(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180649
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】元素分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20231214BHJP
H01J 49/10 20060101ALI20231214BHJP
H01J 49/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G01N27/62 D
H01J49/10 500
H01J49/00 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094129
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】堀 貴翔
(72)【発明者】
【氏名】仲 康佑
【テーマコード(参考)】
2G041
【Fターム(参考)】
2G041AA08
2G041CA01
2G041DA14
2G041EA03
2G041EA12
2G041FA16
2G041LA09
2G041MA04
(57)【要約】
【課題】内標準元素を対応付けた検量線を用いる元素分析において、分析対象元素の定量値が適切な値でないことを容易に発見できる技術を提供する。
【解決手段】分析対象元素に複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定する内標準候補元素設定部42と、分析対象元素と複数の内標準候補元素を既知量含む標準試料を測定する標準試料測定部43と、内標準候補元素情報と標準試料の測定結果に基づき分析対象元素毎に各内標準候補元素に対応する検量線を作成する検量線作成部44、内標準候補元素が所定量ずつ添加された分析対象試料を測定する分析対象試料測定部45と、分析対象試料の測定により得られた各分析対象元素の測定強度と複数の内標準候補元素の測定強度及び前記検量線を用いて定量値を算出する定量値算出部46と、内標準候補元素毎に算出された各分析対象元素の定量値を表示する定量値表示部47とを備える元素分析装置1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1乃至複数の分析対象元素の指定、及び該分析対象元素の測定における複数の内標準候補元素の指定を受け付け、該1乃至複数の分析対象元素のそれぞれに前記複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定する内標準候補元素設定部と、
前記1乃至複数の分析対象元素を既知量ずつ含み、該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた前記複数の内標準候補元素をそれぞれ既知量ずつ含む試料であって、分析対象試料の含有量が互いに異なる複数の標準試料を測定する標準試料測定部と、
前記内標準候補元素情報に基づき、前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記複数の標準試料の測定により得られた前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度と当該分析対象元素の測定強度を用い、該複数の内標準候補元素のそれぞれに対応する検量線を作成する検量線作成部と、
前記複数の内標準候補元素が所定量ずつ添加された、前記1乃至複数の分析対象元素を未知量含有する分析対象試料を測定する分析対象試料測定部と、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記分析対象試料の測定により得られた当該分析対象元素の測定強度と前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度、及び前記検量線を用いて前記当該分析対象元素の定量値を算出する定量値算出部と、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された定量値を表示する定量値表示部と
を備える元素分析装置。
【請求項2】
前記内標準候補元素設定部が、分析対象元素毎に、当該分析対象元素に対応付ける複数の内標準候補元素の指定を受け付けて前記内標準候補元素情報を設定する、請求項1に記載の元素分析装置。
【請求項3】
さらに、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記定量値表示部により表示される複数の定量値のうちの1つを選択する入力を受けて、該選択された定量値を分析結果として決定する分析結果決定部
を備える、請求項1又は2に記載の元素分析装置。
【請求項4】
誘導結合プラズマ質量分析装置又は誘導結合プラズマ発光分光分析装置である、請求項1又は2に記載の元素分析装置。
【請求項5】
1乃至複数の分析対象元素のそれぞれに複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定し、
前記1乃至複数の分析対象元素を既知量ずつ含み、該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた前記複数の内標準候補元素をそれぞれ既知量ずつ含む試料であって、分析対象元素の含有量が互いに異なる複数の標準試料を測定し、
