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  • 特開-水位計測構造及び水位計測器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180563
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】水位計測構造及び水位計測器具
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20231214BHJP
   E03F 3/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E03F7/00
E03F3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093958
(22)【出願日】2022-06-09
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和03年08月17日から08月20日に「下水道展’21大阪」Beyond-みらいを変える!みらいが変わる!-にて展示
(71)【出願人】
【識別番号】592185666
【氏名又は名称】管清工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091410
【弁理士】
【氏名又は名称】澁谷 啓朗
(72)【発明者】
【氏名】猪俣 晶子
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063BA02
2D063BA14
2D063BA37
2D063EA03
(57)【要約】
【課題】下水管等への設置が簡単で安価であり、しかも下水等の水位を常に正確に反映できる水位計測器具を提供する。
【解決手段】水位計測器具9を透明で柔軟なチューブをT字状に形成することにより構成する。T字状のチューブは、透明で柔軟なチューブ本体17と、このチューブ本体17の長さ方向中央に接続されてチューブ本体17と垂直に延びる透明で柔軟な取水用チューブ19と、を備えている。取水用チューブ19には、水位計測構造11を構成したときに下水管1の内面と接触する側の長さ方向中央に取水開口31を開けておき、取水用チューブ19の先端側をパテで閉塞する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水管内を流れる水の水位を計測するための水位計測構造であって、
前記流水管の内周面に周方向に沿って取り付けられた、両上端が開口している透明又は半透明のU字状又はC字状のチューブ本体と、
前記チューブ本体の下端部から前記流水管の内面の底部に沿って前記流水管の長さ方向下流側に延びる、先端側が閉塞されている取水用チューブと、を備え、
前記取水用チューブは、内部が前記チューブ本体の内部と連通していて、流水管内の水を内部に取り入れる取水開口を有し、
前記取水開口から前記取水用チューブを通り前記チューブ本体内に入り込んでいる前記流水管内の水には、幅方向両側で着色材が浮かべられている、ことを特徴とする水位計測構造。
【請求項2】
前記取水開口は、前記取水用チューブの長さ方向中央又はほぼ中央に形成されている、ことを特徴とする請求項1記載の水位計測構造。
【請求項3】
前記流水管は上下方向に傾斜していて、前記取水用チューブは前記流水管の下降方向を向くように延びている、ことを特徴とする請求項1又は2記載の水位計測構造。
【請求項4】
流水管内を流れる水の水位を計測するための水位計測器具であって、
前記流水管の内周面に周方向に沿って取り付けることができるように形成された透明又は半透明の両端開口のチューブ本体と、
前記チューブ本体の長さ方向中央にこのチューブ本体と垂直に延びるように設けられた、先端側が閉塞されている取水用チューブと、を備え、
前記取水用チューブは、前記チューブ本体を前記流水管の内周面に取り付けると、前記流水管の内面の底部に沿って前記流水管の長さ方向下流側に延びるように設けられていて、
前記取水用チューブは、内部が前記チューブ本体の内部と連通し、前記流水管内の水を内部に取り入れる取水開口が形成されている、ことを特徴とする水位計測器具。
【請求項5】
前記チューブ本体の両側に着色材を注入できるように構成されている、ことを特徴とする請求項4記載の水位計測器具。
【請求項6】
前記チューブ本体は、前記取水用チューブを接続するための三方継手を備え、前記三方継手の一対の接続口に接続された一対の本体用チューブを有していて、
前記取水用チューブは前記三方継手の別の接続口に接続されている、ことを特徴とする請求項4又は5記載の水位計測器具。
【請求項7】
