(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180542
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】液化ガスタンクの断熱材供給装置および液化ガスタンクの断熱材供給方法
(51)【国際特許分類】
F17C 3/04 20060101AFI20231214BHJP
B65D 90/02 20190101ALI20231214BHJP
【FI】
F17C3/04 Z
B65D90/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093924
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100178582
【弁理士】
【氏名又は名称】行武 孝
(72)【発明者】
【氏名】江上 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓央
【テーマコード(参考)】
3E170
3E172
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB29
3E170DA01
3E170NA10
3E170VA20
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA06
3E172BB04
3E172BB12
3E172BB17
3E172BD05
3E172DA03
3E172DA05
3E172DA15
(57)【要約】
【課題】低温ガスが充填された断熱空間に対して空気の混入を抑止しながら断熱材を供給することが可能な液化ガスタンクの断熱材供給装置および液化ガスタンクの断熱材供給方法を提供する。
【解決手段】断熱材供給装置60は、低温ガスが充填される第1槽間11を有するタンク1に断熱材を供給する。断熱材供給装置60は、断熱材貯留部61と、断熱材供給管64とを有する。断熱材貯留部61は、断熱材と前記低温ガスと同種の高圧の圧送用ガスとを混合する。断熱材供給管64は、断熱材貯留部61および第1槽間11に連通可能であり、断熱材貯留部61から第1槽間11に向けて前記断熱材が前記圧送用ガスとともに圧送される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温の液化ガスを貯留することが可能な内槽と、前記内槽を覆うように配置される外槽と、前記内槽と前記外槽との間に配置され低温ガスが充填される断熱空間とを有する液化ガスタンクの前記断熱空間に断熱材を供給することが可能な液化ガスタンクの断熱材供給装置であって、
断熱材と、前記低温ガスと同種のガスまたは前記低温ガスよりも沸点の低い不活性ガスからなる高圧の圧送用ガスとを混合する混合部と、
前記混合部および前記断熱空間に連通可能であり、前記混合部から前記断熱空間に向けて前記断熱材が前記圧送用ガスとともに圧送される断熱材供給管と、
を備える、液化ガスタンクの断熱材供給装置。
【請求項2】
前記断熱材供給管に配置され、開閉可能な受入バルブと、
前記断熱材供給管において前記混合部と前記受入バルブとの間に配置され、開閉可能な排気バルブと、
を更に備える、請求項1に記載の液化ガスタンクの断熱材供給装置。
【請求項3】
前記断熱材供給管は、
前記断熱空間に連通し、前記液化ガスタンクと一体の受入管と、
前記混合部に連通し、前記受入管に着脱可能な連通管と、
を含む、請求項1に記載の液化ガスタンクの断熱材供給装置。
【請求項4】
前記混合部は、前記断熱材を貯留する断熱材貯留部である、請求項1乃至3の何れか1項に記載の液化ガスタンクの断熱材供給装置。
【請求項5】
低温の液化ガスを貯留することが可能な内槽と、前記内槽を覆うように配置される外槽と、前記内槽と前記外槽との間に配置され低温ガスが充填される断熱空間とを有する液化ガスタンクの前記断熱空間に断熱材を供給する液化ガスタンクの断熱材供給方法であって、
断熱材と、前記低温ガスと同種のガスまたは前記低温ガスよりも沸点の低い不活性ガスからなる高圧の圧送用ガスとを混合することと、
前記断熱空間に連通する断熱材供給管を通じて、前記圧送用ガスによって前記断熱材を前記断熱空間に圧送することと、
