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特開2023-180568合成ガス製造システムおよび合成ガスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180568
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】合成ガス製造システムおよび合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/40 20170101AFI20231214BHJP
   C01B 3/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
C01B32/40
C01B3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093967
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100162765
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 綾
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 彰利
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健人
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 舞
【テーマコード(参考)】
4G140
4G146
【Fターム(参考)】
4G140BA03
4G140BB03
4G146JA01
4G146JB04
4G146JC02
4G146JC24
4G146JC27
4G146JD06
(57)【要約】
【課題】COの含有量の少ない合成ガスを効率よく製造することが可能な合成ガス製造システムを提供する。
【解決手段】COとHとを含む合成ガスの製造システムであって、COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応装置と、前記逆シフト反応装置で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離装置と、前記分離装置で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応装置に導入される前記原料ガスに合流させる合流流路と、前記分離装置で分離された前記COに、Hを混合させる混合流路と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
COとHとを含む合成ガスの製造システムであって、
COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応装置と、
前記逆シフト反応装置で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離装置と、
前記分離装置で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応装置に導入される前記原料ガスに合流させる合流流路と、
前記分離装置で分離された前記COに、Hを混合させる混合流路と、を備える、合成ガス製造システム。
【請求項2】
前記合流流路は、前記原料ガスに合流させる前記PSAオフガスの流量を調整するための流量調整装置を有する、請求項1に記載の合成ガス製造システム。
【請求項3】
前記分離装置で分離された前記PSAオフガスの一部を、前記合成ガス製造システム外に排出するための排出流路を有する、請求項1または請求項2に記載の合成ガス製造システム。
【請求項4】
COとHとを含む合成ガスの製造方法であって、
COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応工程と、
前記逆シフト反応工程で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応工程に供される前記原料ガスに合流させる合流工程と、
前記分離工程で分離された前記COに、Hを混合させる混合工程と、を備える、合成ガス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ガス製造システムおよび合成ガスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、産業界では地球温暖化による気候変動への対策として、カーボンニュートラル(Carbon Neutral;CN)の実現に向け、二酸化炭素(CO)排出量の削減についての研究開発が活発に行われている。
