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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180584
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】自動車の盗難防止装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 25/01 20130101AFI20231214BHJP
   B60N 2/20 20060101ALI20231214BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60R25/01
B60N2/20
B60N2/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022093988
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 悠馬
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA02
3B087BD03
3B087DE08
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】ハッキング等の手段が用いられても車両の盗難を防止できる自動車の盗難防止装置を得る。
【解決手段】この自動車の盗難防止装置では、カードキー24からロック信号が車両の制御部18に入力されると、車両のドアがロックされると共に、シートモータ60が駆動されて運転席の車両用シートが運転可能姿勢から運転不能姿勢に変位される。また、この車両用シートの変位に伴って車両用シートのシートモータ60に対する通電が物理的に遮断される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションとシートバックとを有する運転席用の車両用シートと、
前記車両用シートを車両前方側に位置させてシートバックを車両前方側に傾斜させた運転不能姿勢と、車両後方側に位置させてシートバックを車両後方側に傾斜させた運転可能姿勢と、を電気的に変位可能とされた駆動部と、
前記車両用シートが前記運転可能姿勢から前記運転不能姿勢に変位されることにより、前記駆動部に対する通電を物理的に遮断する通電遮断部と、
ユーザの操作により前記通電遮断部によって通電が遮断された前記駆動部に物理的に通電させる通電復帰部と、
運転席のユーザの降車時にドアロック信号の入力により、車両のドアをロックさせ、前記駆動部を駆動させて前記車両用シートを前記運転可能姿勢から前記運転不能姿勢に変位させると共に、ドアロック解除信号の入力により、前記車両のドアロックを解除させ、ユーザの操作により通電復帰部によって物理的に通電された駆動部を駆動させて前記車両用シートを運転不能姿勢から運転可能姿勢に変位させる制御部と、
を備える自動車の盗難防止装置。
【請求項2】
前記通電遮断部は、車両前後方向に移動する前記車両用シートに設けられ、前記駆動部に通電させる回路上に配設されたリミットスイッチと、
車両に固定されたレール部の車両前方側に設けられた干渉部と、
を有し、前記車両用シートが前記運転可能姿勢から前記運転可能姿勢に変位することによって、車両前方側に変位した車両用シートに設けられたリミットスイッチの切替アームが車両側に設けられた干渉部に干渉してリミットスイッチが付勢される請求項1記載の自動車の盗難防止装置。
【請求項3】
前記通電復帰部は、前記車両用シートにおいて前記リミットスイッチを車両前方側に所定の付勢力で付勢する付勢手段と、ユーザの操作により前記付勢力に抗して前記リミットスイッチを前記車両用シートに対して相対的に車両後方側に変位させる変位許容部と、を備える請求項2記載の自動車の盗難防止装置。
【請求項4】
前記自動車の盗難防止装置は、通常ロックモードとセキュリティロックモードを有し、セキュリティロックモードが選択された場合のみ、前記車両用シートを運転可能姿勢から運転不能姿勢に変位させる請求項1項記載の自動車の盗難防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な自動車の盗難防止装置が提案されている。例えば、自動車の振動等を検出すると、運転席の車両用シートを車両前方側に移動させシートバックを前傾させた運転不能姿勢を取らせ、車両用シートを駆動するシートモータへの通電を遮断する構成が提案されている。これにより、車両内に侵入した第三者が車両を走行させようとしても、ステアリングホイールを覆うようにシートバックが位置して車両を走行させることができず、また、シートモータへの通電が遮断されているため、車両用シートを変位されることが防止でき、車両の盗難を防止する構成が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2-11439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された自動車の盗難装置は、車両用シート(パワーシート)を運転不能姿勢とした後、シートモータへの通電を遮断することで車両用シートを運転可能姿勢に復帰させることを阻み、車両の盗難を防止するものである。しかしながら、全てを電気的に行っているため、ハッキング等により外部から車内システムに侵入された場合には、シートモータに対する通電の遮断が解除され、車両用シートが運転不能姿勢から運転可能姿勢に復帰させられ、車両が第三者に運転される(車両が盗難される)おそれがあった。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、ハッキング等の手段が用いられても車両の盗難を防止できる自動車の盗難防止装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係る自動車の盗難防止装置は、シートクッションとシートバックとを有する運転席用の車両用シートと、
前記車両用シートを車両前方側に位置させてシートバックを車両前方側に傾斜させた運転不能姿勢と、車両後方側に位置させてシートバックを車両後方側に傾斜させた運転可能姿勢と、を電気的に変位可能とされた駆動部と、前記車両用シートが前記運転可能姿勢から前記運転不能姿勢に変位されることにより、前記駆動部に対する通電を物理的に遮断する通電遮断部と、ユーザの操作により前記通電遮断部によって通電が遮断された前記駆動部に物理的に通電させる通電復帰部と、運転席のユーザの降車時にドアロック信号の入力により、車両のドアをロックさせ、前記駆動部を駆動させて前記車両用シートを前記運転可能姿勢から前記運転不能姿勢に変位させると共に、ドアロック解除信号の入力により、前記車両のドアロックを解除させ、ユーザの操作により通電復帰部によって物理的に通電された駆動部を駆動させて前記車両用シートを運転不能姿勢から運転可能姿勢に変位させる制御部と、を備える。
【0007】
この自動車の盗難防止装置では、運転席のユーザの降車時にドアロック信号が車両の制御部に入力されると、車両のドアがロックされると共に、駆動部が駆動されて運転席の車両用シートが運転可能姿勢から運転不能姿勢に変位される。また、この車両用シートの変位に伴って車両用シートの駆動部に対する通電が物理的に遮断される。
【0008】
ここで、運転可能姿勢とは、車両用シートが車両前後方向において車両後方側に位置し、シートバックが車両後方側に傾斜した姿勢である。すなわち、ユーザが車両用シートに着座可能で、運転可能な車両用シートの姿勢である。
