(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180591
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】搬送システム、および搬送システム制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B65G1/04 561
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094013
(22)【出願日】2022-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】小西 誠
【テーマコード(参考)】
3F022
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022JJ20
3F022KK01
3F022MM51
3F022MM61
3F022PP06
3F022QQ11
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で昇降台の傾きを検出する。
【解決手段】ラック110と、クレーン120と、制御装置150と、を備える搬送システム100であって、ラック110は、複数の被検出部113を備え、クレーン120は、昇降台121と、吊持部材と、昇降駆動装置124と、昇降台121に沿って走行する移載機125と、走行駆動装置129と、移載機の位置を検出する位置検出装置126と、移載機125に搭載され、被検出部113を検出するセンサ127と、を備え、制御装置150は、確認モードにおいて、保管棚112において複数の被検出部113の高さ位置を検出できるように移載機125を移動させ、位置検出装置126、およびセンサで被検出部113の高さ位置を検出する高さ位置検出部153と、複数の高さ位置に基づき昇降台121の傾き異常を報知する異常報知部と、を備える搬送システム100。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物を保管する保管部を左右方向に並べて有する保管棚を上下方向に複数段備えるラックと、前記ラックとの間で移載する荷物を搬送するクレーンと、前記クレーンを制御する制御装置と、を備える搬送システムであって、
前記ラックは、
それぞれの前記保管部の位置に対応して配置される複数の被検出部を備え、
前記クレーンは、
前記保管棚に沿って延在し、前記ラックに沿って昇降移動可能な昇降台と、
前記昇降台の両端部を吊り持つ一対の吊持部材と、
一対の前記吊持部材を介して前記昇降台を昇降させる昇降駆動装置と、
前記昇降台に左右方向へ移動可能に保持され、前記ラックとの間で荷物を移載する移載機と、
前記移載機を左右方向に走行させる走行駆動装置と、
前記保管部に対する前記移載機の位置を検出する位置検出装置と、
前記移載機に搭載され、前記被検出部を検出するセンサと、を備え、
前記制御装置は、
通常モードにおいて、前記保管部に前記移載機を配置するように前記昇降駆動装置、および前記移載機を制御する配置部と、
通常モードにおいて、前記センサからの情報に基づき前記移載機が前記保管部に正しく配置されているか否かを検出する正誤検出部と、
確認モードにおいて、前記昇降台を複数の前記保管棚に配置し、配置されたそれぞれの保管棚において複数の保管部に対応する複数の前記被検出部の高さ位置を検出できるように前記配置部により前記移載機を移動させ、前記位置検出装置、および前記センサで前記被検出部の高さ位置を検出する高さ位置検出部と、
検出された複数の高さ位置に基づき前記昇降台の傾きに関する異常を報知する異常報知部と、を備える
搬送システム。
【請求項2】
確認モードにおいて、前記配置部は、複数の前記保管棚の内の最下段の前記保管棚に前記昇降台を最初に配置し、最下段の前記保管棚において前記異常報知部が異常を報知した場合、以降の保管棚に前記昇降台を上昇させることを中止する
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記正誤検出部は、
通常モードにおいて、前記移載機が前記保管部に正しく配置されていないことの検出に基づき確認モードへの移行を促す確認情報を報知する
請求項1または2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記制御装置は、
確認モードにおける前記移載機の動作と共通の動作を有するティーチングモードを備える
請求項1または2に記載の搬送システム。
