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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180575
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】縦型洗濯機用の外槽及び縦型洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/08 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
D06F39/08 311D
D06F39/08 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093976
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弓恵
(72)【発明者】
【氏名】間宮 春夫
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA11
3B166AE01
3B166AE02
3B166AE04
3B166AE05
3B166BA42
3B166CA01
3B166CA11
3B166CB01
3B166CB02
3B166CB04
3B166CB11
3B166CB12
3B166CB13
3B166DC03
3B166DC45
3B166DC47
3B166DE02
3B166DE04
3B166DF01
3B166GA12
3B166GA22
3B166GA27
3B166HA32
(57)【要約】
【課題】洗濯槽の回転によって洗濯水を上昇させて洗濯槽内に散水する洗濯方法を行う場合に、上昇した洗濯水が外槽の溢水口から溢水し難いように改良された縦型洗濯機用の外槽を提供すること。
【解決手段】外槽3の上縁32よりも一定寸法低い位置に設けられ、突出部31の内側に形成された溢水縁33を有する。溢水縁33には、円筒状の側壁3Aの内周面に沿って予め定める一方向A1へ流れる洗濯水の流入を防ぐように、縦型のルーバー構造35が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の側壁及び当該側壁の底部を塞ぐ底壁を有し、洗濯水を溜めることのできる外槽であって、
前記外槽の上端部に形成され、外方へ膨らまされた突出部と、
前記外槽の上縁よりも一定寸法低い位置に設けられ、前記突出部の内側に形成された溢水縁と、
前記突出部及び前記溢水縁により区画され、前記溢水縁から溢れ出る洗濯水を受け入れる溢水口と、
前記溢水口へ流入する洗濯水を排水路へ導く溢水路とを有し、
前記溢水縁には、前記円筒状の側壁の内周面に沿って予め定める一方向へ流れる洗濯水の流入を防ぐように、縦型のルーバー構造が設けられていることを特徴とする、縦型洗濯機用の外槽。
【請求項2】
前記縦型のルーバー構造は、洗濯水の流れ方向に内方を向いて傾斜した複数枚の羽板を含むことを特徴とする、請求項1に記載の外槽。
【請求項3】
洗濯水の流れ方向に見て、前記各羽板の下流側端辺には、外方へ向いた返し板が備えられていることを特徴とする、請求項2に記載の外槽。
【請求項4】
前記溢水口には、前記溢水路を形成する溢水ホースの上端開口が、洗濯水の流れ方向の上流側を向いて配置されていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の外槽。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の外槽と、
前記外槽内に配置されて洗濯物を収容する洗濯槽であって、有底円筒状で上部に開口を備え、前記外槽との間で水を行き来させるための貫通孔を有し、所定の速度で一方向に回転されることにより、前記外槽の内周面と洗濯槽の外周面との隙間に溜まっている洗濯水を上昇させて洗濯槽の上部開口から洗濯槽内へ散水する洗濯槽と、
前記洗濯槽を前記所定の速度で前記一方向に回転させるための駆動部及び制御部と、
を含むことを特徴とする、縦型洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型洗濯機に関し、特に、縦型洗濯機用の外槽に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、洗濯槽の回転によって洗濯水を上昇させて洗濯槽内に散水して洗濯処理を行う縦型洗濯機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-5794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている槽回転処理工程を利用した洗濯槽上部からの散水は、洗い工程の最初に行うことにより、濃縮された洗剤液が洗濯物に降りかかるため、洗浄性能の向上を期待できる。
