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特開2023-180544ホログラフィ観察装置および試料保持容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180544
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ホログラフィ観察装置および試料保持容器
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20231214BHJP
   G02B 21/06 20060101ALI20231214BHJP
   G03H 1/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G02B21/34
G02B21/06
G03H1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093927
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(72)【発明者】
【氏名】小川 剛史
(72)【発明者】
【氏名】木倉 崇晴
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 基
【テーマコード(参考)】
2H052
2K008
【Fターム(参考)】
2H052AA00
2H052AB01
2H052AC04
2H052AC34
2H052AD16
2H052AE13
2H052AF11
2H052AF14
2H052AF25
2K008AA06
2K008AA07
2K008AA08
2K008BB04
2K008EE01
2K008FF01
2K008FF17
2K008HH01
2K008HH06
2K008HH18
2K008HH28
(57)【要約】
【課題】 液体中の試料をより鮮明に観察することが可能なホログラフィ観察装置1を提供する。
【解決手段】 細胞2(試料)に向けて照明光L1を照射し、細胞2で反射した物体光L2と、基準となる参照光L3とが干渉して形成されるホログラム画像を撮像して、上記細胞2の観察を行うホログラフィ観察装置1に関する。
細胞保持容器3は、上記細胞2を培養液(液体)とともに収容する液体収容部12と、下面が液体収容部12に収容された培養液に接触し、上面が大気に露出するように設けた透明な観察窓18とを有し、上記観察窓18の上面および下面を上記照明光L1の光軸に対して傾斜させたものとなっている。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に向けて照明光を照射する照明光照射手段と、上記照明光を試料に照射することで生成される物体光と基準となる参照光とを導光する導光手段と、上記導光手段によって導光された物体光と参照光とが干渉して形成されるホログラム画像を撮像する撮像手段とを備えたホログラフィ観察装置において、
上記試料を液体とともに収容する液体収容部と、下面が液体収容部に収容された液体に接触し、上面が大気に露出するように設けた透明な観察窓とを有する試料保持容器を備え、
上記導光手段は上記照明光を下方に設けた上記試料保持容器に向けて導光して、試料保持容器に収容された試料に照射し、
さらに、上記試料保持容器における上記観察窓の上面および下面を上記照明光の光軸に対して傾斜させたことを特徴とするホログラフィ観察装置。
【請求項2】
上記液体収容部に、上記試料を収容する観察部と、上記試料が収容されない参照部とを設けて、これら観察部および参照部の上方に上記観察窓が位置するようにし、
さらに上記撮像手段が撮像した上記ホログラム画像から空間スペクトルを形成する画像処理手段を備え、
当該画像処理手段は、上記観察部に照明光を照射して撮像したホログラム画像から上記試料の空間スペクトル像を取得し、当該試料の空間スペクトル像から上記観察窓の情報を含む部分を除去することを特徴とする請求項1のホログラフィ観察装置。
【請求項3】
内部に収容された試料に向けて照明光を照射し、当該照明光を試料に照射することで生成される物体光と基準となる参照光とを干渉させてホログラム画像を撮像するホログラフィ観察装置に用いる試料保持容器であって、
上記試料を液体とともに収容する液体収容部と、下面が液体収容部に収容された液体に接触し、上面が大気に露出するように設けた透明な観察窓とを設け、
上記観察窓の上面および下面を、上方から下方に向けて照射される上記照明光の光軸に対して傾斜させたことを特徴とする試料保持容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はホログラフィ観察装置および試料保持容器に関し、詳しくは照射した照明光が試料で反射した物体光と基準となる参照光とが干渉して形成されるホログラム画像を撮像して観察を行うホログラフィ観察装置および当該ホログラフィ観察装置での観察に好適な試料保持容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料に照明光を照射し、試料で反射した物体光と基準となる参照光とが干渉して形成されるホログラム画像を撮像して、試料の観察を行うホログラフィ観察装置が知られている(特許文献1)。
上記ホログラフィ観察装置を用いれば、細胞のような試料であっても非染色・非侵襲で観察することが期待できることから、例えば培養中の細胞の観察への適用が提案されている。