を備える、液化ガスタンクの断熱材供給方法。
【請求項6】
検出装置を用いて前記断熱空間における前記断熱材の不足状態を検出することと、
前記断熱空間において前記断熱材が不足していることを前記検出装置によって検出した場合に、前記圧送用ガスによって前記断熱材を前記断熱空間に圧送することと、
を更に備える、請求項5に記載の液化ガスタンクの断熱材供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低温の液化ガスを貯留する液化ガスタンクに断熱材を供給する断熱材供給装置および液化ガスタンクの断熱材供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、低温の液化ガスを貯留するタンクが知られている。特許文献1には、液化天然ガスを貯留するLNGタンクが開示されている。当該技術では、LNGタンクは、LNGを貯留する内槽と、当該内槽を覆う外槽とを有する。内槽と外槽との間には断熱空間が形成され、当該断熱空間にはパーライトなどの断熱材および窒素ガスが充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなタンクに低温の液化ガスが貯留されると、タンクが収縮するため、断熱空間に充填された断熱材が沈降することがある。このような場合、予め外槽に充填孔を開口しておくことで、断熱材が沈降しても前記充填孔から断熱材を補充することができる。この際、断熱材の補充時に多少の空気が流入しても、断熱空間に充填されているガスが窒素ガスの場合には大きな問題は生じない。
【0005】
一方、液化水素のような極低温の液化ガスを貯留物として貯留するタンクでは、凝縮防止のために窒素ガスに代えて水素ガスやヘリウムガスが断熱空間に封入される。このとき、上記と同じ方法で断熱材を充填・補充する場合、断熱空間に流入した空気が凝縮して保冷性能が悪化するおそれがある。
【0006】
本開示の目的は、断熱空間への空気の混入を抑止しながら断熱材を供給することが可能な液化ガスタンクの断熱材供給装置および液化ガスタンクの断熱材供給方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置は、低温の液化ガスを貯留することが可能な内槽と、前記内槽を覆うように配置される外槽と、前記内槽と前記外槽との間に配置され低温ガスが充填される断熱空間とを有する液化ガスタンクの前記断熱空間に断熱材を供給することが可能な液化ガスタンクの断熱材供給装置であって、断熱材と、前記低温ガスと同種のガスまたは前記低温ガスよりも沸点の低い不活性ガスからなる高圧の圧送用ガスとを混合する混合部と、前記混合部および前記断熱空間に連通可能であり、前記混合部から前記断熱空間に向けて前記断熱材が前記圧送用ガスとともに圧送される断熱材供給管と、を備える。
【0008】
また、本開示の他の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給方法は、低温の液化ガスを貯留することが可能な内槽と、前記内槽を覆うように配置される外槽と、前記内槽と前記外槽との間に配置され低温ガスが充填される断熱空間とを有する液化ガスタンクの前記断熱空間に断熱材を供給する液化ガスタンクの断熱材供給方法であって、断熱材と、前記低温ガスと同種のガスまたは前記低温ガスよりも沸点の低い不活性ガスからなる高圧の圧送用ガスとを混合することと、前記断熱空間に連通する断熱材供給管を通じて、前記圧送用ガスによって前記断熱材を前記断熱空間に圧送することと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、断熱空間への空気の混入を抑止しながら断熱材を供給することが可能な液化ガスタンクの断熱材供給装置および液化ガスタンクの断熱材供給方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る液化ガスタンクおよび断熱材供給装置の模式的な縦断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の変形実施形態に係る断熱材供給装置の模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置および断熱材供給方法の実施形態について詳細に説明する。以下では、液化ガスタンクの一例として、三重殻タンク1について説明する。三重殻タンク1は、低温の液化ガスを貯留するタンクであって、地上据え置き式の三重殻構造を備えた平底タンクである。
