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特開2023-180602印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180602
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20231214BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231214BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A45D29/00
B41J2/01 401
B41J2/01 109
B41J2/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094034
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】入江 保
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB27
2C056EC41
2C056EE08
2C056FB01
2C056FB09
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】爪に印刷するデザインを各種の媒体に印刷した場合に、爪に印刷した場合との印象の違いをできるだけ少なくすることができる。
【解決手段】印刷装置1が、第1印刷条件で爪Tに印刷したときの出来栄えをダミー部材である紙PやネイルチップNtへのテスト印刷によって疑似表現する制御部11を備え、テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で爪Tに印刷したときの方が第1印刷条件で爪Tに印刷したときよりも、色の濃さが薄くなるように条件設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1印刷条件で爪に印刷したときの出来栄えをダミー部材へのテスト印刷によって疑似表現する制御手段を備え、
前記テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で前記爪に印刷したときの方が前記第1印刷条件で前記爪に印刷したときよりも、色の濃さが薄くなる条件に設定されている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記ダミー部材は、紙又はネイルチップである、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
印刷対象物の表面状態を認識する対象認識手段と、
認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するデータ変換手段と、
データ変換手段により変換された出力印刷データに基づいて印刷対象物に印刷を行う印刷手段と、
を備えている、
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
印刷対象物は、印刷対象面に湾曲を有するものを含んでおり、
前記元画像データは、曲率補正、傾斜補正の少なくともいずれかが施されたデータである、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
印刷対象物の表面状態を認識し、
認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換し、
変換された出力印刷データに基づいて印刷対象物に印刷を行う、
ことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項6】
第1印刷条件で爪に印刷したときの出来栄えをダミー部材へのテスト印刷によって疑似表現する印刷制御を行うものであり、
前記テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で前記爪に印刷したときの方が前記第1印刷条件で前記爪に印刷したときよりも、色の濃さが薄くなる条件に設定されている、
ことを特徴とする印刷制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
印刷対象物の表面状態を認識する対象認識機能と、
認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するデータ変換機能と、
を実現させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
第1印刷条件で爪に印刷したときの出来栄えをダミー部材へのテスト印刷によって疑似表現する印刷制御機能を実現させるものであり、
前記テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で前記爪に印刷したときの方が前記第1印刷条件で前記爪に印刷したときよりも、色の濃さが薄くなる条件に設定されている、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、印刷制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、爪等にデザインの印刷を行う印刷装置(ネイルプリント装置)が知られている。例えば、特許文献1には、爪の他、紙のシート等にもデザインの印刷が可能な印刷装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-017991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、人の爪には、表面に縦筋や窪み等、不規則な凹凸等があり、カメラ等によって認識されたものよりも、実際の表面積が大きい。
このため、表面に凹凸等のないネイルチップ等の人工物や平板状の紙のシート等に、爪にデザインを印刷する場合と同じ濃度で印刷を行うと、全体に色が濃くなりすぎてしまう。
【0005】
また、爪は爪幅方向等に湾曲しているため、特に幅方向等の端部においては実際の塗布面積が広くなっている。さらに幅方向の端部は爪の中央部分よりも低く落ち込んでいるために印刷ヘッドのノズル面(インク吐出面)との距離が遠くなっており、その分インクの着弾率が低下することも考慮して、幅方向の端部ではインクの塗布量が多くなるように印刷データが作られている。
このため、紙のシートのように平板状の媒体に対して爪の場合と同じデータで印刷を行うと、特に爪の端部に相当する部分で色の濃さが目立ってしまう。
【0006】
本発明は、上記のような課題を鑑みてなされたものであり、爪に印刷するデザインを各種の媒体に印刷した場合に、爪に印刷した場合との印象の違いをできるだけ少なくすることができる印刷装置、印刷制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る印刷装置は、
第1印刷条件で爪に印刷したときの出来栄えをダミー部材へのテスト印刷によって疑似表現する制御手段を備え、
前記テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で前記爪に印刷したときの方が前記第1印刷条件で前記爪に印刷したときよりも、色の濃さが薄くなる条件に設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、爪に印刷するデザインを各種の媒体に印刷した場合に、爪に印刷した場合との印象の違いをできるだけ少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態における印刷装置の要部外観構成を示す斜視図である。
