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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180521
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/182 20200101AFI20231214BHJP
   B60G 17/015 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60W30/182
B60G17/015 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093893
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 一二
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰
【テーマコード(参考)】
3D241
3D301
【Fターム(参考)】
3D241BA26
3D241CC18
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DA52Z
3D241DA58Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB10Z
3D241DB14Z
3D241DB16Z
3D241DB32Z
3D241DC46Z
3D241DC49Z
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301EA15
3D301EA19
3D301EA20
3D301EA21
3D301EA22
3D301EA48
3D301EA52
3D301EA54
3D301EA76
3D301EA82
3D301EB07
3D301EB13
3D301EB22
3D301EB43
3D301EC01
3D301EC06
3D301EC59
(57)【要約】
【課題】一例として、路面状況に応じて車両特性に基づいて最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担を軽減すること。
【解決手段】車両制御装置において、車両の進行方向の路面を撮像する撮像装置で撮像された撮像画像から路面状況を解析する解析部と、路面状況と、車載センサによる検知情報に基づく車両特性と、に基づいて、車両の走行に関する制御のレベルを示す制御モードを切り替える切替部と、切り替えられた制御モードで車両を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の進行方向の路面を撮像する撮像装置で撮像された撮像画像から路面状況を解析する解析部と、
前記路面状況と、車載センサによる検知情報に基づく車両特性と、に基づいて、前記車両の走行に関する制御のレベルを示す制御モードを切り替える切替部と、
切り替えられた前記制御モードで前記車両を制御する制御部と、
を備える車両制御装置。
【請求項2】
前記車両特性は、前記車載センサとしての加速度センサで検知された上下加速度、左右加速度または前後加速度、もしくは、前記車載センサとしての車高センサで検知された車両の車高、とに基づく、前記車両のヒーブに関する特性、ロールに関する特性またはピッチに関する特性を含む、
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記解析部は、前記路面状況として、前記路面の起伏状態を、荒い、通常、平坦のいずかに決定し、
前記切替部は、前記路面の起伏状態と前記車両特性と、に基づいて、前記制御モードを、前記レベルとしての制御の強度の異なる複数のモードの間で切り替える、
請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記路面状況と前記車両特性とに対応する前記制御モードは予め定められており、
前記切替部は、前記路面状況と前記車両特性とに対応して定められた前記制御モードに切り替える、
請求項1~3のいずれか一つに記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記車両の走行中において、前記路面状況と前記検知情報を入力して学習し、前記路面状況と前記検知情報に基づく前記車両特性に対して予め定められた制御モードを変更する学習部、をさらに備え、
前記切替部は、変更された前記制御モードに切り替える、
請求項1~3のいずれか一つに記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記切替部は、前記路面状況と前記車両の速度から前記路面の起伏状態の周波数を算出し、算出された前記周波数と前記車両特性とに基づいて、前記制御モードを切り替える、
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記切替部は、さらに、前記路面状況と、前記路面状況により発生する音に基づく前記車両特性とに基づいて、前記制御モードを切り替える、
請求項3に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記車両のサスペンションの減衰力制御を含み、
前記切替部は、さらに、前記路面状況と、前記サスペンションのショックアブソーバのロッドの加速度、または、前記サスペンションのばね上加速度またはばね下加速度、に基づく前記車両特性とに基づいて、前記制御モードを切り替える、
請求項3に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両における乗り心地や操縦安定性等のためのデバイス制御において、運転者や同乗者等の利用者によるスイッチ操作等の手動操作により、コンフォート、ノーマル、スポーツなどの制御モードの切替えを実現することが従来から行われている。また、従来技術では、車両の走行中に、上下加速度センサや車高センサ等の種々の車載センサの検出値に基づいて、車両特性が最適となるように乗り心地や操縦安定性等の各種デバイスの制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-147114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来技術では、制御モードの切り替えを、利用者の視覚や感覚による判断で手動操作によって行われるため、利用者にとって操作が煩雑となり、両者に負担がかかる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の車両制御装置は、車両の進行方向の路面を撮像する撮像装置で撮像された撮像画像から路面状況を解析する解析部と、前記路面状況と、車載センサによる検知情報に基づく車両特性と、に基づいて、前記車両の走行に関する制御のレベルを示す制御モードを切り替える切替部と、切り替えられた前記制御モードで前記車両を制御する制御部と、を備える。当該構成により、一例として、路面状況に応じて車両特性に基づいて最適な制御モードに切り替えることができ、利用者の負担を軽減することができる。また、当該構成により、車両が自動運転車両である場合のように、運転者がおらず、乗車人員が路面状況を把握できない場合でも、路面の起伏状態に応じて車両特性に基づいて最適な制御モードに切替えることができ、乗車人員の便宜となる。
