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特開2023-180532医用画像処理装置、画像診断装置、及び医用画像処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180532
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】医用画像処理装置、画像診断装置、及び医用画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231214BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20231214BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61B5/055 380
A61B6/03 360Z
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093909
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横沢 俊
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦郎
(72)【発明者】
【氏名】白猪 亨
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
4C601
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA15
4C093FD07
4C093FF18
4C093FF50
4C093FG16
4C093FH07
4C096AB36
4C096AD12
4C096AD13
4C096AD14
4C096AD15
4C096DA14
4C096DB06
4C096DC21
4C096DC40
4C096DD16
4C096DE07
4C601EE22
4C601EE24
4C601JB53
4C601JC01
4C601JC06
4C601LL14
(57)【要約】
【課題】ユーザが所望する画質を得るため条件を容易に提示できる手段を提供すること、これにより繰り返しによる画質調整の手間を削減する。
【解決手段】医用画像処理装置は、医用画像の画質に対するユーザ要望が反映された画質データを受け付ける受付部と、画質データについて画像の特徴量を算出する特徴量算出部と、画質に関連する調整パラメータと画像の特徴量とを紐づけたデータベースを用いて、受付部が受け付けた画質データに適合する調整パラメータを決定し、提示するパラメータ提示部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像の画質に対するユーザ要望が反映された画質データを受け付ける受付部と、
前記画質データについて画像の特徴量を算出する特徴量算出部と、
画質に関連する調整パラメータと画像の特徴量とを紐づけたデータベースを用いて、前記受付部が受け付けた画質データに適合する調整パラメータを決定し、提示するパラメータ提示部と、を備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記受付部が受け付ける画質データは、DICOM情報を含むDICOM画像データであることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の医用画像処理装置であって、
前記パラメータ提示部は、前記特徴量算出部が算出した特徴量と前記DICOM情報とを用いて、前記画質データに適合する調整パラメータを決定することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記受付部は、前記画質データとして、ユーザ所望の画像データを受け付け、
画像データベースから、受け付けた前記画像データに最も近い画像データを選択する画像選択部を含むことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記受付部は、画像データベースに含まれる複数の画像から複数の候補画像を選択して提示し、前記複数の候補画像のうち1ないし複数の画像のユーザ選択を受け付けることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記受付部は、画像データベースに含まれる複数の画像のうち、一つグループに含まれる複数の候補画像を提示し、候補画像のユーザ選択を受け付けた後、当該一つのグループより下位のサブグループに含まれる複数の画像を提示し、画像のユーザ選択を受け付けることを1回以上繰り返すことを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記データベースは、前記調整パラメータ及び前記画像の特徴量を離散的データとして保持することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の医用画像処理装置であって、
