(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180529
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/25 20180101AFI20231214BHJP
F21S 41/43 20180101ALI20231214BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20231214BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20231214BHJP
F21W 102/13 20180101ALN20231214BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231214BHJP
【FI】
F21S41/25
F21S41/43
F21S41/143
F21V5/04 600
F21V5/04 350
F21W102:13
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093905
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099999
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 隆
(72)【発明者】
【氏名】コリチバ ニキタ
(57)【要約】
【課題】マイクロレンズアレイを備えた車両用灯具において、その奥行寸法を小さくした上で配光ムラの少ない配光パターンを形成可能とする。
【解決手段】発光素子22からの出射光を、コリメータレンズ30を介して平行光としてマイクロレンズアレイ40に入射させる構成とする。その際、コリメータレンズ30の構成として、その中心領域32の周囲に位置する周辺領域32の後面32bに、複数の全反射プリズム素子32sが同心円状に並んだ状態で形成されたものとする。これにより、車両用灯具10の奥行寸法を抑えた上で発光素子22からの出射光を広範囲にわたって前方照射光として利用可能とする。その上で、複数の全反射プリズム素子32sの構成として、光軸Axを中心とする円環状凹曲面Cを包絡面として形成されたものとする。これにより、発光素子22からコリメータレンズ30の外周縁部へ向かう出射光に関しても十分な光量が得られるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの出射光をマイクロレンズアレイを介して灯具前方へ向けて照射することにより、所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記マイクロレンズアレイは、上記光源からの出射光を集光させるための複数の集光レンズ部を有する後側レンズアレイと、上記複数の集光レンズ部によって形成される複数の光源像の各々を投影するための複数の投影レンズ部を有する前側レンズアレイとを備えており、
上記光源と上記後側レンズアレイとの間に、上記光源からの出射光を平行光として上記後側レンズアレイに入射させるためのコリメータレンズが配置されており、
上記コリメータレンズは、灯具前後方向に延びる光軸を中心とする中心領域と、上記中心領域の周囲に位置する周辺領域とを備えており、
上記周辺領域の後面に、上記光源からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる複数の全反射プリズム素子が、上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成されており、
上記複数の全反射プリズム素子は、上記光軸を中心とする円環状凹曲面を包絡面として形成されている、ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
上記コリメータレンズと上記後側レンズアレイとが一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。
【請求項3】
上記前側レンズアレイは、上記複数の投影レンズ部のうち少なくとも一部の投影レンズ部の焦点距離が互いに異なる値に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項4】
上記後側レンズアレイと上記前側レンズアレイとの間に、上記複数の光源像の各々の外形形状を規定するための複数の透光部を有する遮光シートが配置されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【請求項5】
