(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180638
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】エレベータ照明装置
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B66B11/02 J
B66B11/02 E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094101
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】弁理士法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 幸男
【テーマコード(参考)】
3F306
【Fターム(参考)】
3F306AA02
3F306CB02
3F306CB11
(57)【要約】
【課題】天井に配置される照明装置及び点検用開口部の位置及び大きさの設計自由度を向上させることができるエレベータ照明装置を提供する。
【解決手段】点検用の開口部(33、34)を有する乗りかご(2)の天井(30)に支持され、乗りかご(2)内を照らすエレベータ照明装置であって、上下方向に互いに重ならない位置に分割設置された複数の照明ユニット(41、42)と、複数の照明ユニット(41、42)のうち、少なくとも一つの照明ユニット(41)を、設置時の高さの原位置と、原位置より下方の下降位置と、の間で位置変更可能に前記天井(30)に支持する昇降支持機構(43)と、一つの照明ユニット(41)を、下降位置と、他の照明ユニットの下側に重なる退避位置(P3)と、の間でスライド可能に天井(30)に支持する第1のスライドガイド機構(44)とを備えている。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する乗りかごの天井に支持され、前記乗りかご内を照らすエレベータ照明装置であって、
上下方向に互いに重ならない位置に分割設置された複数の照明ユニットと、
前記複数の照明ユニットのうち、少なくとも一つの照明ユニットを、設置時の高さの原位置と前記原位置より下方の下降位置との間で位置変更が可能となるように前記天井に支持する昇降支持機構と、
前記少なくとも一つの照明ユニットを、前記下降位置と、前記少なくとも1つの照明ユニット以外の他の照明ユニットの下側とが重なるようにそれぞれスライド可能に前記天井に支持するスライドガイド手段とを備えた、
エレベータ照明装置。
【請求項2】
前記スライドガイド手段は、前記少なくとも一つの照明ユニットを、前記下降位置と、他の照明ユニットの下側に重なる退避位置と、の間でスライド可能に前記天井に支持する第1のスライドガイド機構を含む、請求項1に記載のエレベータ照明装置。
【請求項3】
前記スライドガイド手段は、
前記他の照明ユニットを、前記他の照明ユニットの原位置と、前記下降位置の前記一つの照明ユニットの上側に収納される収納位置と、の間でスライド可能に前記天井に支持する第2のスライドガイド機構をさらに含む、請求項1または2に記載のエレベータ照明装置。
【請求項4】
前記第1のスライドガイド機構は、前記一つの照明ユニットを平面視で直線状にガイドする第1のスライドガイド経路を含み、
前記第2のスライドガイド機構は、前記他の照明ユニットを平面視で直線状にガイドする第2のスライドガイド経路を含む、請求項2または3に記載のエレベータ照明装置。
【請求項5】
前記第1のスライドガイド機構は、前記一つの照明ユニットを平面視で円弧状にガイドする第1のスライドガイド経路を含み、
前記第2のスライドガイド機構は、前記他の照明ユニットを平面視で円弧状にガイドする第2のスライドガイド経路を含む、請求項2または3に記載のエレベータ照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、点検用の開口部を有する乗りかごの天井に設けられたエレベータ照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、エレベータの乗りかご内を照らす照明装置は、蛍光灯やLEDランプ等からなる照明灯と、これら照明灯を収納する照明ケースと、照明ケースの下面開口部に配置された半透明あるいは透明の透光カバーとが備えられ、適宜、取付器具を用いて天井に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-70315号公報