前記内標準候補元素情報に基づき、前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記複数の標準試料の測定により得られた前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度と当該分析対象元素の測定強度を用い、該複数の内標準候補元素のそれぞれに対応する検量線を作成し、
前記複数の内標準候補元素を所定量ずつ添加した、前記1乃至複数の分析対象元素を未知量含有する分析対象試料を測定し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記分析対象試料の測定により得られた当該分析対象元素の測定強度と前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度、及び前記検量線を用いて当該分析対象試料の定量値を算出し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された前記定量値を表示し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された前記定量値に基づいて最終定量値を決定する
ものである、元素分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料に含まれる元素を定量する元素分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川や湖沼などで採取された環境水や飲料水など、様々な液体試料に含まれる元素を定量するために誘導結合プラズマ質量分析装置が用いられている。誘導結合プラズマ質量分析装置は、誘導結合プラズマイオン源と質量分析部を備えている。誘導結合プラズマイオン源では、アルゴンガスから誘導結合プラズマを生成し、そのプラズマ中に霧化した液体試料を導入することにより、液体試料から原子イオンを生成する。誘導結合プラズマイオン源で生成された原子イオンは、質量分析部に導入されたあと、質量電荷比に応じて分離され、イオン検出器で検出される。
【0003】
誘導結合プラズマ質量分析では、分析対象元素よりも質量が大きい元素を含んだ液体試料を分析すると、質量分析部において両者のイオンの間に働くクーロン斥力によって分析対象元素のイオンが所定の飛行経路から外れやすくなり、測定強度が低下する。そのため、分析対象元素の含有量(濃度)が同じ液体試料であっても、分析対象元素よりも質量が大きい元素を含む試料と分析対象元素よりも質量が大きい元素を含まない試料では、分析対象元素の測定強度が異なる。誘導結合プラズマ質量分析において分析対象元素を正しく定量するためには、こうした他イオンの影響を排除する必要があり、そのために内標準法と呼ばれる手法が用いられている(例えば特許文献1)。
【0004】
内標準法とは、分析対象元素の測定強度と、該分析対象元素に予め対応付けた内標準元素の測定強度に基づいて分析対象元素を定量する方法である。内標準法では、分析対象試料の測定に先立って、標準試料を用いた測定を行って検量線を作成する。検量線を作成する際には、内標準元素を規定量ずつ含有し分析対象元素を異なる既知量ずつ含有する複数の標準試料を準備し、各標準試料について、内標準元素の測定強度と分析対象元素の測定強度を測定する。誘導結合プラズマ質量分析では、通常、1回の測定で複数種類の分析対象元素を定量するため、それら複数の分析対象元素のそれぞれに内標準元素を対応付けて検量線を作成する。
【0005】
内標準元素には、分析対象試料には含まれず、また質量分析部において他イオンから影響を受ける大きさが分析対象元素と同程度であるものが選択される。上記のように、他イオンから受ける影響の大小は、分析対象元素の質量と他イオンの質量の大小関係に依存するため、一般的に、分析対象元素に近い質量を持つ元素が内標準元素として選択される。分析対象試料の測定時には、該分析対象試料に既知量の内標準元素を添加しておき、内標準元素の強度と分析対象元素の強度を測定する。こうして得られた2つの測定強度の比と内標準元素の添加量、及び検量線に基づいて、分析対象試料に含まれる分析対象元素を定量する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
内標準法では、内標準元素として選択した元素に対して予期しない影響を及ぼすマトリクスや夾雑物が分析対象試料に含まれているなどの理由により、内標準元素の測定強度が異常値になり分析対象元素を正しく定量できないことがある。しかし、熟練者でない者が分析に従事していると、こうした異常に気づかず、誤った定量値を分析結果として採用してしまう場合があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、分析対象元素に内標準元素を対応付けて作成した検量線を用いて分析対象試料に含まれる分析対象元素を定量する元素分析において、分析対象元素の定量値が適切な値でない場合に、それを容易に発見することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために成された本発明に係る元素分析方法は、
1乃至複数の分析対象元素のそれぞれに複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定し、