しかしながら、培養中の細胞は培養液等の液体に収容されているため、細胞に照明光を照射する際に、当該照明光が培養液の液面の乱れや、培養容器に付着した液滴によって散乱してしまい、鮮明な試料の像が得られないという問題が生じる。
一方、微生物や細胞などを観察するために、これら微生物や細胞といった試料を培養液などの液体と共に液体収容部に収容し、当該液体収容部を覆う蓋部に透明な観察窓を設けて、観察窓の下面を液体に接触させた試料保持容器が知られている(特許文献2)。
この特許文献2の試料保持容器によれば、観察窓と培養液との間に隙間が形成されないため、観察時における液面の揺れや液滴による影響が解消されるため、当該特許文献2の試料保持容器を特許文献1のホログラフィ観察装置で用いれば、液体中の試料を鮮明に観察することが可能になると考えられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6628103号公報
【特許文献2】特許第3104790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献2のように観察窓を備えた試料保持容器の場合、当該試料保持容器に対して照明光を照射すると、上記照明光が試料保持容器に収容された試料でも反射するが、上記観察窓の上面および下面でも反射してしまう。
このような観察窓で反射した反射光が、上記試料で反射した物体光とともに参照光と干渉すると、撮像手段によって撮像されたホログラム画像に観察窓の情報がノイズとなって混入してしまい、得られる試料の像が不鮮明となる。
このような問題に鑑み、本発明は液体中の試料をより鮮明に観察することが可能なホログラフィ観察装置を提供するとともに、当該ホログラフィ観察装置での観察に好適な試料保持容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
つまり請求項1の発明にかかるホログラフィ観察装置は、試料に向けて照明光を照射する照明光照射手段と、上記照明光を試料に照射することで生成される物体光と基準となる参照光とを導光する導光手段と、上記導光手段によって導光された物体光と参照光とが干渉して形成されるホログラム画像を撮像する撮像手段とを備えたホログラフィ観察装置において、
上記試料を液体とともに収容する液体収容部と、下面が液体収容部に収容された液体に接触し、上面が大気に露出するように設けた透明な観察窓とを有する試料保持容器を備え、
上記導光手段は上記照明光を下方に設けた上記試料保持容器に向けて導光して、試料保持容器に収容された試料に照射し、
さらに、上記試料保持容器における上記観察窓の上面および下面を上記照明光の光軸に対して傾斜させたことを特徴としている。
また請求項3の発明にかかる試料保持容器は、内部に収容された試料に向けて照明光を照射し、当該照明光を試料に照射することで生成される物体光と基準となる参照光とを干渉させてホログラム画像を撮像するホログラフィ観察装置に用いる試料保持容器であって、
上記試料を液体とともに収容する液体収容部と、下面が液体収容部に収容された液体に接触し、上面が大気に露出するように設けた透明な観察窓とを設け、
上記観察窓の上面および下面を、上方から下方に向けて照射される上記照明光の光軸に対して傾斜させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、上記試料保持容器の観察窓の上面および下面が照明光の光軸に対して傾斜していることから、試料に照射されて生成された物体光と参照光との交差角と、観察窓で反射した反射光と参照光との交差角とを異ならせることが可能となり、これにより観察窓の情報を除去した、鮮明な試料の像を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ホログラフィ観察装置の側面図
図2】細胞保持容器の底部に形成した観察部および参照部を説明する図
図3】ホログラフィ観察装置の光学関係を示した構成図
図4】本発明にかかる細胞保持容器を使用した場合の照明光の反射状態(a)と、撮像手段が撮像した空間スペクトルの模式図(b)
図5】従来の細胞保持容器を使用した場合の照明光の反射状態(a)と、撮像手段が撮像した空間スペクトルの模式図(b)
図6】画像処理手段による物体光の空間スペクトルに対する処理手順を説明する図
図7】第2実施例にかかるホログラフィ観察装置の構成図
図8】画像処理手段による物体光の空間スペクトルに対する、他の処理手順を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図示実施例について説明すると、図1は培養液中の細胞をホログラフィの技術を用いて観察するホログラフィ観察装置1の側面図を示している。
ホログラフィ観察装置1は、試料としての細胞2を収容した試料保持容器としての細胞保持容器3と、細胞保持容器3に向けて照明光L1を照射する照明光照射手段4と、上記照明光L1が細胞2で反射した物体光L2や基準となる参照光L3を導光する導光手段5と、導光された物体光L2と参照光L3とが干渉して形成されたホログラム画像を撮影する撮像手段6と、撮像手段6が撮像した画像を画像処理する画像処理手段7(図3参照)とを備えている。
本実施例で観察する試料として、例えば再生医療に用いる細胞が考えられ、患者から採取した細胞を治療に用いるために、細胞を培養液中で培養する必要があり、また治療に必要な大きさまで培養されたか否かを確認するために、適宜細胞の状態を観察する必要がある。