図2】印刷装置の内部要部構成を示す平面図であり、(a)は、印刷装置の内部を上から見た図であり、(b)は、印刷装置の内部を装置背面側から見た図である。
図3】載置部にネイルチップ用の補助具を取り付けて、印刷対象物としてネイルチップをセットした状態を模式的に示す説明図である。
図4】載置部に紙用の補助具を取り付けて、印刷対象物として紙等のシートをセットした状態を模式的に示す説明図である。
図5】本実施形態において互いに連携する印刷装置、端末装置の概略の制御構成を示す要部ブロック図である。
図6】本実施形態における印刷用データの作成及び印刷制御処理を示すフローチャートである。
図7】本実施形態における印刷対象認識処理の一例を示すフローチャートである。
図8】シアンの変換用ルックアップテーブルの一例を示す図である。
図9】マゼンタの変換用ルックアップテーブルの一例を示す図である。
図10】イエローの変換用ルックアップテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1から図10を参照しつつ、本発明に係る印刷装置、印刷制御方法及びプログラムの一実施形態について説明する。
なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
図1は、本実施形態における印刷装置(ネイルプリント装置)の要部外観構成を示す斜視図である。なお、以下の実施形態において、上下、左右及び前後は、図1に示した向きをいうものとする。また、X方向、Y方向、Z方向は、図1に示した方向をいうものとする。図2(a)及び図2(b)は、印刷装置の内部要部構成を示す平面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の印刷装置1は、ほぼ箱形に形成された筐体2を有している。筐体2は上下方向のほぼ中央部から上下に分かれており、上側部分は、図示しないヒンジ部等を介して上方向(図2に示す矢印参照)に回動可能な蓋部2aとなっている。蓋部2aを開被することで、筐体内部に設けられている、後述する載置部3や印刷ヘッド41等にアクセス可能となる。
印刷装置1の筐体2の前面側(図2においてY方向の手前側)であって装置の左右方向(図2におけるX方向)のほぼ中央部には、開口部21が形成されている。開口部21は、印刷対象物となる爪Tに対応する指U(図2(a)及び図2(b)参照)を装置内に挿入する指挿入口であり、指Uを出し入れ可能な程度の幅及び高さを有している。
本実施形態では、筐体2の内部であって開口部21の内側に、印刷対象物となる爪Tに対応する指Uを配置する載置部3が設けられている。
【0013】
図2(a)及び図2(b)に示すように、載置部3の下側面は、開口部21から挿入された指Uの腹部分を受ける指受け部31となっている。なお、指受け部31には、例えば樹脂等の柔軟性を有する材料で形成されたクッション部材が設けられていてもよい。
載置部3の奥側(装置後方側)の上面には開口部21から指Uが挿入され指受け部31により保持された場合に、指Uの爪T部分を露出させる窓部32が形成されている。
また本実施形態では、載置部3の手前側(図1におけるY方向の手前側)に指Uの上方を囲うような枠状部33が設けられている。載置部3に配置された指Uの上側は、この枠状部33の天面に突き当てられるように構成されている。これにより、枠状部33の天面が指Uの上方向の位置を規制する指押えとして機能し、指Uが上方向に上がりすぎるのを防いで、指Uの高さ方向を位置決めすることができる。
【0014】
載置部3の高さや幅、奥行き方向の長さは、指Uを安定して配置できる程度の高さや幅等であればよく、具体的にどの程度とするかは適宜設定される。
なお、載置部3の少なくとも一部(例えば指Uを受ける指受け部31)は、上下方向に可動するように構成されていてもよい。
開口部21から挿入された指Uは、載置部3の指受け部31上に載置され、指Uの上面が枠状部33の天面によって規定されることで、爪Tが後述の印刷ヘッド41による印刷に適した適正位置に配置された状態で保持される。
【0015】
また、本実施形態では爪Tの他、爪T以外の印刷対象物(ダミー部材)に対しても印刷を行うことが可能となっている。ダミー部材に対する印刷は、主として、爪Tに実際に印刷(これを「本印刷」ともいう)する前に出来栄え(仕上がり具合)を確かめるテスト印刷として行われる。後述するように、爪Tに印刷する印刷条件を「第1印刷条件」としたとき、ダミー部材へのテスト印刷では、この「第1印刷条件」で爪Tに印刷したときの出来栄えを、ダミー部材上で疑似表現することができる。
本実施形態では、ダミー部材(すなわち、爪T以外の印刷対象物)として、例えばネイルチップNt(図3参照)、紙P(図4参照)を想定している。
本実施形態の載置部3は、このダミー部材(ネイルチップNt及び紙P)に印刷を行う場合に載置部3の本体部に装着して、これらの印刷対象物(ダミー部材)を所定の位置に配置する補助具34を着脱可能に備えている。
補助具34は、爪T以外の各印刷対象物(ダミー部材)に応じて用意されており、具体的には、ネイルチップNt(図3参照)に対応して図3に示す補助具34aが用意され、紙P(図4参照)に対応して図4に示す補助具34bが用意されている。
これにより、少なくとも幅方向の中央部の高さ方向(図1図4においてZ方向)の位置は、爪T、ネイルチップNt、紙Pいずれの場合にも一定に保たれ、印刷ヘッド41(印刷ヘッド41のインク吐出面411)までの距離がほぼ一定となる。
【0016】
すなわち、ネイルチップNtは爪様に湾曲した部材であり、爪Tと同様に幅方向の中央部の高さが最も高い。このため、ネイルチップ用の補助具34aは、図3に示すように、爪Tが印刷対象物であるときに爪Tの幅方向の中央部が位置する高さとほぼ面一にネイルチップNtの最も高さの高い部分が配置されるような寸法に形成されている。また紙Pは、湾曲がない平板状の紙(紙片)である。このため、紙用の補助具34bは、図4に示すように、紙Pの印刷対象面全体が、爪Tが印刷対象物であるときに爪Tの幅方向の中央部が位置する高さとほぼ面一に配置されるような寸法に形成されている。
補助具34a,34bは、例えば載置部3の窓部32を覆うように載置部3の上側に取り付けられる。
補助具34a,34bを載置部3に取り付ける際には、筐体2の蓋部2aを開被して、載置部3の上面を露出させ、補助具34a,34bを載置部3の窓部32等に係止させる。
なお、補助具34a,34bの具体的な取り付け方は特に限定されない。例えば載置部3と補助具34a,34bとに互いに嵌り合う図示しない凹凸部等を設けて、これを嵌め合わせることにより補助具34a,34bを載置部3に嵌め込んで係止・固定させてもよい。
【0017】
ここで本実施形態のダミー部材(爪T以外の印刷対象物)であるネイルチップNtは、例えば合成樹脂等で形成された爪様のチップである。
また紙Pは、平板状の媒体であり、補助具34bに載置可能な所定の大きさ(例えば3cm×3cm程度)の矩形にカットされたものが用いられる。紙Pの種類としては印刷に適した各種紙質のものであれば特に限定されない。なお、補助具34bに載置される平板状の媒体は紙でなくてもよく、例えば合成樹脂等で形成されたプレートやフィルムのようなものでもよい。
本実施形態では、ネイルチップNt、紙Pは、ともに表面(印刷対象面)にインク受容層を有しており、着弾したインクを表面に定着させることができる。ネイルチップNt、紙Pとしては白色のものが用いられるが、これに限定されない。例えば薄いピンク色やベージュ等であってもよい。なお、補助具34a,34bにセットされるネイルチップNt、紙Pは、例えば印刷装置1に同梱等された専用のものでもよいし、ユーザが適宜用意したものでもよい。
【0018】