上記光源は、発光面を灯具前方へ向けた状態で配置された発光素子で構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、マイクロレンズアレイを備えた車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用灯具の構成として、光源からの出射光をマイクロレンズアレイを介して灯具前方へ向けて照射することにより、所要の配光パターンを形成するように構成されたものが知られている。
【0003】
「特許文献1」には、このような車両用灯具におけるマイクロレンズアレイの構成として、光源からの出射光を集光させるための複数の集光レンズ部を有する後側レンズアレイと、これら複数の集光レンズ部によって形成される複数の光源像の各々を投影するための複数の投影レンズ部を有する前側レンズアレイとを備えたものが記載されている。
【0004】
この「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、光源からの出射光を平行光にした状態で後側レンズアレイに入射させるためのコリメータレンズを備えた構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような車両用灯具において、その照射光によって形成される配光パターンを配光ムラの少ないものするためには、マイクロレンズアレイにおける複数の集光レンズ部の各々に対して光源からの出射光を均一な明るさの平行光として入射させることが望まれる。
【0007】
これを実現するため、上記「特許文献1」に記載された車両用灯具においては、コリメータレンズが大型のブロック状の透光部材として構成されており、このため車両用灯具の奥行寸法が大きいものとなっている。
【0008】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、マイクロレンズアレイを備えた車両用灯具において、その奥行寸法を小さくした上で配光ムラの少ない配光パターンを形成することができる車両用灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、コリメータレンズの構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0010】
すなわち、本願発明に係る車両用灯具は、
光源からの出射光をマイクロレンズアレイを介して灯具前方へ向けて照射することにより、所要の配光パターンを形成するように構成された車両用灯具において、
上記マイクロレンズアレイは、上記光源からの出射光を集光させるための複数の集光レンズ部を有する後側レンズアレイと、上記複数の集光レンズ部によって形成される複数の光源像の各々を投影するための複数の投影レンズ部を有する前側レンズアレイとを備えており、
上記光源と上記後側レンズアレイとの間に、上記光源からの出射光を平行光として上記後側レンズアレイに入射させるためのコリメータレンズが配置されており、
上記コリメータレンズは、灯具前後方向に延びる光軸を中心とする中心領域と、上記中心領域の周囲に位置する周辺領域とを備えており、
上記周辺領域の後面に、上記光源からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる複数の全反射プリズム素子が、上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成されており、
上記複数の全反射プリズム素子は、上記光軸を中心とする円環状凹曲面を包絡面として形成されている、ことを特徴とするものである。
【0011】
上記「車両用灯具」の種類は特に限定されるものではなく、例えばヘッドランプやフォグランプ等が採用可能である。
【0012】
上記「所要の配光パターン」の種類や具体的な形状は特に限定されるものではなく、例えば、ヘッドランプのハイビーム用配光パターンやロービーム用配光パターン、あるいはフォグランプ用配光パターン、路面描画用配光パターン等が採用可能である。
【0013】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば発光ダイオード等の発光素子や光源バルブ等が採用可能である。
【0014】
上記「中心領域」および「周辺領域」の各々の具体的な範囲および外形形状は特に限定されるものではない。
【0015】
上記「円環状凹曲面」の具体的な曲率は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0016】