前記1乃至複数の分析対象元素を既知量ずつ含み、該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた前記複数の内標準候補元素をそれぞれ既知量ずつ含む試料であって、分析対象元素の含有量が互いに異なる複数の標準試料を測定し、
前記内標準候補元素情報に基づき、前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記複数の標準試料の測定により得られた前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度と当該分析対象元素の測定強度を用い、該複数の内標準候補元素のそれぞれに対応する検量線を作成し、
前記複数の内標準候補元素を所定量ずつ添加した、前記1乃至複数の分析対象元素を未知量含有する分析対象試料を測定し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記分析対象試料の測定により得られた当該分析対象元素の測定強度と前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度、及び前記検量線を用いて当該分析対象元素の定量値を算出し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された前記定量値を表示し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された前記定量値に基づいて最終定量値を決定する
ものである。
【0010】
また、上記課題を解決するために成された本発明に係る元素分析装置は、
1乃至複数の分析対象元素の指定、及び該分析対象元素の測定における複数の内標準候補元素の指定を受け付け、該1乃至複数の分析対象元素のそれぞれに前記複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定する内標準候補元素設定部と、
前記1乃至複数の分析対象元素を既知量ずつ含み、該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた前記複数の内標準候補元素をそれぞれ既知量ずつ含む試料であって、分析対象元素の含有量が互いに異なる複数の標準試料を測定する標準試料測定部と、
前記内標準候補元素情報に基づき、前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記複数の標準試料の測定により得られた前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度と当該分析対象元素の測定強度を用い、該複数の内標準候補元素のそれぞれに対応する検量線を作成する検量線作成部と、
前記複数の内標準候補元素が所定量ずつ添加された、前記1乃至複数の分析対象元素を未知量含有する分析対象試料を測定する分析対象試料測定部と、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記分析対象試料の測定により得られた当該分析対象元素の測定強度と前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度、及び前記検量線を用いて当該分析対象元素定量値を算出する定量値算出部と、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された定量値を表示する定量値表示部と
を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る元素分析方法及び元素分析装置では、まず、1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を作成する。また、1乃至複数の分析対象元素を既知量ずつ含み、該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた複数の内標準候補元素をそれぞれ既知量ずつ含む試料であって、分析対象元素の含有量が互いに異なる複数の標準試料を調製し、標準試料毎に、1乃至複数の分析対象元素と該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた内標準候補元素を測定する。なお、標準試料に含まれる複数の内標準候補元素の含有量は既知であればよく、全て同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。そして、分析対象元素毎に、標準試料の測定により取得した分析対象元素の測定強度及び複数の内標準候補元素の測定強度に基づいて検量線を作成する。その後、複数の内標準候補元素をそれぞれ所定量添加した分析対象試料を測定し、その測定により取得した分析対象元素の測定強度と複数の内標準候補元素の測定強度、及び内標準候補元素毎の添加量と検量線を用いて、分析対象元素毎に、複数の内標準候補元素のそれぞれについて定量値を算出する。本発明では、1つの分析対象元素について複数の内標準候補元素のそれぞれから定量値を算出するため、いずれかの定量値が異常であったとしても、複数の定量値を相互に比較するのみでその異常値を容易に発見することができる。分析対象元素の最終的な定量値は、そうした異常値を除いた他の内標準候補元素の検量線から算出された定量値に基づいて決定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る元素分析装置の一実施例である誘導結合プラズマ質量分析装置の要部構成図。
