(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180541
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】多重殻タンクおよび多重殻タンクの断熱材供給方法
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20231214BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20231214BHJP
【FI】
F17C3/04 B
B65D90/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093923
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】江上 武史
(72)【発明者】
【氏名】山口 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】菊川 隼輔
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB29
3E170DA01
3E170DA03
3E170GA02
3E170GA10
3E170NA01
3E170NA04
3E170NA05
3E170VA20
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA06
3E172BB04
3E172BC06
3E172BC10
3E172BD05
3E172CA03
3E172DA03
3E172DA15
3E172DA25
3E172DA90
3E172KA02
3E172KA03
(57)【要約】
【課題】多重殻タンクの内槽と中間槽との間に形成される断熱空間に断熱材を供給することに適した構造および方法を提供する。
【解決手段】三重殻タンク1は、外槽2と、中間槽3と、内槽4と、断熱材供給部40とを有する。中間槽3と内槽4との間に第1槽間11が形成され、外槽2と中間槽3との間に第2槽間12が形成されている。断熱材供給部40は、三重殻タンク1の外側の空間である外部空間Sと第1槽間11とを互いに連通し、外部空間Sから第1槽間11に断熱材が供給されることを可能とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多重殻タンクであって、
液化ガスを貯留する内槽と、
前記内槽を覆う中間槽であって、当該中間槽と前記内槽との間に第1断熱空間を形成する中間槽と、
前記中間槽を覆う外槽であって、当該外槽と前記中間槽との間に第2断熱空間を形成する外槽と、
前記多重殻タンクの外側の空間である外部空間と前記第1断熱空間とを互いに連通することが可能な連通部と、
を備える、多重殻タンク。
【請求項2】
前記連通部は、
第1中心線に沿って延びるとともに前記外部空間と前記第2断熱空間とを互いに連通するように前記外槽に配置される外側連通部と、
前記外側連通部に対向して配置され、第2中心線に沿って延びるとともに前記第1断熱空間と前記第2断熱空間とを互いに連通するように前記中間槽に配置される内側連通部と、
を有する、請求項1に記載の多重殻タンク。
【請求項3】
前記第1中心線および前記第2中心線が鉛直線と略平行な直線上に配置されている、請求項2に記載の多重殻タンク。
【請求項4】
前記連通部は、前記外部空間と前記第1断熱空間とを連通するように前記外槽と前記中間槽とを互いに接続する接続部を有する、請求項1に記載の多重殻タンク。
【請求項5】
前記接続部は、前記中間槽に接続される基端部と、前記基端部とは反対側で前記外部空間に配置される先端部とを有し、
前記連通部は、前記接続部の前記先端部と前記外槽とを互いに接続するとともに、前記外槽に対して伸縮可能な伸縮部を更に含む、請求項4に記載の多重殻タンク。
【請求項6】
前記接続部とは異なる位置で、前記外部空間と前記第2断熱空間とを互いに連通するように前記外槽に配置される外側連通部を更に備える、請求項4に記載の多重殻タンク。
【請求項7】
前記外槽を支持する外槽骨組と、
前記中間槽を支持する中間槽骨組と、
を更に備え、
