(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180636
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】光通信装置、光通信システム、及び光パワー制御方法
(51)【国際特許分類】
H04B 10/294 20130101AFI20231214BHJP
H04J 14/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H04B10/294
H04J14/02 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094096
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】児玉 敦史
(72)【発明者】
【氏名】宿南 宣文
(72)【発明者】
【氏名】竹山 智明
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA55
5K102AD01
5K102MA04
5K102MB09
5K102MC15
5K102MD01
5K102MD03
5K102MD04
5K102MD07
5K102MH05
5K102MH13
5K102MH14
5K102MH22
5K102PH13
5K102PH14
5K102PH47
5K102PH48
5K102PH49
5K102RB12
(57)【要約】
【課題】WDM光通信でチャネル間の光パワー偏差を抑制し、かつ、各チャネルの帯域内の光パワー偏差を低減する。
【解決手段】光通信装置は、複数のチャネルの信号が多重されたWDM信号をモニタする光モニタと、前記光モニタで検出されたパワースペクトルに基づき、前記WDM信号のチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、前記WDM信号の光パワーを制御する制御値を計算するプロセッサと、前記制御値に基づいて、前記WDM信号の前記光パワーを前記チャネル帯域幅よりも狭い前記周波数単位で調整する光パワー調整回路と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチャネルの信号が多重されたWDM信号をモニタする光モニタと、
前記光モニタで検出されたパワースペクトルに基づき、前記WDM信号のチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、前記WDM信号の光パワーを制御する制御値を計算するプロセッサと、
前記制御値に基づいて、前記WDM信号の前記光パワーを前記周波数単位で調整する光パワー調整回路と、
を備える光通信装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、チャネル帯域内の光パワー偏差を低減するよう光パワーを制御する制御値を計算する、
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記WDM信号のチャネル間の光パワー偏差及び各チャネルの帯域内の光パワー偏差を低減するよう光パワーを制御する制御値を計算する、
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記光モニタで検出された前記パワースペクトルを補正し、補正後のパワースペクトルに基づいて、前記チャネル帯域幅よりも狭い前記周波数単位で前記制御値を計算する、
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、補正後の前記パワースペクトルに基づいて、前記チャネル帯域幅よりも狭い前記周波数単位で前記パワースペクトルの光パワーレベルと目標の光パワーレベルを比較し、比較結果に基づいて前記制御値を計算する、
請求項4に記載の光通信装置。
【請求項6】
前記光通信装置は、下流の光通信装置から受信パワースペクトル情報を受信し、
前記プロセッサは、前記光モニタで検出された前記パワースペクトルと、前記受信パワースペクトル情報とに基づいて前記WDM信号の波長依存性を計算し、前記波長依存性に基づいて前記周波数単位で前記制御値を計算する、
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、前記波長依存性を周波数方向に補正し、補正後の波長依存性に基づいて前記制御値を計算する、
請求項6に記載の光通信装置。
【請求項8】
前記光通信装置は、上流の光通信装置から、前記上流の光通信装置でアドされて光伝送路を未だ通過していない未伝送のWDM信号のパワースペクトル情報を取得し、
前記プロセッサは、前記光モニタで検出された前記パワースペクトルと、前記上流の光通信装置から受信した前記パワースペクトル情報とに基づいて、前記チャネル帯域幅よりも狭い前記周波数単位で前記制御値を計算する、
請求項1に記載の光通信装置。
【請求項9】
前記光モニタは、チャネル帯域幅よりも狭い周波数間隔で、前記パワースペクトルを検出する、
請求項8に記載の光通信装置。
【請求項10】
前記光モニタは、前記光パワー調整回路の制御間隔である前記周波数単位よりも狭い前記周波数間隔で前記WDM信号の第1パワースペクトルを検出し、
前記プロセッサは、前記第1パワースペクトルを周波数方向に積算して、前記周波数単位に整合した第2パワースペクトルを生成する、
請求項9に記載の光通信装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記光モニタで検出された前記パワースペクトルが前記未伝送のWDM信号のパワースペクトル情報に近づくように光パワーを制御する制御値を計算する、
請求項8に記載の光通信装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、受信したWDM信号のチャネル間の光パワー偏差が最小になるように光パワーを制御する前記制御値を計算する、
請求項11に記載の光通信装置。
【請求項13】
第1の光通信装置と、
第2の光通信装置と、
前記第1の光通信装置と前記第2の光通信装置を接続する光伝送路と、
を備え、
前記第1の光通信装置または前記第2の光通信装置は、前記第1の光通信装置から前記光伝送路を介して前記第2の光通信装置で受信されたWDM信号のパワースペクトルを、前記WDM信号のチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で補正し、補正後のパワースペクトルに基づいて、前記周波数単位で前記WDM信号の光パワーレベルを制御する、
光通信システム。
【請求項14】
第1の光通信装置と、
第2の光通信装置と、
前記第1の光通信装置と前記第2の光通信装置を接続する光伝送路と、
を備え、
前記第1の光通信装置または前記第2の光通信装置は、前記光伝送路に送信されるWDM信号の送信パワースペクトルと、前記光伝送路から受信された前記WDM信号の受信パワースペクトルとに基づいて前記WDM信号の波長依存性を計算し、前記波長依存性を前記WDM信号のチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で周波数方向に補正し、補正後の前記波長依存性に基づいて前記周波数単位で前記WDM信号の光パワーレベルを調整する、
光通信システム。
【請求項15】
第1の光通信装置と、
第2の光通信装置と、
前記第1の光通信装置と前記第2の光通信装置を接続する光伝送路と、
を備え、
前記第1の光通信装置または前記第2の光通信装置は、前記第1の光通信装置でアドされ未だ前記光伝送路を通過していないWDM信号の第1パワースペクトルと、前記光伝送路を通過して前記第2の光通信装置で受信された前記WDM信号の第2パワースペクトルとに基づいて、前記WDM信号のチャネル帯域幅よりも狭い周波数間隔で前記WDM信号の光パワーレベルを調整する、
光通信システム。
【請求項16】
光通信装置で、複数のチャネルの信号が多重されたWDM信号のパワースペクトルを取得し、
前記パワースペクトルに基づいて、前記WDM信号のパワーレベルを調整する制御値を前記WDM信号のチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で計算し、
前記制御値に基づいて、前記WDM信号のパワーレベルを前記周波数単位で調整する、
