ステップS22(運転特徴による判定)にて本人であると認証され、ステップS23(顔認証)にて本人であると認証されなかった場合
・ステップS11(顔認証)及びステップS22(運転特徴による判定)の両ステップにおいて本人であると認証されず、ステップS31(顔認証)にて本人であると認証された場合
【0037】
図2の処理において、車両盗難の可能性があると判定される場合は以下のとおりである。
・ステップS11(顔認証)と、ステップS22(運転特徴による判定)と、ステップS31(顔認証)との計3つのステップのいずれにおいても本人ではないと判定された場合
【0038】
盗難の可能性があると判定された場合には、ステップS41(登録情報の更新要求)にて登録情報の更新をユーザーに喚起する。この登録情報の更新には、顔認証ではなく、パスワードによる本人確認を必要とする。
【0039】
また、登録情報の更新は、地図上の位置情報をもとに以下の条件で行う必要がある。
【0040】
走行中の道路が高速道路あるいは有料道路の場合、ステップS41に係る要求がなされた時点での車両位置から32km以内又は2つ先のPA(パーキングエリア)若しくはSA(サービスエリア)に到達するまでに、登録情報の更新が行われる必要がある。
このような条件下で更新が行われなかった場合、最も近いIC(インターチェンジ)、PA又はSAまで強制自動運転モードに移行し、いずれかのランプに進入後、停車可能な位置、又は駐車可能な位置で停車あるいは駐車が行われる。
また、このとき、車内の情報表示装置に強制自動運転モードに移行したことを表示する。
あるいは、ユーザーが事前に登録しているスマートフォン等のデバイスに対し、車両の現在位置と強制自動運転モードに移行したこととを通知する。
【0041】
走行中の道路が、高速道路及び有料道路のいずれでもない自動車専用道路の場合、ステップS41に係る要求がなされた時点での車両位置から2つ先のICに到達するまでに、登録情報の更新が行われる必要がある。
このような条件下で更新が行われなかった場合、強制自動運転モードに移行し、最も近いICのランプに進入する。ランプウェイ中も自動運転制御は継続し、その後、地図情報から一般道の情報を受信するために、一般道における盗難確定処理(後述)に移行する。
また、このとき、車内の情報表示装置に強制自動運転モードに移行したことを表示する。
あるいは、ユーザーが事前に登録しているスマートフォン等のデバイスに対し、車両の現在位置と強制自動運転モードに移行したこととを通知する。
【0042】
走行中の道路が、自動車専用道路ではなく一般道の場合、一般道の道路種別情報を受信後、最寄りのコンビニエンスストア、又は営業時間内のガソリンスタンドといった店舗に到達するまでに、登録情報の更新が行われる必要がある。店舗に到達するまでの距離と所定距離(ユーザーが予め設定可能な所定距離)との合計距離を走行するまでの間に登録情報の更新が行われる必要があると定めてもよい。
もし、店舗に到達するまでの間あるいは上記合計距離を走行するまでの間に、道路以外の場所に駐停車し、且つ、シフトポジションがパーキングとなった場合、登録情報が更新されるまでシフトレバーをロックすることができる。また、シフトレバーがロックされたことをユーザーの登録デバイスに通知してもよい。
このような条件下で更新が行われなかった場合、最寄りのコンビニエンスストア、又は最寄りの営業時間内のガソリンスタンドまで自動運転制御を行い、駐停車可能な位置で駐車制御を実施する。ただし、上記の施設までの距離が15km以上ある場合は、道路上の駐停車可能なスペースを、車両に搭載された前方カメラにより検出次第、緊急停車する。
また、このとき、車内の情報表示装置に自動運転モードに移行したことを通知する。
あるいは、ユーザーが事前に登録しているスマートフォン等のデバイスに対し、車両の現在位置と自動運転モードに移行したこととを通知する。
【0043】
なお、盗難と確定するまでの距離は、「長距離」、「中距離」、「短距離」と複数設けて、本人が一つを予め選択できるようにしておくことができる。
【0044】
以下、盗難時の制御について補足する。
[走行距離の決め方について]
高速道路のPAはおおむね15km間隔で設置されている。したがって、その間隔2つ分の距離(30km)と安全マージン(2km)との和である32kmを走行可能距離としている。
また、最寄りのPA、SA、ICまで走行可能としないのは、例えば、要登録情報更新の状態になった地点が、PAの入り口(ランプ)の100m手前で、右車線を走行していた場合、PAに入るのは困難あるいは危険である可能性があるためである。したがって、2つ先のPA、SAまで走行可能としている。
最寄りのコンビニエンスストア、ガソリンスタンドまでの距離と安全マージン(2km)との合計距離を走行可能距離としてもよい。
【0045】
[道路種別に応じて分けている理由]
道路種別で分けた理由は、盗難が確定し強制的に停車制御に移るとき、路肩で停車していいかどうかを判断できるようにするためである。緊急であれば高速道路であっても停車して問題ないと考えられる。しかし、例えば、誤判定により盗難が確定し停車制御に移った場合、緊急状態とは考えにくい。そのため、道路種別を取得し、道路種別に応じてユーザーが無理なく安全に停車できる範囲を定めている。
