(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180531
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
H01L25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093908
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】三木 陽生
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クラックの影響を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置1は、配線基板10と、半導体チップ20と、半導体チップ30と、接着層40と、部材50と、を備える。配線基板10は、面F10aを有し、半導体チップ20が面F1a上に設けられる。半導体チップ30は、半導体チップ20の上方に設けられ、面F10a及び半導体チップ20に対向する面F30aを有し、面F10aに略垂直な方向から見て、半導体チップ20を被覆する。接着層40は、面F30aと、面F10a及び半導体チップ20と、の間に設けられる。部材50は、面F10aに略垂直な方向から見て、接着層40の外周の少なくとも一部に設けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面を有する基板と、
前記第1面上に設けられる第1半導体チップと、
前記第1半導体チップの上方に設けられ、前記第1面および前記第1半導体チップに対向する第2面を有し、前記第1面に略垂直な方向から見て、前記第1半導体チップを被覆する第2半導体チップと、
前記第2面と、前記第1面および前記第1半導体チップと、の間に設けられる第1接着層と、
前記第1面に略垂直な方向から見て、前記第1接着層の外周の少なくとも一部に設けられる部材と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記第1接着層は、アクリルを含む、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1面上に設けられ、前記第2半導体チップ、前記第1接着層、および、前記部材を被覆する樹脂層をさらに備え、
前記部材の引張強度は、前記樹脂層の引張強度よりも高い、請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記樹脂層は、エポキシ樹脂を含む、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記部材の上面の高さは、前記第2面の高さ以上である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記部材の上面の高さは、前記第2面とは反対側の前記第2半導体チップの第3面の高さである、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2半導体チップ上に設けられる第3半導体チップをさらに備え、
前記部材は、前記第3半導体チップを支持する、請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記部材の上面の高さは、前記第2面よりも低い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記基板の前記第1面に設けられるパッドと、
前記パッドと前記第2半導体チップとを電気的に接続するワイヤと、
をさらに備え、
前記部材は、前記第1接着層の外周から、前記パッドまで設けられる、請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記基板は、内部に配線が設けられる第1領域と、内部に配線が設けられない第2領域と、を有し、
前記部材は、前記第1面に略垂直な方向から見て、前記第1接着層の前記第2領域側の外周には設けられない、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項11】
基板の第1面上に第1半導体チップを設け、
第2半導体チップの第2面に設けられた第1接着層が前記第1半導体チップを被覆するように、前記第1面上に前記第2半導体チップを設け、
前記第1面に略垂直な方向から見て、前記第1接着層の外周の少なくとも一部に部材を設ける、
ことを具備する、半導体装置の製造方法。
【請求項12】
半導体素子が形成された第3面と、前記第3面とは反対側の第4面と、を有するウェハの前記第4面に第2接着層を設け、
前記ウェハを前記第2接着層とともに個片化することにより、前記第2面に前記第1接着層が設けられた前記第2半導体チップを形成する、
