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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180642
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G08G1/09 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094109
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 ありさ
(72)【発明者】
【氏名】寺川 智充
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181FF07
5H181FF13
(57)【要約】
【課題】情報を通知できない車両が存在する場合であっても、当該車両を含む車両がスムーズに信号交差点を通過できる可能性を高める技術の提供。
【解決手段】自動追従走行を行っている車両の時系列の位置を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、前記車両情報に基づいて、複数の前記車両を分類するグルーピング部と、同一の前記グループに属する前記車両のうち、制御目標を特定するための目標特定情報を他の装置から取得可能な前記車両を制御対象車両とし、前記目標特定情報を他の装置から取得不可能な前記車両を含む他の前記車両を追従車両とする車両種別設定部と、前記制御対象車両が、停車せずに前記信号交差点の信号機が示す通過可能期間に前記信号交差点を通過可能になる制御目標を特定するための前記目標特定情報を、前記制御対象車両に対して、送信する制御目標送信部と、を備える車両制御システムを構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動追従走行を行っている車両の時系列の位置を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報に基づいて、同一道路上で同一方向に走行し、同一の信号交差点に向けて走行している複数の前記車両であって、近接しているか否かの判定条件を充足する複数の前記車両を、同一のグループに分類するグルーピング部と、
同一の前記グループに属する前記車両のうち、制御目標を特定するための目標特定情報を他の装置から取得可能な前記車両を制御対象車両とし、前記目標特定情報を他の装置から取得不可能な前記車両を含む他の前記車両を追従車両とする車両種別設定部と、
前記制御対象車両が、停車せずに前記信号交差点の信号機が示す通過可能期間に前記信号交差点を通過可能になる制御目標を特定するための前記目標特定情報を、前記制御対象車両に対して、送信する制御目標送信部と、
を備える車両制御システム。
【請求項2】
前記車両種別設定部は、
第1の前記グループに属する前記車両のうち先頭を走行している前記車両が、前記目標特定情報を他の装置から取得可能である場合、先頭を走行している前記車両を第1の前記グループにおける前記制御対象車両とする、
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記車両種別設定部は、
第1の前記グループに属する前記車両のうち先頭を走行している前記車両が、前記目標特定情報を他の装置から取得不可能である場合、第1の前記グループに属し、かつ、前記目標特定情報を他の装置から取得可能な前記車両を第1の前記グループにおける前記制御対象車両とし、
前記制御目標送信部は、
第1の前記グループに属する前記車両の中の最も速い車速であり、かつ、制限車速以下の車速を制御目標とするための前記目標特定情報を前記制御対象車両に対して送信する、
請求項1または2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記車両種別設定部は、
第1の前記グループに属する前記車両のうち先頭を走行している前記車両が、前記目標特定情報を他の装置から取得不可能である場合、第1の前記グループの直前に存在する第2の前記グループに属し、かつ、前記目標特定情報を他の装置から取得可能な前記車両を第1の前記グループに再分類し、第1の前記グループにおける前記制御対象車両とし、
前記制御目標送信部は、
第2の前記グループに属する前記車両の中の最も遅い車速であり、かつ、制限車速以下の車速を前記制御目標とするための前記目標特定情報を前記制御対象車両に対して送信する、
請求項1または2に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記グルーピング部は、
前記制御対象車両が前記信号交差点を通過する際の前記通過可能期間と同一の前記通過可能期間において前記信号交差点を通過可能な前記車両を前記制御対象車両が属する前記グループに分類する、
請求項1または2に記載の車両制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号交差点の手前で車両を停止させることなく通過できるように制御するための技術が知られている。例えば、特許文献1には、交差点信号周期時間幅の間に通過する全車両を、交差点が青信号の時刻の時間幅の間に通過させるための走行条件を算出し、全車両個々に通報する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3859663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術においては、交差点信号周期時間幅の間に交差点を通過する全車両に対して走行条件を通報する必要がある。従って、通信手段を備えていない車両など、信号交差点を通過させるための情報を通知できない車両が道路上に存在する場合、当該車両を停止させることなく、交差点を通過させることは困難である。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、信号交差点を通過させるための情報を通知できない車両が存在する場合であっても、当該車両を含む車両がスムーズに信号交差点を通過できる可能性を高める車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、車両制御システムは、自動追従走行を行っている車両の時系列の位置を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、前記車両情報に基づいて、同一道路上で同一方向に走行し、同一の信号交差点に向けて走行している複数の前記車両であって、近接しているか否かの判定条件を充足する複数の前記車両を、同一のグループに分類するグルーピング部と、同一の前記グループに属する前記車両のうち、制御目標を特定するための目標特定情報を他の装置から取得可能な前記車両を制御対象車両とし、前記目標特定情報を他の装置から取得不可能な前記車両を含む他の前記車両を追従車両とする車両種別設定部と、前記制御対象車両が、停車せずに前記信号交差点の信号機が示す通過可能期間に前記信号交差点を通過可能になる制御目標を特定するための前記目標特定情報を、前記制御対象車両に対して、送信する制御目標送信部と、を備える。
【0007】
すなわち、車両制御システムにおいては、道路上に存在する各車両が自動追従走行を行っている状況が想定されている。この場合、道路上の各車両は、前方の所定距離以内に他の車両が存在する場合、当該他の車両に追従して走行する。そこで、車両制御システムにおいては、道路上の車両をグルーピングし、グループ内の一台の車両であって、制御目標を特定するための目標特定情報を他の装置から取得可能な車両を制御対象車両とする。当該制御対象車量は制御目標に応じて走行するさらに、車両制御システムは、グループ内の車両であって、制御対象車両以外の車両を追従車両とする。
【0008】
この構成によれば、制御対象車両は、制御目標通りに走行し、他の車両は前方の車両に追従する。このため、制御対象車両の直後を走行する追従車両は、制御対象車両に追従し、当該追従車両の後においても他の追従車両が追従する。この結果、制御対象車両を含む隊列が形成される。
【0009】
そして、制御目標は、信号交差点の信号機が示す通過可能期間に信号交差点を通過可能にするための目標である。従って、制御対象車両は、通過可能期間に信号交差点を通過可能である可能性が高い。また、制御対象車両と隊列を形成する追従車両も通過可能期間に信号交差点を通過可能である可能性が高い。以上の構成において、制御目標は、制御対象車両に与えられ、他の車両には与えられない。従って、追従車両は、目標特定情報を他の装置から取得可能な車両である必要はない。このため、信号交差点を通過させるための情報を通知できない車両が存在する場合であっても、当該車両を含む車両がスムーズに信号交差点を通過できる可能性を高めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における車両制御システムの構成を示すブロック図である。
図2図2Aは通信可能車両の構成を示すブロック図であり、図2Bは通信不可能車両の構成を示すブロック図である。
図3】車両制御処理のフローチャートである。
図4】車両制御処理のフローチャートである。
図5図5A図5Bは、複数の車両が道路を走行する状態の例を示す図である。
図6】信号交差点を通過可能期間に通過するための車速を示す図である。
