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特開2023-180624半潜水浮体式基礎および半潜水浮体式基礎の構築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180624
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】半潜水浮体式基礎および半潜水浮体式基礎の構築方法
(51)【国際特許分類】
   F03D 13/25 20160101AFI20231214BHJP
   E02D 27/32 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F03D13/25
E02D27/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094076
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】白谷 宏司
(72)【発明者】
【氏名】石河 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴紀
【テーマコード(参考)】
2D046
3H178
【Fターム(参考)】
2D046DA05
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA43
3H178BB77
3H178CC22
3H178DD61X
3H178DD67Z
(57)【要約】
【課題】軽量化を可能とし、かつ、比較的簡易に構築することが可能な半潜水浮体式基礎と、この半潜水浮体式基礎の構築方法を提案する。
【解決手段】風車11の支柱12を支持するセンターカラム3と、センターカラム3を中心に間隔をあけて配設された3本のサイドカラム4,4,4と、センターカラム3とサイドカラム4とを接続するビーム5とを備える風力発電施設の半潜水浮体式基礎2である。センターカラム3は、鋼製のスラブ31と、スラブ31から立設された円筒状の本体部32とを備えている。ビーム5は、ビーム用緊張材55が配設されたプレストレスコンクリート製である。ビーム5とスラブ31との間には、コンクリートと鋼材とを組み合わせてなる複合プレキャストセグメント6が介設されている。この複合プレキャストセグメント6には、ビーム用緊張材55の定着部62が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風車の支柱を支持するセンターカラムと、
前記センターカラムを中心に間隔をあけて配設された複数のサイドカラムと、
前記センターカラムと前記サイドカラムとを接続するビームと、を備える風力発電施設の半潜水浮体式基礎であって、
前記センターカラムは、鋼製のスラブと、前記スラブに立設された円筒状の本体部と、を備えており、
前記ビームは、PC鋼材が配設されたプレストレスコンクリート製であり、
前記ビームと前記スラブとの間には、コンクリートと鋼材とを組み合わせてなる複合プレキャストセグメントが介設されていて、
前記複合プレキャストセグメントには、前記PC鋼材の定着部が形成されていることを特徴とする、半潜水浮体式基礎。
【請求項2】
前記スラブは、底面に設けられたスラブ用底鋼板と、上面に設けられたスラブ用上鋼板と、を備えており、
前記本体部は、プレストレスコンクリート製であり、かつ、前記スラブ用上鋼板を貫通しており、前記本体部の下端が前記スラブ用底鋼板に当接しており、
前記本体部と前記スラブ用底鋼板との角部および前記本体部と前記スラブ用上鋼板との角部にそれぞれ鋼板からなる骨部材が立設されていて、
前記本体部の周壁には、前記周壁を挟んで対向する前記骨部材同士を繋ぐ鋼製のつなぎ材が配設されていることを特徴とする、請求項1に記載の半潜水浮体式基礎。
【請求項3】
前記複合プレキャストセグメントは、
セグメント用底鋼板と、前記セグメント用底鋼板の上方に間隔をあけて配設されたセグメント用上鋼板と、を有する鋼製部と、
前記PC鋼材の位置に対応して、前記セグメント用底鋼板の前記ビーム側の端部および前記セグメント用上鋼板の前記ビーム側の端部に形成されたコンクリート製の前記定着部と、を備えていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の半潜水浮体式基礎。
【請求項4】
請求項3に記載の半潜水浮体式基礎の構築方法であって、
