(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180553
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/18 20060101AFI20231214BHJP
B60C 11/03 20060101ALI20231214BHJP
B60C 11/13 20060101ALI20231214BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20231214BHJP
B60C 3/04 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60C9/18 N
B60C11/03 300B
B60C11/13 B
B60C9/22 G
B60C11/13 D
B60C9/18 G
B60C3/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093941
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】三原 直也
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC20
3D131BC34
3D131BC35
3D131DA34
3D131DA43
3D131DA52
3D131EB11V
3D131EB11W
3D131EB11X
3D131EB12V
3D131EB12W
3D131EB18V
3D131EB18W
3D131EB22V
3D131EB22W
3D131EB23V
3D131EB23W
3D131EB23X
3D131EB24W
3D131EB24X
3D131EC12V
3D131EC12X
(57)【要約】
【課題】 転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能をさらに向上する。
【解決手段】 トレッド部2に、ショルダー周方向溝3とクラウン周方向溝4とが設けられタイヤ1である。正規荷重負荷状態において、ショルダー周方向溝3の溝壁6は、互いに接触することがなく、かつ、クラウン周方向溝4の溝壁7の少なくとも一部は、互いに接触する。クラウン周方向溝4は、トレッド接地面2sよりもタイヤ半径方向内側に拡幅部10を有している。拡幅部10の溝幅W2は、クラウン周方向溝4のトレッド接地面2sの溝幅W1よりも大きい。ジョイントレスバンドプライ20Aの第1トレッド端T1側の外端25は、ショルダー周方向溝3の外端3eよりもタイヤ軸方向の外側に位置する
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤであって、
第1トレッド端を有するトレッド部を備えており、
前記トレッド部には、前記第1トレッド端に隣接するショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝とタイヤ赤道との間に配されたクラウン周方向溝とが設けられており、
前記ショルダー周方向溝及び前記クラウン周方向溝は、それぞれ、一対の溝壁を含み、
前記タイヤが、正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた正規荷重負荷状態において、前記ショルダー周方向溝の前記一対の溝壁は、互いに接触することがなく、かつ、前記クラウン周方向溝の前記一対の溝壁の少なくとも一部は、互いに接触し、
前記クラウン周方向溝は、トレッド接地面よりもタイヤ半径方向内側に拡幅部を有し、
前記拡幅部の溝幅は、前記クラウン周方向溝の前記トレッド接地面の溝幅よりも大きく、
前記トレッド部の内部には、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライからなるバンド層が設けられており、
前記ジョイントレスバンドプライは、タイヤ赤道を覆うように配されており、
前記ジョイントレスバンドプライの前記第1トレッド端側のタイヤ軸方向の外端は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の外側に位置する、
タイヤ。
【請求項2】
前記クラウン周方向溝の前記トレッド接地面の溝幅は、前記ショルダー周方向溝の溝幅の0.01~0.2倍である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記クラウン周方向溝の横断面の溝面積は、前記ショルダー周方向溝の横断面の溝面積の0.1~0.5倍である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記トレッド接地面から前記拡幅部までのタイヤ半径方向の長さは、前記クラウン周方向溝の溝深さの0.4~0.7倍である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー周方向溝の前記外端と前記ジョイントレスバンドプライの前記外端との間のタイヤ軸方向の離隔距離は、前記ショルダー周方向溝の前記外端と前記第1トレッド端との間のタイヤ軸方向の離隔距離の10%~50%である、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記トレッド部の内部には、ベルトコードがタイヤ周方向に対して10~50度の角度で配列された少なくとも3枚のベルトプライからなるベルト層が設けられており、
