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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180528
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/255 20180101AFI20231214BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20231214BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20231214BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20231214BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20231214BHJP
【FI】
F21S41/255
F21S41/143
F21V5/04 650
F21W102:13
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093904
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】コリチバ ニキタ
(57)【要約】
【課題】車両用灯具において、そのレンズの外周縁部からの出射光の光量を十分に確保した上で、配光制御が精度良く行われるようにする。
【解決手段】レンズ30として、その中心領域32の周囲に位置する周辺領域34の後面34bに、複数の全反射プリズム素子34sが、光軸Axを中心にして同心円状に並んだ状態で、かつ円環状凹曲面Cを包絡面として形成された構成とする。その上で、発光素子22とレンズ30との間に、発光素子22からの出射光を集光させた状態でレンズ30に入射させる集光レンズ40が配置された構成とする。これにより、レンズ30の周辺領域34の外周縁部に到達する発光素子22からの出射光の光軸Axに対する開き角度を小さくし、これにより複数の全反射プリズム素子34sからの反射光の強度がその径方向の位置によって不均一にならないようする。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源とレンズとを備え、上記光源からの出射光を上記レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、
上記レンズは、灯具前後方向に延びる光軸を中心とする中心領域と、上記中心領域の周囲に位置する周辺領域とを備えており、
上記周辺領域の後面に、上記光源からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる複数の全反射プリズム素子が、上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成されており、
上記複数の全反射プリズム素子は、上記光軸を中心とする円環状凹曲面を包絡面として形成されており、
上記光源と上記レンズとの間に、上記光源からの出射光を集光させた状態で上記レンズに入射させる集光レンズが配置されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記集光レンズは、前面が凸曲面状に形成された平凸レンズで構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記集光レンズの前面に、複数の集光レンズ素子が上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成されている、ことを特徴とする請求項2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記レンズの前面に、上記複数の全反射プリズム素子から到達した光を出射制御する複数のレンズ素子が形成されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記光源は、発光面を灯具前方へ向けた状態で配置された発光素子で構成されている、ことを特徴とする請求項1~3いずれか記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光源からの出射光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、光源からの出射光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具におけるレンズの構成として、灯具前後方向に延びる光軸を中心とする中心領域と、その周囲に位置する周辺領域とを備えた構成とした上で、周辺領域の後面に複数の全反射プリズム素子が上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成されたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-187859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記「特許文献1」に記載された車両用灯具のレンズのように、複数の全反射プリズム素子において光源からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる構成を採用することにより、光源からの出射光を広範囲にわたって前方照射光として利用することが可能となる。
【0006】
しかしながら、上記「特許文献1」の図1に記載された車両用灯具においては、レンズが上記光軸と直交する鉛直面に沿って平板状に延びるように形成されているので、光源からの出射光のうち、レンズの外周縁部へ向かう光に関しては十分な光量が得られない場合が多く、このためレンズの外周縁部からの出射光の光量を十分に確保することが容易でない。
【0007】