前記データベースは、前記離散的データを補間した補間データをさらに保持することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項9】
請求項7に記載の医用画像処理装置であって、
前記パラメータ提示部は、前記データベースの離散的データを補間し、前記離散的データ及びその補間データを用いて前記画質データに適合する調整パラメータを決定することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項10】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記受付部は、前記調整パラメータについての制約条件を受け付ける制約条件受付部をさらに備えることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の医用画像処理装置であって、
前記受付部は、画像データベースに含まれるデータから前記制約条件受付部が受け付けた制約条件に合致する画像データを抽出して提示することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項12】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記データベースは、調整パラメータと紐づけられた仮想画質画像を含み、
前記パラメータ提示部は、調整パラメータとともに前記仮想画質画像を提示することを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項13】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記データベースは、複数の部位ごとに作成されていることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項14】
請求項1に記載の医用画像処理装置であって、
前記データベースは、各部位を標準化した標準ファントムを用いて作成されていることを特徴とする医用画像処理装置。
【請求項15】
撮像部と、前記撮像部が取得した計測データを用いて画像を生成する画像生成部と、前記画像生成部が生成した画像を処理する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、医用画像の画質に対するユーザ要望が反映された画質データを受け付ける受付部と、
前記画質データについて画像の特徴量を算出する特徴量算出部と、
調整パラメータと画像の特徴量とを紐づけたデータベースを用いて、前記画質データに適合する調整パラメータを決定し、提示するパラメータ提示部と、を備えることを特徴とする画像診断装置。
【請求項16】
前記画像診断装置が、MRI装置、CT装置、および超音波撮像装置のいずれかであることを特徴とする請求項15に記載の画像診断装置。
【請求項17】
医用画像の画質に対するユーザ要望が反映された画質データを受け付けるステップと、
前記画質データについて画像の特徴量を算出するステップと、
画質に関連する調整パラメータと画像の特徴量とを紐づけたデータベースを用いて、前記受付部が受け付けた画質データに適合する調整パラメータを決定し、提示するステップとを含む医用画像処理方法。
【請求項18】
請求項17に記載の医用画像処理方法であって、
前記画質データを受け付けるステップは、
画像データベースから画像群を選択して提示するステップと、
前記画像群についてユーザ選択を受け付けるステップと、
前記画像群に含まれる複数の画像またはサブグループを選択して提示するステップと、
前記複数の画像またはサブグループについてユーザ選択を受け付けるステップと、を1回以上繰り返し、最終的にユーザが選択した画像を前記画質データとして受け付けることを特徴とする医用画像処理方法。
【請求項19】
請求項18に記載の医用画像処理方法であって、
調整パラメータに関する制約条件を受け付けるステップをさらに含み、