前記少なくとも3枚のベルトプライのうちの少なくとも1枚は、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ半径方向の内側に位置する、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ半径方向の内側に位置する前記ベルトプライは、前記ジョイントレスバンドプライの前記外端よりもタイヤ軸方向の外側に外端を有する、請求項6に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記バンド層は、前記第1トレッド端に隣接し、かつ、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスエッジバンドプライを含み、
前記ジョイントレスエッジバンドプライは、前記ジョイントレスバンドプライの前記外端に跨っている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記ジョイントレスエッジバンドプライのタイヤ軸方向の内端は、前記ショルダー周方向溝の前記外端よりもタイヤ軸方向の外側に位置している、請求項8に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記タイヤは、偏平率が70%以下の重荷重用タイヤである、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、周方向主溝と周方向細溝とが設けられた重荷重用タイヤが記載されている。周方向細溝は、周方向主溝がタイヤ接地時に互いに接触可能である2つのリブ状陸部を区画する。このような重荷重用タイヤは、タイヤの転がり抵抗を小さくするとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、国際基準「UN/ECE Regulation No.117 02 Series(R117-02)」や日本自動車タイヤ協会の「ラベリング制度」が注目されており、転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能をさらに向上することが求められている。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出なされたもので、転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能をさらに向上することができるタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤであって、第1トレッド端を有するトレッド部を備えており、前記トレッド部には、前記第1トレッド端に隣接するショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝とタイヤ赤道との間に配されたクラウン周方向溝とが設けられており、前記ショルダー周方向溝及び前記クラウン周方向溝は、それぞれ、一対の溝壁を含み、前記タイヤが、正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた正規荷重負荷状態において、前記ショルダー周方向溝の前記一対の溝壁は、互いに接触することがなく、かつ、前記クラウン周方向溝の前記一対の溝壁の少なくとも一部は、互いに接触し、前記クラウン周方向溝は、トレッド接地面よりもタイヤ半径方向内側に拡幅部を有し、前記拡幅部の溝幅は、前記クラウン周方向溝の前記トレッド接地面の溝幅よりも大きく、前記トレッド部の内部には、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライからなるバンド層が設けられており、前記ジョイントレスバンドプライは、タイヤ赤道を覆うように配されており、 前記ジョイントレスバンドプライの前記第1トレッド端側のタイヤ軸方向の外端は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の外側に位置するタイヤである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤは、上記の構成を採用することで、転がり抵抗性能及びウェットグリップ性能をさらに向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のタイヤの一実施形態を示すトレッド部の平面図である。
【
図2】(A)は、
図1のA-A線断面図、(B)は、
図1のB-B線断面図である。
【
図3】
図1のタイヤのトレッド部のタイヤ子午線断面図である。
【
図5】他の実施形態のトレッド部のタイヤ子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態のタイヤ1のトレッド部2の平面図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、重荷重用タイヤとして好適に用いられる。なお、本発明は、重荷重用の空気入りタイヤの他、乗用車用や小型トラック用の空気入りタイヤに採用されても良い。
