(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180659
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】流体力発電システム
(51)【国際特許分類】
F03B 17/06 20060101AFI20231214BHJP
F03D 9/25 20160101ALI20231214BHJP
【FI】
F03B17/06
F03D9/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094149
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一
【テーマコード(参考)】
3H074
3H178
【Fターム(参考)】
3H074AA10
3H074AA12
3H074BB06
3H074BB11
3H074BB30
3H074CC11
3H178AA03
3H178AA26
3H178AA47
3H178AA51
3H178AA63
3H178BB31
3H178BB79
3H178CC01
3H178CC25
3H178DD12Z
3H178DD16X
3H178DD17X
3H178DD23X
3H178DD41Z
(57)【要約】
【課題】設備コストを削減することが可能な流体力発電システムを提供する。
【解決手段】流体力発電システムは、水上又は水中に設置される複数の取水装置10であって、筐体としてのナセル14A、ナセル14Aに回転可能に支持され、流体の流体力を回転力に変換する第1タービン15、及びナセル14Aに収容され、第1タービン15と駆動接続され、当該取水装置10の設置領域2における水を吸引し排出する液圧ポンプ16を含む複数の取水装置10と、各取水装置10から排出された水の流体力を回転力に変換する第2タービン32、及び第2タービン32と駆動接続される発電機33を含む発電ユニット31を少なくとも1つ備える発電装置30と、発電装置30に接続する主管41、及び主管41から分岐し取水装置10に接続する枝管42を含み、複数の取水装置10から排出された水を発電装置30に供給するパイプライン40とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上又は水中に設置される複数の取水装置であって、筐体、前記筐体に回転可能に支持され、流体の流体力を回転力に変換する第1タービン、及び前記筐体に収容され、前記第1タービンと駆動接続され、当該取水装置の設置領域における水を吸引し排出する液圧ポンプを含む複数の取水装置と、
各前記取水装置から排出された水の流体力を回転力に変換する第2タービン、及び前記第2タービンと駆動接続される発電機を含む発電ユニットを少なくとも1つ備える発電装置と、
前記発電装置に接続する主管、及び前記主管から分岐し前記取水装置に接続する枝管を含み、前記複数の取水装置から排出された水を前記発電装置に供給するパイプラインと
を備える流体力発電システム。
【請求項2】
前記主管は、前記複数の取水装置の設置領域において、水の流通経路を複数形成する当該流通経路の交点を有する
請求項1に記載の流体力発電システム。
【請求項3】
前記取水装置を前記パイプラインの構成部材に係留する係留索を備える
請求項1に記載の流体力発電システム。
【請求項4】
前記枝管は、前記取水装置を前記パイプラインの前記主管に係留する係留索を兼ねる
請求項1に記載の流体力発電システム。
【請求項5】
前記複数の取水装置のうちの1つを第1取水装置、前記複数の取水装置のうちの他の1つを第2取水装置として、
前記流体力発電システムは、前記第1取水装置の前記第1タービンと前記第2取水装置の前記第1タービンのそれぞれの回転状態に応じて、前記第1取水装置の取水路と前記第2取水装置の排水路との間を連通又は当該連通を遮断する連絡路を備える
請求項1に記載の流体力発電システム。
【請求項6】
前記取水装置又は前記パイプラインの浮力を補助する補助浮力体を備え、
前記補助浮力体は、前記パイプラインを構成可能な配管の一部によって構成されている
請求項1に記載の流体力発電システム。
【請求項7】
各前記取水装置は、タワーと、前記タワーに回転可能に設置される前記筐体としてのナセルとを含み、
前記第1タービンは風車として構成され、
前記液圧ポンプは前記ナセルに収容されている
請求項1~5のうちの何れか一項に記載の流体力発電システム。
【請求項8】
各前記取水装置は前記筐体としての船体を含み、