【請求項5】
荷物を保管する保管部を左右方向に並べて有する保管棚を上下方向に複数段備えるラックと、前記ラックとの間で移載する荷物を搬送するクレーンと、を備える搬送システムの前記クレーンを制御する搬送システム制御方法であって、
前記ラックは、それぞれの前記保管部の位置に対応して配置される複数の被検出部を備え、
前記クレーンは、前記保管棚に沿って延在し、前記ラックに沿って昇降移動可能な昇降台と、前記昇降台の両端部を吊り持つ一対の吊持部材と、一対の前記吊持部材を介して前記昇降台を昇降させる昇降駆動装置と、前記昇降台に左右方向へ移動可能に保持され、前記ラックとの間で荷物を移載する移載機と、前記移載機を左右方向に走行させる走行駆動装置と、前記保管部に対する前記移載機の位置を検出する位置検出装置と、前記移載機に搭載され、前記被検出部を検出するセンサと、を備え、
通常モードにおいて、前記保管部に前記移載機を配置するように前記昇降駆動装置、および前記移載機を配置部が制御し、
通常モードにおいて、前記センサからの情報に基づき前記移載機が前記保管部に正しく配置されているか否かを正誤検出部が検出し、
確認モードにおいて、前記昇降台を複数の前記保管棚に配置し、配置されたそれぞれの保管棚において複数の保管部に対応する複数の前記被検出部の高さ位置を検出できるように前記配置部により前記移載機を移動させ、前記位置検出装置、および前記センサで前記被検出部の高さ位置を高さ位置検出部が検出し、
検出された複数の高さ位置に基づき前記昇降台の傾きに関する異常を異常報知部が報知する
搬送システム制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラックの任意の場所まで荷物を搬送して荷物をラックに移載し、またラックの任意の場所から荷物を取り出して任意の場所まで搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対のマストと、マストの間に架橋状に配置される長尺の昇降台と、昇降台に沿って移動する移載機と、昇降台の両端を保持して上下方向に移動させる吊持部材と、を備えたクレーンが存在している。このようなクレーンは、吊持部材の経時的な伸びにより昇降台が傾く事がある。このため、特許文献1には、昇降台の傾きを検出するセンサを備え、傾きが発生しないように吊持部材の動作を補正するクレーンが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、昇降台の傾きだけを検出するセンサを設けることは部品点数が増加するため、クレーン製造時の効率の低下、コストの増加につながる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、昇降台の傾きを検出するための専用のセンサを用いることなく、昇降台の傾きを検出する事ができる搬送システム、および搬送システム制御方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1つである搬送システムは、荷物を保管する保管部を左右方向に並べて有する保管棚を上下方向に複数段備えるラックと、前記ラックとの間で移載する荷物を搬送するクレーンと、前記クレーンを制御する制御装置と、を備える搬送システムであって、前記ラックは、それぞれの前記保管部の位置に対応して配置される複数の被検出部を備え、前記クレーンは、前記保管棚に沿って延在し、前記ラックに沿って昇降移動可能な昇降台と、前記昇降台の両端部を吊り持つ一対の吊持部材と、一対の前記吊持部材を介して前記昇降台を昇降させる昇降駆動装置と、前記昇降台に左右方向へ移動可能に保持され、前記ラックとの間で荷物を移載する移載機と、前記移載機を左右方向に走行させる走行駆動装置と、前記保管部に対する前記移載機の位置を検出する位置検出装置と、前記移載機に搭載され、前記被検出部を検出するセンサと、を備え、前記制御装置は、通常モードにおいて、前記保管部に前記移載機を配置するように前記昇降駆動装置、および前記移載機を制御する配置部と、通常モードにおいて、前記センサからの情報に基づき前記移載機が前記保管部に正しく配置されているか否かを検出する正誤検出部と、確認モードにおいて、前記昇降台を複数の前記保管棚に配置し、配置されたそれぞれの保管棚において複数の保管部に対応する複数の前記被検出部の高さ位置を検出できるように前記配置部により前記移載機を移動させ、前記位置検出装置、および前記センサで前記被検出部の高さ位置を検出する高さ位置検出部と、検出された複数の高さ位置に基づき前記昇降台の傾きに関する異常を報知する異常報知部と、を備える。