【
図2】本実施例のプラズマ質量分析装置を用いた、本発明に係る元素分析方法の一実施例のフローチャート。
【
図3】本実施例において分析対象元素と内標準候補元素を個別に指定する画面の例。
【
図4】本実施例において分析対象元素毎に内標準候補元素を指定する画面の例。
【
図5】本実施例における複数の内標準候補元素の検量線の表示例。
【
図6】本実施例における分析対象元素の定量値の表示例。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る元素分析装置の一実施例である誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)について、以下、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本実施例の誘導結合プラズマ質量分析装置1の要部構成図である。この誘導結合プラズマ質量分析装置1は、大きく分けて、プラズマイオン化部10、質量分析部30、及び制御・処理部40で構成される。
【0015】
プラズマイオン化部10は、ネブライザガスによって霧化された液体試料が流通する試料流通管と、該試料流通管の外周に形成されたプラズマガス管と、さらにその外周に形成された冷却ガス管とが内部に形成されたプラズマトーチ20を有している。試料流通菅には、液体試料を導入するオートサンプラ11と、該オートサンプラ11から導入される液体試料を霧化するネブライザガスを供給するネブライザガス供給源12が接続されている。また、プラズマガス管にはプラズマガス供給源13が接続されている。さらに、冷却ガス管には冷却ガスを供給する冷却ガス供給源(図示略)が接続されている。ネブライザガス、冷却ガス、及びプラズマガスには、例えばアルゴンガスが用いられる。プラズマイオン化部10では、プラズマトーチ20の先端にアルゴンプラズマ21を生成し、そのアルゴンプラズマ21中に霧化した液体試料を導入することによって液体試料から原子イオンを生成する。
【0016】
質量分析部30は、アルゴンプラズマ21と対向する入口にスキマーが形成された第1真空室31と、該第1真空室31との間にスキマーが形成され、内部に四重極マスフィルタ321及び該四重極マスフィルタ321により分離されたイオンを検出する検出器322が配置された第2真空室32を備えている。
【0017】
制御・処理部40は、記憶部41のほか、機能ブロックとして、内標準候補元素設定部42、標準試料測定部43、検量線作成部44、分析対象試料測定部45、定量値算出部46、定量値表示部47、及び定量値決定部48を備えている。制御・処理部40の実体はパーソナルコンピュータであり、予めインストールされた元素分析用プログラムをプロセッサで実行することにより上記の各機能ブロックが具現化される。また、制御・処理部40にはキーボードやマウスといった入力部60と、液晶ディスプレイ等の表示部70が接続されている。
【0018】
記憶部41には、標準試料や分析対象試料を測定する際に使用する、各元素の測定条件(ネブライザガスの流量、プラズマガスの流量、各元素から生成されるイオンの質量電荷比など)の情報が予め保存されている。
【0019】
次に、本実施例の誘導結合プラズマ質量分析装置1を用いて試料を分析する手順を、
図2のフローチャートを参照して説明する。
【0020】
使用者は、予め、それぞれ異なる量の分析対象元素を含有し、内標準元素として使用可能な複数の元素をそれぞれ既知量ずつ含んだ複数の標準試料を用意し、オートサンプラ11にセットしておく。標準試料には、例えば、市販されている単元素標準液や混合標準液を適宜、希釈するなどして調製したものが用いられる。
【0021】
オートサンプラ11に標準試料をセットしたあと、標準試料の測定を指示すると、内標準候補元素設定部42は、記憶部41に登録されている元素を読み出して表示部70の画面に一覧表示する。これは、例えば
図3に示すように、予め記憶部41に登録されている元素のそれぞれに、分析対象元素として選択するチェックボックスと、内標準候補元素として選択するチェックボックスを対応付けたリストとして表示される。内標準候補元素設定部42は、この画面において、分析対象元素と内標準候補元素を用者に指定させる。このとき、内標準候補元素設定部42は、内標準候補元素を複数、使用者に選択させる。なお、分析対象元素として選択中の元素(
図3ではAs)は、内標準候補元素として選択されないように、チェックボックスへの入力が不可となっている。以下、分析対象元素としてAs(ヒ素)とSe(セレン)を指定し、内標準候補元素としてGa(ガリウム)、Y(イットリウム)、In(インジウム)、及びTe(テルル)を指定した場合を例に説明する。
【0022】
使用者がチェックボックスにチェックを入れて決定ボタンを押す等の所定の操作により分析対象元素(As, Se)と、複数の内標準候補元素(Ga, Y, In, Te)を指定すると(ステップ1)、内標準候補元素設定部42は、指定された分析対象元素のそれぞれに対して、指定された全ての複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定し(ステップ2)、その情報を記憶部41に保存する。これにより、内標準候補元素情報として、分析対象元素と内標準候補元素の全通り(2x4=8通り)の組み合わせが内標準候補元素設定部42によって自動的に設定される。