光パワー制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光通信装置、通信システム、及び光パワー制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)方式の光通信システムでは、1550nm帯のCバンドと、1590nm帯のLバンドのそれぞれで、96チャネルの信号伝送が実用化されている。CバンドとLバンドのバンド幅は4.8THz(約40nm)であり、96チャネルでは、チャネル間隔、チャネル帯域幅ともに50GHz(約0.4nm)になる。50GHzのチャネル間隔及びチャネル帯域幅で、ビットレート100Gbps、ボーレート32GBaudの信号伝送が行われている。チャネル間に光パワー偏差が生じないように、上流側の光通信装置であらかじめ各チャネルの光パワーが制御される。光パワーの低いチャネルで光信号対雑音比(OSNR:Optical Signal-to-Noise Ratio)が低下し、信号品質が劣化するからである。
【0003】
パワー制御された複数チャネルの信号を含むWDM信号は、ポストアンプ、伝送路、中継(インライン)アンプ、プレアンプ等を経由して下流の光通信装置で受信される。伝送路の波長依存損失や誘導ラマン散乱、各アンプの利得の波長(周波数)特性により、受信されたWDM信号にチャネル間の光パワー偏差が生じる。受信側の光通信装置で、チャネルごとに目標の光パワーとなるように光パワーを制御して、チャネル間の光パワー偏差を低減する。
【0004】
近年、1チャネル当たりのビットレートを上げるために、信号のボーレートが増大している。たとえば、1.2Tbpsの信号伝送では130GBaudとなり、チャネル間隔及びチャネル帯域幅を150GHzで使用することが検討されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-65060号
【特許文献2】特開2015-126487号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チャネル間隔及びチャネル帯域幅が50GHzの光伝送で、送信側と受信側でチャネルごとに光パワーを制御しても、各チャネルの帯域内に光パワー偏差が残り得る。チャネル間隔及びチャネル帯域幅が150GHzになると、帯域幅が広い分、帯域内の光パワー偏差が大きくなる。帯域内光パワー偏差の増大は、受信時の伝送ペナルティとなり、伝送距離拡張の妨げとなる。一つの側面で、本発明は、WDM光通信でチャネル間の光パワー偏差を抑制し、かつ、各チャネルの帯域内の光パワー偏差を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態において、光通信装置は、
複数のチャネルの信号が多重されたWDM信号をモニタする光モニタと、
前記光モニタで検出されたパワースペクトルに基づき、前記WDM信号のチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、前記WDM信号の光パワーを制御する制御値を計算するプロセッサと、
前記制御値に基づいて、前記WDM信号の前記光パワーを前記周波数単位で調整する光パワー調整回路と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
WDM光通信でチャネル間の光パワー偏差が抑制され、かつ、各チャネルの帯域内の光パワー偏差が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の光通信システムの模式図である。
【
図2】WDM伝送におけるチャネル間隔と帯域幅の例を示す図である。
【
図3】WDM信号の伝送後のスペクトルを示す図である。
【
図4】伝送後の光パワー制御の例を示すスペクトル図である。
【
図5】第1実施形態の光通信装置のプロセッサの機能ブロック図である。
【
図6】第1実施形態の光パワー制御方法のフローチャートである。
【
図7】光モニタに入力される光パワースペクトルと、光モニタで検出されるチャネルごとの光パワースペクトルを示す図である。
【
図8】光モニタで検出されたパワースペクトルの補正を示す図である。
【
図9】補正後のパワースペクトルに基づく周波数方向へのチャネル帯域幅の分割例を示す図である。
【
図10】分割されたサブチャネルごとの光パワーと目標の光パワーとの差分計算を示す図である。
【
図11】アッテネーション値の更新を示す図である。
【
図12】第1実施形態における光パワー制御後のスペクトルを示す図である。
【
図13】第2実施形態の光通信装置を用いた光通信システムの模式図である。
【
図14】第2実施形態の光通信方法のフローチャートである。
【
図15】第3実施形態の光通信装置を用いた光通信システムの模式図である。
【
図16】
図15の上流側の光通信装置でのワースペクトルの処理を示す図である。
【
図17】
図15の下流側の光通信装置でのパワースペクトルの処理を示す図である。
【
図18】
図15の下流側の光通信装置での光パワー制御を示す図である。
【
図19】第4実施形態の光通信装置を用いた光通信システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態では、WDM光通信でチャネル間の光パワー偏差を抑制し、かつ、各チャネルの帯域内光パワー偏差を低減する。これを実現するために、WDM光通信システムで用いられているチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で光パワーを制御する。光パワーの制御に、波長選択スイッチ(WSS:Wavelength Selective Switch)のアッテネーション機能、ダイナミックゲインイコライザの可変アッテネーション機能、可変帯域幅で光出力制御が可能な波長ブロッカの出力調整機能などを利用する。
【0011】
従来は、光伝送路やエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)で発生するチャネル間のパワー偏差を下流の光通信装置でモニタし、モニタ値がフラットになるように、上流側の光通信装置のWSSのアッテネーション量を制御していた。しかし、たとえば130GBaudのボーレートでは、チャネルの帯域幅が150GHzまで拡大される。このような広い波長域の信号を増幅するためにラマンアンプを用いると、励起光波長に応じたリップルが発生し、帯域内のスペクトルのチルトが無視できない量になる。また、従来の50GHz帯域幅においても、伝送路の状態によっては、チャネル帯域内のチルトの影響が大きくなる場合がある。
【0012】
そこで、WDM光通信システムで用いられているチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で光パワーを制御する。より具体的には、光通信装置で、複数のチャネルの信号が多重されたWDM信号のパワースペクトルを検出し、検出したパワースペクトルに基づいて、WDM信号のパワーレベルを調整する制御値を、このWDM信号のチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で計算する。この制御値に基づいて、前記WDM信号のパワーレベルをチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で調整する。以下の説明では、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位を、便宜上「サブチャネル」と呼ぶ場合があるが、サブチャネルは光伝送の単位ではなく、あくまでも光パワー制御の単位であることに留意されたい。たとえば、50GHzのチャネル帯域幅のWDM信号で、25GHz、12.5GHzなどの周波数単位で各チャネルの光パワーレベルを制御する。150GHzのチャネル帯域幅の場合、50GHz、25GHz、12.5GHzなどの周波数単位で、各チャネルの光パワーレベルを制御する。以下で、同じ構成要素には同じ符号を付けて、重複する説明を省略する場合がある。
【0013】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の光通信システム1の模式図である。光通信システム1は、第1の光通信装置10-1と、第2の光通信装置10-2と、光通信装置10-1と10-2の間を接続する光伝送路6を含む。光伝送路6に中継アンプ5が挿入されている。光通信装置10-1と10-2は、たとえば、リコンフィギャラブル光アド/ドロップマルチプレクサ(ROADM:Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)であり、図中でそれぞれ「ROADM装置1」、「ROADM装置2」と表記されている。図示の便宜上、光通信装置10-1は送信側の構成だけを示しているが、光通信装置10-1と10-2は同じ構成を有する。