【特許文献2】特開2019-147690号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2021/0139284号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、乗りかごの天井に、照明装置及び点検用の開口部の両方を設ける場合には、照明装置と点検用の開口部とが上下に重ならないように照明装置及び点検用の開口部を配置する必要がある。したがって、点検用の開口部及び照明装置の位置及び大きさに関する設計の自由度が制約される。
【0005】
本発明は上述の事情によりなされたもので、点検用の開口部及び照明装置の設計の自由度を向上させ、乗りかごの天井に設けられる点検用の開口部及び照明装置のいずれもが、それらの位置及び大きさを所望の値に設定可能なエレベータ照明装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、一実施形態に係るエレベータ照明装置は、開口部を有する乗りかごの天井に支持され、乗りかご内を照らすエレベータ照明装置である。該エレベータ照明装置は、上下方向に互いに重ならない位置に分割設置された複数の照明ユニットと、複数の照明ユニットのうち、少なくとも一つの照明ユニットを、設置時の高さの原位置と該原位置より下方の下降位置との間で位置変更が可能となるように天井に支持する昇降支持機構と、少なくとも一つの照明ユニットを、下降位置と、少なくとも1つの照明ユニット以外の他の照明ユニットの下側とが重なるようにそれぞれスライド可能に天井に支持するスライドガイド手段とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る照明装置を有するエレベータ1全体の斜視図である。
【
図2】
図1のエレベータ1の乗りかご2の拡大斜視図である。
【
図3】
図1の乗りかご2を天井の上方から見た平面図である。
【
図4】
図3の乗りかご2のIV-IV線断面図である。
【
図5】
図3の乗りかご2のVI-VI線断面図である。
【
図6】
図1の第1の照明ユニット41を下降位置P1まで下降させた状態を示し、
図4と同一切断面による断面図である。
【
図7】
図1の第1の照明ユニット41を退避位置P2までスライドさせた状態を示し、
図4と同一切断面による断面図である。
【
図9】
図1の第2の照明ユニット42を収納位置P3までスライドさせた状態を示し、
図4と同一切断面による断面図である。
【
図11】第2の実施形態に係る照明装置を有する乗りかご2を、天井30の上方から見た平面図である。
【
図12】
図11の乗りかご2の天井30を下方から見た底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、各実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付して説明は省略する。
【0009】
(各実施形態が想定する具体的な課題)
建物の昇降路内に配設される、巻き上げ機や制御盤などの各種機器を点検するために、乗りかご内からそれら機器にアクセス可能とする点検用の開口部が乗りかごの天井に設けられたエレベータが存在する。このエレベータでは、昇降路内の各種機器を乗りかご内から点検もしくは修理するときには、脚立や作業台に乗った作業員が天井の該開口部の点検扉を開き、上半身もしくは全身を点検用の開口部から上方に乗り出し、目的の機器にアクセスして作業を行う。
【0010】
たとえば、点検用の開口部の位置及び大きさを最優先(重要)とする場合には、点検用の開口部の位置及び大きさを優先して決定すると、照明装置の位置及び大きさの設定範囲が制約される。反対に、照明装置の大きさ及び位置を最優先(重要)とする場合には、照明装置の位置及び大きさを優先して決定すると、点検用の開口部の位置及び大きさの設定範囲が制限される。すなわち、何れの場合においても、点検用の開口部及び照明装置のどちらかの位置及び大きさに関する設計自由度が制限され、点検用の開口部及び照明装置の両者の位置及び大きさを満足するように設定することが困難となる。