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の他の1つである搬送システム制御方法は、荷物を保管する保管部を左右方向に並べて有する保管棚を上下方向に複数段備えるラックと、前記ラックとの間で移載する荷物を搬送するクレーンと、を備える搬送システムの前記クレーンを制御する搬送システム制御方法であって、前記ラックは、それぞれの前記保管部の位置に対応して配置される複数の被検出部を備え、前記クレーンは、前記保管棚に沿って延在し、前記ラックに沿って昇降移動可能な昇降台と、前記昇降台の両端部を吊り持つ一対の吊持部材と、一対の前記吊持部材を介して前記昇降台を昇降させる昇降駆動装置と、前記昇降台に左右方向へ移動可能に保持され、前記ラックとの間で荷物を移載する移載機と、前記移載機を左右方向に走行させる走行駆動装置と、前記保管部に対する前記移載機の位置を検出する位置検出装置と、前記移載機に搭載され、前記被検出部を検出するセンサと、を備え、通常モードにおいて、前記保管部に前記移載機を配置するように前記昇降駆動装置、および前記移載機を配置部が制御し、通常モードにおいて、前記センサからの情報に基づき前記移載機が前記保管部に正しく配置されているか否かを正誤検出部が検出し、確認モードにおいて、前記昇降台を複数の前記保管棚に配置し、配置されたそれぞれの保管棚において複数の保管部に対応する複数の前記被検出部の高さ位置を検出できるように前記配置部により前記移載機を移動させ、前記位置検出装置、および前記センサで前記被検出部の高さ位置を高さ位置検出部が検出し、検出された複数の高さ位置に基づき前記昇降台の傾きに関する異常を異常報知部が報知する。
【発明の効果】
【0008】
ラックに対する移載機の位置の正誤の検出を行うセンサを用いて長さの異なる一対の吊持部材の伸びの違いから生じる昇降台の傾きを検出することができる。これにより昇降台の傾きを調整し、荷物の移載ミスを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】搬送システムの移載機、およびその周辺を示す斜視図である。
【
図3】制御装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】通常モードにおける制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】確認モードにおける制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】確認モードにおけるレーザー光の軌跡を示す図である。
【
図7】確認モードにおける反射光の強度の経時的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る搬送システム、および搬送システム制御方法の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を説明するために一例を挙示するものであり、本発明を限定する主旨ではない。例えば、以下の実施の形態において示される形状、構造、材料、構成要素、相対的位置関係、接続状態、数値、数式、方法における各段階の内容、各段階の順序などは、一例であり、以下に記載されていない内容を含む場合がある。また、平行、直交などの幾何学的な表現を用いる場合があるが、これらの表現は、数学的な厳密さを示すものではなく、実質的に許容される誤差、ずれなどが含まれる。また、同時、同一などの表現も、実質的に許容される範囲を含んでいる。
【0011】
また、図面は、本発明を説明するために適宜強調、省略、または比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状、位置関係、および比率とは異なる。また、図中に示す場合があるX軸、Y軸、Z軸は、図の説明のために任意に設定した直交座標を示している。つまりZ軸は、鉛直方向に沿う軸とは限らず、X軸、Y軸は、水平面内に存在するとは限らない。
【0012】
また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として包括的に説明する場合がある。また、以下に記載する内容の一部は、本発明に関する任意の構成要素として説明している。
【0013】
図1は、搬送システムを示す斜視図である。
図2は、搬送システムの移載機、およびその周辺を示す斜視図である。搬送システム100は、ラック110、クレーン120、制御装置150を備え、クレーン120により荷物200をラック110の所定の位置に搬送してラック110に移載し、ラック110に保管されている荷物200を取り出してクレーン120により所定の場所に搬送することができるシステムである。