平面視において前記外槽骨組および前記中間槽骨組は、前記連通部を囲むように配置されている、請求項1乃至6の何れか1項に記載の多重殻タンク。
【請求項8】
液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を覆う中間槽であって当該中間槽と前記内槽との間に第1断熱空間を形成する中間槽と、前記中間槽を覆う外槽であって当該外槽と前記中間槽との間に第2断熱空間を形成する外槽とを有する多重殻タンクの断熱材供給方法であって、
前記多重殻タンクの外側の空間である外部空間と前記第1断熱空間とを互いに連通する連通部を通じて前記外部空間から前記第1断熱空間に断熱材を供給することを備える、多重殻タンクの断熱材供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低温の液化ガスを貯留する多重殻タンクおよび多重殻タンクの断熱材供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低温の液化ガスを貯留するタンクが知られている。特許文献1には、このようなタンクとして、液化天然ガス(LNG)を貯留するLNGタンクが開示されている。当該技術では、LNGタンクは、LNGを貯留する内槽と当該内槽を覆う外槽とを含む二重殻タンク構造を備える。内槽と外槽との間には断熱空間が形成され、当該断熱空間にはパーライトなどの断熱材および窒素ガスが充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたLNGタンクでは、予め外槽に充填孔を開口しておくことで、前記開口から断熱空間に断熱材を補充することができる。一方、液化水素のような極低温の液化ガスを貯留する場合、LNGタンクと同様の二重殻タンクでは、水素を液体状態で安定的に貯留できないため、内槽と外槽との間に更に中間層を含む三重殻タンクが用いられる。この場合、内槽と中間槽との間に第1断熱空間が配置され、中間槽と外槽との間に第2断熱空間が配置される。
【0005】
本開示の目的は、多重殻タンクの内槽と中間槽との間に形成される断熱空間に断熱材を供給することに適した構造および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一局面に係る多重殻タンクは、液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を覆う中間槽であって当該中間槽と前記内槽との間に第1断熱空間を形成する中間槽と、前記中間槽を覆う外槽であって当該外槽と前記中間槽との間に第2断熱空間を形成する外槽と、前記多重殻タンクの外側の空間である外部空間と前記第1断熱空間とを互いに連通することが可能な連通部とを備える。
【0007】
また、本開示の他の局面に係る多重殻タンクの断熱材供給方法は、液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を覆う中間槽であって当該中間槽と前記内槽との間に第1断熱空間を形成する中間槽と、前記中間槽を覆う外槽であって当該外槽と前記中間槽との間に第2断熱空間を形成する外槽とを有する多重殻タンクの断熱材供給方法であって、前記多重殻タンクの外側の空間である外部空間と前記第1断熱空間とを互いに連通することが可能な連通部を通じて前記外部空間から前記第1断熱空間に断熱材を供給することを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、多重殻タンクの内槽と中間槽との間に形成される断熱空間に断熱材を供給することに適した構造および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る多重殻タンクの縦断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る断熱材供給部の模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態に係る多重殻タンクの屋根構造の一部を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1変形実施形態に係る断熱材供給部の模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の第2変形実施形態に係る多重殻タンクに断熱材を補充する様子を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本開示に係る多重殻タンクの各実施形態について詳細に説明する。