【0014】
第1実施形態では、受信側の光通信装置10-2で受信WSSの出力をモニタし、モニタ結果に基づいて、チャネルの帯域幅よりも狭い周波数単位で各チャネルの光パワーを制御する。光通信装置10-2は、プリアンプ101と、受信WSS11と、光スプリッタ(図中で「SPL」と表記)12と、光モニタ13と、プロセッサ15を有する。光モニタ13は、たとえば光パワーと波長をリアルタイムでモニタできる光チャネルモニタであり、図中で「OCM」と表記されている。光通信装置10-2はまた、送信WSS16と、光スプリッタ17と、光モニタ18と、ポストアンプ102を有する。光通信装置10-1も、その送信側の構成として、送信WSS16と、光スプリッタ17と、光モニタ18と、ポストアンプ102を有する。
【0015】
光通信装置10-1に、異なる波長λ1、λ2、…、λnの信号を扱うトランシーバ105-1、105-2、…、105-nの送信側回路(図中でそれぞれ「Transceiver Tx λ1」、「Transceiver Tx λ2」、「Transceiver Tx λn」と表記)が接続されている。各トランシーバ105-1、105-2、…、105-nから出力された光信号は、合波器104で合波される。合波された光信号は、送信WSS16に入力され、方路Bからの光信号とともに、方路Aからの光信号に合波される。
【0016】
送信WSS16から出力されたWDM信号は、光スプリッタ17で分岐され、ポストアンプ102と光モニタ18に入力される。光モニタ18は、チャネル(すなわち波長)ごとに光パワーをモニタし、モニタ結果を送信WSS16にフィードバックする。図中で、実線の矢印は光信号線を示し、点線の矢印は電気信号線を示す。送信WSS16はアッテネーション機能を有し、モニタ結果に基づいて、各チャネルの光パワーが目標値になるように各チャネルの光パワーを制御する。
【0017】
ポストアンプ102は、パワー調整されたWDM信号を増幅し、光伝送路6に送信する。中継アンプ5は、光伝送路6で減衰したWDM信号を増幅する。光伝送路6を伝搬したWDM信号は、光通信装置10-2で受信される。
【0018】
下流側の光通信装置10-2のプリアンプ101は、光伝送路6で減衰したWDM信号を増幅する。ポストアンプ102、プリアンプ101、及び中継アンプ5はラマンアンプであってもよいし、EDFAであってもよい。プリアンプ101の出力は、受信WSS11に入力される。受信WSS11で、WDM信号の一部は方路Cへ出力され、WDM信号の他の一部は分波器103で複数のトランシーバ受信器105a、105b、105c(図中でそれぞれ「Transceiver Rx λa」、「Transceiver Rx λb」、「Transceiver Rx λc」と表記)に振り分けられる。WDM信号の残りの部分は、光スプリッタ12に入射する。
【0019】
光スプリッタ12の出力は、光モニタ13の入力と、送信WSS16の入力にそれぞれ接続される。光モニタ13では、チャネル(波長)ごとに光パワーがモニタされる。モニタ結果はプロセッサ15に入力される。プロセッサ15は、モニタ結果に基づいて、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、各チャネルの光パワーの制御値を決定する。制御値はプロセッサ15から受信WSS11に送られる。制御値は、たとえば受信WSS11のアッテネーション量であってもよいし、光ロス補償量であってもよいし、受信WSS11の出力レベル制御値であってもよい。受信WSS11は、制御値に基づいて、入力されたWDM信号の光パワーレベルを、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で調整して、入力されたWDM信号の光パワーを目標値に近づける。
【0020】
受信WSS11によりチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で光パワーが制御されたWDM信号は、方路C、分波器103、送信WSS16など、それぞれの方向に送られる。送信WSS16に入力されたWDM信号は、他の波長の送信信号と合波され、下流側の光伝送路6に出力される。光通信装置10-2の送信側の動作と構成は、光通信装置10-1の送信側の動作及び構成と同じであり、上述したとおりである。受信WSS11と送信WSS16のアッテネーション機能は、WSS内に設けられたマイクロプロセッサと電圧生成回路で実現される。
【0021】
図2は、WDM伝送におけるチャネル間隔とチャネル帯域幅の例を示す。
図2の(A)は、チャネル間隔とチャネル帯域幅が50GHzの信号スペクトルである。
図2の(B)は、チャネル間隔とチャネル帯域幅が150GHzの信号スペクトルである。チャネル帯域幅50GHzと150GHzの双方で、信号スペクトルは完全な矩形波にはならず、台形のスペクトル形状を有する。150GHzの帯域幅を、周波数方向にたとえば3つに分割すると、中央のサブチャネルは矩形波形となり、両端のサブチャネルよりもスペクトル密度が高くなる。50GHzの信号伝送と比べて、スペクトル密度が向上する。
図2の(A)の50GHzのチャネル帯域幅を複数の周波数領域に分割してもよい。たとえば、4つの周波数領域に分割して、12.5GHzの周波数単位で光パワーを制御してもよい。
【0022】
図3は、WDM信号の伝送後のスペクトルを示す。
図3の(A)はチャネル帯域幅が50GHzの信号の伝送後のスペクトル、(B)はチャネル帯域幅が150GHzの信号の伝送後のスペクトルである。光伝送路の波長依存損失、誘導ラマン散乱、アンプ利得の周波数特性などの影響により、50GHzと150GHzの双方で、チャネル間に光パワー偏差が生じている。さらに、各チャネルで、帯域内光パワー偏差が生じる。帯域内光パワー偏差は、そのチャネル帯域内の最小パワーレベルと最大パワーレベルの差、あるいは基準値からのずれの大きさを表す。
【0023】
150GHzでは、帯域幅が広い分、帯域内光パワー偏差が大きくなる。この帯域内光パワー偏差を低減するために、実施形態では、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、その狭い周波数領域ごとに光パワーを制御する。一つの例として、受信WSS11のアッテネーション機能を利用して、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で光パワーを制御する。
【0024】
図4は、伝送後の光パワー制御の例を示すスペクトル図である。実施形態の光パワー制御の理解を容易にするために、まず、チャネル帯域幅を分割しない状態での光パワー制御を説明する。すなわち、チャネル帯域幅と光パワー制御の周波数単位が同じ場合である。
図4の(A)は、光通信装置10-2のプリアンプ101から出力されるWDM信号の光パワースペクトルである。上述のように、光伝送路6の影響により、チャネル間で光パワー偏差が生じるとともに、各チャネルで帯域内光パワー偏差が生じている。この光パワースペクトルは、受信WSS11に入力される。
【0025】
図4の(B)は、受信WSS11に設定されるアッテネーション値を示す。アッテネーション値は、光モニタ13によるチャネルごとの光パワーモニタ結果に基づいて、プロセッサ15により決定される。光伝送路6の波長依存損失やアンプ利得の周波数特性の影響で、チャネルごとにアッテネーション量が異なる。
図4の(A)のパワースペクトルに、
図4の(B)のアッテネーションを適用することで、
図4の(C)のパワースペクトルが得られる。このパワースペクトルは、チャネル間の光パワー偏差が抑制され、目標の光パワーに近いスペクトル形状が得られるが、チャネルごとに帯域内光パワー偏差が残っている。この帯域内偏差は、チャネル帯域幅が広いほど顕著になる。以下で、帯域内光パワー偏差を低減する具体的な構成と手法を説明する。
【0026】
図5は、光通信装置10のプロセッサ15の機能ブロック図である。光通信装置10は
図1の光通信装置10-1、10-2の双方に適用される。プロセッサ15は、その機能ブロックとして、光パワー読込み部151、光パワー補正部152、差分計算部153、差分判定部154、アッテネーション(図中「ATT」と表記)設定値計算部155、アッテネーション読込み部156、及びアッテネーション設定部157を有する。差分計算部153と差分判定部154における「差分」は、光パワー制御対象の周波数単位(これを便宜上「サブチャネル」と呼ぶ)の光パワーと目標の光パワーとの差分であり、ΔP(λ)で表される。
【0027】