本願発明に係る車両用灯具においては、コリメータレンズを介して平行光としてマイクロレンズアレイに入射した光源からの出射光を、マイクロレンズアレイの後側レンズアレイを構成する複数の集光レンズ部によって集光させるとともに、これにより形成される複数の光源像の各々を、マイクロレンズアレイの前側レンズアレイを構成する複数の投影レンズ部によって投影するように構成されているので、所要の配光パターンを任意の形状で形成することが容易に可能となる。
【0017】
その際、コリメータレンズにおいて、灯具前後方向に延びる光軸を中心とする中心領域の周囲に位置する周辺領域の後面には、光源からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる複数の全反射プリズム素子が、上記光軸を中心にして同心円状に並んだ状態で形成されているので、車両用灯具の奥行寸法を抑えた上で、光源からの出射光を広範囲にわたって前方照射光として利用することができる。
【0018】
しかも、複数の全反射プリズム素子は、上記光軸を中心とする円環状凹曲面を包絡面として形成されているので、光源からコリメータレンズの外周縁部へ向かう出射光に関しても十分な光量が得られるようにすることができる。したがって、光源からの出射光を複数の集光レンズ部の各々に対して略均一な明るさの平行光として入射させることができ、これにより配光ムラの少ない配光パターンを形成することができる。
【0019】
このように本願発明によれば、マイクロレンズアレイを備えた車両用灯具において、その奥行寸法を小さくした上で配光ムラの少ない配光パターンを形成することができる。
【0020】
上記構成において、さらに、コリメータレンズと後側レンズアレイとが一体的に形成された構成とすれば、車両用灯具の奥行寸法をさらに小さくすることができ、かつ、部品点数の削減による車両用灯具のコスト低減を図ることができる。
【0021】
上記構成において、さらに、前側レンズアレイとして、複数の投影レンズ部のうち少なくとも一部の投影レンズ部の焦点距離が互いに異なる値に設定された構成とすれば、複数の投影レンズ部からの出射光によって異なる大きさの配光パターンを形成することができ、その合成配光パターンの配光分布の自由度を高めることができる。
【0022】
上記構成において、さらに、後側レンズアレイと前側レンズアレイとの間に、上記複数の光源像の各々の外形形状を規定するための複数の透光部を有する遮光シートが配置された構成とすれば、複数の透光部の各々の大きさや外形形状に応じた配光パターンを形成することができる。
【0023】
その際、上記「複数の透光部」の各々の具体的な大きさや外形形状は特に限定されるものではない。
【0024】
上記構成において、さらに、光源の構成として、発光面を灯具前方へ向けた状態で配置された発光素子で構成されたものとすれば、車両用灯具の奥行寸法を小さくすることが容易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本願発明の一実施形態に係る車両用灯具を示す正面図
【
図4】(a)は
図2のIVa方向矢視図、(b)は
図2のIVb方向矢視図
【
図6】上記車両用灯具からの照射光により形成される配光パターンを透視的に示す図
【
図7】上記実施形態の第1変形例を示す、
図1と同様の図
【
図11】上記実施形態の第2変形例を示す、
図3と同様の図
【
図12】上記第2変形例に係る車両用灯具からの照射光により形成される配光パターンを透視的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用灯具10を示す正面図である。また、
図2は
図1のII-II線断面図であり、
図3は
図1のIII-III線断面図である。なお、
図1においては構成要素の一部を破断した状態で示している。
【0028】
図1~3において、Xで示す方向が灯具としての「前方」(車両としても「前方」)であり、Yで示す方向が「前方」と直交する「左方向」(車両としても「左方向」であるが灯具正面視では「右方向」)であり、Zで示す方向が「上方向」である。
図1~3以外の図においても同様である。
【0029】
図1~3に示すように、本実施形態に係る車両用灯具10は、車両の右前端部に設けられるヘッドランプであって、ランプボディ12と透光カバー14とで形成される灯室内に、光源としての発光素子22と、灯具前後方向に延びる光軸Axを有するコリメータレンズ30と、マイクロレンズアレイ40と、遮光シート50とが収容された構成となっている。
【0030】
そして車両用灯具10は、発光素子22からの出射光を、コリメータレンズ30によって平行光にした状態でマイクロレンズアレイ40に入射させ、このマイクロレンズアレイ40を介して灯具前方へ向けて照射することにより、ロービーム用配光パターン(これについては後述する)を形成するように構成されている。