【0003】
具体的なCO排出量の削減方法としては、製鉄所や火力発電所等のCO発生源を有する設備から排出される廃ガスからCOを分離し、回収するプロセスや方法が既に検討されている。これまでに吸着方式、吸収方式、膜分離方式等、さまざまなCOの分離、回収方法について研究開発が進められている。
【0004】
しかし、回収したCOの利用に関しては、現状では、生産効率の下がった油田等において原油の回収率を上げるために油田にCOを注入するEOR(Enhanced Oil Recovery:原油増進回収)や、農作物の増産のためにビニールハウスにCOを供給する農法等、限られた用途しか利用方法がない。
【0005】
そのため、回収したCOに水素(H)を加えたり、電気エネルギーを利用したりすることにより、燃料や化成品原料のような有価物、例えばメタノール、メタン、合成ガス等を製造するCOの利用技術についても、活発に研究開発が進められている。このとき、再生可能エネルギーを用いて製造された水素ガスを使用することにより、Hの製造に伴って発生するCOの削減も図ることができる。
【0006】
COとHの混合ガスから合成ガスを製造する方法としては、以下に説明するように逆シフト反応で生成した一酸化炭素(CO)にHを混合させる方法がある。
【0007】
逆シフト反応は下記式(1)で表される化学反応であり、逆シフト反応によりCOとHの混合ガスからCOを生成させることができる。
CO+H→CO+HO …(1)
【0008】
逆シフト反応は、圧力に影響を受けずに進行する吸熱反応である。逆シフト反応には、例えばAlにMn-Pd合金を担持させたMn-Pd/Al系の触媒を使用することができ、特許文献1では逆シフト反応に使用可能な触媒が提案されている。逆シフト反応で生成したCOにHを混合することにより、COとHを主成分とする混合ガスである合成ガスを製造することができる。
【0009】
合成ガスからは多種多様な化成品、例えばメタノール、ガソリン、軽油、ジメチルエーテル(DME)等を製造することが可能である。メタノールは下記式(2)の化学反応により合成ガスから製造することができる。
CO+2H→CHOH …(2)
【0010】
DMEは、メタノールを経由する間接合成により製造することができ、また、直接法により合成ガスから直接製造することもできる。直接法では、下記式(3)または式(4)の化学反応によりDMEを製造することができる。合成ガスのH/CO比が1の場合、式(3)の反応が進行し、COの発生を伴う。合成ガスのH/CO比が2の場合、式(4)の反応が進行し、理論上COの発生が抑制される。実際のDMEの製造プロセスでは合成ガスのH/CO比は2以上に調整される。
3CO+3H→CHOCH+CO …(3)
2CO+4H→CHOCH+HO …(4)
【0011】
また、下記式(5)のFT(Fischer-Tropsch:フィッシャー・トロプシュ)合成により、合成ガスから直鎖の炭化水素等のGTL(Gas to liquid)製品を製造することができる。一般にFT合成では、合成ガスのH/CO比は2~3に調整される。FT合成では、副反応生成物としてオレフィン、アルコール類等が生成する。
nCO+(2n+1)H→C2n+2+nHO …(5)
【0012】
以上の式(2)~(5)で表される化学反応は、いずれも分子数が減少する反応であり、平衡論として高圧力下において有利に進行する高圧プロセスである。そのため、合成ガスの加圧が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第5105007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
以上のように、COとHの混合ガスから合成ガスを製造する技術が開発されている。合成ガスを製造するのに用いられる逆シフト反応では、COを完全に反応させることが反応の制約上困難であり、現時点ではCOの反応率(転化率)は約50%である。そのため、合成ガスにも未反応のCOが残存することとなる。
【0015】
上述のように、合成ガスから化成品等を生成させる式(2)~(5)で表される化学反応は高圧プロセスであるため、合成ガスの加圧が必要である。このとき、合成ガスに未反応のCOが残存していると、その分、加圧に要する動力が増加するため、エネルギー効率が低下するという問題があった。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、COの含有量の少ない合成ガスを効率よく製造することが可能な合成ガス製造システムを提供することを目的とする。また、このような合成ガスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、種々検討した結果、上記目的は、以下の発明により達成されることを見出した。