受信WSS11の入力ポートに、伝送後のWDM信号が入力される。受信WSS11はチャネル帯域幅よりも狭い周波数間隔のアッテネーション機能を有する。たとえば、チャネル帯域幅が150GHzの場合、150GHzよりも狭い50GHz、25GHz、12.5GHz、6.25GHzなどの間隔でアッテネーション可能である。この例では、受信WSS11のアッテネーション機能を利用して光パワー制御するが、WSSに替えて、可変の周波数単位でパワー制御が可能な他のデバイス、たとえば、ダイナミックゲインイコライザや波長ブロッカを使用してもよい。
【0028】
受信WSS11の出力の一部は、光スプリッタ12により分岐され、光モニタ13に入力される。受信WSS11の出力の他の部分は出力ポートに送られる。光モニタ13は、チャネル(波長)ごとに光パワーを検出する。
【0029】
プロセッサ15の光パワー読込み部151は、光モニタ13からチャネルごとの光パワーを読み込む。光パワー読込み部151によって読み込まれる光パワーは、光モニタ13に入射したWDM信号の光パワースペクトルと同一ではなく、光モニタ13によって検出された各チャネルの平均光パワーを表す。光パワー補正部152は、読み込まれたパワースペクトルを補正して、光モニタ13に入力された光パワースペクトルを推定または復元する。このスペクトル補正の詳細は後述する。
【0030】
差分計算部153は、補正後のパワースペクトルに基づいて、チャネル帯域幅よりも狭い制御単位であるサブチャネルごとに、受信されたWDM信号のパワーレベルと、目標の光パワーとの差分を計算する。目標の光パワーは、光伝送路6の事前の測定結果に基づいて決定されており、たとえば、
図4の(C)の「目標光パワー」で示されるようにチャネル帯域内でフラット、かつチャネル間でフラットになるように設定されている。
【0031】
差分判定部154は、所定の周波数単位ごとに計算された差分が、許容範囲内にあるか否かを判断する。光パワーの差分が許容範囲内にあるということは、そのサブチャネルで目標の光パワーからのずれが許容範囲内であり、受信WSS11の対応する周波数帯に設定されているアッテネーション値が適正であることを意味する。
【0032】
差分が許容範囲を超えているときは、現在のアッテネーション値を更新するために、アッテネーション読込み部156は、受信WSS11から制御対象のサブチャネルの現在のアッテネーション値を読み出す。読み出されたアッテネーション値は、アッテネーション設定値計算部155に供給される。アッテネーション設定値計算部155は、制御対象のサブチャネルの現在のアッテネーション値と、差分計算部153で計算された差分ΔP(λ)とに基づいて、新たなアッテネーション設定値を計算する。計算されたアッテネーション設定値は、アッテネーション設定部157によって、受信WSS11の対応するサブチャネルに設定される。これにより、受信WSS11のアッテネーション値は、チャネル帯域幅よりも細かい分解能で、適正な値に更新される。
【0033】
図6は、プロセッサ15によって実行される第1実施形態の光パワー制御方法のフローチャートである。プロセッサ15は、光モニタ13からチャネルごとの光パワーを読み込む(S11)。
図7は、光モニタ13に入力される光パワースペクトルと、光モニタ13で検出される光パワースペクトルを示す。ここでは、チャネル帯域幅が150GHzのWDM伝送を想定している。
図7の(A)で、光モニタ13に入力される光パワースペクトルには、チャネル間に光パワー偏差が生じていると同時に、各チャネルに帯域内光パワー偏差が生じている。
図7の(B)で、光モニタ13により検出された各チャネルの光パワーには、チャネル間の光パワー偏差は検出されているが、チャネルごとの帯域内光パワー偏差は検出されていない。光モニタ13は、チャネルごとの光パワーをそのチャネルの平均光パワーとして検出するからである。
【0034】
図6に戻って、プロセッサ15は、光モニタ13によって検出されたパワースペクトルを補正する(S12)。この補正によって、光モニタ13に入力されたときの光パワースペクトルが推定される。
図8は、パワースペクトルの補正の例を示す。この例では、光モニタ13から取得したパワースペクトルを、直線補間により周波数方向に補正し、光モニタ13に入力された光パワースペクトルを推定している。補正後のパワーレベルをLitrpで示す。直線補間は、波長λ1とλ3のパワーレベルをそれぞれP(λ1)、P(λ2)とすると、たとえば式(1)で表される。
【0035】
【数1】
光モニタ13で検出された光パワースペクトルの補正は、上述した直線補間に限定されない。光パワーの波長依存性に整合するように、曲線補間によりパワースペクトルを補正してもよい。
【0036】
図6に戻って、プロセッサ15は、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、補正後の光パワーと目標の光パワーとの差分ΔP(λ)を計算する(S13)。目標の光パワーとは、上述したようにチャネル帯域内でフラット、かつチャネル間でフラットなパワーレベルである。
図9は、補正後のパワースペクトルに基づく周波数方向へのチャネル帯域幅の分割例を示す。チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位への分割は、差分計算部153による差分計算に先立って行われてもよいし、差分計算と同時に行われてもよい。
【0037】
図9の例では、各チャネルの150GHz帯域幅は、周波数方向に3つに分割される。各チャネルが、帯域幅50GHzの3つのサブチャネルに分割され、分割されたサブチャネルごとに光パワーPdivが得られる。λ1のチャネルの3つのサブチャネルの中心波長は、それぞれλ1-Δλ、λ1、λ1+Δλである。λ2のチャネルの3つのサブチャネルの中心波長は、それぞれλ2-Δλ、λ2、λ2+Δλである。λ3のチャネルも同様に周波数(波長)方向に分割される。Δλはサブチャネルの間隔50GHzに対応し、1550nm帯では波長間隔約0.4nmに相当する。
【0038】
チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、補正後の光パワーと目標の光パワーとの差分ΔP(λ)が計算されるので、
図8のパワースペクトルは、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で補正されたのと同じ効果を奏する。
【0039】
図10は、サブチャネルごとの光パワーと目標の光パワーPtrgとの差分計算を示す。上述したように、目標の光パワーPtrgは、伝送路の測定に基づいてあらかじめ決定されている。また、光モニタ13の検出結果から、光モニタ13に入力された光パワースペクトルが推定され、補正後のパワースペクトルに基づいて、サブチャネルごとの光パワーPdivが推定されている。これにより、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、光パワーPdivと目標の光パワーPtrgとの差分ΔP(λi)が算出される。ここで「i」はサブチャネルの番号を示す。WDMシステムのチャネル数をNとすると、
図10の例で、iは1から3×Nまでの整数である。サブチャネル番号iを省略すると、各サブチャネル、すなわちチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で計算される差分ΔP(λ)は、式(2)で表される。
【0040】
【0041】
図6に戻って、プロセッサ15は、サブチャネルごとに、そのサブチャネルの差分ΔP(λ)が許容範囲内か否かを判断する(S14)。差分ΔP(λ)が許容範囲内にない場合(S14でNO)、そのサブチャネルに現在設定されているアッテネーション値が適切でないので、アッテネーション値を更新する。具体的には、受信WSS11に設定されている制御対象のサブチャネルのアッテネーション値ATT(λ)をプロセッサ15に読み込んで(S15)、そのサブチャネルに設定すべき新たなアッテネーション設定値ATTset(λ)を計算する(S16)。計算されたアッテネーション値ATTset(λ)を、受信WSS11の対応のサブチャネルに設定する(S17)。
【0042】
制御対象のサブチャネルのアッテネーションが更新されると、プロセッサ15は他のサブチャネルがあるか否かを判断する(S18)。次のサブチャネルがあるときは(S18でYES)、ステップS13に戻ってS13からS17を繰り返す。ステップS14で、制御対象のサブチャネルの差分ΔP(λ)が許容範囲内の場合は(S14でYES)、アッテネーション値を更新せずに、ステップS18で他に制御対象のサブチャネルがあるか否かを判断する。他にサブチャネルがないときは(S18でNO)、処理を終了する。サブチャネルを順次制御する替わりに、一度に並列で制御してもよい。