後述する各実施形態はこれらの問題に対処可能な技術を提供する。この技術によれば、点検用の開口部の位置及び大きさの設計の自由度が向上し、照明装置の大きさを十分に確保しつつ、所望位置及び大きさに点検用の開口部を形成することが可能となる。
また、一方の照明ユニットを他方の照明ユニットの下側に重ねるように退避させることが可能となるので、点検作業時において一方の照明ユニットが邪魔になることはなく、点検作業がし易くなる。
また、他方の照明ユニットを一方の照明ユニットの上側の収納位置に収納することが可能となるので、他方の照明ユニットの上方に形成された開口部も簡単に点検作業等に利用することができる。
【0011】
[第1の実施形態]
図1~
図10は第1の実施形態を示し、これらの図面に基づいて第1の実施形態のエレベータ1及びその照明装置を説明する。
【0012】
図1は、第1の実施形態に係るエレベータ1全体の斜視図である。ここで、説明の便宜上、乗りかご2の乗降口31側をエレベータ1及び乗りかご2の「前方」とし、乗り場から乗りかご2を見た時の左方及び右方を、エレベータ1及び乗りかご2の「左方」及び「右方」と称して説明する。
図1に示すように、エレベータ1は、建築物に設けられた昇降路S(二点鎖線で示す)内に配置される。エレベータ1は、乗客を収容して昇降する乗りかご2と、該乗りかご2を昇降駆動させる巻き上げ機10と、乗りかご2との重量バランスを採るためのカウンタウエイト11と、乗りかご2の発停や各種機器を電気的に制御する制御盤12と、乗りかご2用の左右一対のガイドレール15,15と、カウンタウエイト11用の左右一対のガイドレール17,17とを備えて構成される。
【0013】
図1の乗りかご2には、該乗りかご2の前壁2aの乗降口31には左右一対の乗降口扉32,32が設けられ、天井30には、左右一対の第1,第2の点検用開口部33,34が形成される。また、第1,第2の点検用開口部33,34には、第1,第2の点検扉35,36が配置される。また、天井30の下側には、左右に分割された第1,第2の一対の照明ユニット41,42が配置される。
【0014】
乗りかご2用の一対のガイドレール15,15は、左右方向に間隔をおいて対向配置される。さらに、ガイドレール15,15は、上下方向に延びるように敷設され、ガイドレール15,15間に乗りかご2が上下方向移動可能に支持される。
【0015】
カウンタウエイト11用の一対のガイドレール17,17は、乗りかご2の後方に配置されるとともに上下方向に延びるように敷設される。また、ガイドレール17,17の後面には、カウンタウエイト11が上下方向移動可能に支持される。
【0016】
巻き上げ機(電動モータ)10は、出力プーリ21を有し、昇降路Sの上端部の右後隅近傍に配置される。出力プーリ21にはワイヤ22が巻き掛けられている。ここで、ワイヤ22の一端は乗りかご2の後端部に連結され、ワイヤ22の他端はカウンタウエイト11の上端部に連結される。巻き上げ機10の出力プーリ21を回転させることにより、乗りかご2を昇降駆動させる。
【0017】
制御盤12は、昇降路S内の上端部近傍の左面に配置され、複数のケーブル(図示せず)を介して乗りかご2内の電装機器類等と電気的に接続される。なお、各ガイドレール15,17の位置、巻き上げ機10の位置、制御盤12の位置について図示して説明したが、本発明はこれに限定されず、図示以外の位置にそれぞれ配置するように構成されてもよい。
【0018】
図2は乗りかご2の拡大斜視図である。
図2に示すように、照明装置は、天井30の下側に左右に分割配置され、上下方向に互いに重ならない位置に分割設置された複数の照明ユニット41,42と、左側の第1の照明ユニット41を上下方向の位置を変更可能となるように支持する4個の昇降支持機構43と、左側の第1の照明ユニット41を左右方向スライド可能に支持する前後一対の直線状の第1のスライドガイド機構44と、右側の第2の照明ユニット42を左右方向スライド可能に支持する前後一対の直線状の第2のスライドガイド機構45とを備えて構成される。
【0019】