【0014】
ラック110は、荷物200を保管する保管部111(
図2参照)を左右方向(図中Y軸方向)に並べて有する保管棚112を上下方向(図中Z軸方向)に複数段備える設備であり、被検出部113を備える。保管部111は、荷物200を保管できる空間であり、実態的な物品を示すものではない。本実施形態の場合、保管部111は、一個の荷物200を保管することができる空間である。ラック110における荷物200の保管方法は、限定されるものではなく、荷物200を吊り下げて保管する方法、載置して保管する方法などを例示することができる。本実施の形態の場合、ラック110は、保管棚112の上に荷物200を載置することにより荷物200を保管部111内に保管している。
【0015】
被検出部113は、保管棚112に均等に並べて配置されるそれぞれの保管部111の位置に対応して配置され、後述のセンサ127により検出可能な部分である。被検出部113は、センサ127に対し上下方向の相対的な位置関係、左右方向の相対的な位置関係を示すことができる部分であれば特に限定されるものではない。被検出部113としては、マーク、反射板などを例示することができる。本実施形態の場合、被検出部113は、クレーン120に対向する保管棚112の面に設けられた穴である。保管棚112は、クレーン120に対向する面に保管部111から垂れ下がる矩形板状の前面板114を備えており、被検出部113は、前面板114に貫通状に設けられている。被検出部113は、後述の移載機125が位置検出器126を用いて保管棚112との間で荷物200を移載するために停止した位置においてセンサ127に検出される位置に配置されている。
【0016】
クレーン120は、ラック110との間で移載する荷物200を搬送する装置であり、昇降台121と、一対の吊持部材である長吊持部材122、短吊持部材123と、昇降駆動装置124と、移載機125と、走行駆動装置129と、位置検出装置126(
図3参照)と、センサ127と、マスト128と、を備えている。
【0017】
マスト128は、上下方向に延在する柱状の部材であり、左右方向においてラック110の両端部付近にそれぞれに設けられている。本実施の形態の場合、マスト128の上端部には、吊持部材が掛けられるプーリー139が取り付けられている。
【0018】
昇降台121は、左右方向において保管棚112に沿って延在し、ラック110に沿って昇降移動可能な部材であり、移載機125を左右方向に移動可能に保持する。本実施の形態の場合、昇降台121は、一対のマスト128の間に架橋状に配置され、マスト128に沿って上下方向に昇降する。
【0019】
昇降台121の構造は、特に限定されるものではないが、例えば移載機125が左右方向に走行するためのレールを備えてもよい。
【0020】
吊持部材は、マスト128に設けられたプーリー139に掛け渡されて昇降台121の両端部を吊り持つ部材である。吊持部材の種類は限定されるものではないが、例えばタイミングベルト、ワイヤー、チェーンを例示することができる。本実施の形態の場合、吊持部材は、左右方向において昇降台121の中心に対し昇降駆動装置124の反対側の昇降台121の端部を吊り持つ比較的長尺の長吊持部材122と、昇降駆動装置124側の昇降台121の端部を吊り持つ比較的短尺の短吊持部材123と、を備えている。
【0021】
長吊持部材122は、昇降駆動装置124側に配置されるマスト128のプーリー139から他方の側に配置されるマスト128のプーリー139に架け渡されて昇降台121の一端側に取り付けられている。短吊持部材123は、昇降駆動装置124側に配置されるマスト128のプーリー139を介して昇降台121の他端側に取り付けられている。つまり長吊持部材122は、短吊持部材123よりもマスト128の間隔程度長い。
【0022】
なお、吊持部材には昇降台121、および移載機125の重量を相殺するカウンターウエイトが取り付けられてもかまわない。
【0023】
昇降駆動装置124は、長吊持部材122、および短吊持部材123を同時に動作させて昇降台121を昇降させる装置である。昇降駆動装置124の構造は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、電動モーターと、減速機と、長吊持部材122、および短吊持部材を巻取り、巻き出す一対のドラムとを備えている。
【0024】