【0006】
また、実施形態の車両制御装置において、前記車両特性は、前記車載センサとしての加速度センサで検知された上下加速度、左右加速度または前後加速度、もしくは、前記車載センサとしての車高センサで検知された車両の車高、とに基づく、前記車両のヒーブに関する特性、ロールに関する特性またはピッチに関する特性を含む。当該構成により、一例として、路面状況に応じて、車両のヒーブ、ロールまたはピッチの特性に基づいて、より最適な制御モードに切り替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0007】
また、実施形態の車両制御装置において、前記解析部は、前記路面状況として、前記路面の起伏状態を、荒い、通常、平坦のいずかに決定し、前記切替部は、前記路面の起伏状態と前記車両特性と、に基づいて、前記制御モードを、前記レベルとしての制御の強度の異なる複数のモードの間で切り替える。当該構成により、一例として、路面の起伏状態に応じて車両特性に基づいて最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0008】
また、実施形態の車両制御装置において、前記路面状況と前記車両特性とに対応する前記制御モードは予め定められており、前記切替部は、前記路面状況と前記車両特性とに対応して定められた前記制御モードに切り替える。当該構成により、一例として、出荷前に予め車両特性を求めておけば、出荷される車両には車両特性を求めるための車載センサを搭載する必要がないので、車両における搭載スペースや車両の製造コストの削減を図ることができる。
【0009】
また、実施形態の車両制御装置において、前記車両の走行中において、前記路面状況と前記検知情報を入力して学習し、前記路面状況と前記検知情報に基づく前記車両特性に対して予め定められた制御モードを変更する学習部、をさらに備え、前記切替部は、変更された前記制御モードに切り替える。当該構成により、一例として、車両の走行中に制御モードの切り替えの閾値の変更を動的に行うことができるので、路面状況に応じて最適な制御モードに切り替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0010】
また、実施形態の車両制御装置において、前記切替部は、前記路面状況と前記車両の速度から前記路面の起伏状態の周波数を算出し、算出された前記周波数と前記車両特性とに基づいて、前記制御モードを切り替える。当該構成により、一例として、路面の起伏状態に応じて車両特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0011】
また、実施形態の車両制御装置において、前記切替部は、さらに、前記路面状況と、前記路面状況により発生する音に基づく前記車両特性とに基づいて、前記制御モードを切り替える。当該構成により、一例として、路面状況の認識をより高精度に行うことができるので、路面状況に応じて車両特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより的確に軽減することができる。
【0012】
また、実施形態の車両制御装置において、前記制御部は、前記車両のサスペンションの減衰力制御を含み、前記切替部は、さらに、前記路面状況と、前記サスペンションのショックアブソーバのロッドの加速度、または、前記サスペンションのばね上加速度またはばね下加速度、に基づく前記車両特性とに基づいて、前記制御モードを切り替える。当該構成により、一例として、路面状況の認識をより高精度に行うことができるので、路面状況に応じて車両特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより的確に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1の実施形態にかかる車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかる車両の例示的な平面図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかる車両が有する車両制御システムの構成の例示的なブロック図である。
図4図4は、第1の実施形態にかかる車両が有するECUの機能構成の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施形態における制御モードで設定される各制御におけるレベルの状態を示す説明図である。
図6図6は、第1の実施形態にかかる車両制御システムによる車両制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7図7は、第2の実施形態にかかる車両が有する車両制御システムの構成の例示的なブロック図である。
図8図8は、第2の実施形態にかかる車両が有するECUの機能構成の一例を示す図である。
図9図9は、第2の実施形態にかかる車両制御システムによる車両制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、第2の実施形態にかかる車両制御システムによる車両制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、および効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0015】
(第1の実施形態)