図2に示すように、照明装置は、第1,第2の点検用開口部33,34を有する乗りかご2の天井30に支持され、乗りかご2内を照らす。また、昇降支持機構43は、複数の照明ユニットのうち、少なくとも一つの照明ユニットを、設置時の高さの原位置と該原位置より下方の下降位置との間で位置変更が可能となるように天井30に支持する。ここで、第1,第2のスライドガイド機構44,45は、少なくとも一つの照明ユニットを、下降位置と、少なくとも1つの照明ユニット以外の他の照明ユニットの下側とが重なるようにそれぞれスライド可能に天井30に支持するスライドガイド手段である。
【0020】
図2に示すように、4個の昇降支持機構43は、上方突出状に形成されるとともに、天井30の左半分の矩形領域の四隅に配置される。第1のスライドガイド機構44は、乗りかご2の天井30の前後両端部に、乗りかご2の左右方向の略全幅に亘るように設けられる。前後一対の第2のスライドガイド機構45は、上述の第1のスライドガイド機構44よりも乗りかご2の前後方向の中央部寄りに位置し、乗りかご2の左右方向の略全幅に亘って設けられる。
【0021】
図3は乗りかご2を天井30の上方から見た平面図である。
図3に示すように、左側の第1の点検扉35の左端部はヒンジ50により上下方向回動自在に天井30に支持され、右端部がロック機構51により天井30にロック可能となるように構成される。右側の第2の点検扉36の右端部はヒンジ50により上下方向回動自在に天井30に支持され、左端部がロック機構51により天井30にロック可能となるように構成される。
【0022】
なお、左右の部材を明確に区別する場合には、例えば左側の第1の照明ユニット41と右側の第2の照明ユニット42、もしくは左側の第1の点検用開口部33と右側の第2の点検用開口部34のように異なる番号を付しているが、特に左右や前後に分配された同一部材を区別しなくとも差し支えない場合には、たとえば左右の乗りかご用ガイドレール15,15もしくは左右の乗降口扉32,32のように同じ番号を付している。
【0023】
次に、第1の照明ユニット41を上下方向並びに左右方向に移動可能に吊り下げ支持する構成について、
図4、
図5、
図6及び
図7を用いて説明する。
【0024】
図4は
図3の乗りかご2のIV-IV線断面図である。
図5は
図3の乗りかご2のVI-VI線断面図である。
図6は
図1の第1の照明ユニット41を下降位置P1まで下降させた状態を示し、
図4と同一切断面による断面図である。
図7は
図1の第1の照明ユニット41を退避位置P2までスライドさせた状態を示し、
図4と同一切断面による断面図である。
【0025】
図5に示すように、第1の照明ユニット41の上端部には、第1の照明ユニット41の四隅近傍位置に、上方に突出する支持杆65がそれぞれ設けられ、4本の支持杆65の上端部にはスライダ66がそれぞれ固着される。各支持杆65の上下方向の長さは昇降支持機構43の上下方向の長さよりも長く設定される。
【0026】
昇降支持機構43の内部には、上下方向に延びる昇降ガイド経路43aが形成され、昇降ガイド経路43aの上端には、右方にL字状に折れ曲がる係止路43bが形成される。また、昇降ガイド経路43aの下端は、天井30を上下に貫通するスリット43dを介して乗りかご2内に連通する。
【0027】
図4に示すように、第1のスライドガイド機構44の内部には、左右方向に直線状に延びる第1のスライドガイド経路44aが形成され、第1のスライドガイド経路44aの下面は、天井30を上下に貫通するスリット44dを介して乗りかご2内に連通する。第1のスライドガイド機構44の左端部及び乗りかご2の左右幅中心部付近は、それぞれ昇降支持機構43の昇降ガイド経路43aの下端に連通する。
【0028】
左側の第1の照明ユニット41の支持杆65はスリット43dを通過して昇降ガイド経路43a内に突入するように構成される。
図4で示す状態のように、各支持杆65の上端のスライダ66を、各係止路43bに載せることにより、第1の照明ユニット41は、天井30に接近した原位置P0に吊り下げ保持される。
【0029】
図4で示す状態から第1の照明ユニット41のスライダ66を係止路43bから外し、昇降ガイド経路43a内を下降させ、
図6のようにスライダ66を昇降ガイド経路43aの下端に係止させる。これにより、第1の照明ユニット41を下降位置P1に保持することができる。ここで、第1の照明ユニット41の下降位置P1は、第1の照明ユニット41の上端が、原位置P0の第2の照明ユニット42の下端よりも下方にくる位置に設定される。