筐体2の上面(天板)には操作部22が設置されている。
操作部22は、ユーザが各種入力を行うものである。
操作部22は、例えば、印刷装置1の電源をON/OFFする電源スイッチ釦、動作を停止させる停止スイッチ釦、印刷開始を指示する印刷開始釦等、各種の入力を行うための操作釦で構成されている。
操作部22が操作されると操作に応じた操作信号が制御装置10の制御部11に出力され、制御部11が操作信号に従った制御を行い、印刷装置1の各部を動作させる。
【0019】
また筐体2の上面には、表示部23が配置されている。
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機ELD)、その他のディスプレイ(フラットディスプレイ)を含んでいる。表示部23は、後述の制御部11から入力される表示信号に基づいて、ディスプレイに各種画像や情報を表示させる。
本実施形態の表示部23のディスプレイは、タッチパネルと一体的に構成されていてもよく、この場合にはタッチパネルが、ユーザによるタッチ操作を受け付け、各種入力を行う操作部22としても機能する。
【0020】
また図5は、印刷装置、及びこれと連携する端末装置の概略の制御構成を示す要部ブロック図である。
図5に示すように、印刷装置1は前述の操作部22、表示部23を備える他、印刷機構4、撮影部5、通信部25、及び制御装置10等を備えている。
【0021】
印刷機構4は、印刷ヘッド41を収容する図示しない収容部と、印刷ヘッド41を移動させる移動手段としてのX方向移動モータ45、Y方向移動モータ47(図5参照)とを備えている。印刷ヘッド41は出力印刷データに基づいて印刷対象物に印刷を行う印刷手段である。
本実施形態において印刷ヘッド41は、図示しないインク貯留部を内蔵するとともに、インク貯留部内のインクを微細な液滴として吐出させ、印刷対象面に印刷を施すインクジェット方式のインク吐出機構(図示せず)を一体的に備えているカートリッジ一体型の印刷ヘッドである。
【0022】
印刷ヘッド41における印刷対象面(本実施形態では、爪T等印刷対象物の表面)に対向する面には、インク吐出面(ノズル面)411が一体に形成されている。インク吐出面411には、それぞれの色のインクを噴射する複数のノズルからなるノズルアレイの吐出口(ノズル口、インク吐出口、図示せず)が列状に形成されている。
印刷ヘッド41は、印刷制御部として機能する制御部11がインク吐出機構を制御することで、適宜所定のインクをノズル口から吐出させ、印刷を行うようになっている。
なお、印刷ヘッド41は、ここに例示したような構成のものに限定されない。例えば、インク貯留部を別個に有し、印刷に使用される際には、別体として構成されるインク貯留部とインク吐出機構とが接続されるように構成されていてもよい。また、印刷ヘッド41がインクを吐出させる構成等、印刷を行うための具体的な構成は特に限定されない。
【0023】
本実施形態の印刷機構4に設けられている印刷ヘッド41は、例えばシアン(C;CYAN)、マゼンタ(M;MAGENTA)、イエロー(Y;YELLOW)の色インクに対応するインク貯留部を有しており、デザイン(ネイルデザイン)をカラー印刷するデザイン印刷用の印刷ヘッド41である。なお、印刷ヘッド41によって印刷可能なインクはここに上げたものに限定されない。これ以外の色のインクを有し、吐出可能となっていてもよい。
また印刷機構4は上記のようなデザイン印刷用の印刷ヘッド41の他に、例えばデザイン印刷前に爪Tの上に白色等(白色若しくはこれに近いピンクやブルー等)の下地を形成する下地印刷用の印刷ヘッドを備えていてもよい。下地印刷用の印刷ヘッドは内部に下地用インクを貯留するインク貯留部を有している。
【0024】
本実施形態では印刷ヘッド41が装置の左右方向(X方向)及び前後方向(Y方向)に移動可能となっており、X方向移動モータ45は印刷ヘッド41をX方向に移動させるX方向移動機構450(図2(a)及び図2(b)参照)を構成し、Y方向移動モータ47は印刷ヘッド41をY方向に移動させるY方向移動機構470(図2(a)参照)を構成する。X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47は、例えばステッピングモータであり、後述する印刷制御部として機能する制御部11によりその動作を制御される。
【0025】
撮影部5は、カメラ51と、光源52とを備えている。
カメラ51は、窓部32を含む載置部3周辺を撮影することで、載置部3に配置された印刷対象物(すなわち本実施形態では、爪T、ネイルチップNt、紙P)を撮影し、その画像を取得する。カメラ51によって取得された画像は、制御部11に送られる。
また、光源52は、例えば白色LED等の照明灯である。
撮影部5のカメラ51は、印刷対象物として爪Tが載置部3に配置された場合には、爪Tや爪Tを含む指Uを撮影して図示しない爪画像を取得する。本実施形態では、後述する制御部11により、カメラ51で取得された爪画像から印刷領域である爪領域を画する爪輪郭が検出される。
【0026】
通信部25は、外部装置との間で通信する通信手段である。なお、本実施形態において「外部装置」とは、後述の端末装置7等である。
印刷装置1と端末装置7等との間での通信は、例えば無線LAN等により行われる。なお、印刷装置1と端末装置7等との間での通信はこれに限定されず、いかなる方式によるものでもよい。例えば、インターネット等のネットワーク回線を使うものであってもよいし、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信を行うものであってもよい。また、この通信は無線接続方式に限定されず、有線接続により両者間で各種データの送受信が可能な構成としてもよい。通信部25は通信することが想定される各種外部装置の通信方式、通信規格に対応するアンテナチップ等を備えている。
【0027】
印刷装置1に搭載される制御装置10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する制御部11と、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等(いずれも図示せず)を有する記憶部12とを備えるコンピュータである。
記憶部12のROM等には、印刷装置1を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
ROM等に格納された各種プログラムを制御部11がRAMの作業領域に展開して実行することによって、印刷装置1の各部の動作を統合的に制御する。
すなわち、制御部11はプログラム(例えば印刷制御処理プログラム等)との協働により、印刷装置1が印刷制御処理等を行うための各種機能を実現する。
【0028】
また本実施形態では、RGBの元画像データを印刷に用いるCMYの出力印刷データに変換する処理に用いられる出力値変換テーブルが印刷装置1の記憶部12に記憶されている。出力値変換テーブルは後述するように、RGBの元画像データをシアン・マゼンタ・イエローの出力値に変換するために用いられるルックアップテーブル(以下「LUT」という。)であり、シアン・マゼンタ・イエローの各色別に用意されている。各色別のLUTには、それぞれ爪T、ネイルチップNt、紙P、という表面状態(後述)の異なる印刷対象物に応じた出力値が設定されており、LUTは本実施形態において印刷対象物の表面状態に応じてRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するために用いられる。印刷対象物に応じた出力値が設定された各色ごとのLUTを適用してRGBの元画像データをCMYの出力値に変換することで、CMYの各色を印刷対象物に応じた濃度で印刷することができる。
【0029】