前記第1タービンは水車として構成され、
前記液圧ポンプは前記船体に収容されている
請求項1~5のうちの何れか一項に記載の流体力発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は気流又は水流の流体力によって発電を行う流体力発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の風力発電装置は、水上又は陸上に設置されたタワーと、タワーの上部に設けられるナセルと、ナセルの前方に位置するタービンとしての風車とを備えている。ナセル内には、風車の支持機構、ナセルのヨー角制御機構、増速機、発電機、及びコンバータなどの多数の機器が収容されている。これらの機器は高所に設置されたナセル内に収容されているため、修理や保守等の作業に多大な労力を要する。これに関連して、特許文献1の風力発電装置は、油圧ポンプと油圧モータを組み合わせた発電機の駆動力伝達機構を備え、稼働率の低下に繋がりやすい増速機及びコンバータを省いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の風力発電装置は、タービン毎に発電機やコンバータ等の電気機器を設置する必要がある。つまり、風力発電装置の数を増やすと、これに付随して発電機、コンバータ、及び送電用の高圧ケーブルも増加する。これらの設備コストは比較的高いため、総合的な設備コストが増加しやすい。
【0005】
また、これらの電気機器には高度な保守が求められる一方で、高所あるいは水中に設置されているため、保守や修理の作業が長期化しやすい。つまり、発電装置の台数が増加すると、設備コストだけでなく、整備や修理のコストも増加する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る流体力発電システムは、水上又は水中に設置される複数の取水装置であって、筐体、前記筐体に回転可能に支持され、流体の流体力を回転力に変換する第1タービン、及び前記筐体に収容され、前記第1タービンと駆動接続され、当該取水装置の設置領域における水を吸引し排出する液圧ポンプを含む複数の取水装置と、各前記取水装置から排出された水の流体力を回転力に変換する第2タービン、及び前記第2タービンと駆動接続される発電機を含む発電ユニットを少なくとも1つ備える発電装置と、前記発電装置に接続する主管、及び前記主管から分岐し各前記取水装置に接続する枝管を含み、前記複数の取水装置から排出された水を前記発電装置に供給するパイプラインとを備える。
【0007】
前記主管は、前記複数の取水装置の設置領域において、水の流通経路を複数形成する当該流通経路の交点を有してもよい。前記流体力発電システムは、前記取水装置を前記パイプラインの構成部材に係留する係留索を備えてもよい。前記枝管は、前記取水装置を前記パイプラインの前記主管に係留する係留索を兼ねてもよい。
【0008】
前記複数の取水装置のうちの1つを第1取水装置、前記複数の取水装置のうちの他の1つを第2取水装置として、前記流体力発電システムは、前記第1取水装置の前記第1タービンと前記第2取水装置の前記第1タービンのそれぞれの回転状態に応じて、前記第1取水装置の取水路と前記第2取水装置の排水路との間を連通又は当該連通を遮断する連絡路を備えてもよい。前記流体力発電システムは、前記取水装置又は前記パイプラインの浮力を補助する補助浮力体を備えてもよい。前記補助浮力体は、前記パイプラインを構成可能な配管の一部によって構成されてもよい。
【0009】
各前記取水装置は、タワーと、前記タワーに回転可能に設置される前記筐体としてのナセルとを含んでもよい。この場合、前記第1タービンは風車として構成され、前記液圧ポンプは前記ナセルに収容される。
【0010】
各前記取水装置は前記筐体としての船体を含んでもよい。この場合、前記第1タービンは水車として構成され、前記液圧ポンプは前記船体に収容される。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、設備コストを削減することが可能な流体力発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る風力発電システムの構成の例を示す図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る取水装置とパイプラインの例を示す斜視図である。
【
図3】パイプラインのレイアウトの第1例を示す図である。
【
図4】パイプラインのレイアウトの第2例を示す図である。