【0046】
図2に示した処理は定期的(例えば5分おき)に行うことができる。
【0047】
以上のような実施形態によれば、以下の効果が得られる。
図2に示した処理が定期的に行われることで、より信頼性を高めることができる。対照的に、イグニッションがオンになったときにのみ顔認証を行う場合には、顔写真等を用いて不正に突破される可能性がある。また、図2に示した処理が定期的に行われることで、最初のタイミングで認証に失敗しても、運転しながら本人確認を行うことができる。
・ただし、これを徹底すると、ユーザーは車内にて常に登録時と同じ顔の状態で運転をしなければならず、登録時と違う状態では、本人認証による恩恵を受けられないことになる。
・顔の状態が登録時の状態と異なっていても、いつも通りの運転をしていれば、運転特徴の判定により、継続的に車両を利用することが可能である。また、顔情報を再登録する必要も無い。
・比較的低い閾値を用いた顔認証のみによる場合、本人ではないにもかかわらず本人と誤って認識してしまう確率(他人受入れ率)が増加するため、盗難防止に使える信頼性ではなくなってしまう。上記実施形態によれば、運転特徴による判定をも地図や前方カメラを使って行うことで、低閾値を用いた顔認証による信頼性の低下に対処している。
・慣れない道では、いつも通りの運転ができない場合が多いため、本人の運転特徴算出から除外することで、より精度の高い特徴抽出をできるようにしている。
・運転特徴は、顔の特徴よりも抽象的な特徴であるため、他者に盗まれにくい鍵として有効である。
【0048】
このように、上記実施形態によれば、車両のユーザーの認証において利便性と防犯性を両立させることができる。
【0049】
[他の形態]
例えば、同一イグニッションサイクル内の過去データを参照するフローを加えてもよい。同一イグニッションサイクル内で、本人として判定されている率が高く、且つ、ステップS23(顔認証)をパスした場合、初めての走行経路や長時間の運転時においては、判定閾値を下げる処理を加えることで、誤判定に伴う煩わしさを軽減できる。
運転特徴の算出は、利用率の高い経路に限られず、本人によって申告された経路において算出してもよい。
ステップS11(顔認証)をパスした場合でも、本人の運転特徴との類似度が比較的低いときには、ユーザーに対し休憩を提案したりするといったシステムも実現できる。
取得された運転特徴と、安全運転とされる運転特徴とを照らし合わせ、ドライビングスコアを算出することもできる。
顔認証の判定の厳しさを細かく分けて、段階的に認証することも可能である。
【0050】
顔認証に限られず、指紋認証、虹彩認証、声紋認証などその他の生体認証を用いても良い。なお、顔認証は、ドライバーモニタリングカメラが設けられている車両であれば、追加の部品が不要であり(指紋認証は専用部品が必要)、情報取得が容易であり(虹彩認証もカメラから情報を取得するが設置位置の制限が厳しい)、かつ高精度である(一般的に声紋認証よりは高精度とされている)。そのため、顔認証は他の生体認証よりも利点がある。
【0051】
ゲストユーザーと判定された場合、走る、曲がる、止まる、といった車としての基本的機能は利用可能である。本人と判定された場合、車両走行以外のサービス(例えば、各種決裁サービス、各種車両設定の変更(上記実施形態における本人情報の登録を含む)、自動運転機能、充電可能状態への遷移、インターネット利用、ETCカードのロック、カーナビゲーションやスマートフォンの充電といったアクセサリの利用等)も利用可能である。
【0052】
車両所有者の家族による使用などを想定して、本人により予め登録された者は認証によるサービスを利用可能とすることができる。また、(ホテルマン等へ)一時的に貸し出す場合は、一定の走行距離(2km程度)において、盗難判定を行わないモードを設定可能としてもよい。(ディーラー等へ)長期間貸し出す場合は、USBによる解除キーを設定する等して、盗難判定を停止させ、ゲストユーザーとして利用できるようにしてもよい。
【0053】
ユーザーが本人と判定されている際に複数の地点を設定しておき、設定された各地点を決められた順序で通過することで運転特徴の類似度が所定値以上であると判定しても良い。
【0054】
強制停車までの所定距離は、道路情報に基づいて自動で決定されるだけでなく、ユーザー自身が設定できるようにしてもよい。
強制停車する所定の位置とは、道路上ではなく、高速道路などの場合では、IC、PA、SA、一般道の場合では、コンビニエンスストアやガソリンスタンド等が考えられる。これらの位置は、カメラや地図情報により判定される。
所定の位置で停車が行われた際に、ユーザーの端末に車両の位置情報が送信されるようにしてもよい。
【0055】
図3に、車両盗難判定装置1のコンピュータハードウェア構成例を示す。本装置は、CPU351と、インタフェース装置352と、表示装置353と、入力装置354と、ドライブ装置355と、補助記憶装置356と、メモリ装置357とを備えており、これらがバス358により相互に接続されている。
【0056】