【0018】
本発明の一局面に係る合成ガス製造システムは、
COとHとを含む合成ガスの製造システムであって、
COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応装置と、
前記逆シフト反応装置で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離装置と、
前記分離装置で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応装置に導入される前記原料ガスに合流させる合流流路と、
前記分離装置で分離された前記COに、Hを混合させる混合流路と、を備える。
【0019】
本発明の他の局面に係る合成ガスの製造方法は、
COとHとを含む合成ガスの製造方法であって、
COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応工程と、
前記逆シフト反応工程で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応工程に供される前記原料ガスに合流させる合流工程と、
前記分離工程で分離された前記COに、Hを混合させる混合工程と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、COの含有量の少ない合成ガスを効率よく製造することが可能な合成ガス製造システムを提供することができる。また、このような合成ガスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る合成ガス製造システムの一例を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第2の実施形態に係る合成ガス製造システムの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態に係る合成ガス製造システムおよび合成ガスの製造方法について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施形態に係る合成ガス製造システムは、一酸化炭素(CO)と水素(H)とを含む合成ガスの製造システムであって、二酸化炭素(CO)とHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応装置と、逆シフト反応装置で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離装置と、分離装置で分離されたPSAオフガスを、逆シフト反応装置に導入される原料ガスに合流させる合流流路と、分離装置で分離されたCOに、Hを混合させる混合流路と、を備える。
【0024】
本実施形態に係る合成ガス製造方法は、COとHとを含む合成ガスの製造方法であって、COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応工程と、前記逆シフト反応工程で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離工程と、前記分離工程で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応工程に供される前記原料ガスに合流させる合流工程と、前記分離工程で分離された前記COに、Hを混合させる混合工程と、を備える。
【0025】
〈合成ガス製造システムの構成〉
図1は、第1の実施形態に係る合成ガス製造システムの一例を示すブロック図である。図1に示す合成ガス製造システム1は、COとHとを含む合成ガスの製造システムであって、逆シフト反応装置14と、分離装置20と、合流流路22と、混合流路24と、を備える。
【0026】
逆シフト反応装置14は、COおよびHを含む原料ガスに対して下記式(1)で表される逆シフト反応を生じさせ、COを含むガス(CO含有ガス)を生成させる装置である。本実施形態の逆シフト反応装置14では、原料ガスが連続的に導入され、生成したCO含有ガスは連続的に排出される。なお、フロー式の逆シフト反応装置に代えて、バッチ式の逆シフト反応装置を使用してもよい。
CO+H→CO+HO …(1)
【0027】