【
図5】パイプラインのレイアウトの第3例を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る風力発電システムの構成の変形例を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る風力発電システムの構成の変形例を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る風力発電システムの構成の変形例を示す図である。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る取水装置の斜視図である。
【
図10】第2実施形態に係る取水装置が係留された状態を示す側面図である。
【
図11】第2実施形態に係る取水装置が係留された状態を示す斜視図であり、(a)はその状態の第1例を示す斜視図、(b)はその状態の第2例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の幾つかの実施形態に係る流体力発電システムについて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。本実施形態に係る流体力発電システムは、気流又は液流のエネルギー(即ち流体力)を作動流体のエネルギーに変換し、さらに作動流体を遠方に輸送した後に当該作動流体のエネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0014】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態について説明する。本実施形態に係る流体力発電システムは風力発電システム1Aである。
【0015】
図1は、風力発電システム1Aの構成の例を示す図である。
図2は、取水装置10とパイプライン40の例を示す斜視図である。
図1に示すように、風力発電システム1Aは、複数の取水装置10と、発電装置30と、パイプライン40と、制御部50とを備えている。各取水装置10は水上に設置され、作動流体としての水を取り込む。パイプライン40は取水装置10に取り込まれた水を発電装置30に供給する。発電装置30は例えば陸上に設置され、供給された水を用いて発電する。制御部50は所謂コンピュータであり、取水装置10及び発電装置30を統括制御する。
【0016】
上述の通り、取水装置10は当該取水装置10の設置領域2(
図3~
図5参照)内の水を取り込む。取水装置10が海上に設置される場合、取り込まれる水は海水である。取水装置10が湖上に設置される場合、取り込まれる水は真水である。取水装置10の設置数は、風力発電システム1Aの総発電量に合わせて設定される。但し、後述の通り、本実施形態に係る風力発電システム1Aは、従来の風力発電システムと比べて取水装置10の増設が容易である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、取水装置10は、浮力構造体12と、タワー13と、筐体としてのナセル14Aと、第1タービン15と、液圧ポンプ16と、ストレーナ17とを備える。
図2に示すように浮力構造体12は、取水装置10の基礎として取水装置10全体の下部に設けられ、その一部又は全体が潜水した状態で浮遊する。即ち、風力発電システム1Aは浮体式である。浮力構造体12は周知の構成を有し、例えば、セミサブ型、バージ型、スパー型、又はテンションレグプラットフォーム(TLP)型等の構成を有する。但し、本実施形態の風力発電システムは浮体式を採用したシステムに限られず、着床式のシステムでもよい。即ち、取水装置10は浮力構造体12を備えず、タワー13の下部は水底3に埋設されてもよい。
【0018】
タワー13は浮力構造体12に設置され、例えば数十m以上の高さを有する。タワー13の上部にはナセル14Aが設置される。ナセル14Aは、ヨー角調整機構(図示せず)によって風向きに応じて揺動する。ナセル14Aは、上述のヨー角調整機構、軸受などの第1タービン15の支持機構(図示せず)、及び液圧ポンプ16などの機器を収容する。
【0019】
図2に示すように、第1タービン15は風車であり、気体の流体力を回転力に変換する。第1タービン15は、回転軸としてのハブ(ロータ)18と、ハブ18に支持された複数のブレード19とを有し、軸受等の支持部材を介してナセル14Aに回転可能に支持されている。第1タービン15は
図2に示す水平軸風車でもよく、垂直軸風車(図示せず)でもよい。
【0020】