移載機125は、昇降台121に沿って左右方向へ移動し、ラック110の保管棚112との間で荷物200を移載する装置である。本実施の形態の場合、移載機125は、左右方向に隣接する保管部111にそれぞれ対応するように二台並べて配置されており、隣接する保管部111に対し同時に荷物200を移載することができる。なお、一つの昇降台121に一つの移載機125が配置されてもよく、三以上の移載機125が配置されてもかまわない。
【0025】
移載機125の種類は限定されるものではなく、荷物200の形状などに応じて適宜選択される。例えば、移載機125としては、ラック110に載置されている荷物200の側方にアームを差し込み荷物200の奥側(図中X+側)端面にフックを引っ掛けて荷物200をラック110から引き出して移載機125に載置し、移載機125に載置される荷物200の手前側(図中X-側)端面にフックを押し当てて荷物200を押し出してラック110に配置する装置を例示することができる。また、移載機125としては、荷物200の手前側端面に設けられた係合部にフックを引っ掛けて荷物200を押し引きすることで移載機125とラック110との間で荷物200を移載する装置を例示することもできる。また、移載機125としては、荷物200の両側方にアームを差し入れて荷物200を挟持し、挟持した荷物200を押し引きすることで移載機125とラック110との間で荷物200を移載する装置などを例示することもできる。
【0026】
走行駆動装置129(
図3参照)は、昇降台121に対し移載機125を左右方向に走行させる装置である。走行駆動装置129の構造は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、電動モーターと、減速機とを備えている。走行駆動装置129は、昇降台121に取り付けられて、移載機125を左右方向に走行させてもよく、移載機125に取り付けられて移載機125を自律的に走行させてもかまわない。
【0027】
位置検出装置126は、保管部111に対する移載機125の位置を被検出部113、およびセンサ127を用いることなく検出する装置である。本実施の形態の場合、位置検出装置126は、昇降台121の高さ位置を検出する縦検出器、および昇降台121に対する移載機125の位置である横位置を検出する横検出器を備えている。縦検出器は、吊持部材の巻き出し長さ、および巻取り長さに基づき昇降台121の高さ位置を示すことができるエンコーダなどであって昇降駆動装置124に取り付けられている。横検出器は、昇降台121、または移載機125に設けられ昇降台121に対して移載機125を横方向に走行させる走行駆動装置129に取り付けられ、昇降台121に対する移載機125の走行長さを示す事ができるエンコーダなどである。
【0028】
センサ127は、移載機125に搭載され、被検出部113を検出する。センサ127の種類は、特に限定されるものではなく、被検出部113に対応して選定される。本実施形態の場合、被検出部113は、奥行方向(図中X軸方向)に前面板114を貫通する矩形の孔であり、センサ127は、奥行方向において移載機125からラック110に向かってレーザー光を照射する光照射部と、受光した反射光の強弱(有無)によって被検出部113を検出する検出部と、を備えた装置である。つまり、レーザー光が前面板114に設けられた孔を通過すると前面板114で反射した反射光よりも反射光が弱くなる(無くなる)ことに基づいてセンサ127は、孔を検出する。他の光よりも照射領域が小さいレーザー光を用いたセンサ127により、前面板114と被検出部113との境界を高い分解能で検出することができる。なお、センサ127としては、レーザー光を用いた測距センサを流用することが可能である。
【0029】
本実施形態の場合、クレーン120は、複数の移載機125を備えており、移載機125のそれぞれにセンサ127が取り付けられている。
【0030】
図3は、制御装置の機能構成を示すブロック図である。制御装置150は、クレーン120を制御して、任意の位置の保管部111に移載機125を配置する装置であり、プロセッサにプログラムを実行させることにより実現される処理部として、配置部151と、正誤検出部152と、高さ位置検出部153と、異常報知部154と、を備えている。なお、以下に各処理部について説明するが説明する順と制御の流れは一致しない場合もある。制御の流れについては後述する。
【0031】