本実施形態の車両1は、例えば、不図示の内燃機関を駆動源とする自動車、すなわち内燃機関自動車であってもよいし、不図示の電動機を駆動源とする自動車、すなわち電気自動車や燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよいし、他の駆動源を備えた自動車であってもよい。また、車両1は、種々の変速装置を搭載することができるし、内燃機関や電動機を駆動するのに必要な種々の装置、例えばシステムや部品等を搭載することができる。また、車両1における車輪3の駆動に関わる装置の方式や、数、レイアウト等は、種々に設定することができる。
【0016】
図1は、第1の実施形態にかかる車両の車室の一部が透視された状態が示された例示的な斜視図である。図2は、第1の実施形態にかかる車両の例示的な平面図である。図3は、第1の実施形態にかかる車両が有する車両制御システムの構成の例示的なブロック図である。
【0017】
まず、図1図3を用いて、本実施形態にかかる車両1の構成の一例について説明する。
図1に例示されるように、車体2は、不図示の乗員が乗車する車室2aを構成している。車室2a内には、乗員としての運転者の座席2bに臨む状態で、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等が設けられている。
【0018】
操舵部4は、例えば、ダッシュボード24から突出したステアリングホイールである。加速操作部5は、例えば、運転者の足下に位置されたアクセルペダルである。制動操作部6は、例えば、運転者の足下に位置されたブレーキペダルである。変速操作部7は、例えば、センターコンソールから突出したシフトレバーである。なお、操舵部4や、加速操作部5、制動操作部6、変速操作部7等は、これらには限定されない。
【0019】
また、車室2a内には、表示出力部としての表示装置8や、音声出力部としての音声出力装置9が設けられている。表示装置8は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や、OELD(Organic Electroluminescent Display)等である。音声出力装置9は、例えば、スピーカである。また、表示装置8は、例えば、タッチパネル等、透明な操作入力部10で覆われている。乗員は、操作入力部10を介して表示装置8の表示画面に表示される画像を視認することができる。また、乗員は、表示装置8の表示画面に表示される画像に対応した位置で、手指等で操作入力部10を触れたり押したり動かしたりして操作することで、操作入力を実行することができる。
【0020】
これら表示装置8や、音声出力装置9、操作入力部10等は、例えば、ダッシュボード24の車幅方向すなわち左右方向の中央部に位置されたモニタ装置11に設けられている。モニタ装置11は、スイッチや、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタン等の不図示の操作入力部を有することができる。また、モニタ装置11とは異なる車室2a内の他の位置に不図示の音声出力装置を設けることができるし、モニタ装置11の音声出力装置9と他の音声出力装置から、音声を出力することができる。なお、モニタ装置11は、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムと兼用されうる。また、車室2a内には、表示装置8とは別の表示装置12が設けられている。
【0021】
また、図1,2に例示されるように、車両1は、例えば、四輪自動車であり、左右二つの前輪3Fと、左右二つの後輪3Rとを有する。これら四つの車輪3は、いずれも転舵可能に構成されうる。図3に例示されるように、車両1は、少なくとも二つの車輪3を操舵する操舵システム13を有している。
【0022】
操舵システム13は、アクチュエータ13aと、トルクセンサ13bとを有する。操舵システム13は、ECU14(Electronic Control Unit)等によって電気的に制御されて、アクチュエータ13aを動作させる。操舵システム13は、例えば、電動パワーステアリングシステムや、SBW(Steer By Wire)システム等である。操舵システム13は、アクチュエータ13aによって操舵部4にトルク、すなわちアシストトルクを付加して操舵力を補ったり、アクチュエータ13aによって車輪3を転舵したりする。この場合、アクチュエータ13aは、一つの車輪3を転舵してもよいし、複数の車輪3を転舵してもよい。また、トルクセンサ13bは、例えば、運転者が操舵部4に与えるトルクを検出する。
【0023】
また、図2に例示されるように、車体2には、複数の撮像部15として、例えば四つの撮像部15a~15dが設けられている。撮像部15は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCIS(CMOS Image Sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部15は、所定のフレームレートで動画データを出力することができる。撮像部15は、それぞれ、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、水平方向には例えば140°~190°の範囲を撮影することができる。また、撮像部15の光軸は斜め下方に向けて設定されている。よって、撮像部15は、車両1が移動可能な路面や車両1が駐車可能な領域を含む車体2の周辺の外部の環境を逐次撮影し、撮像画像データとして出力する。
【0024】
撮像部15aは、例えば、車体2の後側の端部2eに位置され、リヤトランクのドア2hの下方の壁部に設けられている。撮像部15bは、例えば、車体2の右側の端部2fに位置され、右側のドアミラー2gに設けられている。撮像部15cは、例えば、車体2の前側、すなわち車両前後方向の前方側の端部2cに位置され、フロントバンパー等に設けられている。撮像部15dは、例えば、車体2の左側、すなわち車幅方向の左側の端部2dに位置され、左側の突出部としてのドアミラー2gに設けられている。ECU14は、複数の撮像部15で得られた画像データに基づいて演算処理や画像処理を実行し、より広い視野角の画像を生成したり、車両1を上方から見た仮想的な俯瞰画像を生成したりすることができる。なお、俯瞰画像は、平面画像とも称されることができる。
【0025】
本実施形態では、車体2の前側に設けられた撮像装置としての撮像部15cによって、車両1の進行方向である前方の路面を撮像する。なお、車両1が後進する場合には、車両の1の後方が進行方向となり、撮像部15aが車両1の後方の路面を撮像するように構成してもよい。
【0026】