前記画像群を選択して提示するステップは、前記制約条件に基づき画像群を選択することを特徴とする医用画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MRI装置やCT装置等で取得した医用画像の処理に係り、特に画質調整機能を含む画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI装置で撮像して得られる診断用画像は、一般的には、画素値が物理量に対応する定量的な画像ではなく、組織の縦緩和時間(T1)や横緩和時間(T2)などの物理定量値を強調した画像であり、画像の標準化が行われていない。また、出力される画像の画質は、撮像パラメータ等の撮像条件、及び、フィルタ等の後処理条件(画像再構成条件)に依存しており、同じMRI装置であっても画質の出力パターンは膨大である。さらに、画質はベンダーや装置スペックにも依存するため、機種が異なると同じ撮像条件であっても画質が異なる場合がある。このため、MRI装置では、診断医の望む画質に調整するというニーズが存在する。しかし、医師の望む画質に調整するためには、画質に影響する調整パラメータを変更しながら撮像を繰り返し実行する試行錯誤が必要であり、画質調整は容易ではない。
【0003】
このような課題に関連して、特許文献1には、医療画像データに学習済みモデルを適用して、その医療画像データに対する撮像パラメータを生成する技術が開示されている。この方法では、ユーザが所望する態様の医用画像を選択すると、選択した医用画像に対応付けられた撮像パラメータが出力され、その撮像パラメータを用いて撮像が行われる。撮像パラメータとしては、収集系の種類(コイル等)、収集方法の種類(パルスシーケンス等)、時間パラメータ(TE、TRなど)、フリップアングル、撮像断面、再構成の種類、FOV、マトリクスサイズ、スライス厚、位相エンコードステップ数、スキャンオプションなどが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-27891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、医用画像の態様すなわちT1強調画像かT2*強調画像か、あるいはDWIかさらにはマップ画像かなどについて、撮像パラメータが未知である画像をユーザが指定して、その態様の撮像パラメータを推定するというものであるが、所望の画質調整を行う、或いは所望の画質を得るためのパラメータを提示するものではない。
【0006】
画質調整を目的として、特許文献1の技術を応用しようとする場合、学習済みモデルを構築する際に、所望の画質に合致する医療画像が必要となるが、どのような画質を良しとするかは医師などの主観であり、既存の画像データに所望の医療画像が存在するとは限らない。さらに前述のとおり画質はベンダーや装置スペックにも依存するため、所望の画質を入力し、それに合致する医用データの撮像条件が得られたとしても、その条件と同じ撮像条件であっても機種が異なる場合には得られる画質が異なる可能性がある。このように、特許文献1に記載されるような技術を用いたとしてと、適用すべき特定の装置で所望の画質になるように調整をするのは容易ではない。
【0007】
本発明は、ユーザが所望する画質を得るため条件を容易に提示できる手段を提供すること、これにより繰り返しによる画質調整の手間を削減することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、画質情報から抽出される画像の特徴量と、画質に影響を与える調整パラメータとを紐づけたデータベースを用いて、ユーザが入力した画質情報をもとに、その画質と同じ或いは近い画質が得られる調整パラメータを提示する手段を提供する。調整パラメータは、撮像条件や画像再構成条件などの各種パラメータを含む。
【0009】
すなわち本発明の医用画像処理装置は、医用画像の画質に対するユーザ要望が反映された画質データを受け付ける受付部と、画質データについて画像の特徴量を算出する特徴量算出部と、画質に関連する調整パラメータと画像の特徴量とを紐づけたデータベースを用いて、受付部が受け付けた画質データに適合する調整パラメータを決定し、提示するパラメータ提示部と、を備える。
【0010】
また本発明の画像診断装置は、上述した医用画像処理装置の構成を備えた画像処理部を有する。
【0011】