【0012】
図1は、本開示の一実施形態に係る液化ガスタンクおよび三重殻タンク1の模式的な縦断面図である。三重殻タンク1は、低温の液化ガスの一例として液化水素LH
2を貯留する。三重殻タンク1は、炭素鋼等の金属で構成された外槽2と、SUS等の金属で構成され外槽2に内包された中間槽3と、SUS等の金属で構成され中間槽3に内包された内槽4とを含む。外槽2、中間槽3及び内槽4は、いずれも上面視で円形の形状を有し、同心円状に配置されている。
【0013】
三重殻タンク1の内槽4と中間槽3との間、並びに中間槽3と外槽2との間には、各々所定幅の間隙が設けられている。内槽4と中間槽3との間隙である第1槽間11、及び、中間槽3と外槽2との間隙である第2槽間12には、断熱材がそれぞれ充填される。前記断熱材としては、パーライトのような粉体の断熱材を用いることができる。また、第1槽間11には、内槽4に貯留されている液化水素LH2と同等の低沸点ガス、例えば水素ガスGH2が充填される。第2槽間12には、第1槽間11に充填されるガスよりも沸点の高い不活性ガス、例えば窒素ガスGN2が充填される。
【0014】
三重殻タンク1は、温度計13と、を更に備える。温度計13は、三重殻タンク1の頂部付近において中間槽3の外側の面に装着されている。温度計13は、第1槽間11の温度を検出する。
【0015】
上記のように、本実施形態では、三重殻タンク1が三層構造を有しており、内槽4には-253℃の液化水素LH2が貯留され、第1槽間11には低温ガスとして水素ガスGH2、第2槽間12には窒素ガスGN2がそれぞれ充填されることで、段階的に断熱機能が施される。第1槽間11、第2槽間12にはパーライトなどの断熱材が充填されることで、上記の断熱機能が向上される。このような三重殻タンク1において、第1槽間11に断熱材を供給する際に空気が混入すると、空気が凝縮して保冷性能が悪化するおそれがある。
【0016】
このような問題を解決するために、本実施形態では、断熱材供給装置60が備えられている。以下では、第1槽間11に供給される断熱材として、粉体のパーライトを用いた場合について説明する。なお、上記の供給には、充填および補充の概念が含まれる。
【0017】
断熱材供給装置60は、水素ガスによりパーライトを三重殻タンク1の第1槽間11に圧送するように構成されている。断熱材供給装置60は、断熱材貯留部61と、ガス貯留部62と、ポンプ63と、断熱材供給管64と、ガス供給管65と、ガス供給バルブ71と、受入バルブ72と、排気バルブ73と、を有する。
【0018】
断熱材貯留部61は、断熱材供給装置60においてパーライトを貯留する貯留槽である。断熱材貯留部61は、外部と隔離された内部空間を有し、当該内部空間に粉体であるパーライトが貯留されている。断熱材貯留部61は、パーライトと水素ガスとを混合する混合部として機能する。
【0019】
ガス貯留部62は、圧送用ガスとして水素ガスを貯留している。一例として、ガス貯留部62は、圧縮水素ガスが充填されたタンク、ボンベなどである。
【0020】
断熱材供給管64は、断熱材貯留部61および三重殻タンク1の第1槽間11に連通可能に構成されている。断熱材供給管64は、断熱材貯留部61から第1槽間11に向けてパーライトが水素ガスにより圧送される管路である。断熱材供給管64は、連通管64Aと、受入管64Bと、分岐管64Cとを含む。連通管64Aは、断熱材貯留部61に連通する管路である。受入管64Bは、三重殻タンク1と一体に構成されている。受入管64Bは、三重殻タンク1の頂部に配置されている配管であり、図示略のベローズ等を介し三重殻タンク1の外槽2と中間槽3とを上下に貫通するように配設されている。受入管64Bの一端は第1槽間11内に位置し、他端は三重殻タンク1の外に位置する。連通管64Aと受入管64Bとは着脱可能とされている。分岐管64Cは、連通管64Aの先端部においてその一部が分岐した管路である。なお、断熱材供給装置60のうち三重殻タンク1と一体の受入管64Bを除く部分は、三重殻タンク1に対して着脱可能である。