すなわち本実施形態の出力値変換テーブルでは、爪Tを印刷対象物として印刷を行う際の印刷条件(すなわちシアン・マゼンタ・イエローの各色別に用意されたLUTのうち、爪Tに応じた出力値で印刷を行うとの条件)を「第1印刷条件」としたとき、ネイルチップNtや紙Pといったダミー部材に対するテスト印刷のときの印刷条件(すなわち上記LUTのうち、ネイルチップNtに応じた出力値で印刷を行うとの条件や紙Pに応じた出力値で印刷を行うとの条件)で爪Tに印刷したときの方が「第1印刷条件」で爪Tに印刷したときよりも、色の濃さが薄くなるように条件が設定されている。
【0030】
本実施形態において制御部11は、主として表示部23の動作を制御する表示制御手段、印刷機構4各部の動作を制御する印刷制御手段、撮影部5各部の動作を制御する撮影制御手段、通信部25の動作を制御する通信制御手段等として機能する。
【0031】
表示制御手段としての制御部11は、表示部23のディスプレイに表示させる表示データを生成し、表示部23に出力する。例えば制御部11は、撮影部5により取得された爪画像等を表示させるための画像データや、デザイン(ネイルデザイン)等を表示部23に表示させるための表示データ、各種メッセージ画面、案内画面、エラー表示画面等を表示部23のディスプレイに表示させる表示データ等を生成する。
【0032】
印刷制御手段としての制御部11は、印刷機構4の動作を制御する。具体的には後述のデータ変換手段としての制御部11により変換された出力印刷データに基づいて印刷ヘッド41のインク吐出機構を制御し、適宜インクを吐出させ、印刷対象物に対する印刷を行わせる。また、印刷制御手段としての制御部11は、適宜X方向移動モータ45、Y方向移動モータ47を動作させて適宜印刷ヘッド41をXY方向に移動させる。
【0033】
撮影制御手段としての制御部11は、撮影部5のカメラ51及び光源52の動作を制御して、光源52によって爪T等の印刷対象物やその周辺を照明させ、カメラ51によって爪画像等の画像を取得させる。
【0034】
通信制御手段としての制御部11は、通信部25を制御して端末装置7の通信部75との間で通信を行わせ、例えばデザイン(ネイルデザイン)の元画像データ等を端末装置7から受信させる。
また、本実施形態では、印刷開始の指示等、各種の指示を端末装置7側から受信することで印刷装置1が動作するようになっており、印刷装置1の制御部11は、これらの指示を、通信部25を介して受信する。端末装置7等から指示を受信すると、制御部11は、指示にしたがった動作を装置各部に行わせる。
なお、デザイン(ネイルデザイン)が端末装置7等の外部装置で選択された場合には、選択されたデザインのデータ等を、端末装置7等の外部装置から受信するように制御部11が通信部25を制御する。
【0035】
さらに、本実施形態の制御部11は、撮影部5から印刷対象物(すなわち、載置部3に載置されている爪T、ネイルチップNt、紙P)の画像を取得して、画像解析等を行うことにより、印刷対象物の表面状態を認識する対象認識手段として機能する。
ここで、印刷対象物の表面状態とは、外形形状や、表面(印刷対象面)の湾曲具合、表面の凹凸の有無等、印刷対象物の表面積(インクが塗布される面積)に影響を与えるようなものを広く含む。例えば表面に凹凸がある場合には、単に上面視した場合の面積よりも実面積は広くなる。なお画像から印刷対象物の表面状態を認識(検出)する具体的な手法は特に限定されない。
例えば制御部11は、画像が爪Tを含む指Uの画像(爪画像)である場合、これを画像解析することにより画像中に指Uが撮影されていることを検出する。また輝度等の違いから指Uと区別される爪領域を画する爪輪郭を検出する。さらに、爪Tの曲率レベルや傾斜レベル(爪幅方向の曲がり具合や爪Tの傾き具合)を検出できる場合には、これらについても検出する。
また、印刷対象物の画像から、印刷領域(すなわち、印刷対象物の印刷対象面)の形状が矩形であれば印刷対象物が紙Pであると判断し、矩形以外の円形状や楕円形状である場合には印刷対象物がネイルチップNtと判断する。
【0036】
また本実施形態では、ネイルデザインの元画像データは、例えば後述の端末装置7の記憶部72等に記憶されており、爪Tに印刷したいデザインがユーザによって選択されると、当該デザインの元画像データが印刷装置1に送信される。
制御部11は、ネイルデザインの元画像データ(RGBデータ;「R=Red(赤)」「G=Green(緑)」「B=Blue(青)」で構成されるデータ)を、画像から認識された印刷対象物の形状(認識された印刷対象物がユーザの爪Tである場合には爪輪郭)に合わせ込んで、RGBの元画像データを生成する。なお、印刷対象物(例えば爪T)は、印刷対象面に湾曲を有するものを含んでおり、元画像データは、曲率補正、傾斜補正の少なくともいずれかが施されたデータである。
【0037】
すなわち、制御部11により生成されるRGBの元画像データには、爪Tに印刷された場合に適切な見栄えとするのに必要な補正(すなわち曲面補正、傾斜補正等)が施されているものとする。ネイルチップNtや紙Pへの印刷は、実際に爪Tに印刷する前にどのような仕上がり具合になるかを確認するためのテスト印刷等として行われることが多いところ、このように曲面補正等が適用されたデータを元データとすることで、当該データにしたがってネイルチップNtや紙Pに印刷した場合にも爪Tに印刷された場合のイメージに近い仕上がりを実現することができ、出来栄え(仕上がり具合)の確認を効果的に行うことができる。
【0038】
さらに、本実施形態の制御部11は、認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するデータ変換手段として機能する。本実施形態では、制御部11は、画像から認識された印刷対象物の表面状態に基づいて印刷対象物が爪Tであるか、ネイルチップNtであるか、紙Pであるかを区別する。そして、各色ごとの出力値変換テーブルを参照し、それぞれの印刷対象物に応じた出力値を読み出して適用する。なお、本実施形態では出力値変換テーブルが印刷装置1の記憶部12に記憶されている場合を例示するが、これに限定されない。例えば出力値変換テーブルが端末装置7の記憶部72等に記憶され、制御部11がこれを参照してデータ変換処理を行ってもよい。
【0039】
[端末装置の構成]
端末装置7は、例えば、スマートフォン、タブレット型の端末装置(以下「タブレットPC(Personal Computer)」、携帯電話機等の携帯型の端末装置である。なお、端末装置7はこうした携帯型の端末装置に限定されず、例えばノートPC、デスクトップPC等であってもよい。
【0040】
図5に示すように、端末装置7は、制御装置70、操作部73、表示部74、通信部75等を備えている。
【0041】
操作部73は、ユーザの操作に応じて各種の入力・設定等を行うことができるようになっており、例えば後述する表示部74の図示しないディスプレイに一体的に設けられたタッチパネルである。
本実施形態で操作部73は、印刷装置1(及び印刷装置1と連携する端末装置7)により実現される印刷制御処理についてユーザの各種指示を入力する。
操作部73が操作されると、当該操作に対応する入力信号が制御部71に送信され、制御部71が操作信号に従った制御を行う。
【0042】
表示部74は、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイ(フラットディスプレイ)を含んでおり、制御部71から入力される表示信号に基づいて、ディスプレイに各種画像や情報、メッセージ画面等を表示させる。
本実施形態の表示部74のディスプレイは、タッチパネルと一体的に構成されていてもよく、この場合タッチパネルには、制御部71の制御にしたがって各種の操作画面が表示される。ユーザはタッチパネルへのタッチ操作によって各種の入力・設定等の操作を行うことができ、タッチパネルが、ユーザによるタッチ操作を受け付け、各種入力を行う操作部73として機能する。なお、各種の入力・設定等の操作を行う操作部73はタッチパネルである場合に限定されない。
