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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180566
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】エルゴチオネイン誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 233/84 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
C07D233/84 CSP
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093964
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000214272
【氏名又は名称】長瀬産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】小坂 邦男
(72)【発明者】
【氏名】松山 恵介
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エルゴチオネイン誘導体を製造するための効率的な方法の提供。
【解決手段】式(II)で示される化合物またはその塩から出発し、式(I)で示される化合物またはその塩を製造する方法である。


【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I):
【化1】
[式中、
はC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基;またはC-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン-C-Cアルキレン基を示し;
は水素原子、またはカルボキシ基もしくはその誘導体を示す]
で示される化合物またはその塩を製造する方法であって、
(工程1)下記式(II):
【化2】
で示される化合物またはその塩を下記一般式(III):
【化3】
[式中、Xはハロゲン原子を示す]
で示される化合物と反応させて下記式(IV):
【化4】
で示される化合物またはその塩を製造する工程;
(工程2)式(IV)で示される化合物またはその塩を下記一般式(V):
【化5】
[式中、Xはハロゲン原子を示し;その他の記号は前記と同じ意味を示す]
で示される化合物またはその塩と反応させて下記一般式(VI):
【化6】
[式中、記号は前記と同じ意味を示す]
で示される化合物またはその塩を製造する工程;および
(工程3)式(VI)で示される化合物またはその塩のフェナシル基を脱保護反応に付し、式(I)で示される化合物またはその塩を製造する工程
を含む、製造方法。
【請求項2】
がカルボキシ基の誘導体である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
カルボキシ基の誘導体をカルボキシ基に変換する工程をさらに含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
工程1が水を含む溶媒中で実施される、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
工程2が溶媒中、塩基の存在下で実施される、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
塩基が炭酸水素ナトリウムである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;またはC-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-フェニレン基;またはC-Cアルキレン-フェニレン-C-Cアルキレン基である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
およびXがそれぞれ臭素原子である、請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
下記一般式(I):
【化7】
[式中、
はC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基;またはC-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン-C-Cアルキレン基を示し;
は水素原子、またはカルボキシ基もしくはその誘導体を示す]
で示される化合物またはその塩。
【請求項11】
がカルボキシ基である、請求項10に記載の化合物またはその塩。
【請求項12】
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;またはC-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基である、請求項10または11に記載の化合物またはその塩。
【請求項13】
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-フェニレン基;またはC-Cアルキレン-フェニレン-C-Cアルキレン基である、請求項10または11に記載の化合物またはその塩。
【請求項14】
【化8】
【化9】
および
【化10】
からなる群から選択される、請求項10に記載の化合物またはその塩。
【請求項15】
請求項11または14に記載の化合物またはその塩とタンパク質が結合したコンジュゲート。
【請求項16】
請求項11または14に記載の化合物またはその塩と結合したビーズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エルゴチオネイン誘導体の製造方法、新規エルゴチオネイン誘導体、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
エルゴチオネイン(以下、EGTとも称する)は以下の構造で示される天然アミノ酸の一種であり、一部の微生物のみが生産することができることが知られている。EGTは強力な抗酸化作用を有することから、食品、化粧品、および医薬品などの幅広い分野での利用が期待されている(例えば、特許文献1参照)。近年の研究で、ヒトにはEGTを利用するための仕組みが備わっていることが明らかになり、食事から摂取したEGTが脳機能の改善、皮膚、眼、および各種臓器における酸化ストレスから細胞を保護することが示唆されている。
【化1】
【0003】
EGTの高い生理活性を説明できるメカニズムが解明されれば、EGTの効果的な利用が促進されることが期待される。しかしながら、これまでに、そのメカニズムは十分に解明されていない。そのメカニズム解明に強力なツールとなる可能性があるのがEGTの誘導体である。例えば、ビーズに結合したEGT誘導体はEGT結合性物質のプローブとなり、EGTに特異的に結合するタンパク質を検出することができる。また、EGTが誘導体化できれば、EGTをハプテンとした免疫原作成が可能となる。これにより、抗EGT抗体が得られれば、細胞内のどこにEGTが局在しているのかを可視化分析できる可能性がある。
【0004】
しかしながら、(1)EGTは水がないと溶解せず、(2)EGTのカルボキシラート基はベタイン構造のため反応性が乏しく、(3)チオイミダゾールの硫黄原子は反応性(求核性)が高いため、この部分を保護しなければ他の反応ができない等、EGT誘導体化には多くの課題があり、これまでにEGTの誘導体を製造するための効率的な方法は確立されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-126863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、EGTの誘導体を製造するための効率的な方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、EGTの誘導体を製造するための効率的な方法について鋭意研究を重ねた結果、EGTのチオイミダゾールの硫黄原子をフェナシル基で保護することにより、EGTのエステル誘導体を効率よく製造することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、以下を提供する。