【0005】
しかし、洗濯槽を収容する外槽には、外槽上端部に溢水口が備えられている。そのため、洗濯槽の回転により上昇した洗濯水は、その一部は上述のように洗濯槽上部から散水されるが、別の一部は、外槽に設けられた溢水口から流出してしまうという課題がある。
【0006】
このため、槽回転処理工程を利用して洗濯槽上部からの散水を行う洗濯方法は、洗い工程の最後など、洗濯水が流出しても問題のないタイミングでしか実施することができず、効果的に利用できていないのが現状である。
【0007】
本発明は、係る背景の下でなされたもので、洗濯槽の回転によって洗濯水を上昇させて洗濯槽内に散水する洗濯方法を行う場合に、上昇した洗濯水が外槽の溢水口から溢水し難いように改良された縦型洗濯機用の外槽を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、円筒状の側壁及び当該側壁の底部を塞ぐ底壁を有し、洗濯水を溜めることのできる外槽であって、前記外槽の上端部に形成され、外方へ膨らまされた突出部と、前記外槽の上縁よりも一定寸法低い位置に設けられ、前記突出部の内側に形成された溢水縁と、前記突出部及び前記溢水縁により区画され、前記溢水縁から溢れ出る洗濯水を受け入れる溢水口と、前記溢水口へ流入する洗濯水を排水路へ導く溢水路とを有し、前記溢水縁には、前記円筒状の側壁の内周面に沿って予め定める一方向へ流れる洗濯水の流入を防ぐように、縦型のルーバー構造が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明は、前記縦型のルーバー構造は、洗濯水の流れ方向に内方を向いて傾斜した複数枚の羽板を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明は、洗濯水の流れ方向に見て、前記各羽板の下流側端辺には、外方へ向いた返し板が備えられていることを特徴とする。
【0011】
本発明は、前記溢水口には、前記溢水路を形成する溢水ホースの上端開口が、洗濯水の流れ方向の上流側を向いて配置されていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、又、前記外槽と、前記外槽内に配置されて洗濯物を収容する洗濯槽であって、有底円筒状で上部に開口を備え、前記外槽との間で水を行き来させるための貫通孔を有し、所定の速度で一方向に回転されることにより、前記外槽の内周面と洗濯槽の外周面との隙間に溜まっている洗濯水を上昇させて洗濯槽の上部開口から洗濯槽内へ散水する洗濯槽と、前記洗濯槽を前記所定の速度で前記一方向に回転させるための駆動部及び制御部と、を含むことを特徴とする縦型洗濯機である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、外槽に形成された溢水縁には、外槽の内周面に沿って予め定める一方向へ流れる洗濯水が溢水口へ流入するのを防げる縦型のルーバー構造が設けられている。洗濯槽の回転によって洗濯水を上昇させる場合、洗濯水の水面は外槽の内周面に沿って洗濯槽の回転方向と同じ一方向へ流れながら上昇する。このため、一方向へ流れる洗濯水は、縦型のルーバー構造によって、溢水口へ流入するのを防げられる。
【0014】
より具体的には、縦型のルーバー構造の有する羽板は、洗濯水の流れ方向に内方を向いて傾斜している。よって、溢水縁の上方を外槽の内周面沿いに一方向へ流れる洗濯水は、溢水口へ流れ込もうとしても、羽板によって阻止され、外槽の内方へ向けて流れ方向が変えられる。これにより、溢水口へ流入する洗濯水が減り、又は、流入をほぼ防げる。
【0015】
本発明によれば、縦型のルーバー構造は、複数枚の羽板を含むので、いわゆるよろい戸によって、一方向へ流れる洗濯水が溢水口へ流入するのを効果的に防ぐことができる。
【0016】
本発明によれば、羽板の下流側端辺に返し板を設けることにより、一方向へ流れる洗濯水が溢水口へ流入するのを、より効果的に防ぐことができる。
【0017】