図7図7A図7Bは、複数の車両が道路を走行する状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)システム構成:
(2)車両制御処理:
(3)他の実施形態:
(1)システム構成:
図1は、本実施形態における車両制御システム10の構成を示すブロック図である。図2Aは、車両制御システム10と通信可能な通信可能車両100の構成を示すブロック図である。図2Bは、車両制御システム10と通信を行うことができない通信不可能車両200の構成を示すブロック図である。なお、道路においては複数の通信可能車両100が走行している可能性がある。図1において、通信可能車両100は1台示されるのみであるが、車両制御システム10は、複数の通信可能車両のそれぞれと通信し得る。また、図1において、通信不可能車両200は1台示されるのみであるが、道路においては、複数の通信不可能車両200が走行している可能性がある。
【0012】
車両制御システム10は、通信不可能車両200と通信を実行できないが、通信可能車両100と通信を行うことにより、通信可能車両100、通信不可能車両200に隊列を形成させ、当該隊列に含まれる各車両がスムーズに信号交差点を通過する可能性が高くなるように制御を実行する。
【0013】
以下、このような制御を行うための構成を説明する。まず、通信可能車両100および通信不可能車両200の構成を説明する。図2Aに示すように、通信可能車両100は、車両制御ECU110,GNSS受信部120,車速センサ121,ジャイロセンサ122,周辺車両センサ123,自動運転ECU130,通信部140を備えている。
【0014】
車両制御ECU110は、通信可能車両100が備える各種の装置等を制御する装置であり、図示しないプロセッサーやメモリ等を備えている。GNSS受信部120は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置である。GNSS受信部120は、航法衛星からの電波を受信し、通信可能車両100の現在位置を算出するための信号を出力する。車速センサ121は、通信可能車両100が備える車輪の回転速度に対応した信号を出力する。ジャイロセンサは、通信可能車両100の水平面内の旋回についての角加速度を検出し、通信可能車両100の向きに対応した信号を出力する。車両制御ECU110は、走行中の道路において、車速センサ121およびジャイロセンサ122から出力された信号に基づいて推定される位置の軌跡である自立航法軌跡と図示しない地図情報とに基づいて通信可能車両100の現在位置を取得する。当該現在位置は、一定期間ごとに取得される。従って、車両制御ECU110は、通信可能車両100の時系列の位置を取得することが可能である。
【0015】
周辺車両センサ123は、通信可能車両100の前方を走行している車両を検出する装置である。本実施形態において、通信可能車両100は、自動追従走行を行うことが可能な車両である。周辺車両センサ123は、追従対象となる前方の車両を検出するために利用可能である。センサの態様は限定されず、例えば、可視光カメラ、ミリ波レーダー、LIDAR(Light Detection and Ranging)などの各種技術が用いられて良い。周辺車両センサ123は、通信可能車両100の前方を走行する車両との車間距離を示す情報を出力する。車両制御ECU110は、当該情報に基づいて、通信可能車両100の前方を走行する車両と通信可能車両100との車間距離を取得する。
【0016】
通信部140は、通信可能車両100の外部の装置と通信を行うための装置である。本実施形態において、車両制御ECU110は、通信部140を介して車両制御システム10と通信可能である。具体的には、車両制御ECU110は、通信部140を介して、GNSS受信部120等の出力に基づいて取得された通信可能車両100の時系列の位置に対して通信可能車両100の識別情報を対応付け、車両制御システム10に送信する。また、通信可能車両100が制御対象車両となる場合、車両制御システム10は、制御目標を特定するための目標特定情報(詳細は後述)を、通信可能車両100に送信する。制御対象車両となる通信可能車両100の車両制御ECU110は、通信部140を介して当該目標特定情報を取得する。
【0017】
自動運転ECU130は、通信可能車両100が備える図示しない装置を制御して通信可能車両100の挙動を制御するECUであり、図示しないプロセッサーやメモリ等を備えている。本実施形態において自動運転ECU130は、通信可能車両100の車速を制御することが可能であり、また、車線変更させるための制御を行うことができる。
【0018】
車速制御は、通信可能車両100が備える図示しない車速制御部(例えば、制動制御部、変速制御部、スロットル制御部等)によって実施可能である。すなわち、自動運転ECU130が車速制御部を制御することによって車速が制御される。この場合、自動運転ECU130は、車両制御ECU110が出力する目標車速を制御目標とし、車速制御部を制御して通信可能車両100の車速が当該目標車速となるように制御する。むろん、目標車速は、通信可能車両100が走行している道路の制限車速以下の値である。制限車速は、例えば、車両制御システム10から取得されても良いし、図示しない記憶媒体に記録された地図情報等に基づいて取得されても良い。
【0019】
また、車線変更させるための制御は、通信可能車両100が備える図示しない車線制御部(例えば、操舵部、車速制御部、画像取得部等)によって実施可能である。すなわち、自動運転ECU130は、これらを制御することによって、通信可能車両100に車線変更を行わせる。この場合、自動運転ECU130は、図示しない画像取得部に基づいて車線変更方向の画像を取得し、画像に基づいて車線変更のタイミングを特定し、車速制御部を制御して通信可能車両100の車速を車線変更のための車速に変化させるとともに、操舵部を制御して車線変更方向に1個車線を移動させる構成となる。
【0020】
車両制御ECU110は、自動運転ECU130に制御目標を出力することにより、通信可能車両100を前方車両に対して自動追従走行させることが可能である。すなわち、車両制御ECU110は、周辺車両センサ123の出力に基づいて、通信可能車両100の前方を走行する車両との車間距離を取得し、当該車間距離が一定の範囲となる車速を特定する。そして、車両制御ECU110は、当該車速を制御目標として、自動運転ECU130に指示する。当該制御目標は、種々の態様で特定されて良く、例えば、車両制御ECU110は、車間距離が一定の範囲より大きければ、現在の車速より既定量だけ大きい車速を制御目標とする。また、車両制御ECU110は、車間距離が一定の範囲より小さければ、現在の車速より既定量だけ小さい車速を制御目標とする。さらに、車両制御ECU110は、車間距離が一定の範囲内であれば、現在の車速を制御目標とする。そして、車両制御ECU110は、制御目標としての車速を自動運転ECU130に出力する。この結果、通信可能車両100と前方の車両との車間距離が一定の範囲となるように制御される。すなわち、自動追従走行が行われる。
【0021】
但し、通信可能車両100の前方の所定距離以内の範囲に車両が存在しない場合、自動追従走行は行われなくてよい。この場合、例えば、一定車速での走行が行われるように、制御目標が決定されて良い。また、通信可能車両100が、後述する制御対象車両である場合、前方の車両に追従する制御は行われなくてよく、後述する車速を制御目標とする車速制御が行われる。なお、この場合であっても、衝突防止制御等の制御は行われてよい。
【0022】
なお、本実施形態において車両制御ECU110は、通信可能車両100の前方を走行している車両の時系列の位置を特定することも可能である。すなわち、車両制御ECU110が、通信可能車両100と前方の車両との車間距離とを特定すると、通信可能車両100の現在位置から道路に沿って当該車間距離だけ離れた位置を、前方の車両の位置とみなす。なお、道路の方向は、図示しない地図情報等によって特定されてよい。以上の処理により、車両制御ECU110は、通信可能車両100の前方を走行する車両の時系列の位置を取得する。車両制御ECU110は、当該前方を走行する車両の時系列の位置に対して通信可能車両100の識別情報を対応付け、通信部140を介して、車両制御システム10に送信する。本実施形態における、周辺車両センサ123を用いた車両の位置の特定法は一例である。従って、他の態様、例えば、周辺車両センサ123が、通信可能車両100の前方以外の方向(側方や後方)を走行する車両を検出し、当該車両の位置を取得可能であってもよい。
【0023】
次に、通信不可能車両200の構成を説明する。図2Bに示すように、通信不可能車両200は、車両制御ECU210,GNSS受信部220,車速センサ221,ジャイロセンサ222,周辺車両センサ223,自動運転ECU230を備えている。一方、通信不可能車両200は、通信可能車両100が備えているような通信部140を備えていない。このため、通信不可能車両200は、車両制御システム10と通信することができない。
【0024】
GNSS受信部220,車速センサ221,ジャイロセンサ222,周辺車両センサ223,自動運転ECU230は、通信可能車両100が備えるGNSS受信部120,車速センサ121,ジャイロセンサ122,周辺車両センサ123,自動運転ECU130と同様の機能を有している。車両制御ECU210も車両制御ECU110とほぼ同様の機能を有しているが、通信不可能車両200に通信部は備えられていないため、車両制御ECU210は、通信に関する機能は備えていない。以上の構成により、通信不可能車両200は、通信可能車両100と同様に、通信不可能車両200と前方の車両との車間距離が一定の範囲となるように制御する自動追従走行を実行可能である。