さらに本発明の医用画像処理方法は、医用画像の画質に対するユーザ要望が反映された画質データを受け付けるステップと、画質データについて画像の特徴量を算出するステップと、画質に関連する調整パラメータと画像の特徴量とを紐づけたデータベースを用いて、受付部が受け付けた画質データに適合する調整パラメータを決定し、提示するステップとを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便な画質情報の入力により、ユーザ所望の画質に近い画質の画像を取得できる推奨撮像パラメータを提示することができ、これにより短時間で所望の画質に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】画像診断装置の全体構成を示す図
図2】画像処理装置の処理を示す図
図3A】実施形態1の画像処理装置の一例の機能ブロック図
図3B】実施形態1の画像処理装置の他の例の機能ブロック図
図4】実施形態1の画質データの受付処理の一例を説明する図
図5】実施形態1のデータベースの構造を説明する図
図6】実施形態1のデータ抽出処理を説明する図
図7】実施形態1のデータ抽出処理の一例を説明する図
図8】実施形態1の変形例のデータベース構造と抽出データの例を示す図
図9】実施形態1の表示例を示す図
図10】実施形態2の画像処理装置の機能ブロック図
図11】実施形態2の処理を示す図
図12】実施形態2の変形例の処理を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の医用画像処理装置の実施形態を、図面を参照して説明する。
本発明の医用画像処理装置は、MRI装置、CT装置、超音波撮像装置などの画像診断装置の装置内に含まれる演算部の一機能としての画像処理装置であってもよいし、これら画像診断装置とは独立した画像処理装置でもよい。
【0015】
画像処理装置が、画像診断装置の一機能である場合、画像診断装置1は、図1に示すように、被検体の計測データを収集する計測部10、計測部10が取得した計測データを用いて画像を生成する画像生成部20と、画像生成部20が生成した画像を処理する画像処理部30と、を備える。
【0016】
画像診断装置1とは独立した医用画像処理装置(以下、単に画像処理装置という)3を備える場合には画像処理装置3、或いは画像処理部30は、医用画像の画質に対する医師や技師(以下、まとめてユーザという)の要望が反映された特定の画像データ(画質データという)を受け付ける受付部31と、受け付けた画質データについて、それを特定する画像の特徴量を算出する特徴量算出部33と、撮像から生成までの調整パラメータと画像の特徴量とを紐づけたデータベースを用いて、所望画質画像データの最適調整パラメータを決定し、提示するパラメータ提示部35と、を備える。さらに後述する処理に必要な多数のデータを収納したデータベース50が備えられていてもよい。
【0017】
画像診断装置1(画像処理部30)及び画像処理装置3は、ユーザからの入力を受け付けたり、ユーザに処理結果を提示したりするためのUI部40が備えられている。UI部40は、ユーザとインタラクティブにやり取りするための入力装置及び表示装置(出力装置)を備えている。
【0018】
以下、画像処理部30或いは画像処理装置3における処理の概略を、画像処理装置3で代表して説明する。図2に処理の概要を示す。
【0019】
UI部40を介して入力された画像の画質に関する情報(画質データ)を受付部31が受け付けると(S1)、特徴量算出部33は、その情報を用いて、ユーザ所望の画質の画像の特徴量を算出する(S2)。ユーザが入力する画質に関する情報(画質データ)は、例えば、画像データとその付帯情報を含み、ユーザが理想とする画質を持つ画像そのものでもよいし、画像処理装置3が提示する複数の候補画像から所望の画像を選択するという形で受け付ける情報であってもよい。このような情報の入力により、画質に関するユーザの要望が反映された特定の画像データ即ち画質データが決まるので、特徴量算出部33は、一般的な解析手法を用いて、画質データの画像特徴量を算出する。
【0020】
一方、種々の画像について画像とそれを取得・生成した際の調整パラメータ、及び画像とその特徴量とをそれぞれ紐づけたデータベース50を予め用意しておく。調整パラメータは、例えば、撮像条件(各種撮像パラメータや装置の条件など)のほか、画像生成の際の条件(再構成条件やフィルタやノイズ低減処理などの条件)を含んでもよい。さらにデータベース50はモダリティ毎に作成してもよいし、モダリティの種類を調整パラメータに含めてもよい。また、データベース50は、画像処理装置3の一部であってもよいが、画像処理装置3とは別に用意し、画像処理装置3からアクセス可能なものでもよい。
【0021】