各ブレード19のピッチ角は、ハブ18等に設けられたピッチ角調整機構(図示せず)によって調整される。一方、ハブ18の回転速度は速度センサ(図示せず)によって計測される。この計測値は制御部50に出力され、制御部50は所定の回転速度を維持するように、ピッチ角調整機構を制御する。これにより、風速に関わりなく、第1タービン15の回転数が所定の値に維持される。なお、風速が所定値を超えた場合、各ブレード19のピッチ角はストールが発生する角度に調整され、第1タービン15の過回転を防止する。
【0021】
液圧ポンプ16はナセル14A内に収容され、第1タービン15と駆動接続(drivingly connected)している。即ち、液圧ポンプ16の入力軸は、第1タービン15の回転力が液圧ポンプ16に伝達されるように、第1タービン15のロータ軸20に連結している。液圧ポンプ16は、第1タービン15の回転力によって駆動され、取水装置10の設置領域2内の水を取り込む。液圧ポンプ16の出力は6MW程度であり、稼働時の回転数は例えば20rpmである。
【0022】
液圧ポンプ16は、制御部50からの指令に応じて、排出する水の圧力(即ち水圧)及び吐出量、又はこれらの何れかを調整することができる。即ち、液圧ポンプ16は可変容量型ポンプであり、傾斜角が可変の斜板と、当該斜板に連結した複数のピストンとを有するポンプ(所謂アキシャルピストンポンプ)である。但し、本実施形態の液圧ポンプ16はアキシャルピストンポンプに限られず、他の構成を有する可変容量型ポンプでもよい。何れの形式でも、液圧ポンプ16は、第1タービン15の発生トルクにばらつきが生じても一定の圧力の水を排出する。
【0023】
図1に示すように、液圧ポンプ16の入口側は取水路21に接続している。取水路21は配管で構成され、その端部(即ち流入口)にはストレーナ17が設けられている。ストレーナ17は周知のフィルタ(図示せず)を有し、液圧ポンプ16に吸い込まれる水から不純物を除去する。
【0024】
図1に示すように、液圧ポンプ16の出口側は排水路22に接続している。排水路22は配管で構成され、パイプライン40の枝管42に接続している。排水路22には、周知の構成の圧力計23が設けられている。圧力計23は、液圧ポンプ16の出口側に接続された排水路22内の圧力を計測し、計測値を制御部50に出力する。制御部50は、圧力計23が得た計測値に基づき、所望の水圧と吐出量が得られるように液圧ポンプ16を制御する。
【0025】
なお、取水装置10は、ナセル14Aの高さまでの揚程を得るために供給ポンプ(図示せず)を備えてもよい。供給ポンプは取水路21に設置され、ストレーナ17を通過した水を液圧ポンプ16に供給する。
【0026】
パイプライン40は複数の取水装置10から排出された水を発電装置30に供給する。
図1及び
図2に示すように、パイプライン40は、主管41と、枝管42とを備える。主管41は発電装置30に接続し、枝管42から排出される水を集約して発電装置30に供給する。主管41は、鋼管等の複数の配管43と、配管43を連結するソケット又はチーズ等の継手44とによって構成され、水底3に敷設される。主管41の内径は、各枝管42から排出される水を集めて発電装置30に供給するため、枝管42の内径よりも十分に大きい。
【0027】
枝管42は主管41から分岐し、各取水装置10に接続する。具体的には、枝管42は当該枝管42に対応する取水装置10の排水路22に接続する。枝管42は、鋼管等の複数の配管45と、配管45を連結するユニバーサルジョイント等の可動継手46とによって構成される。可動継手を用いることにより、枝管42は部分的な柔軟性を持つ。なお、枝管42は、ベローズ等の伸縮性と可撓性をもつ部分を有してもよい。或いは、枝管42は、伸縮性と可撓性をもつ柔軟なホースでもよい。
【0028】
枝管42は、当該枝管42が接続する取水装置10と主管41との間の最短距離よりも十分に長い。これにより係留索24の係留に対する干渉を回避する。但し、後述の通り、枝管42は係留索24を兼ねてもよい。この場合、枝管42の延長は上述の最短距離またはそれに近い長さを有することになる。
【0029】
図2に示すように、取水装置10は、複数本の係留索24によって係留されている。係留索24は、金属製の鎖、金属製のワイヤ、合成繊維製のロープ又はこれらが複合したロープ等によって構成される。係留索24は、シャックル等の連結具を含んでもよく、中間ブイ又は中間シンカー等を含んでもよい。係留索24の構成及び係留方式(例えば、カテナリー係留、トート係留又は緊張係留)は、浮力構造体12の浮力方式に応じて適宜選択される。