【0021】
断熱材供給装置60を三重殻タンク1に対して着脱可能な構造として、断熱材供給装置60は、連通管64A側の供給口66と、受入管64B側の受入口67とからなる継手部を備えている。継手部は、一例としてフランジ継手であってもよい。
図1は供給口66と受入口67とが接続された状態を示している。なお、供給口66および受入口67が互いに分離される際は、両者にはブラインドフランジなどの蓋部が装着される。
【0022】
ガス供給管65は、断熱材貯留部61とガス貯留部62とを繋ぐ管路である。ポンプ63は、ガス貯留部62に貯留された水素ガスを吸引し、断熱材貯留部61に向かって水素ガスを吐出することが可能である。このとき、ガス貯留部62に貯留された水素ガスは、ポンプ63を介して高圧の圧送用ガスとなり、ガス供給管65を通じて断熱材貯留部61に供給される。
【0023】
ガス供給バルブ71は、ガス供給管65のうち断熱材貯留部61とポンプ63との間に配置されている。ガス供給バルブ71は、ガス供給管65の流路を開閉する。
【0024】
受入バルブ72は、受入管64Bにおいて第1槽間11と受入口67との間に配置されている。受入バルブ72は、受入管64B内の流路を開閉する。なお、三重殻タンク1の使用時には、受入バルブ72は閉じられており、受入バルブ72の近傍まで第1槽間11の水素ガスが拡がっている。
【0025】
排気バルブ73は、分岐管64Cに配置されている。排気バルブ73は、分岐管64C内の流路を開閉する。排気バルブ73が開くと、連通管64Aの流路が大気に連通する。なお、分岐管64Cにおける排気バルブ73の上流側には、パーライトの放出を阻止するための不図示のフィルタが装着されている。また、連通管64Aに分岐管64Cが設けられず、連通管64Aに開閉可能な排気バルブが直接設けられても良い。
【0026】
次に、本実施形態に係る三重殻タンク1へのパーライト供給方法について説明する。パーライトを供給する前の段階では、
図1のガス供給バルブ71、受入バルブ72、排気バルブ73はすべて閉じている。また、供給口66および受入口67は、ブラインドフランジなどで塞がれている。
【0027】
まず、作業者は、供給口66と受入口67とを接続する。この結果、連通管64Aと受入管64Bとが連通する。次に、作業者は、連通管64Aおよびガス供給管65の管内の空気を水素ガスで置換する。具体的に、作業者は受入バルブ72が閉じた状態で、ガス供給バルブ71および排気バルブ73を開く。そして、ポンプ63によってガス貯留部62から水素ガスが吸引され、水素ガスが高圧の圧送用ガスとして断熱材貯留部61に流入する。水素ガスは、断熱材貯留部61に貯留されたパーライト内を通過して連通管64Aに流入し、連通管64A内の空気を押し出して排気バルブ73から排出させる。この結果、ポンプ63、ガス供給管65、断熱材貯留部61、連通管64Aを満たす空気を分岐管64Cから外部に押し出し、断熱材貯留部61の内部および連通管64Aが水素ガスで置換される。なお、前述のように、予め供給口66と受入口67とが接続されているため、受入口67と受入バルブ72との間の空気も排出することができる。
【0028】
次に、作業者が排気バルブ73を閉じて受入バルブ72を開くと、パーライトが連通管64Aおよび受入管64Bを介して第1槽間11に圧送される。この結果、第1槽間11にパーライトを供給することができる。
【0029】
三重殻タンク1の第1槽間11に対するパーライトの供給は、三重殻タンク1に液化水素を貯留する前に行ってもよいが、三重殻タンク1における液化水素の貯留開始後に行ってもよい。すなわち、第1槽間11に水素ガスを充填することでクールダウンした後、第1槽間11にパーライトを充填、補充し、その後、内槽4に液化水素を貯留してもよいし、第1槽間11に水素ガスを充填することでクールダウンした後、内槽4に液化水素を貯留し、その後、第1槽間11にパーライトを充填、補充してもよいし。いずれの場合も、予め第1槽間11に水素ガスを充填し、内槽4が充分冷えた後に、断熱材供給装置60を用いてパーライトを充填、補充することが望ましい。なお、水素ガスによってパーライトを圧送する際に、第1槽間11の圧力が著しく上昇することを防ぐために、不図示のマンホールなどから第1槽間11内の水素ガスの一部を放出してもよい。