【0009】
また、運転不能姿勢とは、車両用シートが車両前後方向において車両前方側に位置し、シートバックが車両前方側に傾斜した姿勢である。すなわち、ユーザが車両用シートに着座不能で、運転不可能な車両用シートの姿勢である。
【0010】
このように、運転席の車両用シートが運転不能姿勢とされると共に、この車両用シートの変位(完了)によって駆動部に対する通電が物理的に遮断される。
【0011】
したがって、車両の盗難を企図する第三者が車両(の制御部)に不正アクセスして車両のドアロックを解除して車両の内部に進入したとしても、運転席の車両用シートが運転不能姿勢とされているため、運転席の車両用シートに着座することができず、また、車両前方側に傾斜されたシートバックがステアリングホイールを覆うことで第三者が車両を運転することを防ぐことができる。
【0012】
この際、第三者が車両(の制御部)に対して不正アクセスして運転席の車両用シートを運転不能姿勢から運転可能姿勢に変位させようとしても、車両用シートの駆動部に対する通電が物理的に遮断されているため、車両用シートの姿勢を変位させることはできない。
【0013】
一方、操作端末から制御部にドアロック解除信号が入力されると、ドアロックが解除されると共に、ユーザの操作により通電復帰部が駆動部に対して物理的に通電させる。これにより、制御部により駆動部が駆動されて運転席の車両用シートが運転不能姿勢から運転可能姿勢に変更され、ユーザが着座して車両を運転可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明に係る自動車の盗難防止装置は、請求項1記載の発明に係る自動車の盗難防止装置において、前記通電遮断部は、車両前後方向に移動する前記車両用シートに設けられ、前記駆動部に通電させる回路上に配設されたリミットスイッチと、車両に固定されたレール部の車両前方側に設けられた干渉部と、を有し、前記車両用シートが前記運転可能姿勢から前記運転可能姿勢に変位することによって、車両前方側に変位した車両用シートに設けられたリミットスイッチの切替アームが車両側に設けられた干渉部に干渉してリミットスイッチが付勢される。
【0015】
この自動車の盗難防止装置では、運転席の車両用シートにリミットスイッチが設けられ、車両側(例えば、車両に固定された車両用シート用のレール)に干渉部が設けられている。したがって、運転席の車両用シートが運転可能姿勢から運転不能姿勢に変位されることにより車両前方側に移動すると、車両用シートに設けられたリミットスイッチの切替アームが車両側(に固定されたレール)に設けられた干渉部に干渉してリミットスイッチが付勢される。すなわち、駆動部に通電させる回路に配設されたリミットスイッチが付勢されることにより、駆動部に対する通電が物理的に遮断される。
【0016】
請求項3記載の自動車の盗難防止装置は、請求項2記載の自動車の盗難防止装置において、前記通電復帰部は、前記車両用シートにおいて前記リミットスイッチを車両前方側に所定の付勢力で付勢する付勢手段と、ユーザの操作により前記付勢力に抗して前記リミットスイッチを前記車両用シートに対して相対的に車両後方側に変位させる変位許容部と、を備える。
【0017】
この自動車の盗難防止装置では、車両前方側に常時付勢されているリミットスイッチをユーザの操作により通電復帰部が車両前方側への付勢力に抗して車両後方側に変位させることにより、干渉部に干渉している変位スイッチを干渉しない状態に切り替える。すなわち、リミットスイッチを物理的に滅勢させることにより、駆動部に対する通電を再開する。
【0018】
請求項4記載の自動車の盗難防止装置は、請求項1項記載の自動車の盗難防止装置において、前記自動車の盗難防止装置は、通常ロックモードとセキュリティロックモードを有し、セキュリティロックモードが選択された場合のみ、前記車両用シートを運転可能姿勢から運転不能姿勢に変位させる。
【0019】
この自動車の盗難防止装置では、ユーザによりセキュリティロックモードが選択された場合には、ドアロックすると共に、車両用シートを運転可能姿勢から運転不能姿勢に変位させ、駆動部に対する通電を物理的に遮断する。これにより、自動車の盗難対策に安全性を向上させることができる。
【0020】
一方、通常ロックモードが選択された場合には、ドアロックのみを行う。
【0021】
すなわち、ユーザが長時間自動車から離間する場合には、セキュリティロックモードを選択することで、自動車の盗難防止性能を向上させると共に、ユーザが短時間のみ自動車を離れる場合等には、通常ロックモードを選択することで再度乗車する際の手間を軽減させることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1~3記載の自動車の盗難防止装置では、ハッキング等による自動車盗難のリスクを低減させることができる。
【0023】
請求項4記載の自動車の盗難防止装置では、自動車の盗難防止性能を向上させるか、再度乗車する際の利便性を優先させるか、ユーザが選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係る車両用シートの概略構成を模式的に示す斜視図である。
図2】一実施形態に係る車室内における運転席の車両用シートの運転可能姿勢を示す概略側面図である。
図3】一実施形態に係る自動車の盗難防止装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】一実施形態に係るリミットスイッチ付勢機構の概略構成を示す分解斜視図である。
図5】一実施形態に係るリミットスイッチ付勢機構の運転可能姿勢時を示す側面図である。
図6】一実施形態に係るリミットスイッチロックユニットを示す分解斜視図である。
図7】一実施形態に係るリミットスイッチ解除機構の概略構成を示す分解斜視図である。
図8】一実施形態に係るリミットスイッチ解除機構の要部を示す斜視図である。
図9】一実施形態に係るリミットスイッチ解除機構の要部の分解斜視図である。
図10】一実施形態に係るシートモータに対する電源供給回路を示す図である。
図11】一実施形態に係る車両のカードキーを示す図である。
図12】一実施形態に係るロック制御を示すフローチャートである。
図13】一実施形態に係る車室内における運転席の車両用シートの運転不能姿勢を示す概略側面図である。
図14】一実施形態に係るリミットスイッチ付勢機構の運転不能姿勢時(リミットスイッチ付勢時)を示す側面図である。
図15】一実施形態に係るロック解除制御を示すフローチャートである。
図16】一実施形態に係るリミットスイッチ解除機構の要部の通電復帰時(解除ケーブル巻取時)を示す斜視図である。
図17】一実施形態に係るリミットスイッチ付勢機構の通電復帰時(リミットスイッチ滅勢時)を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係る自動車の盗難防止装置について図1図17を参照して説明する。なお、各図は模式的なものであり、本発明と関連性の低いものは図示を省略している。また、自動車の全体構成は図示省略している。
【0026】
さらに、本実施形態では、運転席の車両用シートについてのみ説明する。この車両用シートにおいてシート前後方向と車両前後方向、シート幅方向と車幅方向、シート上下方向と車両上下方向は一致するため、「車両前後方向」、「車幅方向」、「車両上下方向」に記載を統一する。なお、必要な場合のみ「シート幅方向内側」、「シート幅方向外側」を用いる。
【0027】
また、各図において矢印FRは車両前方、矢印UPは車両上方、矢印LHは車幅方向左側をそれぞれ示す。