[1]
下記一般式(I):
【化2】
[式中、
はC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基;またはC-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン-C-Cアルキレン基を示し;
は水素原子、またはカルボキシ基もしくはその誘導体を示す]
で示される化合物またはその塩を製造する方法であって、
(工程1)下記式(II):
【化3】
で示される化合物またはその塩を下記一般式(III):
【化4】
[式中、Xはハロゲン原子を示す]
で示される化合物と反応させて下記式(IV):
【化5】
で示される化合物またはその塩を製造する工程;
(工程2)式(IV)で示される化合物またはその塩を下記一般式(V):
【化6】
[式中、Xはハロゲン原子を示し;その他の記号は前記と同じ意味を示す]
で示される化合物またはその塩と反応させて下記一般式(VI):
【化7】
[式中、記号は前記と同じ意味を示す]
で示される化合物またはその塩を製造する工程;および
(工程3)式(VI)で示される化合物またはその塩のフェナシル基を脱保護反応に付し、式(I)で示される化合物またはその塩を製造する工程
を含む、製造方法(以下、本発明製造方法とも称する)。
[2]
がカルボキシ基の誘導体である、[1]に記載の製造方法。
[3]
カルボキシ基の誘導体をカルボキシ基に変換する工程をさらに含む、[2]に記載の製造方法。
[4]
工程1が水を含む溶媒中で実施される、[1]~[3]のいずれか1つに記載の製造方法。
[5]
工程2が溶媒中、塩基の存在下で実施される、[1]~[4]のいずれか1つに記載の製造方法。
[6]
塩基が炭酸水素ナトリウムである、[5]に記載の製造方法。
[7]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;またはC-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基である、[1]~[6]のいずれか1つに記載の製造方法。
[8]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-フェニレン基;またはC-Cアルキレン-フェニレン-C-Cアルキレン基である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の製造方法。
[9]
およびXがそれぞれ臭素原子である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の製造方法。
[10]
下記一般式(I):
【化8】
[式中、
はC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基;またはC-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン-C-Cアルキレン基を示し;
は水素原子、またはカルボキシ基もしくはその誘導体を示す]
で示される化合物(以下、本発明化合物とも称する)またはその塩。
[11]
がカルボキシ基である、[10]に記載の化合物またはその塩。
[12]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;またはC-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基である、[10]または[11]に記載の化合物またはその塩。
[13]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-フェニレン基;またはC-Cアルキレン-フェニレン-C-Cアルキレン基である、[10]または[11]に記載の化合物またはその塩。
[14]
【化9】
【化10】
および
【化11】
からなる群から選択される、[10]に記載の化合物またはその塩。
[15]
[11]または[14]に記載の化合物またはその塩とタンパク質が結合したコンジュゲート。
[16]
[11]または[14]に記載の化合物またはその塩と結合したビーズ。
【発明の効果】
【0009】
本発明製造方法により、EGTの誘導体を効率的に製造することができる。また、本発明化合物は、EGTの高い生理活性を説明できるメカニズムの解明に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の態様および実施態様について、以下に説明する。なお、本明細書中、「式(I)で示される化合物」等を便宜上、それぞれ「化合物(I)」等ともいう。以下に定義または例示される各種の置換基は、任意に選択して組み合わせることができる。また、以下に定義される各態様および実施態様を任意に選択して組み合わせた態様および実施態様も本発明に包含される。
【0011】
本明細書において用いる各用語の定義は以下の通りである。
【0012】
本明細書記載の「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子を意味する。
【0013】
置換基が2以上のハロゲン原子または置換基で置換されている場合、それらのハロゲン原子または置換基は、各々同一でも異なっていてもよい。
【0014】
本明細書記載の「C-C」との表記は、炭素原子数がX~Y個であることを意味する。例えば「C-C」との表記は、炭素原子数が1~6個であることを意味する。
【0015】
本明細書記載の「鎖式炭化水素基」とは、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基を表す。
【0016】
本明細書記載の「アルキル基」とは、直鎖状または分岐状の飽和炭化水素基を意味する。アルキル基としては、例えばC-Cアルキル基が挙げられ、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、およびヘキシル基等が挙げられる。
【0017】
本明細書記載の「アルケニル基」とは、前記で定義したアルキル基の鎖中に1個以上の2重結合(-C=C-)を含む直鎖状または分岐状の不飽和炭化水素基を意味する。アルケニル基としては、例えばC-Cアルケニル基が挙げられ、具体的にはビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-メチル-1-プロペニル基、1-メチル-2-プロペニル基、1,2-ジメチル-1-プロペニル基、1-エチル-2-プロペニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基、および5-ヘキセニル基等が挙げられる。
【0018】
本明細書記載の「アルキニル基」とは、前記で定義したアルキル基の鎖中に1個以上の3重結合(-C≡C-)を含む直鎖状または分岐状の不飽和炭化水素基を意味する。アルキニル基としては、例えばC-Cアルキニル基が挙げられ、具体的にはエチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-メチル-2-プロピニル基、1,1-ジメチル-2-プロピニル基、1-エチル-2-プロピニル基、2-ブチニル基、4-ペンチニル基、および5-ヘキシニル基等が挙げられる。
【0019】