逆シフト反応は触媒によって進行が促進される反応(触媒反応)であり、逆シフト反応装置14には、原料ガスの流路に逆シフト反応に適した触媒が設けられている。本実施形態では、逆シフト反応装置14に設ける触媒として、Rh、Ba、K、Pt、Ag、Pd等をアルミナ(Al)に担持させたものや、Li、RhをNaY型ゼオライトに担持させたもの、Ptをチタニア(TiO)に担持させたもの等を使用することができる。逆シフト反応装置14に設けられる触媒は、副生成物としてメタンの生成が抑制されるものが好ましい。本実施形態では、逆シフト反応装置14におけるメタンの生成は考慮しない。
【0028】
また、逆シフト反応は吸熱反応であり、温度が高いほど進行しやすいため、逆シフト反応装置14には、原料ガスを加熱する加熱装置(不図示)が設けられている。逆シフト反応装置14では、加熱装置によって原料ガスを400~800℃に加熱することが好ましい。
【0029】
原料ガスの全量について逆シフト反応が進行する場合、式(1)に基づく化学量論では原料ガスのH/CO比は1となる。しかし、逆シフト反応装置14において、原料ガスの全量について逆シフト反応を進行させることは困難であり、逆シフト反応装置14で生成したCO含有ガスには、逆シフト反応で生成するCOおよびHO以外に未反応の原料ガスが含まれる。そのため、原料ガスのH/CO比を、逆シフト反応装置14の特性、または使用する触媒の特性に応じて調整し、1よりも大きい値としても、1よりも小さい値としてもよい。逆シフト反応装置14で生成したCO含有ガスに含まれる未反応の原料ガスの組成および量は、使用する逆シフト反応装置14、触媒または原料ガスのH/CO比によって異なる。
【0030】
逆シフト反応装置14から排出されるCO含有ガスは、400~800℃と高温であり、CO含有ガスに含まれるHOは、水蒸気すなわち気体の状態でCO含有ガスに含まれる。
【0031】
逆シフト反応装置14への原料ガスの導入方法は特に限定されないが、例えば、図1に示すように、CO貯蔵部11から排出されるCOおよびH貯蔵部12から排出されるHを混合した原料ガスを、原料ガス流路13を通じて逆シフト反応装置14に供給することができる。
【0032】
CO貯蔵部11は、COを貯蔵可能な容器とCOの排出流量を調整可能な流量調整部とを有し、貯蔵したCOガスを任意の流量で排出することが可能である。CO貯蔵部11に貯蔵されるCOの生成方法は問わないが、本実施形態では、CO排出量の削減のため、例えば製鉄所や火力発電所のようにCO発生源を有する設備において回収されたCOを使用することが好ましい。COの回収は、例えば吸着方式、吸収方式、膜分離方式等の回収方法によって行うことができる。
【0033】
貯蔵部12は、Hを貯蔵可能な容器とHの排出流量を調整可能な流量調整部とを有し、貯蔵したHガスを任意の流量で排出することが可能である。また、貯蔵されるHの生成方法は問わず、例えば水電解式水素発生装置によって製造されたHを使用することができる。本実施形態では、CO排出量の削減のため、水電解式水素発生装置において、太陽光、風力等の再生可能エネルギー由来の電力を利用することが好ましい。
【0034】
原料ガス流路13では、CO貯蔵部11から排出されるCOおよびH貯蔵部12から排出されるHが混合され、COおよびHを含む原料ガスが流通する。原料ガスの流量および原料ガスのCOおよびHの含有量の調整は、CO貯蔵部11から排出されるCOの流量およびH貯蔵部12から排出されるHの流量を調整することにより行うことができる。
【0035】
逆シフト反応装置14から排出されるCO含有ガスは、常温~80℃に冷却されてから分離装置20に導入される。これは、分離装置20の特性上、分離装置20に導入されるCO含有ガスは常温~80℃としなければならないためである。CO含有ガスを冷却することにより、CO含有ガスに含まれる水蒸気の大部分は、凝縮して水となってCO含有ガスから分離される。そのため、冷却されたCO含有ガスには、逆シフト反応により得られたCOと、未反応の原料ガスとが含まれる。
【0036】
逆シフト反応装置14から排出されるCO含有ガスは、配管内で自然冷却してもよいが、図1に示すように冷却装置16で冷却することが好ましい。冷却装置16は、例えばシェルアンドチューブ型やプレート積層型の冷却装置を使用することができる。冷却方式は、空冷式、水冷式のいずれの方式も用いることができるが、効率の観点からは水冷式が望ましい。
【0037】
分離装置20は、冷却されたCO含有ガスをPSA法によりCOとPSAオフガスとに分離するCO-PSA装置20aと、CO-PSA装置20aによってCO含有ガスから分離されたPSAオフガスを収容するPSAオフガスホルダー20bと、CO-PSA装置20aによってCO含有ガスから分離されたCOを混合流路24に誘導するCO誘導路20cと、を有する。分離装置20によって、逆シフト反応装置14で生成したCOを含むガスを、COの含有量の少ない高純度のCOとPSAオフガスとに分離することができる。
【0038】