一方、上記「特許文献1」の図11に記載された車両用灯具のように、レンズが上記光軸と直交する鉛直面に対して灯具後方側に湾曲して延びるように形成された構成とすれば、光源からレンズの外周縁部へ向かう出射光に関しても十分な光量が得られるようにすることが可能である。
【0008】
しかしながら、このようなレンズを採用した場合、その外周縁部に到達する光源からの出射光は光軸に対する開き角度がかなり大きなものとなるので、複数の全反射プリズム素子からの反射光は径方向の位置によってその強度が不均一なものとなってしまい、このためレンズによる配光制御を精度良く行うことが容易でない。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、光源からの出射光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、レンズの外周縁部からの出射光の光量を十分に確保した上で、レンズによる配光制御が精度良く行われるようにすることができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明は、光源とレンズと間に集光レンズが追加配置された構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
光源とレンズとを備え、上記光源からの出射光を上記レンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、
上記レンズは、灯具前後方向に延びる光軸を中心とする中心領域と、上記中心領域の周囲に位置する周辺領域とを備えており、
上記周辺領域の後面に、上記光源からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる複数の全反射プリズム素子が、上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成されており、
上記複数の全反射プリズム素子は、上記光軸を中心とする円環状凹曲面を包絡面として形成されており、
上記光源と上記レンズとの間に、上記光源からの出射光を集光させた状態で上記レンズに入射させる集光レンズが配置されている、ことを特徴とするものである。
【0012】
上記「車両用灯具」の種類は特に限定されるものではなく、例えばヘッドランプ、フォグランプ、テールランプ、クリアランスランプ等が採用可能である。
【0013】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオード等の発光素子や光源バルブ等が採用可能である。
【0014】
上記「中心領域」および「周辺領域」の各々の具体的な範囲および外形形状は特に限定されるものではない。
【0015】
上記「円環状凹曲面」の具体的な曲率は特に限定されるものではない。
【0016】
上記「集光レンズ」は、光源からの出射光を集光させた状態でレンズに入射させることが可能なものであれば、その具体的な構成や配置等は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0017】
本願発明に係る車両用灯具は、光源からの出射光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射する構成となっているが、上記レンズにおいて灯具前後方向に延びる光軸を中心とする中心領域の周囲に位置する周辺領域の後面には、光源からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる複数の全反射プリズム素子が、上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成されているので、光源からの出射光を広範囲にわたって前方照射光として利用することができる。
【0018】
その際、複数の全反射プリズム素子は上記光軸を中心とする円環状凹曲面を包絡面として形成されているので、光源からレンズの外周縁部へ向かう出射光に関しても十分な光量が得られるようにすることができる。
【0019】
その上で、光源とレンズとの間には、光源からの出射光を集光させた状態でレンズに入射させる集光レンズが配置されているので、レンズの周辺領域の外周縁部に到達する光源からの出射光の上記光軸に対する開き角度を小さくすることができる。したがって、複数の全反射プリズム素子からの反射光の強度がその径方向の位置によって不均一にならないようすることができ、これによりレンズによる配光制御が精度良く行われるようにすることができる。
【0020】
このように本願発明によれば、光源からの出射光をレンズを介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具において、レンズの外周縁部からの出射光の光量を十分に確保した上で、レンズによる配光制御が精度良く行われるようにすることができる。
【0021】
上記構成において、さらに、集光レンズの構成として、前面が凸曲面状に形成された平凸レンズで構成されたものとすれば、光源からの出射光をより広範囲にわたって前方照射光として利用することが可能となる。
【0022】
その際、集光レンズの前面に、複数の集光レンズ素子が上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成された構成とすれば、光源からの出射光が集光レンズを介してレンズに入射する領域を複数の集光レンズ素子の各々の表面形状によって適宜設定することができ、これによりレンズによる配光制御の自由度を高めることができる。
【0023】
上記構成において、さらに、レンズの前面に、複数の全反射プリズム素子から到達した光を出射制御する複数のレンズ素子が形成された構成とすれば、配光制御の自由度をさらに高めることができる。
【0024】
上記構成において、さらに、光源の構成として、発光面を灯具前方へ向けた状態で配置された発光素子で構成されたものとすれば、車両用灯具からの照射光によってカットオフラインを有する配光パターン等を形成することも容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