【0031】
発光素子22は、白色発光ダイオードであって、その発光面22aを灯具前方(具体的には灯具正面方向)へ向けた状態で配置されている。発光素子22の発光面22aは、矩形状(具体的には1×1mm程度の正方形)の外形形状を有している。そして、発光素子22は、その発光中心(すなわち発光面22aの中心位置)を光軸Ax上に位置させた状態で配置されている。
【0032】
次に、コリメータレンズ30の具体的な構成について説明する。
【0033】
図4(a)は、
図2のIVa方向矢視図であり、
図4(b)は、
図2のIVb方向矢視図である。
【0034】
図4にも示すように、コリメータレンズ30は、透明樹脂製の射出成形品であって、光軸Axを中心とする中心領域32と、この中心領域32の周囲に位置する周辺領域34と、この周辺領域34の周囲に位置するフランジ部36とを備えている。中心領域32および周辺領域34は、灯具正面視において光軸Axを中心とする円形状の外形形状を有しており、フランジ部36は、灯具正面視において周辺領域34に外接する矩形状(具体的には一辺が50mm以下(例えば35mm程度)の正方形)の外形形状を有している。
【0035】
中心領域32の後面32bは、複数のレンズ素子32sが光軸Axを中心として同心円状に配置されたフレネルレンズで構成されており、これにより発光素子22からの出射光を光軸Ax寄りの方向へ屈折させる態様でコリメータレンズ30に入射させるようになっている。具体的には、中心領域32の後面32bは、各レンズ素子32sにおいて発光素子22の発光中心からの出射光を灯具正面方向へ向かう平行光としてコリメータレンズ30の前面30aに導くようになっている。
【0036】
周辺領域34の後面34bには、複数の全反射プリズム素子34sが光軸Axを中心にして同心円状に並んだ状態で形成されている。これら複数の全反射プリズム素子34sの各々は、フレネルレンズ型全反射プリズムであって、発光素子22からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させるように構成されている。具体的には、複数の全反射プリズム素子34sの各々は、発光素子22の発光中心からの出射光を、光軸Axから離れる方向へ屈折させる態様で入射させた後、灯具正面方向へ向かう平行光としてコリメータレンズ30の前面30aに導くようになっている。
【0037】
中心領域32と周辺領域34との境界位置は、光軸Axを中心とする半径4~6mm(例えば半径5mm程度)の円によって規定されている。
【0038】
図2、3に示すように、周辺領域34の後面34bに形成された複数の全反射プリズム素子34sは、光軸Axを中心とする円環状凹曲面C(図中2点鎖線で断面形状を示す)を包絡面として形成されている。
【0039】
その際、周辺領域34の後面34bにおいては、複数の全反射プリズム素子34sの各々に対して発光素子22からの出射光が略均等に入射するように、複数の全反射プリズム素子34sのピッチおよび円環状凹曲面Cの曲率が設定されている。
【0040】
その結果、複数の全反射プリズム素子34sは、周辺領域34の後面34bの内周縁寄りに位置する全反射プリズム素子34sよりも外周縁寄りに位置する全反射プリズム素子34sの方が大きい断面形状を有するものとなっている。
【0041】
図1~4に示すように、コリメータレンズ30の前面30aは、光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されている。そして、コリメータレンズ30は、その前面30aをマイクロレンズアレイ40に近接させた状態で配置されている。
【0042】
図2、3に示すように、コリメータレンズ30は、その中心領域32が3~4mm程度の略一定の肉厚になっているが、周辺領域34は、その中間部においては中心領域32よりも薄肉になっており、その外周縁部においては6~8mm程度の肉厚になっている。
【0043】
図4に示すように、コリメータレンズ30のフランジ部36は、中心領域32よりも薄肉でかつ前面30aと面一で平板状に延びるように形成されている。そして、このコリメータレンズ30は、そのフランジ部36においてランプボディ12に支持されるようになっている。
【0044】
次に、マイクロレンズアレイ40の具体的な構成について説明する。
【0045】
図1~3に示すように、マイクロレンズアレイ40は、後側レンズアレイ42と、その灯具前方側に位置する前側レンズアレイ44とを備えている。
【0046】