本実施形態に係る分離装置20では、COの回収率は例えば約80%である。これは、CO含有ガスに含まれるCOの一部がCO吸着物質に吸着されないためである。COの回収率は、CO-PSA装置20aに設けられた吸着剤によって異なる。COの回収率とは、CO-PSA装置20aに導入されたCO含有ガスに含まれるCO量(COin[mol/h]または[Nm/h])に対する、CO-PSA装置20aからCO誘導路20cに排出されたCO量(COout[mol/h]または[Nm/h])の割合(COout/COin)である。CO誘導路20cに排出されなかったCOの残部はPSAオフガスに含まれる。
【0039】
CO-PSA装置20aは、冷却装置16に対して並列に複数設けられており、本実施形態では4個のCO-PSA装置20aが設けられている。CO-PSA装置20aは、逆シフト反応装置14で逆シフト反応を開始した後、CO含有ガスが冷却装置16から排出され始めてから動作を開始する。
【0040】
CO-PSA装置20aは、CO吸着物質を含む吸着剤を備えている。CO吸着物質とは、COを選択的に吸着する物質であり、COの圧力が高いほど、COの吸着量が増加する。HおよびCOは、CO吸着物質には吸着されない。本実施形態では、CO吸着物質として、例えば1価の銅(Cu)をアルミナ(Al)または高分子多孔質材に担持させたもの等を使用することができる。
【0041】
CO-PSA装置20aを用いたPSA法について説明する。冷却装置16で冷却されたCO含有ガスは、大気圧よりも加圧された状態でCO-PSA装置20aに導入される。このときのCO-PSA装置20aに導入されるCO含有ガスの圧力は吸着剤およびCO含有ガスの組成に応じて定めることができ、0.2~1.0MPaが好ましい。
【0042】
CO-PSA装置20aに導入されたCO含有ガスに含まれるCOの約80%はCO吸着物質に吸着される。CO含有ガスに含まれるCO以外のガスおよびCO吸着物質に吸着されなかったCOは、PSAオフガスとしてCO-PSA装置20aから排出され、PSAオフガスホルダー20bに貯留される。加圧されたCO含有ガスが導入されている間、CO誘導路20cは閉じられており、CO誘導路20cにはPSAオフガスは侵入しない。加圧されたCO含有ガスの導入時間はCO-PSA装置20aの容量、使用される吸着剤の種類および量等に応じて定めることができる。
【0043】
CO吸着物質にCOが十分に吸着されると、CO-PSA装置20aへのCO含有ガスの導入を停止し、CO-PSA装置20aに設けられた真空ポンプによってCO-PSA装置20a内部の圧力を降下させ、CO吸着物質からCOを脱着させる。これにより、COの含有量の少ない高純度のCOを得ることができる。脱着したCOは、例えばCOの含有量が99体積%以上である。脱着した高純度のCOは、CO誘導路20cに排出される。CO-PSA装置20a内部の圧力を降下させている間、PSAオフガスホルダー20bは閉じられており、脱着したCOはPSAオフガスホルダー20bには流入しない。CO-PSA装置20a内部の圧力を降下させる時間は、CO-PSA装置20aの容量、使用される吸着剤の種類および量等に応じて定めることができる。
【0044】
このように、PSA法によれば冷却されたCO含有ガスをPSAオフガスと高純度のCOとに分離することができる。また、これらの操作を複数のCO-PSA装置20aを連携して実施し、常時少なくとも1つのCO-PSA装置20aにCO含有ガスを導入している状態とすることにより、分離装置20によって連続的にCO含有ガスをPSAオフガスと高純度のCOとに分離することができる。
【0045】
PSAオフガスホルダー20bに貯留されたPSAオフガスは、合流流路22を通じて原料ガス流路13に導入され、原料ガスとともに逆シフト反応装置14に導入される。PSAオフガスには分離装置20によって高純度のCOに分離されなかったCOも含まれるため、合流流路22により、PSAオフガスに含まれるCOをシステム外に排出することなく再度分離装置20に供することができる。そのため、合成ガスを効率よく製造することができる。
【0046】
合流流路22は、分離装置20のPSAオフガスホルダー20bと、原料ガス流路13とを接続するように設けられている配管である。合流流路22には、PSAオフガスの流量を調整するためのバルブ22a(流量調整装置)が設けられている。バルブ22aによって、原料ガスの組成および流量、PSAオフガスの組成、逆シフト反応装置14の処理能力等に応じて原料ガス流路13に導入されるPSAオフガスの流量を調整することができる。これにより、逆シフト反応装置14において逆シフト反応を効率よく進行させることができる。また、PSAオフガスの組成および流量に応じて、CO貯蔵部11から排出されるCOの流量およびH貯蔵部12から排出されるHの流量を調整してもよい。
