(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180540
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】鳥獣威嚇システム
(51)【国際特許分類】
A01M 29/10 20110101AFI20231214BHJP
A01M 29/16 20110101ALI20231214BHJP
【FI】
A01M29/10
A01M29/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093922
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】506192250
【氏名又は名称】親和開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】小島 達雄
(72)【発明者】
【氏名】小島 光晴
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121CC21
2B121DA33
2B121DA58
2B121DA62
2B121DA63
2B121EA21
2B121FA13
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】従来既設の設備を利用することができ、低コストで導入することができる鳥獣威嚇システムを提供する。
【解決手段】カート車1の照明用ライト6、6を点灯させた状態で、誘導線Lの周回部においてカート車1を停車させることなく周回させることにより、鳥獣を威嚇するため、猪等の鳥獣に対して威嚇効果の高い鳥獣威嚇システムとすることができる。さらに、複数のホールに跨がって閉曲線状に敷設されている誘導線Lや、その誘導線Lに沿って自動走行する照明用ライト6、6を備えたカート車1等、既存のゴルフ場における既設のカート車の自動走行システムを利用して鳥獣威嚇システムを構成することができるため、低コストで導入することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフ場に敷設されている誘導線に沿ってカート車を自動走行させることにより、鳥獣を威嚇する鳥獣威嚇システムであって、
前記カート車に、点灯手段及び/又は報音手段が設けられているとともに、
前記誘導線に、閉曲線状の周回部が設けられており、
前記周回部において、前記点灯手段及び/又は前記報音手段が動作している前記カート車を停車させることなく周回させることで、鳥獣を威嚇することを特徴とする鳥獣威嚇システム。
【請求項2】
鳥獣を威嚇するための照射を行う威嚇用照射装置と、鳥獣を威嚇するための威嚇用音声及び/又は電子音を報音可能な威嚇用報音装置と、鳥獣を威嚇するための臭いを噴霧する威嚇用噴霧装置との少なくとも何れか1つが設置された威嚇手段が、前記カート車に着脱自在に取り付けられており、
前記周回部の周回時に、前記点灯手段及び/又は前記報音手段に加えて、前記威嚇手段を動作させることを特徴とする請求項1に記載の鳥獣威嚇システム。
【請求項3】
複数の前記カート車を、所定の発車間隔を空けて周回させることを特徴とする請求項1又は2に記載の鳥獣威嚇システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフ場においてカート車を自動で巡回させることにより、猪等の鳥獣を威嚇する鳥獣威嚇システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、猪や猿、カラスなどの鳥獣を威嚇するための鳥獣威嚇システムとして、種々のものが考案されている。たとえば特許文献1に記載されている鳥獣威嚇システムでは、所定の威嚇エリア内に複数の支柱を立設して、それらの支柱同士を結ぶようにレールを架け渡しており、スピーカ等を備えた威嚇体をレールに沿って移動させることで鳥獣を威嚇するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の鳥獣威嚇システムでは、支柱を立設したり、威嚇体を設けたりと鳥獣威嚇のための専用の構成要素を必要としているため、導入にコストがかかるという問題がある。特に、ゴルフ場ような広大なエリアを対象として導入するとなると、コスト面での問題は非常に顕著となる。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みなされたものであって、従来既設の設備を利用することができ、低コストで導入することができる鳥獣威嚇システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ゴルフ場に敷設されている誘導線に沿ってカート車を自動走行させることにより、鳥獣を威嚇する鳥獣威嚇システムであって、前記カート車に、点灯手段及び/又は報音手段が設けられているとともに、前記誘導線に、閉曲線状の周回部が設けられており、前記周回部において、前記点灯手段及び/又は前記報音手段が動作している前記カート車を停車させることなく周回させることで、鳥獣を威嚇することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、鳥獣を威嚇するための照射を行う威嚇用照射装置と、鳥獣を威嚇するための威嚇用音声及び/又は電子音を報音可能な威嚇用報音装置と、鳥獣を威嚇するための臭いを噴霧する威嚇用噴霧装置との少なくとも何れか1つが設置された威嚇手段が、前記カート車に着脱自在に取り付けられており、前記周回部の周回時に、前記点灯手段及び/又は前記報音手段に加えて、前記威嚇手段を動作させることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、複数の前記カート車を、所定の発車間隔を空けて周回させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カート車に、点灯手段及び/又は報音手段が設けられているとともに、誘導線に、閉曲線状の周回部が設けられている。