また、図1,2に例示されるように、車体2には、複数の測距部16,17として、例えば四つの測距部16a~16dと、八つの測距部17a~17hとが設けられている。測距部16,17は、例えば、超音波を発射してその反射波を捉えるソナーである。ソナーは、ソナーセンサ、あるいは超音波探知器とも称されることができる。ECU14は、測距部16,17の検出結果により、車両1の周囲に位置された障害物等の物体の有無や当該物体までの距離を測定することができる。すなわち、測距部16,17は、物体を検出する検出部の一例である。なお、測距部17は、例えば、比較的近距離の物体の検出に用いられ、測距部16は、例えば、測距部17よりも遠い比較的長距離の物体の検出に用いられうる。また、測距部17は、例えば、車両1の前方および後方の物体の検出に用いられ、測距部16は、車両1の側方の物体の検出に用いられることができる。
【0027】
また、図3に例示されるように、車両制御システム100では、ECU14や、モニタ装置11、操舵システム13、測距部16,17等の他、ブレーキシステム18、サスペンションシステム30、舵角センサ19、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等が、電気通信回線としての車内ネットワーク23を介して電気的に接続されている。車内ネットワーク23は、例えば、CAN(controller area network)として構成されている。
【0028】
ECU14は、車内ネットワーク23を通じて制御信号を送ることで、操舵システム13、ブレーキシステム18等を制御することができる。また、ECU14は、車内ネットワーク23を介して、トルクセンサ13b、ブレーキセンサ18b、舵角センサ19、測距部16、測距部17、アクセルセンサ20、シフトセンサ21、車輪速センサ22等の検出結果や、操作入力部10等の操作信号等を、受け取ることができる。
【0029】
ECU14は、例えば、CPU14a(Central Processing Unit)や、ROM(Read Only Memory)14b、RAM(Random Access Memory)14c、表示制御部14d、音声制御部14e、SSD(Solid State Drive、フラッシュメモリ)14f等を有している。
【0030】
CPU14aは、例えば、表示装置8,12で表示される画像に関連した画像処理や、車両1の目標位置の決定、車両1の移動経路の演算、物体との干渉の有無の判断、車両1の自動制御、自動制御の解除、サスペンションシステム30の減衰制御、ばね定数切替え制御、ステアリング制御、スタビライザ制御等の、各種の演算処理および制御を実行することができる。CPU14aは、ROM14b等の不揮発性の記憶装置にインストールされ記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムにしたがって演算処理を実行することができる。
【0031】
RAM14cは、CPU14aでの演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。また、表示制御部14dは、ECU14での演算処理のうち、主として、撮像部15で得られた画像データを用いた画像処理や、表示装置8で表示される画像データの合成等を実行する。また、音声制御部14eは、ECU14での演算処理のうち、主として、音声出力装置9で出力される音声データの処理を実行する。また、SSD14fは、書き換え可能な不揮発性の記憶部であって、ECU14の電源がオフされた場合にあってもデータを記憶することができる。なお、CPU14aや、ROM14b、RAM14c等は、同一パッケージ内に集積されうる。また、ECU14は、CPU14aに替えて、DSP(Digital Signal Processor)等の他の論理演算プロセッサや論理回路等が用いられる構成であってもよい。また、SSD14fに替えてHDD(Hard Disk Drive)が設けられてもよいし、SSD14fやHDDは、ECU14とは別に設けられてもよい。
【0032】
ブレーキシステム18は、例えば、ブレーキのロックを抑制するABS(Anti-lock Brake System)や、コーナリング時の車両1の横滑りを抑制する横滑り防止装置(ESC:Electronic Stability Control)、ブレーキ力を増強させる(ブレーキアシストを実行する)電動ブレーキシステム、BBW(Brake By Wire)等である。ブレーキシステム18は、アクチュエータ18aを介して、車輪3ひいては車両1に制動力を与える。また、ブレーキシステム18は、左右の車輪3の回転差などからブレーキのロックや、車輪3の空回り、横滑りの兆候等を検出して、各種制御を実行することができる。ブレーキセンサ18bは、例えば、制動操作部6の可動部の位置を検出するセンサである。ブレーキセンサ18bは、可動部としてのブレーキペダルの位置を検出することができる。ブレーキセンサ18bは、変位センサを含む。
【0033】
舵角センサ19は、例えば、ステアリングホイール等の操舵部4の操舵量を検出するセンサである。舵角センサ19は、例えば、ホール素子などを用いて構成される。ECU14は、運転者による操舵部4の操舵量や、自動操舵時の各車輪3の操舵量等を、舵角センサ19から取得して各種制御を実行する。なお、舵角センサ19は、操舵部4に含まれる回転部分の回転角度を検出する。
【0034】
アクセルセンサ20は、例えば、加速操作部5の可動部の位置を検出するセンサである。アクセルセンサ20は、可動部としてのアクセルペダルの位置を検出することができる。アクセルセンサ20は、変位センサを含む。
【0035】
シフトセンサ21は、例えば、変速操作部7の可動部の位置を検出するセンサである。シフトセンサ21は、可動部としての、レバーや、アーム、ボタン等の位置を検出することができる。シフトセンサ21は、変位センサを含んでもよいし、スイッチとして構成されてもよい。
【0036】
車輪速センサ22は、車輪3の回転量や単位時間当たりの回転数を検出するセンサである。車輪速センサ22は、検出した回転数を示す車輪速パルス数をセンサ値として出力する。車輪速センサ22は、例えば、ホール素子などを用いて構成されうる。ECU14は、車輪速センサ22から取得したセンサ値に基づいて車両1の移動量などを演算し、各種制御を実行する。なお、車輪速センサ22は、ブレーキシステム18に設けられている場合もある。その場合、ECU14は、車輪速センサ22の検出結果を、ブレーキシステム18を介して取得する。
【0037】
