(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180560
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/50 20160101AFI20231214BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20231214BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20231214BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20231214BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60W20/50
B60K6/48 ZHV
B60W10/08 900
B60L3/00 J
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093954
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊永 淳
(72)【発明者】
【氏名】大井 将平
【テーマコード(参考)】
3D202
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA08
3D202BB00
3D202BB16
3D202CC89
3D202DD00
3D202DD01
5H125AA01
5H125AC08
5H125BA00
5H125BB00
5H125CA02
5H125CA08
5H125CD05
5H125EE16
5H125EE52
5H125EE53
(57)【要約】
【課題】モータレス走行時におけるユーザの不安を緩和することができるハイブリッド車両の制御装置を提供すること。
【解決手段】ハイブリッド車両の制御装置は、制御部を備え、制御部が、ハイブリッド車両の走行中に、PCUの冷却系異常を検出した場合、ハイブリッド車両の車速とPCUの温度とに基づいて目標減速度を設定し、ハイブリッド車両が所定の車速となるまで、弱め界磁制御によって、ハイブリッド車両の減速度を目標減速度に制御し、ハイブリッド車両が所定の車速になった場合、モータレス走行に移行させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を備え、
前記制御部は、
ハイブリッド車両の走行中に、PCUの冷却系異常を検出した場合、前記ハイブリッド車両の車速と前記PCUの温度とに基づいて目標減速度を設定し、
前記ハイブリッド車両が所定の車速となるまで、弱め界磁制御によって、前記ハイブリッド車両の減速度を前記目標減速度に制御し、
前記ハイブリッド車両が所定の車速になった場合、モータレス走行に移行させる、
ハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、PCU(Power Control Unit)を冷却する冷却装置に異常が生じた場合に、車速Vが車速制限Vlim以下となるように、モータを駆動制御(弱め界磁制御)する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば一つのモータを備えるハイブリッド車両(1モータHEV)では、走行中にPCUの冷却系異常が発生した場合、PCUをシャットダウンさせ、エンジンの駆動力のみで走行するモータレス走行(MLD)を行い、退避走行させることが考えられる(例えば特開2008-239079号公報等)。
【0005】
しかしながら、高車速走行時はモータの逆起電流が大きいため、モータレス走行ができず、高車速走行中に冷却系異常が発生した場合、モータレス走行できる車速まで急減速させることになり、ユーザ(乗員)に不安を与えるおそれがある。
【0006】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、モータレス走行時におけるユーザの不安を緩和することができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るハイブリッド車両の制御装置は、制御部を備え、前記制御部が、ハイブリッド車両の走行中に、PCUの冷却系異常を検出した場合、前記ハイブリッド車両の車速と前記PCUの温度とに基づいて目標減速度を設定し、前記ハイブリッド車両が所定の車速となるまで、弱め界磁制御によって、前記ハイブリッド車両の減速度を前記目標減速度に制御し、前記ハイブリッド車両が所定の車速になった場合、モータレス走行に移行させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、モータレス走行時におけるユーザの不安を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置の概略的な構成を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置において、モータ、インバータおよび温度センサ等の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、従来のハイブリッド車両の制御装置による制御の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置による制御の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置について、
図1を参照しながら説明する。本実施形態を実現するためのハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)1は、一つのモータを備える1モータHEVであり、同図に示すように、制御部10と、モータ20と、PCU30と、バッテリ40と、を少なくとも備えている。なお、同図は、ハイブリッド車両1の実際の構成要素のうち、本実施形態の説明に必要な構成のみを図示しており、その他の構成要素は図示を省略している。また、ハイブリッド車両1は、手動運転車両であってもよく、あるいは自動運転車両であってもよい。
【0012】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とした電子制御装置(Electronic Control Unit:ECU)である。この制御部10は、各種プログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等を制御することにより、所定の目的に合致した機能を実現する。
【0013】
モータ20は、ハイブリッド車両1の駆動源である。PCU30は、モータ20を駆動させるためのインバータや、電圧制御を行う昇圧コンバータ等を備えている。バッテリ40は、モータ20を駆動させるための電力を蓄電するためのものである。
【0014】
PCU30のインバータ31は、
図2に示すように、モータ20と電気的に接続されており、当該モータ20を制御する。このインバータ31は、複数のIPM(Intelligent Power Module)311と、各IPM311の温度を検出するための温度センサ312と、を備えている。
【0015】
ここで、従来のハイブリッド車両の制御装置では、走行中にPCUの冷却系異常が発生した場合、例えば
図3に示すように、PCUをシャットダウンさせ、エンジンの駆動力のみで走行するモータレス走行(MLD)を行い、退避走行させる。しかしながら、高車速走行時はモータの逆起電流が大きいため、モータレス走行ができず、高車速走行中に冷却系異常が発生した場合、モータレス走行できる車速まで急減速させることになり、ユーザ(乗員)に不安を与えるおそれがある。
【0016】
そこで、実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置では、高車速走行中にPCU30の冷却系異常が発生した場合、例えば
図4に示すように、インバータ31のIPM311の温度を見ながら、PCU30をシャットダウンさせずに、弱め界磁制御を行う。これにより、モータレス走行ができる車速までハイブリッド車両1を緩減速させ、ユーザの不安を緩和する。
【0017】
制御部10は、具体的には以下のような制御を行う。まず、制御部10は、ハイブリッド車両1の走行中に、PCU30の冷却系異常を検出した場合、当該ハイブリッド車両1の車速とPCU30の温度とに基づいて、目標減速度を設定する。続いて、制御部10は、ハイブリッド車両1が所定の車速となるまで、弱め界磁制御によって、ハイブリッド車両1の減速度を目標減速度に制御する。そして、制御部10は、ハイブリッド車両1が所定の車速になった場合、モータレス走行に移行させる。
【0018】
制御部10は、上記の弱め界磁制御において、「減速時間ΔT」を下記式(1)により算出し、「許容温度上昇dθ/dt」を下記式(2)により算出し、「弱め界磁電流i」を下記式(3)により算出する。
【0019】
【0020】
なお、上記式(1)~(3)において、tは時間、Vは車速、VmaxはMLD可能最大車速、θはPCU素子(IPM311)の温度、θmaxはPCU素子(IPM311)の最大温度、iは電流、sは損失係数、Gは減速度、である。また、
図4において、V0は冷却系異常発生前の車速、θ0は冷却系異常発生前のPCU素子(IPM311)の温度、i0は冷却系異常発生前の電流、である。
【0021】
以上説明した実施形態に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、高車速走行中にPCU30の冷却系異常が発生した場合、PCU30をシャットダウンさせずに、弱め界磁制御を行う。これにより、モータレス走行ができる車速までハイブリッド車両1を緩減速させることができるため、モータレス走行時におけるユーザの不安を緩和することができる。
【0022】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 ハイブリッド車両
10 制御部
20 モータ
30 PCU
31 インバータ
311 IPM
312 温度センサ
40 バッテリ