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2023-180643逆合成開口レーダ画像処理装置、逆合成開口レーダ画像処理方法および逆合成開口レーダ画像処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180643
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】逆合成開口レーダ画像処理装置、逆合成開口レーダ画像処理方法および逆合成開口レーダ画像処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/90 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G01S13/90 164
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094112
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩壁 冬樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124501
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 誠人
(72)【発明者】
【氏名】小山 紗桜
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AE03
5J070AF01
5J070AH25
5J070AH35
5J070AK22
5J070AK39
5J070BE02
(57)【要約】
【課題】簡易な手法によって、高分解能のISAR画像を得る。
【解決手段】画像処理装置10は、移動する対象物体からの反射電磁波に基づく受信信号を、PRFよりも帯域幅が狭くなるように分割する分割手段11と、対象物体の軌道情報に基づいて、分割によって得られた複数の区間のそれぞれごとにドップラー周波数を推定する推定手段12と、複数の区間の信号のそれぞれを、推定されたドップラー周波数に周波数シフトするシフト手段13と、周波数シフトされた複数の区間の信号を合成する合成手段14とを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する対象物体からの反射電磁波に基づく受信信号を、PRF(Pulse Repetition Frequency)よりも帯域幅が狭くなるように分割する分割手段と、
前記対象物体の軌道情報に基づいて、分割によって得られた複数の区間のそれぞれごとにドップラー周波数を推定する推定手段と、
前記複数の区間の信号のそれぞれを、推定されたドップラー周波数に周波数シフトするシフト手段と、
周波数シフトされた前記複数の区間の信号を合成する合成手段と
を備えた逆合成開口レーダ画像処理装置。
【請求項2】
前記シフト手段は、時間領域において前記複数の区間のそれぞれごとに推定されたドップラー周波数に位相を回転させる
請求項1記載の逆合成開口レーダ画像処理装置。
【請求項3】
前記シフト手段は、周波数領域において前記複数の区間のそれぞれごとに推定されたドップラー周波数に、前記複数の区間の信号の周波数スペクトルをシフトする
請求項1記載の逆合成開口レーダ画像処理装置。
【請求項4】
前記分割手段は、隣接する二つの区間が重なり部分を有するように分割を行い、
前記合成手段は、隣接する二つの区間の信号を滑らかに繋げる
請求項1記載の逆合成開口レーダ画像処理装置。
【請求項5】
軌道情報には、少なくとも、前記対象物体の軌道における各時刻と、各時刻における前記対象物体の視線速度とが含まれる
請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の逆合成開口レーダ画像処理装置。
【請求項6】
移動する対象物体からの反射電磁波に基づく受信信号を、PRF(Pulse Repetition Frequency)よりも帯域幅が狭くなるように分割し、
前記対象物体の軌道情報に基づいて、分割によって得られた複数の区間のそれぞれごとにドップラー周波数を推定し、
前記複数の区間の信号のそれぞれを、推定されたドップラー周波数に周波数シフトし、
周波数シフトされた前記複数の区間の信号を合成する
逆合成開口レーダ画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
移動する対象物体からの反射電磁波に基づく受信信号を、PRF(Pulse Repetition Frequency)よりも帯域幅が狭くなるように分割する処理と、
前記対象物体の軌道情報に基づいて、分割によって得られた複数の区間のそれぞれごとにドップラー周波数を推定する処理と、
前記複数の区間の信号のそれぞれを、推定されたドップラー周波数に周波数シフトする処理と、
周波数シフトされた前記複数の区間の信号を合成する処理と
を実行させるための逆合成開口レーダ画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆合成開口レーダ画像処理装置、逆合成開口レーダ画像処理方法および逆合成開口レーダ画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ISAR(Inverse Synthetic Aperture Radar)は、対象物体が移動することを利用して画像化を行う手法である。ISARを使用する場合に、レンジ圧縮とアジマス圧縮とを行うことによって、高分解能(高解像度)の画像(ISAR画像)を得ることができる。
【0003】
アジマス圧縮が実行されると、受信信号のドップラー帯域幅が広いほど画像の分解能は高くなる。しかし、ナイキスト条件によって、ドップラー帯域幅は、PRF(Pulse Repetition Frequency:パルス繰り返し周波数)以下に制限される。
【0004】