【0043】
さらに端末装置7は、印刷装置1等の外部装置から各種情報を受け付けるとともに、爪Tに印刷するデザイン(ネイルデザイン)の元画像データ等を印刷装置1に対して出力するようになっている。印刷装置1等との間では、例えばBluetooth(登録商標)やWi-Fi等の近距離無線通信規格に基づく無線通信、無線LAN等による通信、有線接続による通信によって、データの送受信を行うようになっており、端末装置7は、こうした通信に対応する通信部75を備えている。
なお、具体的な通信の方式等は特に限定されない。いくつかの通信方式の中から適宜選択できてもよい。
【0044】
制御装置70は、図示しないCPU等のプロセッサを有する制御部71と、ROM及びRAM等(いずれも図示せず)を有する記憶部72等を備えるコンピュータである。記憶部72には、端末装置7の各部を動作させるための各種プログラムや各種データ等が格納されている。
【0045】
制御部71は、記憶部72に記憶されているシステムプログラム及びアプリケーションプログラムのうち、指定されたプログラムを読み出して、RAMのワークエリアに展開し、当該プログラムに従って各種処理を実行して、端末装置7の各部を制御する。
特に本実施形態では、記憶部72にネイルプリントアプリケーションプログラム721(以下、「ネイルプリントAP」とする。)が格納されており、制御部71は、こうしたプログラムとの協働により、印刷装置1を用いたネイルプリントに関する各種機能を実現する。
具体的には制御部71は、表示部74の動作を制御する表示制御部、通信部75の動作を制御する通信制御部等として機能する。
【0046】
また本実施形態では、記憶部72にデザイン(ネイルデザイン)の元画像データ(RGBデータ)が記憶されており、制御部71は表示制御部としてデザインを表示部74に表示させ、ユーザに選択するよう促す。そしていずれかのデザインが選択されると、当該デザインの元画像データを、通信部75を介して印刷装置1に送信するようになっている。
【0047】
[印刷制御処理、印刷装置の動作]
続いて、図6図7等を参照しつつ、本実施形態における印刷装置の動作、印刷制御処理について説明する。
本実施形態の印刷装置1を用いてネイルプリントを行う場合には、ユーザは、印刷装置1の操作部22(操作ボタン)等を操作して電源を入れ起動させる。また端末装置7についても電源を入れて端末装置7の操作部73からネイルプリント処理の実行を選択する。これによりネイルプリントAP721が起動する。
なお本実施形態では、印刷装置1及び端末装置7が起動すると、ユーザは、端末装置7の操作部73等から爪Tに印刷したいデザイン(ネイルデザイン)を選択、設定する入力操作を行うことができる。デザインが選択されると、当該デザインの元画像データ(RGBデータ)が印刷装置1に送信される。印刷装置1では当該デザインについて、印刷対象物に応じた出力印刷データを生成する。
【0048】
図6は、印刷対象物に応じた出力値変換テーブルを適用して、RGBの元画像データを、印刷に用いるCMYの出力印刷データに変換する処理(データ変換処理)及び当該データを用いて印刷対象物に印刷を行う印刷制御処理を示すフローチャートである。
図6に示すように、出力印刷データを生成する際には、まず何に対して印刷処理を行うのかを判断するため、印刷対象物の表面状態を認識する印刷対象認識処理が行われる(ステップS1)。
【0049】
図7は、印刷対象認識処理の一例を示すフローチャートである。なお印刷対象物の表面状態を認識し、印刷対象物を特定する手法はここに示すものに限定されない。
本実施形態における印刷対象認識処理では、まず撮影部5のカメラ51で載置部3(載置部3の窓部32及びその周辺等)を撮影して画像を取得する(ステップS21)。
画像は制御部11に送られ、制御部11において取得される。制御部11は取得した画像について画像解析等を行い(ステップS22)、載置部3にセットされている印刷対象物が何であるかを特定する。
【0050】
具体的には、制御部11はまず載置部3の上に指Uがあるか否かを判断する(ステップS23)。例えば載置部3の指受け部31を、何も塗付されていない状態の指Uの地色等と区別しやすい黒色等の部材としておいた場合、制御部11は色や輝度の差に基づいて指Uの有無を判断する。
そして指Uが配置されていると判断された場合(ステップS23;YES)には、制御部11はさらに爪Tを認識できるか否かを判断する(ステップS24)。例えば爪Tには白色等のベースコート(下地)が形成されており、制御部11は、何も塗付されていない状態の指Uの色等と白色等に塗られている爪Tとの色や輝度の差等に基づいて爪Tを認識することができるか否かを試みる。そして爪Tが認識できた場合(ステップS24;YES)には、制御部11は印刷対象物が爪Tであると判断する(ステップS25)。他方、爪Tが認識できない場合(ステップS24;NO)には、制御部11は印刷対象物がない(配置されていない)と判断する(ステップS26)。なお指Uが配置されているが爪Tが認識できない場合とは、例えば指Uが爪Tを下にして置かれている場合等である。
【0051】
一方、載置部3に指Uが配置されていないと判断された場合(ステップS23;NO)には、制御部11はさらに何らかの印刷領域を認識できたか否かを判断する(ステップS27)。例えば前述のように指受け部31が黒色等の部材である場合、載置部3を写した画像中に一定範囲黒色でない領域がある場合には、制御部11は何らかの印刷領域があると判断する(ステップS27;YES)。そして印刷領域がある場合、制御部11はさらにその印刷領域の形状が矩形であるか否かを判断する(ステップS28)。印刷領域が矩形である場合(ステップS28;YES)には、制御部11は印刷対象物が紙Pであると判断する(ステップS29)。また印刷領域が矩形でない場合(例えば円形や楕円形等である場合、ステップS28;NO)には、制御部11は印刷対象物がネイルチップNtであると判断する(ステップS30)。
【0052】
他方で、載置部3やその周辺を写した画像中に印刷領域を認識することができない場合(ステップS27;NO)には、制御部11は印刷対象物が載置部3に配置されていないと判断する(ステップS31)。
図6に戻り、印刷対象認識処理の結果、印刷対象物が爪Tである場合(ステップS2)には、制御部11はRGBの元画像データにシアン・マゼンタ・イエローの各色別に用意したルックアップテーブル(出力値変換テーブル、「LUT」)のうち、爪用の出力値を適用して(ステップS3)、RGBの元画像データをCMYの出力値に変換した印刷用のデータ(出力印刷データ)に変換する(ステップS4)。これにより爪印刷用のCMY出力印刷データが生成される(ステップS5)。
【0053】
同様に、印刷対象認識処理の結果、印刷対象物がネイルチップNtである場合(ステップS6)には、制御部11はRGBの元画像データに、出力値変換テーブル(「LUT」)のうち、ネイルチップ用の出力値を適用して(ステップS7)、RGBの元画像データをCMYの出力値に変換した印刷用のデータ(出力印刷データ)に変換する(ステップS4)。これによりネイルチップ印刷用のCMY出力印刷データが生成される(ステップS8)。
また印刷対象認識処理の結果、印刷対象物が紙Pである場合(ステップS9)には、制御部11はRGBの元画像データに、出力値変換テーブル(「LUT」)のうち、紙用の出力値を適用して(ステップS10)、RGBの元画像データをCMYの出力値に変換した印刷用のデータ(出力印刷データ)に変換する(ステップS4)。これにより紙印刷用のCMY出力印刷データが生成される(ステップS11)。