ことをさらに具備する、請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のパッケージ構造において、基板上のコントローラチップを厚いDAF(Die Attach Film)で覆うように、メモリチップが配置される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クラックの影響を抑制することができる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態による半導体装置は、基板と、第1半導体チップと、第2半導体チップと、接着層と、部材と、を備える。基板は、第1面を有する。第1半導体チップは、第1面上に設けられる。第2半導体チップは、第1半導体チップの上方に設けられ、第1面および第1半導体チップに対向する第2面を有し、第1面に略垂直な方向から見て、第1半導体チップを被覆する。接着層は、第2面と、第1面および第1半導体チップと、の間に設けられる。部材は、第1面に略垂直な方向から見て、接着層の外周の少なくとも一部に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態による半導体装置の構成の一例を示す断面図。
【
図2】
図1の配線基板、半導体チップ、接着層および部材の位置関係の一例を示す平面図。
【
図3A】第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図3B】
図3Aに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図3C】
図3Bに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図3D】
図3Cに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図3E】
図3Dに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図4A】第1実施形態による半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図4B】
図4Aに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図4C】
図4Bに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図4D】
図4Cに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図4E】
図4Dに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図4F】
図4Eに続く、半導体装置の製造方法の一例を示す図。
【
図5】比較例による半導体装置の構成の一例を示す断面図。
【
図6】変形例による配線基板、半導体チップおよび部材の位置関係の一例を示す平面図。
【
図7】第2実施形態による半導体装置の構成の一例を示す断面図。
【
図8】第3実施形態による半導体装置の構成の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。以下の実施形態において、配線基板の上下方向は、半導体チップが搭載される面を上とした場合の相対方向を示し、重力加速度に従った上下方向と異なる場合がある。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。半導体装置1は、配線基板10と、半導体チップ20、30~33と、接着層40~43と、部材50と、接着層60と、ボンディングワイヤ90と、封止樹脂91とを備えている。半導体装置1は、例えば、NAND型フラッシュメモリのパッケージである。
【0009】
配線基板10は、配線層(図示せず)と絶縁層(図示せず)とを含むプリント基板やインタポーザでよい。配線層には、例えば、銅、ニッケルまたはそれらの合金等の低抵抗金属が用いられる。絶縁層には、例えば、ガラスエポキシ樹脂等の絶縁性材料が用いられる。配線基板10は、複数の配線層および複数の絶縁層を積層して構成された多層配線構造を有していてもよい。配線基板10は、例えば、インタポーザのように、その表面と裏面とを貫通する貫通電極(図示せず)を有してもよい。
【0010】
配線基板10の表面(上面)である面F10aには、配線層に接続されるパッド10p1、10p2が設けられる。面F10aは、第1面の一例である。
【0011】
配線基板10の裏面(下面)には、金属バンプ13が設けられている。金属バンプ13は、図示しない他の部品と配線基板10とを電気的に接続するために設けられている。
【0012】
半導体チップ20は配線基板10の表面(面F10a)側に設けられる。半導体チップ20は、接着層21を介して、配線基板10に接着されている。半導体チップ20は、例えば、メモリチップを制御するコントローラチップである。半導体チップ20のうち配線基板10を向いた面とは反対側の面(表面)には、図示しない半導体素子が設けられている。半導体素子は、例えば、コントローラを構成するCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)回路でよい。ボンディングワイヤ22は、配線基板10の表面に設けられるパッド10p2と、半導体チップ20の表面に設けられるパッド(図示せず)と、を電気的に接続する。
【0013】