図6の制御フローはサービス中に定期的、または不定期に行われ得る。
【0043】
図11は、アッテネーション値の更新を示す。
図11の(A)は現在の設定値を示す。
図11の(B)は、更新後の設定値を示す。
図11の(A)の例では、すべてのサブチャネルに同程度のアッテネーション値が設定されているが、光通信装置10のサービス開始時にあらかじめ伝送路の状態を測定して異なるアッテネーション値が設定されていてもよい。
図11の(B)で、各サブチャネルにおいて、現在のアッテネーション値に、分割されたサブチャネルの光パワーと目標の光パワーの差分ΔP(λi)が加算され、新たなアッテネーション値が設定される。
【0044】
サブチャネル番号iを省略すると、更新後のアッテネーション設定値ATTset(λ)は式(3)で表される。
【0045】
【数3】
ここでATT(λ)は制御対象のサブチャネルの現在のアッテネーション値、ΔP(λ)はそのサブチャネルの光パワーと目標の光パワーとの差分である。上記の制御フローでは式(1)、(2)、(3)を波長λの関数として記述しているが、光速をc、周波数をfとして、c=λ×fの関係から周波数fの関数として計算してもよい。
【0046】
図12は、第1実施形態における光パワー制御後のスペクトルを示す。
図12の(A)はチャネル帯域幅が150GHzのときに、各チャネルを周波数方向に3分割したときの光パワー制御後のスペクトル、
図12の(B)は、各チャネルを周波数方向に6分割したときのスペクトルである。
【0047】
図12の(A)を参照すると、
図3の(B)で150GHzのチャネル帯域幅を周波数方向に分割しないときと比較して、帯域内光パワー偏差が大幅に改善されている。それだけではなく、
図3の(A)で50GHzのチャネル帯域幅を周波数方向に分割しないときと比較しても、帯域内光パワー偏差が低減されている。
図12の(B)を参照すると、光パワー制御の周波数単位を25GHzにすることで、帯域内光パワー偏差がさらに低減される。これにより、WDM伝送でチャネル間の光パワー偏差と、チャネル帯域内の光パワー偏差の双方が低減され、信号品質の劣化の少ない光通信が実現される。
【0048】
<第2実施形態>
図13は、第2実施形態の光通信装置20-1、20-2を用いた光通信システム2の模式図である。第2実施形態では、受信側のプリアンプ101の出力パワーの波長特性がフラットになるように、送信側でチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で光パワーを制御する。光通信装置20-1、及び20-2の一例として、ROADM装置を用いる。
【0049】
光通信システム2は、第1の光通信装置20-1と、第2の光通信装置20-2と、光通信装置20-1と20-2の間を接続する光伝送路6を含む。光伝送路6に中継(インライン)アンプが挿入されていてもよい。光通信装置20-1と20-2は、たとえばROADM装置である。
図1と同様に、実線の矢印は光信号線を示し、点線の矢印は電気信号線を示す。
【0050】
光通信装置20-1は、送信部の構成として、送信WSS26、ポストアンプ102、光監視チャネル(OSC:Optical Supervisory Channel)処理部23、OSCフィルタ21、及びプロセッサ25-1を有する。光通信装置20-2は、受信部の構成として、OSCフィルタ22、OSC処理部24、プリアンプ101、光スプリッタ29、光モニタ13、及びプロセッサ25-2を有する。
【0051】
図示の便宜上、光通信装置20-1の受信部の構成として、光通信装置20-2の受信部の構成の一部だけが描かれ、光通信装置20-2の送信部の構成として、光通信装置20-1の送信部の構成の一部だけが描かれている。実際は、光通信装置20-1と20-2は同じ構成を有し、光通信装置20-1は、その受信部の構成として光通信装置20-2の受信部を同じ構成を有し、光通信装置20-2は、その送信部の構成として光通信装置20-1の送信部を同じ構成を有する。プロセッサ25-1、25-2は、送信部と受信部で共用されてもよい。
【0052】
光通信装置20-1から光伝送路6に送信されたWDM信号は、光通信装置20-2で受信される。OSCフィルタ22を通過し、プリアンプ101で増幅されたWDM信号の一部は、光スプリッタ29で分岐され、光モニタ13でチャネルごとに光パワーが検出される。プリアンプ101から出力される光パワースペクトルは、
図7の(A)に示すように、チャネル間の光パワー偏差とともに、帯域内光パワー偏差が生じている。一方、光モニタ13でチャネルごとに検出される光パワーは、
図7の(B)に示したように、帯域内光パワー偏差は失われている。光モニタ13で検出された各チャネルのパワー情報はプロセッサ25-2に入力される。
【0053】
プロセッサ25-2は、受信光パワー読込み部261と、受信パワー転送部262を有する。受信光パワー読込み部261は、光モニタ13で検出された各チャネルの光パワーを読み込む。受信パワー転送部262は、読み出された各チャネルの光パワーを、上流方向への送信部のOSC処理部23に転送する。OSC処理部23は、転送された光パワー情報を監視情報に含める。監視情報は光信号に変換され、OSCフィルタ21を介して光伝送路8に送信される。光通信装置20-1は、光伝送路8からOSCを受信すると、OSCフィルタ22でOSCを取り出し、OSC処理部24で電気信号に変換し復調する。復調されたOSC信号は、プロセッサ25-1に入力される。
【0054】
プロセッサ25-1は、その機能ブロックとして、光パワー補正部252、差分計算部253、差分判定部254、アッテネーション(図中「ATT」と表記)設定値計算部255、アッテネーション読込み部256、アッテネーション設定部257、及び受信パワー取得部258を有する。
【0055】
受信光パワー取得部258は、入力されたOSC信号から、光通信装置20-1の受信光パワー、具体的には、プレアンプ101の出力段での光パワーを取得する。光パワー補正部252は、第1実施形態と同様の方法で、光通信装置20-2でモニタされた受信光のパワースペクトルを補正して、光モニタ13に入力された光パワースペクトルを推定または復元する。
【0056】
差分計算部253は、補正後のパワースペクトルに基づいて、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位(サブチャネル)で、光通信装置20-2での受信光のパワーレベルと、目標の光パワーとの差分を計算する。目標の光パワーは、チャネル帯域内でフラット、かつチャネル間でフラットになるように、あらかじめ設定されているパワーレベルである。差分判定部254は、所定の周波数単位ごとに計算された差分が、許容範囲内にあるか否かを判断する。光パワーの差分が許容範囲内にあるということは、そのサブチャネルで目標の光パワーからのずれが許容範囲内であり、送信WSS26の対応する周波数帯に設定されているアッテネーション値が適正であることを意味する。
【0057】
差分が許容範囲を超えているときは、現在のアッテネーション値を更新するために、アッテネーション読込み部256は、送信WSS26から制御対象のサブチャネルの現在のアッテネーション値を読み出す。読み出されたアッテネーション値は、アッテネーション設定値計算部255に供給される。アッテネーション設定値計算部255は、制御対象のサブチャネルの現在のアッテネーション値と、差分計算部153で計算された差分ΔP(λ)とに基づいて、新たなアッテネーション設定値を計算する。計算されたアッテネーション設定値は、アッテネーション設定部257によって、送信WSS26の対応するサブチャネルに設定される。これにより、送信WSS26のアッテネーション値は、チャネル帯域幅よりも細かい分解能で、適正な値に更新される。
【0058】
光通信装置20-1の送信WSS26により、あらかじめスペクトル整形されたWDM信号が光伝送路6に送信される。光通信装置20-2で受信され、プリアンプ101で増幅されたWDM信号は、チャネル帯域内でフラットな波長特性を有し、チャネル間の偏差が低減されている。プリアンプ101の出力パワーの波長特性をフラットにすることで、end-to-endのOSNRが改善される。また、光通信装置20-2でドロップされた光信号の復調エラーが低減される。
【0059】