【0025】
一方、通信不可能車両200は、通信部を備えていないため、通信不可能車両200の時系列の位置を車両制御システム10に送信することはできない。このため、本実施形態においては、通信可能車両100が前方の車両における時系列の位置を取得することによって、車両制御システム10が通信不可能車両200の時系列の位置を特定する。すなわち、通信可能車両100の前方の車両が通信不可能車両200である場合、通信可能車両100が前方の車両における時系列の位置が通信不可能車両200の時系列の位置を示している。また、通信不可能車両200は、通信部を備えていないため、車両制御システム10から目標特定情報を受信することはできない。このため、通信不可能車両200が後述する制御対象車両となることはない。
【0026】
次に、車両制御システム10の構成を説明する。図1に示すように、車両制御システム10は、制御部20,記憶媒体30,通信部40を備えている。制御部20は、図示しないCPU,RAM,ROM等を備えており、記憶媒体30やROMに記録されたプログラムを実行することができる。記憶媒体30には、地図情報30a、車両情報30b、信号機情報30cが記録される。
【0027】
地図情報30aは、車両や信号機の位置の特定等に利用される情報であり、ノードとリンクによって定義された区間のネットワークを示している。地図情報30aには、ノードの位置等を示すノードデータ、ノード間の区間の形状を特定するための形状補間点の位置等を示す形状補間点データ、ノード同士の連結を示すリンクデータが含まれている。
【0028】
本実施形態においてノードは交差点に該当し、ノードデータにはノードが示す交差点が信号交差点であるか否かを示す情報が対応付けられている。交差点が信号交差点である場合、ノードデータには、さらに、信号機の識別情報が対応付けられている。リンクデータには、道路の属性を示す情報が含まれており、当該属性には道路の識別情報(例えば、道路番号等)が含まれている。従って、リンクデータが示す道路区間が連続しており、連続する道路区間に同一の識別情報が対応付けられていれば、同一の道路であると判定することができる。
【0029】
車両情報30bは、車両の時系列の位置を示す情報である。本実施形態においては、通信可能車両100の時系列の位置、および、通信不可能車両200の時系列の位置を示す情報が、車両情報30bに含まれる。
【0030】
信号機情報30cは、信号機の周期を示す情報であり、信号機の識別情報に対応付けられて定義されている。信号機の周期を示す情報は、通過可能期間を示す情報であれば良く、種々の態様で定義されて良い。例えば、通過可能期間の長さと、通過不可能期間の長さと、通過可能期間が開始する時刻の一つと、によって定義される。また、信号機の周期は、信号交差点への車両の進入方向および信号交差点からの車両の退出方向に対応付けられて定義される。むろん、同一方向から信号交差点に進入する場合であっても、矢印信号等によって退出方向毎に信号機の周期が異なるのであれば、それぞれについて信号機の周期が定義されて良い。なお、本実施形態において通過可能期間は信号機の現示が青の期間であり、通過不可能期間は信号機の現示が赤または黄の期間である。むろん、この構成は一例であり、信号機の現示が黄である期間が通過可能期間に含まれても良い。
【0031】
本実施形態において制御部20は、記憶媒体30やROM等に記録された車両制御プログラム21を実行することができる。車両制御プログラム21は、信号交差点に向かって走行する車両が、信号交差点の手前で停車せずに信号交差点を通過できる可能性を高めるための処理を制御部20に実行させるプログラムである。
【0032】
車両制御プログラム21が実行されると、制御部20は、車両情報取得部21a、グルーピング部21b、車両種別設定部21c、制御目標送信部21dとして機能する。車両情報取得部21aは、自動追従走行を行っている車両の時系列の位置を含む車両情報を取得する機能を制御部20に実行させる。
【0033】
具体的には、制御部20は、車両情報取得部21aの機能により、通信部40を介して、通信可能車両100から通信可能車両100の時系列の位置を示す情報を取得する。すなわち、通信可能車両100からは、一定期間ごとに取得された通信可能車両100の位置と、通信可能車両100の識別情報が送信される。当該位置は、通信可能車両100の時系列の位置であるため、制御部20は、当該時系列の位置に対して通信可能車両100の識別情報を対応付け、車両情報30bとして記憶媒体30に記録する。
【0034】
本実施形態においては、通信可能車両100から、通信可能車両100の前方を走行する車両の時系列の位置が送信される場合もある。そこで、制御部20は、車両情報取得部21aの機能により、通信部40を介して、当該前方を走行する車両の時系列の位置を取得する。当該前方を走行する車両が通信不可能車両200である場合、制御部20は、通信不可能車両200であることを示す識別情報を対応付け、車両情報30bとして記憶媒体30に記録する。当該前方を走行する車両が通信可能車両100である場合、当該通信可能車両100から送信される情報を記録すれば良いため、制御部20は、当該前方を走行する車両の位置を示す情報を記録しない。
【0035】
本実施形態において、制御部20は、車両情報取得部21aの機能により、車両の時系列の車速および加速度を取得する。すなわち、制御部20は、時系列の車両の位置を時間微分することにより、時系列の車速を取得する。また、制御部20は、時系列の車両の車速を時間微分することにより、時系列の加速度を取得する。取得された車速や加速度は、車両の識別情報に対応付けられて、車両情報30bに追記される。この結果、通信可能車両100、通信不可能車両200について、時系列の位置、車速、加速度が車両情報30bとして記録された状態になる。
【0036】
なお、通信不可能車両200の位置は、周囲を走行する通信可能車両100に特定される。従って、通信可能車両100から検出不可能な位置を走行し続ける通信不可能車両200が存在する場合、当該通信不可能車両200の位置は、車両制御システム10において特定されていない状態になり得る。しかし、通信可能車両100から検出可能な位置を走行する通信不可能車両200の位置は、車両制御システム10において特定される。従って、当該通信不可能車両200について、車両制御システム10は、後述するグルーピング等を行うことができる。
【0037】
グルーピング部21bは、車両情報30bに基づいて、同一道路上で同一方向に走行し、同一の信号交差点に向けて走行している複数の車両であって、近接しているか否かの判定条件を充足する複数の車両を、同一のグループに分類する機能を制御部20に実行させる。すなわち、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、隊列を形成させる車両を同一のグループに分類する。本実施形態においては、車両制御を実行する対象となる対象領域が予め決められており、制御部20は、当該対象領域に含まれる車両のそれぞれについて、グルーピングを行う。グルーピングについての詳細は後述する。
【0038】
車両種別設定部21cは、同一のグループに属する車両のうち、制御目標を特定するための目標特定情報を他の装置から取得可能な車両を制御対象車両とし、目標特定情報を他の装置から取得不可能な車両を含む他の車両を追従車両とする機能である。本実施形態において、目標特定情報を他の装置から取得可能な車両は、通信可能車両100である。目標特定情報を他の装置から取得不可能な車両は、通信不可能車両200である。すなわち、本実施形態において制御部20は、同一グループに属する通信可能車両100の中から一台を選択し、制御対象車両に設定する。そして、制御部20は、同一グループに属する他の車両を追従車両とすることにより、制御対象車両と、制御対象車両に追従する追従車両とが隊列を形成するように制御する。制御対象車両の設定についての詳細は後述する。
【0039】
制御目標送信部21dは、制御対象車両が、停車せずに信号交差点の信号機が示す通過可能期間に信号交差点を通過可能になる制御目標を特定するための目標特定情報を、制御対象車両に対して、送信する機能である。すなわち、制御部20は、制御目標送信部21dの機能により、各グループの制御対象車両に対して目標特定情報を送信することにより、各グループの制御対象車両が停車せずに信号交差点を通過できるように制御する。この結果、当該制御対象車両は、停車せずに信号交差点を通過できる可能性が、制御しない場合と比較して高くなる。
【0040】
さらに、各グループにおける追従車両は、他の車両に追従する自動追従走行を行うため、同一グループに属する追従車両のうち、制御対象車両の後方を走行する追従車両は、制御対象車両とともに信号交差点を通過できる可能性が、制御しない場合と比較して高くなる。当該追従車両に追従する他の追従車両も当該追従車両とともに信号交差点を通過できる可能性が、制御しない場合と比較して高くなる。このように、本実施形態によれば、同一グループの車両が隊列を形成して走行することで、制御対象車両とともに、信号交差点の手前で停車することなく信号交差点を通過できる可能性が高くなるように制御することができる。
【0041】