後側レンズアレイ42の前面は、灯具前後方向と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されているが、その後面には発光素子22からの出射光を集光させるための複数の集光レンズ部42sが形成されている。これら複数の集光レンズ部42sは、いずれも凸曲面状の魚眼レンズであって、灯具前後方向に延びる光軸Ax1を有している。
【0047】
複数の集光レンズ部42sは、縦横格子状に区分けされた複数のセグメントの各々に割り付けられている。各セグメントは、一辺の長さが2~3mm程度(例えば2.5mm程度)の矩形状(例えば正方形)の外形形状を有している。
【0048】
一方、前側レンズアレイ44の後面は、灯具前後方向と直交する鉛直面に沿って延びる平面で構成されているが、その前面には複数の集光レンズ部42sによって形成される複数の光源像の各々を投影するための複数の投影レンズ部44sが形成されている。これら複数の投影レンズ部44sは、いずれも凸曲面状の魚眼レンズであって、複数の集光レンズ部42sの各々と同一サイズで縦横格子状に区分けされた複数のセグメントの各々に割り付けられている。その際、複数の投影レンズ部44sの各々の光軸Ax1は、複数の集光レンズ部42sの各々の光軸Ax1と同軸となるように設定されている。
【0049】
後側レンズアレイ42は、灯具正面視において横長矩形状の外形形状を有しており、複数の集光レンズ部42sが形成されている部分を囲む外周縁領域42cは平板状に形成されている。
【0050】
一方、前側レンズアレイ44も、灯具正面視において後側レンズアレイ42と同一の外形形状を有しており、複数の投影レンズ部44sが形成されている部分を囲む外周縁領域44cは平板状に形成されている。
【0051】
後側レンズアレイ42と前側レンズアレイ44との間には、複数の集光レンズ部42sによって形成される複数の光源像の各々の形状を規定するための遮光シート50が配置されている。
【0052】
遮光シート50は、後側レンズアレイ42および前側レンズアレイ44と略同一の外形形状を有する遮光板(例えば0.1~0.5mm程度の板厚を有する金属板)で構成されている。この遮光シート50には複数の透光部50a、50bが形成されている。その際、複数の透光部50a、50bは、前側レンズアレイ44における複数の投影レンズ部44sの各々に対応するようにして縦横格子状に配置されており、かつ、複数の透光部50aと複数の透光部50bとが、それぞれ縦1列で左右方向に交互に配置されている。
【0053】
【0054】
図5にも示すように、複数の透光部50a、50bは、遮光シート50を貫通する開口部として互いに異なる開口形状で形成されている。
【0055】
すなわち、複数の透光部50aの各々は、横長楕円形の上半部と略同一形状の開口形状を有している。透光部50aの下端縁50a1は、投影レンズ50の後側焦点の位置において光軸Ax1と直交する鉛直面に沿って、左右段違いで左右方向に延びるように形成されている。具体的には、この下端縁50a1は、光軸Ax1よりも左側の部分(灯具正面視では右側の部分)が光軸Ax1に対してやや上方側の位置において水平方向に延びており、光軸Ax1よりも右側の部分が光軸Ax1に対して僅かに下方側の位置において水平方向に延びるとともにその左端部が斜め左上方向に延びた状態で光軸Ax1よりも左側の部分と接続されている。
【0056】
また、複数の透光部50bの各々も、横長楕円形の上半部と略同一形状の開口形状を有しているが、透光部50aよりもかなり小さい開口形状に設定されている。そして、透光部50bの下端縁50b1は、透光部50aの下端縁50a1と同一形状を有している。
【0057】
遮光シート50は、後側レンズアレイ42および前側レンズアレイ44に対して接着等によって固定されている。そして、マイクロレンズアレイ40は、その後側レンズアレイ42の外周縁領域42cにおいてランプボディ12に支持されている。
【0058】
図6は、車両用灯具10からの照射光によって灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図である。
【0059】
図6に示す配光パターンは、左配光のロービーム用配光パターンPLであって、その上端縁に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH-Vを鉛直方向に通るV-V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V-V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0060】