【0023】
使用者は、ここで設定された内標準候補元素情報をそのまま用いてもよく、あるいは、分析対象元素毎に内標準候補元素を絞り込んでもよい。ここでは、説明を容易にするために、2種類の分析対象元素と4種類の内標準候補元素のみを選択しているため、全通りでも8通りの組み合わせに過ぎないが、使用者が指定する分析対象元素及び内標準候補元素の数が多くなると、組み合わせの数が膨大になる。こうした場合には、使用者が適宜、内標準候補元素情報を絞り込むとよい。分析対象元素として指定した元素の質量電荷比の範囲と内標準候補元素として指定した元素の質量電荷比の範囲の両方が広い場合に全通りの組み合わせで内標準候補元素情報を設定すると、その中には質量電荷比の差が大きい分析対象元素と内標準候補元素の組み合わせが含まれることになる。分析対象元素が他イオンから受ける影響の大小は、分析対象元素の質量と他イオンの質量の大小関係や、イオン化ポテンシャルなどによって異なるため、一般的に、分析対象元素に近い質量を持つ元素やイオン化ポテンシャルが近い元素を内標準候補元素として選択するとよい。従って、例えば、各分析対象元素について、当該分析対象元素と質量電荷比が近い、及び/又はイオン化ポテンシャルが近い内標準候補元素に絞り込むとよい。
【0024】
内標準候補元素設定部42は、例えば、全通りの組み合わせの内標準候補元素情報を作成した後、その組み合わせを表示部70の画面に表示する。使用者が、表示された内標準候補元素情報を確認し、決定ボタンを押す等の所定の操作を行うと、内標準候補元素設定部42は、ステップ2で設定した全通りの組み合わせの内標準候補元素情報を確定させる。一方、使用者が、表示された内標準候補元素の編集を指示する所定の操作を行うと、内標準候補元素設定部42は、分析対象元素毎に、内標準候補元素を変更する画面を表示する。
図4に、その一例を示す。この画面では、分析対象元素のリストと内標準候補元素のリストが表示される。使用者が分析対象元素の1つを選択し、内標準候補元素のリストからも複数の内標準候補元素を選択すると、両者が対応付けられた、新たな内標準候補元素情報が記憶部41に保存される。
図4は、分析対象元素の1つであるAsに対する内標準候補元素からTeのチェックボックスを外した状態(内標準候補元素としてGa, Y, Inを選択した状態)を示す。この状態で決定ボタンを押すと、分析対象元素であるAsに対して内標準候補元素としてGa, Y, Inが対応付けられる。以下の説明では、分析対象元素であるSeに対しても、内標準候補元素からInが除外された(内標準候補元素としてGa, Y, Teが対応付けられた)場合を例に説明する。即ち、分析対象元素と内標準候補元素の全8通りの組み合わせが、ここで6通り(AsとSeについてそれぞれ3通りずつ)に絞り込まれる。
【0025】
内標準候補元素情報が設定されると、標準試料測定部43は、分析対象元素及び内標準候補元素のそれぞれの測定条件(質量電荷比等)を記憶部41から読み出して測定条件を記載したメソッドファイルを作成し、それらを実行するためのバッチファイルを作成する。この例では、分析対象元素の含有量(濃度)が異なる5種類の標準試料(うち1つは分析対象元素を含まないブランク試料)を順に測定する。
【0026】
標準試料測定部43がバッチファイルを作成したあと、使用者が測定実行ボタンを押す等の所定の操作を行うと、標準試料測定部43は、オートサンプラ11にセットされている5種類の標準試料を順にプラズマトーチ20に導入してアルゴンプラズマ21でイオン化し、質量分析部30で質量電荷比毎に測定する(ステップ3)。質量分析部30の検出器322で得られた測定データは順次、制御・処理部40に送信されて記憶部41に保存される。
【0027】
標準試料の測定を完了すると、検量線作成部44は、分析対象元素毎に、上記5つの標準試料の測定により得られた当該分析対象元素の測定強度及び内標準候補元素のそれぞれの測定強度と、各標準試料に含まれる分析対象元素の量、及び各内標準候補元素の量に基づいて、分析対象元素毎に、当該分析対象元素に対応付けられた内標準候補元素のそれぞれの検量線を作成して表示部70の画面に表示する(ステップ4)。
【0028】
図5は、内標準候補元素のそれぞれについて作成された検量線の表示例である。この例は、分析対象元素であるAsの測定強度について、Ga, Y, Inをそれぞれ内標準候補元素としたときの検量線を表示したものである。
【0029】
この例では、内標準候補元素のそれぞれについて作成されたAsの検量線のグラフ(上部)に加えて、5種類の標準試料(BLK及びSTD1~STD4)のそれぞれにおける分析対象元素の設定濃度、各内標準候補元素の測定強度に対する分析対象元素の測定強度の比、及び該強度比に基づいて検量線から分析対象元素を定量することにより算出される濃度が表形式で表示されている(下部)。
【0030】
なお、
図5の表には「除外」欄とチェックボックスが表示されているが、これは、その標準試料の測定データを除外して検量線を作成するためのものであり、
図5の例では使用していない。また、区分欄のCAL1~CAL5という記載は、検量線作成用の標準試料であることを示している。
【0031】
