(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180578
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両用照明装置
(51)【国際特許分類】
B60Q 3/60 20170101AFI20231214BHJP
B60Q 3/76 20170101ALI20231214BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20231214BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20231214BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231214BHJP
F21W 106/00 20180101ALN20231214BHJP
【FI】
B60Q3/60
B60Q3/76
F21V5/00 320
F21V5/04 500
F21Y115:10
F21W106:00
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093981
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 英誠
【テーマコード(参考)】
3K040
【Fターム(参考)】
3K040AA02
3K040CA05
3K040DA03
3K040GA04
3K040GB01
3K040GC01
(57)【要約】
【課題】適切な性能を確保しつつ、コスト削減と薄型化が可能な車両用照明装置を実現する。
【解決手段】車両用照明装置1は、光源50と、前記光源50と対向する位置に設けられ、前記光源50から出射された光が入射し、前記入射した光を入射側とは反対側の車両の車室内に拡散して出射するレンズ20と、を備える。前記レンズ20は、前記光源50側に面する入射面であり、前記光源50側に凸形状の曲面である凸形光入射部72,76と前記光源50側に凹形状の曲面である凹形光入射部74,78とを有するレンズ受光面70と、前記導入された光の出射面であり、前記車室側に面するレンズ意匠面80と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源と対向する位置に設けられ、前記光源から出射された光が入射し、前記入射した光を入射側とは反対側の車両の車室内に拡散して出射するレンズと、
を備える車両用照明装置において、
前記レンズは、
前記光源側に面する入射面であり、前記光源側に凸形状の曲面である凸形光入射部と前記光源側に凹形状の曲面である凹形光入射部とを有するレンズ受光面と、
前記導入された光の出射面であり、前記車室側に面するレンズ意匠面と、
を有する、ことを特徴とする車両用照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用照明装置であって、
前記レンズ意匠面は凹凸のない平坦面である、ことを特徴とする車両用照明装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用照明装置であって、
前記光源から前記凸形光入射部までの距離は、前記光源から前記凹形光入射部までの距離よりも短い、ことを特徴とする車両用照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用照明装置においては、光源からの光を屈折させ拡散させるためのインナーレンズを設け、さらに凹凸のない意匠面を確保するためにアウターレンズを別の部品として設けたものが提案されている。また、レンズの反射光をより減らすことを目的として、レンズを複数設けた照明装置も提案されている。例えば、特許文献1には、平凸レンズと両凸レンズをそれぞれ設けた照明装置と、平凸レンズと両凸レンズの間にさらに両凸レンズを設けた照明装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、インナーレンズとアウターレンズを別々の部品として設けるなど、複数のレンズを照明装置に用いると、部品点数の増加に伴い、コストが余計に掛かる。また、レンズを複数設けることにより、光源が実装される基板からレンズの意匠面までが遠くなり、基板とレンズを繋ぐための連結部品が別途必要となることがある。これは、部品のコストが余計に掛かるだけではなく、連結部品のためにある程度のスペースを照明装置内に確保する必要が出てくるため、照明装置の薄型化を妨げることとなる。
【0005】