そして、通信不可能車両200は、車両制御システム10から目標特定情報、すなわち、信号交差点を通過させるための情報を通知できない車両である。しかし、このように情報を通知できない通信不可能車両200であっても、追従車両に設定し、通信可能車両100を制御対象車両に設定することで、複数の車両が隊列を形成するように制御することができる。従って、情報を通知できない通信不可能車両200が存在する場合であっても、当該車両を含む車両がスムーズに信号交差点を通過できる可能性を高めることができる。
【0042】
(2)車両制御処理:
図3図4は、制御部20が実行する車両制御処理の一例を示すフローチャートである。本実施形態においては、車両制御システム10が稼働すると車両制御処理が開始され、予め定められた間隔、例えば、100ms毎の間隔で繰り返し実行される。以下、具体的な制御内容について説明する。
【0043】
本実施形態においては、予め決められた対象領域内に存在する車両の制御を行うために車両制御処理が実行される。また、車両制御処理は、車両情報30bが収集された状態で実行される。このため、制御部20は、車両情報取得部21aの機能により、通信部40を介して通信可能車両100から車両情報30bを受信し、記憶媒体30に記録する。制御部20は、通信可能車両100から車両情報30bが送信される度に通信可能車両100に関する車両情報30bを記憶媒体30に記録する。また、通信可能車両100が周辺車両センサ123によって通信不可能車両200の位置を検出し、送信していた場合、通信不可能車両200に関する車両情報30bを記憶媒体30に記録する。
【0044】
このように、車両情報30bが取得され得る状態で、制御部20は、車両制御処理を実行する。車両制御処理が開始されると、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、車両のナンバリングを行う(ステップS100)。すなわち、制御部20は、地図情報30aを参照し、対象領域に含まれる道路区間を特定する。また、制御部20は、車両情報30bを参照し、通信可能車両100および通信不可能車両200の位置に基づいて、対象領域に含まれる道路区間上に存在する通信可能車両100および通信不可能車両200を特定する。そして、制御部20は、対象領域に含まれる道路区間上に存在する通信可能車両100および通信不可能車両200をナンバリングし、各車両の識別情報とみなす。ナンバリングは、車両を識別可能な態様で実施されればよく、本実施形態においては、番号1から1ずつ増加する整数によってナンバリングされる。
【0045】
次に、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、処理対象の車両を特定する(ステップS105)。すなわち、制御部20は、ナンバリングした車両の中から、ステップS110以降の処理によってグルーピングされていない車両を1台選択し、選択した車両を処理対象としてステップS110以降の処理を実行する。本実施形態において制御部20は、車両の番号が小さい順に処理対象とするが、ナンバリングされた車両の全てについてステップS110以降の処理が行われた後に、グルーピングされていない車両(再グルーピング対象とされた車両:詳細は後述)が存在する場合、その車両について処理対象としてステップS110以降の処理を行う。
【0046】
次に、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、処理対象の車両の番号が1であるか否かを判定する(ステップS110)。処理対象の車両の番号が1である場合、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、処理対象の車両をグループ1に分類する(ステップS115)。すなわち、車両の分類結果を示すグループには、1以上の整数値で定義された識別番号が割り当てられる。本実施形態においては、新たに生成されたグループに対して1から順に整数値を割り当てる処理を行う。ステップS115において生成されたグループは、最初に生成されたグループであるため、グループ1とされる。グループへの割り当てが行われると、割り当てられた車両に対してグループの識別番号が対応付けられ、RAM等に記録される(以下同様)。
【0047】
一方、ステップS110において、番号1であると判定されない場合、すなわち、番号1の車両についての処理の後、番号2以降の車両が処理対象の車両となっていた場合、制御部20は、ステップS120以降の処理を行う。
【0048】
具体的には、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、分類候補となる他の車両が存在するか否かを判定する(ステップS120)。ここで、分類候補となる他の車両は、処理対象の車両と、同一道路上で同一方向に走行し、同一の信号交差点に向けて走行している車両である。具体的には、制御部20は、地図情報30aおよび車両情報30bを参照し、処理対象の車両が走行している道路を特定する。また、制御部20は、車両情報30bを参照し、処理対象の車両における時系列の位置および車速に基づいて、処理対象が走行している方向を特定する。さらに、制御部20は、地図情報30aに基づいて、処理対象の車両が向かっている交差点を特定し、当該交差点が信号交差点である場合、その信号機の識別情報を特定する。
【0049】
さらに、制御部20は、車両情報30bを参照し、処理対象の車両が走行している道路と同一の道路上を走行している他の車両を特定し、当該他の車両の走行方向および向かっている交差点を特定する。交差点が信号交差点である場合、制御部は、その信号機の識別情報を特定する。そして、制御部20は、処理対象の車両と、同一道路上において同一方向に走行し、かつ、同一の識別情報の信号機に向かっている他の車両が存在する場合、当該他の車両を分類候補として特定する。
【0050】
ステップS120において、分類候補となる他の車両が存在すると判定された場合、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、近接する他の車両が存在するか否かを判定する(ステップS125)。すなわち、制御部20は、ステップS120において、分類候補として特定された他の車両と、処理対象の車両との距離が近接しているか否かを判定する。近接しているか否かを判定するための判定条件は、種々の条件であって良く、本実施形態においては、処理対象の車両が、グループに属していない場合と、既にグループに属している場合と、で判定条件が異なる。後者は、例えば、後述するステップS220において再グルーピング対象となった車両が処理対象の車両になったケースが該当する。
【0051】
処理対象の車両がグループに属していない場合、処理対象の車両と、他の車両との車間距離が、例えば1秒分の車間距離である場合に近接していると判定される。このため、制御部20は、処理対象の車両と他の車両との距離を特定し、当該距離を処理対象の車速で除して得られる時間が、例えば1秒以下である場合に判定条件を満たすと判定する。処理対象の車両が既にグループに属している場合、処理対象の車両と、他の車両との車間距離が、例えば3秒分の車間距離である場合に近接していると判定される。このため、制御部20は、処理対象の車両と他の車両との距離を特定し、当該距離を処理対象の車速で除して得られる時間が、例えば3秒以下である場合に判定条件を満たすと判定する。以上のように、本実施形態においては、グループに属していない車両をグループ化する際と、グループに属している車両をグループから離脱させる際と、で判定条件を変更し、後者の方が判定条件としての車間距離を長くしている。この構成により、一旦グループ化された車両をグループから離脱しにくくすることができ、走行中の車間距離の揺れに応じて、過度に沢山のグループが生成されることを防止することができる。
【0052】
ステップS125において、近接する他の車両が存在すると判定された場合、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、条件を充足する他の車両が複数存在するか否かを判定する(ステップS130)。ステップS130において、条件を充足する他の車両が複数存在すると判定されない場合、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、条件を充足する他の車両とグループ番号が同一であるグループに分類する(ステップS145)。すなわち、処理対象の車両に近接する他の車両が1台である場合、制御部20は、両者をグループ番号が同一であるグループに分類する。なお、他の車両が既にグループに分類されている場合、制御部20は、処理対象の車両を他の車両と同一のグループ番号のグループに分類する。他の車両がグループに分類されていないなら、現在のグループ番号の最大値+1のグループ番号であるグループに、処理対象の車両と、他の車両とを分類する。
【0053】
図5Aは、道路上の車両の実例を示す図である。図5Aにおいては、車線L1,L2,L3を有する道路R1が示されている。ここでは、車線L2上を走行する通信可能車両100a,100bに基づいて、ステップS145の例を説明する。ここでは、通信可能車両100aが処理対象の車両であり、通信可能車両100bが他の車両であり、他の車両は分類候補であり、近接している例を想定する。この例において、他の車両が既にグループN(Nは自然数)に分類されていれば、処理対象の車両もグループNに分類される。他の車両がグループに分類されていなければ、処理対象の車両と他の車両とが共に現在のグループ番号の最大値+1のグループ番号であるグループに分類される。