そして、本実施例のホログラフィ観察装置1を用いれば、細胞2を非染色・非侵襲で観察することができることから、再生医療に用いる細胞2を観察するのに好適であると考えられる。
なお本実施例では、試料として培養中の細胞2を観察するが、そのほかにも液体中での様子を観察する必要がある試料であれば、微生物等の観察も可能である。
【0009】
上記細胞保持容器3は移動可能に設けられた観察台11上に載置され、培養液および細胞2を収容する液体収容部12と、当該液体収容部12の上部に装着される蓋部13とを備えている。
また細胞保持容器3に収容された細胞2を培養するため、細胞保持容器3には二酸化炭素を供給する図示しない二酸化炭素供給手段、培養液を供給する培養液供給手段、使用済みの培養液を排出する排出手段が接続されており、これらにより細胞保持容器3の内部は細胞2の培養に適した環境が維持されるようになっている。
上記観察台11は従来公知のX-Yテーブルによって構成され、図示しない位置決め手段によって上記細胞保持容器3を所定の位置に保持するとともに、当該細胞保持容器3を水平面内において移動させるようになっている。なお、上記導光手段5を水平面内において移動させるようにしても良い。
上記液体収容部12は金属や樹脂などの所要の素材で構成された有底皿状の容器となっており、このうち少なくとも底面については、光を透過させず、かつ表面で光を反射させる素材を用いることが望ましく、その底面は上記観察台11に載置されることで水平となっている。
【0010】
上記液体収容部12には上記細胞2を培養するための培養液が収容され、上記培養液供給手段および排出手段によってその液面高さが維持されるようになっている。
図2は上記細胞保持容器3の平面図を示しており、上記液体収容部12の底部には、上記細胞2を収容するための観察部A1と、細胞2が収容されない参照部A2とが設けられており、これらは液体収容部12の底部に設けられた樹脂やゴム製の枠体17によって区画されている。
上記枠体17の高さは、上記観察部A1に収容された細胞2が当該枠体17を乗り越えない程度に設定され、増殖した細胞2が上記参照部A2に侵入しないようにしている。
上記培養液の液面高さは上記枠体17よりも上方となるように維持され、これにより上記観察部A1の内部および参照部A2の内部が常時培養液で満たされるようになっている。
なお、液体収容部12に上記観察部A1を複数設けて、複数の観察部A1で細胞2を培養してもよく、また上記観察部A1や参照部A2の平面形状は四角形に限らない。
【0011】
上記蓋部13は上記細胞保持容器3に装着されて内部を密閉するように構成されており、当該蓋部13の中央には内部の細胞2を観察するための透明な観察窓18が設けられている。
上記観察窓18は上記蓋部13の略中央に設けられており、蓋部13から液体収容部12の底部に向けて突出するように設けられた筒状部13dの先端部に、液密を保った状態で固定されている。
上記観察窓18としては、厚さ0.5~1mm程度の上面および下面が平行となるように加工された平坦な石英ガラス、BK7、合成石英等を使用することができ、材質は使用する照明光L1の波長に応じて適宜変更することができる。
また上記観察窓18は、上記液体収容部12に形成された上記観察部A1および参照部A2の上方に位置しており、また観察部A1および参照部A2の全体を覆う程度の大きさに形成されている。
これにより、細胞保持容器3を上記観察台11によって移動させながら、鉛直方向上方より照明光L1を照射すると、観察窓18を通過して観察部A1および参照部A2に照明光L1が照射されるようになっている。
そして、上記培養液の収容された液体収容部12に蓋部13を装着すると、上記観察窓18の下面が液体収容部12に収容された培養液の液面よりも下方に位置して、当該観察窓18の下面の全体が培養液に接触するようになっている。
【0012】
そして本実施例の細胞保持容器3の観察窓18は、水平に設けられておらず、具体的には観察窓18の上面および下面は鉛直方向上方より照射される照明光L1の光軸に対して傾斜して設けられたものとなっている。
観察窓18の傾斜角度については特に限定はないが、1~10°の範囲とすることが望ましく、より好ましくは2°程度とすることが好ましい。
傾斜角度が1°よりも小さいと、後述するように細胞2で反射した物体光L2と参照光L3との角度差と、観察窓18で反射した反射光と参照光L3との角度差との差が十分に得られず、画像処理を行った際に観察窓18で反射した反射光L4がノイズとなって細胞2の像が不鮮明となる。
一方、傾斜角度が10°を超えると、傾斜した観察窓18の下面全体を培養液に接触させる必要があることから、液体収容部12に収容する培養液の深さが必要となり、培養液が大量に必要になるといった問題が発生する。
【0013】
次に、図3を用いてホログラフィ観察装置1を構成する上記照明光照射手段4、導光手段5、撮像手段6について説明し、併せて画像処理手段7による画像処理の手順について説明する。なお、ホログラフィを用いた観察方法自体は上記特許文献1に記載されているため、詳細な説明を省略する。
上記照明光照射手段4は、例えば波長635nmのレーザ光をCW発振するレーザ発振器となっており、当該レーザ光を発振光L0として照射するようになっている。なお、レーザ光の波長については細胞2の種類に応じて選択可能である。
【0014】