前記複合プレキャストセグメントおよび前記ビームを構成するビーム用セグメントを製作するセグメント製作工程と、
前記ビーム用セグメントを所定の位置に配置して前記ビームを形成するビーム形成工程と、
前記ビームの基端部に前記複合プレキャストセグメントを設置する複合PCセグメント設置工程と、
前記複合プレキャストセグメントを前記センターカラムに接続するセンターカラム接続工程と、
前記ビームの先端部に前記サイドカラムを接続するサイドカラム接続工程と、を備えており、
前記セグメント製作工程では、鋼板を組み合わせることにより前記鋼製部を製作する作業と、前記鋼製部を妻型枠として前記定着部を製作する作業と、前記複合プレキャストセグメントを妻型枠として前記ビーム用セグメントを製作する作業と、を行うことを特徴とする、半潜水浮体式基礎の構築方法。
【請求項5】
前記複合PCセグメント設置工程では、設置誤差を計測して、前記複合プレキャストセグメントに調整用の鋼部材を固定し、
前記センターカラム接続工程では、前記鋼部材に前記センターカラムを固定することを特徴とする、請求項4に記載の半潜水浮体式基礎の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水上風力発電施設の半潜水浮体式基礎および半潜水浮体式基礎の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガスの排出量削減を目的として、再生可能エネルギーの需要が高まっている。再生可能エネルギーには、例えば、太陽光発電、風力発電、水力発電、地熱発電、バイオマス等がある。風力発電施設は、風車による騒音や振動が生活環境に影響を及ぼす場合があり、居住空間等への影響を十分に考慮する必要があることから、居住区域から離れた山間部などに設置されることが多い。しかしながら、大型の風車を設置する用地を山間部に確保することは難しく、また、風力発電施設までの交通路の確保や、送電線等の設置等も困難であった。そのため、風力発電施設を海上(水上)に設置することが検討されている。
水上に構造物を構築する場合において、基礎構造として浮体構造物を採用する場合がある。浮体基礎構造としては、セミサブマージブル型、スパー型、パージ型、TLP型等がある。このうち、セミサブマージブル型基礎(半潜水浮体式基礎)は、センターカラムと、センターカラムの周囲に間隔をあけて配設された複数本のサイドカラムと、センターカラムとサイドカラムとを連結するビームとを備えてなり、波や風に対して優れた安定性能を有していることから、比較的実績が多い。
半潜水浮体式基礎は、鋼製部材を主体に構成されることが多い。一方、半潜水浮体式基礎をコンクリートにより構築すれば、コストダウンを図ることができる。例えば、特許文献1には、主な構造要素をコンクリート製とした半潜水浮体式基礎が開示されている。
水上風力発電施設の施工コストを削減することを目的として、半潜水浮体式基礎を浮かせた状態で岸壁に係留して、風車を岸壁上のクレーンにより設置する場合がある。この場合、吃水を岸壁の水深よりも小さくする必要がある。また、半潜水浮体式基礎は、バラストを配置することで、波や風による動揺を効果的に制限できるような吃水に調整する。
コンクリートは、鋼材に比べて自重が大きいため、半潜水浮体式基礎の主な構造要素をコンクリート製にすると、浮力を与える部位を大きくする必要があり、その結果、コンクリート数量が増えてしまう。
また、センターカラムとビームとの接合部では、風荷重や動揺による慣性力などにより大きな断面力が生じるため、鉄筋やPC鋼材を密に配置する必要があり、施工に手間がかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-513046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、軽量化を可能とし、かつ、比較的簡易に構築することが可能な半潜水浮体式基礎と、この半潜水浮体式基礎の構築方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明は、風車の支柱を支持するセンターカラムと、前記センターカラムを中心に間隔をあけて配設された複数のサイドカラムと、前記センターカラムと前記サイドカラムとを接続するビームとを備える風力発電施設用の半潜水浮体式基礎である。前記センターカラムは、鋼製のスラブと、前記スラブに立設された円筒状の本体部とを備えている。また、前記ビームはPC鋼材が配設されたプレストレスコンクリート製である。さらに、前記ビームと前記スラブとの間には、コンクリートと鋼材とを組み合わせてなる複合プレキャストセグメントが介設されていて、この複合プレキャストセグメントには、前記PC鋼材の定着部が形成されている。