本発明によれば、溢水口内に溢水ホースの上端開口を配置し、しかも、溢水ホースの上端開口を洗濯水の流れ方向の上流側へ向けることで、一方向へ流れる洗濯水は、羽板によって溢水口へ流入することが防止され、さらに、たとえ溢水口へ流入しても、溢水ホースが流入した洗濯水を受け入れる方向を向いていないので、溢水して排出される洗濯水をより少なくすることができる。
【0018】
本発明によれば、洗濯槽を回転させて洗濯水を上昇させ、洗濯槽の上部開口から洗濯水を散水する処理を適切なタイミングで効率的に行え、かつ、洗濯水の溢水による流出を抑制することができる縦型洗濯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る縦型洗濯機の模式的な縦断面図である。
図2】一実施例に係る縦型洗濯機用の外槽の右側面図である。
図3図2に示す外槽の一点鎖線で囲んだA部分を内方側から見た斜視図である。
図4】第1の実施例に係る溢水口の構成を説明する図である。
図5】第2の実施例に係る溢水口の構成を説明する図である。
図6】第3の実施例に係る溢水口の構成を説明する図である。
図7】一実施形態に係る縦型洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
図8】縦型洗濯機において実行される洗濯運転の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る縦型洗濯機1の模式的な縦断面図である。縦型洗濯機1は、筐体2と、外槽3と、洗濯槽4と、回転翼の一例としてのパルセータ5と、駆動手段の一例としてのモータ6と、切替手段の一例としてのクラッチ7とを含む。
【0021】
筐体2は、たとえば金属製であり、ボックス状に形成されている。筐体2の上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口2Bが形成されている。上面2Aには、開口2Bを開閉する扉10が設けられている。上面2Aにおける開口2Bの周囲には、液晶操作パネルなどで構成された表示操作部11が設けられていてもよい。縦型洗濯機1の使用者は、表示操作部11を操作することによって、縦型洗濯機1で実行される洗濯運転についての運転条件を選択したり、縦型洗濯機1に対して洗濯運転の開始や停止などを指示したりすることができる。表示操作部11には、使用者向けの情報が表示される。
【0022】
外槽3は、たとえば樹脂製であり、有底円筒状に形成されている。外槽3は、上下方向に沿って配置された略円筒状の側壁3Aと、側壁3Aの中空部分を下方から塞いだ底壁3Bとを有する。側壁3Aの上端縁には、側壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cが取り付けられている。環状壁3Cの内側には、側壁3Aの中空部分に上方から連通した出入口3Dが形成されている。出入口3Dは、筐体2の開口2Bに対して下方から対向して連通した状態にある。環状壁3Cには、出入口3Dを開閉する扉12が設けられている。環状壁3Cの下面には、出入口3Dを縁取りつつ斜め下方へ傾斜したガイド面3Eが設けられていてもよい。底壁3Bは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通した貫通孔3Fが形成されている。
【0023】
この底壁3Bの中心に形成された貫通孔3Fは、後述する支持軸17及び回転軸18を通すための孔である。貫通孔3Fに支持軸17及び回転軸18が嵌められ、貫通孔3Fは液密的に塞がれるので、外槽3の洗濯水が貫通孔3Fから漏れ出ることはない。
【0024】
外槽3の環状壁3Cには、水道水の蛇口につながった給水路13が上方から接続されている。給水路13の途中には、給水弁14が設けられている。給水弁14は、たとえば電磁弁によって構成されている。外槽3の底壁3Bには、排水路15が下方から接続されている。排水路15の途中には、排水弁16が設けられている。排水弁16は、たとえばトルクモータ(図示せず)によって開閉される弁であってもよい。排水弁16が閉じた状態で給水弁14が開くと、給水路13から外槽3内に給水されることによって、外槽3内に水が溜められる。給水弁14が閉じると、給水が停止する。排水弁16が開くと、外槽3内の水が排水路15から機外に排出される。
【0025】
洗濯槽4は、たとえば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物Qを収容することができる。洗濯槽4は、外槽3内に同軸状で配置されている。外槽3内に収容された状態の洗濯槽4は、その中心軸をなして上下方向に延びる軸線Jを中心として回転可能である。洗濯槽4は、上下方向に沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、円周壁4Aの中空部分を下方から塞いだ底壁4Bと、円周壁4Aの上端縁に沿って軸線J側へ張り出したリング状の環状壁4Cとを有する。