【0028】
(構成)
自動車の盗難防止装置10は、図1及び図3に示すように、運転席の車両用シート12(以下、「車両用シート12」という)と、リミットスイッチ付勢機構14と、リミットスイッチ解除機構16と、制御部18と、シート駆動機構20と、ドアロック機構22と、を備える。リミットスイッチ付勢機構14が「通電遮断部」に相当し、「リミットスイッチ解除機構16」が「通電復帰部」に相当する。
【0029】
(車両用シート)
先ず、車両用シート12について説明する。
【0030】
車両用シート12は、図2に示すように、乗員の腰部を支持するシートクッション30と、乗員の背部を支持するシートバック32と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト34と、を有する。なお、シートバック32は、後述するシートモータ60の駆動により、シートクッション30の後端部に軸支された下端部を中心として、車両前後方向に傾動可能とされている。
【0031】
この車両用シート12は、車室36のフロアパネル38上に固定された一対のロアレール40A、40Bに対して車両前後方向に摺動可能に構成された一対のアッパレール42A、42Bと共に、車両前後方向に移動可能とされている。
【0032】
シートクッション30の内部には、図1に示すように、平面視で略形状に形成されたシートクッションフレーム44が配設されている。このシートクッションフレーム44を構成し、車幅方向両端部で車両前後方向に延在するサイドフレーム44A、44Bが、アッパレール42A、42B上に取り付けられている。
【0033】
シートバック32の内部には、図1に示すように、略逆U字形状のシートバックフレーム46が配設されている。このシートバックフレーム46は、シートクッションフレーム44の後端部を回転中心として、車両前後方向に傾動可能に構成されている。
【0034】
また、図2に示すように、この車両用シート12は、運転席用であり、車室36内において車両前方側のダッシュパネル48の近傍に配置されている。車両用シート12の車両前方側にはステアリングホイール50が配置されている。
【0035】
(シート駆動機構)
シート駆動機構20は、図3に示すように、車両用シート12を変位させるシートモータ60を有する。シートモータ60の駆動によって車両用シート12を車両前後方向に変位させると共に、シートバック32を車両前後方向に傾動させるものである。すなわち、シート駆動機構20は、制御部18からの駆動信号に基づいてシートモータ60を駆動させて車両用シート12を車両前後方向に移動させる、又はシートモータ60を駆動させてシートバック32を傾動させるものである。なお、シートモータ60が「駆動部」に相当する。
【0036】
(ドアロック機構)
ドアロック機構22は、図3に示すように、車両のドアをロック又はロック解除するドアロックアクチュエータ62を備える。ドアロック機構22は、制御部18からの駆動信号に基づいてドアロックアクチュエータ62を駆動させ、車両のドアをロック、又はロック解除するものである。
【0037】
(リミットスイッチ付勢機構)
次に、リミットスイッチ付勢機構14について説明する。
【0038】
リミットスイッチ付勢機構14は、図1図4図5に示すように、一方のアッパレール42Aのシート幅方向内側面に取り付けられたリミットスイッチロックユニット70と、一方のロアレール40Aのシート幅方向内側面に取り付けられた樹脂ガイド72とからなる。なお、図4図5図14図17では、説明の便宜のために、ケース76はカバー98(図6参照)を取り除いた状態で表示している。また、リミットスイッチロックユニット70が「変位許容部」に相当し、樹脂ガイド72が「干渉部」に相当する。
【0039】
先ず、リミットスイッチロックユニット70から説明する。
【0040】
リミットスイッチロックユニット70は、図4に示すように、アッパレール42Aの車両後方側でシート幅方向内側面にユニットブラケット74を介して取り付けられている。
【0041】
ユニットブラケット74は、車両後端側で車幅方向に延在する係止壁74Aと、係止壁74Aの車幅方向右側端部(シート幅方向外側端部)から車両前方側に延在するレール取付壁74Bと、レール取付壁74Bの車両前方側端部から車幅方向左側(シート幅方向内側)に延在する側壁74Cと、側壁74Cの車幅方向左側端部(シート幅方向内側端部)から車両前方側に延在するユニット取付壁74Dと、ユニット取付壁74Dの車両前方側端部から車幅方向右側(シート幅方向外側)に延在する側壁74Eと、側壁74Eの車幅方向右側端部(シート幅方向外側端部)から車両前方側に延在するフランジ壁74Fと、を有する。
【0042】
ユニットブラケット74のレール取付壁74B及びフランジ壁74Fがアッパレール42Aのシート幅方向内側面に取り付けられ、ユニット取付壁74Dにリミットスイッチロックユニット70が取り付けられている。これにより、アッパレール42Aのシート幅方向内側面にリミットスイッチロックユニット70が取り付けられている。
【0043】
なお、ユニットブラケット74の係止壁74Aには、図4に示すように、上部から下方に延在する切欠き75が形成されており、図5に示すように、後述する解除ケーブル152の係止体274Bが係止されるものである。
【0044】
リミットスイッチロックユニット70は、図6に示すように、ケース76と、リテーナ78と、リミットスイッチ80と、スプリング82と、ケーブル吊り84と、コネクタ88と、を備えている。スプリング82が、「付勢手段」に相当する。
【0045】
ケース76は、図5及び図6に示すように、シート幅方向内側が開口された略矩形状の収納部90が内部に形成されたケース本体92と、収納部90の開口部を塞ぐカバー98と、から構成されている。
【0046】
ケース本体92の底壁92Aには、図6に示すように、車両前後方向に延在する開口部94が形成されている。また、ケース本体92の後壁92Bには、シート幅方向内側端部から外側に延在する切欠き96が形成されている。この切欠き96には、ケーブル吊り84のロッド122が挿通される構成である。さらに、ケース本体92の上壁92Cには、コネクタ88が載置されている。このコネクタ88を介してリミットスイッチ80が駆動回路66に接続されている構成である。
【0047】
リテーナ78は、図5及び図6に示すように、略矩形体形状の下面とシート幅方向内側面が開口された形状とされており、内側に矩形状の収納部100が形成されている。収納部100にリミットスイッチ80が収納可能とされている。
【0048】
なお、リテーナ78は、図5に示すように、ケース76の収納部90の車両前方側に配置されている。
【0049】
リミットスイッチ80は、図5及び図6に示すように、略矩形体形状のスイッチ本体110と、スイッチ本体110の下面の車両前方側端部から車両後方側に向かって車両下方側に傾斜したアクチュエータ112と、が設けられている。アクチュエータ112が「切替アーム」に相当する。
【0050】
リミットスイッチ80は、図4及び図5に示すように、リテーナ78の収納部100に収納された状態で、リテーナ78と共にケース本体92の収納部90に収納されている。これにより、リミットスイッチ80のアクチュエータ112がケース本体92の底壁92Aに設けられた開口部94から車両下方側に突出されている。
【0051】
ケーブル吊り84は、図5及び図6に示すように、後述する解除ケーブル152のインナーケーブル272の係合体280が係止される係止部120と、係止部120から車両前方側に延在するロッド122と、から構成される。