PRFが低い場合には、高分解能の画像を得ることは困難である。例えば、ISARの使用が前提とされていないレーダではPRFが低いことがある。そのようなレーダが用いられる場合には、高分解能の画像を得ることは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/195297号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高分解能の画像を得るための手法として、スポットライト処理がある。PRFを超える帯域幅を使用するスポットライト処理によって、アジマス方向の分解能を上げることができる。すなわち、スポットライト処理によるアジマス圧縮が実行されると、高分解能のISAR画像を得ることできる。しかし、受信信号の中に複数点からの反射が含まれるので、受信信号の各時刻には複数のドップラー周波数が含まれる。スポットライト処理は、複数のドップラー周波数を同時に処理する必要があるので、複雑である。
【0007】
本発明は、簡易な手法によって、高分解能のISAR画像を得ることを目的とする。
【0008】
なお、特許文献1には、SAR画像再生アルゴリズムの一つであるサブアパーチャ法が開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による逆合成開口レーダ画像処理装置は、移動する対象物体からの反射電磁波に基づく受信信号を、PRFよりも帯域幅が狭くなるように分割する分割手段と、対象物体の軌道情報に基づいて、分割によって得られた複数の区間のそれぞれごとにドップラー周波数を推定する推定手段と、複数の区間の信号のそれぞれを、推定されたドップラー周波数に周波数シフトするシフト手段と、周波数シフトされた複数の区間の信号を合成する合成手段とを含む。
【0010】
本発明による逆合成開口レーダ画像処理方法は、移動する対象物体からの反射電磁波に基づく受信信号を、PRFよりも帯域幅が狭くなるように分割し、対象物体の軌道情報に基づいて、分割によって得られた複数の区間のそれぞれごとにドップラー周波数を推定し、複数の区間の信号のそれぞれを、推定されたドップラー周波数に周波数シフトし、周波数シフトされた複数の区間の信号を合成する。
【0011】
本発明による逆合成開口レーダ画像処理プログラムは、コンピュータに、移動する対象物体からの反射電磁波に基づく受信信号を、PRFよりも帯域幅が狭くなるように分割する処理と、対象物体の軌道情報に基づいて、分割によって得られた複数の区間のそれぞれごとにドップラー周波数を推定する処理と、複数の区間の信号のそれぞれを、推定されたドップラー周波数に周波数シフトする処理と、周波数シフトされた複数の区間の信号を合成する処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な手法によって、高分解能のISAR画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】画像処理装置が実行する処理を説明するための説明図である。
図2】第1の実施形態の画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態の画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
図4】第2の実施形態の画像処理装置の構成例を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態の画像処理装置の動作を示すフローチャートである。
図6】CPUを有するコンピュータの一例を示すブロック図である。
図7】画像処理装置の主要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0015】
宇宙空間の安定的利用のために、SSA(Space Situational Awareness:宇宙状況監視)が重要視されている。SSAの主な目的は、人工衛星やスペースデブリ等の宇宙物体を把握することである。一般に、SSAでは、宇宙物体の軌道情報は、あらかじめ得られている。すなわち、宇宙物体の軌道情報は既知である。下記の実施形態では、既知の軌道情報を利用して、宇宙物体が画像化される。なお、軌道情報には、少なくとも、軌道における各時刻と、各時刻における宇宙物体の視線方向速度(視線速度)とが含まれる。
【0016】
SSAにおけるISARの使用目的の一つは、軌道情報が得られている宇宙物体の画像化である。下記の実施形態では、軌道情報を用いるISARの画像処理装置(以下、単に、画像処理装置という。)およびISAR画像処理方法(以下、単に、画像処理方法という。)を例にする。したがって、以下の実施形態では、把握の対象である対象物体は、宇宙物体である。
【0017】
具体的には、画像処理装置は、対象物体の受信信号について、各時刻のドップラー帯域の広がりが狭いと仮定する。また、画像処理装置は、対象物体の軌道情報から、受信信号の各時刻のドップラー周波数を推定する。そして、画像処理装置は、アジマス圧縮の際に受信信号を時間分割し、分割区間(以下、サブアパーチャという。)ごとに周波数シフトを行って信号を合成する。すなわち、画像処理装置は、周波数シフトを行って、合成開口処理を行う。
【0018】
図1を参照して、画像処理装置が実行する処理を説明する。移動する対象物体が一つの宇宙物体である場合には、対象物体の各時刻および各位置からの反射波(反射電磁波)のドップラー周波数の差異が小さいので、受信信号の各時刻のドップラー帯域の広がりが狭いと仮定できる。各時刻のドップラー帯域の広がりが狭いので、画像処理装置は、対象物体の軌道情報から、受信信号の各時刻におけるドップラー周波数を推定することができる。そして、画像処理装置は、アジマス圧縮を行うときに、受信信号をPRFよりも帯域幅が狭くなるように時間分割する。画像処理装置は、各々のサブアパーチャの受信信号を、推定したドップラー周波数に周波数シフトする。
【0019】
そして、画像処理装置は、周波数シフトされた各々のサブアパーチャの受信信号を合成することによって、PRFよりも広いドップラー帯域幅を得る。
【0020】
実施形態1.