そして、周回部において、点灯手段及び/又は報音手段が動作しているカート車を停車させることなく周回させることにより、鳥獣を威嚇するため、猪等の鳥獣に対して威嚇効果の高い鳥獣威嚇システムとすることができる。さらに、複数のホールに跨がって閉曲線状に敷設されている誘導線や、その誘導線に沿って自動走行する点灯手段及び/又は報音手段を備えたカート車等、既存のゴルフ場における既設のカート車の自動走行システムを利用して鳥獣威嚇システムを構成することができるため、低コストで導入することができる。
また、請求項2に記載の発明によれば、鳥獣を威嚇するための照射を行う威嚇用照射装置と、鳥獣を威嚇するための威嚇用音声及び/又は電子音を報音可能な威嚇用報音装置と、鳥獣を威嚇するための臭いを噴霧する威嚇用噴霧装置との少なくとも何れか1つが設置された威嚇手段を、カート車に着脱自在に取り付け、周回部の周回時に、点灯手段及び/又は報音手段に加えて威嚇手段を動作させるため、一層威嚇効果の高い鳥獣威嚇システムとすることができる。加えて、カート車を鳥獣威嚇システムとして運用しない際には、威嚇手段をカート車から取り外しておけばよく、ゴルフ場の営業時間中等にカート車を運用する際に威嚇手段が邪魔になったりしない。
さらに、請求項3に記載の発明によれば、複数のカート車を、所定の発車間隔を空けて周回させるため、威嚇したい鳥獣の習性に合わせた運用が可能となり、極めて威嚇効果の高い鳥獣威嚇システムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】鳥獣威嚇システムで使用するカート車を示した斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態となる鳥獣威嚇システムについて、図面にもとづき詳細に説明する。
【0010】
図1は、鳥獣威嚇システムで使用するカート車1を示した斜視説明図である。
図2は、威嚇用ベルト10を示した斜視説明図である。
図3は、カート車1のブロック構成図である。
鳥獣威嚇システムは、ゴルフ場で運用されるものであって、カート車1、及びカート車1を自動走行させるための誘導線Lを備えてなる。カート車1は、一般的なゴルフ場で利用されている既知のものであって、電源2、タイヤやモータ等の走行部3、磁気センサ4、自身の動作を制御する制御部5、車体の前面に設けられた照明用ライト6、6、及びメモリ7等が設けられている。そして、カート車1は、既存のゴルフ場に既設のカート車の自動走行システム(すなわち、従来周知のカート車の自動走行システム)による制御のもと、予め敷設されている誘導線Lを磁気センサ4で検知等することにより、誘導線Lに沿ってゴルフ場内を自動走行可能となっている。
【0011】
また、誘導線Lにおける各ホールのティーグラウンド等の特定位置には、カート車1を停車させるための停車マーカが設置されている。さらに、カート車1の制御部5には、カート車1の走行モードとして、自動走行中に停車マーカを検知すると所定時間にわたってカート車1を停車させるとともに、発車操作若しくは所定時間の経過に伴って自動的にカート車1を発車させ、次の停車マーカまで誘導線Lに沿って自動走行させるという通常営業モードが設定されている。また、カート車1の他の走行モードとして、停車マーカを検知したとしても停車させずに自動走行を継続する威嚇モードも設定されている。なお、誘導線Lには、ゴルフ場内の複数のホールに跨がって閉曲線状に敷設された周回部が設けられている。
【0012】
さらに、カート車1には、威嚇用ベルト10が着脱自在に取り付けられている。その威嚇用ベルト10には、前方へ向けてブルーライトを照射可能な威嚇用照射装置12、12と、たとえば犬の鳴き声といった威嚇用音声や鳥獣が苦手とする電子音等を報音可能なスピーカ13と、犬の尿の臭い等を噴霧可能な噴霧器14と、前方を撮像可能なカメラ15とが設置されている。また、威嚇用ベルト10には、上記威嚇用照射装置12、スピーカ13、噴霧器14、及びカメラ15の動作を制御する制御装置(図示せず)も設置されている。そして、そのような威嚇用ベルト10は、左右方向へ延びる帯状のベルト部11、11をカート車1の前面に巻回させることで、カート車1の前面に取り付けられる。
【0013】
そして、本実施形態の鳥獣威嚇システムでは、ゴルフ場の営業時間外(特に夜間)においてカート車の走行モードを威嚇モードに設定し、誘導線Lの周回部においてカート車1を自動走行で停車させることなく周回させる。すなわち、カート車1は、営業終了後にゴルフ場の従業員によって走行モードを威嚇モードに変更設定され、当該威嚇モードでの走行のスタート操作がなされると、たとえば翌日の営業開始前にゴルフ場の従業員によって威嚇モードでの走行の停止操作がなされるまで、誘導線Lの周回部を停車することなく周回し続けることになる。また、そのような威嚇モードで走行する際、カート車1の照明用ライト6、6は点灯する。さらに、このように照明用ライト6、6を点灯させて周回するカート車1を、所定の発車間隔を空けて複数台発車させる(たとえば、20分おきに合計3台発車させる)。