かかる半潜水浮体式基礎によれば、センターカラムの少なくとも一部を鋼製にすることで、全てをコンクリート製にする場合比べて軽量化が可能になるとともに、コンクリート数量の低減も可能となる。また、ビームのPC鋼材を、複合プレキャストセグメントに定着するので、センターカラムにおいて鉄筋やPC鋼材が錯綜することを抑制できる。そのため、施工時の手間を低減できる。
【0006】
なお、前記スラブが、底面に設けられたスラブ用底鋼板と上面に設けられたスラブ用上鋼板とを備えていて、前記本体部が、プレストレスコンクリート製であり、かつ、前記スラブ用上鋼板を貫通し、前記本体部の下端が前記スラブ用底鋼板に当接している場合には、前記本体部と前記スラブ用底鋼板との角部および前記本体部と前記スラブ用上鋼板との角部にそれぞれ鋼板からなる骨部材を立設させるとともに、前記本体部の周壁には、前記周壁を挟んで対向する前記骨部材同士を繋ぐ鋼製のつなぎ材を配設するのが望ましい。こうすることで、センターカラムの本体部がコンクリート製であっても、本体部と底鋼板および上鋼板との連続化(一体化)が図られるため、終局限界状態や疲労限界状態において所要の強度が得られる。
また、前記複合プレキャストセグメントは、セグメント用底鋼板と前記セグメント用底鋼板の上方に間隔をあけて配設されたセグメント用上鋼板とを有する鋼製部と、前記PC鋼材の位置に対応して前記セグメント用底鋼板のビーム側の端部および前記セグメント用上鋼板に前記ビーム側の端部に形成されたコンクリート製の前記定着部とを備えているのが望ましい。こうすることで、鋼製のスラブとコンクリート製のビームとの間で、応力伝達性能を確保できる。
【0007】
また、本発明の半潜水浮体式基礎の構築方法は、前記複合プレキャストセグメントおよび前記ビームを構成するビーム用セグメントを製作するセグメント製作工程と、前記ビーム用セグメントを所定の位置に配置して前記ビームを形成するビーム形成工程と、前記ビームの基端部に前記複合プレキャストセグメントを設置する複合PCセグメント設置工程と、前記複合プレキャストセグメントを前記センターカラムに接続するセンターカラム接続工程と、前記ビームの先端部に前記サイドカラムを接続するサイドカラム接続工程とを備えている。前記セグメント製作工程では、鋼板を組み合わせることにより前記鋼製部を製作する作業と、前記鋼製部を妻型枠として前記定着部を製作する作業と、前記複合プレキャストセグメントを妻型枠として前記ビーム用セグメントを製作する作業を行う。かかる半潜水浮体式基礎の構築方法によれば、いわゆるマッチキャスト方式により複合プレキャストセグメントとビーム用セグメントを形成することができる。
また、前記複合PCセグメント設置工程では、設置誤差を計測して前記複合プレキャストセグメントに調整用の鋼部材を固定し、前記センターカラム接続工程では、前記鋼部材に前記センターカラムを固定する。こうすることで、設置誤差が生じた場合であっても、ビームとセンターカラムとを簡易に一体化できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の半潜水浮体式基礎とこの半潜水浮体式基礎の構築方法によれば、比較的簡易に構築することができ、ひいては、工期短縮化および費用の低減化を図ることができる。また、軽量化により必要最小限の大きさで所望の浮力を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る洋上風力発電施設を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る半潜水浮体式基礎を示す図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のIIB断面図である。
図3】センターカラムの一部を示す図であって、(a)は本体部とスラブ用底鋼板との接合構造を示す断面図、(b)は本体部とスラブ用底鋼板との接合構造を示す縦断図、(c)は本体部とスラブ用上鋼板との接合構造を示す縦断図である。
図4】複合プレキャストセグメントを示す図であって、(a)は縦断図、(b)は(a)のIVB断面図である。