サスペンションシステム30は、車両1の車体2と車輪3との間に配置される。サスペンションシステム30は、路面からの車両1に対する衝撃による車両1の振動を吸収するバネ(スプリング)と、当該バネの振動を減衰させかつ当該バネの振動の減衰力を変更可能な減衰力可変ダンパと、を備える。本実施形態では、サスペンションシステム30は、ECU14と協働して、ソレノイドアクチュエータ等の減衰力調整装置を制御して、減衰力可変ダンパの減衰力を変更する。これにより、サスペンションシステム30は、路面からの車両1に対する衝撃による車体の上下方向、横方向、前後方向の振動を減衰させるAVS(Adaptive Variable Suspension System)を実現する。
【0038】
なお、上述した各種センサやアクチュエータの構成や、配置、電気的な接続形態等は、一例であって、種々に設定(変更)することができる。
【0039】
次に、図4を用いて、本実施形態にかかる車両1が有するECU14の機能構成の一例について説明する。図4は、第1の実施形態にかかる車両が有するECU14の機能構成の一例を示す図である。
【0040】
本実施形態にかかるECU14は、図4に示すように、取得部141と、解析部142と、切替部143と、制御部140と、記憶部150とを少なくとも有する車両制御装置として機能する。制御部140は、図4に示すように、減衰力制御部144と、ばね定数切替制御部145と、ステアリング制御部146と、スタビライザ制御部147と、を主に備えている。
【0041】
また、取得部141、解析部142、切替部143と、減衰力制御部144、ばね定数切替制御部145、ステアリング制御部146、スタビライザ制御部147等の各種の機能モジュールは、一例であり、同様の機能を実現できれば、各機能モジュールが統合されたり、細分化されたりしていても良い。
【0042】
取得部141は、車輪速センサ22や舵角センサ19等の各種センサから検知情報を取得する。また、取得部141は、撮像部15cで撮像された車両1の進行方向の路面を撮像した撮像画像を取得する。
【0043】
解析部142は、取得部141で取得された撮像画像から路面状況を解析する。具体的には、解析部142は、撮像画像を解析して、路面状況として、路面の起伏状態を、荒い、通常、平坦のいずかに決定する。
【0044】
記憶部150は、SSD14f、ROM14b等が該当する。記憶部150には、車両特性情報151が車両1の出荷時から予め記憶されている。
【0045】
車両特性情報151は、制御モードの切替えの閾値として、車両1に関する特性である車両特性が制御モードに対応づけられて記憶されている。ここで制御モードは、コンフォートモード、ノーマルモードおよびスポーツモードの3つがある。制御モードの詳細については後述する。
【0046】
この車両特性情報151は、車両1の出荷前に、車両1に車載センサを搭載した上で走行しながら撮像部15cで撮像された撮像画像から路面の起伏状態を求め、当該起伏情報と車輪速センサ22に基づく車速から車両1の振動の周波数を求め、起伏状態と、振動の周波数と、車載センサの検知情報から求めた車両特性とから、適した制御モードを対応づけておく。本実施形態では、車載センサとして、例えば、上下方向加速度センサ、横方向加速度センサ、前後方向加速度センサ、車高センサ等を用い、これらのセンサの検知情報から車両特性を求め、当該車両特性の範囲に最適な制御モードを対応づけて車両特性情報151として記憶部150に保存しておく。すなわち、車両特性情報151には、制御モードの切替えのための閾値として車両特性が対応づけられて登録されている。
【0047】
車両特性としては、上下方向加速度センサで検知された車両1の上下方向に作用する加速度および車高センサにで検知された車高に基づく車両1のヒーブの速度等のヒーブに関する特性、横方向加速度センサで検知された車両1の幅方向(横方向)に作用する加速度に基づく車両1のロールの速度等のロールに関する特性、前後方向加速度センサで検知された車両1の前後方向に作用する加速度に基づく車両1のピッチの速度、ピッチレート等のピッチに関する特性を含んでいる。
【0048】
本実施形態では、これらの車載センサは、車両1の出荷前に車両1に一時的に取り付けられるが、車両特性を求めた後は、車両1から取り外して、車両1が出荷されることになる。
【0049】
切替部143は、解析部142で解析された路面状況と、車両特性情報151と、に基づいて、制御モードを切り替える。具体的には、切替部143は、取得部141で取得した車輪速センサ22の検知情報から車両1の車速を求める。そして、解析部142で解析され決定された路面状況、すなわち、荒い、通常、平坦という路面の起伏状態と、車速と、から車両1の振動の周波数を算出する。そして、切替部143は、車両1の振動の周波数と、予め記憶部150に記憶されている車両特性情報151の閾値としての車両特性を参照して、制御モードを切り替える。
【0050】
ここで、制御モードは、車両1の走行に関する制御のレベルを示すモードである。制御のレベルとしては、制御の強度であり、切替部143は、制御モードを制御の強度の異なる複数のモードの間で切り替える。本実施形態では、制御モードとして、コンフォートモード、ノーマルモード、スポーツモードの3つのモードがある。ノーマルモードは、制御の強度が通常のモードである。コンフォートモードは、制御の強度がノーマルモードよりも柔らかい(すなわち、ソフトな)モードである。スポーツモードは、制御の強度がノーマルモードよりも固い(すなわち、ハードな)モードである。ノーマルモードは第1のモードに相当し、コンフォートモードが第2のモードに相当し、スポーツモードが第3のモードに相当する。なお、制御モードの数はこれに限定されるものではない。
【0051】
切替部143による制御モードの切替えは、具体的には、制御部140の各制御によって以下のように行われる。
図5は、第1の実施形態における制御モードで設定される各制御におけるレベルの状態を示す説明図である。
【0052】
制御部140は、切替部143で切り替えられた前記制御モードで車両1を制御する。制御部140の減衰力制御部144は、サスペンションシステム30の減衰力制御を実行する。切替部143は、図5に示すように、路面の起伏状態と車速に基づく車両1の振動の周波数と、車両特性情報151とに基づいて、減衰力制御を通常の強度で行うノーマルモードと、減衰力制御をノーマルより柔らかい強度で行うコンフォートモードと、減衰力制御をノーマルより固い強度で行うスポーツモードと、の間で切り替える。
【0053】
制御部140のばね定数切替制御部145は、サスペンションシステム30のばね定数切替制御を実行する。切替部143は、図5に示すように、路面の起伏状態と車速に基づく車両1の振動の周波数と、車両特性情報151とに基づいて、ばね定数切替制御を通常の強度で行うノーマルモードと、ばね定数切替制御をノーマルモードより柔らかい強度で行うコンフォートモードと、ばね定数切替制御をノーマルモードより固い強度で行うスポーツモードと、の間で切り替える。