図2図1のII-II線断面図
図3図1のIII-III線断面図
図4図1のIV-IV線断面図
図5】(a)は図2のVa方向矢視図、(b)は図2のVb方向矢視図
図6】上記車両用灯具からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図
図7】上記ロービーム用配光パターンの一部の形成過程を説明するための図
図8】(a)は上記実施形態の作用を説明するための図であって、図4と同様の図、(b)は上記実施形態の比較例を示す、(a)と同様の図
図9】上記実施形態の変形例を示す、図4と同様の図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、図2は、図1のII-II線断面図である。
【0028】
図1、2において、Xで示す方向が「灯具前方」であり、Yで示す方向が「灯具前方」と直交する「左方向」(灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。図1、2以外の図においても同様である。
【0029】
図1、2に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両前端部に配置されるヘッドランプであって、ランプボディ12とその前端開口部に取り付けられた素通し状の透光カバー14とで形成される灯室内に灯具ユニット20が組み込まれた構成となっている。そして、この車両用灯具10は、灯具ユニット20からの照射光によってロービーム用配光パターン(これについては後述する)を形成するようになっている。
【0030】
灯具ユニット20は、発光素子22とその灯具前方側に配置されたレンズ30とを備えており、発光素子22からの出射光をレンズ30を介して灯具前方へ向けて照射するように構成されている。さらに、この灯具ユニット20は、発光素子22とレンズ30との間に集光レンズ40が配置された構成となっており、発光素子22からの出射光を集光させた状態でレンズ30に入射させるように構成されている。
【0031】
発光素子22は、基板24を介してランプボディ12に支持されており、レンズ30および集光レンズ40は、それぞれ図示しない取付構造を介してランプボディ12に支持されている。
【0032】
次に、灯具ユニット20の具体的な構成について説明する。
【0033】
図3は、図1のIII-III線断面図であり、図4は、図1のIV-IV線断面図である。また、図5(a)は、図2のVa方向矢視図であり、図5(b)は、図2のVb方向矢視図である。
【0034】
図1~5に示すように、レンズ30は、灯具前後方向に延びる光軸Axを有しており、灯具正面視において光軸Axを中心とする円形の外形形状を有している。レンズ30の外形寸法は50mm以下(例えば35mm程度)の値に設定されている。
【0035】
発光素子22は、白色発光ダイオードであって、その発光面22aを灯具前方(具体的には灯具正面方向)へ向けた状態で配置されている。発光素子22の発光面22aは、矩形状(具体的には1×1mm程度の正方形)の外形形状を有している。そして、発光素子22は、その発光面22aの下端縁における左右方向の中心位置(以下「基準位置」という)をレンズ30の光軸Ax上に位置させた状態で配置されている。
【0036】
集光レンズ40は、前面40aが凸曲面状に形成されるとともに後面40bが平面状に形成された透明樹脂製の平凸レンズであって、その外形寸法は12~16mm程度(例えば14mm程度)の値に設定されている。この集光レンズ40は、発光素子22に対してその灯具前方側に近接した状態(具体的には集光レンズ40の後面40bが発光素子22の発光面22aから1~2mm程度離れた状態)で光軸Ax上に配置されている。そして、この集光レンズ40は、発光素子22からの出射光を光軸Ax寄りの方向へ屈折させた後、レンズ30に入射させるように構成されている。
【0037】
レンズ30は、透明樹脂製の射出成形品であって、光軸Axを中心とする中心領域32と、この中心領域32の周囲に位置する周辺領域34とを備えている。
【0038】
中心領域32の後面32bは、複数のレンズ素子32sが光軸Axを中心として同心円状に配置されたフレネルレンズで構成されており、これにより集光レンズ40を介して到達した発光素子22からの光を光軸Ax寄りの方向へ屈折させる態様でレンズ30に入射させるようになっている。具体的には、中心領域32の後面32bは、各レンズ素子32sにおいて発光素子22の基準位置からの出射光を灯具正面方向へ向かう平行光としてレンズ30の前面30aに導くようになっている。
【0039】
周辺領域34の後面34bには、複数の全反射プリズム素子34sが光軸Axを中心にして同心円状に並んだ状態で形成されている。これら複数の全反射プリズム素子34sの各々は、フレネルレンズ型全反射プリズムであって、集光レンズ40を介して到達した発光素子22からの光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させるように構成されている。具体的には、複数の全反射プリズム素子34sの各々は、発光素子22の基準位置からの出射光を、光軸Axから離れる方向へ屈折させる態様で入射させた後、灯具正面方向へ向かう平行光としてレンズ30の前面30aに導くようになっている。
【0040】
中心領域32と周辺領域34との境界位置は、光軸Axを中心とする半径4~6mm(例えば半径5mm程度)の円によって規定されている。
【0041】
図3、4に示すように、周辺領域34の後面34bに形成された複数の全反射プリズム素子34sは、光軸Axを中心とする円環状凹曲面C(図中2点鎖線で断面形状を示す)を包絡面として形成されている。
【0042】
その際、周辺領域34の後面34bにおいては、複数の全反射プリズム素子34sの各々に対して発光素子22からの出射光が略均等に入射するように、複数の全反射プリズム素子34sのピッチおよび円環状凹曲面Cの曲率が設定されている。
【0043】