【0026】
環状壁4Cには、洗濯槽4が回転される際に、洗濯槽4の揺れを低下させるためのバランスリングが組み込まれていてもよい。
【0027】
円周壁4Aの内周面は、洗濯槽4の内周面である。円周壁4Aは、外槽3の側壁3Aによって取り囲まれた状態にある。底壁4Bは、洗濯槽4の下端に設けられている。環状壁4Cは、外槽3の環状壁3Cに対して下方から対向した状態にある。環状壁4Cの内側には、出入口4Dが形成されている。出入口4Dは、洗濯槽4の上端に位置し、円周壁4Aの中空部分を上方に露出させている。出入口4Dは、外槽3の出入口3Dに対して下方から対向して連通した状態にある。使用者は、開放された開口2B、出入口3Dおよび出入口4Dを介して、洗濯槽4に対して上方から洗濯物Qを出し入れする。
【0028】
洗濯槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、貫通穴4Eが複数個形成され、外槽3内の水は、貫通穴4Eを介して外槽3と洗濯槽4との間で行き来して、洗濯槽4内にも溜められる。そのため、外槽3内の水位と洗濯槽4内の水位とは、一致する。なお、貫通穴4Eは、円周壁4Aには設けず、底壁4Bだけに設けた構成であってもよい。
【0029】
洗濯槽4の底壁4Bは、円板状に形成され、外槽3の底壁3Bに対して上方に間隔を隔てて略平行に延びる。底壁4Bにおいて軸線Jと一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通した貫通孔4Fが形成されている。底壁4Bには、貫通孔4Fを取り囲みつつ軸線Jに沿って下方へ延び出た管状の支持軸17が設けられている。支持軸17は、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Fに挿通されて、支持軸17の下端部は、底壁3Bよりも下方に位置する。
【0030】
パルセータ5は、軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽4内において底壁4B上に配置されている。パルセータ5において洗濯槽4の出入口4Dを臨む上面には、放射状に配置された複数の羽根5Aが設けられている。パルセータ5には、その円中心から軸線Jに沿って下方へ延びる回転軸18が設けられている。回転軸18は、支持軸17の中空部分に挿通されて、回転軸18の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下方に位置する。
【0031】
モータ6は、インバータモータなどの電動モータである。モータ6は、筐体2内において、外槽3の下方に配置されている。モータ6は、軸線Jを中心として回転する出力軸19を有し、発生したトルクを出力軸19から出力する。
【0032】
クラッチ7は、支持軸17および回転軸18のそれぞれの下端部と、モータ6から上方に突出した出力軸19の上端部との間に介在されている。クラッチ7は、モータ6が出力軸19から出力するトルクを、支持軸17および回転軸18の一方または両方に対して選択的に伝達する。モータ6からのトルクが支持軸17に伝達されると、洗濯槽4が、モータ6のトルクを受けて軸線Jまわりに回転する。モータ6からのトルクが回転軸18に伝達されると、パルセータ5が、モータ6のトルクを受けて軸線Jまわりに回転する。クラッチ7としては、公知の伝達機構が用いられている。前述したトルクモータ(図示せず)がクラッチ7を作動させてもよい。
【0033】
外槽3の上端部には溢水口30が設けられている。溢水口30には溢水路としての溢水ホース50の上端が連通されている。溢水ホース50の下端は、排水路15における排水弁16の介装位置よりも下流側に連通されている。
【0034】
筺体2内には、後述する各種の制御動作を行うために、たとえばマイクロコンピュータ21を含む制御部21が備えられている。
【0035】
図2は、一実施例に係る縦型洗濯機用の外槽3の右側面図である。外槽3は、有底円筒状であり、略円筒状の側壁3Aと、側壁3Aを下方から塞いだ底壁3Bとを含む。底壁3Bには、外表面に、外槽3の強度を増加するリブ等が必要に応じて形成されていてもよい。
【0036】
外槽3の上端部には、側壁3Aの一部が外方へ膨らまされて形成された突出部31が設けられている。