【0052】
係止部120は、車幅方向を軸方向とする略円筒体形状であり、その一部にシート幅方向内側端部から外側に向かって延在し、シート幅方向外側端部から周方向に沿って略90度位延在する略L字型の切欠き(係止部)124が形成されている。
【0053】
一方、図5に示すように、係止部120の外周面から車両前方側に延在するロッド122の前端は、リテーナ78の後壁78Aに接続されている。ロッド122は、ケース本体92の後壁92Bに形成された切欠き96を介して外部から収納部90内に挿通されている。また、収納部90においてロッド122にはスプリング82が巻回されている。このスプリング82は、一端がリテーナ78の後壁78Aに当接され、他端がケース本体92の後壁92Bに当接されている。すなわち、収納部90内においてリテーナ78はスプリング82の付勢力によって常時車両前方に付勢され、前壁78Bがケース本体92の前壁92Dに突き当てられている。
【0054】
次に、樹脂ガイド72について説明する。
【0055】
樹脂ガイド72は、図4及び図5に示すように、ロアレール40Aにブラケット130を介して取り付けられている。
【0056】
ブラケット130は、図4に示すように、ロアレール40Aの底面に取り付けられるレール取付壁130Aと、レール取付壁130Aのシート幅方向端部からロアレール40Aに沿って車両上方に延在する側壁130Bと、側壁130Bの車両上方側端部からシート幅方向内側に延在するガイド取付壁130Cと、を有する。
【0057】
ロアレール40Aの底面にレール取付壁130Aをリベット132で取り付けることで、ガイド取付壁130Cがロアレール40Aのシート幅方向内側に突出して配置される。
【0058】
樹脂ガイド72は、図4に示すように、車幅方向視で略矩形状の本体部140と、車幅方向視でL字型の一対の脚部142A、142Bとからなる。
【0059】
本体部140を構成する上壁144は、図5示すように、車両後方側端部から車両前方側に延在する第1平面部144Aと、第1平面部144Aの車両前方側端部から車両前方側に向かって車両上方側に延在する傾斜面部144Bと、傾斜面部144Bの車両前方側端部から車両前方側に延在する第2平面部144Cとからなる。
【0060】
なお、この上壁144は、図14及び図17に示すように、樹脂ガイド72の上部にリミットスイッチ80が位置した場合に、アクチュエータ112の下端が当接する高さとされている。具体的には、図17に示すように、第1平面部144Aがアッパレール42Aに取り付けられたリミットスイッチ80のアクチュエータ112の下端がギリギリ当接される高さとされている。換言すれば、リミットスイッチ80を滅勢させる高さである。一方、第2平面部144Cは、図14に示すように、アクチュエータ112を上方に変位させ、リミットスイッチ80を付勢させる高さとされている。
【0061】
また、本体部140の底壁146の車両前方側端部及び車両後方側端部には、それぞれ車幅方向視でL字型の脚部142A、142Bが形成されている。この脚部142A、142Bと底壁146との間に形成された間隙にブラケット130のガイド取付壁130Cが嵌合される。これにより、ロアレール40Aのシート幅方向内側に樹脂ガイド72が配設されている。
【0062】
すなわち、ロアレール40A、40B上の最先端位置(運転不能位置)までアッパレール42A、42B(車両用シート12)が車両前方側に移動すると、リミットスイッチ80のアクチュエータ112の下端が樹脂ガイド72の上壁144の第2平面部144Cに到達する構成である。これにより、アクチュエータ112が上方に撓み変形し、リミットスイッチ80が付勢される構成である。
【0063】
また、その状態で、ケース76の収納部90内のリテーナ78がスプリング82の付勢力に抗して車両後方側に移動すると、リミットスイッチ80のアクチュエータ112の先端が、樹脂ガイド72の第2平面部144Cから第1平面部144Aに移動する構成である。これにより、アクチュエータ112の撓み変形が解消され、リミットスイッチ80が滅勢される構成である。
【0064】
なお、リミットスイッチ80が樹脂ガイド72上にない場合には、リミットスイッチ80は滅勢されている。
【0065】
(リミットスイッチ解除機構)
リミットスイッチ解除機構16は、図1に示すように、鍵ホルダ150と、解除ケーブル152と、リミットスイッチロックユニット70と、から構成されている。
【0066】
鍵ホルダ150は、シートバックフレーム46の背面側で右側上部の肩の位置に取り付けられているものである。
【0067】
鍵ホルダ150は、図7及び図8に示すように、鍵ホルダ本体160と、ケーブルジョイント162と、ブラケット164と、から構成されている。
【0068】
ブラケット164は、ケーブルジョイント162が取り付けられると共に、鍵ホルダ本体160が支持される取付部164Aと、取付部164Aから斜め上方に延在する接合部164Bと、取付部164Aの下端から車両後方側に突出形成された係止部164Cとを有する。
【0069】
ブラケット164は、取付部164Aの右側(シート幅方向外側)部分がシートバックフレーム46の上下方向部46Aの上端近傍に接合され、接合部164Bの上端部がシートバックフレーム46の水平部46Bの右端近傍とに接合されていることにより、シートバックフレーム46の右肩部分の背面側に取り付けられている。
【0070】
なお、取付部164Aの左側には、ケーブルジョイント162取付用の一対の孔部166が形成されている。
【0071】
また、係止部164Cは、解除ケーブル152の後述するアウターケーブル270の一端に設けられた係止体274Aを係止するための切欠き168が形成されている。
【0072】
鍵ホルダ本体160は、ケース170と、ケース170の内部に回転可能に配設された鍵シャフト172と、鍵シャフト172の一端側に巻回されるシャフトスプリング174と、鍵シャフト172の回転量を規制する回転止め盤176と、を有する。
【0073】
ケース170は、図9に示すように、略矩形状の筐体であり、一方の端面から他方の端面に貫通する孔部180が形成されており、この孔部180は鍵シャフト172が回転自在に配設される構成である。
【0074】
また、ケース170には、図7に示すように、孔部180の内周面(孔部180に配設された鍵シャフト172の外周面)に対して進退自在とされた複数のピン182が配設されている。
【0075】
鍵シャフト172は、図9に示すように、略円柱体であり、車幅方向右側に位置するキー部190と、キー部190の車幅方向左側でキー部190から縮径した取付部192と、取付部192の車幅方向左側で取付部192から縮径した連結部194と、からなる。
【0076】
キー部190には、軸(車幅)方向一端部に開口した鍵穴196と、外周面に軸方向に沿って所定間隔で形成された複数のピン穴198と、が形成されている。
【0077】
ピン穴198には、ケース170に設けられた複数のピン182が挿入可能とされている。ピン182がピン穴198に進退することより、鍵シャフト172を回転不能(ロック)又は回転可能(ロック解除)とするものである。
【0078】
鍵穴196には、キー200が挿入可能とされている。キー200を鍵穴196に挿入することでピン穴198からピン182を退避させ、鍵シャフト172を回転可能とするものである。
【0079】
なお、キー部190の鍵穴196が開口している端面がシートバック32の右側側面から外部に露出されている。すなわち、鍵穴196に外部からアクセス可能とされている。