その結果、複数の全反射プリズム素子34sは、周辺領域34の後面34bの内周縁寄りに位置する全反射プリズム素子34sよりも外周縁寄りに位置する全反射プリズム素子34sの方が大きい断面形状を有するものとなっている。
【0044】
レンズ30は、集光レンズ40の前面40aの外周縁から出射する発光素子22からの光が、周辺領域34における後面34bの外周縁に入射するように、その灯具前後方向の配置が設定されている。
【0045】
図1~5に示すように、レンズ30の前面30aは、光軸Axと直交する鉛直面上に複数のレンズ素子(これについては後述する)が形成された構成となっている。
【0046】
レンズ30の前面30aは、5つの出射領域30a1、30a2、30a3、30a4、30a5に区分けされている。
【0047】
出射領域30a1は、前面30aの上半部に位置する半円状の領域であり、出射領域30a2、30a4は、前面30aの下半部においてその外周縁に沿って帯状に延びる半円弧状の領域であり、出射領域30a3は、前面30aの下部領域において下方へ向けて扇状に拡がる縦長の外形形状を有する領域であり、出射領域30a5は、前面30aの下半部における残りの領域である。
【0048】
出射領域30a1は、横長(例えば2×4mm程度)の縦横格子状に区分けされており、その各々に凸曲面状のレンズ素子30s1が割り付けられた構成となっている。各レンズ素子30s1は、レンズ30の後面32b、34bから平行光として到達した発光素子22からの光を、下方向に偏向させた上で左右方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0049】
出射領域30a2、30a4は、縦縞状(例えば横幅2mm程度)に区分けされており、その各々に凸曲面状のレンズ素子30s2、30s4が割り付けられた構成となっている。
【0050】
出射領域30a3の左側(灯具正面視では右側)に位置する出射領域30a2を構成する各レンズ素子30s2は、レンズ30の後面34bから平行光として到達した発光素子22からの光を、やや下方向に偏向させた上で右方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0051】
出射領域30a3の右側に位置する出射領域30a4を構成する各レンズ素子30s4は、レンズ30の後面34bから平行光として到達した発光素子22からの光を、やや上方向に偏向させた上で左方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0052】
出射領域30a3は、その左側縁(灯具正面視では右側縁)が光軸Axから真下の方向に延びる直線で構成されており、その右側縁が、光軸Axから真下の方向に対して右側に傾斜した方向(具体的には真下の方向から右側に15°程度傾斜した方向)に延びる直線で構成されている。この出射領域30a3の上端縁は、光軸Axを中心とする円弧で構成されている。この円弧は、レンズ30の中心領域32と周辺領域34との境界位置よりも僅かに外周側に位置している。また、出射領域30a3の下端縁は、前面30aの外周縁で構成されている。
【0053】
出射領域30a3は、単一のレンズ素子30s3で構成されている。このレンズ素子30s3は、凸曲面状の自由曲面からなる表面形状を有している。すなわち、このレンズ素子30s3の表面は、その右半部30s3Aから左半部30s3Bにかけて凸曲面の曲率が徐々に変化する自由曲面で構成されている。そして、このレンズ素子30s3においては、レンズ30の後面34bから平行光として到達した発光素子22からの光を、やや上方向に偏向させた上で右半部30s3Aから左半部30s3Bにかけて出射方向を徐々に変化させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0054】
出射領域30a5は、出射領域30a1と同様、縦縞状に区分けされており、その各々に凸曲面状のレンズ素子30s5が割り付けられた構成となっている。ただし、各レンズ素子30s5は、レンズ30の後面32b、34bから平行光として到達した発光素子22からの光を、やや下方向に偏向させた上で左方向に大きく拡散させる態様で、灯具前方へ向けて出射させるように構成されている。
【0055】
図3、4に示すように、レンズ30は、その中心領域32が3~4mm程度の略一定の肉厚になっているが、周辺領域34は、その中間部においては中心領域32よりも薄肉になっており、その外周縁部においては5~6mm程度の肉厚になっている。
【0056】
図6は、車両用灯具10からの照射光によって、灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0057】
ロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端部には段付カットオフラインCLが形成されている。
【0058】
段付カットオフラインCLは、左右段違いで水平方向に延びる下段カットオフラインCL1と上段カットオフラインCL2とが傾斜部CL3を介して繋がれた形状を有している。その際、段付カットオフラインCLは、灯具正面方向の消点であるH-Vを通る鉛直線であるV-V線に対して、対向車線側に下段カットオフラインCL1が位置するとともに、自車線側に傾斜部CL3および上段カットオフラインCL2が位置するようにして形成されている。上段カットオフラインCL2は、H-Vを通る水平線であるH-H線のやや上方に位置している。
【0059】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1と傾斜部CL3との交点であるエルボ点EはH-Vの0.5~0.6°程度下方に位置しており、傾斜部CL3はエルボ点Eから水平方向に対して15°の傾斜角度で斜め左上方向に延びている。このロービーム用配光パターンPLにおいては、エルボ点Eの左下方近傍に高光度領域HZが形成されている。
【0060】
ロービーム用配光パターンPLは、5つの配光パターンP1、P2、P3、P4、P5を重畳させた合成配光パターンとして形成されている。