本明細書記載の「アルキレン基」とは、上記「アルキル基」の任意の水素原子1個を除去した二価基を意味する。アルキレン基としては、例えばC-Cアルキレン基、C-Cアルキレン基、C-Cアルキレン基、およびC-Cアルキレン基等が挙げられ、具体的にはメチレン基、エチレン基、メチルメチレン基、トリメチレン基、エチルメチレン基、ジメチルメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、およびヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0020】
本明細書記載の「アリール基」とは、単環式または二環式の芳香族炭化水素から1個の水素原子を除去した基である。アリール基としては、例えば6~12員アリール基が挙げられ、具体的にはフェニル基等の単環式アリール基;ならびにナフチル基、テトラヒドロナフチル基、インデニル基、およびインダニル基等の一部飽和されていてもよい二環式アリール基等の6~11員アリール基等が挙げられる。
【0021】
本明細書記載の「アリーレン基」とは、単環式または二環式の芳香族炭化水素から2個の水素原子を除去した基である。アリーレン基としては、例えば6~12員アリーレン基が挙げられ、具体的にはフェニレン基等の単環式アリーレン基;ならびにナフチレン基、テトラヒドロナフチレン基、インデニレン基、およびインダニレン基等の一部飽和されていてもよい二環式アリーレン基等の6~11員アリーレン基等が挙げられる。
【0022】
本明細書記載の「ヘテロアリール基」とは、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を含む単環式または二環式の芳香族複素環から1個の水素原子を除去した基である。ヘテロアリール基としては、例えば5~11員ヘテロアリール基が挙げられ、具体的にはピロリル基、フリル基、チエニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、チアジアゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、およびトリアジニル基等の、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含む5~6員の単環式のヘテロアリール基;ならびにインドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、テトラヒドロインダゾリル基、ベンゾフラニル基、ジヒドロベンゾフラニル基、ジヒドロイソベンゾフラニル基、ベンゾチオフェニル基、ジヒドロベンゾチオフェニル基、ジヒドロイソベンゾチオフェニル基、ベンゾオキサゾリル基、ジヒドロベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ジヒドロベンゾチアゾリル基、キノリル基、テトラヒドロキノリル基、イソキノリル基、テトラヒドロイソキノリル基、ナフチリジニル基、テトラヒドロナフチリジニル基、キノキサリニル基、テトラヒドロキノキサリニル基、およびキナゾリニル基等の、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含む8~11員の二環式のヘテロアリール基等が挙げられる。
【0023】
本明細書記載の「ヘテロアリーレン基」とは、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を含む単環式または二環式の芳香族複素環から2個の水素原子を除去した基である。ヘテロアリーレン基としては、例えば5~11員ヘテロアリーレン基が挙げられ、具体的にはピロリレン基、フリレン基、チエニレン基、ピラゾリレン基、イミダゾリレン基、オキサゾリレン基、イソオキサゾリレン基、チアゾリレン基、イソチアゾリレン基、チアジアゾリレン基、ピリジレン基、ピラジニレン基、ピリミジニレン基、ピリダジニレン基、およびトリアジニレン基等の、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含む5~6員の単環式のヘテロアリーレン基;ならびにインドリレン基、イソインドリレン基、インダゾリレン基、テトラヒドロインダゾリレン基、ベンゾフラニレン基、ジヒドロベンゾフラニレン基、ジヒドロイソベンゾフラニレン基、ベンゾチオフェニレン基、ジヒドロベンゾチオフェニレン基、ジヒドロイソベンゾチオフェニレン基、ベンゾオキサゾリレン基、ジヒドロベンゾオキサゾリレン基、ベンゾチアゾリレン基、ジヒドロベンゾチアゾリレン基、キノリレン基、テトラヒドロキノリレン基、イソキノリレン基、テトラヒドロイソキノリレン基、ナフチリジニレン基、テトラヒドロナフチリジニレン基、キノキサリニレン基、テトラヒドロキノキサリニレン基、およびキナゾリニレン基等の、炭素原子以外に酸素原子、硫黄原子、および窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含む8~11員の二環式のヘテロアリーレン基が挙げられる。
【0024】
本明細書記載の「C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基」とは、上記のC-Cアルキレン基と上記の6~12員アリーレン基が結合した基である。C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基としては、上記のC-Cアルキレン基の定義で例示した基と6~12員アリーレン基の定義で例示した基の任意の組み合わせで作成される基が挙げられ、例えばC-Cアルキレン-フェニレン基等が挙げられる。
【0025】
本明細書記載の「C-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基」とは、上記のC-Cアルキレン-6~12員アリーレン基と上記のC-Cアルキレン基が結合した基である。C-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基としては、上記のC-Cアルキレン基の定義で例示した基と6~12員アリーレン基の定義で例示した基の任意の組み合わせで作成される基が挙げられ、例えばC-Cアルキレン-フェニレン-C-Cアルキレン基等が挙げられる。この場合、フェニレン基上の2つのアルキレン基は互いにオルト位、メタ位、およびパラ位のいずれの位置関係であってもよいが、パラ位が好ましい。
【0026】
本明細書記載の「C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基」とは、上記のC-Cアルキレン基と上記の5~11員ヘテロアリーレン基が結合した基である。C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基としては、上記のC-Cアルキレン基の定義で例示した基と5~11員ヘテロアリーレンの定義で例示した基の任意の組み合わせで作成される基が挙げられ、例えばC-Cアルキレン-ピリジレン基等が挙げられる。
【0027】
本明細書記載の「C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン-C-Cアルキレン基」とは、上記のC-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基と上記のC-Cアルキレン基が結合した基である。C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン-C-Cアルキレン基としては、上記のC-Cアルキレン基の定義で例示した基と5~11員ヘテロアリーレンの定義で例示した基の任意の組み合わせで作成される基が挙げられ、例えばC-Cアルキレン-ピリジレン-C-Cアルキレン基等が挙げられる。
【0028】
本明細書記載の「-R-R」で示される部分構造において、Rが水素原子である場合は、Rの末端のアルキレン基、アリーレン基、およびヘテロアリーレン基は当該水素原子と結合して、それぞれ対応するアルキル基、アリール基、およびヘテロアリール基となる。
【0029】