【0080】
鍵シャフト172においてキー部190の左側には、取付部192が形成されている。取付部192は、キー部190よりも一段縮径した円柱形状であり、シャフトスプリング174が巻回される。
【0081】
このシャフトスプリング174によって、ケース170内における鍵シャフト172の位置が位置決めされており、キー部190の端面がケース170(孔部180)の右端面に一致するように調整されている。また、キー200を鍵穴196に挿入して軸(車幅)方向左側に押圧することでシャフトスプリング174の付勢力に抗して鍵シャフト172を軸方向左側に変位させることが可能とされている。
【0082】
鍵シャフト172において取付部192の左側には、取付部192から一段縮径した連結部194が形成されている。
【0083】
連結部194は、図9に示すように、その外周面の左側端部から径方向外側に突出した板状のマシンキー210が設けられている。この連結部194の左側端部側は後述する回転止め盤176に嵌合されている。
【0084】
回転止め盤176は、ケース170の左側に取り付けられているものである。
【0085】
回転止め盤176には、図9に示すように、鍵シャフト172の連結部194が挿通される挿通孔220と、挿通孔220の軸方向右半分に形成された係止溝222A、222Bと、挿通孔220の軸方向左半分に形成された回転角度規制部224(図8図16参照)と、を有する。
【0086】
挿通孔220は、連結部194が挿通可能な孔部である。
【0087】
係止溝222Aは、挿通孔220の外周面から車両後方側(径方向外側)に突出形成された溝であり、係止溝222Bは、挿通孔220の外周面から車両上方側(径方向外側)に突出形成された溝である。この係止溝222A又は係止溝222Bには、連結部194の外周面から径方向外側に突出されたマシンキー210が挿入されることで、鍵シャフト172が係止(回転が阻止)されるものである。
【0088】
回転角度規制部224は、図8及び図16に示すように、挿通孔220の周方向において車両後方側から車両上方側に向かって90度分だけ挿通孔220の内周面から径方向外側に略扇形に突出形成されている。この回転角度規制部224によって鍵シャフト172(マシンキー210)の回転角度が規制されている。
【0089】
なお、係止溝222A、222Bと回転角度規制部224は連通されている。
【0090】
すなわち、キー操作時以外(通常時)には、鍵シャフト172の連結部194に配設されたマシンキー210が回転止め盤176の係止溝222A又は係止溝222Bに挿入されていることにより、鍵シャフト172及び後述する巻取ロッド232の回転が阻止される構成である。
【0091】
一方、キー操作時、すなわち、鍵穴196にキー200を挿入した状態で鍵シャフト172を軸方向(車幅方向)左側に押圧することで、シャフトスプリング174の付勢力に抗して鍵シャフト172が車幅方向左側に移動し、マシンキー210が回転止め盤176の係止溝222A、又は222Bから抜け出す構成である。すなわち、回転角度規制部224の範囲内を鍵シャフト172及び後述する巻取ロッド232が回転可能となる構成である。
【0092】
一方、ケーブルジョイント162は、図7及び図9に示すように、ブラケット230と、巻取ロッド232と、を有する。
【0093】
ブラケット230は、ブラケット164の取付部164Aに取り付けられる略矩形状の取付部230Aと、取付部230Aの車幅方向両端部から車両後方側に延在する一対の支持部230B、230Cとを有する。
【0094】
取付部230Aには、図9に示すように、ブラケット164の取付部164Aに設けられた孔部166に対応する孔部234が形成されている。
【0095】
また、支持部230B、230Cには、巻取ロッド232を回転自在に軸支するための軸支部(孔部)236がそれぞれ形成されている。
【0096】
さらに、支持部230Cには、その車両後方側端部にトーションスプリング260の一端が係止される切欠き238が形成されている
【0097】
巻取ロッド232は、略円筒形状であり、その右側端部から軸方向に延在するマシンキー210用の切欠き(挿入部)240が形成されている。なお、切欠き240は、鍵シャフト172の軸方向(車幅方向)の変位を許容する長さを有している。
【0098】
また、図9に示すように、巻取ロッド232の軸方向において、切欠き240の左側に隣接して一対の孔部242(一方のみ図示)が形成されると共に、左側端部近傍に一対の孔部244(一方のみ図示)が形成されている。
【0099】
この巻取ロッド232は、ブラケット230の支持部230B、230Cに形成された軸支部236に挿通されることにより、ブラケット230に回転自在に支持される。また、図7に示すように、巻取ロッド232の右側に形成された切欠き240が支持部230Bよりも右側に配置される。鍵シャフト172の連結部194が巻取ロッド232の内部に挿入され、マシンキー210が切欠き240に挿入されることにより、鍵シャフト172と巻取ロッド232が一体的に回転される構成である。
【0100】
また、図9に示すように、支持部230Bの右側において、スナップリング250が巻取ロッド232の孔部242に挿入されることによって、巻取ロッド232にスナップリング250が取り付けられている。
【0101】
さらに、図8及び図9に示すように、支持部230Cの左側において、スナップリング252が巻取ロッド232の孔部244に挿入されることによって、巻取ロッド232にスナップリング252が取り付けられている。
【0102】
このように、ブラケット230の支持部230Bの右側及び支持部230Cの左側で、巻取ロッド232にそれぞれスナップリング250、252が取り付けられていることにより、巻取ロッド232の軸方向の変位が阻止される。
【0103】
さらに、巻取ロッド232において支持部230Cの右側には、トーションスプリング260が巻回されており、その一端260Aが支持部230Cの切欠き238に係止されている。
【0104】
また、巻取ロッド232には、図8に示すように、支持部230B、支持部230C間において右側に解除ケーブル152のインナーケーブル272の端部が巻回されて係止されている。
【0105】
解除ケーブル152は、図7に示すように、アウターケーブル270と、インナーケーブル272と、を有する。
【0106】
アウターケーブル270は、内部にインナーケーブル272が挿通されており、その両端部に係止体274A(図7参照)、274B(図4参照)が取り付けられている。
【0107】
アウターケーブル270の一端(ケーブルジョイント162側)に設けられた係止体274Aは、図7及び図8に示すように、シートバックフレーム46の右肩部に取り付けられたブラケット164の係止部164Cに固定されている。すなわち、係止部164Cに設けられた切欠き168に係止体274Aの挿通部276Aが挿入され、係止体274Aの当接部275Aと係止部278Aが係止部164Cの下面と上面にそれぞれ当接され、ナット279Aで調節することで両者で係止部164Cを挟持する。これにより、係止体274Aがブラケット164に固定されている。
【0108】
アウターケーブル270の他端(リミットスイッチロックユニット70側)に設けられた係止体274Bは、図5に示すように、ユニットブラケット74の係止壁74Aに固定されている。すなわち、係止壁74Aに設けられた切欠き75に挿通部276Bが挿入され、当接部275Bと係止部278Bが係止壁74Aの後面と前面にそれぞれ当接され、ナット279Bで調節することで両者で係止壁74Aを挟持する。これにより、係止体274Bがユニットブラケット74(の係止壁74A)に固定されている。