上記導光手段5として、照明光照射手段4より照射される発振光L0の光軸上には部分透過ミラー21が設けられており、発振光L0の一部は部分透過ミラー21を透過して照明光L1として直進し、その他の一部は部分透過ミラー21で反射して参照光L3となる。
上記部分透過ミラー21を透過した照明光L1の光軸上には全反射ミラー22が設けられており、全反射ミラー22は照明光L1を上記細胞保持容器3に向けて鉛直下方に反射させる。
上記全反射ミラー22によって反射した照明光L1の光軸上には、上記細胞保持容器3との間に第1ビームスプリッタ23および対物レンズ24が設けられており、このうち対物レンズ24は図1に示すように上記細胞保持容器3の直上に設けられている。
このような構成により、上記照明光照射手段4から発振された発振光L0は、上記部分透過ミラー21を透過して照明光L1となった後、上記全反射ミラー22で反射し、その後第1ビームスプリッタ23および対物レンズ24を透過することで、鉛直方向上方から細胞保持容器3の観察窓18に向けて導光されるようになっている。
【0015】
そして、上記細胞保持容器3に向けて照射された照明光L1は、当該細胞保持容器3に設けられた上記観察窓18を透過し、さらに細胞保持容器3に収容された培養液を透過して細胞2に照射される。
このようにして照明光L1が細胞2に照射されると、細胞2の表面で反射した光と、細胞2を透過した後に細胞保持容器3の底面で反射して再び細胞2を透過した光とが、上方に向かう物体光L2となる。つまり物体光L2とは、照明光L1を試料に照射することで生成されるものであり、試料で反射した光も含むものとなっている。
ここで本実施例の細胞保持容器3では、上記観察窓18の下面が培養液に接触しているため、観察窓18の下方に培養液との境界面が形成され、この境界面で照明光L1が反射されることとなる。
換言すると、観察窓18の下方に揺らぎのある培養液の液面が形成されないことから、揺らぎのある液面で照明光L1が反射せず、また液面の揺らぎによる散乱も発生しないようになっている。
上記物体光L2のうち、鉛直方向上方に向けて反射した物体光L2は、上記観察窓18を透過した後、さらに上記対物レンズ24を透過し、上記第1ビームスプリッタ23で撮像手段6に向けて反射する。
そして、上記第1ビームスプリッタ23と撮像手段6との間には導光手段5を構成する第2ビームスプリッタ25が設けられており、上記物体光L2は当該第2ビームスプリッタ25を透過して、上記撮像手段6に入射する。
ここで本実施例の物体光L2は撮像手段6の撮像面に対して垂直に入射するようになっており、その入射角度は上記第1ビームスプリッタ23によって調整可能となっている。
【0016】
一方、上記照明光照射手段4が照射した発振光L0の一部は、上記部分透過ミラー21において参照光L3として反射した後、導光手段5を構成する2つの全反射ミラー26、27で反射した後、上記第2ビームスプリッタ25へと導光される。
そして上記参照光L3は、上記第2ビームスプリッタ25において反射した後に上記撮像手段6に入射するようになっており、このとき当該参照光L3は撮像手段6の撮像面に対して所定の角度で入射するように設定されている。
【0017】
撮像手段6には従来公知のCMOSセンサやCCDセンサを用いることができ、複数の画素がx方向およびy方向に配列された撮像面を有しており、撮像面に到達した光の強度を記録するようになっている。
上述したように、上記撮像手段6の撮像面には上記物体光L2が垂直に入射し、参照光L3が傾斜した方向から入射するようになっており、上記撮像手段6の近傍で物体光L2と参照光L3とが所定の角度差で交差するようになっている。
このように物体光L2と参照光L3とが交差すると、これらの光がもつ位相差によって干渉縞(ホログラム)が形成され、撮像手段6が撮影した干渉縞の画像がホログラム画像となる。
【0018】
上記画像処理手段7は従来公知のコンピュータによって構成され、上記撮像手段6が撮影したホログラム画像を2次元フーリエ変換するとともに、2次元フーリエ変換によって抽出された空間スペクトルをさらに逆フーリエ変換することで、撮影した細胞2の再生像(振幅分布画像、位相分布画像)を観察することが可能となっている。
まず、画像処理手段7は撮像手段6によって撮影されたホログラム画像を2次元フーリエ変換し、図4(b)、図5(b)に示すような空間スペクトルを作成する。図4(b)、図5(b)に示す座標系おいて、横軸はx軸の空間周波数fxを示し、縦軸はy軸の空間周波数fyを示している。
ホログラム画像を2次元フーリエ変換すると、座標系の原点を中心として非回折光の空間スペクトル像S1(空間スペクトル上の非回折光)が形成され、また原点を中心として点対称となる位置に、物体光の空間スペクトル像S2(空間スペクトル上の物体像)と共役像の空間スペクトル像S3とが形成される。
なお、上記各空間スペクトル像Sは円形で表しているが、これは細胞2の形状が円形であることを示すものではない。
【0019】
このようにして得られた各空間スペクトル像Sのうち、画像処理手段7は上記物体光の空間スペクトル像S2を用いて上記細胞2の観察を行う。
具体的には、画像処理手段7は2次元フーリエ変換された図4(b)、図5(b)に示す画像から、図6に示すように上記物体光の空間スペクトル像S2をフィルタリングによって抽出する。
ここで図4(b)、図5(b)において、上記物体光の空間スペクトル像S2が形成される位置は、物体光L2の波長や、物体光L2と参照光L3との角度差等に依存するため、あらかじめ算出することが可能となっている。
