(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180634
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
B23B 31/00 20060101AFI20231214BHJP
B23B 31/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B23B31/00 D
B23B31/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094093
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100125737
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 昭博
(72)【発明者】
【氏名】大塚 裕也
(72)【発明者】
【氏名】水野 裕也
(72)【発明者】
【氏名】福永 敏貴
(72)【発明者】
【氏名】藤原 晶
(72)【発明者】
【氏名】寺田 雅人
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032FF04
3C032FF12
3C032GG35
(57)【要約】
【課題】主軸チャックの動作不良に対して動作テストを自動で行わせる工作機械を提供すること。
【解決手段】チャック爪の把持動作をチャックシリンダによって行う主軸チャックおよび、前記チャックシリンダに対する作動油の供給を高圧と低圧とに切り換えることが可能な油圧回路を備えた主軸装置と、前記主軸チャックに把持されたワークに対する加工を行う加工装置と、前記主軸チャックとの間でワークの受け渡しを行うワーク自動搬送装置と、前記主軸装置、前記加工装置および前記ワーク自動搬送装置の駆動制御を行うものであり、前記チャックシリンダに対して低圧の作動油を供給することで前記主軸チャックに動作不良が生じた場合に、前記作動油の供給を高圧に切り換えて前記主軸チャックに動作テストを行わせる駆動制御と、を有する工作機械。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャック爪の把持動作をチャックシリンダによって行う主軸チャックおよび、前記チャックシリンダに対する作動油の供給を高圧と低圧とに切り換えることが可能な油圧回路を備えた主軸装置と、
前記主軸チャックに把持されたワークに対する加工を行う加工装置と、
前記主軸チャックとの間でワークの受け渡しを行うワーク自動搬送装置と、
前記主軸装置、前記加工装置および前記ワーク自動搬送装置の駆動制御を行うものであり、前記チャックシリンダに対して低圧の作動油を供給することで前記主軸チャックに動作不良が生じた場合に、前記作動油の供給を高圧に切り換えて前記主軸チャックに動作テストを行わせる駆動制御と、
を有する工作機械。
【請求項2】
前記動作テストは、前記ワーク自動搬送装置が前記主軸チャックに対する受け渡し位置にワークを維持させた状態で行われる請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記駆動制御は、前記動作テストを実行した後に、前記チャックシリンダに対して供給する作動油を低圧に戻して前記主軸チャックを動作させる請求項1または請求項2に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを把持する力の強弱が切り換え可能な主軸装置を備え、弱い力の把持で起こる動作不良に対して動作テストを実行する工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤などの工作機械では、例えば主軸チャックがワーク自動搬送装置からワークを受け取り、把持したワークに回転を与えながら工具を当てることによって切削加工などが行われる。そうした主軸チャックは、油圧シリンダによってチャック爪の開閉すなわち把持動作が行われるが、工作機械によってはワークを把持する力が油圧の切り換えに従って調整可能なものがある。ワークの把持力の調整は、油圧ポンプからの油圧(元圧)で主軸チャックを動作させる場合と、元圧からの作動油を減圧して主軸チャックを動作させる場合とがある。
【0003】