前記チューブ本体には前記流水管の内周面にこのチューブ本体を押し付けて固定設置するための線状のバネ材が挿入されている、ことを特徴とする請求項4記載の水位計測器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水管等の流水管の内部を流れる水の水位を計測する水位計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
各家庭などからの汚水は下水管(汚水管)に流し、雨水は雨水管に集める分流式下水道システムでは、下水管から送られてくる汚水のみを下水処理場で処理し、雨水管からの雨水は川や海に流すことができるので、下水処理場の処理容量を小さく設定できる。しかしながら、下水管に大きな亀裂などが生じていて降雨時に大量の雨水が下水管内に浸入すると、下水処理場に送られる水量が増大し、下水処理場の処理容量を超えてしまうおそれがある。また、このような大量の雨水の下水管内への浸入は下水管からの溢水を引き起こすおそれもある。さらに、下水管の亀裂などから地下水が下水管内に常時浸入している場合には、下水処理場の汚水処理能力を低下させるし、地下水とともに土砂などが下水管内に引き込まれれば、道路の陥没が発生したり、下水管内に堆積した土砂などにより下水管の流下機能が阻害されたりする。
【0003】
そこで、下水管に水位計又は流量計を取り付けて下水管内の水量を監視し、降雨時に水量が大幅に増大するか否かや、深夜にもかかわらずある程度の流量の水が流れているか否かなどを見極めて雨水の浸入発生エリア及び常時浸入水発生エリアを絞り込み、絞り込んだエリアに適切な浸入水対策を施していくといったことが行われている。
【0004】
このような下水管内の水量の監視に用いられる水位計測器具としては、例えば特許文献1に記載されたような計測チューブが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-90375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の水位計測チューブは安価であり、下水管への設置が簡単であるといった特徴を有するが、下水管内の下水の流速が大きい場合、あるいは下水管の勾配が急である場合には、水の出入口が形成されている計測チューブの下端部に流速の大きい下水が衝突することにより水の出入り口に下水の圧力エネルギーが正確に伝わらず、計測チューブ内の下水が下水管内の下水の水位まで上昇しなかったり、下水管内の下水の水位を超えて上昇してしまったりすることが考えられる。
【0007】
そこで本発明は、下水管等への設置が簡単で安価であり、しかも下水等の水位を常に正確に反映できる水位計測構造及びこの水位計測構造に用いる水位計測器具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するための本発明の水位計測構造は、流水管内を流れる水の水位を計測するための水位計測構造であって、前記流水管の内周面に周方向に沿って取り付けられた、両上端が開口している透明又は半透明のU字状又はC字状のチューブ本体と、前記チューブ本体の下端部から前記流水管の内面の底部に沿って前記流水管の長さ方向下流側に延びる、先端側が閉塞されている取水用チューブと、を備え、前記取水用チューブは、内部が前記チューブ本体の内部と連通していて、流水管内の水を内部に取り入れる取水開口を有し、前記取水開口から前記取水用チューブを通り前記チューブ本体内に入り込んでいる前記流水管内の水には、幅方向両側で着色材が浮かべられているものである。取水開口は例えば、取水用チューブの下側又は流水管内面底部と向き合う側に形成される。チューブ本体は必ずしも全体が透明又は半透明である必要はない。また、チューブ本体は上端開口が流水管内の水の中に沈まないように形成される。着色材は着色液とすることができ、水と混ざり合わないことが必要であり、例えば油性の液体染料とすることができる。着色材又は着色液と接触したチューブ本体の内面は着色される。チューブ本体は透明性又は半透明性を有するので着色材又は着色液による着色が外側から視認できる。着色材又は着色液はチューブ本体の内面の着色個所が水の中に入っても流れ落ちないものを使用する。
【0009】
流水管内の水をチューブ本体内に取り入れる取水開口はチューブ本体には形成されず、チューブ本体の下端部から流水管又は流水路方向下流側に延びる取水用チューブに形成されている。したがって、取水開口はチューブ本体から下流側に離れて位置しているので、チューブ本体の下端部への流水の衝突が取水開口からのチューブ本体内への水の取り入れに影響するおそれは無いか少ない。
【0010】