図14は、第2実施形態の光パワー制御方法のフローチャートである。「ROADM-1」と表記された箇所の制御フロー(S21からS28)は、光通信装置20-1のプロセッサ25-1により実行される。「ROADM-2」と表記された箇所の処理フロー(S31、S32、S33)は、光通信装置20-2によって実行される。
【0060】
光通信装置20-2のプロセッサ25-2は、プリアンプ101から出力され、光モニタ13で検出された受信光パワースペクトルを読み込み(S31)、各チャネルの光パワーをOSC処理部23に転送する(S32)。光通信装置20-2は、OSCを用いて各チャネルの光パワースを送信元の光通信装置20-1に送信する(S33)。
【0061】
光通信装置20-1のプロセッサ25-1は、OSCで受け取った受信側WDM信号の光パワー情報を取得する(S21)。この受信側光パワー情報は、光通信装置20-2のプリアンプ101から出力され光モニタ13で検出された各チャネルの光パワーを表す。プロセッサ25-1は、光パワーを波長(周波数)に対して補正する(S22)。光パワーの補正は、第1実施形態で説明した直線補間であってもよいし、曲線補間であってもよい。プロセッサ25-1は、補正後の光パワースペクトルに基づき、チャネル帯域幅(またはチャネル間隔)よりも狭い周波数単位で、目標の光パワーとの差分ΔP(λ)を計算する(S23)。目標の光パワーは、チャネル帯域内のパワーの波長特性をフラットにし、かつチャネル間の偏差を抑制するように設定された光パワーである。
【0062】
プロセッサ25-1は、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位(サブチャネル)ごとに、差分ΔP(λ)が許容範囲内か否かを判断する(S24)。差分ΔP(λ)が許容範囲内にない場合(S24でNO)、そのサブチャネルに対応する周波数に設定されているアッテネーション値が適切でないので、アッテネーション値を更新する。具体的には、送信WSS26に設定されている制御対象のサブチャネルのアッテネーション値ATT(λ)をプロセッサ15に読み込み(S25)、そのサブチャネルに設定すべき新たなアッテネーション設定値ATTset(λ)を計算して(S26)、新たなアッテネーション値ATTset(λ)を設定する(S27)。
【0063】
制御対象のサブチャネルのアッテネーション値が更新されると、プロセッサ25-1は他のサブチャネルに対して同様の制御を行う。すべてのサブチャネルの光パワー制御が終わると、今回の制御処理を終了する。サブチャネルを順次制御する替わりに、一度に並列で制御してもよい。
図14の制御フローはサービス中に定期的、または不定期に行われ得る。
【0064】
<第3実施形態>
図15は、第3実施形態の光通信装置30-1、30-2を用いた光通信システム3の模式図である。光通信装置30-1及び30-2の一例としてROADM装置を用いる。第3実施形態では、光伝送路6やアンプの影響をまだ受けていない上流側の信号スペクトルと、下流側で光伝送路6から受信された信号光のパワースペクトルとを用いて光パワーを制御する。第1実施形態、及び第2実施形態と同様に、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、受信WDM信号の光パワーを制御する。
【0065】
光伝送路6の影響を未だ受けていない上流側のWDM信号のパワースペクトルと、光伝送路6を経て受信された下流側のWDM信号のパワースペクトルの双方を、WSSのアッテネーションの分解能よりも十分に狭い周波数間隔で、高分解能で検出する。光伝送路6の影響を未だ受けていないWDM信号とは、光通信装置30-1の内部でアドされ、未だ光伝送路6を通過していないWDM信号である。WSSのアッテネーションの分解能は、50GHz、25GHz、12.5GHz、6.25GHz等であり、それよりも高い分解能でパワースペクトルを検出する。高分解能で検出された上流側のパワースペクトルは、WSSの制御間隔に整合するように周波波数方向に積算され、OSCで下流側の光通信装置に送られる。同様に、高分解能で検出された下流側のパワースペクトルは、WSSの制御間隔に整合するように周波波数方向に積算される。積算された上流側の信号スペクトルと下流側のパワースペクトルに基づいて、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、光パワーが制御される。
【0066】
光通信装置30-1と30-2は、光伝送路6により接続されている。光伝送路6には中継アンプ5が挿入されている。上流側の光通信装置30-1は、プロセッサ35-1、送信WSS36、光スプリッタ37、光モニタ38、合波器104、ポストアンプ102、及びOSC処理部107を有する。
【0067】
光通信装置30-1に、異なる波長の信号を扱うトランシーバ105-1、105-2、105-3(これらをまとめて「トランシーバ105up」と呼ぶ)が接続されている。
図15では、光通信装置30-1の送信側の構成として、各トランシーバ105-1、105-2、105-3の送信側回路Txが接続されている。トランシーバ105upから出力された光信号は、合波器104で合波される。合波された光信号は、送信WSS16に入力され、方路A、及び方路Bからの光信号に合波される。
【0068】
送信WSS36の出力の一部は、光スプリッタ37で分岐されて光モニタ38に入力される。光モニタ38は、入力されたWSS信号のうち、光伝送路6やアンプ利得の周波数特性の影響を受けていないチャネルのパワースペクトルを、送信WSS36のアッテネーション間隔よりも十分に狭い周波数間隔で検出する。方路Aと方路Bからの信号はすでに光伝送路6等の影響を受けているが、トランシーバ105upから出力され、合波器104で合波されたWDM信号は、光伝送路6やアンプの影響を受けていない未伝送の信号である。
【0069】
送信WSS36のアッテネーション機能の分解能が25GHzである場合、光モニタ38は、合波器104で合波された未伝送のチャネルの光パワーを、25GHzよりもさらに細かい周波数間隔で高分解能に検出する。アッテネーション機能の分解能よりも高い分解能でパワー検出することで、光モニタ38で検出されるパワースペクトルを補正するのと同じ効果が得られる。検出されたパワースペクトルは、プロセッサ35-1に入力される。
【0070】
プロセッサ35-1のデータ処理部351は、光モニタ38により検出されたパワースペクトルを、WSSの制御間隔(たとえば、アッテネーションの周波数間隔)に合うように、周波数方向に積算する。周波数方向に積算された信号スペクトルは、OSC処理部107により光信号に変換されて、光伝送路6に送信される。
【0071】
光通信装置30-2は、受信WSS31、光スプリッタ32、光モニタ33、プロセッサ35-2、OSC処理部106を有する。光通信装置30-2はまた、その送信側の構成として、送信WSS36、光スプリッタ37、光モニタ38、合波器104、ポストアンプ102、及びOSC処理部107を有する。これらの構成と機能は光通信装置30-1の送信側の構成及び機能と同じである。プロセッサ35-2のデータ処理部351は、プロセッサ35-1のデータ処理部351の機能を兼ね備えてもよい。
【0072】
光通信装置30-2で受信されたOSC信号は、OSC処理部106で電気信号に変換され、プロセッサ35-2のデータ処理部351に入力される。光通信装置30-2で受信されたWDM信号は、プリアンプ101で増幅され、受信WSS31に入力される。受信WSS31で、WDM信号の一部は方路Cへ出力され、WDM信号の他の一部は分波器103で複数のトランシーバ受信器105a、105b、105cに振り分けられる。WDM信号の残りの部分は、光スプリッタ32に入力される。
【0073】
光スプリッタ32の出力は、光モニタ33の入力と、送信WSS36の入力にそれぞれ接続される。光モニタ33は、受信WSS31のアッテネーションの周波数間隔よりも狭い周波数間隔で、入力された光パワースペクトルを検出する。検出結果はプロセッサ35-2のデータ処理部351に入力される。データ処理部351は、光モニタ33から取得した高分解能のパワースペクトルを、受信WSS31のアッテネーションの周波数間隔に合うように、周波数方向に積算する。これにより、OSC106から取得された上流側の信号スペクトルの周波数間隔と、光モニタ33で検出されたパワースペクトルの周波数間隔が一致する。
【0074】