パラメータ提示部35は、特徴量算出部33が算出した所定の画質データについての画像の特徴量と、データベース50に収められた画像の特徴量とを照合し、もっとも近い特徴量を特定し、それに紐づけられた調整パラメータを適合調整パラメータとしてUI部40を介してユーザに提示する(S3)。またパラメータ提示部35が特定した適合調整パラメータを、画像診断装置1に転送し、画像診断装置1の計測部10及び画像生成部20が、当該適合調整パラメータに従って計測データの収集及び画像生成を行ってもよい(S4)。この際、適合調整パラメータをユーザに提示し、必要に応じて適宜修正を受け付けた後、修正後の条件を計測部10や画像生成部20に渡してもよい(S5)。画像診断装置1の画像処理部30が、適合調整パラメータを特定する場合には、上記ステップS4、S5は装置内の処理として行われる。
【0022】
本実施形態によれば、ユーザが所望する調整パラメータを容易に設定して、画像診断装置に適用することができる。これによりユーザが所望の画質を得るための試行錯誤を不要とし、短時間で所望の画質の画像を生成することができる。
【0023】
以上説明した画像処理装置の構成と処理の概要を踏まえ、以下、詳細な処理の実施形態を説明する。
【0024】
<実施形態1>
本実施形態の画像処理装置の構成は、図3A、図3B(総括的に参照する場合は図3という)に示す。図3において、図1に示す要素と同じ要素は同じ符号で示す。図示するように、本実施形態の画像処理装置3は、画質情報受付部(以下、単に受付部という)31、適合パラメータ生成部32、パラメータ提示部35を備え、適合パラメータ生成部32は、画像特徴量算出部33(特徴量算出部)、データベース50、及びデータ抽出部34を含む。データ抽出部34はデータベース50内に格納された特徴量と特徴量算出部33が算出した特徴量とのマッチングを行い、データベースに格納されたデータの抽出を行う。
【0025】
受付部31は、図1の受付部31と同様の機能を持つが、図3Bに示すように、画像データベース60から画像を選択して提示するための機能(画像選択部311、画像提示部312)を有していてもよい。
【0026】
以下、本実施形態の処理を説明する。本実施形態が対象とする画像データはMR画像に限るものではないが、ここでは一例として対象とする画像がMRIで取得した画像の場合を説明する。
【0027】
[画質データの受付:S1]
まず受付部31が、ユーザにより入力された画質に関する情報を受け付ける。画質に関する情報は、ユーザが所望する画質の画像データを所有している場合は、そのDICOM情報を入力する。DICOM情報には、画像データと撮像パラメータである分解能、マトリクスサイズ、TE、TRなどタグ情報が付帯情報として含まれている。DICOM情報も利用することで、その後の調整パラメータの選択範囲を限定することができ、データベースからのデータ抽出を簡易にすることができる。
【0028】
なおユーザは、UI部40を介してDICOM情報のデータパスを指定することで、画質データの入力、即ち受付部31とユーザとのインタフェースが実現できる。なお受付部31が受け付ける画質データは、DICOM画像が好ましいが、ユーザが所望する画質の画像データのみ(付帯情報なし)を所有している場合は、その画像データのみを受け付けてもよい。
【0029】
またユーザが理想の画質について特定の画像を持っていない場合、つまり理想はユーザの概念として存在するだけの場合、まず画像選択部311(図3B)が、画像データベース60から候補となる複数の画像を表示装置に表示させて、そのうちの1ないし複数の画像をユーザに選択させてもよい。画像データベース60は、例えば、モダリティ毎、部位毎に、MRI画像であれば画像種毎(T1強調画像、T2強調画像、DWIなど)に、SNR、コントラスト、デノイズ強度などの画質に与える条件が異なる種々の画像を格納したものであり、既に一般に公開されている画像データベース(公共財となっているデータベース)、施設が保有している画像データベースなどを利用してもよいし、新たに作成したものでもよい。
【0030】
画像選択部311がデータベースから複数の候補画像を選択する手法は、特に限定されないが、効率よく選択可能にするために、段階的な選択を受け付けることが好ましい。例えば、図4に示すように、ユーザに画像が属するカテゴリーを選択させて、そのカテゴリーに含まれる複数の画像のうち、一つグループに含まれる複数の候補画像を選択し、画像提示部312が提示する。提示された候補画像のユーザ選択を受け付けた後、当該一つのグループより下位のサブグループに含まれる複数の画像を選択し提示するというように、多段的にユーザ選択の受付と提示を繰り返す。カテゴリー或いはグループへのセグメント化は、画像データベースの構造によるが、画像データベースに画像と共に格納されたDICOM情報をもとに行うことができ、例えばモダリティ、部位、画像種、画像の画質を決める客観的指標(マトリクスサイズ、SNR、コントラスト)などを用いて分類することができる。