取水開口からのチューブ本体内への水の取り入れに支障がないようにするには、取水開口をチューブ本体から十分な間隔をあけて設けるのが好ましいが、チューブ本体内の水の上端は取水開口位置の流水の水位又は水面と等しくなるので、間隔を開けすぎると、チューブ本体内の水の高さ、すなわち着色領域から流水の水位を簡単に判定することが難しくなってしまう。また、取水開口を取水用チューブの先端部に形成すると、取水用チューブの先端部が流水管の底部に強く押し付けられるような状態が生じると、取水開口が塞がってしまい、流水管内の流水の水位に応じたチューブ本体内への水の取り入れができない可能性もある。そこで、取水用チューブを長く又は比較的長く形成しておき、取水開口を取水用チューブの長さ方向中央又はほぼ中央に形成するのが得策である。ここで「ほぼ中央」とは、取水用チューブの基端又は後端から取水用チューブの長さの40%の位置と取水用チューブの長さの60%の位置との間を意味し、取水開口を「ほぼ中央」に形成するとは、取水開口の中心が「ほぼ中央」に位置することを意味する。
【0011】
流水管が上下方向に傾斜している場合には、取水用チューブが流水管の下降方向を向いて延びるように水位計測構造を構成することとなる。
【0012】
また、この目的を達成するための本発明の水位計測器具は、流水管内を流れる水の水位を計測するための水位計測器具であって、前記流水管の内周面に周方向に沿って取り付けることができるように形成された透明又は半透明の両端開口のチューブ本体と、前記チューブ本体の長さ方向中央にこのチューブ本体と垂直に延びるように設けられた、先端側が閉塞されている取水用チューブと、を備え、前記取水用チューブは、前記チューブ本体を前記流水管の内周面に取り付けると、前記流水管の内面の底部に沿って前記流水管の長さ方向下流側に延びるように設けられていて、前記取水用チューブは、内部が前記チューブ本体の内部と連通し、前記流水管内の水を内部に取り入れる取水開口が形成されているものである。取水開口は例えば、水位計測器具を流水管内に取り付けたときに、取水用チューブの下側又は流水管内面底部と向き合う側に位置することとなるように形成される。
【0013】
本発明の水位計測器具ではチューブ本体の両側に着色材又は着色液を注入できるように構成される。
【0014】
チューブ本体は、取水用チューブを接続するための三方継手を備え、三方継手(T形カップリング)の一対の接続口に接続された一対の本体用チューブを有していて、取水用チューブは三方継手の別の接続口に接続されている、ものとして構成できる。
【0015】
チューブ本体には線状のバネ材を挿入しておくことができる。バネ材は流水管の内周面にチューブ本体を押し付けて固定設置する機能を有する。バネ材を用いない場合にはチューブ本体を下水管等の流水管の内周面に取り付けるための例えばステープルを用いることができる。バネ材を用いる場合でもバネ材とともにチューブ本体を下水管等の流水管の内周面に取り付けるための例えばステープルを用いることは可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば流水管内の流水の水位を簡易かつ正確に計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る水位計測構造が設けられた下水管の全体的な構成を示す図である。
図2】本発明に係る水位計測器具の全体的な構造を示す図である。
図3】水位計測器具のチューブ本体を湾曲させた場合の斜視図である。
図4】水位計測構造の構成方法を説明する図である。
図5】水位計測構造を構成した直後の状態を示す図である。
図6】下水管内の水の水位が下がった場合を示す図である。
図7】下水管内の水の水位が上がった場合を示す図である。
図8】チューブ本体内の下水の残存量が少ない場合の着色領域の下端の状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
まず、図1を参照して本発明に係る水位計測構造が設けられた下水管の全体的な構造を説明し、図2を参照して本発明に係る水位計測器具の全体的な構成を説明する。
【0020】
下水管(汚水管)1は各家庭などからの排水を下水処理施設(図示せず)まで流すために地中に埋設されているが、この下水管1内を流れる下水3の水位を計測し、雨水や地下水が下水管1内にどの程度浸入しているかを判定するために、下水管1のマンホール5への開口部分7に水位計測器具9を有する水位計測構造11が構成されている。下水管1及びインバート13の溝15は傾斜していて下水3は傾斜に沿って下水管1及びインバート13の溝15内を流れる(矢印参照)。
【0021】
水位計測器具9は透明で柔軟なチューブをT字状に形成することにより構成されている。T字状のチューブは、透明で柔軟なチューブ本体17と、このチューブ本体17の長さ方向中央に接続されてチューブ本体17と垂直に延びる透明で柔軟な取水用チューブ19と、を備え、チューブ本体17は、一対の透明で柔軟な本体用チューブ21、21をそれぞれ、半透明のT字形の三方継手(T形カップリング)23の一対の口部25、25に接続することにより形成され、取水用チューブ19は三方継手23の残りの口部27に接続されていて、チューブ本体17内には、一方の本体用チューブ21から他方の本体用チューブ21に至るまで針金又は金属製バネ材29が挿入されている(図2aは針金29をチューブ本体17に挿入する前の状態を示し、図2bは針金29をチューブ本体17に挿入した状態を示す)。チューブ本体17は全体的には透明で柔軟であるが、三方継手は半透明で硬質プラスチック製である。