制御装置150は、プログラムの実行方式として通常モードと確認モードとを備えている。通常モードとは、荷物200をラック110の所定の位置に搬送してラック110に移載し、またラック110に保管されている荷物200を取り出して所定の場所に搬送するようにクレーン120を制御するモードである。確認モードとは、昇降台121の傾きを確認するために移載機125を所定の位置に配置し、昇降台121を昇降させるようにクレーン120を制御するモードである。なお制御装置150は、ティーチングモードを備えてもかまわない。ティーチングモードとは、移載機125を所定の保管部111の近傍に移動させ、被検出部113の左右方向の両端部、および上下方向の両端部をセンサ127が検出するようにクレーン120を制御し、同時に取得した位置検出装置126からの情報に基づき複数(全部でもよい)の保管部111の位置(座標)を基礎情報として記憶するモードである。
【0032】
通常モードにおいて、配置部151は、上位のコンピュータから取得する移載情報などで指示された保管部111との間で荷物200を移載することができる位置に移載機125を配置するように昇降駆動装置124、および走行駆動装置129を制御する。
【0033】
確認モードにおいて、配置部151は、昇降台121を複数の保管棚112の内の第一の保管棚112に配置し、配置された保管棚112において複数の保管部111に対応する複数の被検出部113の高さ位置を検出できるように、昇降駆動装置124、および走行駆動装置129を制御し、移載機125を移動させる。
【0034】
正誤検出部152は、通常モードにおいて、センサ127からの情報に基づき移載機125が保管部111に正しく配置されているか否かを検出する。具体的な検出方法は、被検出部113の種類とセンサ127との組み合わせに応じ、限定されるものではない。本実施形態の場合、正誤検出部152は、センサ127から取得した反射光の強度が光閾値未満の場合は、センサ127と被検出部113との位置関係が正しい、つまり移載機125が保管部111に正しく配置されていることを検出する。一方、センサ127から取得した反射光の強度が光閾値以上の場合は、センサ127と被検出部113との位置関係が誤りである、つまり移載機125が保管部111に正しく配置されていないことを検出する。
【0035】
本実施形態の場合、クレーン120は、センサ127を二つ備えている。正誤検出部152は、荷物200の移載対象となっている移載機125に搭載されたセンサ127からの信号に基づき正誤を検出する。二台の移載機125が同時に荷物200を移載する場合は、いずれのセンサ127からの信号によっても正と判断される場合のみ正を検出する。
【0036】
また、正誤検出部152は、通常モードにおいて、移載機125が保管部111に対して正しく配置されていないこと、つまり誤の検出に基づき確認モードへの移行を促す確認情報を報知する。報知方法は特に限定されるものではなく、例えば制御装置150が備える表示装置に確認情報を音、光、文字図形などにより報知してもよい。また、通信によりユーザーが使用する端末に、確認情報を報知してもかまわない。
【0037】
高さ位置検出部153は、確認モードにおいて、配置部151が保管部111に移載機125を配置し、対応する被検出部113の高さ位置を、位置検出装置126、およびセンサ127からの情報に基づき検出する。具体的な検出方法は、被検出部113の種類とセンサ127との組み合わせに応じ、限定されるものではない。本実施形態の場合、高さ位置検出部153は、
図6に示すように、配置部151に移載機125を所定の保管部111に対応する位置に配置させた後、昇降台121を上昇させることにより、上下方向において被検出部113の下方から被検出部113を通過させて被検出部113の上方までセンサ127から出射されるレーザー光を直線的に移動させる。高さ位置検出部153は、
図7に示すような反射光の受光強度が大きく変化する位置を被検出部113の下端、および上端と判断し、下端の高さ位置と上端の高さ位置との中間の高さ位置を被検出部113の高さ位置として検出する。なお、レーザー光を被検出部113の上方から下方に向かって直線的に移動させて被検出部113の下端、および上端の高さ位置を取得してもかまわない。
【0038】
高さ位置検出部153は、同じ保管棚112の複数の保管部111について被検出部113の高さ位置を検出する。本実施形態の場合、同じ保管棚112の最も右側に配置される保管部111、および最も左側に配置される保管部111について被検出部113の高さ位置を検出する。高さ位置検出部153は、複数の保管棚112について被検出部113の高さ位置の検出を行う。本実施形態の場合、最下段の保管棚112、および最上段の保管棚112の複数の被検出部113の高さ位置を検出する。