以下では、多重殻タンクの一例として、三重殻タンク1について説明する。三重殻タンク1は、低温の液化ガスを貯留するタンクであって、地上据え置き式の三重殻構造を備えた平底タンクである。貯留される液化ガスは、例えば液化水素である。
【0011】
図1は、本開示の一実施形態に係る三重殻タンク1の縦断面図である。
図1では、三重殻タンク1が、液化ガスとして液化水素LH
2を貯留する。三重殻タンク1は、タンク基礎10Aと、第1ベース部10Bと、第2ベース部10Cと、タンク基礎10Aの上に立設された外槽2と、外槽2に内包された中間槽3と、中間槽3に内包された内槽4とを含む。外槽2、中間槽3及び内槽4は、いずれも上面視で円形の形状を有し、同心円状に配置されている。
【0012】
タンク基礎10Aは、三重殻タンク1の基礎部分を構成するコンクリート層である。タンク基礎10Aは、外槽2の外径よりも大きいサイズを有している。外槽2は、炭素鋼等の金属で構成された密閉体であり、外槽底板21、外槽側板22及び外槽屋根23を含む。外槽底板21は、タンク基礎10Aの直上に敷設され、円板型の形状を有している。外槽側板22は、外槽底板21の周縁から立設され、円筒状の形状を有している。外槽屋根23は、円筒状の外槽側板22の上面開口を塞ぐように当該外槽側板22の上端に取り付けられ、ドーム型の形状を有している。
【0013】
中間槽3は、SUS等の金属で構成された密閉体であり、外槽2の内部に配置されている。中間槽3は、中間槽底板31、中間槽側板32及び中間槽屋根33を含む。中間槽底板31は、外槽底板21よりも径の小さい円板型の形状を有している。中間槽側板32は、中間槽底板31の周縁から立設され、円筒状の形状を有している。中間槽屋根33は、円筒状の中間槽側板32の上面開口を塞ぐように当該中間槽側板32の上端に取り付けられ、ドーム型の形状を有している。
【0014】
外槽底板21と中間槽底板31との間には、第1ベース部10Bが介在されている。第1ベース部10Bは、コンクリート層や断熱層などから構成され、中間槽3を支持する。
【0015】
内槽4は、実際に液体を貯留する槽であり、SUS等の金属で構成された密閉体であって、中間槽3の内部に配置されている。内槽4は、内槽底板41、内槽側板42及び内槽屋根43を含む。内槽底板41は、中間槽底板31よりも径の小さい円板型の形状を有している。内槽側板42は、内槽底板41の周縁から立設され、円筒状の形状を有している。内槽屋根43は、円筒状の内槽側板42の上面開口を塞ぐように当該内槽側板42の上端に取り付けられ、ドーム型の形状を有している。内槽4の内部には約-253℃の液化水素LH2が貯留されている。
【0016】
中間槽底板31と内槽底板41との間には、第2ベース部10Cが介在されている。第2ベース部10Cも、第1ベース部10Bと同様に、コンクリート層や断熱層などから構成され、内槽4を支持する。
【0017】
三重殻タンク1の内槽4と中間槽3との間、並びに中間槽3と外槽2との間には、各々所定幅の間隙が設けられている。内槽4と中間槽3との間隙である第1槽間11、及び、中間槽3と外槽2との間隙である第2槽間12には、断熱材がそれぞれ充填される。前記断熱材としては、例えばパーライトのような粉体の断熱材を用いることができる。なお、前記断熱材は、粉体に限らず、繊維状などその他の形態のものでもよい。また、第1槽間11には、内槽4に貯留されている液化水素LH2と同等の低沸点ガス、例えば水素ガスGH2が充填される。第2槽間12には、第1槽間11に充填されるガスよりも沸点の高い不活性ガス、例えば窒素ガスGN2が充填される。なお、上記の三重殻タンク1について換言すると、中間槽3は、内槽4を覆うように配置され、中間槽3と内槽4との間に第1槽間11を形成する。また、外槽2は、中間槽3を覆うように配置され、外槽2と中間槽3との間に第2槽間12を形成する。第1槽間11は、本開示の第1断熱空間に相当する。また、第2槽間12は、本開示の第2断熱空間に相当する。