図1は、第1の実施形態の画像処理装置の構成例を示すブロック図である。図1に示す画像処理装置100は、レンジ圧縮部101、サブアパーチャ分割部102、フーリエ変換部103、ゼロ埋め部104、逆フーリエ変換部105、ドップラー周波数算出部106、位相回転部107、オーバーラップ接続部108、サブアパーチャ合成部109、フーリエ変換部110、およびアジマス圧縮部111を備える。
【0021】
レンジ圧縮部101は、時間領域の受信信号のレンジ圧縮を行う。サブアパーチャ分割部102は、受信信号を時間方向で複数のサブアパーチャに分割する。フーリエ変換部103は、サブアパーチャごとに、受信信号をフーリエ変換する。ゼロ埋め部104は、各サブアパーチャの外側の帯域を0で埋めて帯域を広げる。逆フーリエ変換部105は、サブアパーチャごとに、周波数領域の信号を逆フーリエ変換する。
【0022】
ドップラー周波数算出部106は、対象物体の軌道情報に基づいて、サブアパーチャごとのドップラー周波数を推定する。具体的には、ドップラー周波数算出部106は、ドップラー周波数を算出する処理を行う。位相回転部107は、受信信号(位相)をドップラー周波数に回転させる処理を行う。
【0023】
オーバーラップ接続部108は、サブアパーチャの隣接するサブアパーチャとのオーバーラップ部分を繋げる。サブアパーチャ合成部109は、全てのサブアパーチャをまとめて一つの受信信号に戻す。フーリエ変換部110は、受信信号をフーリエ変換して、周波数領域の信号に戻す。アジマス圧縮部111は、周波数領域の受信信号にアジマス圧縮を施して、ISAR画像を得る。
【0024】
なお、例えば、電磁波を照射するレーダおよび画像処理装置100は、地上に設置されている。
【0025】
次に、図3のフローチャートを参照して、第1の実施形態の画像処理装置100の動作を説明する。
【0026】
画像処理装置100は、移動する対象物体(本実施形態では、宇宙物体)から反射された反射波に基づく受信信号を取得する。受信信号は、記憶装置(図2において図示せず)にあらかじめ格納されていてもよい。レンジ圧縮部101は、受信信号のレンジ圧縮を行う(ステップS101)。
【0027】
ステップS102で、サブアパーチャ分割部102は、周波数帯域がPRF帯域幅よりも狭くなるように、時間領域において受信信号を複数のサブアパーチャに分割する(図1参照)。サブアパーチャ分割部102は、隣接する二つのサブアパーチャが重なり部分を有するように分割する。なお、図1では、各サブアパーチャは重なり部分を有していないように示されているが、実際には、各サブアパーチャは重なり部分を有している。フーリエ変換部103は、サブアパーチャごとに、受信信号をフーリエ変換して周波数領域の信号にする(ステップS103)。
【0028】
ステップS104で、ゼロ埋め部104は、各サブアパーチャの外側の帯域を0で埋めて、全体がドップラー帯域になるように帯域を広げる(図1参照)。逆フーリエ変換部105は、サブアパーチャごとに、周波数領域の信号を逆フーリエ変換して時間領域の信号にする(ステップS105)。
【0029】
ドップラー周波数算出部106は、対象物体の軌道情報を入力し、軌道情報における時刻と視線方向速度の情報とを用いて、サブアパーチャごとのドップラー周波数を求める(ステップS106)。なお、軌道情報は、あらかじめ記憶装置(図2において図示せず)に格納されていてもよい。
【0030】
位相回転部107は、時間領域において、各サブアパーチャの受信信号(位相)を、ドップラー周波数算出部106が求めたサブアパーチャごとのドップラー周波数に回転させる処理を行う(ステップS107)。ステップS107で、位相回転部107は、例えば、下記の(1)式を用いて位相回転後の信号を算出する。