ロービーム用配光パターンPLにおいて、下段カットオフラインCL1とV-V線との交点であるエルボ点Eは、H-Vの0.5~0.6°程度下方に位置している。
【0061】
ロービーム用配光パターンPLは、大小2つの配光パターンPLA、PLBの合成配光パターンとして形成されている。
【0062】
大きい方の配光パターンPLAは、複数の透光部50aを透過した複数の発光素子22からの出射光によって形成される配光パターンである。また、小さい方の配光パターンPLBは、複数の透光部50bを透過した複数の発光素子22からの出射光によって形成される配光パターンである。
【0063】
そして、このロービーム用配光パターンPLにおいては、配光パターンPLAによって拡散領域が形成されるとともに、配光パターンPLBによってエルボ点Eの近傍に高光度領域HZが形成されるようになっている。
【0064】
次に本実施形態の作用について説明する。
【0065】
本実施形態に係る車両用灯具10は、コリメータレンズ30を介して平行光としてマイクロレンズアレイ40に入射した発光素子22(光源)からの出射光を、マイクロレンズアレイ40の後側レンズアレイ42を構成する複数の集光レンズ部42sによって集光させるとともに、これにより形成される複数の光源像の各々を、マイクロレンズアレイ40の前側レンズアレイ44を構成する複数の投影レンズ部44sによって投影するように構成されているので、ロービーム用配光パターンPL(所要の配光パターン)を任意の形状で形成することが容易に可能となる。
【0066】
その上で、コリメータレンズ30において、灯具前後方向に延びる光軸Axを中心とする中心領域32の周囲に位置する周辺領域32の後面32bには、発光素子22からの出射光を入射させた後に灯具前方へ向けて全反射させる複数の全反射プリズム素子32sが、光軸Axを中心にして同心円状に並んだ状態で形成されているので、車両用灯具10の奥行寸法を抑えた上で、発光素子22からの出射光を広範囲にわたって前方照射光として利用することができる。
【0067】
しかも、複数の全反射プリズム素子32sは、光軸Axを中心とする円環状凹曲面Cを包絡面として形成されているので、発光素子22からコリメータレンズ30の外周縁部へ向かう出射光に関しても十分な光量が得られるようにすることができる。したがって、発光素子22からの出射光を複数の集光レンズ部42sの各々に対して略均一な明るさの平行光として入射させることができ、これにより配光ムラの少ないロービーム用配光パターンPLを形成することができる。
【0068】
このように本実施形態によれば、マイクロレンズアレイ40を備えた車両用灯具10において、その奥行寸法を小さくした上で配光ムラの少ない配光パターンを形成することができる。
【0069】
その際、本実施形態においては、マイクロレンズアレイ40を構成する後側レンズアレイ42と前側レンズアレイ44との間に、複数の光源像の各々の外形形状を規定するための複数の透光部50a、50bを有する遮光シート50が配置されているので、複数の透光部50a、50bの各々の大きさや外形形状に応じた配光パターンPLA、PLBを形成することができ、これによりロービーム用配光パターンPLを任意の配光分布で形成することができる。
【0070】
また本実施形態においては、車両用灯具10の光源が、発光面22aを灯具前方へ向けた状態で配置された発光素子22で構成されているので、車両用灯具10からの照射光によってカットオフラインCL1、CL2を有するロービーム用配光パターンPLを形成することが容易に可能となる。
【0071】
上記実施形態においては、発光素子22の発光面22aが1×1mm程度の外形形状を有しているものとして説明したが、これ以外の形状の発光面を有するものを用いることも可能である。
【0072】
上記実施形態においては、コリメータレンズ30における中心領域32の後面32bが、フレネルレンズ状に形成されているものとして説明したが、これ以外の構成(例えば単一の凸レンズ面で構成されたもの等)を採用することも可能である。
【0073】
上記実施形態においては、コリメータレンズ30が灯具正面視において円形の外形形状を有しているものとして説明したが、これ以外の外形形状を有する構成を採用することも可能である。
【0074】
上記実施形態においては、コリメータレンズ30が射出成形品として構成されているものとして説明したが、これ以外の構成(例えば圧縮成形品として構成されたもの等)を採用することも可能である。
【0075】