その後、使用者が分析対象試料をオートサンプラ11にセットして分析対象試料の測定を指示すると、分析対象試料測定部45は、記憶部41から、2つの分析対象元素(As及びSe)と、各分析対象元素に対して指定された内標準候補元素(Ga、Y、In、Te)の測定条件(質量電荷比等)を読み出し、測定条件を記載したメソッドファイルを作成して、それらを実行するためのバッチファイルを作成する。
【0032】
続いて、分析対象試料測定部45は、作成したバッチファイルに基づいて、オートサンプラ11にセットされている分析対象試料を順にプラズマトーチ20に導入してアルゴンプラズマ21でイオン化し、質量分析部30で質量電荷比毎に測定する(ステップ5)。質量分析部30の検出器322で得られた測定データは順次、制御・処理部40に送信されて記憶部41に保存される。
【0033】
分析対象試料の測定を完了すると、定量値算出部46は、分析対象試料のそれぞれについて、分析対象元素の測定強度、当該分析対象元素に対応付けられた内標準候補元素の測定強度、及び該内標準候補元素について作成した検量線(
図5参照)に基づいて、分析対象元素の定量値を算出する(ステップ6)。
【0034】
定量値算出部46により、各分析対象試料に含まれる各分析対象元素の定量値(この時点では、各分析対象元素に対応付けられた内標準候補元素の数と同数の定量値)が算出されると、定量値表示部47は、それらの定量値を表示部70の画面に表示する(ステップ7)。
【0035】
図6は、定量値表示部47による分析対象元素の定量値の表示の一例である。この例では、4つの分析対象試料(Blank、N1~N3)について、分析対象元素毎に、当該分析対象元素に対して指定された内標準候補元素毎に得られた定量値を表形式で表示している。なお、区分欄のUNKという記載は、分析対象の未知試料群(Unknown)であることを意味する。
【0036】
使用者は、分析対象元素であるAsとSeのそれぞれについて、各内標準候補元素の検量線から算出された定量値を確認し、最も適切な定量値が得られている内標準候補元素の1つを選択する。使用者により内標準候補元素が選択されると、定量値決定部48は、その内標準候補元素の検量線から得られた定量値を、分析対象元素の最終的な定量値(最終定量値)として決定する(ステップ8)。また、定量値決定部48は、使用者により選択された内標準候補元素を、当該分析対象元素の定量値を決定するために用いた内標準元素として、定量値とともに記憶部41に保存する。分析対象元素であるAsについては、3つの内標準候補元素(Ga、Y、In)の測定強度及び検量線に基づいて3種類の定量値が算出されているため、使用者は、これらのうちの1つを分析対象元素の定量に使用する内標準元素として決定し、その内標準元素の検量線から算出された定量値を最終定量値として決定する。また、分析対象元素であるSeについては、3つの内標準候補元素(Ga、Y、Te)の測定強度及び検量線に基づいて3種類の定量値が算出されているため、使用者は、これらのうちの1つを分析対象元素の定量に使用する内標準元素として決定し、その内標準元素の検量線から算出された定量値を最終定量値として決定する(ステップ8)。
【0037】
従来の誘導結合プラズマ分析装置における内標準法では、分析対象元素に対する内標準元素を決定する際に、各分析対象元素に対して1つの内標準元素を対応付けて検量線を作成し、分析対象試料の測定後、各分析対象元素に対応付けられた1つの内標準元素の検量線を用いて定量値を算出していた。つまり、分析対象元素のそれぞれに対して1つの定量値のみを算出していた。そのため、内標準元素として選択した元素に対して予期しない影響を及ぼすマトリクスや夾雑物が分析対象試料に含まれているなどの理由により、内標準元素の測定強度が異常になった場合、熟練者でなければその異常に気づかず、誤った定量値を分析結果として採用してしまう場合があった。
【0038】
また、使用者が、当初に選択した内標準元素から得られた分析対象元素の定量値が異常であることに気づいた場合には、従来、内標準元素を別の1つに変更して分析対象元素の定量値を算出し直していた。この作業を行うためには、使用者が分析対象元素に対応付ける内標準元素を別の元素に変更し、さらに、新たな内標準元素について分析対象元素を定量するための検量線を作成したうえで、その検量線を用いて分析対象元素の定量値を算出するという面倒な作業を行わなければならないという問題があった。また、ある1つの内標準元素の検量線から算出した分析対象元素の定量値の妥当性を確認する際も同様に、その定量値を算出したあと、一旦、その値を記録しておき、内標準元素を別の元素に変更し、さらに、新たな内標準元素について分析対象元素を定量するための検量線を作成したうえで、その検量線を用いて分析対象元素の定量値を算出するという面倒な作業を行わなければならなかった。
【0039】
これに対し、本実施例の誘導結合プラズマ質量分析装置1では、上記のように、1つの分析対象元素に対して内標準候補元素を複数、指定して内標準候補元素情報を設定し、それら複数の内標準候補元素のそれぞれについて標準試料の測定により得られた測定強度のデータから検量線を作成する。そして、分析対象試料の測定後、各分析対象元素について、当該元素に対応付けられた複数の内標準候補元素の検量線をそれぞれ用いて定量値を算出する。つまり、各分析対象元素について複数の定量値が算出される。使用者は、こうして算出された複数の定量値を同時に確認し、相互に比較することができる。内標準候補元素として選択した元素のいずれかに対して予期しない影響を及ぼすマトリクスや夾雑物が分析対象試料に含まれていた場合、影響を受けた内標準候補元素の検量線から算出された定量値のみが異常値になるため、他の定量値との比較によってその値が異常であることを簡便に把握することができる。また、他の内標準候補元素の検量線を用いて算出された正常な定量値を選択するのみで、簡便に正しい最終定量値を決定することができる。