半導体チップ20の上方には、接着層40を介して半導体チップ30が接着されている。半導体チップ30は、例えば、NAND型フラッシュメモリを含むメモリチップである。半導体チップ30は、その表面に半導体素子(図示せず)を有する。半導体素子は、例えば、メモリセルアレイおよびその周辺回路(CMOS回路)でよい。メモリセルアレイは、複数のメモリセルを三次元配置した立体型メモリセルアレイでもよい。また、半導体チップ30上には、接着層41を介して半導体チップ31が接着されている。半導体チップ31上には、接着層42を介して半導体チップ32が接着されている。半導体チップ32上には、接着層43を介して半導体チップ33が接着されている。半導体チップ31~33は、例えば、半導体チップ30と同様に、NAND型フラッシュメモリを含むメモリチップである。半導体チップ30~33は、同一のメモリチップでもよい。図では、コントローラチップとしての半導体チップ20の他、4つのメモリチップとしての半導体チップ30~33が積層されている。しかし、半導体チップの積層数は、3以下でも、5以上であってもよい。
【0014】
より詳細には、半導体チップ30は、面F30aと、面F30aの反対側である面F30bと、を有し、面F30aに接着層40を有する。面F30aは、配線基板10の面F10a、および、半導体チップ20に対向する面である。面F30aは、第2面の一例である。面F30bは、第3面の一例である。
【0015】
また、接着層40は、接着層41~43よりも厚く、半導体チップ20およびボンディングワイヤ22を埋め込む(被覆する)ように設けられる。すなわち、接着層40は、半導体チップ30の面F30aと、配線基板10の面F10aおよび半導体チップ20と、の間に設けられる。また、接着層40の側面は、面F30aと面F30bとの間にある半導体チップ30の側面とほぼ平行である。すなわち、接着層40の幅は、半導体チップ30の幅とほぼ同じである。尚、幅は、面F10aに略平行な方向の幅である。これは、
図3A~
図3Eを参照して後で説明するように、接着層を貼り付けたウェハをダイシングにより個片化するためである。
【0016】
部材50は、接着層40の外周に設けられている。部材50は、接着層60を介して配線基板10に接着されている。尚、部材50の配置の詳細については、
図2を参照して、後で説明する。また、
図1に示す例では、部材50の上面の高さは、半導体チップ30の面F30aの高さとほぼ同じである。
【0017】
ボンディングワイヤ90は、配線基板10、半導体チップ30~33の任意のパッドに接続されている。ボンディングワイヤ90で接続するために、半導体チップ30~33は、パッドの分だけずらされて積層されている。
【0018】
より詳細には、ボンディングワイヤ90は、配線基板10の表面に設けられるパッド10p1と、半導体チップ30~33の表面に設けられるパッド(図示せず)と、の間を電気的に接続する。
【0019】
さらに、封止樹脂(樹脂層)91が、半導体チップ20、30~33、接着層40~43、60、部材50、ボンディングワイヤ90等を封止している。これにより、半導体装置1は、複数の半導体チップ20、30~33を配線基板10上において1つの半導体パッケージとして構成されている。
【0020】
図2は、
図1の配線基板10、半導体チップ20、接着層40および部材50の位置関係の一例を示す平面図である。
図2は、
図1に示す面F30aに平行な面(
図1のA-A線を参照)を、
図1の紙面上方から見た図である。
【0021】
面F10aに略垂直な方向から見た接着層40の外縁(半導体チップ30の外縁)は、半導体チップ20の外縁よりも外側である。すなわち、半導体チップ30は、面F10aに略垂直な方向から見て、半導体チップ20を被覆する(覆う)ように設けられる。
【0022】
部材50は、面F10aに略垂直な方向から見て、接着層40の外周に設けられる。より詳細には、部材50は、接着層40の外周に沿って、接着層40の外周を覆うように設けられる。すなわち、部材50は、接着層40と封止樹脂91との間に設けられる。
【0023】
また、部材50は、封止樹脂91よりも強度の高い材料で構成される。強度は、例えば、引張強度、曲げ強度、および硬度である。部材50の引張強度は、例えば、10kgf/mm2よりも大きい。これにより、クラックの発生を抑制することができる。
【0024】
接着層40は、例えば、熱硬化性の接着剤である。接着層40の主成分は、例えば、アクリル樹脂である。接着層40の熱膨張係数は、例えば、常温で約70ppm/℃であり、260℃で約120ppm/℃である。尚、接着層40の構成材料は、上記に限られない。
【0025】
封止樹脂91は、例えば、熱硬化性の樹脂である。封止樹脂91の主成分は、例えば、エポキシ樹脂である。封止樹脂91の熱膨張係数は、例えば、常温で約9ppm/℃であり、260℃で約36ppm/℃である。封止樹脂91の曲げ強度は、例えば、30℃で約170MPaであり、260℃で約19MPaである。尚、封止樹脂91の構成材料は、上記に限られない。
【0026】
部材50は、例えば、シリコン(Si)により構成される。尚、部材50の構成材料は、シリコンに限られず、例えば、封止樹脂91よりも強度の高い材料であればよい。また、部材50は、任意の形状に加工可能な材料により構成されることがより好ましい。部材50は、例えば、樹脂により構成されてもよい。