【0109】
図7及び図8に示すように、アウターケーブル270の内部に挿通可能に配設されたインナーケーブル272は、その一端が巻取ロッド232にシート幅方向外側から内側を視て時計回りに数周分巻き付けられると共に、その端部が巻取ロッド232の外周面に係止されている。
【0110】
すなわち、キー200を鍵穴196に挿入して鍵シャフト172を軸方向左側に押し込み、矢印A方向に90度回転させることにより、鍵シャフト172と共に巻取ロッド232が回転し、インナーケーブル272を巻き取る構成である。
【0111】
一方、インナーケーブル272の他端側は、図6に示すように、係止体274Bから車両前方側に延出しており、その端部にインナーケーブル272の延在方向と直交する方向を軸方向として形成された円柱体形状の係合体280が設けられている。
【0112】
この係合体280を係止部120の内部に挿入し、インナーケーブル272を切欠き124に沿って奥まで挿入することにより、係合体280(インナーケーブル272の他端部)が係止部120に係止される構成である。
【0113】
これによって、インナーケーブル272から作用する張力がケーブル吊り84を介してリテーナ78(リミットスイッチ80)に作用し、ケース76内でスプリング82の付勢力に抗してリテーナ78(リミットスイッチ80)を車両後方側に変位させる構成である。すなわち、収納部90内において、リテーナ78(リミットスイッチ80)の変位を許容する構成である。
【0114】
(制御部)
制御部18は、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)18A、ROM(Read Only Memory)18B、RAM(Random Access Memory)18C、ストレージ18D、入出力インターフェイス(以下、「入出力I/F」という)18E及び通信インターフェイス(以下、「通信I/F」という)18Fを含んで構成されている。各構成は、バス18Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0115】
CPU18Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実施したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU18Aは、ROM18B又はストレージ18Dからプログラムを読み出し、RAM18Cを作業領域としてプログラムを実施する。CPU18Aは、ROM18B又はストレージ18Dに記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0116】
ROM18Bは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM18Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0117】
ストレージ18Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する。
【0118】
本実施形態のストレージ18Dには、プログラムが格納されている。このプログラムは、ROM18Bに格納されていても良い。
【0119】
入出力I/F18Eは、シート駆動機構20のシートモータ60やドアロック機構22のドアロックアクチュエータ62に駆動信号を出力する。
【0120】
通信I/F18Fは、後述するカードキー24から操作信号等を受信する。
【0121】
シート駆動機構20は、シートモータ60を駆動することによって、車両用シート12(アッパレール42A、42B)を前後方向に移動させると共に、シートバック32を前傾・後傾させるものである。
【0122】
なお、シートモータ60を駆動する駆動回路66には、図10に示すように、リミットスイッチ80が配設されており、リミットスイッチ80が付勢されることにより、シートモータ60に対する電力供給(通電)が遮断される構成である。
【0123】
ドアロック機構22は、ドアロックアクチュエータ62を駆動することによって、車両のドアをロック・ロック解除するものである。
【0124】
カードキー24は、図11に示すように、通常ロックボタン24A、セキュリティロックボタン24B、ロック解除ボタン24Cを備え、ユーザがそれぞれのボタンを操作することにより、車両(制御部18)に通常ロック信号、セキュリティロック信号、ロック解除信号が送信されるものである。このセキュリティロック信号が「ドアロック信号」に相当し、ロック解除信号が「ドアロック解除信号」に相当する。
【0125】
(作用)
このように構成された自動車の盗難防止装置10の作用について説明する。
【0126】
[ロック操作の場合]
運転席のユーザの降車時におけるロック操作の処理について、図12のフローチャートを参照しつつ説明する。
【0127】
ユーザがカードキー24の通常ロックボタン24Aを操作する(通常ロックモードを選択する)と、カードキー24から車両の制御部18に通常ロック信号が送信される。
【0128】
制御部18のCPU18Aは、カードキー24からロック信号(通常ロック信号又はセキュリティロック信号)が入力されたか否かを判定する(図12、ステップS10(以下、「図12」を省略する)。
【0129】
ロック信号の入力があった場合(ステップS10でYES)には、制御部18のCPU18Aは、そのロック信号がセキュリティロック信号であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0130】
そのロック信号が、セキュリティロック信号でない場合(ステップS12でNOの場合)には、制御部18のCPU18Aは、ドアロック機構22のドアロックアクチュエータ62にロック信号を出力する(ステップS14)。この結果、ドアロックアクチュエータ62が駆動され、車両のドアをロックする。
【0131】
これにより、通常ロック処理を終了する。
【0132】
一方、ユーザがカードキー24のセキュリティロックボタン24Bを操作する(セキュリティロックモードを選択する)と、カードキー24から車両の制御部18にセキュリティロック信号が送信される。
【0133】
この場合には、ステップS12において、そのロック信号がセキュリティロック信号であると判定され(ステップS12でYESの場合)、制御部18のCPU18Aは、ドアロック機構22のドアロックアクチュエータ62にロック信号を出力する(ステップS16)と共に、シート駆動機構20のシートモータ60に駆動信号を出力する(ステップS18)。
【0134】
この結果、ドアロック機構22のドアロックアクチュエータ62が駆動され、車両のドアがロックされる。
【0135】
また、シート駆動機構20のシートモータ60に駆動信号が入力されシートモータ60が駆動されることにより、車両用シート12のシートバック32を後傾させた状態から車両前方側に前傾させた状態(以下、「着座不能姿勢」という)に変位された後、運転可能位置にあった車両用シート12がロアレール40A、40B上で最先端の位置(「運転不能位置」という)まで移動される(図13参照)。すなわち、車両用シート12が運転可能姿勢から運転不能姿勢に変位される。
【0136】
これにより、セキュリティロック処理を終了する。
【0137】
車両用シート12が運転不能位置まで車両前方側に移動することに伴って、車両用シート12と一体的に設けられたアッパレール42A、42Bがロアレール40A、40B上を車両前方側に移動する。