生成されたCMY出力印刷データは印刷機構4に出力されて(ステップS12)、印刷機構4(印刷機構4の印刷ヘッド41)により、印刷対象物(すなわち、爪T、ネイルチップNt、紙Pのいずれか)の印刷対象面にCMY出力印刷データに基づく印刷が行われる(ステップS13)。
【0054】
ここで、図8から図10を参照しつつ、各色ごとの出力値変換テーブル(「LUT」)について具体的に説明する。
図8は、シアン用のルックアップテーブルの内容を示すグラフである。
図8において、横軸はRGB値である。図8ではR値00の状態でG値、B値を変化させてプロットしている。縦軸はRGBデータをCMYデータに変換した後のシアンの値(シアンの出力値、シアンのドットの出力量)である。グラフにおいて、実線は紙用の出力値、破線はネイルチップ用の出力値、点線は爪用のケースの出力値を示している。
図中矢印で示すように、グラフの上側(255階調側)に行くにしたがって出力が多く濃度が濃いことを示している。またグラフの左側から右側に行くにしたがって濃度が濃い(RGB値が高い)場合となっており、RGB値に対してシアンの出力値は、紙用<ネイルチップ用<爪用の関係にある。また印刷対象物ごとの出力値の差は濃色になるほど拡大する。
【0055】
図9は、マゼンタのルックアップテーブルの内容を示すグラフである。
図9において、横軸はRGB値である。図9ではG値00の状態でR値、B値を変化させてプロットしている。縦軸はRGBデータをCMYデータに変換した後のマゼンタの値(マゼンタの出力値、マゼンタのドットの出力量)である。グラフにおいて、実線は紙用の出力値、破線はネイルチップ用の出力値、点線は爪用のケースの出力値を示している。
図中矢印で示すように、グラフの上側(255階調側)に行くにしたがって出力が多く濃度が濃いことを示している。またグラフの左側から右側に行くにしたがって濃度が濃い(RGB値が高い)場合となっており、RGB値に対してマゼンタの出力値は、シアンの場合と同様に、紙用<ネイルチップ用<爪用の関係にある。また印刷対象物ごとの出力値の差は濃色になるほど拡大する。
【0056】
図10は、イエローのルックアップテーブルの内容を示すグラフである。
図10において、横軸はRGB値である。図10ではB値00の状態でR値、G値を変化させてプロットしている。縦軸はRGBデータをCMYデータに変換した後のイエローの値(イエローの出力値、イエローのドットの出力量)である。グラフにおいて、実線は紙用の出力値、破線はネイルチップ用の出力値、点線は爪用のケースの出力値を示している。
図中矢印で示すように、グラフの上側(255階調側)に行くにしたがって出力が多く濃度が濃いことを示している。またグラフの左側から右側に行くにしたがって濃度が濃い(RGB値が高い)場合となっており、RGB値に対してマゼンタの出力値は、シアン等の場合と同様に、紙用<ネイルチップ用<爪用の関係にある。また印刷対象物ごとの出力値は、シアンやマゼンタほど大きな差ではないものの、濃色になるほど差が拡大することが分かる。
【0057】
紙Pのように平板状の印刷対象物の場合、表面(印刷対象面)に縦筋や凹凸がある爪Tと異なり、表面(印刷対象面)が滑らかであり、その分実質的な表面積が爪Tよりも小さいため、爪Tと同様の仕上がりにするために必要なインク量が少なくてすむ。また爪Tの場合、幅方向に湾曲していたり長さ方向に傾斜している場合もあり、印刷対象面には部分的に高低差を生じている。このため例えば幅方向の端部等では実際の塗布面積が広くなっている。さらに幅方向の端部は爪Tの中央部分よりも低く落ち込んでいるために印刷ヘッド41のインク吐出面411との距離が遠くなっており、その分インクの着弾率が低下する。これらのことを考慮して、爪Tに印刷するデータでは、特に爪Tの幅方向の端部においてインクの塗布量が多くなるようにインク吐出量が設定されている。これに対して紙Pの場合は全体がほぼ平板であって場所による高低差がない。このため、特に端部の表面積が爪Tの場合よりも小さく、またインクの着弾率の低下もなく一定である。このため、爪Tに印刷するのと同じインク塗布量で印刷すると、全体に色が濃くなり、特に幅方向の端部では違和感のある濃さで印刷されてしまう。
【0058】
ネイルチップNtの場合にも、紙Pの場合と同様に、表面(印刷対象面)が滑らかであり、その分実質的な表面積が爪Tよりも小さい。このため、爪Tと同様の仕上がりにするために必要なインク量が少なくなる。一方でネイルチップNtは爪Tに近い湾曲形状を有しているため、特に幅方向の端部において爪Tとの差が少ない。このため、インク塗布量を減らす調整量は紙Pの場合よりも少なくてよい。
このため上記のように、印刷対象物が紙Pである場合には印刷対象物が爪Tである場合と比較して塗布されるインク量が最も少なくなるように調整し、印刷対象物がネイルチップNtである場合には、爪Tの場合と紙Pの場合との中間くらいのインク塗布量となるように調整される。
また、紙Pの場合もネイルチップNtの場合も印刷対象面の地の色は白色が基本となっており、塗布されたインクがきれいに発色するのに対して、爪Tの場合には、ベースコートとして白色等の下地を塗布してから印刷を行っても、生爪の色が透けて見える場合もあり、紙PやネイルチップNtと比較してインクの発色に劣る場合もある。印刷対象物ごとに(特に爪Tとそれ以外とで)出力値変換テーブルを変えることにより、こうしたインクの発色の違いによる仕上がり具合(出来栄え、見栄え)の差にも対応することができる。
【0059】
また元画像データのRGB値が小さい場合(濃度が低い、薄い場合)にはそれほど目立たないが、元画像データのRGB値が大きく(濃度が高く、濃く)なるほど、爪T以外の印刷対象物に印刷した場合の違和感が目立ってしまう。
このため、元画像データのRGB値が大きいほど塗布するインク量が少なくするようにすることで、ネイルチップNtや紙Pに印刷して場合にも、できるだけ爪Tに印刷した場合の印刷イメージに近い印刷結果を得られるようにすることができる。
なお、印刷対象物による見え方の差は、シアンやマゼンタ等の濃色のインクにおいて特に顕著であり、イエローのような淡い色ではあまり目立たない。このため、イエローの出力値変換テーブルではシアンやマゼンタの出力値変換テーブルと比較して、印刷対象物ごとの出力値の差が小さく設定される。
【0060】
なお、出力値がシアンとマゼンタの混色となるようなRGB値の場合、マゼンタとイエローの混色となるようなRGB値の場合、シアンとイエローの混色となるようなRGB値の場合、シアンとマゼンタとイエローの混色となるようなRGB値の場合にも同様に、RGB値に対してCMY出力値は、紙用<ネイルチップ用<爪用の関係にあり、それぞれの印刷対象物ごとの出力値の差は濃色になるほど拡大する。
このように出力値変換テーブル(「LUT」)を紙用の組み合わせ、ネイルチップ用の組み合わせ、爪用の組み合わせの3組用意して、切り替えて印刷データを形成することにより、印刷対象物に合わせた印刷結果を得ることできる。
【0061】
なお、出力がシアンとマゼンタの混色となるようなRGB値のとき、マゼンタとイエローの混色となるようなRGB値のとき、シアンとイエローの混色となるようなRGB値のとき、シアンとマゼンタとイエローの混色となるようなRGB値のときも同様に、RGB値に対してCMY出力値は、紙用<ネイルチップ用<爪用の関係にあり、それぞれの印刷対象物ごとの出力値の差は濃色になるほど拡大する。
このように出力値変換テーブル(「LUT」)を紙用の組み合わせ、ネイルチップ用の組み合わせ、爪用の組み合わせの3組用意して、切り替えて印刷データを形成することにより、印刷対象物に合わせた印刷結果を得ることができる。
【0062】