ここで、元圧でワークを把持する場合を強圧把持といい、減圧した状態でワークを把持する場合を弱圧把持という。こうした把持力の調整は、例えばワークに対しては元圧による高圧の強圧把持によって掴んだワークに対して荒加工などが行われる一方で、元圧を減圧させた弱圧把持によって掴んだワークに対しては歪みを生じさせないようにして仕上げ加工などが行われる。また、チャック爪による把持動作でワーク表面に傷がついてしまうことを回避するような場合にも弱圧把持への切り換えが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした主軸チャックに対する油圧の切り換えが可能な工作機械では、チャック爪の開状態が圧力のかかったまま一定時間経過すると、その後にワークを弱圧把持しようとした場合に動作不良によってワークの把持ができないことがあった。例えば、その日の作業後にチャック爪が開状態のまま一晩維持され、その主軸チャックによる次の日の最初のワークの受け取りが弱圧把持によって行われるような場合である。これまでは、前記特許文献1に記載する動作確認フローのように、クランプ指令に従ってクランプ動作が適切に行われなければ、検出センサからのクランプ位置決め信号が発せられず、動作不良と判断されてアラーム停止処理が実行されていた。
【0006】
すなわち工作機械は、動作不良の確認によってアラームが鳴らされるとともに駆動停止が行われ、その後は主軸チャックに対する動作テストが行われることとなっていた。ところが、主軸チャックによってはワークを用いることなくチャック爪を開閉させる空クランプを禁止するものがある。そうした場合の動作テストでは、作業者が主軸チャックにワークを持っていき、手動操作によって主軸チャックの開閉動作を行わなければならなかった。また、主軸チャックの動作不良が確認された場合は、ワークを受け渡しできなかったワーク自動搬送装置のロボットハンドを退避位置へと戻さなればならず、復旧までに手間と時間がかかってしまっていた。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、主軸チャックの動作不良に対して動作テストを自動で行わせる工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る工作機械は、チャック爪の把持動作をチャックシリンダによって行う主軸チャックおよび、前記チャックシリンダに対する作動油の供給を高圧と低圧とに切り換えることが可能な油圧回路を備えた主軸装置と、前記主軸チャックに把持されたワークに対する加工を行う加工装置と、前記主軸チャックとの間でワークの受け渡しを行うワーク自動搬送装置と、前記主軸装置、前記加工装置および前記ワーク自動搬送装置の駆動制御を行うものであり、前記チャックシリンダに対して低圧の作動油を供給することで前記主軸チャックに動作不良が生じた場合に、前記作動油の供給を高圧に切り換えて前記主軸チャックに動作テストを行わせる駆動制御と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
前記構成によれば、チャックシリンダに対して低圧の作動油を供給することで主軸チャックに動作不良が生じた場合であっても、作動油の供給を高圧に切り換えて主軸チャックに動作テストを行わせることにより、主軸チャックを正常に動作させるようにすることができ、アラーム停止処理を実行することなくチャックシリンダに対して供給する作動油を低圧に戻して主軸チャックを動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】工作機械の一実施形態を示した正面図である。
【
図3】ワーク自動搬送装置を簡略化して示した側面図である。
【
図4】工作機械の制御システムを表すブロック図である。
【
図6】動作確認プログラムの処理を示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る工作機械の一実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、工作機械の一実施形態を示した正面図である。この工作機械1は、1台のワークストッカ3と加工モジュール5,6が2台横並びに配置され、各々の間でワークWの受け渡しを行うワーク自動搬送装置8が内部に設けられている。
【0012】
ワークストッカ3は、加工が行われる前のワークWと、加工モジュール5,6で加工が行われた加工済みのワークWとが積み込まれるものである。ワークストッカ3は、円周上に並べられた複数のパレットにワークWが段積みされ、搬出および搬入に当たってワーク自動搬送装置8との受け渡し位置に所定のパレットが移動および位置決めされる。そうしたワークストッカ3には先ず加工前のワークWが積み込まれ、ワーク自動搬送装置8によって一つずつ運び出されて加工モジュール5,6に対し順番に搬送され、そこで所定の加工が行われたワークWが再び戻される。