本明細書記載のカルボキシ基の誘導体とは、カルボキシ基が反応して生成する任意の化学種である。カルボキシ基の誘導体としてはアシル基、エステル基、およびアミド基等が挙げられ、例えばC(O)R、C(O)OR、およびC(O)NR(ここで、Rは鎖式炭化水素基を示し、Rは鎖式炭化水素基またはフェナシル基を示し、RおよびRは、同一または相異なり、鎖式炭化水素基または水素原子を表す)で示される基等が挙げられ、C(O)ORまたはC(O)NRで示される基が好ましく、C(O)ORで示される基がより好ましい。
【0030】
本明細書記載の各化合物は、互変異性体の形態またはこれらの混合物で存在し得る。本明細書記載の各化合物は、エナンチオマーもしくはジアステレオマー等の立体異性体の形態、またはこれらの混合物で存在し得る。本明細書記載の各化合物は、互変異性体や立体異性体の混合物またはそれぞれ純粋な若しくは実質的に純粋な異性体を包含する。
【0031】
本明細書記載の各化合物がジアステレオマーまたはエナンチオマーの形態で存在する場合、これらを当該技術分野で慣用の方法、例えばクロマトグラフィーおよび分別結晶法等で分離することができる。
【0032】
本明細書記載の各化合物は、同位元素(例えば、H、H、13C、14C、15N、18F、32P、35S、125I等)等で標識された化合物及び重水素変換体を包含する。
【0033】
本明細書記載の各化合物は、遊離の形で存在してもよく、また塩の形で存在してもよい。塩としては、リチウム、ナトリウム、およびカリウム等のアルカリ金属塩;マグネシウムおよびカルシウム等の第2族金属塩;アルミニウムまたは亜鉛との塩;アンモニア、コリン、ジエタノールアミン、リジン、エチレンジアミン、tert-ブチルアミン、tert-オクチルアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、N-メチル-グルコサミン、トリエタノールアミン、およびデヒドロアビエチルアミン等のアミンとの塩;塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、硝酸、およびリン酸等の無機酸との塩;ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、マンデル酸、パントテン酸、メチル硫酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸等の有機酸との塩;またはアスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、およびリジン等のアミノ酸等との塩が挙げられる。
【0034】
さらに、本明細書記載の各化合物またはその塩は、その分子内塩や付加物、それらの溶媒和物、または水和物等の形態で存在してもよい。
【0035】
以下、本発明製造方法の各工程について説明する。
【0036】
(工程1)
【化12】
[式中、記号は前記と同じ意味を表す]
本発明製造方法における工程1では、化合物(II)またはその塩を化合物(III)と反応させて化合物(IV)またはその塩を製造する反応が実施される。
化合物(II)は分子内塩を形成していてもよい。また、化合物(IV)は分子内塩を形成していてもよく、また末端のカルボキシ基がプロトン化されてCOOHの形態で存在し、四級アンモニウムカチオンがX1-と塩を形成していてもよい。
化合物(II)またはその塩および化合物(III)は、市販の化合物であるか、または既知の方法を用いて製造することができる。
反応は、通常溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えばメタノールおよびエタノール等のアルコール類;アセトニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン(THF);N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;水;ならびにこれらの2種類以上の混合物が挙げられ、水を含む溶媒が好ましく、水と非プロトン性極性溶媒の混合溶媒がより好ましく、水とDMFの混合溶媒がさらに好ましい。
反応には、化合物(II)またはその塩1モルに対して、化合物(III)が通常1~3モルの割合、好ましくは1~2モルの割合で用いられる。
反応温度は、通常-20~80℃の範囲である。反応時間は通常1分~24時間の範囲である。
工程1の1つの実施態様では、化合物(II)またはその塩は下記式(II’):
【化13】
で示される化合物またはその塩であり、化合物(IV)またはその塩は下記式(IV’):
【化14】
で示される化合物またはその塩である。
【0037】
(工程2)
本発明製造方法における工程2では、化合物(IV)またはその塩を化合物(V)またはその塩と反応させて化合物(VI)またはその塩を製造する反応が実施される。
【化15】
[式中、記号は前記と同じ意味を表す]
化合物(VI)は分子内塩を形成していてもよく、また四級アンモニウムカチオンがX1-またはX2-と塩を形成していてもよい。
化合物(V)またはその塩は、市販の化合物であるか、または既知の方法を用いて製造することができる。
反応は、通常溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えばメタノールおよびエタノール等のアルコール類;アセトニトリル等のニトリル類;テトラヒドロフラン(THF);N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)およびジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒;水;ならびにこれらの2種類以上の混合物が挙げられ、非プロトン性極性溶媒が好ましく、DMFがより好ましい。
反応には、化合物(IV)またはその塩1モルに対して、化合物(V)が通常1~10モルの割合、好ましくは1~5モルの割合で用いられる。
反応には、通常塩基が用いられる。反応に用いられる塩基としては、例えば炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;ならびに炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられ、アルカリ金属炭酸水素塩が好ましく、炭酸水素ナトリウムがより好ましい。反応に塩基が用いられる場合、化合物(IV)またはその塩1モルに対して、塩基が通常1~10モルの割合、好ましくは1~5モルの割合で用いられる。
反応温度は、通常0~100℃の範囲である。反応時間は通常0.1~48時間の範囲である。
工程2の1つの実施態様では、化合物(IV)またはその塩は上記化合物(IV’)またはその塩であり、化合物(VI)またはその塩は下記一般式(VI’):
【化16】
[式中、記号は前記と同じ意味を表す]
で示される化合物またはその塩である。
【0038】
(工程3)
本発明製造方法における工程3では、化合物(VI)またはその塩のフェナシル基を脱保護反応に付し、化合物(I)またはその塩を製造する反応が実施される。
【化17】
[式中、記号は前記と同じ意味を表す]
化合物(I)は分子内塩を形成していてもよく、また四級アンモニウムカチオンがアニオンと塩を形成していてもよい。
化合物(VI)またはその塩を亜鉛粉末および酸または塩化アンモニウムの存在下で反応させることにより、化合物(VI)またはその塩のフェナシル基を脱保護し、化合物(I)またはその塩を製造することができる。
酸としては、酢酸または塩酸が挙げられる。
反応は、通常溶媒中で行われる。反応に用いられる溶媒としては、例えば水を含有したN,N-ジメチルホルムアミドまたは水を含有した酢酸が挙げられ、水を含有した酢酸が好ましい。
反応には、化合物(VI)またはその塩1モルに対して、亜鉛粉末が通常1~20モルの割合、好ましくは1~15モルの割合で用いられ、酸または塩化アンモニウムが通常1~1000モルの割合、好ましくは2~200モルの割合で用いられる。