ここで、照明装置の薄型化のために、レンズ自体を薄くすることも考えられるが、レンズを薄くすると屈折のための光路が十分に取れなくなり、光が拡散し過ぎてしまう。その結果、照射目標エリアから外れてしまう光が増え、性能未達となる。すなわち、従来の照明装置の構成で単にレンズ自体を薄くしても効果的ではない。
【0006】
そこで、本明細書では、適切な性能を確保しつつ、コスト削減と薄型化が可能な車両用照明装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する車両用照明装置は、光源と、前記光源と対向する位置に設けられ、前記光源から出射された光が入射し、前記入射した光を入射側とは反対側の車両の車室内に拡散して出射するレンズと、を備える車両用照明装置において、前記レンズは、前記光源側に面する入射面であり、前記光源側に凸形状の曲面である凸形光入射部と前記光源側に凹形状の曲面である凹形光入射部とを有するレンズ受光面と、前記導入された光の出射面であり、前記車室側に面するレンズ意匠面と、を有する、ことを特徴とする。
【0008】
レンズ受光面をレンズ意匠面の裏面に設け、さらに、レンズ受光面には凸形光入射部と凹形光入射部を設けるため、複数のレンズは不要であり、上記の構成のレンズを一つ備えればよい。その結果、部品点数が削減され、コスト削減が可能となる。さらに、レンズが一つであれば、レンズを複数設ける場合に比べて、光源が実装される基板からレンズの意匠面までをより近づけることができるため、基板とレンズを繋ぐための連結部品が不要となる。その結果、部品点数の削減が可能となることに加えて、連結部品のためのスペースを余計に確保する必要がなくなり、照明装置の薄型化も可能となる。また、凹形状の曲面である凹形光入射部のみを有するレンズでは、光が拡散され過ぎてしまうが、レンズ受光面に凸形状の曲面である凸形光入射部も設けたことにより、光損失を低減することができる。その結果、適切な性能を確保することができる。
【0009】
また、前記レンズ意匠面は凹凸のない平坦面であってもよい。
【0010】
かかる構成とすることで、凹凸のない意匠面を確保するためのアウターレンズが不要となり、上記同様、部品点数が削減され、コスト削減が可能となる。
【0011】
また、前記光源から前記凸形光入射部までの距離は、前記光源から前記凹形光入射部までの距離よりも短くてもよい。
【0012】
かかる構成とすることで、凹形光入射部からレンズに入り拡散した光と凸形光入射部からレンズに入る光が干渉することを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書で開示の車両用照明装置によれば、適切な性能を確保しつつ、コスト削減と薄型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して車両用照明装置について説明する。なお、各図において、「Fr」、「Up」、「W」は、それぞれ、車両前方、上方、および、車幅方向を示している。
【0016】
図1Aは、車両用照明装置(以下、単に「照明装置」と表記する)1の底面図(すなわち、照明装置1を下側から見上げた図)である。照明装置1は、車室内の天井部に設置され、リーディングランプ、ドームランプ、ダウンライトなどの室内灯として用いられる。照明装置1の天井部への設置位置は、車幅方向の中央に限るものではない。例えば、照明装置1を車幅方向の中央より運転席側の天井部に設置した場合、
図1Aに示すような形状となる。すなわち、
図1Aに示すB部は、運転席側の後述するレンズ20周辺部を破線で囲んだものであり、C部は、助手席側のレンズ20周辺部を破線で囲んだものであるが、C部はB部に比べて傾斜している。これは、照明装置1を運転席側に設置した場合であっても、助手席側に運転席側と同様の適切な光を照射するためである。
【0017】
図1Bは、
図1AのA-A断面図である。
図1BのE部は、運転席側のレンズ20周辺部を破線で囲んだものである。また、
図2は、
図1Aの概略分解斜視図である。
図2に示すように、照明装置1は、意匠パネル10と、基板30と、裏カバー60と、を備える。意匠パネル10は、車室内に露出して配置されるパネルであり、
図1Bにも示すように、レンズ20がはめ込まれている。
図1Aからも明らかなように、照明装置1の操作者(例えば、運転席に座る乗員)が天井部の照明装置1を見上げたときには、車両前後方向に二つ並んだレンズ20を含む部分が視認できる。
【0018】
図2に示すように、基板30は、意匠パネル10と裏カバー60に挟み込まれて固定される。基板30には、タッチセンサ40と、光源としてのLED50とが実装されている。タッチセンサ40は、例えば、静電容量方式のタッチセンサであり、タッチセンサ40の表面に操作者の指先を近づけることで、LED50の点灯と消灯を切り替えるものである。裏カバー60は、車室内の天井部に固定され、意匠パネル10と基板30を保持する。