【0018】
上記のように、本実施形態では、三重殻タンク1が三層構造を有しており、内槽4には-253℃の液化水素LH2が貯留され、第1槽間11には水素ガスGH2、第2槽間12には窒素ガスGN2が充填されることで、段階的に断熱機能が施される。第1槽間11、第2槽間12にはパーライトなどの断熱材がそれぞれ充填されることで、上記の断熱機能が向上されるが、このように三重殻タンク1が施工された状態、すなわち、組み上げられた状態で、三重殻タンク1の外側の空間である外側空間から第1槽間11にパーライトなどの断熱材を供給および充填することは困難であった。
【0019】
このような問題を解決するために、本実施形態では、三重殻タンク1が断熱材供給部40を更に備える。
図2は、本実施形態に係る断熱材供給部40の模式的な断面図である。断熱材供給部40は、
図1の三重殻タンク1の肩部K付近に配置されている。断熱材供給部40は、三重殻タンク1の外部空間Sから第1槽間11(
図1、
図2)に断熱材が供給されることを可能とする。断熱材供給部40は、三重殻タンク1の外部空間と第1槽間11とを互いに連通する。断熱材供給部40は、本開示の連通部に相当する。具体的に、断熱材供給部40は、外槽供給部50と、中間槽供給部60とを含む。また、断熱材供給部40は、第2槽間12の一部を含んでいる。
【0020】
外槽供給部50は、外槽2に配置される。外槽供給部50は、外側筒部51と、外側蓋部52とを有する。
【0021】
外側筒部51は、第1中心線CL1に沿って延びる筒形状を有している。外側筒部51は、円筒形状や角筒形状などの形態でもよい。後記の他の筒部についても同様である。外側筒部51は、外部空間Sと第2槽間12とを互いに連通するように外槽2に配置され、断熱材が通過することを許容する。外側蓋部52は、外側筒部51を開放および封止可能な蓋部である。外側蓋部52は、ブラインドフランジのような封止機能を有するものであればよい。また、外側蓋部52は外側筒部51に溶接されるものでもよい。この場合も、外側筒部51の構造は、本開示における、連通可能な連通部に含まれる。後記の他の蓋部についても同様である。なお、外側筒部51は、本開示の外側連通部に相当する。
【0022】
中間槽供給部60は、中間槽3に配置される。中間槽供給部60は、中間筒部61と、中間蓋部62とを有する。
【0023】
中間筒部61は、第2中心線CL2に沿って延びる筒形状を有している。中間筒部61は、第1槽間11と第2槽間12とを互いに連通するように中間槽3に配置され、外側筒部51を通過した断熱材が通過することを許容する。中間筒部61は、外側筒部51の下方に配置されている。また、中間筒部61の入口は、第2槽間12内に配置されている。中間蓋部62は、中間筒部61を開放および封止可能な蓋部である。中間蓋部62の構造も、外側蓋部52と同様である。なお、中間筒部61は、本開示の内側連通部に相当する。
【0024】
なお、本実施形態では、上記の第1中心線CL1および第2中心線CL2は互いに平行であり、同じ直線上に配置されている。また、第1中心線CL1および第2中心線CL2が鉛直方向と平行になるように、外側筒部51および中間筒部61が外槽2および中間槽3にそれぞれ配置されている。
【0025】
また、外側筒部51および中間筒部61は同じ外径を有する円管形状からなる。このため、
図2の第1中心線CL1に沿って見た場合、外側筒部51は中間筒部61と重なるように配置されている。なお、外側筒部51および中間筒部61は、互いに異なる外径を有するものでもよい。
【0026】
図3は、本実施形態に係る三重殻タンク1の屋根構造の一部を示す平面図である。三重殻タンク1は、外槽骨組2Hおよび中間槽骨組3Hを更に備える。外槽骨組2Hは、外槽2を支持する骨組であり、中間槽骨組3Hは中間槽3を支持する骨組である。なお、
図3では、外槽骨組2Hの下方に中間槽骨組3Hが隠れるように配置されている。外槽骨組2Hおよび中間槽骨組3Hは、平面視で同じ配置構造を有しており、本実施形態では放射状に配置されている。また、