【0014】
また、威嚇用ベルト10については、営業時間中にはカート車1から取り外されており、営業時間の終了に伴う上記威嚇モードでの走行に際して、従業員により適宜取り付けられる。そして、取り付けられた威嚇用ベルト10では、従業員による威嚇動作のオン操作に伴い、威嚇モードでの走行中、常時威嚇用照射装置12、12及びスピーカ13を動作させ、カート車1の前方をブルーライトで照射するとともに威嚇用音声や電子音を報音する。また、カメラ15についても常時動作させ、カート車1の前方の映像を録画する。さらに、噴霧器14については、予め設定されているタイミングで動作させる(たとえば、営業時間中にはカート車1を停車させるポイントに到達したタイミングで動作させるとしたり、所定の噴霧時間(10分)毎に動作させるとしたりすることが考えられる)。なお、それらの威嚇動作は、従業員によるオフ操作に伴って停止する。
【0015】
以上のような構成を有する鳥獣威嚇システムによれば、カート車1の照明用ライト6、6を点灯させた状態で、誘導線Lの周回部においてカート車1を停車させることなく周回させることにより、鳥獣を威嚇するため、猪等の鳥獣に対して威嚇効果の高い鳥獣威嚇システムとすることができる。さらに、複数のホールに跨がって閉曲線状に敷設されている誘導線Lや、その誘導線Lに沿って自動走行する照明用ライト6、6を備えたカート車1等、既存のゴルフ場における既設のカート車の自動走行システムを利用して鳥獣威嚇システムを構成することができるため、低コストで導入することができる。
【0016】
また、鳥獣を威嚇するためにブルーライトを照射する威嚇用照射装置12と、鳥獣を威嚇するための威嚇用音声や電子音を報音可能なスピーカ13と、鳥獣を威嚇するための臭いを噴霧する噴霧器14と、周囲を撮像可能なカメラ15とが設置された威嚇用ベルト10を、カート車1に着脱自在に取り付け、周回部の周回時に、照明用ライト6、6の点灯に加えて威嚇用照射装置12、スピーカ13、噴霧器14、及びカメラ15を動作させるようにしているため、一層威嚇効果の高い鳥獣威嚇システムとすることができる。加えて、カート車1を鳥獣威嚇システムとして運用しない際には、威嚇用ベルト10をカート車1から取り外しておけばよく、ゴルフ場の営業時間中等にカート車1を運用する際に威嚇用ベルト10が邪魔になったりしない。
【0017】
さらに、複数のカート車1を、所定の発車間隔を空けて周回させるため、たとえば1台目のカート車1の接近によって一旦は離れた猪が、再び同じ場所に戻ってくるタイミングで2台目のカート車1を接近させる等、威嚇したい鳥獣の習性に合わせた運用が可能となり、極めて威嚇効果の高い鳥獣威嚇システムとすることができる。
【0018】
なお、本発明の鳥獣威嚇システムに係る構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、カート車や威嚇手段等に係る構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0019】
たとえば、上記実施形態ではカート車に点灯手段である照明用ライトが設けられているが、点灯手段に代えて報音手段としてのスピーカを備えたカート車を利用し、周回時にはスピーカから所定の音声や効果音を報音させるように構成してもよいし、点灯手段と報音手段との両方を備えたカート車を利用しても何ら問題はない。また、カート車に設けられる点灯手段についても、上記実施形態では照明用ライトとしているが、たとえばパトランプのような回転灯を点灯手段としてカート車に設けるとしてもよい。
【0020】
また、カート車に設けられている点灯手段や報音手段をどのように動作させるかについても適宜設計変更可能であり、周回している間は休みなく動作させ続けるようにしてもよいし、予め設定した所定の動作パターンにしたがって動作させるように構成することも可能である(たとえば、所定の時間間隔でオン/オフさせたり、カート車が所定の位置に到達するとオン/オフさせたりする動作パターンが考えられる)。加えて、複数台のカート車を周回させるにあたってのカート車の発車間隔は、特に猪への威嚇となると10分間~1時間程度が効果的となる。
【0021】
さらに、上記実施形態では威嚇手段として威嚇用ベルトを採用しているが、威嚇手段の構成についても適宜設計変更することができる。すなわち、上記実施形態では、鳥獣を威嚇するための照射を行う威嚇用照射装置と、鳥獣を威嚇するための威嚇用音声及び/又は電子音を報音可能な威嚇用報音装置と、鳥獣を威嚇するための臭いを噴霧する威嚇用噴霧装置との全てが設置されているが、それらのうちの何れか1つしか設置されていなくても何ら問題はないし、具体的にどのような装置を設置するかについても上記実施形態のものに限定されることはない(たとえば、威嚇用照射装置として回転灯を採用することも考えられる)。なお、当然ながら、そのような威嚇手段を用いずに鳥獣威嚇システムを構成することは可能である。また、威嚇手段において、各装置をどのように動作させるかについても、言うまでもなく設計変更することができる。
【符号の説明】
【0022】
1・・カート車、6・・照明用ライト(点灯手段)、10・・威嚇用ベルト(威嚇手段)、12・・威嚇用照射装置、13・・スピーカ(威嚇用報音装置)、14・・噴霧器(威嚇用噴霧装置)、15・・カメラ、L・・誘導線。