【0010】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、第1トレッド端T1に隣接するショルダー周方向溝3と、ショルダー周方向溝3とタイヤ赤道Cとの間に配されたクラウン周方向溝4とが設けられている。ショルダー周方向溝3及びクラウン周方向溝4は、それぞれ、一対の溝壁6、7を含んでいる。
【0011】
トレッド部2の剛性は転がり抵抗への寄与が大きく、特に、接地圧の高いタイヤ赤道C側のトレッド部2の剛性を高くすることは効果的である。このため、本発明では、正規荷重負荷状態において、ショルダー周方向溝3の一対の溝壁6、6は、互いに接触することがない。また、クラウン周方向溝4の一対の溝壁7、7の少なくとも一部は、互いに接触する。これにより、本発明のタイヤ1は、トレッド接地面2sが接地すると、クラウン周方向溝4の溝壁7が互いに支え合うので、クラウン周方向溝4に隣接する陸部の変形を抑え、転がり抵抗を小さくする。また、ショルダー周方向溝3は、トレッド接地面2sが接地しても、その一対の溝壁6が接触しないため、優れた排水効果を発揮する。
【0012】
図2(A)は、
図1のA-A線断面図であり、クラウン周方向溝4の溝中心線4cと直交する方向の横断面である。
図2(A)に示されるように、クラウン周方向溝4は、トレッド接地面2sよりもタイヤ半径方向内側に拡幅部10を有している。拡幅部10の溝幅W2は、クラウン周方向溝4のトレッド接地面2sの溝幅W1よりも大きく形成されている。このような拡幅部10は、摩耗初期においては、トレッド部2の剛性の低下を抑えて、転がり抵抗性能を高めるとともに、摩耗後期においては、排水性を高めることに寄与する。
【0013】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2は、タイヤ軸方向の両側に第1トレッド端T1を備えている。第1トレッド端T1は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。前記「正規状態」とは、各種の規格が定められた空気入りタイヤ1の場合、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、前記正規状態は、タイヤの使用目的に応じた標準的な使用状態であって無負荷の状態を意味する。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ1の各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。また、第1トレッド端T1、T1との間のタイヤ軸方向の距離がトレッド幅TWである。
【0014】
前記「正規リム」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば"標準リム"、TRAであれば"Design Rim"、ETRTOであれば"Measuring Rim"である。
【0015】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"INFLATION PRESSURE"である。
【0016】
前記「正規荷重」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES"に記載の最大値、ETRTOであれば"LOAD CAPACITY"である。各種の規格が定められていないタイヤの場合、「正規荷重」は、上述の規格に準じ、タイヤを使用する上で適用可能な最大の荷重を指す。
【0017】
図3は、タイヤ1のトレッド部2のタイヤ子午線断面図である。本発明は、偏平率が70%以下のタイヤ(重荷重用タイヤ)1に適用されるのが望ましい。このようなタイヤ1は、走行時、外径形状が大きくなることで溝面積が小さくなるなど、トレッド部2の形状が変形しやすく、所望の転がり抵抗性能やウェットグリップ性能が得られにくいという問題があった。このため、本発明の技術は、走行時の変形を抑えて、これら性能を所望の通り発揮するものである。「偏平率」は、タイヤ1の断面幅に対する断面高さの比である。「断面幅」は、タイヤ1の側面の模様及び文字等を除いたタイヤ軸方向の最大幅である。「断面高さ」は、タイヤ1の外径と正規リムのリム径との差の1/2である。
【0018】
図3に示されるように、本実施形態のタイヤ1は、トレッド部2の内部に、カーカス19とバンド層20とベルト層21とが設けられている。カーカス19は、本実施形態では、周知の構造が採用される。
【0019】
バンド層20は、バンドコード(図示省略)がタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライ20Aを含んで形成されている。このようなジョイントレスバンドプライ20Aは、タイヤ1の走行による外径形状が大きくなること(外径成長)を効果的に防ぎ、転がり抵抗性能を高めるのに役立つ。とりわけ、ジョイントレスバンドプライ20Aは、偏平率が70%以下のタイヤ1において、外径成長の高い抑制効果を発揮する。前記バンドコード及び後述するベルトコードは、本実施形態では、スチールを含む周知の構造のものが採用される。
【0020】
ジョイントレスバンドプライ20Aは、本実施形態では、タイヤ赤道Cを覆うように配されている。これにより、タイヤ赤道Cからタイヤ軸方向の両側に、上述の作用が効果的に発揮される。
【0021】
図4は、
図3の拡大図である。