【0061】
配光パターンP1は、レンズ30の前面30aにおける出射領域30a1からの出射光によって形成される配光パターンであって、H-H線の下方において比較的大きい上下幅で左右方向に大きく拡がる横長の配光パターンとして形成されている。この配光パターンP1は、ロービーム用配光パターンPLの広拡散領域を形成するようになっている。
【0062】
配光パターンP2は、レンズ30の前面30aにおける出射領域30a2からの出射光によって形成される配光パターンであって、H-H線の下方近傍において狭い上下幅でV-V線近傍から右方向に拡がる横長の明るい配光パターンとして形成されている。この配光パターンP2は、その上端縁によってロービーム用配光パターンPLの下段カットオフラインCL1を形成するようになっている。
【0063】
このような配光パターンP2が形成されるのは、周辺領域34の外周側領域34b2においてその外周縁部からの発光素子22の発光面22aの見込み角は小さいものとなり、このため、その灯具前方に位置する出射領域30a2からの出射光によって形成される配光パターンは小さくて明るいものとなりやすいことによるものである。
【0064】
配光パターンP3は、レンズ30の前面30aにおける出射領域30a3からの出射光によって形成される配光パターンであって、H-Vの下方近傍において狭い上下幅で左斜め上方向に延びる小さくて明るい配光パターンとして形成されている。この配光パターンP3は、その上端縁によってロービーム用配光パターンPLの傾斜部CL3および上段カットオフラインCL2の右端部を形成するようになっている。なお、この配光パターンP3の形成過程については後述する。
【0065】
配光パターンP4は、レンズ50の前面30aにおける出射領域30a4からの出射光によって形成される配光パターンであって、略H-H線に沿って狭い上下幅でV-V線の左側近傍から左方向に拡がる横長の明るい配光パターンとして形成されている。この配光パターンP4は、その上端縁によってロービーム用配光パターンPLの上段カットオフラインCL2を形成するようになっている。その際、この配光パターンP4は、その右端部が配光パターンP3と重複した状態で滑らかに繋がるように形成されている。
【0066】
このような配光パターンP4が形成されるのは、配光パターンP2の場合と同様、周辺領域34の外周側領域34b2においてその外周縁部からの発光素子22の発光面22aの見込み角は小さいものとなり、このため、その灯具前方に位置する出射領域30a4からの出射光によって形成される配光パターンは小さくて明るいものとなりやすいことによるものである。
【0067】
配光パターンP5は、レンズ30の前面30aにおける出射領域30a5からの出射光によって形成される配光パターンであって、配光パターンP4と配光パターンP1とに跨るようにして比較的狭い上下幅でV-V線の左側近傍から左方向に拡がる横長の比較的明るい配光パターンとして形成されており、その右端部が配光パターンP3と重複している。
【0068】
図7は、配光パターンP3の形成過程を説明するための図であって、レンズ30の前面30aの一部およびロービーム用配光パターンPLの一部をそれぞれ斜視図で示している。
【0069】
図7に示すように、レンズ30の前面30aにおいて出射領域30a3を構成しているレンズ素子30s3からの出射光によって形成される配光パターンP3は、上述したとおり、その上端縁がロービーム用配光パターンPLの傾斜部CL3から上段カットオフラインCL2の右端部まで延びるように形成されている。
【0070】
一方、図7において2点鎖線で示す配光パターンP3оは、仮に出射領域30a3にレンズ素子30s3が形成されていないとした場合に形成される配光パターンであって、傾斜部CL3の下方近傍において斜め左上方向に延びるように形成されている。この配光パターンP3оは、その上端縁が明瞭な明暗境界線として形成されたものとなる。これは発光素子22がその発光面22aの下端縁をレンズ30の光軸Ax上に位置させた状態で配置されていることによるものである。
【0071】
実際には、出射領域30a3にレンズ素子30s3が形成されているので、配光パターンP3оは配光パターンP3のように変化する。これはレンズ素子30s3が、その右半部30s3Aから左半部30s3Bにかけて凸曲面の曲率が徐々に変化する自由曲面で構成されていることにより、レンズ30の前面30aに到達した平行光をやや上方向に偏向させた上で右半部30s3Aから左半部30s3Bにかけて出射方向を徐々に変化させるようになっていることによるものである。
【0072】
また、出射領域30a3は、単一のレンズ素子30s3で構成されており、その表面には段差が存在していないので、配光パターンP3として傾斜部CL3の上方空間にグレアの原因となる光溜りが不用意に形成されてしまうようなことはない。
【0073】
図8(a)は、本実施形態の作用を説明するための図であって、図4と同様の図である。また、図8(b)は、本実施形態の比較例を示す、図8(a)と同様の図である。
【0074】
図8(a)に示すように、灯具ユニット20において、発光素子22からの出射光は、集光レンズ40によって光軸Ax寄りの方向へ向けて偏向出射した後、レンズ30に入射することとなる。その際、図中2点鎖線で示すように、発光素子22の基準位置から集光レンズ40に入射する際の最大照射角度θ1はかなり大きな値となるが、レンズ30に入射する際の最大照射角度θ2は最大照射角度θ1よりもかなり小さな値(具体的にはθ2=1/2×θ1程度の値)となる。
【0075】
そして、このように最大照射角度θ2が小さな値となることによって、円環状凹曲面C(すなわちレンズ30の周辺領域34の後面34bにおいて複数の全反射プリズム素子34sが形成される際の包絡面)の曲率も比較的小さな値となっている。このため、周辺領域34の最大肉厚t2は中心領域32の最大肉厚t1に対して1.5倍程度であり、さほど大きなものとはならない。
【0076】