反応温度は、通常0~100℃の範囲である。反応時間は通常0.1~48時間の範囲である。
反応終了後、適宜中和および精製等の後処理操作を行うことにより、化合物(I)またはその塩を製造することができる。
本発明の1つの実施態様では、化合物(VI)またはその塩のRがカルボキシ基の誘導体であり、本工程によって当該カルボキシ基の誘導体が脱保護され、化合物(I)またはその塩のRがカルボキシ基に変換される。
また、工程3の1つの実施態様では、化合物(VI)またはその塩は上記化合物(VI’)またはその塩であり、化合物(I)またはその塩は下記一般式(I’):
【化18】
[式中、記号は前記と同じ意味を表す]
で示される化合物またはその塩である。
【0039】
(カルボキシ基の誘導体からカルボキシ基への変換工程)
工程1~3に加え、Rがエステルまたはアミドである場合、当該エステルまたはアミドをカルボキシ基へ変換する別の工程をさらに実施してもよい。当該工程は、工程2と工程3の間に実施してもよく、工程3の後に実施してもよい。
例えば、化合物(VI)またはその塩、あるいは化合物(I)またはその塩を、溶媒中、酸の存在下で反応させることにより、Rに存在するエステル基をカルボキシ基に変換することができる。
反応に用いられる溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド;テトラヒドロフラン;メタノール、エタノール、およびn-ブタノール等のアルコール類;水;ならびにこれらの2種類以上の混合物が挙げられる。
酸としては、塩酸、リン酸、およびトリフルオロ酢酸などが挙げられる。
反応には、化合物(VI)またはその塩、あるいは化合物(I)またはその塩1モルに対して、酸が通常1~10モルの割合、好ましくは2~5モルの割合で用いられる。
反応温度は、通常0~100℃の範囲である。反応時間は通常0.1~48時間の範囲である。
本工程の1つの実施態様では、化合物(VI)またはその塩は上記化合物(VI’)またはその塩であり、化合物(I)またはその塩は上記化合物(I’)またはその塩である。
【0040】
本発明製造方法で製造された化合物は、タンパク質と結合してコンジュゲートを形成することができ、またビーズと結合することができる。
タンパク質としては、例えばエチレンジアミンで修飾した牛血清アルブミン(cBSA)(カチオニック牛血清アルブミンとも称する)や卵白アルブミン(OVA)を挙げることができる。
ビーズとしては、例えばアミノ基で修飾されたナノ磁性ビーズ等を挙げることができる。
【0041】
以下に、本発明の実施態様を記載する。なお、以下の各実施態様を任意に選択して組み合わせた実施態様も本発明に包含される。
【0042】
本発明製造方法
[実施態様A1]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基;またはC-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン-C-Cアルキレン基を示す、本発明製造方法。
[実施態様A2]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;またはC-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基である、本発明製造方法。
[実施態様A3]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;またはC-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基である、本発明製造方法。
[実施態様A4]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-フェニレン基;またはC-Cアルキレン-フェニレン-C-Cアルキレン基である、本発明製造方法。
[実施態様A5]
におけるカルボキシ基の誘導体がアシル基、エステル基、またはアミド基である、実施態様A1~A4のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A6]
におけるカルボキシ基の誘導体がC(O)R、C(O)OR、およびC(O)NRであり、Rが鎖式炭化水素基であり、Rが鎖式炭化水素基またはフェナシル基であり、RおよびRが、同一または相異なり、鎖式炭化水素基または水素原子である、実施態様A1~A4のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A7]
がカルボキシ基の誘導体である、実施態様A1~A6のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A8]
化合物(I)またはその塩が下記一般式(I’):
【化19】
[式中、記号は前記と同じ意味を表す]
で示される化合物またはその塩であり、化合物(II)またはその塩が下記式(II’):
【化20】
で示される化合物またはその塩であり、化合物(IV)またはその塩が下記式(IV’):
【化21】
で示される化合物またはその塩であり、化合物(VI)またはその塩が下記一般式(VI’):
【化22】
[式中、記号は前記と同じ意味を表す]
で示される化合物またはその塩である、実施態様A1~A7のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A9]
カルボキシ基の誘導体をカルボキシ基に変換する工程をさらに含む、実施態様A1~A8のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A10]
カルボキシ基の誘導体をカルボキシ基に変換する工程が酸の存在下で実施される、実施態様A9に記載の本発明製造方法。
[実施態様A11]
酸が塩酸、リン酸、またはトリフルオロ酢酸である、実施態様A10に記載の本発明製造方法。
[実施態様A12]
カルボキシ基の誘導体をカルボキシ基に変換する工程によって製造される化合物またはその塩が、
【化23】
【化24】
および
【化25】
からなる群から選択される化合物またはその塩である、実施態様A9~11のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A13]
が水素原子である、実施態様A1~A4のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A14]
工程1が水を含む溶媒中で実施される、実施態様A1~A13のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A15]
工程1が水と非プロトン性極性溶媒の混合溶媒中で実施される、実施態様A1~A13のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A16]
非プロトン性極性溶媒がDMFである、実施態様A15に記載の本発明製造方法。
[実施態様A17]
が臭素原子である、実施態様A1~A16のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A18]
工程2が溶媒中、塩基の存在下で実施される、実施態様A1~A17のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A19]
溶媒が非プロトン性極性溶媒である、実施態様A18に記載の本発明製造方法。
[実施態様A20]
非プロトン性極性溶媒がDMFである、実施態様A19に記載の本発明製造方法。
[実施態様A21]
塩基がアルカリ金属炭酸水素塩である、実施態様A18~A20のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A22]