【0027】
次に、半導体装置の製造方法について説明する。
【0028】
図3A~
図3Eは、接着層40を貼り付けたウェハWを半導体チップ30に個片化する工程を示す。
図4A~
図4Fは、配線基板10上に、半導体チップ20、30および部材50を設ける工程を示す。
【0029】
図3A~
図3Eは、第1実施形態による半導体装置1の製造方法の一例を示す図である。
【0030】
図3Aに示すように、複数の半導体素子部を形成したシリコンウェハW(以下ウェハという)を用意する。ウェハWは、半導体素子部を備えた第3面と、Z軸方向において第3面と離れた第4面とを含む。次いで、ウェハWの第3面の上に、表面保護テープ110を接着する。
【0031】
次に、
図3Bに示すように、ウェハWを反転させ、ウェハWの第4面を、研削砥石120を用いて研削し、後退させる。この工程は、いわゆるBSG(Back Side Grinding)工程である。
【0032】
次に、
図3Cに示すように、ウェハWを反転させ、ウェハWの第4面を、ダイシングリング130の上に張り合わせた接着樹脂に接着する。接着樹脂の1つの例は、DAF(Die Attach Film)140aである。
【0033】
次に、
図3Dに示すように、ウェハWの第3面から、表面保護テープ110を剥がす。
【0034】
次に、
図3Eに示すように、ブレード150を用いて、ウェハWをダイシングする。ウェハWには、ダイシングライン160が形成される。ダイシングライン160は、X軸方向及びY軸方向のそれぞれに沿って形成される。ウェハWは、複数の半導体チップ30に分離される。
【0035】
尚、第2接着層としてのDAF140aは、ウェハWとともに個片化されて、第1接着層としての接着層40になる。
【0036】
【0037】
図4Aに示すように、接着層21を介して、配線基板10の面F10a上に半導体チップ20を設ける(マウントする)。接着層21は、予め半導体チップ20に貼り付けられている。その後、ボンディングワイヤ22を形成する。尚、接着層21、ボンディングワイヤ22およびパッド10p2等は省略されている。
【0038】
次に、
図4Bに示すように、
図3A~
図3Eの工程により個片化された半導体チップ30を、接着層40を介して、配線基板10の面F10a上に設ける。より詳細には、半導体チップ30は、面F30aに設けられた接着層40が半導体チップ20およびボンディングワイヤ22を埋め込む(被覆する)ように設けられる。
【0039】
尚、上記のように、接着層40の側面は、面F30aと面F30bとの間にある半導体チップ30の側面とほぼ平行である。すなわち、接着層40の幅は、半導体チップ30の幅とほぼ同じである。
【0040】
次に、
図4Cに示すように、接着層60を介して、配線基板10の面F10a上に部材51を設ける。接着層60は、予め部材51に貼り付けられている。部材51は、例えば、半導体チップ30の1つの辺(短辺)に沿って設けられる。部材51は、部材50の一部である。
【0041】
次に、
図4Dに示すように、接着層60を介して、配線基板10の面F10a上に部材52を設ける。接着層60は、予め部材52に貼り付けられている。部材52は、例えば、半導体チップ30の1つの辺(長辺)に沿って設けられる。部材52は、部材50の一部である。
【0042】
次に、
図4Eに示すように、接着層60を介して、配線基板10の面F10a上に部材53を設ける。接着層60は、予め部材53に貼り付けられている。部材53は、例えば、半導体チップ30の1つの辺(短辺)に沿って設けられる。部材53は、部材50の一部である。
【0043】
次に、
図4Fに示すように、接着層60を介して、配線基板10の面F10a上に部材54を設ける。接着層60は、予め部材54に貼り付けられている。部材54は、例えば、半導体チップ30の1つの辺(長辺)に沿って設けられる。部材54は、部材50の一部である。
【0044】
図4Fに示すように、半導体チップ30の全ての辺(接着層40の外周)に沿って、部材51~54が設けられる。部材51~54は、
図2に示す部材50に対応する。尚、部材51~54を設ける順番は、
図4C~
図4Fに示す例に限られない。
【0045】
以上のように、第1実施形態によれば、部材50は、面F10aに略垂直な方向から見て、接着層40の外周に設けられる。部材50は、封止樹脂91よりも強度の高い材料で構成されるため、応力集中によるクラックの発生を抑制することができ、クラックの影響を抑制することができる。
【0046】
(比較例)
図5は、比較例による半導体装置1aの構成の一例を示す断面図である。比較例は、部材50および接着層60が設けられない点で、第1実施形態とは異なっている。
【0047】
図5に示す例では、クラックCが発生する場合がある。接着層40と封止樹脂91との間の領域は、温度変化により生じる応力の集中によって発生するクラックCの起点になり得る。
図5に示す例では、クラックCは、半導体チップ30と接着層40と封止樹脂91との境界部分を起点として発生する可能性がある。
【0048】
クラックCが配線基板10に進展すると、配線基板10内の配線に影響を与え、断線不良等の電気的不良が発生する可能性がある。
【0049】