【0013】
工作機械1を構成する加工モジュール5,6は同じ構造の旋盤であって、その主軸装置を構成する主軸チャックに把持されたワークWに対する切削など所定の加工が行われる。
図2は、そうした加工モジュール5(加工モジュール6も同じ)の内部構造を示した側面図である。加工モジュール5は、車輪を備えた可動ベッド11の上に組み付けられ、その可動ベッド11がベース12の上に敷設されたレールに沿って前後方向(Z軸方向)への移動が可能になっている。加工モジュール5は、エンドミルやドリルなどの回転工具、或いはバイトなどの切削工具を備えるタレット装置14を搭載したタレット旋盤である。
【0014】
主軸装置13は、回転自在に支持された主軸に対して主軸チャック21と従動プーリとが一体に形成され、スピンドルモータ22の回転がVベルトを介して伝達されるよう構成されている。タレット装置14は、Z軸駆動装置15のZ軸スライド23に対して一体的に構成され、そのZ軸スライド23とともにX軸駆動装置16のX軸スライド24に搭載されている。X軸スライド24にはZ軸ガイド25が固定され、Z軸スライド24がそのZ軸ガイド25に対して摺動自在に取り付けられている。Z軸スライド23およびX軸スライド24は、いずれもサーボモータの出力をボールネジ機構を介して受けることにより、直線移動が可能になっている。
【0015】
加工モジュール5,6は、共通の機体カバー27によって覆われ、前面部には開閉可能な前カバー28が設けられている。機体カバー27内には、前述した主軸装置13およびタレット装置14など、ワークWに対する加工が実行される密閉された加工室10が構成されている。また、横並びになった加工モジュール5,6の前カバー28が機体幅方向に連続することにより、ワークWを移動させるためのワーク搬送空間20が形成されている。そのワーク搬送空間20内には、ワークストッカ3および加工モジュール5,6へとワークを搬送するワーク自動搬送装置8が組み込まれている。
【0016】
図3は、ワークWの受け渡しを行うワーク自動搬送装置8を簡略化して示した側面図であり、加工モジュール5の機内へ進入した状態が示されている。ワーク自動搬送装置8は、走行台31を移動させる走行装置32と、走行台31の上に旋回可能に搭載されたワーク搬送ロボット33とによって構成されている。ワーク搬送ロボット33は、上腕部材35と前腕部材36とが設けられ、サーボモータを使用した第1関節機構37および第2関節機構38の駆動によって形態が変化するよう構成されている。すなわち上腕部材35と前腕部材36とが一点鎖線で示すように折り畳まれて起立したコンパクトな移動姿勢と、実線で示すように前傾して伸びた作業姿勢とに変形可能になっている。
【0017】
更に、ワーク搬送ロボット33の先端部にはチャック機構を備えたロボットハンド39が組み付けられ、ワークWの把持及び解放が可能になっている。ワーク自動搬送装置8は、移動姿勢のワーク搬送ロボット33が走行装置32の駆動により移動し、所定位置で位置決めされ、走行台31の上で旋回することにより
図1および
図3に示すように、ワークストッカ3や加工モジュール5,6に向き合う。そして、ワーク搬送ロボット33が作業姿勢をとることにより、ワークストッカ3や加工モジュール5,6に対するワークWの受け渡しが行われることとなる。
【0018】
次に、
図4は、加工モジュール5(加工モジュール6も同じ)の制御システムを表すブロック図である。加工モジュール5の制御装置18は、CPU41のほかにROM42やRAM43、不揮発性メモリ44といった記憶装置などを備えたコンピュータを主体とするものであり、I/045を介して主軸装置13、タレット装置14、Z軸駆動装置15、X軸駆動装置16などの各駆動部に接続されている。また、制御装置18には、各種加工に関する加工プログラムやワークの種類、工具や治具に関するワーク加工情報などが記憶部に格納されている。特に、本実施形態には後述する主軸チャック21の動作確認プログラムが格納されている。なお、加工モジュール5,6およびワーク自動搬送装置8にはそれぞれに制御装置が設けられ、これらが連携して工作機械1の制御が行われている。
【0019】