【0031】
【数1】
【0032】
(1)式において、An(t)は、時刻tにおけるn番目のサブアパーチャの振幅を示す。Bn(t)は、時刻tにおけるn番目のサブアパーチャの位相を示す。B0(0)は、ドップラー0を含むサブアパーチャの時刻t = 0における位相を示す。kは、アジマス方向のドップラー周波数変化率を示す。
【0033】
オーバーラップ接続部108は、サブアパーチャの隣接するサブアパーチャとのオーバーラップ部分を滑らかに繋げる(ステップS108)。ステップS108で、オーバーラップ接続部108は、例えば、以下のように、窓関数(三角窓)を用いてオーバーラップ部分を繋げる。
【0034】
信号のオーバーラップ部分は加算すると振幅が増加してしまうため、そのまま信号を繋げることはできない。そこで、オーバーラップ接続部108は、各信号のオーバーラップ部分を繋げるときに振幅の値が一定となるようにする。例えば、オーバーラップ接続部108は、オーバーラップ部分の一方の信号(サブアパーチャの時刻が早い方の信号:Aとする。)に、下記の(2)式で表されるような三角窓の振幅が減衰する部分((2)式における0<t<T の部分)を掛けて、Aの振幅を減衰させる。振幅減衰後の信号を、A'とする。また、オーバーラップ接続部108は、オーバーラップ部分の他方の信号(サブアパーチャの時刻が遅い方の信号:Bとする。)に、三角窓の振幅が増幅する部分((2)式における-T<t<0 の部分)を掛けて、Bの振幅を増幅させる。振幅増幅後の信号を、B'とする。オーバーラップ接続部108は、A'とB'とを足し合わせることによって、2つの信号を滑らかに繋ぐことができる。
【0035】
【数2】
【0036】
なお、(2)式において、Amp(t)は、時刻tにおける振幅を示す。時間tは、-T<t<T である(T:オーバーラップ部分の時間)である。
【0037】
サブアパーチャ合成部109は、全てのサブアパーチャをまとめて一つの受信信号に戻す(ステップS109)。フーリエ変換部110は、受信信号をフーリエ変換して、周波数領域の信号に戻す(ステップS110)。アジマス圧縮部111は、周波数領域の受信信号にアジマス圧縮を施して、ISAR画像を得る(ステップS111)。
【0038】
以上に説明したように、対象物体が一つの宇宙物体である場合には、対象物体の各時刻および各位置からの反射波のドップラー周波数の差異が小さいので、受信信号の各時刻のドップラー帯域の広がりが狭いと仮定できる。したがって、画像処理装置100は、対象物体の軌道情報から、受信信号の各時刻におけるドップラー周波数を推定できる。そして、画像処理装置100は、アジマス圧縮を行うときに、PRFよりも帯域幅が狭くなるように受信信号を時間分割する。さらに、画像処理装置100は、各サブアパーチャの信号を、サブアパーチャごとに推定したドップラー周波数に周波数シフトをした後(具体的には、ステップS107の位相回転処理を実行した後)、信号を合成することによって、PRFを超えるドップラー帯域幅を得る。
【0039】
本実施形態の画像処理装置100を使用する場合には、PRFが低いレーダが用いられるときでも、ハードウェアを改修することなく、ソフトウェアの工夫のみで高分解能のISAR画像を得ることができる。また、軌道情報を用いることによって、スポットライト処理よりも簡易な処理方法で、高分解能のISAR画像を得ることができる。
【0040】
その結果、例えば、本実施形態の画像処理装置100がSSAに適用されるときに、高分解能の宇宙物体の画像を、簡易な処理方法によって得られるようになる。
【0041】
実施形態2.