図4に示されるように、ジョイントレスバンドプライ20Aの第1トレッド端T1側のタイヤ軸方向の外端(本実施形態では、タイヤ軸方向の両端)25は、ショルダー周方向溝3のタイヤ軸方向の外端3eよりもタイヤ軸方向の外側に位置する。これにより、一層、外径成長が効果的に抑制される。ショルダー周方向溝3の外端3eは、本実施形態のように、ショルダー周方向溝3がジグザグ状に延びる場合、ショルダー周方向溝3が、タイヤ周方向に亘って最もタイヤ軸方向の外側に位置する箇所である。
【0022】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、タイヤ赤道Cの両側のそれぞれに、ショルダー周方向溝3及びクラウン周方向溝4が設けられている。さらに、トレッド部2は、例えば、それぞれ複数の、ショルダー横溝8A、ミドル横溝8B及びクラウン横溝8Cが形成されている。ショルダー横溝8Aは、例えば、ショルダー周方向溝3と第1トレッド端T1とを繋いでいる。ミドル横溝8Bは、本実施形態では、ショルダー周方向溝3とクラウン周方向溝4とを繋いでいる。クラウン横溝8Cは、例えば、両側のクラウン周方向溝4を繋いでいる。
【0023】
これにより、トレッド部2は、例えば、ショルダーブロック9Aが並べられたショルダー陸部5Aと、ミドルブロック9Bが並べられたミドル陸部5Bと、クラウンブロック9Cが並べられたクラウン陸部5Cとを含んでいる。本実施形態のショルダーブロック9Aは、トレッド平面視において、略五角形状に形成されている。ミドルブロック9B及びクラウンブロック9Cは、例えば、トレッド平面視において、タイヤ周方向の両側部よりもタイヤ周方向の中央部においてタイヤ軸方向の幅が大きな樽型の略六角形状に形成されている。なお、ショルダーブロック9A、ミドルブロック9B及びクラウンブロック9Cは、このような形状に限定されるものではない。
【0024】
図2(B)は、
図1のB-B線断面図であり、ショルダー周方向溝3の溝中心線3cと直交する方向の横断面である。
図2(B)に示されるように、ショルダー周方向溝3の一対の溝壁6、6は、トレッド接地面2sからタイヤ半径方向の内側に向かってテーパ状に延びている。ショルダー周方向溝3の溝幅Wsは、例えば、6~16mmが望ましい。ショルダー周方向溝3の溝深さDsは、例えば、10~20mmが望ましい。
【0025】
図2(A)に示されるように、クラウン周方向溝4は、拡幅部10と、拡幅部10からタイヤ半径方向の外側へ延びる外側部11とを含んでいる。外側部11は、本実施形態では、トレッド接地面2sからタイヤ半径方向の内側に向かって溝幅が連続して漸減している。なお、外側部11は、例えば、トレッド接地面2sからタイヤ半径方向の内側に向かって同じ溝幅であってもよい(
図4に示す)。拡幅部10は、例えば、タイヤ半径方向の内側に向かって溝幅が連続して漸増する第1部分10aと、第1部分10aに繋がり、かつ、タイヤ半径方向の内側に向かって溝幅が漸減する第2部分10bとを含んでいる。第2部分10bは、クラウン周方向溝4の溝底4sを含んでいる。拡幅部10は、拡幅部10の溝幅W2が最大となる位置よりもタイヤ半径方向の外側において、溝幅が最小であり、かつ、最もタイヤ半径方向の内側となる位置と溝底4sとの間に形成される溝状部分として定義される。
【0026】
このようなクラウン周方向溝4は、トレッド接地面2sが接地すると、各溝壁7が、拡幅部10と外側部11との境界Kにおいて最初に接触して、境界Kからタイヤ半径方向の内外へ徐々に接触する面積を大きくする。これにより、溝壁7の接触圧が緩和されて、溝壁7の互いに支え合う効果が高く発揮されるので、転がり抵抗がより小さくなる。
【0027】
クラウン周方向溝4のトレッド接地面2sの溝幅W1は、ショルダー周方向溝3の溝幅Wsの0.01~0.2倍であるのが望ましい。これにより、ウェットグリップ性能と転がり抵抗性能とを一層、高めることができる。このような作用をより効果的に発揮するために、溝幅W1は、0.05倍以上がより望ましく、0.15倍以下がより望ましい。
【0028】
上述の作用をより効果的に発揮させるために、クラウン周方向溝4の横断面の溝面積は、ショルダー周方向溝3の横断面の溝面積の0.1倍以上が望ましく、0.2倍以上がさらに望ましく、0.5倍以下が望ましく、0.4倍以下がさらに望ましい。
【0029】
トレッド接地面2sから拡幅部10までのタイヤ半径方向の長さLbは、クラウン周方向溝4の溝深さDcの0.4倍以上が望ましく、0.5倍以上がさらに望ましく、0.7倍以下が望ましく、0.6倍以下がさらに望ましい。長さLbが溝深さDcの0.4倍以上であるので、トレッド部2のトレッド接地面2s側の剛性の低下が抑えられ、転がり抵抗性能を高めることができる。長さLbが溝深さDcの0.7倍以下であるので、拡幅部10の容積が維持されて、高い排水性能が発揮される。クラウン周方向溝4の溝深さDcは、例えば、ショルダー周方向溝3の溝深さDsの90%以上が望ましく、95%以上がさらに望ましく、110%以下が望ましく、105%以下がさらに望ましい。長さLbは、本実施形態では、外側部11のタイヤ半径方向の長さである。
【0030】
クラウン周方向溝4の拡幅部10と外側部11との境界Kでの溝幅Wcは、例えば、クラウン周方向溝4の溝幅W1の70%以上が望ましく、80%以上がさらに望ましく、100%以下が望ましい。
【0031】