アルカリ金属炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウムである、実施態様A21に記載の本発明製造方法。
[実施態様A23]
が臭素原子である、実施態様A1~A22のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A24]
およびXがそれぞれ臭素原子である、実施態様A1~A23のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A25]
工程3が亜鉛粉末および酸または塩化アンモニウムの存在下で実施される、実施態様A1~A24のいずれか1つに記載の本発明製造方法。
[実施態様A26]
酸が塩酸または酢酸である、実施態様A25に記載の本発明製造方法。
【0043】
本発明化合物
[実施態様B1]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン基;またはC-Cアルキレン-5~11員ヘテロアリーレン-C-Cアルキレン基を示す、本発明化合物またはその塩。
[実施態様B2]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;またはC-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基である、本発明化合物またはその塩。
[実施態様B3]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-6~12員アリーレン基;またはC-Cアルキレン-6~12員アリーレン-C-Cアルキレン基である、本発明化合物またはその塩。
[実施態様B4]
がC-Cアルキレン基;C-Cアルキレン-フェニレン基;またはC-Cアルキレン-フェニレン-C-Cアルキレン基である、本発明化合物またはその塩。
[実施態様B5]
におけるカルボキシ基の誘導体がアシル基、エステル基、またはアミド基である、実施態様B1~B4のいずれか1つに記載の本発明化合物またはその塩。
[実施態様B6]
におけるカルボキシ基の誘導体がC(O)R、C(O)OR、およびC(O)NRであり、Rが鎖式炭化水素基であり、Rが鎖式炭化水素基またはフェナシル基であり、RおよびRが、同一または相異なり、鎖式炭化水素基または水素原子である、実施態様B1~B4のいずれか1つに記載の本発明化合物またはその塩。
[実施態様B7]
がカルボキシ基である、実施態様B1~B4のいずれか1つに記載の本発明化合物またはその塩。
[実施態様B8]
下記一般式(I’):
【化26】
[式中、記号は前記と同じ意味を表す]
で示される化合物またはその塩である、実施態様B1~B7のいずれか1つに記載の本発明化合物またはその塩。
[実施態様B9]
【化27】
【化28】
および
【化29】
からなる群から選択される、実施態様B1に記載の本発明化合物またはその塩。
[実施態様B10]
が水素原子である、実施態様B1~B4のいずれか1つに記載の本発明化合物またはその塩。
【0044】
本発明化合物の用途
[実施態様C1]
実施態様B7またはB9に記載の本発明化合物またはその塩とタンパク質が結合したコンジュゲート。
[実施態様C2]
タンパク質がエチレンジアミンで修飾した牛血清アルブミン(cBSA)または卵白アルブミン(OVA)である、実施態様C1に記載のコンジュゲート。
[実施態様C3]
実施態様B7またはB9に記載の本発明化合物またはその塩と結合したビーズ。
[実施態様C4]
ビーズがアミノ基で修飾されたナノ磁性ビーズである、実施態様C3に記載のビーズ。
【実施例0045】
以下に、実施例および試験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、これらの例示は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0046】
まず、本発明製造方法によって本発明化合物を製造する具体例を実施例として示す。
【0047】
実施例1
(S)-1-(4-カルボラトベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパンアミニウムの製造
【化30】
【0048】
(1)(S)-臭化1-カルボキシ-N,N,N-トリメチル-2-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)エタンアミニウムの製造
【化31】
L-EGT(テトラエドロン社)(1200mg)を水(10mL)に溶解し、氷冷した。フェナシルブロミド(東京化成工業)(1090mg)をN,N-ジメチルホルムアミド(35mL)に溶解した溶液を上記のEGT溶液に撹拌しながら滴下した。反応液を遠心エバポレーター(TOMY社製 CC-105)でエバポレートし、淡黄色の粘稠油状の標記化合物を得た。得られた標記化合物を重水に溶解し、NMR(Bruker Ascend400)で測定した。リファレンスにはDSSd(フジフィルム)を用いた。DSSdのプロトンもしくはメチル基のCを0ppmとした場合の結果を以下に示す。
1H NMR (D2O): 3.31(s, 9H), 3.34-3.41 (m, 2H), 3.94 (d, 1H, J=11.6 Hz), 4.82 (s, 2H), 7.33 (s, 1H), 7.58 (t, 2H, J=7.5 Hz), 7.74 (t, 1H, J=7.3 Hz), 7.96 (d, 2H, J=7.5 Hz)。
13C NMR (D2O): 25.7, 44.1, 55.0, 79.4, 122.7, 131.4, 131.8, 131.9, 137.0, 137.6, 141,7, 172.3, 198.8。
【0049】
(2)(S)-臭化1-(4-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-2-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパンアミニウムの製造
【化32】
(1)で得られた(S)-臭化1-カルボキシ-N,N,N-トリメチル-2-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)エタンアミニウムをN,N-ジメチルホルムアミド(40mL)に溶解し、重曹(1000mg)とメチル4-(ブロモメチル)ベンゾエート(1220mg)(東京化成工業)を添加した。撹拌しながら室温で24時間インキュベートした後、ろ過した。ろ液をペースト状になるまで濃縮した後、水(40mL)に溶解した。トルエンを40mL加え、分液処理を行い、水相を回収した。塩化ナトリウム(10g)(ナカライテスク社製)とn-ブチルアルコール(40mL)を加え、分液した。得られた有機相を飽和食塩水で2回洗浄した。有機相をエバポレートし、淡黄色の粘稠油状の標記化合物を得た。
【0050】
(3)(S)-塩化1-(4-カルボキシベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムの製造
【化33】
(2)で得られた(S)-臭化1-(4-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-2-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパンアミニウムにN,N-ジメチルホルムアミド(2mL)と6Mの塩酸(10mL)を加え、50℃で4日間インキュベートすることで加水分解し、標記化合物の塩酸溶液を得た。
【0051】
(4)(S)-1-(4-カルボラトベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパンアミニウムの製造
【化34】