データ処理部351は、光通信装置30-1からOSCで送られてきた送信信号パワースペクトルと、光通信装置30-2でモニタされた受信信号パワースペクトルを比較し、比較結果を受信WSS31の制御量として、制御処理部352に供給する。制御処理部352は、制御量にしたがって受信WS31のアッテネーション値を制御する。制御量またはアッテネーション値は、受信信号パワースペクトルが送信信号パワースペクトルに近づくように決定される。また、制御量またはアッテネーション値は、受信信号パワースペクトルのチャネル間の偏差が最小になるように決定される。(
【0075】
上流側の光通信装置30-1におけるチャネル(波長λi)ごとの光パワーをPλi、受信側の光通信装置30-2でモニタされた波長λiごとの光パワーをP'λi、チャネル帯域幅を分割したサブチャネルの番号jを1,2とすると、各波長におけるサブチャネルごとのアッテネーション値Ajλiは、たとえば、次のように表される。
A1λ1=P'1λ1-P1λ1
A2λ1=P'2λ1-P2λ1
・・・
A1λ2=P'1λ2-P1λ2
A2λ2=P'2λ2-P2λ2
・・・
A1λ3=P'1λ3-P1λ3
A2λ3=P'2λ3-P2λ3。
【0076】
伝送路等の影響を受けていないWDM信号、すなわち光通信装置30-1の内部でアドされ、未だ光伝送路6を通過していないWDM信号のパワースペクトルを基準とし、光伝送路6の影響を補償するようにチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で光パワーを制御する。これにより、より高精度のパワー制御が実現し、チャネル間の光パワー偏差と、チャネル帯域内の光パワー偏差の両方が十分に低減される。
【0077】
図16は、光通信装置30-1におけるパワースペクトルの処理を示す。
図16の(A)は、光モニタ38に入力される信号光のうち、光伝送路6の影響を受けていない信号光のパワースペクトルである。換言すると、合波器104で合波された光信号のパワースペクトルである。
【0078】
図16の(B)は、光モニタ38によって検出される各チャネルの光パワーである。光モニタ38は、送信WSS36のアッテネーション制御間隔よりも十分に細かい周波数間隔で、入力された光パワーを検出する。ただし、周波数間隔ごとにその平均パワーが検出される。この状態では、WSSの制御間隔と一致していない。
【0079】
図16の(C)は、データ処理部351により周波数方向に積算されたパワースペクトルを示す。周波数方向への積算は、下流側の光通信装置30-2の光パワー制御間隔、たとえば、受信WSS31のアッテネーション制御間隔と整合させる処理である。
図16(C)の信号スペクトルは、OSCを利用して光通信装置30-2に送られる。
【0080】
図17は、光通信装置30-2でのパワースペクトルの処理を示す。
図17の(A)は、光モニタ33に入力されるWDM信号のパワースペクトルである。光伝送路6の波長依存損失や誘導ラマン散乱、アンプ利得の波長特性などの影響により、チャネル間にパワー偏差が生じ、チャネル帯域内にもパワー偏差が生じている。
【0081】
図17の(B)は、光モニタ33によって検出される各チャネルの光パワーである。光モニタ33は、受信WSS31のアッテネーション制御間隔よりも十分に細かい周波数間隔で、入力されたWDM信号の光パワーを検出する。ただし、周波数間隔ごとにその平均パワーが検出される。この状態では、受信WSS31の制御間隔と一致していない。
【0082】
図17の(C)は、データ処理部351により周波数方向に積算されたパワースペクトルを示す。周波数方向への積算は、光モニタ33の検出結果を、受信WSS31のアッテネーション制御間隔と整合させる処理である。
【0083】
図18は、光通信装置30-2での光パワー制御を示す。
図18の(A)は、下流側、すなわち光通信装置30-2で周波数方向に積算されたパワースペクトルである。このパワースペクトルは、
図17の(C)に示すパワースペクトルである。受信WSS31の制御間隔に合わせて、各チャネルは、たとえば8つの周波数帯域jに分けられている(jは1から8の整数)。この例で、受信WSS31のアッテネーション制御間隔は18.76GHzである。各チャネルの周波数帯域jの積算パワーを、P'jλnで表す。nはチャネル番号である。
【0084】
図18の(B)は、上流側、すなわち光通信装置30-1から送られてきた信号スペクトルである。この信号スペクトルは、
図16の(C)のパワースペクトルに相当する。この信号スペクトルも、各チャネルが8つの周波数帯域jに分けられている。各チャネルの周波数帯域jの積算パワーをPjλnで表す。
【0085】
図18の(C)は、
図18の(A)と(B)の比較結果(差分、パワー比等)である。比較結果は、受信WSS31の制御値(たとえばアッテネーション値)となる。制御値をAjλnで表す。比較結果として差分を用いる場合、制御値は、
Ajλn=P'jλn - P'jλn
で計算される。比較結果としてパワー比を用いる場合、制御値は、
Ajλn=P'jλn/P'jλn
で表される。差分やパワー比以外に制御値を算出する適切な関数を用いてもよい。
【0086】
この構成と手法により、チャネル帯域幅よりも狭い制御間隔で光パワーが制御され、チャネル間の光パワー偏差と、チャネル帯域内の光パワー偏差の両方を低減することができる。
【0087】
<第4実施形態>
図19は、第4実施形態の光通信装置40-1、40-2を用いた光通信システム4の模式図である。第4実施形態では、受信側での光パワースペクトルのモニタ結果を送信元の光通信装置にフィードバックし、送信側でチャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で光パワーを制御して、受信側での帯域内光パワー偏差を低減する。送信側の光通信装置は、所定の周波数単位ごとに波長依存性を決定し、受信側での帯域内光パワー偏差に基づいて光パワーを制御する。
【0088】
光通信システム4は、第1の光通信装置40-1と、第2の光通信装置40-2と、光通信装置40-1と40-2の間を接続する光伝送路6、及び8を含む。光伝送路6、及び8に中継(インライン)アンプが挿入されていてもよい。光通信装置40-1と40-2は、たとえばROADM装置である。
図1、
図13、及び
図15と同様に、実線の矢印は光信号線を示し、点線の矢印は電気信号線を示す。
【0089】
光通信装置40-1は、送信部の構成として、送信WSS46、光スプリッタ47、光モニタ48、ポストアンプ102、OSC処理部43、OSCフィルタ41、及びプロセッサ45-1を有する。光通信装置40-2は、受信部の構成として、OSCフィルタ42、OSC処理部44、プリアンプ101、光スプリッタ49、光モニタ43、及びプロセッサ45-2を有する。
【0090】
図示の便宜上、光通信装置40-1の受信部の構成として、光通信装置40-2の受信部の構成の一部だけが描かれ、光通信装置40-2の送信部の構成として、光通信装置40-1の送信部の構成の一部だけが描かれている。実際は、光通信装置40-1と40-2は同じ構成を有し、光通信装置40-1は、その受信部の構成として光通信装置40-2の受信部を同じ構成を有する。光通信装置40-2は、その送信部の構成として光通信装置40-1の送信部を同じ構成を有する。プロセッサ45-1、45-2は、送信部と受信部で共用されてもよい。
【0091】
光通信装置40-1から光伝送路6に送信されたWDM信号とOSC信号は、光通信装置40-2で受信される。OSCフィルタ42によってOSC信号が取り出され、OSC処理部44で処理される。WDM信号はプリアンプ101で増幅され、光スプリッタ49に入射する。光スプリッタ49でWDM信号の一部が分岐され、光モニタ43でチャネルごとに光パワーが検出される。光モニタ43に入力される光パワースペクトルは、
図7の(A)に示すようにチャネル間の光パワー偏差とともに、帯域内光パワー偏差が生じているが、光モニタ13で検出されるパワースペクトルでは、
図7の(B)に示したように、帯域内光パワー偏差は失われている。
【0092】
プロセッサ45-2は、受信光パワー読込み部461と、受信パワー転送部462を有する。受信光パワー読込み部461は、光モニタ43で検出されたパワースペクトルを読み込む。受信パワー転送部462は、読み出されたパワースペクトルを、パワースペクトル情報として、上流方向への送信部のOSC処理部43に転送する。OSC処理部43は、転送されたパワースペクトル情報を監視情報に含める。監視情報は光信号に変換され、OSCフィルタ41を介して光伝送路8に送信される。光通信装置40-1は、光伝送路8からOSCを受信すると、OSCフィルタ42でOSCを取り出し、OSC処理部44で電気信号に変換する。
【0093】