図4は、第2の実施形態の画像処理装置の構成例を示すブロック図である。図4に示す画像処理装置200は、レンジ圧縮部101、サブアパーチャ分割部102、フーリエ変換部103、ゼロ埋め部104、ドップラー周波数算出部106、周波数シフト処理部207、オーバーラップ接続部108、サブアパーチャ合成部109、およびアジマス圧縮部111を備える。
【0042】
レンジ圧縮部101、サブアパーチャ分割部102、フーリエ変換部103、ゼロ埋め部104、ドップラー周波数算出部106、オーバーラップ接続部108、サブアパーチャ合成部109、およびアジマス圧縮部111の構成および機能は、第1の実施形態におけるそれらの構成および機能と同じである。
【0043】
第1の実施形態では、画像処理装置100は、時間領域においてシフト処理(ステップS107の位相回転処理)を実行したが、第2の実施形態では、画像処理装置200は、周波数領域においてシフト処理を実行する。よって、画像処理装置200には、第1の実施形態における位相回転部107に代えて、周波数シフト処理部207が設けられている。また、画像処理装置200には、逆フーリエ変換部105、およびフーリエ変換部110は設けられていない。
【0044】
周波数シフト処理部207は、周波数領域において、サブアパーチャごとに求めたドップラー周波数に、各サブアパーチャの周波数スペクトルをシフトする処理を行う。
【0045】
次に、図5のフローチャートを参照して、第2の実施形態の画像処理装置200の動作を説明する。
【0046】
第1の実施形態の画像処理装置100と同様に、画像処理装置200は、対象物体(本実施形態では、宇宙物体)から反射された反射波に基づく受信信号を取得する。
【0047】
第1の実施形態と同様に、レンジ圧縮部101は、受信信号のレンジ圧縮を行う(ステップS101)。第1の実施形態と同様に、サブアパーチャ分割部102は、時間領域において受信信号を複数のサブアパーチャに分割する(ステップS102)。第1の実施形態と同様に、フーリエ変換部103は、サブアパーチャごとに、受信信号をフーリエ変換して周波数領域の信号にする(ステップS103)。
【0048】
第1の実施形態と同様に、ゼロ埋め部104は、各サブアパーチャの外側の帯域を0で埋めて、全体がドップラー帯域になるように帯域を広げる(ステップS104)。なお、画像処理装置200は、第1の実施形態におけるステップS105の処理を実行しない。
【0049】
周波数シフト処理部207は、周波数領域において、サブアパーチャごとに求めたドップラー周波数に、各サブアパーチャの周波数スペクトルをシフトする(ステップS207)。
【0050】
ステップS207で、周波数シフト処理部207は、例えば、下記の(3)式を用いて周波数スペクトルをシフトする。
【0051】
【数3】
【0052】
(3)式において、上付きのチルダ(~)付きのAn(f - Δfn)は、周波数シフト後のn番目のサブアパーチャの振幅を示す。上付きのチルダ(~)付きのBn(f - Δfn)は、周波数シフト後のn番目のサブアパーチャの位相を示す。上付きのチルダ(~)付きのB0(0)は、ドップラー0を含むサブアパーチャのドップラー周波数f = 0における位相を示す。Δfnは、n番目のサブアパーチャのドップラーシフト量を示す。kは、アジマス方向のドップラー周波数変化率を示す。
【0053】
第1の実施形態と同様に、オーバーラップ接続部108は、サブアパーチャの隣接するサブアパーチャとのオーバーラップ部分を滑らかに繋げる(ステップS108)。第1の実施形態と同様に、サブアパーチャ合成部109は、全てのサブアパーチャをまとめて一つの受信信号に戻す(ステップS109)。第1の実施形態と同様に、アジマス圧縮部111は、周波数領域の受信信号にアジマス圧縮を施して、ISAR画像を得る(ステップS111)
【0054】
なお、画像処理装置200は、第1の実施形態におけるステップS105の処理を実行しない。
【0055】
対象物体が一つの宇宙物体である場合には、対象物体の各時刻および各位置からの反射波のドップラー周波数の差異が小さいので、受信信号の各時刻のドップラー帯域の広がりが狭いと仮定できる。したがって、画像処理装置200は、対象物体の軌道情報から、受信信号の各時刻におけるドップラー周波数を推定できる。そして、画像処理装置200は、アジマス圧縮を行うときに、PRFよりも帯域幅が狭くなるように受信信号を時間分割する。さらに、画像処理装置200は、各サブアパーチャの信号を、サブアパーチャごとに推定したドップラー周波数に周波数シフトをした後、信号を合成することによって、PRFを超えるドップラー帯域幅を得る。
【0056】
本実施形態の画像処理装置200を使用する場合にも、PRFが低いレーダが用いられるときでも、ハードウェアを改修することなく、ソフトウェアの工夫のみで高分解能のISAR画像を得ることができる。また、軌道情報を用いることによって、スポットライト処理よりも簡易な処理方法で、高分解能のISAR画像を得ることができる。
【0057】