ジョイントレスバンドプライ20Aは、その外端25において破断が生じやすい。このため、外端25は、タイヤ1の走行時、相対的に大きな横力の作用する第1トレッド端T1と離隔しているのが望ましい。他方、外端25が過度にショルダー周方向溝3に近づくと、ショルダー周方向溝3の溝底3sを起点として、クラックなどの損傷が生じるおそれがある。このため、ショルダー周方向溝3の外端3eとジョイントレスバンドプライ20Aの外端25との間のタイヤ軸方向の離隔距離Lcは、ショルダー周方向溝3の外端3eと第1トレッド端T1との間のタイヤ軸方向の離隔距離Lsの10%以上が望ましく、15%以上がさらに望ましく、50%以下が望ましく、45%以下がさらに望ましい。
【0032】
特に限定されるものではないが、離隔距離Lsは、トレッド幅TWの10%以上が望ましく、15%以上がさらに望ましく、26%以下が望ましく、23%以下がさらに望ましい。
【0033】
図3及び
図4に示されるように、ベルト層21は、ベルトコード(図示省略)がタイヤ周方向に対して10~50度の角度で配列された少なくとも3枚のベルトプライから形成されている。ベルト層21は、本実施形態では、タイヤ半径方向の内側から外側に向かって重ねられた第1ベルトプライ21A、第2ベルトプライ21B、第3ベルトプライ21C及び第4ベルトプライ21Dを含んでいる。各ベルトプライ21Aないし21Dは、周知の構造で形成されている。
【0034】
少なくとも3枚のベルトプライのうちの少なくとも1枚は、例えば、ジョイントレスバンドプライ20Aのタイヤ半径方向の内側に位置している。これにより、ジョイントレスバンドプライ20Aが受ける張力を小さくすることができる。本実施形態では、ジョイントレスバンドプライ20Aよりもタイヤ半径方向の内側に、第1ベルトプライ21A及び第2ベルトプライ21Bが位置している。
【0035】
ジョイントレスバンドプライ20Aのタイヤ半径方向の内側に位置するベルトプライは、例えば、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25よりもタイヤ軸方向の外側に外端を有している。これにより、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25に作用する大きな張力を抑えることができるので、トレッド部2の変形、ひいては、各周方向溝3、4の変形が抑制されるので、ウェットグリップ性能及び転がり抵抗性能が高められる。本実施形態では、第1ベルトプライ21Aの外端e1、及び、第2ベルトプライ21Bの外端e2が、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25よりもタイヤ軸方向の外側に位置している。
【0036】
また、例えば、ジョイントレスバンドプライ20Aのタイヤ半径方向の外側に隣接する第3ベルトプライ21Cは、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25よりもタイヤ軸方向の外側に外端e3を有している。このような第3ベルトプライ21Cは、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25に作用する大きな張力を抑えることができる。
【0037】
本実施形態のトレッド部2では、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25からタイヤ軸方向の外側へ延び、かつ、第2ベルトプライ21Bと第3ベルトプライ21Cとの間に挟まれる補強ゴム22が設けられている。このような補強ゴム22は、第2ベルトプライ21Bと第3ベルトプライ21Cとの間の距離を維持して、ジョイントレスバンドプライ20Aに作用する張力を低減するのに役立つ。補強ゴム22のタイヤ軸方向の外端22eは、第2ベルトプライ21Bの外端e2とタイヤ軸方向で同じ位置に配されている。補強ゴム22は、周知の構造で形成されている。
【0038】
図5は、他の実施形態のトレッド部2のタイヤ子午線断面図である。本実施形態の構成と同じ構成には同じ符号が付されて、その説明が省略される場合がある。
図5に示されるように、この実施形態のバンド層20は、第1トレッド端T1に隣接し、かつ、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスエッジバンドプライ20Bをさらに含んで形成されている。
【0039】
ジョイントレスエッジバンドプライ20Bは、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25に跨るように配されている。換言すると、ジョイントレスエッジバンドプライ20Bのタイヤ軸方向の内端26iは、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25よりもタイヤ軸方向の内側に位置する。また、ジョイントレスエッジバンドプライ20Bのタイヤ軸方向の外端26eは、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25よりもタイヤ軸方向の外側に位置している。このようなジョイントレスエッジバンドプライ20Bは、ジョイントレスバンドプライ20Aの外端25の大きな移動を抑制して、転がり抵抗性能を高めるとともに、耐偏摩耗性能を向上する。
【0040】