【0030】
図6に示すように、第1の照明ユニット41が下降位置P1に保持された状態から、第1のスライドガイド経路44a内でスライダ66を右方に移動させる。これにより、
図7に示すように、第1の照明ユニット41を、右側の第2の照明ユニット42の真下の退避位置P2に移動することが可能となる。ここで、退避位置P2では、第1の照明ユニット41と第2の照明ユニット42とは、略全体が上下方向に重なり、これにともなって左側の第1の点検用開口部33及び第1の点検扉35が乗りかご2内に露出される。すなわち、第1の照明ユニット41に邪魔されることなく、第1の点検扉35にアクセスし、これを開いて第1の点検用開口部33を利用可能状態とする。
【0031】
次に、
図8及び
図9により右側の第2の照明ユニット42を左右方向に移動可能に吊り下げ支持する構成について説明する。
【0032】
図8は
図3の乗りかご2のV-V線断面図である。また、
図9は
図1の第2の照明ユニット42を収納位置P3までスライドさせた状態を示し、
図4と同一切断面による断面図である。
【0033】
図8に示すように、左側の第1の照明ユニット41は、下面が開口部する角箱形状の照明ケース61と、照明ケース61の下面開口部を覆う半透明または透明の透光板62と、照明ケース61内に配置された左右2本のLED灯63とを備えて構成される。右側の第2の照明ユニット42も基本的には左側の第1の照明ユニット41と同様の構成を有し、同じ部品には同じ番号を付している。
【0034】
図8に示す第2の照明ユニット42の上端面には、上方に突出する4本の支持杆67が設けられ、支持杆67の上端部にはスライダ68が固着される。第2のスライドガイド機構45の内部にはスライダ68が左右方向スライド移動に収納される直線状の第2のスライドガイド経路45aが形成され、該第2のスライドガイド経路45aの下面は、天井30を上下に貫通するスリット45dを介して乗りかご2内に連通する。また、第2の照明ユニット42の支持杆67はスリット45dを通過して第2のスライドガイド経路45a内まで延びている。
【0035】
図8に示す第2の照明ユニット42の状態は、最も右側に移動した原位置P0の状態であり、左側の原位置P0の第1の照明ユニット41と同じ高さに位置している。
図8で示す状態から第1の照明ユニット41を下降させ、第2の照明ユニット42を左方に移動することにより、
図9に示すように下降位置P1の第1の照明ユニット41と天井30との間の収納位置P3に、第2の照明ユニット42を収納することができる。これにより、第1の照明ユニット41と第2の照明ユニット42とが上下方向に重なり、右側の第2の点検用開口部34及び点検扉36が乗りかご2内に露出される。すなわち、第2の照明ユニット42に邪魔されることなく、第2の点検扉36にアクセスし、これを開いて第2の点検用開口部34を利用可能状態とする。
【0036】
なお、第1の照明ユニット41が大きな振動等で原位置P0からずれないように、たとえば、係止路43bの上面に上向きの小さな位置決め突起(図示せず)を設け、一方、スライダ66の下面に位置決め凹部(図示せず)を設けるように構成されてもよい。この構成により、第1の照明ユニット41を原位置P0にセットした時に、スライダ66の位置決め凹部内に係止路43bの位置決め突起が嵌まり込み、位置決め確実とすることが可能となる。また、別の手段として、係止路43bを右下がりに傾斜した形状として、係止路43b上で、第1の照明ユニット41の自重によりスライダ66を係止路43bの右端に付勢するように構成してもよい。
【0037】
また、第2の照明ユニット42についても、原位置P0から左方にずれないように、上述の第1の照明ユニット41の位置決め手段と同様に、原位置P0において、スライダ68の下面に設けた位置決め凹部(図示せず)に、第2のスライドガイド経路44aの下面に設けた位置決め突起(図示せず)が嵌まり込む構成としてもよい。
【0038】
図10は
図7のX-X線断面図である。