【0031】
MR画像の例として、例えば、まずMR画像の画像種と部位の選択を受け付け、画像種と部位が決まったならば、当該部位の当該画像種に含まれる複数の画像の中から、マトリックスサイズの異なる複数種(グループ)の代表画像(任意の一画像)を提示し、マトリックスサイズを選択させる。マトリクスサイズそのものを提示し選択させてもよいが、代表画像を提示することで、ユーザはマトリクスサイズの選択が容易になる。マトリクスサイズを受け付けたならば、そのマトリクスサイズの画像を提示する。ここでも下位の分類(サブグループ)(例えばパルスシーケンス種など)或いはサブグループに属する代表画像を提示し、選択させるというように、順次選択範囲を絞っていってもよい。ここでは、上位のグループがマトリクスサイズ、サブグループがパルスシーケンス種である場合を例にしたが、グループ分けはこの例に限定されないし、またいずれを上位とするかも予め任意に設定しておくことができる。
【0032】
最終的に、画像提示部312は、ユーザ負担を低減できる程度の数の画像を提示し、それに応じてユーザが選択した画像を、画質データとして受付部31が受け付ける。受け付ける画像の数は一つに限らず、複数例えば2枚~数枚の画像を受け付けてもよい。複数画像を受け付けることにより、その後の処理において、よりユーザの求める画質に近い画像に相当する調整パラメータを推奨調整パラメータとして提示することができる。
【0033】
[特徴量算出:S2]
ステップS1で画質データが特定されると、特徴量算出部33は、特定された画質データの特徴量を算出する。特徴量としては、例えば、SNR(信号ノイズ比)、PSNR(Peak Signal to Noise Ratio)、SSIM(Structural Similarity)、CNR(Contrast to Noise Ratio)、MSE(Mean Squared Error)、鮮鋭度などを用いることができる。これら特徴量の算出手法は、一般的な手法が知られており、ここでは説明を省略する。またこのように算出方法が確定された客観的な特徴量の代わりに、或いは客観的な特徴量と併せて、CNNを利用して導出可能な特徴量を用いることもできる。特徴量算出部33は1ないし二種以上の特徴量を算出する。
【0034】
複数の特徴量は個々の特徴量を連結した一次元ベクトルとして表すことができる。
【0035】
[適合パラメータの決定及び提示:S3、S4]
パラメータ提示部35が適合パラメータを提示するため、データ抽出部34は、特徴量算出部33が算出した特徴量を、データベース50に格納された多数の画像の特徴量と照合し、それと紐づけられた調整パラメータ(適合パラメータ)を抽出する(S3)。
【0036】
データベース50は、例えば、図5に示すように、各部位を標準化した標準ファントムを用いて、調整パラメータを種々に異ならせて得た画像とその画像の特徴量とから作成することができ、調整パラメータと画像の特徴量とをそれぞれ離散的データとして保持している。標準ファントムを用いたデータの代わりに或いはそれに加えて、調整パラメータが既知である多数の画像について、その調整パラメータと画像の特徴量とを紐づけて保持していてもよい。
【0037】
データベース50は、調整パラメータ及び特徴量のそれぞれについて、離散的データを補間し、両者が紐づけられた補間データをさらに保持してもよい。これにより、特徴量算出部33が算出した特徴量により近い特徴量をもつデータベースを保持することとなり、よりユーザの求める画質に近い画像に相当する調整パラメータを推奨調整パラメータとして提示することができる。
【0038】
なおデータベース50における特徴量の種類は、特徴量算出部33が算出する特徴量の種類と必ずしも一致しなくてもよいが、少なくとも一部は重複しており、特徴量算出部33が特徴量を算出した手法と同様の手法で算出されている。
【0039】