【0037】
図3は、図2に示す外槽3の一点鎖線で囲んだA部分の斜視図である。すなわち、外槽3を、内側斜め上方から突出部31方向を見た状態の部分斜視図である。
【0038】
外槽3は、底壁3Bの内底面を基準位置として、側壁3Aの上縁32までの高さがH2とされている。突出部31は、外槽3の側壁3Aの上端部の一部が外方へ膨らんで形成されている。突出部31の内側には、側壁3Aの上縁32よりも一定寸法低い位置、つまり、基準位置からの高さがH1の位置に、溢水縁33が設けられている。ここに、H2-H1=3~10cm程度であってもよい。
【0039】
溢水縁33は、その両側が側壁3Aに繋がる。溢水口30は、突出部31の内面と溢水縁33とによって区画される。外槽3に水が溜められ、その水位がH1に達すると、高さH1を超える水は、溢水縁33から外方へ溢れ出て、溢水口30に流入する。溢水口30に流入した水は、溢水口30に上端が連結された溢水ホース50によって排水路15へと導かれる(図1を参照)。
【0040】
図2に示すように、溢水口30には、下方へ延びるホース連結部34が設けられてもよい。ホース連結部34は、突出部31の下方へ延び、外槽3の側壁3Aの外側に設けられている。
【0041】
本実施例に係る縦型洗濯機用の外槽3は、図3を参照して説明した溢水口30において、以下に説明するような工夫が施されている。
【0042】
[第1の実施例に係る溢水口]
図4は、第1の実施例に係る溢水口30の構成を説明する図である。図4は、図3と同様に、外槽3を内側斜め上方から突出部31方向を見た状態の部分斜視図である。
【0043】
図4に示す溢水口30は、縦型のルーバー構造35を備えている。縦型のルーバー構造35は、縦方向に配列された複数枚の羽板36を含む。各羽板36は、溢水縁33に沿って配列され、溢水縁33から上方へ立ち上がっている。各羽板36は、側壁3Aの内面に沿って洗濯水の流れる流れ方向A1、換言すれば、外槽3内に設けられた洗濯槽4の回転方向A1に見て、外槽3の内方を向くように傾斜されている。各羽板36は、羽板同士の間隔が等しくなるように配列されているのが望ましい。
【0044】
複数枚の羽板36を溢水縁33に沿って設けたことにより、側壁3Aの内周面に沿って一方向A1へ流れる洗濯水が溢水縁33を超えて溢水口30へと流入するのを防ぐことができる。つまり、一方向A1へ流れる洗濯水は、羽板36に当たって外槽3の内方へ導かれる。よって洗濯水は、羽板36と羽板36との隙間から溢水口30へと流入し難くなる。
【0045】
[第2の実施例に係る溢水口]
図5は、第2の実施例に係る溢水口30の構成を説明する図である。図5も、図3及び図4と同様に、外槽3を内側斜め上方から突出部31の方向を見た状態の部分斜視図である。
【0046】
図5に示す溢水口30は、溢水縁33に沿って配置され、溢水縁から上方へ立ち上がる羽板36を有している。羽板36は、側壁3Aの内面に沿って洗濯水の流れる方向A1、換言すれば、外槽3内に設けられた洗濯槽4の回転方向A1に見て、外槽3の内方を向くように傾斜されている。よって、側壁3Aの内周面に沿って一方向A1へ流れる洗濯水が溢水縁33を超えて溢水口30へと流入するのを防ぐことができる。
【0047】
また、洗濯水の流れる方向A1に見て、羽板36の下端辺には、外槽3の外方に向かって折り返された返し板37が備えられている。
【0048】
羽板36の下端辺に返し板37を設けることにより、洗濯槽4の回転に伴い外槽3の内周面に沿って上昇してきた洗濯水が溢水縁33から溢水口30へ流入するのを低減することができる。
【0049】
なお、図5では、羽板36を1枚だけ設けた構成を示したが、羽板36は、図4に示す実施例と同様に、複数板の羽板36が溢水縁33に沿って配列された構成であってもよい。その場合、各羽板36の下端辺に、それぞれ、返し板37が設けられていればよい。
【0050】
[第3の実施例に係る溢水口]
図6は、第3の実施例に係る溢水口30の構成を説明する図である。図6も、図3図5と同様に、外槽3を内側斜め上方から突出部31の方向を見た状態の部分斜視図である。図6は、図5に比べて、より上方から溢水口30を覗いた状態として表わされている。
【0051】
図6に示す第3の実施例に係る溢水口30は、基本的には第5図を参照して説明した第2の実施例に係る溢水口30と同様の構成である。異なる点は、溢水口30内へ、溢水口30に連設される溢水ホ-ス50の上端部51が進入しており、かつ、溢水ホース50の上端部51に形成された入口開口52が、溢水口30内で、洗濯水の流れる方向A1に見て、上流側を臨んでいることである。