【0047】
一方、CO誘導路20cに排出された高純度のCOは、混合流路24においてH貯蔵部12から供給されるHと混合される。これにより、本実施形態に係る合成ガス製造システムによれば、COの含有量の少ない合成ガスを製造することができる。
【0048】
混合流路24は、分離装置20のCO誘導路20cと、H貯蔵部12から排出されたHを流通させる配管12aとを接続する配管である。H貯蔵部12から混合流路24に供給されるHの流量を、混合流路24に供給されるCOの流量に応じて調整することにより、用途に応じた任意の組成(H/CO比)の合成ガスを得ることができる。得られた合成ガスは、用途に応じた後段のプロセスに送出される。混合流路24に供給されるHは、H貯蔵部12以外のH源から供給してもよい。
【0049】
〈合成ガスの製造方法〉
本実施形態に係る合成ガス製造方法は、COとHとを含む合成ガスの製造方法であって、COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応工程と、前記逆シフト反応工程で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離工程と、前記分離工程で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応工程に供される前記原料ガスに合流させる合流工程と、前記分離工程で分離された前記COに、Hを混合させる混合工程と、を備える。
【0050】
本実施形態に係る合成ガス製造方法は、COとHとを含む合成ガスの製造方法であり、例えば、図1に示す合成ガス製造システム10により、実施することができる。
【0051】
本実施形態に係る合成ガス製造方法は、逆シフト反応工程と、分離工程と、合流工程と、混合工程と、を備える。
【0052】
逆シフト反応工程は、COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる工程であり、図1に示す合成ガス製造システムでは、逆シフト反応装置14で行われる。
【0053】
分離工程は、逆シフト反応工程で生成したガスを、PSA法によりCOとPSAオフガスとに分離する工程であり、図1に示す合成ガス製造システムでは、分離装置20で行われる。
【0054】
合流工程は、分離工程で分離されたPSAオフガスを、逆シフト反応工程に供される原料ガスに合流させる工程であり、図1に示す合成ガス製造システムでは、原料ガス流路13を流通する原料ガスに合流流路22からPSAオフガスを合流させることにより行われる。
【0055】
混合工程は、分離工程で分離されたCOに、Hを混合させる工程であり、図1に示す合成ガス製造システムでは、分離装置20でCO含有ガスから分離され、CO誘導路20cに排出されたCOを、混合流路24においてH貯蔵部12から供給されるHと混合することにより行われる。
【0056】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0057】
図2は、第2の実施形態に係る合成ガス製造システムの一例を示すブロック図である。本実施形態に係る合成ガス製造システム30は、分離装置20で分離されたPSAオフガスの一部を合成ガス製造システム30外に排出するための排出流路31を有すること以外は、第1の実施形態に係る合成ガス製造システムと同様の構成であり、同じ符号を付し、説明を省略する。
【0058】
排出流路31は、PSAオフガスホルダー20bからPSAオフガスを原料ガス流路13に導入するための合流流路22から分岐して設けられている。排出流路31には、開閉可能なバルブ31aが設けられている。
【0059】
逆シフト反応装置14では、使用する触媒によっては逆シフト反応の副生成物としてメタン(CH)が生成する可能性がある。第1の実施形態では、逆シフト反応装置14でのCHの生成を考慮しなかったが、第2の実施形態では、逆シフト反応装置14でのCHの生成を考慮する。
【0060】
逆シフト反応装置14でCHが生成する場合、PSAオフガスにCHが含まれる。CHが含まれるPSAオフガスを原料ガスとともに逆シフト反応装置14に導入し続けると、PSAオフガスのCH含有量が次第に増加する。CHは逆シフト反応に寄与しない不純物であるため、逆シフト反応を効率よく進行させ、この反応における目的成分であるCOを効率的に得るにはPSAオフガスのCH含有量はできるだけ少ないことが好ましい。
【0061】