図10に示すように、第1の照明ユニット41の前側の支持杆65は、第2の照明ユニット42の前端よりも少し前方に張り出し、第1の照明ユニット41の後側の支持杆65は、第2の照明ユニット42の後端よりも少し後方に張り出している。したがって、第1の照明ユニット41は前後の支持杆65が第2の照明ユニット42に当接することなく、第2の照明ユニット42の真下の退避位置P2まで移動することが可能となる。なお、本実施形態では、昇降支持機構43、スライダガイド機構44,45を天井30の上面に設置するように構成されたが、本発明はこれに限定されず、例えば昇降支持機構43、スライドガイド機構44、45を天井30の下面に設置するように構成されてもよい。
【0039】
[第1の実施形態の作用]
エレベータ1を通常運行するときには、
図2、
図4及び
図8に示すように第1、第2の照明ユニット41,42は、いずれも原位置P0に位置し、照明装置全面が乗りかご2内の照明に利用される。また、第1,第2の点検用開口部33,34及び第1,第2の点検扉35,36は、第1,第2の両照明ユニット41,42により下方から覆われ、乗りかご2内の美観を維持することが可能となる。
【0040】
図1の制御盤12のように、昇降路S内の後部の左側に配置された機器を点検するときには、先ず、対応する機器の近くまで乗りかご2を上昇させる。そして、
図6及び
図7に示すように、第1の照明ユニット41を原位置P0から下降位置P1を経て退避位置P2まで移動し、天井30の左半分の領域を乗りかご2内に露出させる。作業員Mは作業台等に乗って左側の第1の点検扉35を開き、上半身又は全身を第1の点検用開口部33を通して天井30から上方に乗り出し、制御盤12等の近傍の機器を点検または修理する。
【0041】
上述した作業とは異なり、
図1の巻き上げ機10のように、昇降路S内の後部の右側に配置された機器を点検するときには、先ず、対応する機器の近くまで乗りかご2を上昇させ、
図6に示すように、第1の照明ユニット41を原位置P0から下降位置P1まで下降させ、次に、
図9のように第2の照明ユニット42を原位置P0から収納位置P3まで左方に移動し、天井30の右半分の領域を乗りかご2内に露出させる。作業員Mは作業台等に乗って右側の第2の点検扉36を開き、上半身又は全身を第2の点検用開口部34を通して天井30から上方に乗り出し、巻き上げ機10等の近傍の機器を点検または修理する。
【0042】
[第1の実施形態による効果]
以上のような本実施形態に係るエレベータ1の照明装置によれば、照明装置の大きさ及び位置、並びに、天井30に形成される第1,第2の点検用開口部33,34の大きさ及び位置に関する設計自由度を向上させることが可能となる。たとえば、天井30の略全面に照明装置を配置した場合でも、第1,第2の点検用開口部33,34を所望の位置及び大きさに任意に設定することが可能となる。さらに、点検作業時には、照明装置に邪魔されることなく、第1,第2の点検用開口部33,34をそれぞれ利用することができる。すなわち、点検用の開口部の位置及び大きさの設計の自由度を向上させるとともに、照明装置の大きさを十分に確保しつつ、所望位置及び大きさに開口部を形成することが可能となる。
【0043】
また、本実施形態に係るエレベータ1の照明装置によれば、第1の照明ユニット41を第2の照明ユニット42の下側の退避位置P2に、略全体が上下方向に重なるように退避させることができる。したがって、点検作業時において一方の照明ユニットが邪魔になることはなく、点検作業がしやすくなる。また、第1の照明ユニット41を移動させるために必要なスペースを大きく採る必要がない。
【0044】
また、本実施形態に係るエレベータ1の照明装置によれば、第1の照明ユニット41を下降位置P1に下降させて、下降位置P1の第1の照明ユニット41と天井30に間に第2の照明ユニット42を収納することが可能となる。したがって、他方の照明ユニットの上方に形成された開口部も簡単に点検作業等に利用でき、第2の照明ユニット42の上側に形成される右側の第2の点検用開口部34も有効に利用することが可能となる。
【0045】
さらに、本実施形態に係るエレベータ1の照明装置によれば、第1,第2の照明ユニット41,42を、天井30の下側に配置して、天井30に吊り下げるような構成とすることが可能となる。したがって、作業員Mは、乗りかご2の中から第1,第2の照明ユニット41,42を簡単に移動させることができ、安全な作業が可能となる。
【0046】
[第2の実施形態]
図11及び