【0039】
なお確認モードにおいて、高さ位置検出部153は、複数の保管棚112の内の最下段の保管棚112に昇降台121を最初に配置し、最下段の保管棚112において異常報知部154が異常を報知した場合、配置部151に他の保管棚112に向かって昇降台121を上昇させることを中止してもかまわない。これにより、確認モードを早期に終了させることができる。
【0040】
異常報知部154は、一つの保管棚112について検出された複数の高さ位置に基づき昇降台121の傾きが異常か否かを判断し、異常と判断された場合は異常を報知する。異常報知部154の異常か否かの判断方法は、特に限定されるものではない。例えば、異常報知部154は、一つの保管棚112について高さ位置検出部153が複数の高さ位置を検出する毎に異常報知部154は高さ位置を取得して異常か否かの判断をしてもかまわない。具体的には、最も離れた位置にある二つの被検出部113の高さ位置の差が傾き閾値以上の場合、異常と判定する。また、複数の保管棚112についての高さ位置を取得した後、複数の高さ位置を統計的に処理し、統計処理の結果を用いて異常か否かの判定をしてもかまわない。
【0041】
異常の報知方法は、特に限定されるものではなく、例えば制御装置150が備える表示装置に異常を音、光、文字図形などにより報知してもよい。また、通信によりユーザーが使用する端末に、異常を報知してもかまわない。
【0042】
次に、制御装置150の処理の流れ、つまり搬送システム100の制御方法を説明する。
図4は、通常モードにおける制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
通常モードにおいては、配置部151は、所定の保管部111から荷物200を受取る、所定の保管部111へ荷物を受け渡すなどの情報が含まれる移載情報を上位のコンピュータなどから取得する(S101)。次に、配置部151は、移載情報などで指示された保管部111との間で荷物200を移載することができる位置に位置検出器126を用いて移載機125を移動させる(S102)。
【0044】
移載機125が所定の位置に配置されると、正誤検出部152は、センサ127からの情報を取得し(S103)、取得した情報に基づき移載機125の位置の正誤を判定する(S104)。移載機125が保管部111に正しく配置されている場合(S104、正)、移載情報に従い移載が実行される(S105)。移載情報に含まれる移載が全て完了していない場合(S106、No)、配置部151は、次の保管部111に移載機125を移動させる。移載情報に含まれる移載が全て完了している場合(S106、Yes)終了する。
【0045】
一方、正誤検出部152が、センサ127からの情報に基づき、移載機125が対応する保管部111に正しく配置されていないと判断した場合(S104、誤)、配置部151は、リトライを実行する(S107)。リトライとは移載機125の移動(S102)とセンサからの情報の取得(S103)とを実行することである。リトライによるセンサからの情報に基づき正誤検出部152が正誤を判定し(S108)、位置が正しい場合(S108、正)は移載が実行される(S105)、位置が正しくない場合(S108、誤)、確認情報が報知され(S109)、移載情報の途中で終了する。
【0046】
図5は、確認モードにおける制御装置の処理の流れを示すフローチャートである。確認モードにおいては、配置部151は、昇降台121を複数の保管棚112の内の一つへ移動させる(S201)。配置部151は、最初は複数の候補の中から最下段の保管棚112(本実施形態の場合、ラック110の最下段の保管棚112)に移動させる。なお、昇降台121の高さ位置は、対応する保管棚112に取り付けられる被検出部113の下方にセンサ127のレーザー光が照射される位置である。
【0047】
次に配置部151は、移載機125を複数の保管部111の内の一つへ移動させる(S201)。配置部151は、最初は複数の候補の中から一端部に配置される保管部111(本実施形態の場合、保管棚112の最も右(または左)の保管部111)に移動させる。
【0048】
次に配置部151は、被検出部113の高さ位置を検出できるように昇降台121とともに移載機125を上昇させる(S203)。本実施形態の場合、
図6に示すように、レーザー光は、破線矢印で示す軌跡210のように被検出部113を通過する。上昇と同時にセンサ127による被検出部113の検出を高さ位置検出部153が実行する(S204)。