【0022】
取水用チューブ19及び本体用チューブ21、21には塩化ビニール製のものを用いることができるが、下水3に長期間浸けておいても変色しないタイナノチューブを用いるのが好ましい。あるいは取水用チューブ19には塩化ビニール製のものを用い、本体用チューブ21、21にはタイナノチューブを用いることもできる。
【0023】
取水用チューブ19には、水位計測構造11を構成したときに下水管1の内面と接触する側の長さ方向中央又はほぼ中央に、すなわち取水用チューブ19の基端から40mmの位置に取水開口31が開けられ、先端開口に栓材料(パテ)33が取り付けられていて、取水用チューブ19の先端側は閉塞されている。
【0024】
本体用チューブ21、21はそれぞれ、外径がほぼ8mm、内径がほぼ6mm、長さがほぼ250mmであり、取水用チューブ19は、外径がほぼ8mm、内径がほぼ6mm、長さがほぼ90mmであって、取水開口31は直径がほぼ3mm又はほぼ4mmである。ただし、本体用チューブ21や取水用チューブ19の寸法は、対象の下水管1の大きさに応じて設定される。
【0025】
このような水位計測器具9は、下水管1の内面に取り付ける前に、本体用チューブ21、21を針金29とともに円弧状又はC字状に湾曲させ、針金29を取り付け対象の下水管1の内面よりも曲率半径が大きい状態に塑性変形させておく(図3参照)。
【0026】
次に、図1及び図4を参照して水位計測器具9を下水管1の開口部分7の内周面35に取り付けて水位計測構造11を構成する場合を説明する。なお、図4では針金29の図示は省略している。
【0027】
図3に示すようにチューブ本体17又は本体用チューブ21、21を円弧状又はC字状に湾曲させた水位計測器具9を、チューブ本体17又は本体用チューブ21、21が下水管1の管路方向(図1の矢印参照)と直角となり、取水用チューブ19が下水管1の内周面35の底部37に沿って下流側に延びるようにして、下水管1の開口部分7の内周面35に取り付ける(図1の部分拡大図参照)。水位計測器具9を取り付けるには、チューブ本体17を図3に示す状態よりも小径に弾性変形させて水位計測器具9を下水管1の開口部分7内に配置し、チューブ本体17への縮径力を解除する。そうすると、チューブ本体17が針金29の弾性復帰力によって拡径し、下水管1の内周面35に押し付けられる(図4a)。それから、チューブ本体17の直角度合や取水用チューブ19の真直度合を微調整して水位計測器具9を下水管1内に設置する。なお、針金29を用いない場合には、例えばステープルAを用いて図4に示す状態にチューブ本体17を下水管1に取り付けることとなる。
【0028】
チューブ本体17は下水管1の内周の8割程度の長さに形成される。ここでは下水管1の内径は200mmなので、チューブ本体17の長さ又は本体用チューブ21、21の長さは約500mmである。
【0029】
チューブ本体17は幅方向両側の上端が開口し、取水用チューブ19に形成された取水開口31は下水管1の内周面35の底部37に接近し、一部接触し又は接触状態となっていて、チューブ本体17又は本体用チューブ21、21の内部は三方継手23を介して取水用チューブ19の内部と連通し、取水用チューブ19の内部、したがってチューブ本体17又は本体用チューブ21、21の内部はこの取水開口31を介して下水管1の底部37個所と連通している。したがって、チューブ本体17内には下水管1内の下水3の水位とほぼ一致する水位となるように下水3が入り込む。チューブ本体17内にはまた、幅方向両側で下水3に浮くように比重の小さな着色液39を注入する。着色液39の注入量は、着色液39が下水管1の高さ方向中央部に位置しているときに(例えば図4b)10mm程度の高さとなる量である。着色液39としては油性の染色液を用いることができ、具体的には赤色の潤滑油用液体染料である株式会社シラド化学の「Liquid neutral Red SST-D」が用いられている。「Liquid neutral Red SST-D」は密度0.91であるが、フルード(希釈液)で4倍に希釈して用いられているので低比重である。
【0030】
チューブ本体17に着色液39が入ったシリンジ40の針を刺し、取水開口31からチューブ本体17内に入り込んだ下水3の上側にそれぞれ、着色液39を注入又は供給する(図4b)。ここでは、水位計測器具9の下水管1への取り付け及び着色液39の注入は下水3の水位が比較的低い時間帯(深夜を除く)に行うこととなる。