本装置の機能を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体359によって提供される。プログラムを記録した記録媒体359がドライブ装置355にセットされると、プログラムが記録媒体359からドライブ装置355を介して補助記憶装置356にインストールされる。あるいは、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体359により行う必要はなく、ネットワーク経由で行うこともできる。補助記憶装置356は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0057】
メモリ装置357は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置356からプログラムを読み出して格納する。CPU351は、メモリ装置357に格納されたプログラムにしたがって車両盗難判定装置の機能を実現する。インタフェース装置352は、ネットワークを通して他のコンピュータに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置353はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置354はキーボード、マウス、及びタッチパネル等である。
【0058】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
車両のユーザーの生体情報を取得する生体情報取得部と、
取得された前記ユーザーの第1生体情報と予め登録された生体情報との第1生体情報類似度が第1閾値以上である場合に、前記ユーザーが本人であると判定する判定部と、
前記車両を運転する前記ユーザーの運転特徴を取得する運転特徴取得部と
を備え、
前記第1生体情報類似度が前記第1閾値未満である場合に、前記運転特徴取得部により取得された運転特徴と予め登録された運転特徴との運転特徴類似度が所定値以上であれば、前記生体情報取得部が前記ユーザーの第2生体情報を取得し、
前記判定部は、前記第2生体情報と前記予め登録された生体情報との第2生体情報類似度が、前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上である場合に、前記ユーザーが本人であると判定する、
車両盗難判定装置。
[効果1]
運転情報は、生体情報と比べると抽象的なものであり、容易に入手されてしまう可能性が低い。
そのため生体情報を用いた第1閾値による認証が失敗したとしても、運転情報の一致度が所定値以上であれば第2閾値を用いて本人再認証判定を行うことで、本人と認証される機会を増やして利便性を高めるとともに生体情報と運転情報の2段階で認証を行うことで防犯性の低下も防止できる。
[付記2]
前記判定部は、前記第2生体情報類似度が前記第2閾値未満である場合に、前記ユーザーが、利用可能な前記車両の機能が本人に比べて制限されたゲストユーザーであると判定する、付記1に記載の車両盗難判定装置。
[効果2]
運転情報の一致度が所定値以上である場合、その後の本人再認証が失敗したとしても、ゲストユーザーとして認証することで利便性を保つことができる。
[付記3]
前記運転特徴類似度が前記所定値未満である場合に、前記生体情報取得部が前記ユーザーの第3生体情報を取得し、
前記判定部は、前記第3生体情報と前記予め登録された生体情報との第3生体情報類似度が、前記第1閾値よりも小さく前記第2閾値よりも大きい第3閾値以上である場合に、前記ユーザーが、利用可能な前記車両の機能が本人に比べて制限されたゲストユーザーであると判定する、
付記1又は2に記載の車両盗難判定装置。
[効果3]
運転情報の一致度が所定値未満であっても、その後の本人再認証が成功した場合、ゲストユーザーとして認証することで利便性を保つことができる。
[付記4]
前記判定部は、前記第3生体情報類似度が前記第3閾値未満である場合に、前記車両が盗難に遭っている可能性があると判定する、付記3に記載の車両盗難判定装置。
[効果4]
生体情報と運転情報の両方で認証が失敗した際に盗難の可能性を判定することで、盗難の可能性を精度良く判定することができ、防犯性を高めることができる。
[付記5]
前記運転特徴類似度が大きい値であるほど前記第2閾値が小さい値に設定される、付記1又は2に記載の車両盗難判定装置。
[効果5]
上記構成とすることで、運転情報の一致度が高い場合は本人再認証がしやすくなるため、利便性を向上させることができる。
[付記6]
前記予め登録された運転特徴は、本人であると判定された者が運転する前記車両が走行した特定の経路に関するものであり、
前記運転特徴類似度は、前記ユーザーが運転する前記車両が走行する経路と前記特定の経路との類似度である、
付記1又は2に記載の車両盗難判定装置。
[効果6]
運転情報として経路情報を用いることで、第三者がサンプルを容易に盗むことができない認証を行うことができ、防犯性を高めることができる。
またユーザーは運転を行っているだけで認証を行うことができるため、特別な認証手順を行う必要がなく、利便性を高めることができる。
【0059】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0060】
S 車載システム
1 車両盗難判定装置
2 前方カメラ
3 ドライバーモニターカメラ
10 生体情報取得部
20 運転特徴取得部
30 判定部
40 制御部
図1
図2
図3