このようにして物体光の空間スペクトル像S2を抽出したら、画像処理手段7はこの物体光の空間スペクトル像S2についてさらに逆フーリエ変換を行うことで、振幅画像(強度画像)および位相画像を得ることができる。
その後、画像処理手段7はこれらの画像について所要の処理を行うことで、細胞2の厚みや屈折率といったパラメータを算出したり、細胞2の培養状態を観察することが可能となる。
【0020】
そして本実施例では、培養液中の細胞2を鮮明に観察するため、上述したように細胞保持容器3の観察窓18を上記導光手段5によって導光した照明光L1の光軸に対して傾斜させたことを特徴としている。
そのうえで、本実施例では上記細胞保持容器3に設けた細胞2を収容した上記観察部A1と、細胞2を収容していない上記参照部A2と、それぞれ照明光L1を照射するようにしたことを特徴としている。
以下、図4図5を用いて説明すると、図4は本実施例のように観察窓18を照明光L1の光軸に対して傾斜させた場合を、図5は従来のように観察窓18を照明光L1の光軸に直交させた場合をそれぞれ示している。
このうち図4(a)、図5(a)は、上記細胞保持容器3における上記観察窓18近傍の拡大断面図を示しており、それぞれ照明光L1が上記鉛直方向上方より入射し、当該照明光L1がどのように反射するのかを示した図となっている。
また図4(b)、図5(b)は、撮像手段6が撮像したホログラム画像を画像処理手段7が二次元フーリエ変換したことによって得られる空間スペクトルをそれぞれ示した図となっている。
【0021】
本実施例にかかる図4(a)の左側の矢印は、上記照明光L1が細胞保持容器3の観察部A1に収容された細胞2で反射した状態を示しており、上記導光手段5によって鉛直方向下方に向けて照射された照明光L1は、透明な観察窓18および培養液を透過すると、上記観察部A1に収容された上記細胞2で反射する。
このうち、照明光L1と同軸となる鉛直方向上方に向けて反射した光は、物体光L2となって上記撮像手段6まで導光され、当該撮像手段6の撮像面に対して垂直に入射するようになっている。
左側から2番目の矢印は、上記照明光L1が細胞保持容器3の参照部A2で反射した状態を示しており、照明光L1は透明な観察窓18および培養液を透過すると、上記参照部A2を構成する液体収容部12の底面で鉛直方向上方に向けて反射する物体光L2となり、その後上記撮像手段6の撮像面に対し垂直に入射する。
なお、後述するように上記照明光L1を観察部A1に照射するタイミングと、参照部A2に照射するタイミングとは異なっているため、上記撮像手段6に対して上記観察部A1で反射した物体光L2と参照部A2で反射した物体光L2とが同時に入射しないようになっている。
【0022】
これに対し、左側から3番目、4番目の矢印は、それぞれ上記照明光L1が上記観察窓18の下面および上面で反射した状態を示している。
鉛直下方に向けて照射された照明光L1は観察窓18の上面で反射するとともに、観察窓18と培養液との境界となる当該観察窓18の下面で反射する反射光L4(ノイズ光)となる。
ここで、上記反射光L4は細胞2の像を含んでいないことから、当該反射光L4が撮像手段6に入射すると、ノイズとなって細胞2の像が不鮮明になってしまう。
しかしながら、観察窓18を照明光L1の光軸に対して傾斜して設けたことにより、上記反射光L4の光軸は上記照明光L1の光軸に対して傾斜するようになっている。
その結果、当該反射光L4が導光手段5によって上記撮像手段6まで導光されても、撮像手段6の撮像面に対して傾斜した方向から入射することとなり、物体光L2の入射角度と反射光L4の入射角度とを異ならせることが可能となっている。
【0023】
このようにして撮像手段6がホログラム画像を撮像すると、画像処理手段7はホログラム画像を2次元フーリエ変換することにより図4(b)に示す複数の空間スペクトル画像が存在する画像を作成する。
また画像処理手段は、図4(b)に示す画像から、細胞2および参照部A2で反射した物体光L2に基づいて、図6(a)、(b)に示すように、物体光の空間スペクトル像S2だけを抽出する。
このうち図6(a)は、細胞2で反射した物体光L2に基づく物体光の空間スペクトル像S2としての細胞の空間スペクトル像S2’を示し、図6(b)は、参照部A2で反射した物体光L2に基づく物体光の空間スペクトル像S2としての参照用の空間スペクトル像S2”を示している。
図6(a)に示す細胞の空間スペクトル像S2’を用いて説明すると、当該細胞の空間スペクトル像S2’の中心部(図中+の部分)には、細胞2で反射した物体光L2によって得られる細胞2の情報が多く含まれている。
換言すると、細胞の空間スペクトル像S2’に対して逆フーリエ変換を行って細胞2の像を形成する際、この細胞の空間スペクトル像S2’の中心部の情報が利用されるようになっている。
【0024】
しかしながら、上記撮像手段6には、細胞2や参照部A2で反射した物体光L2とともに、上記観察窓18で反射した反射光L4も入射するため、細胞の空間スペクトル像S2’および参照用の空間スペクトル像S2’’には、それぞれ観察窓18で反射した反射光L4に基づく観察窓18の情報がノイズとして含まれてしまう。
そこで本実施例では、図4(a)に示すように観察窓18を照明光L1の光軸に対して傾斜させたことで、撮像手段6に対する、細胞2で反射した物体光L2の入射角度と、観察窓18で反射した反射光L4の入射角度とを異ならせるようになっている。