【0030】
なお、三重殻タンク1に対するパーライトの供給後、作業者は、受入管64Bや図示略のマンホールなどのように三重殻タンク1の外部と第1槽間11とを連通可能に接続する部材の中にファイバースコープを入れて、三重殻タンク1の屋根部に十分なパーライトが充填されているかを確認してもよい。また、
図1に示すように三重殻タンク1が温度計13を備える場合には、第1槽間11の温度が十分に上昇したことをもって、作業者はパーライトが十分供給されたと判断してもよい。上記のファイバースコープや温度計13は、本開示の検出装置の一例である。本開示に係る断熱材供給装置60を用いた断熱材供給方法では、前記検出装置を用いて第1槽間11におけるパーライトの不足状態を検出し、パーライトが不足していることが検出された場合に、水素ガスによってパーライトを第1槽間11に圧送すればよい。
【0031】
以上のように、本実施形態では、圧縮された水素ガスをガス貯留部62から断熱材貯留部61に送り、断熱材貯留部61においてパーライトと水素ガスとを混合し、水素ガスによってパーライトを第1槽間11に圧送するように構成している。このため、第1槽間11へのパーライトの供給時に、第1槽間11に空気が混入することを抑止することができる。この結果、空気の凝縮およびこれに伴う保冷性能の悪化を防止することができる。
【0032】
また、本実施形態では、断熱材供給管64の一部である受入管64Bが三重殻タンク1と一体に構成されており、断熱材貯留部61に連通する連通管64Aの供給口66と受入管64Bの受入口67とが着脱可能に構成されている。このため、装置を常設させる必要がなく、スペース面でも有利である。また、複数の三重殻タンク1に対して断熱材供給装置60の大部分を共用することができる。
【0033】
また、断熱材供給装置60は、受入バルブ72と排気バルブ73とを有する。受入バルブ72は受入管64Bに配置され、排気バルブ73は連通管64Aに配置される。このため、予め受入バルブ72を閉じ排気バルブ73を開いた状態で、断熱材供給管64に水素ガスを流入させることで、断熱材供給管64内の空気を排出して水素ガスで置換することができる。その後、排気バルブ73を閉じ受入バルブ72を開き、水素ガスによってパーライトを第1槽間11に圧送することで、断熱材供給管64内の空気が第1槽間11に流入することを抑止することができる。
【0034】
更に、本実施形態では、断熱材貯留部61内においてパーライトと水素ガスとが混合されるため、断熱材貯留部61に貯留されているパーライトの周辺も水素ガスによって置換することができる。このため、パーライト内(粒子間)に含まれる空気も確実に水素ガスによって置換することができる。この結果、パーライトの供給作業に伴って、第1槽間11に空気などが混入することを更に抑止することができる。
【0035】
[変形実施形態]
以上、本開示に係る多重殻タンクについて説明したが、本開示は上掲の実施形態に何ら限定されない。例えば、上述の三重殻タンク1について、次のような変形実施形態を取ることができる。
【0036】
図2は、本開示の変形実施形態に係る断熱材供給装置60の模式図である。なお、
図2では、先の実施形態と同じ機能を有する部材については、
図1と同じ符号を付している。ここでは、先の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0037】
本変形実施形態では、断熱材貯留部61が、三重殻タンク1の上方に配置されている。そして、断熱材供給管64は、上下方向において断熱材貯留部61と第1槽間11との間で上下方向に延びるように配置されている。受入口67と供給口66とが接続されると、断熱材貯留部61から下方に向かってパーライトの供給路が第1槽間11まで形成される。
【0038】
本変形実施形態においても、先の実施形態と同様に、作業者が、供給口66と受入口67とを接続した上で受入バルブ72を閉じ排気バルブ73を開くと、ポンプ63が吐出する水素ガスによって連通管64A内の空気を置換することができる。その後、作業者が排気バルブ73を閉じ受入バルブ72を開くと、水素ガスによってパーライトが第1槽間11に圧送される。
【0039】