【0054】
一方、ステップS130において、条件を充足する他の車両が複数存在すると判定された場合、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、条件を充足する他の車両のうち、グループ番号が最小であるグループに分類する(ステップS135)。すなわち、制御部20は、処理対象の車両を、複数台存在する他の車両のうち、グループ番号が最小であるグループに分類する。この処理によれば、可能な限り、番号が小さいグループに車両を集約することができる。
【0055】
次に、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、条件を充足する他の車両も処理対象の車両と同一のグループに分類する(ステップS140)。すなわち、条件を充足する他の車両は、処理対象の車両と同一の道路上で同一の方向に走行し、同一の信号機に向かっている。さらに、当該他の車両と処理対象の車両とは近接している。このため、当該他の車両と処理対象の車両とは、同一のグループに分類される。この処理によれば、隊列を組むべき車両を容易に同一のグループに分類することができる。
【0056】
図5Aには、ステップS140で分類が行われる車両の例として、車線L1上を走行する通信可能車両100c,100d,100eも例示されている。ここでは、通信可能車両100dが処理対象の車両であり、通信可能車両100c,100eが他の車両であり、他の車両は分類候補であり、近接している例を想定する。通信可能車両100b,100cは近接していない。この例において、他の車両である通信可能車両100cが既にグループ1(図5AではG1と表記)に分類され、他の車両である通信可能車両100eが既にグループ2(図5AではG2と表記)に分類されている例を想定する。
【0057】
この例において、ステップS135が実行されると、処理対象の車両である通信可能車両100dは、他の車両が属するグループのうち、グループ番号が最小であるグループ1に分類される。さらに、ステップS140が実行されると、処理対象の車両と近接している他の車両である通信可能車両100eが、処理対象の車両と同一のグループであるグループ1に分類される。以上の処理によれば、処理対象の車両に近接している他の車両を、隊列を組むべき車両だとみなし、まとめて同一のグループに分類することが可能である。また、可能な限り、番号が小さいグループに車両を集約することができる。
【0058】
なお、処理対象の車両の周辺を走行する他の車両の全てがグループに未分類である場合、ステップS135において、処理対象の車両を現在のグループ番号の最大値+1のグループ番号であるグループに分類してもよい。さらに、この場合、ステップS140において、他の車両を処理対象と同一のグループ、すなわち、現在のグループ番号の最大値+1のグループ番号であるグループに分類してもよい。
【0059】
一方、ステップS120において、分類候補となる他の車両が存在すると判定されなかった場合、制御部20は、グルーピング部21bの機能により、グループ番号の最大値+1のグループ番号であるグループに分類する(ステップS150)。すなわち、分類候補となる他の車両が存在すると判定されなかった場合、処理対象の車両と同一の道路上に、同一の方向に走行し、同一の信号機に向かっている他の車両が存在しない。そこで、制御部20は、処理対象の車両を、新たに生成したグループに分類する。
【0060】
さらに、ステップS125において、近接する他の車両が存在すると判定されなかった場合にも、制御部20は、ステップS150を実行する。すなわち、近接する他の車両が存在すると判定されなかった場合、処理対象の車両と同一の道路上に、同一の方向に走行し、同一の信号機に向かっている他の車両が存在するが、隊列を組むべきであるほど近くを走行している他の車両は存在しない。そこで、制御部20は、処理対象の車両を、新たに生成したグループに分類する。
【0061】
以上のようにして、処理対象の車両のグルーピングが行われると、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、処理対象の車両が先頭車両であるか否かを判定する(ステップS155)。具体的には、制御部20は、処理対象の車両に対応付けられたグループのグループ番号を特定し、当該グループ番号と同一のグループ番号が対応付けられた車両を特定する。そして、制御部20は、特定された車両の車両情報30bおよび地図情報30aに基づいて、各車両の位置を特定し、各車両の中で処理対象の車両の位置が最も信号交差点に近い場合、処理対象の車両が先頭車両であると判定する。
【0062】
ステップS155において、処理対象の車両が先頭車両であると判定された場合、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、処理対象の車両が通信可能であるか否かを判定する(ステップS160)。すなわち、制御部20は、車両情報30bを参照し、処理対象の車両の識別情報が通信可能車両100の識別情報である場合、処理対象の車両が通信可能車両100であると判定する。
【0063】
ステップS160において、処理対象の車両が通信可能であると判定された場合、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、処理対象の車両を制御対象車両に設定する(ステップS165)。図5Bにおいては、車線L1,L2,L3を有する道路R1上を、通信可能車両100f,100g、通信不可能車両200a,200bが走行している例が示されている。ここでは、通信可能車両100と通信不可能車両200aとが近接しており、通信可能車両100gと通信不可能車両200bとが近接し、通信可能車両100f,100gは近接していない状態が想定されている。この例において、通信可能車両100fが処理対象の車両である場合を想定する。この場合、通信可能車両100fは先頭車両であり、かつ、通信可能であるため、制御対象車両となる。処理対象が属するグループを第1のグループとみなすと、以上の処理により、第1のグループに属する車両のうち先頭を走行している車両が、通信可能である場合、当該先頭を走行している車両を第1のグループにおける制御対象車両とすることになる。
【0064】
制御対象車両が設定されると、制御部20は、制御目標送信部21dの機能により、制御対象車両が制御目標を設定するための処理を行う。本実施形態において、制御部20は、制御対象車両が向かっている信号機の信号機情報30cを目標特定情報として、制御対象車両である通信可能車両100に送信する。制御対象車両である通信可能車両100においては、車両制御ECU110が、信号機情報30cに基づいて制御目標を特定し、車両を制御する。
【0065】
具体的には、車両制御ECU110は、制限車速以下であり、かつ、現在の車速に最も近い車速で走行するように自動運転ECU130に指示することによって、通信可能車両100が停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過できるように制御する。本実施形態において、制御目標は、車両制御ECU110によって算出されるが、制御部20が制御目標を取得して、通信可能車両100に提供しても良い。
【0066】
図6は、制御目標の算出例を説明する図である。図6は、横軸が時間、縦軸が距離のグラフであり、処理対象の車両、すなわち、制御対象車両となった通信可能車両100の位置を縦軸の0,現在時刻を横軸の0として示している。また、図6においては、通信可能車両100から信号交差点までの距離を距離Lとして示しており、当該信号交差点における通過可能期間を一点鎖線によって示している。車両制御ECU110は、GNSS受信部120、車速センサ121、ジャイロセンサ122の出力信号に基づいて通信可能車両100の位置を特定可能である。また、車両制御システム10から送信された信号機情報30cに基づいて通過可能期間を特定可能である。すなわち、図6に示すように、車両制御ECU110は、通信可能車両100の位置と信号交差点との関係、現在時刻と通過可能期間との関係を特定することができる。
【0067】
車両制御ECU110は、通信可能車両100の現在位置から信号交差点までの距離Lを、信号交差点までの所要期間で除することにより、信号交差点まで停車することなく走行し、通過可能期間において信号交差点を通過するために必要な車速を算出する。図6に示すように、通信可能車両100が向かっている信号交差点において、現在時刻以後において最初に出現する通過可能期間は、現在時刻から時間t1が経過すると開始し、現在時刻から時間t2が経過すると終了する。通信可能車両100が向かっている信号交差点において、現在時刻以後に2番目に出現する通過可能期間は、現在時刻から時間t3が経過すると開始し、現在時刻から時間t4が経過すると終了する。
【0068】
この例であれば、最初に出現する通過可能期間内に信号交差点を通過するために必要な車速は、V1(=L/t1)以上、V2(=L/t2)以下である。また、2番目に出現する通過可能期間内に信号交差点を通過するために必要な車速は、V3(=L/t3)以上、V4(=L/t4)以下である。3番目以降に出現する通過可能期間についても、同様に、通過可能期間内に信号交差点を通過するために必要な車速を特定する。