図3に示す平面視において、外槽骨組2Hおよび中間槽骨組3Hは、断熱材供給部40の外側筒部51および中間筒部61を囲むように配置されている。換言すれば、外側筒部51および中間筒部61が配置されている領域には、外槽骨組2Hおよび中間槽骨組3Hが配置されていないため、これらの骨組構造が邪魔になることなく、
図2のように外槽2に配置された外側筒部51と中間槽3に配置された中間筒部61とを容易に連通することができる。
【0027】
次に、本実施形態に係る三重殻タンク1において、第1槽間11および第2槽間12に断熱材の一例としてパーライトを供給する工程について説明する。
【0028】
パーライトの供給作業に先立って、上記で説明した三重殻タンク1が施工される。また、三重殻タンク1内にパーライトを供給するために、作業者は、パーライトを供給可能な供給管74(
図5参照)を準備する。一例として、供給管74はゴムパイプから構成される。供給管74にはバルブ75が配置され、作業者は当該バルブ75を開くことでパーライトを供給する。なお、当該供給管74も前述の外部空間Sの一部に相当する。
【0029】
作業者は、第1槽間11にパーライトを供給するために、
図2の外側蓋部52および中間蓋部62を開けることによって、外側筒部51および中間筒部61をそれぞれ開放する。この結果、外側筒部51、第2槽間12および中間筒部61を介して、外部空間Sと第1槽間11とが連通する。次に、作業者は、外側筒部51および中間筒部61に供給管74を挿入し、外側筒部51および中間筒部61を通じて、外部空間Sから第1槽間11にパーライトを供給する。この際、作業者は、パーライトを供給するための配管(
図5の供給管74参照)を外側筒部51から中間筒部61まで挿入する。第1槽間11へのパーライトの供給作業が完了すると、作業者は上記の供給管74を取り外し、中間蓋部62によって中間筒部61を封止する。なお、上記の配管の構造および数は、供給作業に応じて変更されてもよい。
【0030】
次に、作業者は、上記のように中間蓋部62によって中間筒部61を塞いだのち、再び上記の供給管74を外側筒部51に挿入し、外部空間Sから第2槽間12にパーライトを供給する。そして、作業者は、供給管74を外側筒部51から取り外したのち、外側蓋部52によって外側筒部51を封止することで、第2槽間12へのパーライトの供給を完了する。
【0031】
以上のように、本実施形態では、断熱材供給部40が、三重殻タンク1の外部空間Sと第1槽間11とを互いに連通することができる。このため、第1槽間11の外側に当該第1槽間11に対して独立した第2槽間12が配置された構成においても、三重殻タンク1の外部空間Sから第1槽間11に断熱材を供給することが可能となる。なお、本実施形態における連通とは、外側筒部51、開かれた第2槽間12および中間筒部61を介して、外部空間Sと第1槽間11とが連通することを意味する。
【0032】
特に、本実施形態では、外槽2に外槽供給部50が配置され、中間槽3に中間槽供給部60が配置されており、外部空間Sから外側筒部51および中間筒部61を通じて第1槽間11に断熱材を供給することができる。外側筒部51および中間筒部61は互いに接続されることなく独立しているため、三重殻タンク1に貯留される液化水素や断熱用ガスの影響を受けて三重殻タンク1の各槽に熱収縮が発生しても、各槽の熱収縮量の差によって外側筒部51および中間筒部61が損傷することが抑止される。
【0033】
また、本実施形態では、第1中心線CL1および第2中心線CL2が鉛直線と略平行な直線上に配置されているため、作業者は断熱材を供給するための供給管74の向きを途中で大きく変える必要がなく、略鉛直方向に沿って供給管74の挿入作業を容易に行うことができる。なお、各中心線は、鉛直線と平行な直線に沿って配置されてもよいし、鉛直線に対してたとえば5度の僅かな角度をもって傾斜するように配置されてもよい。
【0034】
[変形実施形態]
以上、本開示に係る多重殻タンクの一実施形態について説明したが、本開示は上掲の実施形態に何ら限定されない。例えば、上述の三重殻タンク1について、次のような変形実施形態を取ることができる。
【0035】
上記の実施形態では、外側筒部51の第1中心線CL1と中間筒部61の第2中心線CL2とが同じ軸線上に配置される態様にて説明したが、