図5】半潜水浮体式基礎の構築方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態では、洋上風力発電施設(水上施設)1の基礎構造(半潜水浮体式基礎2)について説明する。図1は、洋上風力発電施設1の斜視図である。図1に示すように、洋上風力発電施設1は、風車11と、風車11を支持する支柱12とを有していて、半潜水浮体式基礎2を介して水面よりも高い位置に設けられている。風車11は、支柱12の上端部に回転可能に設けられている。支柱12は、半潜水浮体式基礎2上に立設されている。
半潜水浮体式基礎2は、風車11の支柱12を支持するセンターカラム3と、センターカラム3を中心に間隔をあけて配設された3本のサイドカラム4,4,4と、センターカラム3とサイドカラム4とを接続するビーム5,5,5とを備えている。
【0011】
図2に半潜水浮体式基礎2を示す。センターカラム3は、図2(a)および(b)に示すように、スラブ31と、スラブ31に立設された円筒状の本体部32とを備えている。
スラブ31は、鋼板を組み合わせることにより形成されており、底面に設けられたスラブ用底鋼板33と、上面に設けられたスラブ用上鋼板34とを備えている。スラブ31は、本体部32の外形よりも十分に大きな外形を有している。また、スラブ31は、ビーム5に向けて突出したビーム接合部35を有している。ビーム接合部35は、ビーム5と同等の外形(本実施形態では角筒状)を呈した鋼材により構成されている。
図2(b)に示すように、本体部32は、スラブ用上鋼板34の中央部を貫通しており、本体部32の下端は、スラブ用底鋼板33に当接している。図3に本体部32の一部を示す。本体部32は、プレストレスコンクリート製であり、図3(a)に示すように、厚さ方向中央部にPC鋼材(カラム用緊張材321)が設けられている。カラム用緊張材321は、本体部32の上下方向に配置されている。
図3(b)に示すように、本体部32とスラブ用底鋼板33との角部には、鋼板からなる骨部材36が立設されている。また、図3(c)に示すように、本体部32とスラブ用上鋼板34との角部にも鋼板からなる骨部材36が立設されている。骨部材36は、図3(a)に示すように、本体部32の周方向に間隔をあけて複数設けられている。本体部32の外面および内面には、骨部材36の位置に対応して、鋼製の筒体37が周設されている。骨部材36は、筒体37に固定(溶接)されている。
図3(b)および(c)に示すように、本体部32の周壁には、鋼製の鉛直つなぎ材38が配設されている。図3(b)に示すように、スラブ用底鋼板33の上側に配置された鉛直つなぎ材38は、本体部32とスラブ用底鋼板33との角部に配置されており、周壁を挟んで対向する骨部材36同士を繋いでいる。図3(c)に示すように、スラブ用上鋼板34の下側に配置された鉛直つなぎ材38は、本体部32とスラブ用上鋼板34との角部に配置されており、周壁を挟んで対向する骨部材36同士を繋いでいる。鉛直つなぎ材38の両端は、骨部材36の位置に対応して、筒体37に固定(溶接)されている。また、図3(b)に示すように、スラブ用底鋼板33の上に設けられた骨部材36同士を繋ぐ鉛直つなぎ材38の下端には、水平つなぎ材39が固定されている。
【0012】
サイドカラム4は、図2(a)に示すように、センターカラム3の周囲に3本配設されている。隣り合うサイドカラム4同士の間隔は同一である。サイドカラム4は、ビーム5を介してセンターカラム3に連結されている。
図2(a)および(b)に示すように、サイドカラム4は、円柱状を呈している。サイドカラム4は、コンクリート製で、サイドカラム4の上端は、天板41により遮蔽されている。
【0013】
ビーム5は、PC鋼材(ビーム用緊張材55)が配設されたプレストレスコンクリート製である。図2(a)および(b)に示すように、ビーム5の一端は、センターカラム3のスラブ31に連結されており、ビーム5の他端は、サイドカラム4に連結されている。ビーム5は、頂版51、底版52および左右の側壁53,53を有した角筒状を呈している。ビーム5は、複数のビーム用セグメント54,54,…を横方向に連結することにより形成されている。ビーム用セグメント54は、コンクリート製のプレキャスト部材である。また、図4(a)に示すように、頂版51および底版52には、ビーム用緊張材55が配設されている。なお、図4は、センターカラム3とビーム5の接合部を示す図である。ビーム用緊張材55は、ビーム5の長手方向に沿って配設されていて、複数のビーム用セグメント54を貫通している。ビーム用緊張材55の一端は、サイドカラム4に定着されており、ビーム用緊張材55の他端は、ビーム5とスラブ31との間に介設された複合プレキャストセグメント6に定着されている。