本実施形態では、PSAオフガスを排出流路31から合成ガス製造システム30外に排出することにより、PSAオフガスのCH含有量が過剰に多くなることを抑制することができる。PSAオフガスの排出は、合成ガス製造システム30を所定時間操業した場合、合成ガス製造システム30で所定量の合成ガスを製造した場合、PSAオフガスホルダー20bに導入されるPSAオフガスまたはPSAオフガスホルダー20bから排出されるPSAオフガスのCH含有量が所定値以上になった場合等、逆シフト反応装置14のCO製造効率に悪影響を及ぼすと想定される所定の条件を満たした場合に行うことができる。また、所定の条件を満たしていない場合でも、任意のタイミングでPSAオフガスの排出を行ってもよい。PSAオフガスのCH含有量は、例えばPSAオフガスの流路に設けられたセンサにより測定することができる。
【0062】
排出流路31から排出されるPSAオフガスは、HとCHを含み、熱量を有するため、そのまま燃料として利用してもよい。また、排出流路31から排出されるPSAオフガスは、COを含むため、CO貯蔵部11に貯蔵されるCOを回収するための回収装置(CO回収装置)に導入して、COと熱量を有するHおよびCHとに分離してもよい。CO回収装置で回収されたCOはCO貯蔵部11に貯蔵して原料ガスとして使用することができ、また、分離されたHおよびCHは燃料として利用することができる。
【0063】
[変形例]
なお、上記第1の実施形態および第2の実施形態では、分離装置20にCO-PSA装置20aで分離されたPSAオフガスを貯留するPSAオフガスホルダー20bを設け、合流流路22にバルブ22aを設けたが、PSAオフガスホルダー20bおよびバルブ22aの両方または一方は設けなくてもよい。ただし、PSAオフガスの逆シフト反応装置14への供給量の調整を容易とするため、PSAオフガスホルダー20bおよびバルブ22aを設けることが好ましい。
【0064】
[開示した技術のまとめ]
本明細書は、上述したように様々な態様の技術を開示しているが、そのうち主な技術を以下にまとめる。
【0065】
上述したように、本発明の一局面に係る合成ガス製造システムは、COとHとを含む合成ガスの製造システムであって、COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応装置と、前記逆シフト反応装置で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離装置と、前記分離装置で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応装置に導入される前記原料ガスに合流させる合流流路と、前記分離装置で分離された前記COに、Hを混合させる混合流路と、を備える。
【0066】
この構成によれば、COの含有量の少ない合成ガスを効率よく製造することができる。
【0067】
上記構成の合成ガス製造システムでは、前記合流流路が、前記原料ガスに合流させる前記PSAオフガスの流量を調整するための流量調整装置を有してもよい。
【0068】
この構成によれば、原料ガスに合流させるPSAオフガスの流量を調整することができ、逆シフト反応装置において逆シフト反応を効率よく進行させることができる。そのため、より効率よくCOの含有量の少ない合成ガスを製造することができる。
【0069】
上記構成の合成ガス製造システムは、前記分離装置で分離された前記PSAオフガスの一部を、前記合成ガス製造システム外に排出するための排出流路を有してもよい。
【0070】
この構成によれば、逆シフト反応装置において逆シフト反応の副生成物としてCHが生成する場合に、排出流路を通じてPSAオフガスを合成ガス製造システム外に適宜排出することができるため、PSAオフガスに含まれるCHの含有量が過剰に多くなることを抑制することができる。これにより、逆シフト反応装置において逆シフト反応を効率よく進行させることができ、より効率よくCOの含有量の少ない合成ガスを製造することができる。
【0071】
また、上述したように本発明の他の局面に係る合成ガスの製造方法は、OとHとを含む合成ガスの製造方法であって、COとHとを含む原料ガスから逆シフト反応によってCOを含むガスを生成させる逆シフト反応工程と、前記逆シフト反応工程で生成したガスを、圧力スイング吸着法(PSA法)によりCOとPSAオフガスとに分離する分離工程と、前記分離工程で分離された前記PSAオフガスを、前記逆シフト反応工程に供される前記原料ガスに合流させる合流工程と、前記分離工程で分離された前記COに、Hを混合させる混合工程と、を備える。
【0072】
この構成によれば、COの含有量の少ない合成ガスを効率よく製造することができる。
【符号の説明】
【0073】
10、30 合成ガス製造システム
14 逆シフト反応装置
20 分離装置
22 合流流路
22a バルブ(流量調整装置)
24 混合流路
31 排出流路
図1
図2