上述したように、ホログラム画像は物体光L2と参照光L3とが交差することによって生じる干渉縞を撮影することで得られるが、このとき物体光L2と参照光L3との交差角が変化すると、上記干渉縞のピッチが変化することが知られている。
つまり本実施例のように、撮像手段6に対する物体光L2の入射角度と、反射光L4の入射角度とを異ならせることで、物体光L2と参照光L3との角度差と、反射光L4と参照光L3との角度差とを異ならせ、干渉縞のピッチを異ならせることが可能となっている。
【0025】
このように干渉縞のピッチを異ならせることで、図6(a)に示すように、上記観察窓18で反射した反射光L4に基づく観察窓18の情報Zを、細胞の空間スペクトル像S2’の中心部から偏倚した位置に形成させることができる。
これと同様、図4(a)で示したように、照明光L1を参照部A2に照射した場合における反射光L4も、上記照明光L1を細胞2に照射した場合の反射光L4と同じ方向に反射することとなる。
したがって、参照部A2で反射した物体光L2と参照光L3との角度差を、反射光L4と参照光L3との角度差に対して異ならせることが可能となり、図6(b)に示す参照用の空間スペクトル像S2’’においても、観察窓18の情報Zを図6(a)と同じ場所に形成させることができる。
なお、図6(a)、(b)の各図には、上記観察窓18の情報Zを円形の領域として示しているが、これは説明のためであって、画像処理手段7が設定する必要はなく、また観察窓18の傾斜角度や傾斜方向によって観察窓18の情報Zの位置は変化する。
【0026】
このようにして図6(a)の細胞の空間スペクトル像S2’と、図6(b)の参照用の空間スペクトル像S2’’とが得られたら、画像処理手段7はその差分から図6(c)に示す物体光の空間スペクトル像S2を作成する。以下、この画像をマスク後の空間スペクトル像S2’’’と呼ぶ。
具体的には、図6(a)の細胞の空間スペクトル像S2’と、図6(b)の参照用の空間スペクトル像S2’’には、それぞれ同じ位置に観察窓18の情報Zが位置しているため、これらの差分から、細胞の空間スペクトル像S2’から観察窓18の情報Zを除去した、マスク後の空間スペクトル像S2’’’を得ることができる。
その後、画像処理手段7はマスク後の空間スペクトル像S2’’’に対して逆フーリエ変換を行うことで、観察窓18で反射した反射光L4によるノイズが除去された、鮮明な細胞2の像を得ることができる。
【0027】
これに対し、図5(a)に示すように上記観察窓18が照明光L1の光軸に直交して設けられている場合について説明する。
この場合であっても、鉛直方向上方より照射された照明光L1のうち、細胞2で反射した物体光L2は鉛直方向上方に向かった後、撮像手段6の撮像面に垂直に入射する。
一方、上記観察窓18は照明光L1の光軸に直交していることから、照明光L1が観察窓18の下面および上面で反射すると、鉛直方向上方に向かう反射光L4となって、撮像手段6の撮像面に垂直に入射することとなる。
その結果、細胞2で反射した物体光L2と参照光L3との角度差と、上記観察窓18で反射した反射光L4と参照光L3との角度差とが同じとなってしまい、形成される干渉縞のピッチが等しくなってしまう。
このため、画像処理手段7が2次元フーリエ変換によって図5(b)に示す空間スペクトル像Sを作成すると、上記細胞の空間スペクトル像S2’において、上記観察窓18の情報Zが中央部に位置してしまうこととなる。
上述したように、細胞の空間スペクトル像S2’の中央部には細胞2に関する情報が多く含まれていることから、この細胞2に関する情報に上記観察窓18の情報Zがノイズとして混入されると、鮮明な細胞2の画像が得られないこととなる。
また、このように細胞の空間スペクトル像S2’の中央部に情報が集中してしまうと、仮に図6(b)のように参照部A2からの物体光L2を用いて参照用の空間スペクトル像S2’’を作成しても、正確に上記観察窓18の情報Zを除去することが困難であるため、不正確な像となってしまう可能性がある。
【0028】
以下、上記実施例にかかるホログラフィ観察装置1の操作方法について説明する。
最初に、上記細胞保持容器3において細胞2の培養を開始する。細胞2の培養方法は従来公知であるため詳細な説明は省略するが、培養すべき細胞2を上記液体収容部12に形成した観察部A1に播種し、参照部A2には播種を行わないようする。
また液体収容部12には所要の高さまで培養液を収容し、液体収容部12に上記蓋部13を装着した際に、上記観察窓18の下面が上記培養液に接触するようにする。このとき観察窓18の上面はその周囲が筒状部13dによって囲繞されていることから、観察窓18の上部に培養液が位置することはない。
このように細胞保持容器3に細胞2を播種したら、図示しない二酸化炭素供給手段、培養液供給手段、排出手段を接続し、制御手段がこれらを制御することで、細胞保持容器3の内部が所要の環境に維持される。
【0029】
本実施例の細胞保持容器3の場合、上記二酸化炭素供給手段、培養液供給手段、排出手段によって培養に好適な環境が維持されていることから、インキュベータ内で培養をする必要はなく、任意のタイミングで細胞2の状態を観察することができる。
作業者は細胞保持容器3を上記ホログラフィ観察装置1の観察台11に載置する。細胞保持容器3および観察台11にはそれぞれマークが付されており、作業者がこのマークに合わせて細胞保持容器3を載置すると、観察台11に載置された細胞保持容器3の位置および観察窓18の傾きを一定にすることができる。