【0040】
上記実施例は一例であって、本発明の趣旨に沿って適宜に変更することができる。
【0041】
上記実施例では、内標準候補元素設定部42が全通りの組み合わせの内標準候補元素情報を作成した後、その組み合わせを表示部70に表示し、使用者が必要に応じてその組み合わせを絞り込む構成としたが、内標準候補元素設定部42が全通りの組み合わせの内標準候補元素情報を作成したあと、使用者による確認等を省略して標準試料の測定を行うようにしてもよい。これにより、使用者による作業を生じさせることなく内標準候補元素情報を作成し、分析対象元素と内標準候補元素の網羅的な組み合わせについて検量線を作成することができる。一方、上記実施例のように分析対象元素と内標準候補元素の絞り込みを行うと、分析対象元素と内標準候補元素の組み合わせ数を抑えて検量線を作成する処理や定量値を算出する処理に係る負荷を軽減することができる。また、上記実施例では、標準試料を測定する前に、分析対象元素と内標準候補元素の組み合わせを絞り込んだが、標準試料を測定した後、分析対象試料を測定するステップ5の前にこの絞り込みを行ってもよい。
【0042】
上記実施例では、使用者が内標準候補元素の1つを選択して、その内標準候補元素の測定強度及び検量線から算出された定量値を最終定量値としたが、最終定量値の決定方法はこれに限定されず、例えば、予め決められた基準を満たす内標準候補元素を自動的に選択して最終定量値を決定するなど、適宜に変更することができる。例えば、検量線作成時の誤差(
図5における設定濃度と検量線から算出される濃度の差)が最も小さいことや、分析対象元素と質量が最も近いことを予め決められた基準として用いることができる。
【0043】
上記実施例は誘導結合プラズマ質量分析装置であるが、この装置と同様に、分析対象元素を定量する際に内標準元素を用いる、種々の分析装置において、上記同様の構成を採ることができる。そのような装置として、例えば、液体試料に含まれる元素のプラズマから発せられる、各元素に固有の波長の光の強度を測定する、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES)が挙げられる。
【0044】
[態様]
上述した複数の例示的な実施例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0045】
(第1項)
本発明の一態様に係る元素分析装置は、
1乃至複数の分析対象元素の指定、及び該分析対象元素の測定における複数の内標準候補元素の指定を受け付け、該1乃至複数の分析対象元素のそれぞれに前記複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定する内標準候補元素設定部と、
前記1乃至複数の分析対象元素を既知量ずつ含み、該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた前記複数の内標準候補元素をそれぞれ既知量ずつ含む試料であって、分析対象試料の含有量が互いに異なる複数の標準試料を測定する標準試料測定部と、
前記内標準候補元素情報に基づき、前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記複数の標準試料の測定により得られた前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度と当該分析対象元素の測定強度を用い、該複数の内標準候補元素のそれぞれに対応する検量線を作成する検量線作成部と、
前記複数の内標準候補元素が所定量ずつ添加された、前記1乃至複数の分析対象元素を未知量含有する分析対象試料を測定する分析対象試料測定部と、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記分析対象試料の測定により得られた当該分析対象元素の測定強度と前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度、及び前記検量線を用いて前記当該分析対象元素の定量値を算出する定量値算出部と、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された定量値を表示する定量値表示部と
を備える。
【0046】
(第5項)
また、本発明の一態様に係る元素分析方法は、
1乃至複数の分析対象元素のそれぞれに複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定し、
前記1乃至複数の分析対象元素を既知量ずつ含み、該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた前記複数の内標準候補元素をそれぞれ既知量ずつ含む試料であって、分析対象元素の含有量が互いに異なる複数の標準試料を測定し、
前記内標準候補元素情報に基づき、前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記複数の標準試料の測定により得られた前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度と当該分析対象元素の測定強度を用い、該複数の内標準候補元素のそれぞれに対応する検量線を作成し、