図2の第1中心線CL1に沿って見た場合、外側筒部51の少なくとも一部が中間筒部61と重なるように配置されてもよい。パーライトなどの断熱材を供給するために、外側筒部51や中間筒部61に挿通される供給管74(
図5)がゴムなどの弾性材料からなり変形可能な場合には、このように、外側筒部51と中間筒部61との間にずれがあっても、前記配管を各筒部に容易に挿入し、第1槽間11に断熱材を供給することができる。
【0036】
また、外側筒部51の第1中心線CL1および中間筒部61の第2中心線CL2が外槽2の法線と平行になるように、外側筒部51および中間筒部61がそれぞれ配置されてもよい。
【0037】
図4は、本開示の第1変形実施形態に係る断熱材供給部の模式的な断面図である。本変形実施形態では、三重殻タンク1が、断熱材供給部70と、外槽供給部50とを有する。
【0038】
断熱材供給部70は、外部空間Sから第1槽間11に断熱材が供給されることを可能とする。断熱材供給部70は、接続筒部71と、蓋部72と、伸縮筒部73とを有する。
【0039】
接続筒部71は、外部空間Sと第1槽間11とを互いに連通するように外槽2と中間槽3とを接続する円管部材からなる。接続筒部71は、基端部71Aと、先端部71Bとを有する。基端部71Aは、中間槽3に接続される。先端部71Bは、基端部71Aとは反対側で外部空間Sに配置されている。接続筒部71は、本開示における接続部に相当する。
【0040】
蓋部72は、接続筒部71を開放および封止可能である。蓋部72は、前述の外側蓋部52、中間蓋部62と同様の構造を有している。本変形実施形態では、蓋部72は、先端部71Bを封止することが可能なように配置される。
【0041】
伸縮筒部73は、接続筒部71のうち外槽2よりも外側に突出した部分を囲むように配置される。また、伸縮筒部73は、接続筒部71の先端部71Bと外槽2とを互いに接続するとともに、外槽2に対して接続筒部71の突出方向およびタンクの半径方向に伸縮可能とされている。伸縮筒部73は、本開示の伸縮部に相当する。
【0042】
外槽供給部50は、先の実施形態と同様の構造を有し、外側筒部51および外側蓋部52を有する。外側筒部51は、外槽2のうち接続筒部71とは異なる位置に配置される。本実施形態では、外側筒部51は接続筒部71に隣接して配置されている。
【0043】
本変形実施形態では、三重殻タンク1を施工する際に、接続筒部71および蓋部72を含む断熱材供給部70が外槽2と中間槽3との間に介在するように配置される。また、接続筒部71を囲むように伸縮筒部73が配置される。
【0044】
そして、第1槽間11にパーライトを供給する場合、作業者は、蓋部72を開けて接続筒部71を開放し、供給管74を接続筒部71に挿入して、接続筒部71を通じて外部空間Sから第1槽間11にパーライトを供給したのち、蓋部72によって接続筒部71を封止する。
【0045】
このように、本変形実施形態では、第2槽間12を介さずに、外部空間Sから断熱材供給部70を通じて第1槽間11に断熱材を直接供給することができる。このため、先の実施形態のように、外側蓋部52および中間蓋部62の2つの蓋部を開閉することなく、第1槽間11に断熱材を容易に供給することができる。なお、本変形実施形態における連通とは、接続筒部71を介して、外部空間Sと第1槽間11とが連通することを意味する。
【0046】
なお、上記のように、第1槽間11への供給作業が終了すると、作業者は、外槽供給部50を通じて第2槽間12にパーライトを供給する。具体的に、作業者は、外側蓋部52を開けて外側筒部51を開放し、当該外側筒部51を通じて外部空間Sから第2槽間12にパーライトを供給する。そして、作業者は、外側蓋部52によって外側筒部51を封止することで、第2槽間12へのパーライトの供給を完了する。
【0047】
このように、本変形実施形態では、断熱材供給部70に対して独立した外槽供給部50から第2槽間12にパーライトを供給することができる。このため、供給管74を複数準備することで、第1槽間11および第2槽間12への供給作業を並行して効率的に実行することができる。
【0048】