【0019】
図3は、
図1AのB部の斜視図であり、天井側から、すなわち、LED50側から見たレンズ20の外観を示している。詳細は後述するが、参照符号72,74は、レンズ20のLED50側に面する入射面(受光面)の一部である。参照符号90は、意匠パネル10の一部である樹脂部材であり、レンズ20を支持する。
【0020】
図4は、
図1AのD-D断面図である。
図4に示すように、レンズ20の一部であるレンズ受光面70は、凸形光入射部76と、凹形光入射部78とを有する。凸形光入射部76は、LED50側に凸形状となる曲面であり、凹形光入射部78は、LED50側に凹形状となる曲面である。凸形光入射部76と凹形光入射部78は、滑らかに繋がり、一つの曲面を構成する。
図5は、
図1BのE部を拡大した図である。
図6は、
図5に光線経路を付加して示した図である。
図6に示すように、LED50から発せられた光(参照符号100の二点鎖線)が、レンズ20を通って車室内に照射される。本明細書で開示する照明装置1は、例えば、運転席の手元を照らすなどの目的で使用するため、レンズ20で光を拡散させて、照射エリアを照らすことになる。以下、レンズ20の構成、および、各部材の役割について説明する。
【0021】
図4~6に示すように、レンズ20は、LED50と対向する位置に設けられ、LED50から出射された光を車室内に拡散して出射する。レンズ20は、LED50側に面する入射面であるレンズ受光面70と、レンズ20に導入された光の出射面であり、車室側に面するレンズ意匠面80と、を備える。すなわち、レンズ受光面70とレンズ意匠面80とは、別々の部品としてではなく、単一の部品として、一つのレンズ20に設けられている。
【0022】
図6に示すように、レンズ受光面70は、凸形光入射部72と、凹形光入射部74とを有する。凸形光入射部72は、LED50側に凸形状となる曲面であり、凹形光入射部74は、LED50側に凹形状となる曲面である。凸形光入射部72と凹形光入射部74は、滑らかに繋がり、一つの曲面を構成する。また、
図6に示すように、LED50から凸形光入射部72までの距離は、LED50から凹形光入射部74までの距離よりも短くなっている。
【0023】
図4~6を参照すると、車両前後方向の断面図である
図4と、車幅方向の断面図である
図5,6とでは、レンズ20の断面の形状が異なっている。これは、光を拡散させたい照射エリアによって、レンズ受光面70のうち、凸形光入射部72,76と凹形光入射部74,78のそれぞれが占める位置や割合、形状が変わるためである。一般に、凹形状の曲面の方が、凸形状の曲面よりも、光束を拡散させやすい。本実施形態では、レンズ20から出射される光の照射エリアの、車幅方向範囲を、前後方向範囲より広くしたいため、車幅方向断面における凹形光入射部74は、前後方向断面における凹形光入射部78より、レンズ受光面70全体に占める範囲を広くしている。一方、車幅方向断面における凸形光入射部72は、前後方向断面における凸形光入射部76に比べて、レンズ受光面70全体に占める範囲も狭く、傾斜も緩やかにしている。
【0024】
次に、
図4~6に示すように、レンズ意匠面80は、凹凸のない平坦面である。
図6に示すように、レンズ意匠面80は、凸形光入射部72または凹形光入射部74でレンズ20に導入された光が車室内に出射されるときに通る部分でもある。
【0025】
図6において、参照符号100で示す二点鎖線は、LED50から出射された光束の経路を示す。αは、凸形光入射部72を通ってレンズ意匠面80から出射した光束の拡散角度であり、βは、凹形光入射部74を通ってレンズ意匠面80から出射した光束の拡散角度である。また、
図6において、参照符号200で示す破線は、LED50から出射された光がレンズ20に入射するときの角度を表すために、レンズ20に入射する光束を延長して示した想像線である。γは、凸形光入射部72を通る光束の拡散角度であり、δは、凹形光入射部74を通る光束の拡散角度である。
図6において、凸形光入射部72を通る光束の出射時拡散角度αと入射時拡散角度γ、および、凹形光入射部74を通る光束の出射時拡散角度βと入射時拡散角度δを、それぞれ比べると、光束が凸形光入射部72と凹形光入射部74をそれぞれ通った後にレンズ20の外へ出射する場合の、角度の変化の度合いが分かる。凸形光入射部72に入射する光束の入射時拡散角度γは、凹形光入射部74に入射する光束の入射時拡散角度δよりも、明らかに大きい。一方、凸形光入射部72を通った後に出射する光束の出射時拡散角度αは、凹形光入射部74を通った後に出射する光束の出射時拡散角度βと、ほぼ同じである。このことから、凸形光入射部72のほうが、凹形光入射部74より、光の拡散をより抑制する、すなわち、拡散度合いが小さくなることが分かる。このように、凹形光入射部74のみを受光面として構成する場合に光の照射目標エリア外まで拡散してしまう光を、レンズ20に凸形光入射部72を設けることで、照射目標エリア内に留めることが可能となっている。