【0052】
係る構成によれば、図5を参照して説明した第2の実施例に係る溢水口30と同様に、羽板36によって、側壁3Aの内周面に沿って一方向A1へ流れる洗濯水が溢水縁33を超えて溢水口30へ流入するのを防ぐことができる。加えて、羽板36の下流端に返し板37を設けることにより、洗濯槽4の回転に伴い外槽3の内周面に沿って上昇してきた洗濯水が溢水縁33から溢水口30へ流入するのを低減することができる。
【0053】
さらに、溢水口30内には、溢水ホース50の上端部51が伸び上がっており、かつ、その入口開口52は溢水口30内で、洗濯水の流れる方向A1に見て、上流側を臨む。よって、溢水ホース50の入口開口52へは、洗濯水が入り難く、洗濯水の流出をより低減することができる。
【0054】
なお、図6に示す実施例においても、羽板36は、図4に示す実施例と同様に、複数枚の羽板36が溢水縁33に沿って配列された構成であってもよい。また、その場合に、各羽板36に、返し板37が設けられた構成としてもよい。
【0055】
図7は、縦型洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。縦型洗濯機1は、制御部21としてのマイクロコンピュータ21を含む。マイクロコンピュータ21は、たとえば、CPU22と、ROMやRAMなどのメモリ23と、計時用のタイマ24とを含み、筐体2内に内蔵されている(図1参照)。
【0056】
前述したモータ6、クラッチ7、給水弁14及び排水弁16のそれぞれは、たとえば駆動回路25を介してマイクロコンピュータ21に対して電気的に接続され、前述した表示操作部11もマイクロコンピュータ21に対して電気的に接続されている。マイクロコンピュータ21は、モータ6をONにして駆動させたり、OFFにして停止させたりする。マイクロコンピュータ21は、モータ6の回転方向を制御することもできる。そのため、モータ6は、正転したり逆転したりすることができる。マイクロコンピュータ21は、クラッチ7を制御することによって、モータ6のトルクの伝達先を洗濯槽4及びパルセータ5の一方または両方へと切り替える。マイクロコンピュータ21は、給水弁14及び排水弁16の開閉を制御する。使用者が表示操作部11を操作して運転条件などについて選択すると、マイクロコンピュータ21は、その選択を受け付ける。マイクロコンピュータ21は、表示操作部11の表示内容を制御する。
【0057】
縦型洗濯機1は、マイクロコンピュータ21に対して電気的に接続されたブザー26、回転数読取装置27及び水位検出部28をさらに含む。マイクロコンピュータ21は、所定の音をブザー26で発生させることによって、洗濯運転の開始や終了などを使用者に知らせる。
【0058】
回転数読取装置27は、モータ6の回転数、厳密には、モータ6における出力軸19の回転数を読み取る装置であり、たとえばホールICで構成される。回転数読取装置27が読み取った回転数は、リアルタイムでマイクロコンピュータ21に入力される。マイクロコンピュータ21は、入力された回転数に基いて、モータ6に印加する電圧のデューティ比を制御することによって、所望の回転数で回転するようにモータ6を制御する。なお、洗濯槽4及びパルセータ5のそれぞれの回転数は、モータ6の回転数と同じであってもよいし、クラッチ7での減速比などの所定の定数をモータ6の回転数に乗じて得られる値であってもよい。
【0059】
水位検出部28は、外槽3内の水位つまり洗濯槽4内の水位を検出する水位センサである。水位検出部28の一例として、外槽3内の圧力に基いて洗濯槽4内の水位を検出する圧力式水位センサを採用できる。
【0060】
マイクロコンピュータ21は、モータ6、クラッチ7、給水弁14及び排水弁16の動作を制御することによって、洗濯運転を実行する。洗濯運転は、洗濯物Qを洗う洗い工程と、洗い工程後に洗濯物Qをすすぐすすぎ工程と、すすぎ工程の後に洗濯槽4を回転させて洗濯物Qを脱水する脱水工程とを有する。なお、縦型洗濯機1は、脱水工程の後に洗濯物Qを乾燥させる乾燥工程も実行する洗濯乾燥機であってもよい。この実施形態では、すすぎ工程が2回実行され、1回目のすすぎ工程を第1すすぎ工程といい、2回目のすすぎ工程を第2すすぎ工程という。
【0061】