なお、第1槽間11および第2槽間12に対するパーライトの供給後に、前述のように第1槽間11には水素ガスが低温ガスとして供給され、第2槽間12には窒素ガスが同様に供給される。これらの低温ガスは、互いに異なる温度に設定されている。この場合、外槽2の熱収縮量よりも中間槽3の熱収縮量が大きくなるため、常温時と比較して、
図4の外槽2と中間槽3との間隔が大きくなる。この際、
図4の接続筒部71の先端部71Bが内側に没入するように変位する。しかしながら、本変形実施形態では、伸縮可能な伸縮筒部73が接続筒部71を囲むように配置されているため、上記のような接続筒部71の変位に応じて伸縮筒部73が伸縮することができる。
【0049】
図5は、本開示の第2変形実施形態に係る三重殻タンク1に断熱材を補充する様子を示す模式的な断面図である。本変形実施形態では、断熱材供給部70が、三重殻タンク1の頂部に対応して配置されている。先の第1変形実施形態のように、第1槽間11および第2槽間12に対するパーライトPの供給が完了し、内槽4内に貯留対象物である液化水素が貯留されると、内槽4が液化水素の冷熱で収縮する。この結果、
図5に示すように、たとえば内槽4の頂部周辺に充填されていたパーライトPの一部が内槽4の収縮に伴って
図5の沈降部Xのように沈降することがある。なお、このような現象は、三重殻タンク1の肩部周辺においても発生しうる。
【0050】
上記のようなパーライトの沈降が生じた場合であっても、本変形実施形態では、
図5の供給管74を断熱材供給部70(
図4)に接続し、バルブ75を開けることで、供給管74および断熱材供給部70を通じて、第1槽間11にパーライトを補充することができる。なお、前述のように、第1槽間11には水素ガスが充填されているため、
図5の供給管74を含むパーライトの供給管路内は、予め水素ガスでパージされていることが望ましい。この結果、パーライト供給時に、第1槽間11に空気が混入することが防止される。
【0051】
上記の各実施形態では、本開示の多重殻タンクとして三重殻タンク1を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。多重殻タンクとして四重殻以上のタンクに本開示が適用されてもよい。すなわち、本開示における外槽、中間槽および内槽のうちの少なくとも一つの槽は、間に断熱空間を含む複数の槽から構成されるものでもよい。
【0052】
また、断熱材供給部40として、外槽供給部50および中間槽供給部60が配置される場合、外側筒部51の第1中心線CL1と中間筒部61の第2中心線CL2とは、互いに平行でなくともよい。また、これらの中心線は、鉛直方向および三重殻タンク1の法線方向とは異なる方向に沿って延びるものでもよい。また、各蓋部は、着脱可能なものでも良いし、断熱材の供給作業後に溶接などによって接合されるものでもよい。
【0053】
上記の各実施形態では、三重殻タンク1の施工後、第1槽間11に水素ガスが充填されていない状態で、断熱材供給部40、70を通じて断熱材を充填するものでもよいし、タンク稼働中に水素ガスが充填された状態で、断熱材供給部40、70を通じて断熱材を補充するものでもよい。なお、三重殻タンク1の外槽2、中間槽3には、上記のような断熱材を供給するための連通管以外に、作業者が出入りするための開口が封止可能に形成されていてもよい。
【0054】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0055】
本開示の第1の局面に係る多重殻タンクは、液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を覆う中間槽であって、当該中間槽と前記内槽との間に第1断熱空間を形成する中間槽と、前記中間槽を覆う外槽であって、当該外槽と前記中間槽との間に第2断熱空間を形成する外槽と、前記多重殻タンクの外側の空間である外部空間と前記第1断熱空間とを互いに連通することが可能な連通部と、を備える。
【0056】
本構成によれば、外槽、中間槽および内槽によって第1断熱空間および第2断熱空間が配置された構成において、外側空間から第1断熱空間に断熱材を供給することが可能となる。
【0057】