【0014】
複合プレキャストセグメント6は、図4(a)に示すように、コンクリートと鋼材とを組み合わせてなり、鋼製部61と、定着部62と、ビーム接続部63とを備えている。
鋼製部61は、セグメント用底鋼板64と、セグメント用底鋼板64の上方に間隔をあけて配設されたセグメント用上鋼板65とを有している。鋼製部61は、センターカラム3のスラブ31に溶接する。
定着部62は、ビーム用緊張材55に対応して配置されている。本実施形態の定着部62は、セグメント用底鋼板64のビーム5側の端部およびセグメント用上鋼板65のビーム5側の端部にそれぞれ形成されている。定着部62はコンクリート製で、定着部62の端面には受圧板67が固定されている。セグメント用底鋼板64のビーム5側の端部には、セグメント用縦鋼板66が固定されている。セグメント用縦鋼板66は、セグメント用底鋼板64と直交するように形成されている。同様に、セグメント用上鋼板65にもセグメント用縦鋼板66が固定されている。
【0015】
定着部62では、図4(a)および(b)に示すように、セグメント用底鋼板64に所定の間隔で孔あき鋼板ジベル621が固定されている。本実施形態では、一対の孔あき鋼板ジベル621が平面視でビーム用緊張材55を挟むように設けられている。孔あき鋼板ジベル621には、ビーム用緊張材55と直交する方向に配筋された鉄筋622が貫通している。孔あき鋼板ジベル621の一端は受圧板67に固定されていて、他端はセグメント用縦鋼板66の端部に固定されている。同様に、セグメント用上鋼板65にも、孔あき鋼板ジベル621が固定されていて、当該孔あき鋼板ジベル621を貫通する鉄筋622が配筋されている。また、セグメント用縦鋼板66には、定着部62の位置に対応してジベル623が固定されている。定着部62は、孔あき鋼板ジベル621およびジベル623を巻き込んだ状態で形成されていることで、鋼製部61との一体性が確保されている。
【0016】
ビーム接続部63は、鋼製部61のビーム5側の端面に形成されたコンクリート部分である。本実施形態のビーム接続部63は、セグメント用縦鋼板66を挟んで定着部62と対向する位置に形成された下接合部631および上接合部632と、下接合部631および上接合部632の間に介設された隔壁部633とを備えている。下接合部631および上接合部632には、ビーム用緊張材55が挿通される貫通孔が形成されている。セグメント用縦鋼板66には、ビーム接続部63の位置に対応してジベル634が固定されている。ビーム接続部63は、ジベル634を巻き込んだ状態で形成されていることで、鋼製部61との一体性が確保されている。
【0017】
本実施形態の半潜水浮体式基礎の構築方法について説明する。図5に示すように、半潜水浮体式基礎の構築方法は、セグメント製作工程S1と、ビーム形成工程S2と、複合PCセグメント設置工程S3と、センターカラム接続工程S4と、サイドカラム接続工程S5とを備えている。
セグメント製作工程S1は、複合プレキャストセグメント6およびビーム5を構成するビーム用セグメント54を製作する工程である。セグメント製作工程S1では、鋼板を組み合わせることにより鋼製部61を製作する作業S11と、鋼製部61を妻型枠として定着部62およびビーム接続部63を製作する作業S12と、複合プレキャストセグメント6を妻型枠としてビーム用セグメント54を製作する作業S13とを行う。
ビーム形成工程S2は、複数のビーム用セグメント54,54,…を所定の位置に配置してビーム5を形成する工程である。ビーム用セグメント54同士の間には、止水材(図示せず)を介設する。このとき、ビーム用セグメント54は、PC鋼棒により圧縮力を導入して仮接合する。
【0018】
複合PCセグメント設置工程S3は、ビーム5の基端部に複合プレキャストセグメント6を設置する工程である。複合PCセグメント設置工程S3では、設置誤差を計測して、複合プレキャストセグメント6の鋼製部61に調整用の鋼部材68を固定(溶接)する。
センターカラム接続工程S4は、複合プレキャストセグメント6をセンターカラム3に接続する工程である。センターカラム接続工程S4では、複合プレキャストセグメント6(調整用の鋼部材68)をセンターカラム3のスラブ31に溶接して、センターカラム3とビーム5とを一体化する。