この際、アッパレール42Aに取り付けられたリミットスイッチ80のアクチュエータ112の下端は、ロアレール40Aの車両前方側に取り付けられた樹脂ガイド72の上壁144上に到達する。ここで、リミットスイッチ80のアクチュエータ112の下端は、上壁144の第1平面部144Aから傾斜面部144Bを介して第2平面部144Cに到達する。この結果、アクチュエータ112が上方に撓み、リミットスイッチ80が付勢される。
【0138】
これにより、図10に示すように、シートモータ60に駆動回路66上に配設されたリミットスイッチ80が付勢されることにより、シートモータ60に対する電力の供給(通電)が遮断される。
【0139】
この際、リミットスイッチロックユニット70が車両前方側に移動することにより、ユニットブラケット74の係止壁74Aに一端が係止された解除ケーブル152(アウターケーブル270)が車両前方側に引き出されるが、リミットスイッチロックユニット70とケーブルジョイント162間の解除ケーブル152の遊びでその変位量を吸収する。
【0140】
[ロック解除の場合]
次に、ユーザの乗車時におけるロック解除の処理について、図15のフローチャートを参照して説明する。
【0141】
ユーザがカードキー24のロック解除ボタン24C(図11参照)を操作すると、カードキー24から車両の制御部18にロック解除信号が送信される。
【0142】
制御部18のCPU18Aは、ロック解除信号の入力があったか否かを判定する(図15、ステップS30。以下、「図15」を省略する)。
【0143】
制御部18のCPU18Aは、カードキー24からロック解除信号を受信すると(ステップS30でYES)、現在のロック状態がセキュリティロック状態であるか否かを確認する(ステップS32)。
【0144】
通常ロック状態である(セキュリティロック状態でない)場合には(ステップS32においてNO)、制御部18のCPU18Aは、ドアロック機構22のドアロックアクチュエータ62にロック解除信号を出力する(ステップS34)。この結果、ドアロック機構22のドアロックアクチュエータ62が駆動され、車両のドアのロックを解除する。
【0145】
これにより、通常ロック解除処理を終了する。
【0146】
一方、ステップS32において、セキュリティロック状態であることが確認された場合には(ステップS32においてYES)、制御部18のCPU18Aは、ドアロック機構22のドアロックアクチュエータ62にロック解除信号を出力する(ステップS36)。この結果、ドアロック機構22のドアロックアクチュエータ62が駆動され、車両のドアのロックを解除する。
【0147】
次に、制御部18のCPU18Aは、ロック解除信号の出力から所定時間経過したか否かを判定する(ステップS38)。
【0148】
ロック解除信号の出力から所定時間経過すると(ステップS38でYES)、制御部18のCPU18Aは、シート駆動機構20のシートモータ60に駆動信号を出力する(ステップS40)。
【0149】
これは、セキュリティロック状態の場合に、ユーザが運転席ドアを開放してリミットスイッチ解除機構16を操作してリミットスイッチ80を滅勢させ、シートモータ60に電力を供給(通電)する操作時間を確保するためである。具体的には、車両用シート12に配置されたリミットスイッチ解除機構16の鍵シャフト172の鍵穴196にキー200を差し込んで90度回転させることで、リミットスイッチ80を滅勢させる時間を確保する。
【0150】
より詳細には、図7図16に示すように、運転席のドアを開放したユーザがリミットスイッチ解除機構16の鍵シャフト172の鍵穴196にキー200を差し込むことにより、ピン182が鍵シャフト172から離脱する。さらに、ユーザが鍵シャフト172をシャフトスプリング174の付勢力に抗して軸方向左側(奥側)に押し込むことにより、鍵シャフト172の連結部194に取り付けられたマシンキー210が回転止め盤176の係止溝222A(図9参照)から抜け出す。この状態でキー200を矢印A方向に回転させることにより回転角度規制部224の範囲(すなわち90度)だけ鍵シャフト172及び巻取ロッド232が回転する(図8図16参照)。
【0151】
これにより、巻取ロッド232に巻付けられた(一端が係止された)解除ケーブル152のインナーケーブル272がその分だけ巻き取られる。この結果、図17に示すように、インナーケーブル272の他端が係止されたケーブル吊り84を介してリテーナ78がケース76の収納部90内でスプリング82の付勢力に抗して車両後方側に移動する。これにより、リテーナ78の内部に収納されたリミットスイッチ80もケース76内で車両後方側に移動する。この結果、リミットスイッチ80のアクチュエータ112の先端が樹脂ガイド72の第2平面部144Cから傾斜面部144Bを介して第1平面部144Aに当接しながら移動する。
【0152】
これにより、アクチュエータ112が下方に下がり(上方への撓みが解消され)、リミットスイッチ80が滅勢される。この結果、駆動回路66においてシートモータ60に電力が供給(通電)される。
【0153】
なお、キー200を回転させた状態でユーザがキー200に対する押圧力を弱めることにより、シャフトスプリング174の付勢力によって鍵シャフト172が軸方向右側(手前側)に移動し、マシンキー210が回転止め盤176の係止溝222Bに挿入される。すなわち、鍵シャフト172の回転位置が保持される。
【0154】
この状態で制御部18からシートモータ60に駆動信号が入力されることにより、シートモータ60が駆動される。この結果、車両用シート12のシートバック32が後傾され(着座不能姿勢から着座可能姿勢に変更され)た後、車両用シート12が車両後方側へ(運転不能位置から運転可能位置に)移動される。すなわち、車両用シート12が運転不能姿勢(図13参照)から運転可能姿勢(図2参照)に変位される。
【0155】
ユーザが車両用シート12が運転可能姿勢に変位されたことを確認した後、図7図9に示すように、ユーザがキー200を押し込むことで鍵シャフト172が軸方向左側(奥側)に押し込まれ、マシンキー210が回転止め盤176の係止溝222Bから抜け出し、鍵シャフト172及び巻取ロッド232が矢印B方向に回転可能とされる。
【0156】
ここで、トーションスプリング260の付勢力により巻取ロッド232が回転止め盤176の回転角度規制部224が許容する90度だけ矢印B方向に回転する。また、ケース76内においてリテーナ78はスプリング82により常時車両前方側に付勢されているため、ケーブル吊り84を介してインナーケーブル272を車両前方側に引っ張る。
【0157】
この結果、巻取ロッド232からのインナーケーブル272の引き出しによって、ケース76内において、リテーナ78(リミットスイッチ80)が車両前方側の位置に復帰する(図5参照)。
【0158】
さらに、ユーザがキー200に対する押圧力を解除することで、鍵シャフト172がシャフトスプリング174の付勢力で軸方向右側に付勢され、マシンキー210が係止溝222Aに入って原位置に復帰する(図8参照)。
【0159】
なお、リミットスイッチ80(アクチュエータ112)は、樹脂ガイド72よりも車両後方側に位置しているので、車両用シート12の(前後位置)調整でリミットスイッチ80が付勢されることはない。
【0160】
これにより、セキュリティロック状態に対するロック解除処理が終了する。
【0161】
(作用効果)
次に、自動車の盗難防止装置10の作用効果について説明する。