このように、本変形実施形態では、断熱材貯留部61を三重殻タンク1の上方に配置することで、三重殻タンク1の周辺のスペース面で有利である。なお、
図2に示す構成では、水素ガスによってパーライトを圧送することなく、重力を利用して、パーライトを三重殻タンク1の第1槽間11に流入させてもよい。この場合も、作業者は、予め水素ガスによって連通管64A内の空気を置換してもよい。
【0040】
なお、上記の各実施形態では、本開示の液化ガスタンクとして三重殻タンク1を用いて説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。断熱材供給装置60によって、中間槽3と外槽2との間の第2槽間12に断熱材が供給されてもよい。また、液化ガスタンクは、1層の断熱空間を有する二重殻タンクでもよい。更に、四重殻以上のタンクに本開示が適用されてもよい。換言すれば、本開示における内槽および外槽のうちの少なくとも一方が、その間に断熱空間を含む複数の槽からなるものでもよい。また、断熱材供給装置60による断熱材の供給は、第1槽間11に水素ガスが充填されていない状態で、断熱材を充填するものでもよい。
【0041】
また、断熱材貯留部61に高圧の圧送用ガスを流入させる構成は、ポンプ63に限定されるものではなく、ポンプ63以外の駆動力によって、圧送用ガスを供給するものでもよい。また、ガス貯留部62内の圧力が充分高い場合は、ポンプ63を省略してもよい。
【0042】
また、上記の実施形態では、本開示における液化ガス、低温ガス、断熱材として、それぞれ液化水素、水素ガス、パーライトを用いて説明したが、他の液化ガス、低温ガスおよび断熱材が用いられても良い。高圧の圧送用ガスは、低温ガスと同種のガスに限定されるものではなく、前記低温ガスよりも沸点の低い不活性ガスからなるものでもよい。一例として、低温ガスが水素ガスの場合、圧送用ガスはヘリウムガスでもよい。
【0043】
また、上記の実施形態では、断熱材供給装置60の一部が三重殻タンク1に着脱可能な構成である態様にて説明したが、断熱材供給装置60を三重殻タンク1と一体的に設けてもよい。この場合も、断熱材供給管64において、排気バルブ73よりも三重殻タンク1側に受入バルブ72が設けられることが望ましい。作業者は、受入バルブ72を閉じ排気バルブ73を開いた状態で、連通管64A内の空気を水素ガスによって排出させた後に、排気バルブ73を閉じ受入バルブ72を開くことで、第1槽間11への空気の流入を抑止しながら水素ガスによってパーライトを第1槽間11に圧送することができる。
【0044】
更に、混合部の変形例として、断熱材貯留部61から供給する断熱材とガス貯留部62から供給する水素ガスとを断熱材貯留部61とは異なる部分で混合して、第1槽間11に向かって圧送する態様でもよい。
【0045】
また、上記の実施形態では、断熱材供給管64内の空気を直接的に水素ガスに置換する態様にて説明したが、空気、窒素ガス、水素ガスの順に置換する態様がより望ましい。この場合、断熱材供給管64内に空気中の酸素が残った状態で水素が充填され、爆発しうる環境になることを防ぐことができる。一方、圧送用ガスとしてヘリウムガスを用いる場合は、ヘリウムガスが不活性であるため、断熱材供給管64内を空気、ヘリウムガスの順に置換すればよい。
【0046】
[本開示のまとめ]
以上説明した具体的実施形態には、以下の構成を有する開示が含まれている。
【0047】
本開示の第1の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置は、低温の液化ガスを貯留することが可能な内槽と、前記内槽を覆うように配置される外槽と、前記内槽と前記外槽との間に配置され低温ガスが充填される断熱空間とを有する液化ガスタンクの前記断熱空間に断熱材を供給することが可能な液化ガスタンクの断熱材供給装置であって、断熱材と、前記低温ガスと同種のガスまたは前記低温ガスよりも沸点の低い不活性ガスからなる高圧の圧送用ガスとを混合する混合部と、前記混合部および前記断熱空間に連通可能であり、前記混合部から前記断熱空間に向けて前記断熱材が前記圧送用ガスとともに圧送される断熱材供給管と、を備える。
【0048】