(3)で得られた(S)-塩化1-(4-カルボキシベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムの塩酸溶液(12mL)に亜鉛粉末を1500mg加え、室温で撹拌しながら10分間反応させた後、ろ過した。ろ液に5Mの水酸化ナトリウムを滴下し、pH2に調整した。それを濃縮した後、N,N-ジメチルホルムアミド(4mL)と水(6mL)を加え溶解した。その溶液をODS分取カラム装置(山善社製、UltraPac、YFLC AI-580)にかけ、溶離液としてメタノールと水の混合液を用い、カラム精製をおこなった。得られた分画を濃縮した後、凍結乾燥し、標記化合物の白色粉末1271mgを得た。
得られた標記化合物を重水に溶解し、NMR(Bruker Ascend400)で測定した。リファレンスにはDSSd(フジフィルム)を用いた。DSSdのプロトンもしくはメチル基のCを0ppmとした場合の結果を以下に示す。
1H NMR (D2O): 3.27-3.34 (m, 2H), 3.35 (s, 9H), 3.40 (dd, J=14.0, 3.7 Hz, 1H), 4.45 (dd, J=12.3, 3.7 Hz, 1H), 5.02 (d, J=12.1, 1H), 5.32 (d, J=12.1 Hz, 1H), 6.33 (s, 1H), 7.19 (d, J=7.7 Hz, 2H), 7.82 (d, J=7.7 Hz, 2H)。13C NMR (D2O): 25.3, 55.4, 71.0, 75.2, 118.6, 124.1, 131.4, 132.3, 136.7, 140.6, 159.7, 169.1, 175.7。
【0052】
実施例2
(S)-1-(4-カルボラトメチルベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムの製造
【化35】
【0053】
(1)(S)-臭化-N,N,N-トリメチル-1-(4-フェナシルオキシカルボニルメチルベンジルオキシ)-3-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムの製造
【化36】
実施例1(1)で得られた(S)-臭化1-カルボキシ-N,N,N-トリメチル-2-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)エタンアミニウムをN,N-ジメチルホルムアミド(40mL)に溶解し、重曹(1400mg)とフェナシル4-(ブロモメチル)フェニルアセテート(1830mg)(東京化成工業)を添加した。撹拌しながら室温で24時間インキュベートした後、ろ過した。ろ液をペースト状になるまでエバポレーターで濃縮した後、水(40mL)に溶解した。トルエン(40mL)を加え、分液処理し、水相を回収した。塩化ナトリウム(10g)(ナカライテスク社製)とn-ブチルアルコール(40mL)を加え、分液した。得られた有機相を飽和食塩水で2回洗浄した。有機相をエバポレートし、淡黄色の粘稠油状の標記化合物を得た。
【0054】
(2)(S)-1-(4-カルボラトメチルベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムの製造
【化37】
(1)で得られた(S)-臭化-N,N,N-トリメチル-1-(4-フェナシルオキシカルボニルメチルベンジルオキシ)-3-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムに90%酢酸を20mL、および亜鉛粉末2000mgを加え、室温で4時間インキュベートし、ろ過した。ろ液に6Mの塩酸を加え、pH2に調整した。それを4mLにまで濃縮した後、N,N-ジメチルホルムアミド(2mL)と水1mLを加えた。その溶液をODS分取カラム装置(山善社製、UltraPac、YFLC AI-580)にかけ、溶離液としてメタノールと水の混合液を用い、カラム精製をおこなった。得られた分画を濃縮した後、凍結乾燥し、標記化合物の白色粉末1001mgを得た。
得られた標記化合物を重水に溶解し、NMR(Bruker Ascend400)で測定した。リファレンスにはDSSd(フジフィルム)を用いた。DSSdのプロトンもしくはメチル基のCを0ppmとした場合の結果を以下に示す。
1H NMR (D2O): 3.23-3.35 (m, 2H), 3.32 (s, 9H), 3.62 (s, 2H), 4.46 (dd, J=12.0, 4.3 Hz, 1H), 5.00 (d, J=11.4 Hz, 1H), 5.43 (d, J=11.4 Hz, 1H), 6.19 (s, 1H), 7.23 (d, J=7.6 Hz, 2H), 7.31 (d, J=7.6 Hz, 2H)。13C NMR (D2O): 25.2, 46.3, 55.3, 71.6, 75.1, 118.7, 123.5, 132.5, 132.5, 134.9, 140.6, 159.1, 169.2, 183.0。
【0055】
実施例3
(S)-4-(3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)-2-(トリメチルアンモニオ)プロパノイルオキシ)ブタノエートの製造
【化38】
【0056】
(1)(S)-臭化1-(3-t-ブトキシカルボニルプロピル)オキシ-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムの製造
【化39】
実施例1(1)で得られた(S)-臭化1-カルボキシ-N,N,N-トリメチル-2-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)エタンアミニウムをN,N-ジメチルホルムアミド(40mL)に溶解し、重曹(1400mg)とtert-ブチル4-ブロモブタノエート(4750mg)(東京化成工業)を添加した。撹拌しながら50℃で24時間インキュベートした後、ろ過した。ろ液をペースト状になるまで濃縮した後、水(40mL)に溶解した。トルエン(40mL)を加え、分液処理し、水相を回収した。塩化ナトリウム(10g)(ナカライテスク社製)とn-ブチルアルコール(44mL)を加え、分液した。得られた有機相を飽和食塩水で2回洗浄した。有機相をエバポレートし、淡黄色の粘稠油状の標記化合物を得た。
【0057】
(2)酢酸1-(3-t-ブトキシカルボニルプロピル)オキシ-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムの製造
【化40】
(1)で得られた(S)-臭化1-(3-t-ブトキシカルボニルプロピル)オキシ-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムを90%酢酸(12mL)に溶解し、亜鉛粉末2000mgを添加した。50℃で30分間インキュベートした後、ろ過した。そのろ液をODS分取カラム装置(山善社製、UltraPac、YFLC AI-580)にかけ、溶離液としてメタノールと水を用いカラム精製をおこなった。得られた分画を濃縮し、淡黄色の粘稠油状の標記化合物を得た。
【0058】
(3)(S)-4-(3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)-2-(トリメチルアンモニオ)プロパノイルオキシ)ブタノエートの製造
【化41】
(2)で得られた(S)-酢酸1-(3-t-ブトキシカルボニルプロピル)オキシ-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムに水(16mL)を加え、溶解した。6Mの塩酸でpH1に調製し、室温で24時間インキュベートした。5Mの水酸化ナトリウムを添加し、pH5に調整した。凍結乾燥し、標記化合物(2590mg:塩化ナトリウム1150mgを含む)を得た。
得られた標記化合物を重水に溶解し、NMR(Bruker Ascend400)で測定した。リファレンスにはDSSd(フジフィルム)を用いた。DSSdのプロトンもしくはメチル基のCを0ppmとした場合の結果を以下に示す。