【0030】
このように細胞保持容器3が観察台11に載置されると、制御手段が観察台11を制御して細胞保持容器3を移動させ、上記照明光照射手段4による照明光L1の照射位置に上記観察部A1を位置させる。
すると、照明光照射手段4が照射した照明光L1は導光手段5によって導光されて上記細胞保持容器3の鉛直方向上方から照射され、当該照明光L1の一部は観察窓18および培養液を透過して観察部A1に収容された細胞2に照射される。
このとき、観察窓18の下面は液体収容部12に収容されている培養液に接しているため、観察窓18を通過した照明光L1が培養液の液面や観察窓18に付着した液滴によって散乱しないようになっている。
そして、細胞2で反射した照明光L1は物体光L2となって鉛直方向上方、すなわち上記照明光L1と同軸上を上方に向けて反射し、その後導光手段5によって撮像手段6の撮像面に対して垂直に入射する。
一方、鉛直方向上方から照射された照明光L1の一部は上記観察窓18の上面および下面で反射して反射光L4となる。このとき観察窓18は照明光L1の光軸に対して傾斜していることから、反射光L4は導光手段5によって撮像手段6まで導光されても、撮像手段6の撮像面に対して傾斜した方向から入射することとなる。
【0031】
一方、上記照明光照射手段4が発振した発振光L0の一部は、導光手段5によって参照光L3として導光され、上記撮像手段6の撮像面に対して傾斜した方向から入射する。
その結果、上記撮像手段6には、撮像面に対して垂直に入射する物体光L2と、傾斜した方向から入射する参照光L3とが交差することで発生した干渉縞(ホログラム)が入射するようになっている。
これと同時に、上記撮像手段6には、撮像面に対して傾斜した方向から入射する反射光L4と、傾斜した方向から入射する参照光L3とが交差することで発生した干渉縞(ホログラム)も入射するようになっている。
その結果、上記細胞2で反射した物体光L2と参照光L3との角度差と、観察窓18で反射した反射光L4と参照光L3との角度差とが異なることとなり、撮像手段6にはピッチの異なる干渉縞がホログラム画像として撮影されることとなる。
【0032】
上記画像処理手段7は、撮像手段6が撮像したホログラム画像を2次元フーリエ変換し、これにより図4(b)に示す空間スペクトルを作成するとともに、当該空間スペクトルから図6(a)に示すような物体光の空間スペクトル像S2としての細胞2の空間スペクトル像S2’を抽出する。
この細胞2の空間スペクトル像S2’には、その中心部に観察部A1の細胞2で反射した細胞2の情報が位置しているのに対し、中心部から偏倚した位置には上記観察窓18で反射した観察窓18の情報Zが位置している。
【0033】
このようにして図6(a)に示す細胞の空間スペクトル像S2’が得られたら、制御手段は観察台11を制御して、照明光L1の照射位置に上記細胞保持容器3の参照部A2を位置させる。
参照部A2に上記照明光L1が照射されると、この照明光L1の一部が上記参照部A2を構成する液体収容部12の底面で反射し、鉛直方向上方に反射する物体光L2となって上記撮像手段6の撮像面に垂直に入射する。
この場合も、上記照明光L1の一部は傾斜して設けられた観察窓18の上面および下面で反射する反射光L4となり、上記撮像手段6の撮像面に対して傾斜した方向から入射する。
これにより、上記参照部A2で反射した物体光L2と参照光L3との角度差と、観察窓18で反射した反射光L4と参照光L3との角度差とが異なることとなり、撮像手段6にはピッチの異なる干渉縞がホログラム画像として撮影されることとなる。
上記画像処理手段7は、撮像手段6が撮像したホログラム画像について2次元フーリエ変換を行い、図6(b)に示すような参照用の空間スペクトル像S2’’を抽出する。
この参照用の空間スペクトル像S2’’には、その中心部に参照部A2で反射した物体光L2に基づく参照部A2の情報が位置しているのに対し、中心部から偏倚した位置に上記観察窓18で反射した観察窓18の情報Zが位置している。
【0034】
続いて画像処理手段7は、これら細胞の空間スペクトル像S2’と参照用の空間スペクトル像S2’’との差分から、観察窓18の情報Zを除去した、図6(c)に示すマスク後の空間スペクトル像S2’’’を作成する。
そして画像処理手段7は、このマスク後の空間スペクトル像S2’’’を逆フーリエ変換することにより、細胞2についての振幅画像や位相画像を取得し、これらの画像から観察部A1に収容された細胞2の厚みや屈折率を測定したり、細胞2の状態を観察することができる。
【0035】
本実施例によれば、細胞保持容器3に設けた観察窓18を照明光L1の光軸に対して傾斜させたことで、細胞2で反射した物体光L2と参照光L3との角度差と、観察窓18で反射した反射光L4と参照光L3との角度差とを異ならせることができる。
これにより、撮像手段6に入射する干渉縞のピッチを異ならせて、図6(a)に示すように細胞の空間スペクトル像S2’の中央部から観察窓18の情報Zを偏倚させることができ、観察窓18の情報Zにかかるノイズを除去した細胞2の鮮明な像を得ることができる。
そのうえ本実施例では、参照部A2に照明光L1を照射して図6(b)に示す参照用の空間スペクトル像S2’’を作成することで、上記細胞の空間スペクトル像S2’と参照用の空間スペクトル像S2’’との差分からマスク後の空間スペクトル像S2’’’を作成することが可能となっており、観察窓18の情報Zにかかるノイズを除去した細胞2の鮮明な像を得ることができる。