データ抽出部34は、図6に示すように、特徴量算出部33が算出した特徴量すなわち受付部31が受け付けた画質データに係る画像の特徴量Aと、データベース50に格納されている特徴量と特徴量算出部33が算出した特徴量1~特徴量Nとのマッチングを行い、データベース50の特徴量から一番近い特徴量(図では特徴量j)を選択する。対比する特徴量の近さは、一次元ベクトルである特徴量について、対比するベクトルの差分、相関、または内積などの演算を行い、差分が最小なもの、相関が最も高いもの、或いは内積が最大のものを最も近いと判断し、選択する。一番近い位置にある特徴量が複数あるときは複数を選択してもよい。
【0040】
パラメータ提示部35は、データ抽出部34が選択した特徴量に紐づけられた調整パラメータ(複数の調整パラメータの組み合わせ)を選択する。この際、図7に示すように、受付部31が受け付けた画質データがDICOM情報(分解能、マトリクスサイズ、TE、TRなどタグ情報)を含む場合には、DICOM情報に含まれる調整パラメータに近い調整パラメータをもつ複数のデータを抽出し、抽出された複数データ内の特徴量を比較し、調整パラメータを選択する。これによりデータベースからの調整パラメータ選択を容易にすることができる。
【0041】
あるいは、DICOM情報に含まれる調整パラメータを画像の特徴量として加え、データベース50に格納されている特徴量と特徴量算出部33が算出した特徴量1~特徴量Nとのマッチングを行っても良い。いずれの場合においても、DICOM情報に含まれる調整パラメータとユーザの求める画質に近い画像に相当する調整パラメータを推奨調整パラメータとして提示することができる。
【0042】
パラメータ提示部35は、選択した調整パラメータを推奨調整パラメータとして提示する。この際、提示された推奨調整パラメータに対し、ユーザが編集する機能を追加することも可能である。
【0043】
ユーザは、パラメータ提示部35が提示した推奨調整パラメータ、またはユーザが選択或いは修正した推奨調整パラメータを用いて、画像診断装置1を用いた撮像を行う。画像診断装置の画像処理部30が推奨調整パラメータを提示する機能を持つ場合は、提示した或いは適宜修正した推奨調整パラメータを用いた計測と後処理条件を適用した画像生成を行う。
【0044】
本実施形態によれば、ユーザが希望する画質の画像を得るための条件を、画像診断装置(撮像装置)に容易に設定することができる。またユーザに具体的な画質についての情報がない場合にも、ユーザが選択可能な種々の画像を提示することで、ユーザは所望の画質を明確化してそれを得るための条件設定を行うことができる。
【0045】
<変形例1>
上記実施形態では、複数の特徴量を同等に扱い、画質を特定したが、複数の特徴量を用いる場合、それらに重みを加えてもよい。例えば複数の特徴量を加算して一次元のベクトルで表す場合に、単純に加算するのではなく、ユーザの好みを反映した重み付けを行って加算する。
【0046】
ユーザの好みを重みに反映する手法として、例えば、上述したSNRやCNRなどの特徴量のうち、何を重視するかをユーザが選択し、予め定めた割合(例えば他の特徴量の重みの1.5倍、2倍など)で、特定の特徴量の重みを大きくしてもよい。また別の方法として、ユーザが画像を選択する操作を選択する画像を入れ替えながら繰り返すことで、ユーザの重視する重みを獲得してもよい。
【0047】
<変形例2>
本変形例は、画質データを受け付け、その画像特徴量とデータベースに格納された画像特徴量とのマッチングを行うことは実施形態1と同様であるが、本変形例はデータベース50が、特徴量及び調整パラメータだけでなく、これらと紐づけられた画像を格納していること、パラメータ提示部35によって適合調整パラメータが選択されると、適合調整パラメータとともに、それに紐づけられた画像を合わせて提示する。
【0048】
本変形例のデータベース50の例を図8に示す。
【0049】
調整パラメータに紐づけられた画像は、データベースが各部位を標準化した標準ファントムを用いて、調整パラメータを種々に異ならせて得た画像とその画像の特徴量とから作成したものである場合には、作成の際に用いた画像(仮想画像)をそのまま利用することができる。
【0050】
提示は、例えば、図9に示すように、UI部40(表示装置)の表示画面400に、選択された適合調整パラメータ(推奨調整パラメータ)401、402と共にそれに紐づけられた画像403を表示する。この例では調整パラメータは、撮像パラメータ401と画像再構成条件などの後処理条件402を含み両者がそれぞれ表示される。ユーザは、表示装置に表示された画像(仮想画像)を確認することで、その調整パラメータが所望の画質の画像を得られる条件かどうかを確認することができる。また2以上の調整パラメータが選択され、2以上の画像を表示する場合には、それらのうちユーザが最も好ましいと思う画像を選択するGUIを表示して、ユーザ選択を受け付けることができる。