工作機械1での加工は、ワーク自動搬送装置8によってワークストッカ3からワークWが取り出され、例えば隣の加工モジュール5へと搬送されて所定の加工が行われる。すなわち、主軸装置13では主軸チャック21によって把持されたワークWに対して位相決めが行われ或いは回転が与えられる。また、タレット装置14では複数ある工具から加工内容に応じて所定の工具について旋回割出しが行われる。そして、Z軸駆動装置15およびX軸駆動装置16の駆動によりタレット装置14の工具がX軸方向およびZ軸方向に移動し、主軸チャック21に把持されたワークWに対して所定の加工が行われる。
【0020】
ところで、主軸装置13は、主軸チャック21によってワークWを把持する場合、把持動作させる作動油を元圧で行う強圧把持と、減圧した状態で行う弱圧把持との切り換えが可能になっている。
図5は、そうした主軸装置13の油圧回路を示した図であり、具体的には、主軸チャック21を把持動作させるチャックシリンダ50へ作動油を供給する油圧回路を示した図である。チャックシリンダ50は油圧シリンダであり、作動油を蓄えたタンク51に油圧回路を介して接続されている。
【0021】
タンク51には供給側流路61と排出側流路64とが接続され、供給側流路61にはチャックシリンダ50へ作動油を所定圧で供給する油圧ポンプ52が接続されている。そして、供給側流路61と排出側流路64とは、方向切換弁56を介してクランプ流路62とアンクランプ流路63とに接続されている。その方向切換弁56は4ポートの2位置切換電磁弁であり、供給側流路61からの作動油がソレノイドの操作によってクランプ流路62またはアンクランプ流路63へと切り換えた供給が可能になっている。
【0022】
チャックシリンダ50に対して、クランプ流路62はロッド側のクランプ側加圧室502に接続され、アンクランプ流路63はヘッド側のアンクランプ側加圧室503に接続されている。そして、クランプ流路62とアンクランプ流路63にはダブルパイロットチェックバルブ57が接続され、チャックシリンダ50へ供給する作動油の流れを許容するとともに、パイロット圧を受けた場合を除く排出側への流れを規制するよう構成されている。
【0023】
チャックシリンダ50のピストン505にはドローバ507を介して主軸チャック21が接続され、本実施形態では、そのドローバ507による引き込み動作によって主軸チャック21におけるワークの把持動作が行われるようになっている。そのピストン505には反対のヘッド側を突き抜けるようにしてロッド508が連結され、その先端部を検出することによって主軸チャック21の把持動作を確認するための動作確認スイッチ58が設けられている。そして、主軸装置13の油圧回路には、主軸チャック21による把持力が切り換えられるように2圧切換部65が構成されている。
【0024】
2圧切換部65は、パイロット作動型リリーフ弁の減圧弁53が供給側流路61に接続され、そのドレンポートがチェック弁54の供給側に接続されている。また、チェック弁54は、パイロットラインが排出側流路64に連通したリリーフ弁55に接続されている。こうした2圧切換部65では、ソレノイド541が非通電のチェック弁54は遮断状態であり、そのためリリーフ弁55は作動せず、減圧弁53の二次側圧力は高圧となる。一方で、ソレノイド541が通電されたチェック弁54は開放状態になり、減圧弁53のドレンポートから流れる作動油がチェック弁54を通過してリリーフ弁55へと流入し、減圧弁53の二次側圧力がリリーフ弁55に設定された低圧になる。
【0025】
主軸装置13では、こうした2圧切換部65の制御によって主軸チャック21におけるワークの把持動作が、油圧ポンプ52の元圧でワークを把持する強圧把持と、元圧を減圧して把持する弱圧把持とに切り換えられるようになっている。しかし、前記課題でも述べたように、主軸チャック21が開状態で一定時間経過した後の弱圧把持では、それまで継続して圧力を受けていた駆動部がいわゆる固まってしまい、動かすことができずに動作不良を引き起こしてしまうことがある。それは動作確認スイッチ58から検知信号が得られないことにより動作不良と判断される。
【0026】
動作不良と判断された場合、本実施形態では従来のように即時にアラーム停止してしまうことなく、主軸チャック21の動作確認プログラムが実行される。
図6は、その動作確認プログラムの処理を示したフローチャート図である。先ず、弱圧把持におけるクランプでは、2圧切換部65が低圧に切り換えられた状態で主軸チャック21に対するクランプ指令が行われる(S101)。すなわち、
図3に示すようにワーク自動搬送装置8によって主軸チャック21の受け渡し位置へワークWが搬送されると、制御装置18がワーク自動搬送装置8から加工モジュール5に対するワーク搬送信号を受け、方向切換弁56が切り換えられチャックシリンダ50のクランプ側加圧室502へ作動油が供給される。