図12に基づいて第2の実施形態に係るエレベータ照明装置を説明する。
図11は乗りかご2の天井30を上方から見た平面図である。
図12は照明装置を乗りかご2内から上方を見た底面図である。これら図面には、上述の第1の実施形態と同じ部品には同じ番号を付し、詳しい説明は省略する。
【0047】
図12に示すように、半円形(扇形)の第1,第2の照明ユニット81,82を左右に分割配置することにより、全体として円形の照明装置を構成する。第1,第2の照明ユニット81,82は、天井30及び照明装置の略中心O1を中心として回転可能となるように構成される。すなわち、第1の実施形態と比較して、各照明ユニット81,82の形状及びその移動方向が異なるが、その他の基本的な構成及び作動は同様である。
【0048】
図11に示すように、天井30の上面には、前記中心O1を中心とした円周上に、第1のスライドガイド機構91が略全周に亘って配置され、第1のスライドガイド機構91の内側に、第2のスライドガイド機構92が略全周に亘って配置される。第1、第2のスライドガイド機構91,92は、内部に円弧形の第1,第2スライドガイド経路(符号なし)を有し、第1の実施形態と同様に、第1,第2の照明ユニット81,82に設けられた複数の支持杆のスライダがスライド自在に支持される。さらに、第1のスライドガイド機構91の上面には、上方に突出する3本の昇降支持機構90が周方向に間隔をおいて設けられる。
【0049】
天井30の左半分の領域には、左側の第1の照明ユニット81と上下方向に重なる範囲内に、矩形状の第1の点検用開口部83が形成され、第1の点検扉85が開閉自在に設けられる。天井30の右半分の領域には、右側の第2の照明ユニット82と上下方向に重なる範囲内に、矩形状の第2の点検用開口部84が形成され、第2の点検扉86が開閉自在に設けられる。また、第1,第2の点検扉85,86には、ヒンジ87及びロック機構88が設けられる。
【0050】
[第2の実施形態の作用効果]
第1の照明ユニット81を、下降位置まで下降させ、中心O1を中心として矢印A1方向に半回転することにより、右側の第2の照明ユニット82の下側の退避位置に至り、第1、第2の照明ユニット81,82は上下方向に重なる。これにより、左側の第1の点検用開口部83及び第1の点検扉85にアクセス可能となる。すなわち、第1の点検扉85を開けて、昇降路の左側に配置された各種機器にアクセスし、点検することが可能となる。
【0051】
また、第1の照明ユニット81を下降位置まで下降させ、第2の照明ユニット82を、中心O1を中心としてA2方向に半回転することにより、第2の照明ユニット82は左側の第1の照明ユニット81の上の収納位置に至り、上下方向に重なる。これにより、右側の第2の点検用開口部84及び第2の点検扉86にアクセス可能となる。すなわち、第2の点検扉86を開けて、昇降路の右側に配置された各種機器にアクセスして点検することが可能となる。
【0052】
[その他の実施形態]
(1)前記各実施形態では、照明装置を左右の2つの照明ユニットに分割するように構成されたが、本発明はこれに限定されず、例えば照明装置を3分割,4分割またはそれ以上に分割するように構成されてもよい。たとえば、第1の実施形態のように平面視で矩形に形成される照明装置では、「田」の字状に4分割して、任意の照明ユニットを、下降位置から退避位置に移動できる構成とし、残りの照明ユニットをスライド移動のみ可能な構成とすることが可能となる。
【0053】
(2)第2の実施形態のように扇形の照明ユニット及び円弧形のスライドガイド機構を有する場合には、中心角度が120度の3つの扇形の照明ユニットを、周方向に3等分配置することも可能である。もちろん、円形の照明装置を、4つ以上の扇形の照明ユニットに分割配置することも可能である。
【0054】
(3)前記各実施形態では、各照明ユニットの支持杆の上端部にスライダを備えたが、本発明はこれに限定されず、スライダの代わりにローラを備えるように構成されてもよい。
【0055】
(4)前記各実施形態では、照明ユニット内にLED灯を内蔵するように構成されたが、本発明はこれに限定されず、蛍光灯を内蔵する照明ユニットを用いて構成されてもよい。また、照明ユニットの下面開口部を覆う透光板で構成されたが、本発明はこれに限定されず、照明ケース下面を不透光板としてLED灯のダウンライトを使用するように構成されてもよいし、照明ユニットに照明ではなく送風ファンを設置するように構成されてもよい。