プロセッサ45-1は、その機能ブロックとして、送信光パワー読込み部451、波長依存性計算部452、波長依存性補正部453、波長依存性判定部454、アッテネーション設定値計算部455、アッテネーション読込み部456、アッテネーション設定部457、及び受信光パワー取得部458を有する。
【0094】
送信光パワー読込み部451は、光モニタ48で検出された送信WDM信号のパワースペクトルを読み込む。光モニタ48で検出された送信WDM信号のパワースペクトルは、
図7の(B)の状態である。このパワースペクトルを、送信光パワーPtransmit(λn)とする。nはチャネル番号である。波長依存性計算部452は、送信光パワー読込み部451から送信光パワーPtransmit(λn)を受け取る。一方、受信光パワー取得部458は、受信光パワーPreceive(λn)をOSC処理部44から取得して、波長依存性計算部452に入力する。
【0095】
波長依存性計算部452は、送信光パワーPtransmit(λn)と受信光パワーPreceive(λn)に基づき、式(4)により波長依存性WDL(λn)を計算する。
【0096】
【数4】
ここで、WDLaverageは、チャネルごとに生じる送信光パワーPtransmit(λk)と受信光パワーPreceive(λk)の差分の、全チャネル平均値である。波長依存性WDL(λn)は、各チャネルの送信光パワーPtransmit(λn)と受信光パワーPreceive(λn)の差分の平均値からのズレで表される。
【0097】
波長依存性計算部452で計算された波長依存性は、チャネル単位で取得され、チャネル帯域内の偏差を反映していない。そこで、波長依存性補正部453は、波長依存性WDL(λn)を周波数方向に補正する。
図8のパワー補正のように直線補間により波長依存性WDL(Ln)を補正する場合、補正後の波長依存性WDL(Ln)は、式(5)で表される。
WDL(λ)=aλ+b (5)
ここで、a、bは定数であり、aは波長依存性の傾きを示す。
【0098】
波長依存性判定部454は、補正後の波長依存性に基づき、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、波長依存性が許容範囲内か否かを判定する。チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で補正後の波長依存性の許容性が判定されるので、波長依存性補正部453による補正は、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で補正されたのと同じ効果を奏する。
【0099】
波長依存性が許容範囲内にないときは、そのサブチャネルに設定されているアッテネーション値が不適切なので、アッテネーション設定値計算部455は、現在のアッテネーション設定値ATTset(λ)を更新する。具体的には、アッテネーション読込み部456により、送信WSS46の対応のサブチャネルに現在設定されているアッテネーション値ATT(λi)を読み込み、式(6)により新たなアッテネーション設定値ATTTset(λi)を計算する。
ATTset(λi)=ATT(λi)-WDL(λi) (6)
ここで、iはサブチャネルの番号でる。WDM信号がnチャネルの信号を含み、かつ各チャネルでチャネル帯域幅が周波数方向にm個に分割される場合、iは1からm×nまでの整数である。
【0100】
新たに計算されたアッテネーション設定値ATTTset(λi)は、アッテネーション設定部457により、送信WSS46の対応の周波数領域に設定される。上記では、式(4)、(5)、(6)を波長の関数で表現しているが、光速をc、周波数をfとしてc=λ×fの関係から周波数fの関数として記述してもよい。
【0101】
図20は、第4実施形態の光パワー制御方法のフローチャートである。この制御フローの主要部は、光通信装置40-1のプロセッサ45-1により実行される。プロセッサ45-1は、各チャネルの送信光パワーを光モニタ48から読み込む(S41)。一方、光通信装置20-2のプロセッサ45-2は、光モニタ43で検出された受信光パワースペクトルを読み込み(S51)、受信光パワースペクトルをOSC処理部43に転送する(S52)。光通信装置40-2は、OSCを用いて受信光パワースペクトル情報を送信元の光通信装置40-1に通知する。
【0102】
光通信装置40-1のプロセッサ45-1は、OSC処理部44から、受信光パワースペクトル情報を取得し(S42)、送信光パワーと受信パワーからチャネルごとに波長依存性を計算する(S43)。計算された波長依存性は、チャネル帯域内の状態を反映していないため、波長依存性を補正する(S44)。この補正によりチャネル帯域内のチルトが推定され、チャネル帯域幅よりも狭い周波数間隔で波長依存性が補正されたのと同じ効果を奏する。
【0103】
プロセッサ45-1は、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で、波長依存性WDL(λ)が許容範囲内か否かを判断する(S45)。制御対象の周波数単位、すなわちサブチャネルの波長依存性WDL(λ)が許容範囲内にない場合(S45でNO)、送信WSS46の対応するアッテネーション値ATT(λi)を読込み(S46)、新たなアッテネーション設定値ATTset(λ)を計算する(S47)。新たなアッテネーション設定値ATT、set(λi)は送信WSS46の対応する周波数帯に設定される(S48)。送信WSS45のすべてのサブチャネルに適切なアッテネーション値が設定されると、処理を終了する。この制御フローは、サービス中に定期的、または不定期に行われ得る。
【0104】
チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で波長依存性が補正され、補正後の波長依存性に基づいてアッテネーション設定値が制御されるので、チャネル間の光パワー偏差が抑制されるとともに、チャネル帯域内の光パワー偏差が低減される。すなわち、
図12に示した効果が得られる。送信WSS46のアッテネーション機能に替えて、パワー調整機能を有する他のデバイス、たとえば、ダイナミックゲインイコライザ、波長ブロッカなどを用いて光パワー制御してもよいことは上述したとおりである。また、150GHzチャネル帯域幅を周波数方向に4以上に分割して、より高い分解能で光パワー制御してもよい。
【0105】
以上、特定の構成例に基づいて実施形態を説明したが、本開示は上述した実施形態に限定されない。実施形態のパワー制御方法は、50GHz帯域幅のチャネル内、またはチャネル間のパワー偏差の制御にも適用可能である。実施形態では、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位で光パワーレベルを調整する光パワー調整回路として、WSSのアッテネーション機能を利用したが、WSSの機能に替えて、ダイナミックゲインイコライザや波長ブロッカ等の他のパワー調整回路を用いてもよい。第3実施形態で、光通信装置30-2で光パワーを制御する替わりに、光通信装置30-1で光パワーを制御してもよい。この場合、光通信装置30-2で高解像モニタされた光パワーの積算を光通信装置30-2で行ってもよいし、光通信装置30-1で行ってもよい。OSC情報量を減らす観点からは光通信装置30-2で積算されたパワースペクトル情報を光通信装置30-1に送ってもよい。第4実施形態で、光通信装置40-1で光パワーを制御する替わりに、光通信装置40-2で光パワーを制御してもよい。この場合、光通信装置40-1は送信パワースペクトル情報を、OSCにより光通信装置40-2に通知すればよい。第1、第2、第4実施形態で、光モニタで検出されたパワースペクトルを補正する代わりに、第3実施形態のように高分解能で光モニタに入力されたパワースペクトルを検出して周波数方向に積算してもよい。制御値の計算式は上記の各実施形態で例示した計算に限定されず、適切な関数を用いてもよい。いずれの場合も、チャネル帯域幅よりも狭い周波数単位でWDM信号のパワー制御が行われるので、チャネル間の光パワー偏差と、チャネル帯域内の光パワー偏差の両方を低減することができる。
【符号の説明】
【0106】
1、2、3、4 光通信システム
6、8 光伝送路
10-1、10-2、20-1、20-2、30-1、30-2、40-1、40-2 光通信装置
11、31 受信WSS(光パワー調整回路)
13、18、28、33、38、43、48 光モニタ
15、25-1、25-2、35-1、35-2、45-1、45-2 プロセッサ
16、26、36、46 送信WSS(光パワー調整回路)
23、24、43、44、106、107 OSC処理部
101 プリアンプ
102 ポストアンプ
103 分波器
104 合波器