使用者が洗濯物Qを洗濯槽4内に投入して洗濯運転の開始を指示すると、マイクロコンピュータ21は、洗濯運転を開始する。なお、使用者は、洗濯物Qの投入に前後して、洗剤を洗濯槽4内に投入してもよい。図8のフローチャートを参照して、まず、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4内の洗濯物Qの量、つまり負荷量を検出する(ステップS1)。負荷量検出の一例として、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4を低速で定常回転させたときのモータ6の回転数のばらつきによって負荷量を検出する。マイクロコンピュータ21は、これから給水して洗濯槽4内に溜める水の水位W(図1参照)を、先ほど検出した負荷量に基いて決定する。水位Wと負荷量との関係は、実験などで予め求められてメモリ23に記憶されている。
【0062】
そして、マイクロコンピュータ21は、洗い工程の一環の給水処理として、給水弁14を連続的に開いて洗濯槽4内に給水する(ステップS2)。排水弁16が閉じた状態にあるので、洗濯槽4内の水位が上昇する。洗濯槽4内の水位が、先ほど決定した水位Wまで上昇すると、マイクロコンピュータ21は、給水弁14を閉じることによって給水を停止する。これにより、給水処理が終了する。
【0063】
次に、洗濯槽4内に水が溜まった状態において、マイクロコンピュータ21は、攪拌処理を実行する。具体的には、マイクロコンピュータ21は、モータ6のトルクがパルセータ5に伝達されるように必要に応じてクラッチ7を切り替えてから、モータ6を駆動させることによってパルセータ5を回転させる(ステップS3)。パルセータ5は、同じ方向に連続回転してもよいが、この実施形態では、モータ6の間欠駆動によって、パルセータ5は、1秒~2秒の間隔で正転及び逆転を交互に繰り返すように反転する。攪拌処理では、洗濯槽4内の洗濯物Qが、反転するパルセータ5によって攪拌洗いされる。なお、ステップS2での給水処理中においてもパルセータ5が回転してもよく、これにより、洗剤が水に溶けやすくなる。水に溶けた洗剤によって洗濯物Qの汚れが分解される。所定の撹拌時間が経過すると、マイクロコンピュータ21は、攪拌処理を終了する。
【0064】
攪拌処理後に、マイクロコンピュータ21は、引き続き洗濯槽4内に水が溜まった状態において、ほぐし処理を実行する(ステップS4)。マイクロコンピュータ21は、ほぐし処理では、攪拌処理とは異なる条件でモータ6を間欠駆動させることによってパルセータ5を反転させる。この実施形態では、一例として、パルセータ5は、攪拌処理のときよりも短い0.5秒の間隔で正転および逆転を交互に繰り返すように、攪拌処理のときよりも高い回転数で反転する。これにより、洗濯槽4内で水に浸かった洗濯物Qが、反転するパルセータ5によってほぐされる。そのため、洗濯物Qの偏りが解消される。洗濯物Qの偏りとは、洗濯槽4内における洗濯物Qの偏在のことであり、アンバランスとも呼ばれる。所定のほぐし時間が経過すると、マイクロコンピュータ21は、ほぐし処理を終了する。
【0065】
ほぐし処理後に、マイクロコンピュータ21は、槽回転処理を実行する(ステップS5)。具体的には、まず、マイクロコンピュータ21は、モータ6のトルクが洗濯槽4に伝達されるようにクラッチ7を切り替える。次に、マイクロコンピュータ21は、洗濯槽4内の水位が所定の槽回転水位に到達した状態にあるか否かを確認する。槽回転水位とは、これから洗濯槽4が回転したときに外槽3内の水が出入口3Dから溢れない程度の水位であり、具体的には、洗濯槽4の内部高さの半分よりも高い。
【0066】
洗濯槽4内の水位が槽回転水位に到達した状態にあれば、マイクロコンピュータ21は、モータ6をONにして回転させる。これにより、槽回転水位まで水が溜まった洗濯槽4が、たとえば200rpmで高速回転する。すると、外槽3内に渦が発生し、水面Sは、軸線J側の中央部が低くなって外周部が高くなるようにU字状に湾曲する(図1の太い2点鎖線を参照)。
【0067】
これにより、外槽3内の水が、外槽3の周壁3Aと洗濯槽4の円周壁4Aとの間で上昇する。上昇した水は、外槽3の環状壁3Cの下面に並んで設けられたリブ3Gの間を通ってスパイラル状に旋回しながら落下し、洗濯槽4の出入口4Dから洗濯槽4内に浴びせられる(図1の太い2点鎖線を参照)。なお、外槽3の環状壁3Cのガイド面3Eが、リブ3Gの間を通る水を出入口4Dへ向けて下向きにガイドする(図1参照)。
【0068】
給水処理後の状態において水面からはみ出しそうな位に洗濯物Qの量が多くても、洗濯槽4の回転による上方からの散水により、出入口4D側の洗濯物Qも確実に洗濯できる。また、散水による洗濯であれば、洗濯物Qの傷みを低減できる。
【0069】