1H NMR (D2O): 1.69-1.83 (m, 2H), 2.10 (t, J=7.3 Hz, 2H), 3.31 (s, 9H), 3.29-3.35 (m, 1H), 3.45 (dd, J=14.2, 4.0 Hz, 1H), 4.15 (t, J=6.2 Hz, 2H), 4.50 (dd, J=11.9, 4.0 Hz, 1H), 6.85 (s, 1H)。13C NMR (D2O): 25.2, 27.0, 36.0, 55.4, 70.0, 75.6, 118.8, 124.8, 159.5, 169.4, 184.0。
【0059】
(高分解能質量分析)
以下に液体クロマトグラフィー高分解能質量分析(LC-HRMS)の方法および結果を示す。
(LC-HRMS分析条件)
装置:Agilent Technologies 6224 TOF LC/MS(アジレントテクノロジー社製)。
カラム:μBondasphere 5μC18 100A、3.9X150mm(Waters社)。
流速:0.5mL/min。
温度:40℃。
溶離液:(A)0.1%ギ酸水溶液、(B)アセトニトリル、グラジエント条件:0%B(0分)から100%B(20分)。
イオン化条件:ESI キャピラリー電圧 3500V フラグメンター電圧 100V。
【0060】
(結果)
L-EGT:[M+H]16OS 計算値230.0958;実測値 230.0956 保持時間3.0分付近
(S)-臭化1-カルボキシ-N,N,N-トリメチル-2-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)エタンアミニウムのカチオン部分:[M]1722S 計算値348.1376;実測値348.1377 保持時間7.5分付近
(S)-臭化1-(4-メトキシカルボニルベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-2-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパンアミニウムのカチオン部分:[M]2630S 計算値496.1901;実測値496.1902 保持時間11.5分付近
(S)-塩化1-(4-カルボキシベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムのカチオン部分:[M]2528S 計算値482.1744;実測値482.1746 保持時間9.5分付近
(S)-1-(4-カルボラトベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパンアミニウム:[M+H]1722S 計算値364.1326;実測値364.1328 保持時間7.7分付近
(S)-臭化-N,N,N-トリメチル-1-(4-フェナシルオキシカルボニルメチルベンジルオキシ)-3-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウム:[M]3436S 計算値614.2319;実測値614.2321 保持時間12.6分付近
(S)-1-(4-カルボラトメチルベンジルオキシ)-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウム:[M+H]1824S 計算値378.1482;実測値378.1485 保持時間8.2分付近
(S)-臭化1-(3-t-ブトキシカルボニルプロピル)オキシ-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-フェナシルチオ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムのカチオン部分:[M]2536S 計算値490.2370;実測値490.2369 保持時間10.9分付近
(S)-酢酸1-(3-t-ブトキシカルボニルプロピル)オキシ-N,N,N-トリメチル-1-オキソ-3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)プロパン-2-アミニウムのカチオン部分:[M]1730S 計算値372.1952;実測値372.1950 保持時間8.7分付近
(S)-4-(3-(2-チオキソ-2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾール-4-イル)-2-(トリメチルアンモニオ)プロパノイルオキシ)ブタノエート:[M+H]1322S 計算値316.1326;実測値316.1335 保持時間4.1分付近
【0061】
次に、本発明化合物の用途について試験例を用いて示す。
【0062】
試験例1
本発明化合物とタンパク質とのカップリング試験(コンジュゲートの作成)
試験方法
EGTおよび実施例1~3で製造した各化合物(EGT誘導体)をそれぞれ2-モルホリノエタンスルホン酸緩衝液(100mM、pH4.5)に溶解し、20mMになるように調製した。そこに卵白アルブミン(ナカライテスク)もしくはカチオニック牛血清アルブミン(Thermofisher)の10mg/mL溶液を1mLずつ添加し、混合した。直ちに1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業)を60mgずつ添加し、混合し、室温で24時間インキュベートした。その反応液を透析膜に入れ、リン酸緩衝生理食塩水1Lに対して3回透析処理をおこなった。透析膜内の液を回収し、そこにブタ肝臓エステラーゼ(SigmaAldrich)のリン酸緩衝生理食塩水溶液を150U/mLになるように添加し、37℃で一週間インキュベートした。それを高速液体クロマトグラフィーにかけ、エステラーゼで加水分解されて遊離したEGT量を測定することで、各アルブミンに結合したEGTおよびEGT誘導体の分子数を確認した。
【0063】
結果
EGTには各タンパク質は全く結合しなかった。一方、実施例1のEGT誘導体は、21分子/カチオニック牛血清アルブミン、5.7分子/卵白アルブミンの割合で結合した。実施例2のEGT誘導体は、4.5分子/カチオニック牛血清アルブミン、2.7分子/卵白アルブミンの割合で結合した。実施例3のEGT誘導体は、3.3分子/卵白アルブミンの割合で結合していることが確認された。
すなわち、本発明化合物(EGT誘導体)は、タンパク質と結合してコンジュゲートを形成することが確認できた。
【0064】
試験例2
本発明化合物とビーズとのカップリング試験
試験方法
実施例3で製造した化合物(EGT誘導体)の420mMの水溶液(0.24mL)とFG-NHナノ磁性ビーズ(多摩川精機)(12mg)を1mLの2-モルホリノエタンスルホン酸緩衝液(200mM、pH4.5)に懸濁した液を混合した。1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(東京化成工業)を150mg添加混合し、室温で激しく撹拌しながら18時間インキュベートした。2mLのリン酸緩衝生理食塩水で4回洗浄した。それを0.6mLのリン酸緩衝生理食塩水に再懸濁した。その懸濁液を0.1mLに小分けし、そこにブタ肝臓エステラーゼ(SigmaAldrich)のリン酸緩衝生理食塩水溶液を150U/mLになるように添加し、37℃で一週間インキュベートした。それを高速液体クロマトグラフィーにかけ、エステラーゼで加水分解されて遊離したEGT量を測定することで、ナノ磁性ビーズに結合したEGT誘導体の分子数を確認した。
【0065】
結果
実施例3のEGT誘導体は、FG-NHナノ磁性ビーズのアミノ基に10モル%結合していることが確認された。
すなわち、本発明化合物(EGT誘導体)は、ビーズと結合することが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明製造方法により、EGT誘導体を効率的に製造することができる。また、本発明化合物は、EGTの高い生理活性を説明できるメカニズムの解明に有用である。