以上のように、本実施形態によれば、印刷装置1が「第1印刷条件」で爪Tに印刷したときの出来栄えをダミー部材である紙PやネイルチップNtへのテスト印刷によって疑似表現する制御部11を備え、テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で爪Tに印刷したときの方が「第1印刷条件」で爪Tに印刷したときよりも、色の濃さが薄くなるように条件設定されている。
【0063】
また印刷装置1は、印刷対象物の表面状態を認識する対象認識手段、認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するデータ変換手段として機能する制御部11を備えており、データ変換手段としての制御部11により変換された出力印刷データに基づいて印刷対象物に印刷を行う印刷機構4(印刷機構4の印刷ヘッド41)と、を備えている。
【0064】
人の爪Tには、表面に縦筋や窪み等、不規則な凹凸等があり、カメラ51等によって認識されたものよりも、実際の表面積が大きい。
このため、ネイルチップNt等の人工物や平板状の紙Pのシート等に、爪Tにデザインを印刷する場合と同じ濃度で印刷を行うと、全体に色が濃くなりすぎてしまう。
また、爪Tは爪幅方向に湾曲しているため、特に幅方向の端部においては実際の塗布面積が広くなっている。さらに爪Tは幅方向に湾曲していたり長さ方向に傾斜しているため、幅方向の端部等では爪Tの中央部分よりも低く落ち込んでいる。このために印刷ヘッド41のインク吐出面411との距離が遠くなっており、その分インクの着弾率が低下することも考慮して、幅方向の端部ではインクの塗布量が多くなるように印刷データが作られている。
このため、紙Pのように平板状の媒体に対して爪Tの場合と同じデータで印刷を行うと、特に爪Tの端部に相当する部分で色の濃さが目立ってしまう。
【0065】
この点本実施形態では、上述のようにダミー部材へのテスト印刷では、印刷時の印刷条件(CMYの出力値等)が、この印刷条件で爪Tに印刷した場合の印刷結果が、「第1印刷条件」で爪Tに印刷した場合の印刷結果よりも色の濃さが薄くなるように条件設定されている。これにより、ダミー部材である紙PやネイルチップNtへのテスト印刷を行うことで、爪Tに印刷したときの出来栄え(仕上がりイメージ)を疑似表現することができる。
別の言い方をすれば、本実施形態では印刷対象物(すなわち、爪T、ネイルチップNt、紙P)に応じてRGBの元画像データを異なるCMY出力値に変換し、出力印刷データを生成する。このため、ネイルチップNt、紙Pに印刷した場合に爪Tに印刷した場合との仕上がりイメージの差が少なくなり、例えば実際の爪Tに印刷する前にネイルチップNtや紙P等の媒体に印刷して仕上がりイメージを確認したい場合等に爪Tに印刷した場合との印象のずれの少ない印刷結果を得ることができる。
また爪T、ネイルチップNt、紙Pは、それぞれインクを塗布する面(印刷対象面)にベース(例えば爪Tの場合は白色等のベースコート層及びインク受容層、ネイルチップNt、紙Pではインク受容層)が形成されているが、インクの発色具合は印刷対象物ごとに多少異なる。すなわち、爪Tの場合には白色等のベースコートを塗布しても生爪が透けて見えることがあり、その分インク塗布量を多くして発色を確保する傾向があるが、ネイルチップNtや紙Pではほぼ完全な白色の上にインクを載せることができるのでインクの塗布量が少なくてもインクの発色が確保される。印刷対象物に応じた出力値変換テーブルではこのような発色性の差も考慮することができる。
特に紙Pに印刷する場合、両端部でインクを多く塗付すると特に色が濃くなって目立ってしまうが、印刷対象物に応じた出力値変換テーブルを用いて紙Pに印刷する場合のインク塗布量を少なくすることにより、全体としての濃淡の表現は維持しながら濃色時のインク塗布量を抑制して、違和感の少ない仕上がりにすることができる。
【0066】
また本実施形態の印刷対象物は、印刷面に湾曲を有するものを含んでおり、元画像データは、曲率補正、傾斜補正の少なくともいずれかが施されたデータである。
このように、爪Tに印刷する場合と同様の曲率補正等が施されたデータを用いてネイルチップNtや紙P等の媒体に印刷することでより適切に爪Tに印刷した場合の仕上がりイメージを確認することができる。
そしてこのような曲率補正等が施されたデータで紙P等の印刷対象物に印刷する場合にも、RGBの元画像データを印刷対象物(すなわち、爪T、ネイルチップNt、紙P)に応じて異なるCMY出力値に変換し、印刷に用いる出力印刷データを生成する。このため、曲率補正等が施され、端部等の濃度が濃くなるように設定されているデータが用いられる場合でも違和感のない仕上がりの印刷結果を得ることができる。
【0067】
また本実施形態の印刷対象物は、本印刷が行われる爪Tの他、爪Tに印刷したときの出来栄えを確認するためのテスト印刷を行うダミー部材を含んでおり、ダミー部材は例えばネイルチップNt、紙P等である。
このため、爪Tに印刷するデザイン(ネイルデザイン)をネイルチップNtや紙Pに試印刷することができ、実際の爪Tに印刷する前等に、爪Tに印刷した場合の出来栄え、仕上がりイメージをダミー部材へのテスト印刷で確認することができる。
【0068】
なお、以上本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0069】
例えば、上記実施形態では、端末装置7の記憶部72にデザイン(ネイルデザイン)の元画像データが記憶されている場合を例示したが、デザイン(ネイルデザイン)の元画像データは記憶部72に記憶されている場合に限定されない。例えば印刷装置1又は端末装置7と情報の送受信可能とされたデータ管理サーバ、クラウド上にある仮想サーバ等、インターネット経由でアクセスすることができるものであってもよい。この場合にはより多くのデータを用意しておくことができ、デザインのバリエーションが豊富になる。
なお、デザイン(ネイルデザイン)の元画像データは印刷装置1の記憶部12に記憶されていてもよい。この場合には通信環境のないところでも印刷装置1のみでネイルデザインの印刷を完結させることができる。
また、出力値変換テーブルは、印刷装置1の記憶部12に記憶されている場合に限定されず、端末装置7の記憶部72や各種のデータ管理サーバ等に記憶されていてもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、印刷装置1の制御部11が、印刷対象物の表面状態を認識する対象認識手段、認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するデータ変換手段、として機能する場合を例示したが、対象認識手段、データ変換手段は制御部11である場合に限定されない。例えば印刷装置1と通信可能な端末装置7の制御部71が対象認識手段、データ変換手段として機能してもよい。
この場合には、印刷装置1の撮影部5により画像が取得されると、この画像データが端末装置7に送られて、制御部71において画像解析等が行われる。
また、端末装置7の制御部71がデザインの元画像データに曲面補正等を行い、RGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するデータ変換処理を行った場合には、変換処理後の出力印刷データが端末装置7から印刷装置1に送信されて印刷機構4による印刷処理に適用される。
このように、各種の処理を印刷装置1外で行うようにした場合には、印刷装置1は撮影部5と印刷機構4とを動作させることができればよく、制御装置10等の構成を簡易なものとすることができる。
【0071】
なお、RGB元画像データから印刷用のCMYデータへの変換は、印刷対象物の表面状態(爪T、ネイルチップNt、紙Pの種別)に応じてCMYの出力値を変えることができればよく、具体的な手法はここに例示したような出力値変換テーブルを適用するものに限定されない。