【0054】
制御部140のステアリング制御部146は、操舵システム13のステアリング制御を実行する。切替部143は、図5に示すように、路面の起伏状態と車速に基づく車両1の振動の周波数と、車両特性情報151とに基づいて、ステアリング制御における制御ゲインを通常レベルに設定するノーマルモードと、制御ゲインをノーマルモードより低く設定するコンフォートモードと、制御ゲインをノーマルモードより高く設定するスポーツモードと、の間で切り替える。
【0055】
制御部140のスタビライザ制御部147は、車両1のスタビライザ制御を実行する。切替部143は、図5に示すように、路面の起伏状態と車速に基づく車両1の振動の周波数と、車両特性情報151とに基づいて、スタビライザ制御を通常の強度で行うノーマルモードと、スタビライザ制御をノーマルモードより柔らかい強度で行うコンフォートモードと、スタビライザ制御をノーマルモードより固い強度で行うスポーツモードと、の間で切り替える。
【0056】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる車両制御システム100による車両制御処理について説明する。
図6は、第1の実施形態にかかる車両制御システム100による車両制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0057】
まず、取得部141は、撮像部15cで撮像された車両1の進行方向である前方の路面の画像を取得する(S11)。解析部142は、取得部141が取得した撮像画像を解析し、路面の起伏状態を決定する(S13)。
【0058】
次に、切替部143は、取得部141で取得されている車輪速センサ22の検知信号から車両1の車速を算出する(S17)。次いで、切替部143は、路面の起伏状態と車速とから、車両1の振動の周波数を算出する(S19)。次に、切替部143は、記憶部150の車両特性情報151を参照し、車両1の振動の周波数から、車両特性情報151で定められた制御モードを決定する(S21)。
【0059】
例えば、制御モードの切替えの閾値として、周波数、凹凸レベルなど乗員が感じる車両特性とし、切替部143が、車両1の車速と前方の路面の起伏状態から、ピッチングの中周波数帯(4~8Hz)振動レベルが第1の閾値(dB)以上となると判断した場合には、切替部143は、制御モードをノーマルモードからコンフォートモードに切り替えるす。また、切替部143が車両1の車速と撮像画像の解析により前方の路面の起伏状態から、ピッチングの低周波数帯(1~3Hz)振動レベルが第2の閾値(dB)以上となると判断した場合には、切替部143は、制御モードをコンフォートモードからノーマルモードに切り替える。
【0060】
そして、制御部140では、各制御部が、切替部143で決定された制御モードで各制御を実行する(S23)。
【0061】
このように本実施形態では、車両制御システム100において、解析部142が車両1の進行方向の路面を撮像する撮像部15cで撮像された撮像画像から路面状況を解析し、切替部143が、路面状況と、車載センサによる検知情報に基づく車両特性と、に基づいて、車両の走行に関する制御のレベルを示す制御モードを切り替え、制御部140が、切り替えられた制御モードで車両1を制御する。このため、本実施形態によれば、一例として、路面状況に応じて車両特性に基づいて最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担を軽減することができる。
【0062】
また、本実施形態では、車両特性は、車載センサとしての加速度センサで検知された上下加速度、左右加速度または前後加速度、もしくは、車載センサとしての車高センサで検知された車両の車高、とに基づく、車両1のヒーブに関する特性、ロールに関する特性またはピッチに関する特性を含む。このため、本実施形態によれば、一例として、車両1のヒーブ、ロール、ピッチに関する車両特性を閾値として制御モードの切替えを行うことになり、路面状況に応じて、車両のヒーブ、ロールまたはピッチの特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0063】
また、本実施形態では、切替部143は、路面状況として、路面の起伏状態を、荒い、通常、平坦のいずかに決定し、切替部143は、路面の起伏状態と車両特性と、に基づいて、制御モードを、前記レベルとしての制御の強度の異なる複数のモードの間で切り替える。このため、本実施形態によれば、一例として、路面の起伏状態に応じて車両特性に基づいて最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。特に、本実施形態によれば、車両1が自動運転車両である場合のように、運転者がおらず、乗車人員が路面状況を把握できない場合でも、路面の起伏状態に応じて車両特性に基づいて最適な制御モードに切替えることができ、乗車人員の便宜となる。
【0064】
また、本実施形態では、路面状況と車両特性とに対応する制御モードは記憶部150の車両特性情報151として予め定められており、切替部143は、この車両特性情報151を参照して、路面状況と車両特性とに対応して定められた制御モードに切り替える。このため、本実施形態によれば、一例として、出荷前に予め車両特性を求めておけば、出荷される車両1には車両特性を求めるための車載センサを搭載する必要がないので、車両1における搭載スペースや車両1の製造コストの削減を図ることができる。
【0065】
また、本実施形態では、切替部143は、路面状況と車両1の速度から路面の起伏状態の周波数を算出し、算出された周波数と車両特性とに基づいて、制御モードを切り替える。このため、本実施形態によれば、一例として、路面の起伏状態に応じて車両特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、車両特性に基づく制御モードは車両特性情報151で出荷時に予め定められていたが、この第2の実施形態では、車載センサを車両1に搭載し、車両1の走行時に車両特性を求め、センサの検知情報や車両特性から最適な制御モードを学習するものである。
【0067】
第2の実施形態にかかる車両1の構成は、第1の実施形態と同様である。