その結果、例えば、本実施形態の画像処理装置200がSSAに適用されるときに、高分解能の宇宙物体の画像を、簡易な処理方法によって得られるようになる。
【0058】
上記の実施形態における画像処理装置は、1つのハードウェアで構成可能であるが、1つのソフトウェアでも構成可能である。また、画像処理装置は、複数のハードウェアでも構成可能であり、複数のソフトウェアでも構成可能である。また、画像処理装置における各構成要素のうちの一部をハードウェアで構成し、他部をソフトウェアで構成することもできる。
【0059】
上記の実施形態における各機能(各処理)を、CPU(Central Processing Unit )等のプロセッサやメモリ等を有するコンピュータで実現可能である。例えば、記憶装置(記憶媒体)に上記の実施形態における方法(処理)を実施するためのプログラムを格納し、各機能を、記憶装置に格納されたプログラムをCPUで実行することによって実現してもよい。
【0060】
図6は、CPUを有するコンピュータの一例を示すブロック図である。コンピュータは、画像処理装置100,200に実装される。CPU1000は、記憶装置1001に格納されたプログラムに従って処理を実行することによって、上記の実施形態における各機能を実現する。すなわち、図2図4に示された画像処理装置100,200における、レンジ圧縮部101、サブアパーチャ分割部102、フーリエ変換部103、ゼロ埋め部104、逆フーリエ変換部105、ドップラー周波数算出部106、位相回転部107、オーバーラップ接続部108、サブアパーチャ合成部109、フーリエ変換部110、アジマス圧縮部111、および周波数シフト処理部207の機能を実現する。
【0061】
記憶装置1001は、例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium )である。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium )を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の具体例として、磁気記録媒体(例えば、ハードディスク)、光磁気記録媒体(例えば、光磁気ディスク)、CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory )、CD-R(Compact Disc-Recordable )、CD-R/W(Compact Disc-ReWritable )、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM )、フラッシュROM)がある。
【0062】
また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium )に格納されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体には、例えば、有線通信路または無線通信路を介して、すなわち、電気信号、光信号または電磁波を介して、プログラムが供給される。
【0063】
メモリ1002は、例えばRAM(Random Access Memory)で実現され、CPU1000が処理を実行するときに一時的にデータを格納する記憶手段である。メモリ1002に、記憶装置1001または一時的なコンピュータ可読媒体が保持するプログラムが転送され、CPU1000がメモリ1002内のプログラムに基づいて処理を実行するような形態も想定しうる。
【0064】
図7は、画像処理装置の主要部を示すブロック図である。図7に示す画像処理装置10は、移動する対象物体からの反射電磁波に基づく受信信号を、PRFよりも帯域幅が狭くなるように分割する分割手段11(実施形態では、サブアパーチャ分割部102で実現される。)と、対象物体の軌道情報に基づいて、分割によって得られた複数の区間(例えば、サブアパーチャ)のそれぞれごとにドップラー周波数を推定する推定手段12(実施形態では、ドップラー周波数算出部106で実現される。)と、複数の区間の信号(例えば、サブアパーチャにおける受信信号)のそれぞれを、推定されたドップラー周波数に周波数シフトするシフト手段13(実施形態では、位相回転部107または周波数シフト処理部207で実現される。)と、周波数シフトされた複数の区間の信号を合成する合成手段14(実施形態では、サブアパーチャ合成部109で実現される。)とを備える。
【符号の説明】
【0065】
10,100,200 画像処理装置
11 分割手段
12 推定手段
13 シフト手段
14 合成手段
101 レンジ圧縮部
102 サブアパーチャ分割部
103 フーリエ変換部
104 ゼロ埋め部
105 逆フーリエ変換部
106 ドップラー周波数算出部
107 位相回転部
108 オーバーラップ接続部
109 サブアパーチャ合成部
110 フーリエ変換部
111 アジマス圧縮部
207 周波数シフト処理部
1000 CPU
1001 記憶装置
1002 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7