【0026】
次に、レンズ20を上記のような構成にした理由について説明する。従来は、光源からの光を屈折させ、所望の拡散角度に調整するためにインナーレンズを設け、さらに凹凸のない意匠面を確保するためにアウターレンズを別の部品として設けていた。すなわち、従来は、インナーレンズとアウターレンズの両方が必要だった。しかし、本実施形態によれば、
図5,6に示すように、レンズ受光面70には凸形光入射部72と凹形光入射部74の両方を設けるため、従来の照明装置のように、一つの光源に対して複数のレンズを重ねるように配置する必要はない。すなわち、本明細書で開示する照明装置1は、一つのLED50に対してレンズ20を一つ設けるだけでよい。その結果、部品点数が削減され、コスト削減が可能となる。さらに、レンズが一つであれば、レンズを複数設ける場合に比べて、基板30からレンズ意匠面80までをより近づけることができるため、基板30とレンズ20を繋ぐための連結部品が不要となる。その結果、部品点数の削減が可能となることに加えて、連結部品のためのスペースを余計に確保する必要がなくなり、照明装置1の薄型化も可能となる。なお、部品点数を削減したことで、軽量化が実現するが、軽量化により、ブラケットのない構成、すなわち、照明装置1全体が天井部に接する構成とすることができる。このことも照明装置1の薄型化に寄与している。
【0027】
また、凹形状の曲面のみを有するレンズでは、光が拡散され過ぎてしまう。この場合、本来、照射不要な箇所にまで光が照射される一方で、照射が必要な箇所における光量が不足するおそれがある。しかし、本明細書で開示する照明装置1においては、レンズ受光面70に凸形状の曲面である凸形光入射部72,76を設けたことにより、凹形光入射部74,78のみしかない構成に比べて、光損失を低減することができる。その結果、適切な性能を確保することができる。
【0028】
また、
図5,6に示すように、LED50から凸形光入射部72までの距離は、LED50から凹形光入射部74までの距離よりも短くなっている。例えば、この構成とは反対に、LED50から凹形光入射部74までの距離が、LED50から凸形光入射部72までの距離よりも短い場合、凹形光入射部74からレンズ20に入り拡散した光と凸形光入射部72からレンズ20に入る光が干渉することがある。しかし、本明細書で開示する照明装置1では、上記の構成とすることで、光の干渉を回避している。
【0029】
なお、これまでの説明は一例であり、少なくとも、レンズ20が、レンズ受光面70と、レンズ意匠面80と、を備え、レンズ受光面70が、LED50側に凸形状の曲面である凸形光入射部72,76と、LED50側に凹形状の曲面である凹形光入射部74,78とを有すればよい。したがって、その他のレンズ20の構成は、適宜、変更されてもよい。本実施形態では、運転席側と助手席側それぞれに、車両前後方向に二つ並んだレンズ20と、レンズ20にそれぞれ対向する二つのLED50と、を設けている。しかし、例えば、一つのLED50に対してレンズ20を二つ平行に配置してもよいし、一つのLED50に対してレンズ20を四つ等複数準備し、取り囲むように配置してもよい。すなわち、LED50とそれに対向する一以上のレンズ20について、その個数および配置は、光の照射目標エリアに応じて、適宜、調整可能である。また、本実施形態では、レンズ意匠面80は、凹凸のない平坦面としているが、レンズ意匠面80は平坦面に限らず、曲面や、凹凸を有する面であってもよい。また、レンズ20のレンズ受光面70の形状も、適宜、変更可能である。本実施形態では、LED50から凸形光入射部72までの距離は、LED50から凹形光入射部74までの距離よりも短くなっているが、例えば、凸形光入射部72は、凹形光入射部74より、LED50から離れた位置となるように設計してもよい。さらに、照明装置1が備えるレンズ20の構成は、天井部に設置する室内灯だけではなく、シフトゲートイルミネーションなどにも応用可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 照明装置、10 意匠パネル、20 レンズ、30 基板、40 タッチセンサ、50 LED、60 裏カバー、70 レンズ受光面、72,76 凸形光入射部、74,78 凹形光入射部、80 レンズ意匠面、90 樹脂部材。