これに対して、第1実施形態では、部材50を設けることにより、接着層40と封止樹脂91との接触を抑制することができる。封止樹脂91よりも強度の高い部材50を接着層40の周囲、すなわち、接着層40と封止樹脂91との間に設けることにより、クラックの発生を抑制することができる。
【0050】
尚、
図4Fに示す例では、部材51~54は、ほぼ隙間なく設けられている。しかし、部材50は、接着層40の外周の一部において設けられなくてもよい。従って、部材50は、面F10aに略垂直な方向から見て、接着層40の外周の少なくとも一部に設けられていてもよい。
【0051】
例えば、接着層40の材料、構造または形状等によって、温度変化(膨張)による応力の影響が変化する可能性がある。この結果、接着層40と封止樹脂91との接触位置によってクラックの発生しやすさが変わる場合がある。この場合、クラックが発生しやすい位置に部材50を配置し、他の場所に部材50を配置しなくてもよい。例えば、
図4B~
図4Fにおいて、半導体チップ30の短辺部分においてクラック等の不良が発生しやすいことが予め分かっている場合、短辺に沿って配置される部材51、53を設け、部材52、54を設けなくてもよい。
【0052】
(変形例)
図6は、変形例による配線基板10、半導体チップ30および部材50の位置関係の一例を示す平面図である。
【0053】
配線基板10は、内部に配線が設けられる領域A1と、内部に配線が設けられない領域A2と、を有する場合がある。
図6において、領域A2は、領域A1以外の配線基板10上の領域である。クラックが領域A2に進展しても、断線不良は発生しない。従って、部材50は、面F10aに略垂直な方向から見て、接着層40の領域A2側の外周(半導体チップ30の領域A2側の辺)には設けられなくてもよい。これにより、部材50の材料コストを抑制することができる。
図6に示す例では、半導体チップ20の左の短辺側は領域A2である。従って、部材50は、半導体チップ20の左の短辺側には設けられていない。
【0054】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態による半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。第2実施形態では、第1実施形態と比較して、部材50の上面の高さが異なっている。
【0055】
部材50の上面の高さは、半導体チップ30の面F30aの高さよりも高い。より詳細には、部材50の上面の高さは、半導体チップ30の面F30bの高さである。部材50は、半導体チップ30上に設けられる半導体チップ31を支持するスペーサとして機能する。これにより、半導体チップ31へのボンディングワイヤ90の形成時に半導体チップ31を支えることができる。この結果、ワイヤボンディングの際にかかる加重および応力の影響を抑制し、クラックの発生を抑制することができる。
【0056】
第2実施形態による半導体装置1のその他の構成は、第1実施形態による半導体装置1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第2実施形態による半導体装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0057】
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態による半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。第3実施形態では、第1実施形態と比較して、部材50の上面の高さが異なっている。
【0058】
部材50の上面の高さは、半導体チップ30の面F30aよりも低い。この場合、部材50の体積を低減し、材料コストを抑制することができる。
【0059】
図5に示すクラックCが発生した場合であっても、部材50が配線基板10の面F10aを覆うことにより、クラックCが配線基板10に到達しないようにすることができる。すなわち、第3実施形態による部材50は、配線基板10における配線保護部材として機能する。これにより、クラックCの影響を抑制することができる。
【0060】
部材50は、例えば、接着層40の外周から、パッド10p1まで設けられる。部材50は、配線保護のため、面F10aの平行方向に、より広い範囲に亘って設けられることが好ましい。しかし、パッド10p1が存在する方向(
図8の紙面左右方向)では、部材50は、ボンディングワイヤ90と接触しないように、パッド10p1の手前まで設けられることが好ましい。
【0061】
第3実施形態による半導体装置1のその他の構成は、第1実施形態による半導体装置1の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。第3実施形態による半導体装置1は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 半導体装置、10 配線基板、10p1 パッド、10p2 パッド、20 半導体チップ、22 ボンディングワイヤ、30 半導体チップ、31 半導体チップ、40 接着層、90 ボンディングワイヤ、91 封止樹脂、140a DAF、F10a 面、F30a 面、F30b 面、W ウェハ