【0069】
車両制御ECU110は、以上のような演算により、通過可能期間内に信号交差点を通過するために必要な車速を算出する。そして、通信可能車両100が走行する道路の制限車速以下であり、かつ、通信可能車両100の現在車速に最も近い車速を制御目標とする。なお、車速の選択方法は一例であり、例えば、制限車速以下の車速で、最も早く信号交差点を通過可能な車速が選択されてもよい。また、現在車速から制御目標としての車速まで加速または減速することに要する時間を含めて、通過可能期間に信号交差点を通過するために必要な車速を算出しても良く、種々の態様を採用可能である。いずれにしても、制御部20は、制御目標送信部21dの機能により、目標特定情報としての信号機情報30cを制御対象車両としての通信可能車両100に送信する。当該信号機情報30cに基づいて、車両制御ECU110が制御目標を設定し、制御を行うことにより、通信可能車両100が停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過するように制御することができる。
【0070】
なお、以上のようなステップS165が実行される前に、後述するステップS210が実行された場合、処理対象の車両と同一のグループにおいて、先に制御対象車両が設定されていたことになる。この場合、先に設定された制御対象車両は、やがて、先頭に移動するように制御されるが、当該車両が先頭に達する前に、ステップS165が実行されると、実際に先頭を走行中の車両を制御対象車両に設定することが可能である。この場合、先に制御対象車両に設定されていた車両は追従車両に設定される。
【0071】
一方、ステップS160において、処理対象の車両が通信可能であると判定されない場合、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、処理対象の車両を仮制御対象車両に設定する(ステップS170)。仮制御対象車両は、暫定的に先頭車両となるように設定される車両であり、後の処理によって通信可能車両100が制御対象車両となった場合には、当該制御対象車両が先頭車両になり得る。制御対象車両が設定されると、仮制御対象車両は追従車両となる。図5Bに示す例において、通信不可能車両200bが処理対象の車両である場合を想定する。この場合、通信不可能車両200bは先頭車両であり、かつ、通信不可能であるため、仮制御対象車両となる。
【0072】
ステップS165またはS170が実行された場合、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、処理対象の車両が信号交差点を通過する期間を特定し、記憶する(ステップS175)。ステップS175が実行される場合、処理対象の車両は、グループの先頭車両である。そして、当該先頭車両に追従車両が追従することにより、追従車両が先頭車両と同一の通過可能期間内に信号交差点を通過できる可能性は高くなる。しかし、追従車両の数を無制限に増加させてしまうと、グループの後方を走行する追従車両は、先頭車両と同一の通過可能期間内に信号交差点を通過できなくなる。
【0073】
そこで、本実施形態においては、後の処理において、先頭車両と同一のグループに分類される追従車両の数を制限するように構成されている。ステップS175において、制御部20は、後の処理で参照できるようにするため、処理対象の車両が信号交差点を通過する期間を特定する。具体的には、制御部20は、車両情報30bに基づいて処理対象の車両の位置と、処理対象の車両が向かっている信号機の識別情報とを、特定する。さらに、制御部20は、当該信号機の識別情報に基づいて信号機情報30cを参照し、処理対象の車両が向かっている信号機の周期を特定する。制御部20は、これらの情報に基づいて、ステップS165において説明した、車両制御ECU110の処理と同様の処理を行い、処理対象の車両が制御目標の車速により、停車することなく信号交差点を通過する通過可能期間を特定する。そして、制御部20は、当該通過可能期間を示す情報、例えば、通過可能期間の開始時刻および長さを示す情報を先頭車両、すなわち、制御対象車両または仮制御対象車両に対応づけ、図示しないRAM等に記憶させる。
【0074】
一方、ステップS155において、処理対象の車両が先頭車両であると判定されない場合、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、同一グループに制御対象車両が存在するか否か判定する(ステップS180)。すなわち、制御部20は、既に分類済の各車両についてのグループ番号を参照し、処理対象の車両と同一のグループ番号のグループに分類された他の車両が存在するか否か判定する。処理対象の車両と同一のグループ番号のグループに分類された他の車両が存在する場合、制御部20は、その中に制御対象車両に設定された車両が存在するか否か判定する。
【0075】
ステップS180において、同一グループに制御対象車両が存在すると判定された場合、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、処理対象の車両を追従車両に設定する(ステップS200)。例えば、図5Bに示す例において、既に通信可能車両100fが制御対象車両に設定されている状態で、通信不可能車両200aが処理対象の車両となった場合、通信不可能車両200aは追従車両に設定される。
【0076】
一方、ステップS180において、同一グループに制御対象車両が存在すると判定さない場合、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、前方のグループの最後尾が通信可能であるか否か判定する(ステップS190)。すなわち、処理対象の車両と同一グループに、まだ制御対象車両が存在しないが、処理対象の車両が先頭車両でない場合、直前を走行している他のグループに属する車両に通信可能車両100が存在すれば、制御部20は、当該通信可能車両100を制御対象車両とする。本実施形態においては、前方を走行している車両が属するグループの中で、最後尾を走行する車両が通信可能車両100である場合に、当該通信可能車両100を制御対象車両とする。このため、制御部20は、車両情報30bおよび地図情報30aに基づいて、処理対象の車両の前方を走行する他の車両であり、かつ、処理対象の車両の直前を走行する他のグループに属する他の車両を特定する。さらに、制御部20は、当該他の車両の中で、処理対象の車両に最も近い他の車両を最後尾の車両として特定する。そして、当該他の車両が通信可能車両100であるか否かを判定する。
【0077】
ステップS190において、前方のグループの最後尾が通信可能であると判定された場合、制御部20は、最後尾の車両を制御対象車両に設定する(ステップS195)。すなわち、制御部20は、処理対象の車両の直前を走行する他のグループの最後尾を走行する通信可能車両100を、処理対象の車両が属するグループの制御対象車両に設定する。この場合、処理対象の車両は追従車両に設定される(ステップS200)。以上の処理において、処理対象の車両が属するグループを第1のグループ、前方のグループを第2のグループと見なすと、第1のグループの直前に存在する第2のグループに属し、かつ、通信可能な車両を第1のグループに再分類し、第1のグループにおける制御対象車両に設定したことになる。
【0078】
この場合、制御部20は、制御目標送信部21dの機能により、通信部40を介して、第2のグループに属する車両の中の最も遅い車速であり、かつ、制限車速以下の車速を制御目標とするための目標特定情報を制御対象車両に対して送信する。具体的には、制御部20は、車両情報30bを参照し、第2のグループに属する車両の車速の中で、最も遅い車速を特定する。そして、制御部20は、制御対象車両が向かっている信号機の信号機情報30cと、第2のグループに属する車両の車速の中で最も遅い車速と、を目標特定情報として、制御対象車両である通信可能車両100に送信する。
【0079】
この場合、車両制御ECU110は、制限車速以下であり、かつ、第2のグループに属する車両の車速の中で最も遅い車速であり、かつ、通信可能車両100が停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過できる車速で走行するように自動運転ECU130に指示する。通信可能車両100が停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過できる車速は、上述の図6で例示した手法と同様の手法で算出可能である。制御部20は、算出された車速の中から、第2のグループに属する車両の車速の中で最も遅い車速以下の車速を選択し、制御目標とする。車両制御ECU110が以上のような制御目標を設定し、制御を行うことにより、第2のグループに属していた通信可能車両100は、やがて第2のグループより遅れ、第1のグループの先頭車両となる。また、当該先頭車両となった通信可能車両100は、停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過可能な車速である。従って、制御対象車両である通信可能車両100とその後に続く追従車両とが、停車することなく信号交差点を通過できる可能性を高めることができる。
【0080】