【0072】
また、本実施形態では、端末装置7が、ユーザの有するスマートフォン等の携帯端末である場合を想定したが、端末装置7は、ユーザ自らが有するものに限定されない。例えば印刷装置1が店舗等に置かれている装置である場合に、端末装置7は店舗備付の操作端末等であってもよい。また、端末装置7は、印刷装置1と別体の装置でなくてもよく、例えば印刷装置1に付属する操作端末のようなものであってもよい。
【0073】
なお、印刷装置1を管理する図示しないデータ管理サーバを備えていてもよい。例えば1つの店舗内に複数台の印刷装置1があるような場合や複数ある系列の店舗等にそれぞれ印刷装置1があるような場合、全ての印刷装置1が1つのデータ管理サーバで管理されていてもよい。なお、複数の印刷装置1を1台のデータ管理サーバで管理する場合には、例えば各印刷装置1にそれぞれ固有の識別標識である装置IDが付与されて、各装置を個別に管理することができるようにすることが好ましい。
RGB元画像データを印刷用のCMYデータに変換した場合、印刷結果に現れる発色の差等は各印刷装置の特性によって左右される。このためデータ管理サーバに、印刷装置1ごとの特性を記憶させておき、特性に応じて適用するLUTを変えるようにしてもよい。
【0074】
本実施形態では、指Uの爪Tを印刷対象物とする場合、載置部3に1本ずつ指Uを入れて印刷を行う場合を例示したが印刷装置1による印刷の仕方はこれに限定されない。例えば片手5本や親指を除く4本、両手10本や親指を除く8本等、複数の指を一度に装置内に挿入し、載置部3に配置させて印刷を行うことができてもよい。この場合、開口部21は片手又は両手を出し入れできる大きさとする。また載置部3も片手又は両手を配置可能な大きさのものを設ける。
なおこの場合、補助具34(34a,34b)も大きなものを用意し、ネイルチップNtを複数個を並べて配置できるようにしてもよい。また紙Pも複数枚セットできてもよいし、複数本の指に印刷するデザインを1枚に印刷できるような大きさのものをセットできてもよい。
【0075】
また爪T以外の印刷対象物を配置する位置は実施例に限定されない。例えば印刷機構4の印刷ヘッド41がX方向、Y方向だけでなく高さ方向(図1から図4のZ方向)にも移動可能な構成である場合には、ネイルチップNtや紙Pを載置部3ではなく、例えば載置部3の横のスペース等に配置させて印刷を行ってもよい。この場合にも、ネイルチップNtや紙Pの一番高い部分と印刷ヘッド41のインク吐出面411との間の距離が爪Tの場合の一番高い部分と印刷ヘッド41のインク吐出面411との間の距離とほぼ等しくなるように調整されることが好ましい。
【0076】
さらに、印刷対象物ごとに異なる場所に配置するように設定した場合には、印刷装置1にセットされた印刷対象物が何であるかを、それがどの場所に配置されているかによって判断してもよい。
【0077】
また、載置部3の指受け部31の表面、補助具34a,34bの表面にそれぞれ異なるマーク等を付しておき、これを読み取るだけで印刷装置1にセットされた印刷対象物が何であるかを判断できるようにしてもよい。画像から容易に区別がつくようなマークとしておけば、簡易に印刷対象物の種類(表面状態)を特定することができる。
【0078】
さらに、印刷装置1にセットされた印刷対象物が何であるかを認識する手法は、印刷対象物の表面状態を認識する対象認識手段としての制御部11が載置部3を撮影した画像から自動的に印刷対象物を認識する手法に限定されない。
例えば、爪Tに対する印刷(本印刷)を行うか、ネイルチップNtや紙Pといったダミー部材に対するテスト印刷を行うかをユーザが操作部22等から選択、入力できるようにしてもよく、この場合には、制御部11は操作部22等から入力された操作信号に基づいて印刷の種類(本印刷か、テスト印刷か)を認識し、印刷対象物が爪Tであるかダミー部材であるかを認識する。
なお、ダミー部材に対するテスト印刷が選択された場合には、載置部3を撮影した画像からダミー部材として何がセットされているか(すなわち、載置部3にネイルチップNtがセットされているか、紙Pがセットされているか)等を制御部11が解析・判断してもよい。また、ユーザが操作部22等から印刷対象物の種類についてまで選択、入力してもよく、この場合には、制御部11は操作部22等から入力された操作信号に基づいて具体的な印刷対象物の種別(ダミー部材としての印刷対象物はネイルチップNtか、紙Pか)まで認識できるようにしてもよい。
【0079】
以上本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
〔付記〕
<請求項1>
第1印刷条件で爪に印刷したときの出来栄えをダミー部材へのテスト印刷によって疑似表現する制御手段を備え、
前記テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で前記爪に印刷したときの方が前記第1印刷条件で前記爪に印刷したときよりも、色の濃さが薄くなる条件に設定されている、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項2>
前記ダミー部材は、紙又はネイルチップである、
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
<請求項3>
印刷対象物の表面状態を認識する対象認識手段と、
認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するデータ変換手段と、
データ変換手段により変換された出力印刷データに基づいて印刷対象物に印刷を行う印刷手段と、
を備えている、
ことを特徴とする印刷装置。
<請求項4>
印刷対象物は、印刷対象面に湾曲を有するものを含んでおり、
前記元画像データは、曲率補正、傾斜補正の少なくともいずれかが施されたデータである、
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
<請求項5>
印刷対象物の表面状態を認識し、
認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換し、
変換された出力印刷データに基づいて印刷対象物に印刷を行う、
ことを特徴とする印刷制御方法。
<請求項6>
第1印刷条件で爪に印刷したときの出来栄えをダミー部材へのテスト印刷によって疑似表現する印刷制御を行うものであり、
前記テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で前記爪に印刷したときの方が前記第1印刷条件で前記爪に印刷したときよりも、色の濃さが薄くなる条件に設定されている、
ことを特徴とする印刷制御方法。
<請求項7>
コンピュータに、
印刷対象物の表面状態を認識する対象認識機能と、
認識された印刷対象物の表面状態に応じた出力値変換テーブルを適用してRGBの元画像データをCMYの出力印刷データに変換するデータ変換機能と、
を実現させる、
ことを特徴とするプログラム。
<請求項8>
コンピュータに、
第1印刷条件で爪に印刷したときの出来栄えをダミー部材へのテスト印刷によって疑似表現する印刷制御機能を実現させるものであり、
前記テスト印刷のときの印刷条件が、当該印刷条件で前記爪に印刷したときの方が前記第1印刷条件で前記爪に印刷したときよりも、色の濃さが薄くなる条件に設定されている、
ことを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0080】
1 印刷装置
11 制御部
12 記憶部
4 印刷機構
41 印刷ヘッド
7 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10