一方、図8(b)に示すように、本実施形態の比較例に係る灯具ユニット20´は、灯具ユニット20と同様の発光素子22および基板24を備えているが、灯具ユニット20のような集光レンズ40は備えておらず、発光素子22からの出射光が直接レンズ30´に入射する構成となっており、これに伴ってレンズ30´の構成が灯具ユニット20のレンズ30とは異なるものとなっている。
【0077】
そして灯具ユニット20´においては、その発光素子22からの出射光をレンズ30´を介して灯具前方へ向けて照射することにより、図6に示すロービーム用配光パターンPLと略同様の配光パターンを形成するようになっている。
【0078】
これを実現するため、レンズ30´は、レンズ30の場合と同様、中心領域32´と周辺領域34´とを備えており、その中心領域32´の後面32b´には複数のレンズ素子32s´がフレネルレンズ状に形成されるとともに周辺領域34´の後面34b´には複数の全反射プリズム素子34s´が同心円状に並んだ状態で形成されている。そして、このレンズ30´においては、発光素子22の基準位置からの出射光を灯具正面方向へ向かう平行光として前面30a´に導くようになっている。なお、レンズ30´の前面30a´の構成についてはレンズ30の場合と同様である。
【0079】
灯具ユニット20´においては、発光素子22からの出射光が直接レンズ30´に入射する構成となっているが、その際、発光素子22の基準位置からの出射光がレンズ30´に入射する際の最大照射角度θ1は、図8(a)に示す最大照射角度θ1(すなわち灯具ユニット20において発光素子22の基準位置から集光レンズ40に入射する際の最大照射角度)と同じ値に設定されている。
【0080】
これに対応して、レンズ30´の円環状凹曲面C´(すなわち周辺領域34´の後面34b´において複数の全反射プリズム素子34s´が形成される際の包絡面)の曲率は比較的大きい値に設定されている。このため、周辺領域34´の最大肉厚t2は、中心領域32´の最大肉厚t1に対して2倍程度のかなり大きな値となっている。
【0081】
灯具ユニット20´からの照射光によって形成されるロービーム用配光パターンとして、その配光分布を図6に示すロービーム用配光パターンPLの配光分布に近づけるためには、発光素子22からレンズ30´までの光路長を灯具ユニット20における発光素子22からレンズ30までの光路長に近づけることが必要となる。このため灯具ユニット20´においては、そのレンズ30´の外径Dがレンズ30の外径Dよりもかなり大きな値に設定されている。
【0082】
灯具ユニット20と灯具ユニット20´とを比較すると、発光素子22からの出射光に対する利用効率は同様であるが、そのレンズ30、30´に到達する光の光度分布は灯具ユニット20の方が均一なものとなる。これは、灯具ユニット20においては、レンズ30に到達する光が、発光素子22の基準位置に対して灯具後方側に位置する光軸Ax上の点Pを仮想点光源とする光となり、これにより見かけ上の最大照射角度θ2が小さくなる(すなわちθ2<θ1)ことによるものである。
【0083】
次に本実施形態の作用効果について説明する。
【0084】
本実施形態に係る車両用灯具10は、灯具ユニット20の発光素子22(光源)からの出射光をレンズ30を介して灯具前方へ向けて照射することにより、段付カットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンPLを形成するように構成されているが、レンズ30において灯具前後方向に延びる光軸Axを中心とする中心領域32の周囲に位置する周辺領域34の後面34bには、発光素子22からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる複数の全反射プリズム素子34sが、光軸Axを中心にして同心円状に並んだ状態で形成されているので、発光素子22からの出射光を広範囲にわたって前方照射光として利用することができる。
【0085】
その際、複数の全反射プリズム素子34sは光軸Axを中心とする円環状凹曲面Cを包絡面として形成されているので、発光素子22からレンズ30の外周縁部へ向かう出射光に関しても十分な光量が得られるようにすることができる。
【0086】
その上で、発光素子22とレンズ30との間には、発光素子22からの出射光を集光させた状態でレンズ30に入射させる集光レンズ40が配置されているので、レンズ30の周辺領域34の外周縁部に到達する発光素子22からの出射光の光軸Axに対する開き角度(すなわち最大照射角度θ2の半分の値)を小さくすることができる。したがって、複数の全反射プリズム素子34sからの反射光の強度がその径方向の位置によって不均一にならないようすることができ、これによりレンズ30による配光制御が精度良く行われるようにすることができる。
【0087】
このように本実施形態によれば、発光素子22からの出射光をレンズ30を介して灯具前方へ向けて照射するように構成された車両用灯具10において、レンズ30の外周縁部からの出射光の光量を十分に確保した上で、レンズ30による配光制御が精度良く行われるようにすることができる。
【0088】
しかも本実施形態のように、発光素子22からの出射光が集光レンズ40により集光した状態でレンズ30に入射する構成とすることにより、その周辺領域34の最大肉厚t2が中心領域32の最大肉厚t1に対してさほど大きくならないようすることができる。
【0089】
そしてこれにより、図8(b)に示す灯具ユニット20´のように発光素子22からの出射光が直接レンズ30´に入射する構成とした場合に比して、レンズ30の薄型化を図ることができ、かつ、その成形性を高めることができる。しかも、レンズ30はそのサイズがレンズ30´よりも小さいにもかかわらず、ロービーム用配光パターンPLを精度良く形成することができる。
【0090】
本実施形態の集光レンズ40は、前面40aが凸曲面状に形成されるとともに後面40bが平面状に形成された平凸レンズで構成されているので、発光素子22からの出射光を広範囲にわたって入射させて、これを前方照射光として利用することができる。
【0091】