【0051】
本変形例によれば、ユーザは表示された仮想画像を確認することで推奨調整パラメータを用いた場合の画質を確認することができ、より希望の画質に合った調整パラメータを得ることができる。
【0052】
<実施形態2>
本実施形態においても、画像処理装置3の受付部31が画質データを受け付け、調整パラメータを提示することは実施形態1と同様であるが、本実施形態は調整パラメータの制約条件を受け付け、制約条件に合致する調整パラメータの中から最適な調整パラメータを提示することが特徴である。
【0053】
本実施形態の画像処理装置3は、図3A、図3Bに示す実施形態1の構成に加えて、図10に示すように、受付部31の一機能として、ユーザによる制約条件受付部315有する。また受付部31が画像選択部311を含む場合は、画像選択部311は、画像データベース60に含まれる画像をセブメント化する際に、制約条件を満たす調整パラメータで取得された画像のみを選択する機能が追加される。
【0054】
以下、図11を参照して、実施形態1と異なる点を中心に、本実施形態の画像処理装置3の処理を説明する。図11において、図2に示す処理と同じ処理は同じ符号で示し、異なる点を中心に説明する。
【0055】
まず受付部31は、画質データとともに調整パラメータについての制約を受け付ける(S11)。制約は、撮像パラメータの制約及び後処理の制約のいずれを含んでもよいが、ユーザが使用できる撮像装置のスペックなどから自動的に決まる制約や、ユーザの希望によって決まる制約があり得る。後者として例えば撮像時間、FOV、スライス枚数(スライス厚)などが挙げられる。
【0056】
制約条件の受付は、UI部40を介して、制約条件の項目を列挙したGUIを表示し、ユーザが所望の値や程度などを入力可能にしてもよい。画質情報については実施形態1と同様であり、所望の画質の画像データがある場合には、データパスの指定により入力し、また所望の画像データがない場合には、データベースにある画像から、画像数に応じて適宜段階的に複数の候補画像を提示してもよい。
【0057】
受付部31は画質情報を受け付けると(S1)、受け付けた画質情報にDICOM情報が含まれる場合は、DICOM情報に含まれる情報が制約条件に合致するか否かを判断する(S12)。その結果、合致すれば、実施形態1と同様に特徴量算出部33が画像の特徴量を算出し、図7に示したように、データ抽出部34がDICOM情報と画像特徴量(特徴量A)とを用いてデータベース50から適合する調整パラメータを選択し、パラメータ提示部35が提示する(S2~S4)。
【0058】
画質情報が制約条件に合致しない場合、或いはユーザが特定の画質情報を持たず、画像選択部311を介して画像データベース60から所望の画像を選択する場合(図3B)には、画像データベース60を所定のカテゴリー或いはグループ、サブグループにセグメント化して提示する際に、制約条件受付部315が受け付けた制約条件に合致するもののみを選択し、提示する(S13)。その後、ユーザが選択した画像について画像の特徴量を算出すること、適合調整パラメータを決定することは実施形態1と同様である(S2~S4)。
【0059】
本実施形態によれば、予め制約条件を受け付けておくことで、使用可能な条件やユーザの好みを反映して、調整パラメータを決定することができ、事後的に調整パラメータを再調整するなどの手間を削減することができる。例えば図2のステップS5を省略することができる。
【0060】
なお実施形態1の変形例は本実施形態においても適用することができる。また本実施形態の変形例として、上記説明では、画像選択部311が画像データベースをセグメント化する際に制約条件を用いて画像を選択するとしたが、図12に示すように、データ抽出部34がデータベース50から、画質情報から得た画像の特徴量及びDICOM情報を用いて特定のデータ(調整パラメータ、画像を含む場合もある)を抽出する際に、制約条件受付部315が受け付けた制約条件を加えて抽出する(S31、S32)ことも可能である。
【符号の説明】
【0061】
1:画像診断装置、3:画像処理装置、10:計測部、20:画像生成部、30:画像処理部、31:受付部(画質情報受付部)、32:適合パラメータ生成部、33:特徴量算出部、34:データ抽出部、35:パラメータ提示部、40:UI部、50:データベース、60:画像データベース、311:画像選択部、312:画像提示部、315:制約条件受付部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12