サイドカラム接続工程S5は、ビーム5の先端部にサイドカラム4を接続する工程である。このとき、ポストテンション方式によりビーム5に緊張力を導入する。すなわち、ビーム5を挿通させたビーム用緊張材55(マルチストランドあるいはシングルストランド)の一端を複合プレキャストセグメント6に固定する(定着させる)とともに、他端をサイドカラム4に固定する(定着させる)。
【0019】
本実施形態の半潜水浮体式基礎2および半潜水浮体式基礎2の構築方法によれば、センターカラム3のスラブ31を鋼製にすることで、センターカラムの全てをコンクリート製にする場合比べて軽量化が可能になるとともに、コンクリート数量の低減も可能となる。また、ビーム5のビーム用緊張材55を、複合プレキャストセグメント6に定着するので、センターカラム3において鉄筋やビーム用緊張材55が錯綜することを抑制できる。そのため、施工時の手間を低減できる。
【0020】
また、本体部32とスラブ用底鋼板33との角部および本体部32とスラブ用上鋼板34との角部にそれぞれ鋼板からなる骨部材36を立設させるとともに、本体部32の周壁に周壁を挟んで対向する骨部材36同士を繋ぐ鋼製のつなぎ材38を配設しているため、センターカラム3の本体部32がコンクリート製であっても、本体部32と底鋼板および上鋼板との連続化(一体化)が図られる。その結果、終局限界状態や疲労限界状態において所要の強度が得られる。
また、複合プレキャストセグメント6により、鋼製のスラブ31とコンクリート製のビーム5との間で、応力伝達性能を確保できる。
ビーム5のビーム用緊張材55を複合プレキャストセグメント6に定着させるため、センターカラム3にビーム用緊張材55を定着させる場合に比べて、施工性に優れている。すなわち、複数のビーム5が接続されるセンターカラム3にビーム5のビーム用緊張材55を定着させると、センターカラム3内において、ビーム用緊張材55を3重に交差させる必要があり、ビーム用緊張材55が錯綜する。一方、複合プレキャストセグメント6にビーム用緊張材55を定着させることで、ビーム用緊張材55が錯綜することを抑制できる。
また、センターカラム3の本体部32では、風荷重やビーム5の動揺による慣性力などにより大きな断面力が生じるため、鉛直方向の鉄筋も一般に多くなる。そのため、ビーム用緊張材55を本体部32に定着させる場合には、本体部32に各ビーム5から延設されるビーム用緊張材55と鉛直鉄筋とが配設されるため、配筋及びビーム用緊張材55の配置が複雑になる。その結果施工効率が悪い。一方、本実施形態の半潜水浮体式基礎2では、複合プレキャストセグメント6にビーム用緊張材55を定着させるため、本体部32の鉄筋とビーム用緊張材55とが干渉することがない。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、センターカラム3の本体部32がコンクリート製の場合について説明したが、センターカラム3の本体部32は鋼製であってもよい。
また、前記実施形態では、ビーム5を複数のビーム用セグメント54,54,…を組み合わせることにより形成する場合について説明したが、ビーム5は場所打ちコンクリートにより形成してもよい。
また、前記実施形態では、セグメント用底鋼板64およびセグメント用上鋼板65の端部にセグメント用縦鋼板66を固定するものとしたが、セグメント用縦鋼板66は、セグメント用底鋼板64またはセグメント用上鋼板65の端部を折り曲げることにより形成してもよい。また、セグメント用縦鋼板は、セグメント用底鋼板64およびセグメント用上鋼板65に跨って固定された鋼板であってもよい。
前記実施形態では、サイドカラム4が3本の場合について説明したが、サイドカラム4の本数は限定されるものではなく、例えば、4本以上であってもよい。
また、前記実施形態では、複合プレキャストセグメント6の定着部62に孔あき鋼板ジベル621を設けるものとしたが、孔あき鋼板ジベル621は必要に応じて設ければよい。また、鋼製部61(鋼材)と定着部62(コンクリート)との接合に用いるジベル構造は孔あき鋼板ジベル621を使用する場合に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0022】
1 洋上風力発電施設
11 風車
12 支柱
2 半潜水浮体式基礎
3 センターカラム
31 スラブ
32 本体部
33 スラブ用底鋼板
34 スラブ用上鋼板
35 ビーム接合部
36 骨部材
37 鋼管
38 つなぎ材
4 サイドカラム
5 ビーム
51 頂版
52 底版
53 側壁
54 ビーム用セグメント
55 ビーム用緊張材(PC鋼材)
6 複合プレキャストセグメント
61 鋼製部
62 定着部
図1
図2
図3
図4
図5