また、本実施形態のレンズ30は、その前面30aが5つの出射領域30a1、30a2、30a3、30a4、30a5に区分けされており、その各々に、複数の全反射プリズム素子34sから到達した光を出射制御する複数のレンズ素子30s1、30s2、30s3、30s4、30s5が形成された構成となっているので、配光制御の自由度をさらに高めることができる。
【0092】
本実施形態においては、灯具ユニット20の光源が、発光面22aを灯具前方へ向けた状態で配置された発光素子22で構成されているので、車両用灯具10からの照射光によって段付カットオフラインCLを有するロービーム用配光パターンPLを形成することが容易に可能となる。
【0093】
上記実施形態においては、発光素子22の発光面22aが1×1mm程度の外形形状を有しているものとして説明したが、これ以外の形状の発光面を有するものを用いることも可能である。
【0094】
上記実施形態においては、灯具ユニット20のレンズ30における中心領域32の後面32bが、フレネルレンズ状に形成されているものとして説明したが、これ以外の構成(例えば単一の凸レンズ面で構成されたもの等)を採用することも可能である。
【0095】
上記実施形態においては、灯具ユニット20のレンズ30が灯具正面視において円形の外形形状を有しているものとして説明したが、これ以外の外形形状を有する構成を採用することも可能である。
【0096】
上記実施形態においては、レンズ30が射出成形品として構成されているものとして説明したが、これ以外の構成(例えば圧縮成形品として構成されたもの等)を採用することも可能である。
【0097】
上記実施形態においては、車両用灯具10からの照射光によって段付カットオフラインCLを有する左配光のロービーム用配光パターンPLを形成するものとして説明したが、これ以外の配光パターンを形成する構成とすることも可能である。
【0098】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0099】
図9は、本変形例に係る車両用灯具の灯具ユニット120を示す、図4と同様の図である。
【0100】
図9に示すように、本変形例の灯具ユニット120においても、発光素子22からの出射光がその灯具前方側に配置されたレンズ130を介して灯具前方へ向けて照射される構成となっており、かつ、両者間には発光素子22からの出射光を集光させた状態でレンズ130に入射させる集光レンズ140が配置された構成となっているが、レンズ130および集光レンズ140の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0101】
すなわち、本変形例のレンズ130も、灯具前後方向に延びる光軸Axを中心とする中心領域132とその周囲に位置する周辺領域134とを備えており、中心領域132および周辺領域134の後面132b、134bは、発光素子22の基準位置からの出射光を灯具正面方向へ向かう平行光としてレンズ130の前面130aに導くように構成されているが、その具体的な構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0102】
すなわち、中心領域132の後面132bは、単一の凸レンズ面で構成されている。
【0103】
一方、周辺領域134の後面134bは、内周側領域134b1と外周側領域134b2とに区分けされた状態で、その各々に複数の全反射プリズム素子134s1、134s2が光軸Axを中心にして同心円状に並んだ状態で形成された構成となっている。
【0104】
具体的には、内周側領域134b1においては、複数の全反射プリズム素子134s1が光軸Axを中心とする第1円環状凹曲面C1を包絡面として形成されており、外周側領域134b2においては、複数の全反射プリズム素子134s2が光軸Axを中心とする第2円環状凹曲面C2を包絡面として形成されている。
【0105】
第1円環状凹曲面C1は、内周側領域134b1の内周縁および外周縁が灯具前後方向に関して略同じ位置になるように形成されている。また、第2円環状凹曲面C2は、外周側領域134b2の内周縁および外周縁が灯具前後方向に関して略同じ位置になるように形成されている。
【0106】
その際、内周側領域134b1においては、複数の全反射プリズム素子134s1の各々に対して発光素子22からの出射光が略均等に入射するように、複数の全反射プリズム素子134s1のピッチおよび第1円環状凹曲面C1の曲率が設定されており、また、外周側領域134b2においては、複数の全反射プリズム素子134s2の各々に対して発光素子22からの出射光が略均等に入射するように、複数の全反射プリズム素子134s2のピッチおよび第2円環状凹曲面C2の曲率が設定されている。
【0107】
その結果、内周側領域134b1に形成された複数の全反射プリズム素子134s1は、内周側領域134b1の内周縁寄りに位置する全反射プリズム素子134s1よりも外周縁寄りに位置する全反射プリズム素子134s1の方が大きい断面形状を有するものとなっている。また、外周側領域134b2に形成された複数の全反射プリズム素子134s2も、外周側領域134b2の内周縁寄りに位置する全反射プリズム素子134s2よりも外周縁寄りに位置する全反射プリズム素子134s2の方が大きい断面形状を有するものとなっている。
【0108】
外周側領域134b2に形成された複数の全反射プリズム素子134s2は、内周側領域134b1に形成された複数の全反射プリズム素子134s1よりも全体的に大きい断面形状を有するものとなるが、複数の全反射プリズム素子134s1、134s2は、2重に設定された第1および第2円環状凹曲面C1、C2を包絡面として形成されているので、外周側領域134b2の外周縁寄りに位置する全反射プリズム素子134s2であってもその断面形状が極端に大きくなってしまうことはない。
【0109】
なお、本変形例のレンズ130においても、その前面130aの構成は上記実施形態の場合と同様である。
【0110】