【0162】
この自動車の盗難防止装置10では、ユーザがセキュリティロックモードを選択した場合には、車両のドアをロックすると共に、車両用シート12をロアレール40A、40B上の最前部の位置(運転不能位置)まで前進させると共に、シートバック32を前傾させてステアリングホイール50を覆うような姿勢(運転不能姿勢)に変位する。したがって、悪意の第三者が車両の内部に侵入しても、車両の運転が物理的に不可能となり、車両の盗難を防止することができる。
【0163】
この際、車両用シート12を最前部まで移動させることにより、アッパレール42Aに取り付けられたリミットスイッチ80のアクチュエータ112の先端がロアレール40Aに設けられた樹脂ガイド72の上壁144に摺接する。アクチュエータ112の先端が上壁144の第1平面部144Aから第2平面部144Cまで当接しながら移動する。この結果、アクチュエータ112が上方に撓み、リミットスイッチ80が付勢される。すなわち、シート駆動機構20のシートモータ60に対する駆動回路66に設けられたリミットスイッチ80が付勢され、シートモータ60に対する電力供給(通電)が物理的に遮断される。
【0164】
したがって、上記悪意の第三者がハッキング等によって車内システムに侵入してシートモータ60を駆動して車両用シート12を運転不能姿勢から運転可能姿勢に変更させようとしても、シートモータ60が駆動されず、車両用シート12の姿勢を変更することができない。したがって、車両の盗難防止性に優れる。
【0165】
一方、セキュリティロック状態を解除する場合には、カードキー24から車両(制御部18)にロック解除信号を送信することにより、ドアロックが解除されると共に、所定時間経過後に制御部18からシートモータ60に駆動信号が送信される。
【0166】
これは、車両のドアのロックが解除された後、ユーザがドアを開放し、キー200を鍵シャフト172の鍵穴196に挿入して回動させることにより、巻取ロッド232に巻回されたインナーケーブル272を巻き取り、ケース76の収納部90の内部でスプリング82の付勢力に抗してリテーナ78(リミットスイッチ80)を車両後方側に移動させる時間を確保している。
【0167】
これにより、樹脂ガイド72の第2平面部144Cに当接されていたアクチュエータ112の先端が傾斜面部144Bを介して第1平面部144Aに移動する。この結果、リミットスイッチ80が滅勢され、シートモータ60に対して電力が供給(通電)される。
【0168】
この状態で制御部18からシートモータ60に駆動信号が入力されることにより、車両用シート12のシートバック32が前傾姿勢(着座不能姿勢)から後傾姿勢(着座可能姿勢)に復帰されると共に、車両用シート12が最前端位置(運転不能位置)から車両後方側の運転可能位置に戻される。すなわち、車両用シート12が運転不能姿勢(図13参照)から運転可能姿勢(図2参照)に変更される。
【0169】
これにより、ユーザが車両用シート12(運転席)に着座して運転可能になる。
【0170】
このように、セキュリティロックモードでは、車両用シート12を最前位置まで移動させると共に、シートバック32を前傾させてステアリングホイール50を覆うことで運転不能とさせて、車両の盗難を防止することができる。
【0171】
また、この車両用シート12の前方への移動によってリミットスイッチ80を付勢させて車両用シート12を駆動するシートモータ60への電力供給(通電)を物理的に遮断することで、ハッキング等によって車両用シート12を操作することを確実に不能とすることができる。すなわち、ハッキングによる車両盗難も確実に防止できる。
【0172】
一方、セキュリティロック状態を解除する場合には、シートモータ60への電力供給(通電)が物理的に遮断されているため、シートモータ60に対する電力供給(通電)を復帰させることが必要である。そこで、先ずドアロックが解除され、ユーザがドアを開放する。次に、ユーザがリミットスイッチ解除機構16を操作することによってシートモータ60に対して電力供給可能に復帰させる。この状態で、車両用シート12の位置、姿勢を運転可能位置、着座可能姿勢に復帰させることができる。
【0173】
具体的には、ユーザがシートバック32に設けられた鍵ホルダ150の鍵穴196にキー200を挿入して鍵シャフト172及び巻取ロッド232を回転させることによってリミットスイッチ80を物理的に滅勢する。これにより、シートモータ60に対して電力を供給し、車両用シート12の位置、姿勢を運転可能位置、着座可能姿勢に復帰させることができる。
【0174】
特に、この操作を鍵穴196に対するキー200の挿入によって行うため、ユーザの認証効果もある。
【0175】
さらに、本実施形態では、ドアロックのモードとして通常ロックモードと、セキュリティロックモードと、を有し、通常ロックモードではドアロック時に車両用シート12の姿勢を変位させないことで、ロック解除時の手間を軽減している。すなわち、ユーザが通常ロック又はセキュリティロックを選択することで、利便性優先か盗難防止性能優先かを選択することができる。
【0176】
(その他)
なお、本実施形態では、鍵穴196に対する キー200の挿入によってユーザを認証して、リミットスイッチ80を滅勢させる構成としたが、他の認証手段でも良い。例えば、生体認証やパスワード入力等によって巻取ロッド232を回転可能としてリミットスイッチ80を滅勢させる構成でも良い。
【0177】
また、本実施形態では、制御部18のCPU18Aは、セキュリティロック状態を解除する場合には、ドアロックアクチュエータ62に解除信号を送信してから所定時間経過後にシートモータ60に駆動信号を送信したが、ドアの開放をセンサで検知したタイミングから所定時間経過後でも良い。あるいは、シートモータ60に対する電力供給(通電)が検知されたタイミングから所定時間経過後でも良い。
【0178】
さらに、本実施形態では、通常ロックモードとセキュリティロックモードの二つのドアロックモードが用意されている。したがって、ユーザがセキュリティロックモードを選択した場合のみ、車両用シート12が運転不能姿勢にされると共に、シートモータ60に対する通電が物理的に遮断される構成とされている。しかしながら、ドアロックモードが選択された場合には、常に車両用シート12が運転不能姿勢に変位されると共に、シートモータ60に対する通電が物理的に遮断される構成としても良い。
【0179】
また、本実施形態では、セキュリティロック時に、車両用シート12のシートバック32を前傾させた後、車両用シート12を車両前方側に移動させる構成としたが、両者の動作を同時に行っても良い。この場合には、シートバック32の前傾動作は、車両用シート12が運転不能位置に到達するまでに完了することが必要である。
【0180】
さらに、本実施形態の車両用シート12では、車両用シート12の位置調整は、リミットスイッチ80の付勢を防止するために、運転不能位置を除く範囲で行うように設定されている。
【符号の説明】
【0181】
10 自動車の盗難防止装置
12 車両用シート
14 リミットスイッチ付勢機構(通電遮断部)
16 リミットスイッチ解除機構(通電復帰部)
18 制御部
30 シートクッション
32 シートバック
40A、40B ロアレール(レール部)
60 シートモータ(駆動部)
70 リミットスイッチロックユニット(変位許容部)
72 樹脂ガイド(干渉部)
80 リミットスイッチ
82 スプリング(付勢手段)
112 アクチュエータ(切替アーム)
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