図7Aにおいては、車線L1,L2,L3を有する道路R1上を、通信可能車両100h,100i,100j、通信不可能車両200c,200dが走行している例が示されている。ここでは、通信可能車両100h,100i,100jが同一グループ、通信不可能車両200c,200dが同一グループに分類されている状態が想定されている。さらに、通信不可能車両200dが仮制御対象車両となっており、通信可能車両100h,100iが追従車両、通信可能車両100jが制御対象車両となっている状態が想定されている。この例において通信不可能車両200cが処理対象の車両である場合を想定する。この場合、通信不可能車両200cは、先頭車両ではなく、同一グループに制御対象車両は存在せず、前方のグループの最後尾が通信可能車両100hであるため、当該通信可能車両100hが、処理対象の車両が属するグループの制御対象車両となる。このような分類と、制御が行われると、通信可能車両100hは、やがて、元のグループを離脱し、処理対象の車両が属するグループに近づき、先頭車両となる可能性が高くなる。また、通信可能車両100hにおいては、停車せずに信号交差点を通過可能な車速が制御目標となっているため、通信可能車両100hとそれに追従する追従車両が停車せずに信号交差点を通過可能である可能性が高くなる。
【0081】
一方、ステップS190において、前方のグループの最後尾が通信可能であると判定されない場合、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、処理対象の車両が通信可能であるか否かを判定する(ステップS205)。すなわち、制御部20は、車両情報30bを参照し、処理対象の車両の識別情報が通信可能車両100の識別情報である場合、処理対象の車両が通信可能車両100であると判定する。ステップS205において、処理対象の車両が通信可能であると判定されない場合、制御部20は、ステップS200において、処理対象の車両を追従車両に設定する。
【0082】
一方、ステップS205において、処理対象の車両が通信可能であると判定された場合、制御部20は、処理対象の車両を制御対象車両に設定する(ステップS210)。すなわち、処理対象の車両と同一グループに、まだ制御対象車両が存在せず、前方のグループの最後尾が通信不可能である場合、処理対象の車両が先頭車両でなくても、通信可能車両100であれば、制御部20は、処理対象の車両を制御対象車両とする。以上の処理は、処理対象の車両が先頭車両ではない状況下で実行されるが、この状況は、処理対象の車両が属するグループを第1のグループと見なしたとき、第1のグループに属する車両の先頭車両が通信不可能車両ある場合や、第1のグループにおいて制御対象車両が設定されていない場合、に発生する。
【0083】
いずれにしても、制御対象車両とされた処理対象の車両は、同一グループ内で先頭車両ではないため、やがて、先頭車両となり得るような制御目標が与えられる。具体的には、制御部20は、制御目標送信部21dの機能により、通信部40を介して、第1のグループに属する車両の中の最も速い車速であり、かつ、制限車速以下の車速を制御目標とするための目標特定情報を制御対象車両に対して送信する。具体的には、制御部20は、地図情報30aを参照し、処理対象の車両が走行している道路を特定し、当該道路の制限車速を取得する。
【0084】
本実施形態においては、処理対象の車両が走行している道路区間を走行している全ての車両は当該道路区間の制限車速以下で走行していると考えられている。このため、当該道路区間の制限車速は、当該道路区間上で可能な車速の中で最も速く、処理対象の車両が属するグループ内の車速で最も速いと考えられる。制御目標は制限車速以下の車速であってもよいが、本実施形態においては、処理対象の車両が属するグループ内の車速で最も速いと考えられるため、制限車速が制御目標となる。むろん、この制御目標は一例であり、例えば、制限車速より小さいが、処理対象が属する第1のグループの車両の中で最も速い車速が、制御目標となってもよい。
【0085】
制御目標の車速としての制限車速が特定されると、制御部20は、制御対象車両が向かっている信号機の信号機情報30cと、当該制限車速と、を目標特定情報として、制御対象車両である通信可能車両100に送信する。この場合、車両制御ECU110は、制限車速で走行するように自動運転ECU130に指示する。但し、制御対象車両である通信可能車両100が同一グループ内の先頭車両になった場合には、通信可能車両100が停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過できる車速で走行するように自動運転ECU130に指示してもよい。当該車速は、上述の図6で例示した手法と同様の手法で算出可能である。また、制御対象車両が先頭車両になった後に、図3図4に示す処理が繰り返されると、当該車両はステップS165の対象となり、通信可能車両100が停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過できる車速で走行するように制御される。
【0086】
以上の処理によれば、制御対象車両は同一グループ内で最も速い車速で走行することになる。従って、制御対象車両において必要に応じて車線変更等を実行して前方の車両を追い越すように制御することで、制御対象車両がグループ内の先頭車両になる可能性を高めることができる。また、制御対象車両が先頭になると、停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過できる車速で走行するように制御される。従って、当該車両とその後に続く追従車両とが、停車することなく信号交差点を通過できる可能性を高めることができる。
【0087】
図7Bにおいては、車線L1,L2,L3を有する道路R1上を、通信可能車両100k,100m,100n、通信不可能車両200e,200fが走行している例が示されている。ここでは、通信可能車両100m,100nおよび通信不可能車両200fが同一グループ、通信可能車両100kおよび通信不可能車両200eが同一グループに分類されている状態が想定されている。さらに、通信不可能車両200eが仮制御対象車両となっており、通信可能車両100m,通信不可能車両200fが追従車両、通信可能車両100nが制御対象車両となっている状態が想定されている。この例において通信可能車両100kが処理対象の車両である場合を想定する。この場合、通信可能車両100kは、先頭車両ではなく、同一グループに制御対象車両は存在せず、前方のグループの最後尾が通信不可能車両200fであるため、処理対象の車両は先頭車両ではないが、処理対象の車両が属するグループの制御対象車両となる。このような分類と、制御が行われると、通信可能車両100kは、やがて、徐々にグループの前方に移動し、先頭車両となる可能性が高くなる。この後、通信可能車両100kにおいては、停車せずに信号交差点を通過可能な車速が制御目標となるため、通信可能車両100kとそれに追従する追従車両が停車せずに信号交差点を通過可能である可能性が高くなる。
【0088】
以上のステップS200またはS210によって、先頭車両ではない処理対象の車両が制御対象車両または追従車両に設定されると、制御部20は、車両種別設定部21cの機能により、処理対象の車両が、先頭車両と同一期間に信号交差点を通過するか否か判定する(ステップS215)。具体的には、制御部20は、処理対象の車両が停車することなく通過可能期間に信号交差点を通過できる車速を特定する。当該車速は、上述の図6で例示した手法と同様の手法で算出可能である。さらに、制御部20は、処理対象の車両の制御目標の車速に最も近い車速で信号交差点を通過可能な通過可能期間を特定する。
【0089】
そして、制御部20は、特定された通過可能期間と、ステップS175で特定された通過可能期間、すなわち、処理対象の車両と同一グループに属する先頭車両が信号交差点を通過する通過可能期間と、を比較する。両期間が同一である場合、制御部20は、処理対象の車両が、先頭車両と同一期間に信号交差点を通過すると判定する。
【0090】
ステップS215において、処理対象の車両が、先頭車両と同一期間に信号交差点を通過すると判定された場合、制御部20は、ステップS225以降の処理を続ける。一方、ステップS215において、処理対象の車両が、先頭車両と同一期間に信号交差点を通過すると判定されない場合、制御部20は、処理対象の車両を再グルーピング対象に設定する(ステップS220)。ステップS215において、処理対象の車両が、先頭車両と同一期間に信号交差点を通過すると判定されない場合、制御部20は、先頭車両に追従する車両の数が過多であるとみなす。そして、制御部20は、処理対象の車両を再グルーピング対象とし、先頭車両が属するグループから処理対象の車両が離脱し得るように設定する。
【0091】
ステップS175、またはステップS220が実行されるか、または、ステップS215において処理対象の車両が、先頭車両と同一期間に信号交差点を通過すると判定された場合、制御部20は、ステップS100でナンバリングされた車両の全てがグルーピングされたか否か判定する(ステップS225)。なお、再グルーピング対象が存在する場合、ステップS225において、車両の全てがグルーピングされたとは判定されない。ステップS225において、車両の全てがグルーピングされたと判定されない場合、制御部20は、ステップS105以降の処理を繰り返す。ステップS225において、車両の全てがグルーピングされたと判定された場合、制御部20は、車両制御処理を終了する。
(3)他の実施形態:
【0092】