図7は、第2の実施形態にかかる車両が有する車両制御システム1100の構成の例示的なブロック図である。第2の実施形態にかかる車両制御システム1100は、第1の実施形態にかかる車両制御システム100の構成に加え、上下方向加速度センサ1110a、横方向加速度センサ1110b、前後方向加速度センサ1110c、車高センサ1102を備えている。
【0068】
上下方向加速度センサ1110aは、車両1の上下方向に作用する加速度を検知する。横方向加速度センサ1110bは車両1の幅方向(横方向)に作用する加速度を検知する。前後方向加速度センサ1110cは車両1の前後方向に作用する加速度を検知する。車高センサ1102は、車両1の車高を検知する。
【0069】
また、第2の実施形態にかかる車両制御システム1100では、ECU1014で実行される機能が第1の実施形態のECU14と異なっている。第2の実施形態にかかる車両制御システム1100この他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0070】
次に、図8を用いて、本実施形態にかかる車両1が有するECU1014の機能構成の一例について説明する。図8は、第2の実施形態にかかる車両が有するECU1014の機能構成の一例を示す図である。
【0071】
本実施形態にかかるECU1014は、図8に示すように、取得部141と、解析部142と、切替部1143と、学習部1141と、制御部140と、記憶部150とを少なくとも有する車両制御装置として機能する。取得部141、解析部142、制御部140、記憶部150については、第1の実施形態と同様である。
【0072】
学習部1141は、車両1の走行中において、路面状況と検知情報を入力して学習し、制御モードの切替えの閾値として路面状況と検知情報に基づく車両特性の閾値を変更して制御モードへの対応付けを変更する。切替部1143は、学習部1141によって変更された制御モードに切り替える。
【0073】
このような学習処理によって、制御モードの切替えの車両特性等の閾値はサスペンションシステム30のブッシュやタイヤ等、制御部140における各制御に寄与するものの劣化を考慮した閾値に設定されることになる。なお、学習処理のアルゴリズムについては公知の手法を用いることができる。
【0074】
次に、以上のように構成された本実施形態にかかる車両制御システム1100による車両制御処理について説明する。
図9,10は、第2の実施形態にかかる車両制御システム1100による車両制御処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0075】
S11からS23までの処理は第1の実施形態と同様に行われ、第1の実施形態と同様に、制御モードが決定され、決定された制御モードで各制御が実行される。
【0076】
次に、切替部1143は、決定された制御モードが適切か否かを判断する(S25)。具体的には、制御モードの各制御で走行中に、実際に各制御のレベルが合っているかを判断する。
【0077】
そして、適切である場合には(S25:Yes)、処理は終了する。一方、適切でない場合には(S25:No)、取得部141は、各センサから検知情報を取得する(S41)。具体的には、取得部141は、上下方向加速度センサ1110aから車両1の上下方向に作用する加速度、横方向加速度センサ1110bから車両1の幅方向(横方向)に作用する加速度、前後方向加速度センサ1110cから車両1の前後方向に作用する加速度、車高センサ1102から車高、をそれぞれ取得する。
【0078】
次に、学習部1141は、取得部141で取得した、上下方向加速度センサ1110aから車両1の上下方向に作用する加速度、横方向加速度センサ1110bから車両1の幅方向に作用する加速度、前後方向加速度センサ1110cから車両1の前後方向に作用する加速度、車高センサ1102から車高から、車両特性を算出する(S43)。
【0079】
具体的には、学習部1141は、上下方向加速度センサで検知された車両1の上下方向に作用する加速度および車高センサにで検知された車高に基づく車両1のヒーブの速度等のヒーブに関する特性を算出する。また、学習部1141は、横方向加速度センサで検知された車両1の幅方向(横方向)に作用する加速度に基づく車両1のロールの速度等のロールに関する特性を算出する。さらに、学習部1141は、前後方向加速度センサで検知された車両1の前後方向に作用する加速度に基づく車両1のピッチの速度等のピッチに関する特性を算出する。
【0080】
次に、学習部1141は、S19で算出された車両1の振動の周波数と、S43で算出された車両特性とから、再度、制御モードを決定する(S45)。そして、学習部1141は、再度決定した制御モードの際の路面の起伏状態、振動の周波数、車両特性を学習して制御モードに対応づけて車両特性情報151に登録することで、学習処理を行う(S47)。そして、制御部140は、決定された制御モードに変更して各制御を実行する(S49)。
【0081】
例えば、撮像部15cによる撮像画像により解析された前方の路面の起伏状態が、日差しの強弱、日の傾きの大小などによって、実際よりも起伏状態を小さく決定されてしまう場合を想定する。このような場合には、切替部1143により制御モードを適正なモード、例えば、ノーマルモードに切り替えたとしても、車両1に作用する上下方向の加速度が想定より大きくなると考えられる。このような場合において、S25において、切替部1143は、実際には各制御のレベルが合っていないと判断し、S41,S43およびS45により、学習部1141はこれまでに学習した上下方向の加速度が作用する際、制御モードをコンフォートモードに切り替える。
【0082】
このように本実施形態では、車両制御システム1100において、車両1の走行中において、前記路面状況と前記検知情報を入力して学習し、路面状況と検知情報に基づく車両特性に対して予め定められた制御モードを変更する学習部1141、をさらに備え、切替部1143は、変更された制御モードに切り替える。このため、本実施形態によれば、一例として、車両1の走行中に制御モードの切替えの閾値の変更を動的に行うことができるので、路面状況に応じて車両特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより的確に軽減することができる。
【0083】
(変形例)
上記の第1の実施形態、第2の実施形態には種々の変形例が考えられる。
例えば、車室に、ロードノイズ等、路面状況、例えば、路面の凹凸の起伏状態により発生する音を取得する音声入力手段を設け、路面状況と、当該音に基づく特性とに基づいて、制御モードを切り替えるように、切替部143,1143を構成しても良い。ここで、路面の凹凸等の起伏状態により発生する音は、車室2a内に伝わる音の他、車室2a外で計測された音も含まれる。