上記実施形態においては、マイクロレンズアレイ40における後側レンズアレイ42の集光レンズ部42sおよび前側レンズアレイ44の投影レンズ部44sが、縦横格子状に区分けされた複数のセグメントの各々に割り付けられているものとして説明したが、縦横格子状以外の区分け(例えば斜め格子状やハニカム状の区分け等)を採用することも可能である。
【0076】
上記実施形態においては、遮光シート50が、複数の透光部50a、50bが複数の開口部として形成された遮光板で構成されているものとして説明したが、複数の透光部50a、50bを囲む領域の表面に遮光処理が施された透明シートや、後側レンズアレイ42の前面または前側レンズアレイ44の後面において複数の透光部50a、50bを囲む領域に遮光処理が施されることによって形成された遮光膜等を採用することも可能である。
【0077】
上記実施形態においては、遮光シート50に形成された複数の透光部50a、50bが、縦1列で左右方向に交互に形成されているものとして説明したが、これ以外の配置で複数種類の透光部が形成された構成とすることも可能である。
【0078】
上記実施形態においては、所要の配光パターンとしてロービーム用配光パターンPLを形成する場合について説明したが、これ以外の配光パターン(例えば路面描画用配光パターン等)を形成する構成とすることも可能である。
【0079】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0080】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0081】
図7~10は、本変形例に係る車両用灯具110を示す、
図1~4と同様の図である。
【0082】
図7~10に示すように、本変形例に係る車両用灯具110の基本的な構成は上記実施形態の場合と同様であるが、コリメータレンズ130およびマイクロレンズアレイ140の構成が上記実施形態の場合と一部異なっている。
【0083】
すなわち、本変形例のコリメータレンズ130は、上記実施形態のコリメータレンズ30とマイクロレンズアレイ40の後側レンズアレイ42とが一体的に形成されたような構成となっている。
【0084】
具体的には、本変形例のコリメータレンズ130には、その前面130aに複数の集光レンズ部130sが形成されており、これにより上記実施形態のマイクロレンズアレイ40の後側レンズアレイ42としての機能を果たすように構成されている。これら複数の集光レンズ部130sは、いずれも凸曲面状の魚眼レンズであって、上記実施形態のマイクロレンズアレイ40の後側レンズアレイ42に形成された複数の集光レンズ部42sの各々と同一サイズで縦横格子状に区分けされた複数のセグメントの各々に割り付けられている。
【0085】
また、本変形例のマイクロレンズアレイ140は、上記実施形態のマイクロレンズアレイ40における前側レンズアレイ44としての機能を果たすように構成されている。すなわち、このマイクロレンズアレイ140は、その前面140aに複数の投影レンズ部140s2が形成されるとともに、その後面140bに複数の集光レンズ部140s1が形成された構成となっている。これら複数の集光レンズ部140s1および複数の投影レンズ部140s2は、コリメータレンズ130の前面130aに形成された複数の集光レンズ部130sの各々と同一サイズで縦横格子状に区分けされた複数のセグメントの各々に割り付けられている。
【0086】
マイクロレンズアレイ140は、その外周縁領域140cが平板状に形成されており、かつ、灯具後方側へ向けて厚肉となるように形成されている。
【0087】
本変形例においては、上記実施形態と同様の構成を有する遮光シート50がコリメータレンズ130とマイクロレンズアレイ140との間に配置されている。この遮光シート50は、その外周縁部においてマイクロレンズアレイ140の外周縁領域140cに対して接着等によって固定されている。そして、マイクロレンズアレイ140は、その外周縁領域140cにおいてランプボディ12に支持されている。
【0088】
本変形例に係る車両用灯具110においては、発光素子22からの出射光をコリメータレンズ130に入射させて平行光とした後、その前面130aに形成された複数の集光レンズ部130sおよびマイクロレンズアレイ140の後面140bに形成された複数の集光レンズ部140s1によって集光させるとともに、これにより形成される複数の光源像の各々を、マイクロレンズアレイ140の前面140aに形成された複数の投影レンズ部140s2によって投影するように構成されているので、上記実施形態の場合と同様の作用効果を得ることができる。
【0089】
しかも、本変形例のコリメータレンズ130は、上記実施形態のコリメータレンズ30とマイクロレンズアレイ40の後側レンズアレイ42とが一体的に形成された構成となっているので、車両用灯具110の奥行寸法をさらに小さくすることができ、かつ、部品点数の削減による車両用灯具110のコスト低減を図ることができる。