【0056】
(5)前記各実施形態では、点検または修理の対象となる昇降路内の機器として巻き上げ機や制御盤を用いて説明したが、本発明はこれに限定されず、各種配管または配線等を含むように構成されてもよい。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施しうるものであり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 エレベータ
2 乗りかご
10 巻き上げ機
12 制御盤
30 天井
33 第1の点検用開口部
34 第2の点検用開口部
35 第1の点検扉
36 第2の点検扉
41 第1の照明ユニット
42 第2の照明ユニット
43 昇降支持機構
44 第1のスライドガイド機構
44a 第1のスライドガイド経路
45 第2のスライドガイド機構
45a 第2のスライドガイド経路
81 扇形の第1の照明ユニット
82 扇形の第2の照明ユニット
83 第1の点検用開口部
84 第2の点検用開口部
85 第1の点検扉
86 第2の点検扉
90 昇降支持機構
91 円弧形の第1のスライドガイド機構
92 円弧形の第2のスライドガイド機構
【手続補正書】
【提出日】2023-07-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記課題を解決するために、一実施形態に係るエレベータ照明装置は、開口部を有する乗りかごの天井に支持され、乗りかご内を照らすエレベータ照明装置である。該エレベータ照明装置は、上下方向に互いに重ならない位置に分割設置された複数の照明ユニットと、複数の照明ユニットのうち、少なくとも一つの照明ユニットを、設置時の高さの原位置と該原位置より下方の下降位置との間で位置変更が可能となるように天井に支持する昇降支持機構と、下降位置の少なくとも一つの照明ユニットと、少なくとも一つの照明ユニット以外の他の照明ユニットとが上下方向に重なるようにそれぞれスライド可能に天井に支持するスライドガイド手段とを備える。また、複数の照明ユニットは乗りかごの天井の略全面に設置される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する乗りかごの天井に支持され、前記乗りかご内を照らすエレベータ照明装置であって、
上下方向に互いに重ならない位置に分割設置された複数の照明ユニットと、
前記複数の照明ユニットのうち、少なくとも一つの照明ユニットを、設置時の高さの原位置と前記原位置より下方の下降位置との間で位置変更が可能となるように前記天井に支持する昇降支持機構と、
下降位置の少なくとも一つの照明ユニットと、少なくとも一つの照明ユニット以外の他の照明ユニットとが上下方向に重なるようにそれぞれスライド可能に前記天井に支持するスライドガイド手段とを備え、
前記複数の照明ユニットは前記乗りかごの天井の略全面に設置された、
エレベータ照明装置。
【請求項2】
前記スライドガイド手段は、前記少なくとも一つの照明ユニットを、前記下降位置と、他の照明ユニットの下側に重なる退避位置と、の間でスライド可能に前記天井に支持する第1のスライドガイド機構を含む、請求項1に記載のエレベータ照明装置。
【請求項3】
前記スライドガイド手段は、
前記他の照明ユニットを、前記他の照明ユニットの原位置と、前記下降位置の前記一つの照明ユニットの上側に収納される収納位置と、の間でスライド可能に前記天井に支持する第2のスライドガイド機構をさらに含む、請求項2に記載のエレベータ照明装置。
【請求項4】
前記第1のスライドガイド機構は、前記一つの照明ユニットを平面視で直線状にガイドする第1のスライドガイド経路を含み、
前記第2のスライドガイド機構は、前記他の照明ユニットを平面視で直線状にガイドする第2のスライドガイド経路を含む、請求項3に記載のエレベータ照明装置。
【請求項5】
前記第1のスライドガイド機構は、前記一つの照明ユニットを平面視で円弧状にガイドする第1のスライドガイド経路を含み、
前記第2のスライドガイド機構は、前記他の照明ユニットを平面視で円弧状にガイドする第2のスライドガイド経路を含む、請求項3に記載のエレベータ照明装置。