【0036】
図7は第2実施例にかかるホログラフィ観察装置1を説明する図である。
図1に示す第1実施例のホログラフィ観察装置1では、上記導光手段5が下方に向けて導光した照明光L1は、細胞保持容器3に収容された細胞2に反射させて、上方に反射した物体光L2を上記撮像手段6によって撮像するようになっていた。
これに対し、第2実施例のホログラフィ観察装置1では、上記対物レンズ24および撮像手段6を細胞保持容器3の下方に設けるとともに、細胞保持容器3の液体収容部12の底面を透過可能な素材によって構成したものとなっている。
なお、導光手段5の構成については第1実施例の構成を応用可能であるため、上記参照光L3の導光など、詳細な構成については省略するものとする。また細胞保持容器3は第1実施例で使用したものと同じものを使用することができる。
【0037】
本実施例においても、上記照明光照射手段4が照射した照明光L1は上記細胞保持容器3に対して垂直方向上方から入射するようになっており、上記細胞保持容器3に傾斜して設けられた観察窓18およびその下方に位置する培養液を透過した後、上記観察部A1に収容された細胞2に照射される。
照明光L1は細胞を透過することで物体光L2となり、液体収容部12の底面を透過した後、下方に設けられた導光手段5を構成する対物レンズ24を通過して、上記撮像手段6へと導光されるようになっている。
また照明光L1を上記参照部A2に照射すると、照明光L1は上記液体収容部12の底面を透過することで物体光L2となり、液体収容部12の底面を透過した後、上記撮像手段6へと導光されるようになっている。
【0038】
しかしながら、上記細胞2や参照部A2に照射された照明光L1の一部は、上記液体収容部12の底面で反射するが、この反射した光はさらに上方に設けられている観察窓18の上面および下面で反射し、上記対物レンズ24および撮像手段6に向かう反射光L4となる。
このようにして観察窓18で反射した反射光L4は、観察窓18が照明光L1の光軸に対して傾斜していることから、導光手段5によって撮像手段6まで導光されても、撮像手段6の撮像面に対して傾斜した方向から入射するようになっている。
したがって、上記第1実施例と同様、細胞2(または参照部A2)を透過した物体光L2と参照光L3との角度差と、観察窓18で反射した反射光L4と参照光L3との角度差とを異ならせることができる。
そして、画像処理手段7も上記第1実施例と同様の手順で画像処理を行うことにより、観察窓18の情報Zにかかるノイズを除去した細胞2の鮮明な像を得ることができる。
【0039】
なお上記実施例では、細胞保持容器3に観察部A1と参照部A2とを設けているが、このうち上記参照部A2については省略してもよい。
その場合、予め細胞2を収容していない観察部A1に照明光L1を照射して、図6(b)の参照用の空間スペクトル像S2’’を作成しておき、その後観察部A1で細胞2を培養した後に、図6(a)の細胞の空間スペクトル像S2’を作成して、その差分から図6(c)のマスク後の空間スペクトル像S2’’’を作成すればよい。
さらに上記細胞保持容器3から枠体17を省略することも可能である。その場合、細胞保持容器3の底面の細胞2が存在する領域を観察部A1とし、細胞のない領域を参照部A2とすればよく、あるいは、上述のように、予め細胞2を収容していない観察部A1を参照部A2とすれば良い。
また図8に示す他の方法として、細胞の空間スペクトル像S2’において上記観察窓18の情報Zが形成される位置をあらかじめ認識しておき、当該情報Zが含まれる部分にマスクZ’を設定しておく。
観察部A1の細胞2に照明光L1を照射して図8(a)の細胞の空間スペクトル像S2’を作成したら、続いて図8(b)に示すように空間スペクトル像S2’からマスクZ’に含まれる情報を削除し、その後逆フーリエ変換を行うことで、観察窓18の情報Zが削除された細胞2の鮮明な像を得ることができる
【0040】
また上記実施例では、細胞保持容器3に上記二酸化炭素供給手段、培養液供給手段、排出手段を接続して、内部を細胞2の培養に適した環境に維持するようにしているが、細胞保持容器3として、これらの接続されていない培養容器を用いることも可能であり、他の細胞培養容器で培養した細胞を細胞保持容器3に移して観察することも可能である。
このような培養容器であっても、当該培養容器の上部に観察窓18を設けて、当該観察窓18の下面を培養液に接触させておけば、所定の環境に維持されたインキュベータ内において細胞2の培養を行った後、当該培養容器をインキュベータから取り出して、ホログラフィ観察装置1において観察することができる。
また、本実施例では試料として細胞2を観察しているが、細胞に限られることはなく、液中に浸漬された状態でホログラフィ観察が可能な試料であれば、本件発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 ホログラフィ観察装置 2 細胞(試料)
3 細胞保持容器(試料保持容器) 4 照明光照射手段
5 導光手段 6 撮像手段
7 画像処理手段 12 液体収容部
13 蓋部 18 観察窓
L1 照明光 L2 物体光
L3 参照光 L4 反射光
A1 観察部 A2 参照部
S2 物体光の空間スペクトル像
S2’ 細胞の空間スペクトル像
S2’’ 参照用の空間スペクトル像
S2’’’ マスク後の空間スペクトル像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8