図7は、高さ位置検出部153がセンサ127から取得した信号を示すグラフである。センサ127が前面板114を検出している間はONとなり、被検出部113を検出している間はOFFとなっている。
【0049】
次に、一つの保管棚112における保管部111に対応する被検出部113の検出が終了していなければ(S205、No)、ステップS202に戻る。配置部151は、次は複数の候補の中から他端部の保管部111(本実施形態の場合、保管棚112の最も左(または右)の保管部111)に移動させる。そして、配置部151は、一旦昇降台121を下降させてから再び上昇させ(S203)、被検出部113を検出する(S204)。
【0050】
一つの保管棚112における保管部111に対応する被検出部113の検出が終了していれば(S205、Yes)、異常報知部154は、傾き閾値に基づき二つの被検出部113の高さ位置の差を判定する(S206)。二つの被検出部113の高さ位置の差が傾き閾値以上であれば異常と判定する(S206、Yes)。この場合、異常報知部154は、異常を報知する(S207)。二つの被検出部113の高さ位置の差が傾き閾値未満であれば異常ではないと判定する(S206、No)。
【0051】
次に、ラック110における保管棚112について被検出部113の検出が終了していなければ(S208、No)、ステップS201に戻る。配置部151は、次は複数の候補の中からより上の保管棚112(本実施形態の場合、ラック110の最も上の保管棚112)に移動させる。その後ステップS202からステップ206を実行する。
【0052】
実施の形態に係る搬送システム100によれば、通常モードにおいて移載機125の配置の正誤を検出するセンサ127、および被検出部113を用い、確認モードにおいて昇降台121の傾きを検出することができる。したがって、長さの異なる長吊持部材122と短吊持部材123の伸びの違いから生じる昇降台121の傾きを検出しその旨を報知することができる。これにより作業者は、吊持部材を調整して昇降台121の傾きを水平に戻すことができ、その後の通常モードにおける荷物200の移載ミスを防ぐことができる。
【0053】
また、昇降台121の傾きを検出するためだけに設けられるセンサなどを用いないため、搬送システム100全体の部品点数を減少させることができ、制御装置150が実行するプログラムの簡易化を図ることができる。特にティーチングモードと確認モードとの動作の共通化を図ることにより更にプログラムの簡易化を図ることができる。
【0054】
また、最下段の保管棚112において異常が検出された場合、その旨を報知して確認モードを脱するため、確認モードを短時間で終了させる事ができる。
【0055】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0056】
例えば、被検出部113は、前面板114に貼り付けられた2次元コードであり、センサ127は、2次元コードとセンサ127との上下方向の相対的な位置関係、左右方向の相対的な位置関係を検出できるカメラなどでもかまわない。
【0057】
また、保管棚112を左右方向に延在する一体の板部材の場合を説明したが、保管棚112は、保管部111に対応して左右方向に分離されるものでもかまわない。
【0058】
また、被検出部113は、前面板114よりもレーザー光を強く反射させる反射板であってもかまわない。
【0059】
また、確認モードにおいて、複数段の保管棚112において異常を検出する場合を説明したが、単数の保管棚112、例えばラック110の最下段の保管棚112が備える被検出部113だけで昇降台121の傾きの異常を検出してもかまわない。
【0060】
また、確認モードは、搬送システム100の定期点検時に実行してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ピッキングシステムの仕分けのために荷物を搬送する搬送システム、重量のある荷物を搬送する搬送システムなどに利用可能である。
【符号の説明】
【0062】
100 搬送システム
110 ラック
111 保管部
112 保管棚
113 被検出部
114 前面板
120 クレーン
121 昇降台
122 長吊持部材
123 短吊持部材
124 昇降駆動装置
125 移載機
126 位置検出装置
127 センサ
128 マスト
129 走行駆動装置
139 プーリー
150 制御装置
151 配置部
152 正誤検出部
153 高さ位置検出部
154 異常報知部
200 荷物
210 軌跡