ステップS4のほぐし処理によって洗濯物Qの偏りが事前に解消された状態で槽回転処理が開始されるので、槽回転処理において、洗濯槽4の回転数は、散水が開始される回転数までスムーズに増加する。これにより、槽回転処理を円滑に実施できる。また、事前のほぐし処理によって槽回転処理中に洗濯槽4の異常振動が発生しにくいので、異常振動に応じて洗濯槽4の回転を中止して洗濯槽4内の洗濯物Qの偏りを解消する処理をなるべく実施せず済む。これにより、洗濯時間の短縮を図れる。
【0070】
上述の実施例の制御では、ステップS5として、槽回転処理を行っているが、槽回転処理は、給水処理(ステップS2)に続いて行ってもよい。又は、槽回転処理は、攪拌処理(ステップS3)の途中に行ってもよい。
【0071】
つまり、槽回転処理工程を利用した洗濯槽4の上部からの散水は、洗い工程の最初(あるいは最初の方)に行うことにより、濃縮された洗剤液が洗濯物Qに降りかかるため、洗浄性能の向上を期待できる。
【0072】
しかし、外槽3には、上縁よりも一定寸法低い位置に溢水口30が設けられているから、槽回転処理は、洗濯水を損失しても問題のないタイミングでしか実施されていなかった。
【0073】
ところが、本実施例では、外槽3の溢水口30を、上述したように工夫した構成とすることにより、槽回転処理を行っても、溢水口30から洗濯水が排水され難い構造とした。
【0074】
よって、本実施例においては、図4のステップS5に示す槽回転処理をステップS2の給水処理の次に行うようにすることも可能である。
【0075】
次に、図3を参照して、マイクロコンピュータ21は、洗い工程後の脱水工程、つまり中間脱水工程として、排水弁16を開いた状態で、洗濯槽4を高速回転させる(ステップS6)。この高速回転により生じた遠心力によって、洗濯槽4内の洗濯物が脱水される。脱水により洗濯物から染み出た水は、排水路15から機外に排出される。中間脱水工程の終盤において、マイクロコンピュータ21は、モータ6のトルクが洗濯槽4に伝わらないようにクラッチ7を切り換えてモータ6を停止するので、洗濯槽4が惰性回転する。中間脱水工程の最後に、マイクロコンピュータ21は、排水弁16を閉じる。
【0076】
次に、マイクロコンピュータ21は、第1すすぎ工程として、シャワーすすぎを実行する(ステップS7)。具体的には、マイクロコンピュータ21は、排水弁16を閉じた状態で、給水弁14を間欠的に開くことによって、洗濯槽4内にシャワー給水する。この状態で、マイクロコンピュータ21は、洗濯物Qの隅々にシャワーが行き渡るように洗濯槽4を、たとえば30rpmで低速回転させる。これにより、洗濯槽4内の洗濯物Qが満遍なくすすがれる。その後、マイクロコンピュータ21は、ステップS6と同じ中間脱水工程を実行する(ステップS8)。なお、各中間脱水工程を直後のすすぎ工程における一部の処理とみなしてもよい。
【0077】
次に、マイクロコンピュータ21は、第2すすぎ工程を実行する。第2すすぎ工程の内容は、洗剤が存在しない以外において、洗い工程と同じである。具体的には、マイクロコンピュータ21は、ステップS2と同様に給水してから(ステップS9)、ステップS3と同様に洗濯物Qを攪拌すすぎして(ステップS10)、ステップS4と同様に洗濯物Qをほぐしてから(ステップS11)、ステップS5と同様に槽回転処理を実行する(ステップS12)。
【0078】
なお、第2すすぎ工程においても、給水処理(ステップS9)の後に槽回転処理(ステップS12)を行うようにすることもできる。又は、攪拌処理(ステップS10)の途中に槽回転処理を行うようにすることもできる。
【0079】
最後に、マイクロコンピュータ21は、中間脱水工程と同様の最終脱水工程を実行する(ステップS13)。ただし、洗濯槽4の回転条件は、中間脱水工程と最終脱水工程とで異なってもよく、特に、最終脱水工程における洗濯槽4の最高回転数は、中間脱水工程における洗濯槽4の最高回転数よりも高い。最終脱水工程の終了により、洗濯運転が終了する。
【0080】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0081】
1 縦型洗濯機
3 外槽
4 洗濯槽
5 パルセータ
6 モータ
14 給水弁
21 マイクロコンピュータ
30 溢水口
31 突出部
32 上縁
33 溢水縁
34 ホース連結部
35 縦型のルーバー構造
36 羽板
37 返し板
50 溢水ホース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8