【0027】
そして、主軸チャック21における動作確認、すなわちワークが把持できているか否かの確認が行われる(S102)。ワークを把持したか否かの確認は、チャックシリンダ50に設けた動作確認スイッチ58から検出信号を制御装置18が受けることにより判断される(S102:NO)。ワークが把持された場合は、加工指令が行われ(S103)、主軸チャック21に関する動作確認処理が終了する。一方で、一定時間経過しても動作確認スイッチ58から検出信号を制御装置18が受け取れない場合には、ワークが把持できていないと判断される(S102:YES)。
【0028】
動作不良が生じた場合には、一旦アンクランプ指令が行われ(S104)、2圧切換部65が高圧に切り換えられた後(S105)、強圧把持に基づく主軸チャック21へのクランプ指令が行われる(S106)。すなわち、低圧では動かせなかったチャックシリンダ50を高圧の作動油によって動作させようとする動作テストが行われる。そこで、方向切換弁56が切り換えられ、チャックシリンダ50のアンクランプ側加圧室503へ元圧による作動油が供給される。この動作テストでは、主軸チャック21が空クランプしないように、ワーク自動搬送装置8がワークWを
図3に示すように受け渡し位置に配置させている。
【0029】
そして、主軸チャック21における動作確認、すなわちワークが把持できているか否かの確認が再び行われる(S107)。これでも動作確認スイッチ58から検出信号を受け取れない場合には(S107:YES)、アラームを発してその加工モジュール5および工作機械1の駆動を停止させ(S108)、主軸チャック21に関する動作確認処理が終了する。一方で、チャックシリンダ50が収縮作動して動作確認スイッチ58からの検出信号を受け取った場合には(S107:NO)、主軸チャック21の動作不良が解消されたとして、再び主軸チャック21に対する弱圧把持によるクランプ指令が行われる(S109)。
【0030】
そのため、2圧切換部65が低圧に切り換えられ(S110)、弱圧把持に基づく主軸チャック21へのクランプ指令が行われる(S111)。そして、方向切換弁56が切り換えられチャックシリンダ50のクランプ側加圧室502へ作動油が供給され、主軸チャック21における動作確認が通常通り行われる(S112)。仮に、この様な状況でも動作不良が生じるようなことがあった場合には(S112:YES)、アラームを発してその加工モジュール5および工作機械1の駆動を停止させ(S113)、主軸チャック21に関する動作確認処理が終了する。これに対して動作確認スイッチ58から検出信号によりワークが把持されたと判断された場合には(S112:NO)、加工指令が行われ(S114)、主軸チャック21に関する動作確認処理が終了する。
【0031】
よって、本実施形態によれば、2圧切り換えが可能な主軸チャック21において、低圧による把持が動作不良となった場合であっても、
図3に示すように主軸チャック21の受け渡し位置にワークWを維持させたまま作動油の供給を高圧に変えた動作テストを自動で行うことができる。そのため、作業者が手作業によって動作テストを行う必要はなくなった。特に、加工モジュール5,6は主軸チャック21が加工室10の奥に位置しているため、作業負担が大幅に軽減される。また、動作テストはワーク自動搬送装置8を退避させることなく、ワークWを主軸チャック21に位置した状態を維持させたまま行われるため、復旧までの時間を短縮させることができる。
【0032】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、加工モジュール5,6として構成されたタレット旋盤を例に挙げて説明したが、2軸旋盤など主軸チャックを備えたその他の工作機械であってもよい。
また、前記実施形態では、動作テストである強圧把持のクランプ指令(S106)と主軸チャック21における動作確認(S107)とを1回にしたが、動作不良が解消しない場合には更に所定回数行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…工作機械 3…ワークストッカ 5,6…加工モジュール 8…ワーク自動搬送装置 13…主軸装置 14…タレット装置 15…Z軸駆動装置 16…X軸駆動装置 18…制御装置 21…主軸チャック 33…ワーク搬送ロボット 39…ロボットハンド 50…チャックシリンダ 53…減圧弁 54…チェック弁 55…リリーフ弁 56…方向切換弁 57…ダブルパイロットチェックバルブ 58…動作確認スイッチ 65…2圧切換部