【0031】
次に、図5乃至図7を参照して水位計測構造11の計測原理を説明する。
【0032】
図5は水位計測構造11を構成した直後の状態を示している。チューブ本体17内の下水3の水位又は高さは下水管1内の下水3の水位とほぼ一致している。より詳細には、着色液39の上面が下水管1内の下水3の水位よりも若干高く位置している。ここで下水管1内の下水3の水位が低下すると、図6に示すように、チューブ本体17内の下水3の水位又は高さも下水管1内の下水3の水位とほぼ一致するように低下し、着色液39は下側に移動するが、移動過程でチューブ本体17又は本体用チューブ21、21の内面を赤色に着色して着色領域41を構成する。次に下水管1内の下水3の水位が上昇すると、図7に示すように、チューブ本体17内の下水3の水位又は高さも下水管1内の下水3の水位とほぼ一致するように上昇し、着色液39は上側に移動するが、移動過程でチューブ本体17又は本体用チューブ21、21の内面を赤色に着色して新たな着色領域41を構成する。着色液39は水と混合しないので、チューブ本体17又は本体用チューブ21、21に付着した着色液39は水に触れても流れ落ちない。
【0033】
このようにチューブ本体17内の着色液39は、下水管1内の下水3の水位の変動に応じて下水管1内の下水3の水位とほぼ一致するように上下動し、接触したチューブ本体17又は本体用チューブ21、21の内面を赤色に着色する。したがって、チューブ本体17又は本体用チューブ21、21の赤色の着色領域41の下端Lの高さが、計測期間中の下水管1内の下水3の最低水位を表し、チューブ本体17又は本体用チューブ21、21の赤色の着色領域41の上端Hの高さが、計測期間中の下水管1内の下水3の最高水位を表していると考えることができる。
【0034】
下水管1内の下水3の水位から流量を求める場合には、流量は、流れの断面積A×流速Vで求まるが、下水3の水位が判明すれば流れの断面積Aは算出でき、また流速Vもマニングの公式を用いてV=1/n×R2/3×i1/2で算出できる(ここで、nは粗度係数、Rは径深でありR=流れの断面積A/潤辺Sで求まり、潤辺Sも下水3の水位から算出できる、iは水面勾配)。したがって、下水管1内の下水3の最低水位を用いて下水の最低流量を算出でき、下水管1内の下水3の最高水位を用いて下水3の最高流量を算出できる。そして、算出した最低流量を地下水の常時浸入水量と把握し、あるいは算出した最低流量から地下水の常時浸入水量を把握し、最高流量から雨天時のおおよその雨水浸入水量を把握するようにしてもよい。
【0035】
ところで、下水管1内の下水3の水位が下がり、チューブ本体17内の下水3の残存量が少なくなると、図8に示すように、両側に位置する下水3と着色液39との境界がハの字を形成するように変位するので、下水管1内の下水3の水位がチューブ本体17や取水用チューブ19の外径に近づいたり、チューブ本体17や取水用チューブ19の外径以下となる場合には、下水管1内の下水3の水位と着色領域41の下端Lとの関係が複雑となる。そこで、着色領域41の下端Lがハの字を形成している場合には、一律に所定の最低水位を認定したり、両側の着色領域41の間隔又は離れ度合いにより下水管1内の下水3の水位を判断したりすることが可能である。したがって、着色領域41の下端Lがハの字を形成している場合には最低流量を直接認定することが好ましい。ここでは、一律に所定の最低流量を認定するという対処も可能ではあるが、両側の着色領域41の間隔により最低流量を導き出すのが効果的である。両側の着色領域41の間隔により最低流量を導き出すには、両側の着色領域23の間隔と流量との関係を実験により求めておき、最低流量の回帰直線又は回帰曲線を回帰分析することが考えられる。なお、下水管1内の下水3の水位がチューブ本体17の外径に近づいたり、チューブ本体17の外径以下となる場合には、チューブ本体17付近での下水3の水位が下水3の他の個所での水位よりも実質的に上昇しているが、取水開口31がチューブ本体17から下流側に離れて位置しているので、この水位の上昇が着色領域41に影響する可能性は少ない。
【0036】
この水位計測器具9又は水位計測構造11は例えば下水管(流水管)1の勾配が20パーミル(‰)乃至40パーミル(‰)の場合に好適に用いることができる。
【0037】
なお、着色領域41が三方継手23内や取水用チューブ19内に及んでいる場合には、着色領域41が及んでいる範囲に基づき最低水位又は最低流量を把握することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 下水管
3 下水
9 水位計測器具
11 水位計測構造
17 チューブ本体
19 取水用チューブ
31 取水開口
39 着色液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8