【0084】
本変形例によれば、路面状況の認識をより高精度に行うことができるので、路面状況に応じてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0085】
また、例えば、サスペンションシステム30のショックアブソーバのロッドの近傍に、加速度センサを設け、路面状況と、サスペンションシステム30のショックアブソーバのロッドの加速度に基づく車両特性とに基づいて、制御モードを切り替えるように、切替部143,1143を構成しても良い。
【0086】
本変形例によれば、路面状況の認識をより高精度に行うことができるので、路面状況に応じて車両特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0087】
さらに、例えば、サスペンションシステム30に対して車体2側の車両の部分(ばね上とも称する)とサスペンションシステム30に対して車輪3側の車両1部分(ばね下とも称する)のそれぞれの近傍に加速度センサを設け、路面状況(起伏状態)と、ばね上加速度またはばね下加速度に基づく車両特性とに基づいて、制御モードを切り替えるように、切替部143,1143を構成しても良い。
【0088】
本変形例によれば、路面状況の認識をより高精度に行うことができるので、路面状況に応じて車両特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0089】
また、上記実施形態のように、各制御部の制御における制御モードを一括して切替える他、各制御部の制御における制御モードを、車両特性等に基づいて単独または組み合わせで切替えるように切替部1143を構成してもよい。
【0090】
例えば、上述した例、すなわち、撮像部15cによる撮像画像により解析された前方の路面の起伏状態が、日差しの強弱、日の傾きの大小などによって、実際よりも起伏状態を小さく決定されてしまう場合を考える。このような場合には、切替部1143により制御モードを適正なモード、例えば、ノーマルモードに切り替えたとしても、上下方向加速度が想定より大きくなると考えられる。この場合において、これまでに学習した上下方向の加速度が作用する際、ロードノイズのレベルが想定より大きくなる場合には、減衰力制御部144やばね定数切替制御部145のみを適正なレベル、例えば、ソフトに切り替えるように学習部1141、切替部1143を構成してもよい。
【0091】
本変形例によれば、車両1の走行中に、制御モードの切替えの閾値の変更をより柔軟に行うことができるので、路面状況に応じて車両特性に基づいてより最適な制御モードに切替えることができ、利用者の負担をより軽減することができる。
【0092】
上述の実施形態および変形例では、CPU14aが、ROM14bやSSD14f等の記憶装置に記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、取得部141、解析部142、切替部143,1143と、学習部1141と、減衰力制御部144、ばね定数切替制御部145、ステアリング制御部146、スタビライザ制御部147等の各種の機能モジュールを実現する。
【0093】
上記実施形態および変形例では、取得部141、解析部142、切替部143,1143と、学習部1141と、減衰力制御部144、ばね定数切替制御部145、ステアリング制御部146、スタビライザ制御部147等の各種の機能モジュールは、CPU14a等のプロセッサが、ROM14bやSSD14f等の記憶装置に記憶されるプログラムを読み出して実行することにより実現される。ただし、これに限定するものではない。例えば、取得部141、解析部142、切替部143,1143と、学習部1141と、減衰力制御部144、ばね定数切替制御部145、ステアリング制御部146、スタビライザ制御部147等の各種の機能モジュールは、独立したハードウェアにより実現することも可能である。
なお、上記実施形態および変形例の車両制御装置、車両制御システム100,1100で実行される車両制御プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0094】
上記実施形態および変形例の車両制御装置、車両制御システム100,1100で実行される車両制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0095】
さらに、上記実施形態および変形例の車両制御装置、車両制御システム100,1100で実行される車両制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施形態および変形例の車両制御装置、車両制御システム100,1100で実行される車両制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0096】
上記実施形態および変形例の車両制御装置、車両制御システム100,1100で実行される車両制御プログラムは、上述した各部(取得部141、解析部142、切替部143,1143と、学習部1141と、減衰力制御部144、ばね定数切替制御部145、ステアリング制御部146、スタビライザ制御部147等)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記ROMから車両制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、取得部141、解析部142、切替部143,1143と、学習部1141と、減衰力制御部144、ばね定数切替制御部145、ステアリング制御部146、スタビライザ制御部147等が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1…車両、2…車体、14,1014…ECU、15,15a,15b,15c,15d…撮像部、22…車輪速センサ、30…サスペンションシステム、100、1100…車両制御システム、140…制御部、141…取得部、142…解析部、143,1143…切替部、144…減衰力制御部、145…ばね定数切替制御部、146…ステアリング制御部、147…スタビライザ制御部、150…記憶部、151…車両特性情報、1102…車高センサ、1110a…上下方向加速度センサ、1110b…横方向加速度センサ、1110c…前後方向加速度センサ、1141…学習部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10