本構成によれば、断熱材供給装置の混合部において断熱材と圧送用ガスとを混合し、圧送用ガスによって断熱材を断熱空間に圧送して供給することができる。このため、断熱空間への断熱材の供給時に空気が混入することを抑止することができる。
【0049】
本発明の第2の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置は、第1の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置において、前記断熱材供給管に配置され、開閉可能な受入バルブと、前記断熱材供給管において前記混合部と前記受入バルブとの間に配置され、開閉可能な排気バルブと、を更に備える。
【0050】
本構成によれば、予め受入バルブを閉じ排気バルブを開いた状態で、断熱材供給管に圧送用ガスを流入させることで、断熱材供給管内の空気を排出し圧送用ガスで置換することができる。その後、排気バルブを閉じ受入バルブを開き、圧送用ガスによって断熱材を断熱空間に圧送することで、断熱材供給管内の空気が断熱空間に流入することを抑止することができる。
【0051】
本発明の第3の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置は、第1または第2の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置において、前記断熱材供給管は、前記断熱空間に連通し、前記液化ガスタンクと一体の受入管と、前記混合部に連通し、前記受入管に着脱可能な連通管と、を含む。
【0052】
本構成によれば、液化ガスタンクに断熱材を供給する必要がある場合に、断熱材供給装置を液化ガスタンクに接続して供給作業を行うことができる。また、複数の液化ガスタンクに対して断熱材供給装置の一部を共用することができる。
【0053】
本発明の第4の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置は、第1から第3の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給装置において、前記混合部は、前記断熱材を貯留する断熱材貯留部である。
【0054】
本構成によれば、断熱材貯留部内において断熱材と圧送用ガスとが混合されるため、断熱材貯留部に貯留されている断熱材の周辺も圧送用ガスによって置換することができる。この結果、断熱材の供給作業に伴って、断熱空間に空気などが混入することを更に抑止することができる。
【0055】
また、本開示の他の局面に係る液化ガスタンクの断熱材供給方法は、低温の液化ガスを貯留することが可能な内槽と、前記内槽を覆うように配置される外槽と、前記内槽と前記外槽との間に配置され低温ガスが充填される断熱空間とを有する液化ガスタンクの前記断熱空間に断熱材を供給する液化ガスタンクの断熱材供給方法であって、断熱材と、前記低温ガスと同種のガスまたは前記低温ガスよりも沸点の低い不活性ガスからなる高圧の圧送用ガスとを混合することと、前記断熱空間に連通する断熱材供給管を通じて、前記圧送用ガスによって前記断熱材を前記断熱空間に圧送することと、を備える。
【0056】
本方法によれば、圧送用ガスと断熱材とを予め混合した上で、前記圧送用ガスによって断熱材を断熱空間に圧送することができるため、断熱材の供給時に断熱空間に空気が混入することを抑止することができる。
【0057】
上記の方法において、検出装置を用いて前記断熱空間における前記断熱材の不足状態を検出することと、前記断熱空間において前記断熱材が不足している場合に、前記圧送用ガスによって前記断熱材を前記断熱空間に圧送することと、を更に備えるものでもよい。
【0058】
本方法によれば、断熱空間において断熱材が不足していることを検出した上で、断熱材を効率的に供給することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 三重殻タンク
2 外槽
3 中間槽
4 内槽
11 第1槽間
12 第2槽間
13 温度計
14 外側供給部
60 断熱材供給装置
61 断熱材貯留部
62 ガス貯留部
63 ポンプ
64 断熱材供給管
64A 連通管
64B 受入管
64C 分岐管
65 ガス供給管
66 供給口
67 受入口
71 ガス供給バルブ
72 受入バルブ
73 排気バルブ