前記複数の内標準候補元素を所定量ずつ添加した、前記1乃至複数の分析対象元素を未知量含有する分析対象試料を測定し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記分析対象試料の測定により得られた当該分析対象元素の測定強度と前記複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度、及び前記検量線を用いて当該分析対象試料の定量値を算出し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された前記定量値を表示し、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記内標準候補元素毎に算出された前記定量値に基づいて最終定量値を決定する
ものである。
【0047】
第1項の元素分析装置及び第5項の元素分析方法では、まず、1乃至複数の分析対象元素と、複数の内標準候補元素をそれぞれ指定する入力を受け付ける。続いて、分析対象元素のそれぞれに、指定された複数の内標準候補元素を対応付けた内標準候補元素情報を設定する。これにより、分析対象元素と内標準候補元素の全通りの組み合わせを有する内標準候補元素情報が設定される。また、1乃至複数の分析対象元素を既知量ずつ含み、該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた複数の内標準候補元素をそれぞれ既知量ずつ含む試料であって、分析対象元素の含有量が互いに異なる複数の標準試料を調製し、標準試料毎に、1乃至複数の分析対象元素と該1乃至複数の分析対象元素に対応付けられた内標準候補元素を測定する。なお、標準試料に含まれる複数の内標準候補元素の含有量は既知であればよく、全て同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。そして、分析対象元素毎に、標準試料の測定により取得した分析対象元素の測定強度及び複数の内標準候補元素の測定強度に基づいて検量線を作成する。その後、複数の内標準候補元素をそれぞれ所定量添加した分析対象試料を測定し、その測定により取得した分析対象元素の測定強度と、複数の内標準候補元素の測定強度、及び内標準候補元素毎の検量線を用いて、分析対象元素毎に、複数の内標準候補元素のそれぞれを用いて定量値を算出する。第1項の元素分析装置及び第5項の元素分析方法では、1つの分析対象元素について複数の内標準候補元素のそれぞれから定量値が算出されるため、使用者はそれらの定量値を同時に確認して相互に比較することができる。そのため、いずれかの定量値が異常であったとしても、複数の定量値を相互に比較するのみでその異常値を容易に発見することができる。
【0048】
(第2項)
第1項に記載の元素分析装置において、
前記内標準候補元素設定部が、分析対象元素毎に、当該分析対象元素に対応付ける複数の内標準候補元素の指定を受け付けて前記内標準候補元素情報を設定する。
【0049】
第2項の元素分析装置では、分析対象元素と内標準候補元素の組み合わせの数を抑え、検量線を作成する処理や定量値を算出する処理に係る負荷を軽減することができる。
【0050】
(第3項)
第1項又は第2項に記載の元素分析装置において、さらに、
前記1乃至複数の分析対象元素のそれぞれについて、前記定量値表示部により表示される複数の定量値のうちの1つを選択する入力を受けて、該選択された定量値を分析結果として決定する定量値決定部
を備える。
【0051】
第3項の元素分析装置では、使用者が、各分析対象元素について、複数の内標準候補元素のそれぞれの測定強度との比及び検量線に基づいて算出された定量値を相互に比較し、そのうちの1つを選択するのみで、最終的な定量値を決定することができる。あるいは、定量値決定部は、予め決められた基準に従って1つの内標準候補元素を抽出し、その内標準候補元素から算出された定量値を自動的に選択するものとしてもよい。その場合には、例えば、検量線作成時の誤差(
図5における設定濃度と検量線から算出される濃度の差)が最も小さいことや、分析対象元素と質量が最も近いことを予め決められた基準として用いることができる。
【0052】
(第4項)
第1項から第3項に記載の元素分析装置において、
該元素分析装置は、誘導結合プラズマ質量分析装置又は誘導結合プラズマ発光分光分析装置である。
【0053】
第1項から第3項に記載の元素分析装置の構成は、誘導結合プラズマ質量分析装置や、誘導結合プラズマ発光分光分析装置において好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…誘導結合プラズマ質量分析装置
10…プラズマイオン化部
11…オートサンプラ
12…ネブライザガス供給源
13…プラズマガス供給源
20…プラズマトーチ
21…アルゴンプラズマ
30…質量分析部
31…第1真空室
32…第2真空室
321…四重極マスフィルタ
322…検出器
40…制御・処理部
41…記憶部
42…内標準候補元素設定部
43…標準試料測定部
44…検量線作成部
45…分析対象試料測定部
46…定量値算出部
47…定量値表示部
48…定量値決定部
60…入力部
70…表示部