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば上述の実施形態を構成する各システムは、機能を共有したより少ない装置で構成されても良い。このような例としては、図1図2に示す少なくとも1台のシステムが、他の1台以上のシステムと少なくとも一部の機能を共有する構成が挙げられる。例えば、車両制御システム10が通信可能車両100と一体であっても良いし、車両制御システム10の少なくとも一部の機能が通信可能車両100で実施されてもよい。また、通信可能車両100の少なくとも一部の機能が車両制御システム10で実施されてもよい。
【0093】
さらに、車両制御ECU110,210や自動運転ECU130,230等は、車両で利用されるシステム、例えば、ナビゲーションシステムの一部であっても良い。また、車両制御システム10を構成する各部(車両情報取得部21a、グルーピング部21b、車両種別設定部21c、制御目標送信部21d)の少なくとも一部が複数の装置に分かれて存在してもよい。また、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。例えば、ステップS190,S195が省略され、代わりにステップS205,S210が実行される構成や、ステップS205,S210が省略される構成が採用されてもよい。また、ステップS190およびS195と、ステップS205およびS210の処理順序が逆であり、ステップS180の判定後にステップS205の判定が行われる構成等であっても良い。
【0094】
車両情報取得部は、自動追従走行を行っている車両の時系列の位置を含む車両情報を取得することができればよい。すなわち、車両情報取得部は、道路上の車両をグルーピングするための情報を取得することができればよい。自動追従走行は、各種の制御態様であって良い。従って、上述の実施形態のように、前方の車両との車間距離が一定の範囲となるように車速を調整する制御以外にも、種々の制御が行われてよい。例えば、一定車速で走行するクルーズコントロールとともに車間距離が一定以下にならないようにする制御が行われてもよい。
【0095】
車両の時系列の位置は、信号交差点と車両との位置関係や信号交差点に車両が到達するタイミング等の各種情報を取得するために利用可能な情報であれば良く、時刻と道路上の車両の位置とを対応付けた情報である。車両情報は、車両の時系列の位置を直接的、または、間接的に示す情報であれば良く、車速や加速度等の他の情報が含まれても良い。また、車速や加速度等の情報は、時系列の位置に基づいて取得されても良い。
【0096】
目標特定情報を他の装置から取得不可能な車両についての車両情報は、種々の手法で取得されて良く、上述の実施形態のように、目標特定情報を他の装置から取得可能な車両で検出された情報が送信される構成以外の手法が用いられても良い。例えば、道路周辺の信号機等の装置に設置されたセンサによって車両の位置等が検出され、検出結果が車両制御システムに送信されても良い。
【0097】
グルーピング部は、車両情報に基づいて、同一道路上で同一方向に走行し、同一の信号交差点に向けて走行している複数の車両であって、近接しているか否かの判定条件を充足する複数の車両を、同一のグループに分類することができればよい。すなわち、グルーピング部は、道路上で隊列を構成する複数の車両を同一のグループに分類することができればよい。
【0098】
同一道路上で同一方向に走行し、同一の信号交差点に向けて走行している車両は、種々の手法で特定されて良い。例えば、同一のリンク(道路区間)上で進行方向が同一である車両は、同一道路上で同一方向に走行し、同一の交差点に向けて走行していると見なされても良い。当該交差点が信号交差点であれば、同一道路上で同一方向に走行し、同一の信号交差点に向けて走行していることになる。同一道路は、既定の識別情報に基づいて同一であると識別される道路であり、典型的には、名称や道路番号等で定義されるが、道路が延びる方向(道なり)等で定義されても良い。同一方向は、道路上での進行方向が同一であるか否かに基づいて特定されれば良い。従って、道路上で特定の進行方向であるのか逆方向であるのかに基づいて特定されれば良く、進行方向の角度が厳密に一致していなくてもよい。
【0099】
判定条件は、車両が近接しているか否かを判定するための条件であれば良い。すなわち、同一のグループに分類されるか否かが、車両の近接度合いで特定されれば良い。上述の実施形態においては、判定対象車両と他の車両との車間距離が1秒以内である場合に判定対象車両が他の車両と同一グループに分類され、判定対象車両と他の車両との車間距離が3秒以上である場合に判定対象車両が他の車両のグループから除外される判定条件が採用されていた。
【0100】
しかし、判定条件は、このような構成に限定されない。例えば、車間距離は、車両が現在速度で走行した場合の時間長で定義されず、車両間の距離で定義されても良い。また、最寄りの車両との車間距離以外の指標で定義されても良い。例えば、制御対象車両などの特定の車両からの距離が既定距離以内の車両が、特定の車両に近接していると見なされるような判定条件であっても良い。また、車両が存在する道路区間の長さ等の車両環境や、車両の車速、加速度等の車両状況に応じて、判定条件が変動しても良い。
【0101】
車両種別設定部は、同一のグループに属する車両のうち、制御目標を特定するための目標特定情報を他の装置から取得可能な車両を制御対象車両とし、目標特定情報を他の装置から取得不可能な車両を含む他の車両を追従車両とすることができればよい。すなわち、車両種別設定部は、同一のグループに属する車両のうち、少なくとも一台を制御対象車両とし、他を追従車両とする。但し、制御対象車両は、車両制御システムから送信される目標特定情報を受信できる必要があるため、目標特定情報を受信可能な車両の中から制御対象車両が選択される。
【0102】
目標特定情報は、制御目標を特定するための情報であれば良く、制御目標自体であっても良いし、制御目標を算出するための情報であっても良い。上述の実施形態のように、信号機の周期が送信される態様は、後者に該当する。目標特定情報は、車両以外の装置から取得されれば良い。すなわち、目標特定情報は、制御目標送信部によって送信され、制御対象車両によって取得されるが、制御目標は、車両制御システムから制御対象車両に対して直接的に送信されても良いし、間接的に送信されても良い。例えば、車両制御システムから信号機や他の道路周辺の装置に目標特定情報が送信され、これらの装置から、制御対象車両に対して目標特定情報が送信されても良い。
【0103】
制御目標送信部は、制御対象車両が、停車せずに信号交差点の信号機が示す通過可能期間に信号交差点を通過可能になる制御目標を特定するための目標特定情報を、制御対象車両に対して、送信することができればよい。すなわち、制御目標送信部は、制御対象車両に対して目標特定情報を送信することにより、制御対象車両において制御目標が設定され、信号交差点までの道路上で停止せずに信号交差点を通過可能になれば良い。
【0104】
制御車両は信号交差点までの道路上で停車せずに信号交差点を通過することができればよく、減速や加速が行われてもよい。通過可能期間は、信号交差点に進入し、退出可能な期間であれば良く、典型的には、信号機の現示が青である期間が通過可能期間に相当するが、他の現示、例えば、矢印信号によって信号交差点が通過可能であっても良い。
【0105】
制御対象車両が信号交差点を通過する際の通過可能期間と同一の通過可能期間において信号交差点を通過可能な車両を制御対象車両が属するグループに分類するための構成は、図6に示すような演算以外にも種々の構成を採用可能である。例えば、同一グループに分類可能な車両の数に上限が設けられていてもよい。すなわち、制御対象車両が信号交差点を通過する際の通過可能期間と同一の通過可能期間において信号交差点を通過可能な車両の上限数が予め特定され、当該上限数を超える車両が同一グループに分類されないように構成されても良い。また、同一グループに分類された車両の隊列の長さに上限が設けられていてもよい。すなわち、制御対象車両が信号交差点を通過する際の通過可能期間と同一の通過可能期間において信号交差点を通過可能な車両の隊列の長さについて、上限の長さが予め特定され、当該長さを超える場合には、他の車両が同一グループに分類されないように構成されても良い。
【0106】
さらに、本発明は、プログラムや方法としても適用可能である。また、以上のようなシステム、プログラム、方法は、単独の装置として実現される場合もあれば、共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のようなシステムで実現される方法、プログラムを提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0107】
10…車両制御システム、20…制御部、21…車両制御プログラム、21a…車両情報取得部、21b…グルーピング部、21c…車両種別設定部、21d…制御目標送信部、30…記憶媒体、30a…地図情報、30b…車両情報、30c…信号機情報、40…通信部、100…通信可能車両、110…車両制御ECU、120…GNSS受信部、121…車速センサ、122…ジャイロセンサ、123…周辺車両センサ、130…自動運転ECU、140…通信部、200…通信不可能車両、210…車両制御ECU、220…GNSS受信部、221…車速センサ、222…ジャイロセンサ、223…周辺車両センサ、230…自動運転ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7