ジョイントレスエッジバンドプライ20Bの内端26iは、例えば、ショルダー周方向溝3の外端3eよりもタイヤ軸方向の外側に位置している。これにより、ショルダー周方向溝3の溝底3sを起点とするクラックなどの損傷を抑制することができる。
【0041】
ジョイントレスエッジバンドプライ20Bは、第4ベルトプライ21Dのタイヤ軸方向の外端e4からタイヤ軸方向の外側へ延びるとともに、第3ベルトプライ21Cの外端e3よりもタイヤ軸方向の内側で終端している。ジョイントレスエッジバンドプライ20Bの外端26eと第3ベルトプライ21Cの外端e3との間のタイヤ軸方向の離隔距離Leは、離隔距離Lsの15%以上が望ましく、20%以上がさらに望ましく、35%以下が望ましく、30%以下がさらに望ましい。
【0042】
以上、本発明の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【0043】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0044】
[本発明1]
タイヤであって、
第1トレッド端を有するトレッド部を備えており、
前記トレッド部には、前記第1トレッド端に隣接するショルダー周方向溝と、前記ショルダー周方向溝とタイヤ赤道との間に配されたクラウン周方向溝とが設けられており、
前記ショルダー周方向溝及び前記クラウン周方向溝は、それぞれ、一対の溝壁を含み、
前記タイヤが、正規リムに正規内圧でリム組され、かつ、正規荷重を負荷してキャンバー角0°で平面に接地させた正規荷重負荷状態において、前記ショルダー周方向溝の前記一対の溝壁は、互いに接触することがなく、かつ、前記クラウン周方向溝の前記一対の溝壁の少なくとも一部は、互いに接触し、
前記クラウン周方向溝は、トレッド接地面よりもタイヤ半径方向内側に拡幅部を有し、
前記拡幅部の溝幅は、前記クラウン周方向溝の前記トレッド接地面の溝幅よりも大きく、
前記トレッド部の内部には、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスバンドプライからなるバンド層が設けられており、
前記ジョイントレスバンドプライは、タイヤ赤道を覆うように配されており、
前記ジョイントレスバンドプライの前記第1トレッド端側のタイヤ軸方向の外端は、前記ショルダー周方向溝のタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の外側に位置する、タイヤ。
[本発明2]
前記クラウン周方向溝の前記トレッド接地面の溝幅は、前記ショルダー周方向溝の溝幅の0.01~0.2倍である、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明3]
前記クラウン周方向溝の横断面の溝面積は、前記ショルダー周方向溝の横断面の溝面積の0.1~0.5倍である、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明4]
前記トレッド接地面から前記拡幅部までのタイヤ半径方向の長さは、前記クラウン周方向溝の溝深さの0.4~0.7倍である、本発明1又は2に記載のタイヤ。
[本発明5]
前記ショルダー周方向溝の前記外端と前記ジョイントレスバンドプライの前記外端との間のタイヤ軸方向の離隔距離は、前記ショルダー周方向溝の前記外端と前記第1トレッド端との間のタイヤ軸方向の離隔距離の10%~50%である、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明6]
前記トレッド部の内部には、ベルトコードがタイヤ周方向に対して10~50度の角度で配列された少なくとも3枚のベルトプライからなるベルト層が設けられており、
前記少なくとも3枚のベルトプライのうちの少なくとも1枚は、前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ半径方向の内側に位置する、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明7]
前記ジョイントレスバンドプライのタイヤ半径方向の内側に位置する前記ベルトプライは、前記ジョイントレスバンドプライの前記外端よりもタイヤ軸方向の外側に外端を有する、本発明6に記載のタイヤ。
[本発明8]
前記バンド層は、前記第1トレッド端に隣接し、かつ、バンドコードがタイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたジョイントレスエッジバンドプライを含み、
前記ジョイントレスエッジバンドプライは、前記ジョイントレスバンドプライの前記外端に跨っている、本発明1に記載のタイヤ。
[本発明9]
前記ジョイントレスエッジバンドプライのタイヤ軸方向の内端は、前記ショルダー周方向溝の前記外端よりもタイヤ軸方向の外側に位置している、本発明8に記載のタイヤ。
[本発明10]
前記タイヤは、偏平率が70%以下の重荷重用タイヤである、本発明1に記載のタイヤ。
【符号の説明】
【0045】
1 タイヤ
2 トレッド部
2s トレッド接地面
3 ショルダー周方向溝
3e ショルダー周方向溝の外端
4 クラウン周方向溝
6 溝壁
7 溝壁
10 拡幅部
20A ジョイントレスバンドプライ
25 ジョイントレスバンドプライの外端
T1 第1トレッド端
W1 溝幅
W2 溝幅