本変形例の集光レンズ140は、上記実施形態の集光レンズ40と同様、前面140aが凸曲面状に形成されるとともに後面140bが平面状に形成された透明樹脂製の平凸レンズで構成されているが、その前面140aの具体的な表面形状が上記実施形態の場合と異なっている。
【0111】
すなわち、集光レンズ140の前面140aは、光軸Ax上の点を中心とする仮想球面上に3つの集光レンズ素子140s1、140s2、140s3が光軸Axを中心にして同心円状に並んだ状態で形成された構成となっている。
【0112】
中央に位置する集光レンズ素子140s1は、光軸Axを中心にして球面状に形成されており、この集光レンズ素子140s1に隣接する集光レンズ素子140s2は、円弧状の断面形状で光軸Axを中心にして円環状に形成されており、この集光レンズ素子140s2に隣接する集光レンズ素子140s3も、円弧状の断面形状で光軸Axを中心にして円環状に形成されている。
【0113】
集光レンズ素子140s1は、発光素子22からの出射光を光軸Ax寄りの方向へ向けて偏向出射させるように構成されている。また、集光レンズ素子140s2は、発光素子22からの出射光を光軸Axに対してある程度傾斜した方向へ向けて偏向出射させるように構成されている。さらに、集光レンズ素子140s3は、発光素子22からの出射光を光軸Axに対して大きく傾斜した方向へ向けて偏向出射させるように構成されている。その際、集光レンズ素子140s1は、発光素子22からの出射光をレンズ130の中心領域132の後面132bに入射させるような曲率で形成されており、集光レンズ素子140s2は、発光素子22からの出射光をレンズ130の周辺領域134における内周側領域134b1の後面134b1に入射させるような曲率で形成されており、集光レンズ素子140s3は、発光素子22からの出射光をレンズ130の周辺領域134における外周側領域134b2の後面134b2に入射させるような曲率で形成されている。
【0114】
すなわち、集光レンズ140は、3つの集光レンズ素子140s1、140s2、140s3の各々からの出射光が、図9において2点鎖線で区分けされた3つの領域内においてレンズ130に到達するように、各集光レンズ素子140s1、140s2、140s3を構成する表面形状の曲率が設定されている。
【0115】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態の場合と同様、レンズ130の外周縁部からの出射光の光量を十分に確保した上で、レンズ130による配光制御が精度良く行われるようにすることができる。
【0116】
また、本変形例の構成を採用することにより、発光素子22からの出射光が集光レンズ140を介してレンズ130に入射する領域を3つの集光レンズ素子140s1、140s2、140s3の各々の表面形状によって適宜設定することができ、これによりレンズ130による配光制御の自由度を高めることができる。
【0117】
さらに本変形例においては、レンズ130の周辺領域134の構成として、その後面134bが内周側領域134b1と外周側領域134b2とに区分けされた上で、複数の全反射プリズム素子134s1、134s2が、2重に設定された第1および第2円環状凹曲面C1、C2を包絡面として形成されているので、内周側領域134b1の外周縁部に形成された全反射プリズム素子134s1のみならず、外周側領域134b2の外周縁部に形成された全反射プリズム素子134s2についても、そのサイズがあまり大きくならないようにすることができる。したがって、レンズ130を成形する際、複数の全反射プリズム素子134s1、134s2を精度良く成形することが可能となり、これにより配光制御が精度良く行われるようにすることができる。また、レンズ130の周辺領域134の薄型化を図ることができる。
【0118】
なお、上記変形例においては、集光レンズ140の前面140aの構成として、仮想球面上に3つの集光レンズ素子140s1、140s2、140s3が形成されているものとして説明したが、2つまたは4つ以上の集光レンズ素子が形成された構成とすることも可能である。
【0119】
また、上記変形例の灯具ユニット120の代わりに、上記変形例の集光レンズ140と上記実施形態のレンズ30とを組み合わせた構成を採用することも可能であり、あるいは、上記実施形態の集光レンズ40と上記変形例のレンズ130とを組み合わせた構成を採用することも可能である。
【0120】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0121】
また本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0122】
10 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
20、120 灯具ユニット
22 発光素子(光源)
22a 発光面
24 基板
30、130 レンズ
30a、130a 前面
30a1、30a2、30a3、30a4、30a5 出射領域
30s1、30s2、30s3、30s4、30s5 レンズ素子
30s3A 右半部
30s3B 左半部
32、132 中心領域
32b、34b、132b、134b、134b1、134b2 後面
32s レンズ素子
34、134 周辺領域
34s、134s1、134s2 全反射プリズム素子
40、140 集光レンズ
40a、140a 前面
40b、140b 後面
134b1 内周側領域
134b2 外周側領域
140s1、140s2、140s3 集光レンズ素子
Ax 光軸
C 円環状凹曲面
C1 第1円環状凹曲面
C2 第2円環状凹曲面
CL 段付カットオフライン
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
CL3 傾斜部
D 外径
E エルボ点
HZ 高光度領域
P 点
PL ロービーム用配光パターン
P1、P2、P3、P4、P5 配光パターン
t1、t2 最大肉厚
θ1、θ2 最大照射角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9