【0090】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0091】
図11は、本変形例に係る車両用灯具210を示す、
図3と同様の図である。
【0092】
図11に示すように、本変形例に係る車両用灯具210の基本的な構成は上記第1変形例の場合と同様であるが、上記第1変形例に係る車両用灯具110のように遮光シート50を備えた構成とはなっておらず、かつ、マイクロレンズアレイ240の構成が上記第1変形例の場合と一部異なっている。
【0093】
すなわち、本変形例のマイクロレンズアレイ240も、その後面240bに複数の集光レンズ部240s1が形成されるとともに、その前面240aに複数の投影レンズ部240s2が形成された構成となっているが、複数の投影レンズ部240s2は、コリメータレンズ130の光軸Axから離れた位置にあるものほど、その表面形状を構成する凸曲面の水平断面形状の曲率が大きくなるように形成されている。一方、これら複数の投影レンズ部240s2の各々の表面形状を構成する凸曲面の鉛直断面形状に関しては、その曲率が略一定の値に設定されている。
【0094】
すなわち、複数の投影レンズ部240s2は、鉛直面内における焦点距離は略一定の値であるが、水平面内における焦点距離は光軸Axから離れた位置にあるものほど短くなっている。
【0095】
これにより、マイクロレンズアレイ240からの出射光は、光軸Axに近い位置にある投影レンズ部240s2においては左右方向に大きく拡がる光となり、光軸Axから離れた位置にある投影レンズ部240s2においては左右方向に小さく拡がる光となる。
【0096】
図12は、車両用灯具210からの照射光によって灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図である。
【0097】
図12に示す配光パターンは、ハイビーム用配光パターンPHを形成する際に、ロービーム用配光パターンPLに対して付加的に形成される付加配光パターンPAである。
【0098】
図12に示すように、付加配光パターンPAは、H-Vを中心にしてV-V線から左右両側に拡がる横長の配光パターンとして形成されている。その際、付加配光パターンPAは、左右拡散角の異なる複数の配光パターンが重畳的に形成されたものとなっている。これは、マイクロレンズアレイ240の前面240aを構成する複数の投影レンズ部240s2の焦点距離が、鉛直面内においては略一定の値であるが水平面内においては光軸Axから離れた位置にあるものほど短くなっていることによるものである。
【0099】
本変形例の構成を採用した場合にも、車両用灯具210の奥行寸法を小さくした上で配光ムラの少ない配光パターンを形成することができる。
【0100】
また本変形例のように、複数の投影レンズ部240s2の各々について、その焦点距離の値を適宜調整することにより、複数の配光パターンの合成配光パターンとして形成される付加配光パターンPAの配光分布の自由度を高めることができる。
【0101】
なお、上記実施形態およびその変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【0102】
また、本願発明は、上記実施形態およびその変形例に記載された構成に限定されるものではなく、これ以外の種々の変更を加えた構成が採用可能である。
【符号の説明】
【0103】
10、110、210 車両用灯具
12 ランプボディ
14 透光カバー
22 発光素子(光源)
22a 発光面
30、130 コリメータレンズ
30a、130a、140a、240a 前面
32 中心領域
32b、34b、140b、240b 後面
32s レンズ素子
34 周辺領域
34s 全反射プリズム素子
36 フランジ部
40、140、240 マイクロレンズアレイ
42 後側レンズアレイ
42c、44c、140c 外周縁領域
42s、130s、140s1、240s1 集光レンズ部
44 前側レンズアレイ
44s、140s2、240s2 投影レンズ部
50 遮光シート
50a、50b 透光部
50a1、50b1 下端縁
Ax、Ax1 光軸
C 円環状凹曲面
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
E エルボ点
HZ 高光度領域
PA 付加配光パターン(所要の配光パターン)
PH ハイビーム用配光パターン
PL ロービーム用配光パターン(所要の配光パターン)
PLA、PLB 配光パターン