本開示の第2の局面に係る多重殻タンクは、第1の局面に係る多重殻タンクにおいて、前記連通部は、第1中心線に沿って延びるとともに前記外部空間と前記第2断熱空間とを互いに連通するように前記外槽に配置される外側連通部と、前記外側連通部に対向して配置され、第2中心線に沿って延びるとともに前記第1断熱空間と前記第2断熱空間とを互いに連通するように前記中間槽に配置される内側連通部と、を有する。
【0058】
本構成によれば、外槽に外側連通部が配置され、中間槽に内側連通部が配置されており、外部空間から外側連通部、第2断熱空間および内側連通部を通じて第1断熱空間に断熱材を供給することができる。外側連通部および内側連通部は互いに接続されることなく独立しているため、多重殻タンクの貯留物や断熱用ガスの影響を受けて多重殻タンクの各槽に熱収縮が発生しても、各槽の熱収縮量の差によって断熱材供給部が損傷することを抑止することができる。
【0059】
本開示の第3の局面に係る多重殻タンクは、第2の局面に係る多重殻タンクにおいて、前記第1中心線および前記第2中心線が鉛直線と略平行な直線上に配置されている。
【0060】
本構成によれば、作業者が配管を鉛直方向に沿って各連通部に容易に挿入することができる。
【0061】
本開示の第4の局面に係る多重殻タンクは、第1の局面に係る多重殻タンクにおいて、前記連通部は、前記外部空間と前記第1断熱空間とを連通するように前記外槽と前記中間槽とを互いに接続する接続部を有する。
【0062】
本構成によれば、外部空間から接続部を通じて第1断熱空間に断熱材を直接供給することができる。このため、第1断熱空間に断熱材を容易に供給することができる。
【0063】
本開示の第5の局面に係る多重殻タンクは、第4の局面に係る多重殻タンクにおいて、前記接続部は、前記中間槽に接続される基端部と、前記基端部とは反対側で前記外部空間に配置される先端部とを有し、前記連通部は、前記接続部の前記先端部と前記外槽とを互いに接続するとともに、前記外槽に対して伸縮可能な伸縮部を更に含む。
【0064】
本構成によれば、外槽および中間槽の熱収縮量が異なる場合であっても、接続部の変位に応じて伸縮部が伸縮することができる。
【0065】
本開示の第6の局面に係る多重殻タンクは、第4または第5の局面に係る多重殻タンクにおいて、前記接続部とは異なる位置で、前記外部空間と前記第2断熱空間とを互いに連通するように前記外槽に配置される外側連通部を更に備える。
【0066】
本構成によれば、接続部に対して独立した外側連通部から第2断熱空間に断熱材を供給することができる。このため、第1断熱空間および第2断熱空間への断熱材の供給作業を効率的に実行することができる。
【0067】
本開示の第7の局面に係る多重殻タンクは、第1から第6の局面に係る多重殻タンクにおいて、前記外槽を支持する外槽骨組と、前記中間槽を支持する中間槽骨組とを更に備え、平面視において前記外槽骨組および前記中間槽骨組は、前記連通部を囲むように配置されている。
【0068】
本構成によれば、各骨組構造が邪魔になることなく、外部空間と第1断熱空間とを連通部によって容易に連通することができる。
【0069】
本開示の他の局面に係る多重殻タンクの断熱材供給方法は、液化ガスを貯留する内槽と、前記内槽を覆う中間槽であって当該中間槽と前記内槽との間に第1断熱空間を形成する中間槽と、前記中間槽を覆う外槽であって当該外槽と前記中間槽との間に第2断熱空間を形成する外槽とを有する多重殻タンクの断熱材供給方法であって、前記多重殻タンクの外側の空間である外部空間と前記第1断熱空間とを互いに連通する連通部を通じて前記外部空間から前記第1断熱空間に断熱材を供給することを備える。
【0070】
本方法によれば、外槽、中間槽および内槽によって第1断熱空間および第2断熱空間が配置された多重殻タンクに対して、外部空間から第1断熱空間に断熱材を供給することが可能となる。
【符号の説明】
【0071】
1 三重殻タンク
2 外槽
23 外槽屋根
2H 外槽骨組
3 中間槽
33 中間槽屋根
3H 中間槽骨組
4 内槽
43 内槽屋根
10A タンク基礎
10B 第1ベース部
10C 第2ベース部
11 第1槽間
12 第2槽間
40、70 断熱材供給部
50 外槽供給部
51 外側筒部
52 外側蓋部
60 中間槽供給部
61 中間筒部
62 中間蓋部
71 接続筒部
72 蓋部
73 伸縮筒部
74 供給管
75 バルブ