【0030】
係留索24の一端は浮力構造体12に接続し、係留索24の他端は水底3に設置されたシンカー又はパイルなどの支持基礎4に接続する。但し、係留索24の他端はパイプライン40の構成部材に接続してもよい。この構成部材とは例えば主管41の構成部材であり、主管41の構成部材とは、配管、継手、及びこれらを支持する基礎などである。この場合、取水装置10の係留に必要なシンカー又はパイルなどの支持基礎4の数を削減し、支持基礎4の設置作業も軽減できる。
【0031】
図1に示すように、発電装置30は、少なくとも1つの発電ユニット31を備える。発電ユニット31は、第2タービン32と、発電機33とを有する。第2タービン32は、周知の構成の液圧モータ又は水車である。前者は例えば容積型モータであり、後者は例えばペルトン水車である。第2タービン32の入口側はパイプライン40の主管41に接続し、第2タービン32は各取水装置10から排出された水の流体力を回転力に変換する。第2タービン32を通過した水は、例えば、取水装置10が設置された海又は湖沼に戻される。
【0032】
発電機33は第2タービン32と駆動接続している。即ち、発電機33の回転子は、第2タービン32の回転力が発電機33に伝達されるように、第2タービン32の回転軸に連結している。発電機33は上述の回転子と、固定子とを備える同期発電機であり、第2タービン32の回転力によって発電を行う。
【0033】
取水装置10による水の排出量は、制御部50によって、排出される水の圧力(水圧)が一定となるように制御されている。従って、風速が低下した場合は水の排出量が減少し、第2タービン32の回転数が減少する。逆に、風速が上昇した場合は水の排出量が増加し、第2タービン32の回転数が増加する。このような水の排出量の変動による第2タービン32の回転数の変動を抑えるため、第2タービン32は可変容量モータでもよい。この場合、第2タービン32に流入する水量の変動に関わりなく第2タービン32は所定の回転数で回転し、発電機33は一定の周波数で発電することができる。
【0034】
発電装置30は、陸上に設置されてもよく、水上又は水中に設置されてもよい。何れの場合も、水中に敷設される高圧ケーブルを省略又は削減できる。特に発電装置30を陸上に設置する場合は、水中に敷設される高圧ケーブルと当高圧該ケーブルに係る防水対策が不要となるため、更にコストを削減できる。
【0035】
パイプライン40のレイアウトについて説明する。
図3、
図4、及び
図5は、設置領域2におけるパイプライン40のレイアウトの第1例、第2例、及び第3例をそれぞれ示す図である。
図3に示すように、パイプライン40の主管41は、取水装置10の配列に沿って敷設される。例えば
図3に示すように、主管41は取水装置10の2列の間に敷設され、主管41は1本の流通経路を形成する。或いは、図中の点線で示すように、主管41は、下流側で合流する複数本の水の流通経路を形成してもよい。
【0036】
図4に示すように、複数の枝管42は、設置領域2における1つの合流点47で主管41と合流してもよい。取水装置10が合流点47から離れるほど枝管42の長さが長くなるものの、主管41の全長を短縮し、パイプライン40の敷設コストを下げることができる。
【0037】
主管41は、設置領域2において、水の流通経路を複数形成する当該流通経路の交点48を有してもよい。例えば
図5に示すように、取水装置10が設置領域2において行列状に配置されている場合、この分布に合わせて、主管41は設置領域2において格子状に敷設されていてもよい。
【0038】
取水装置10の設置間隔は、少なくとも第1タービン15である風車の直径の5倍~10倍程度に設定される。従って、それぞれの風車に対する風速は異なりやすく、その差は風車の数が増える程、大きくなりやすい。本実施形態に係る液圧ポンプ16は、このような風速の変動に対して、一定の圧力で水を排出するように動作する。しかしながら、このような制御を行っても補えない水圧の変動が生じる場合もある。主管41が交点48を有する場合、各枝管42から排出された水の圧力差が、合流によって緩和される。つまり、圧力変動を抑えた状態で水を発電装置30に供給できる。
【0039】
図5に示すように、取水装置10の設置領域2において主管41が形成する水の流通経路が複数ある場合、当該流通経路は発電装置30に至るまでに集約されてもよい(合流してもよい)。即ち、主管41が形成する水の流通経路は、少なくとも発電装置30に至った時点で、取水装置10の設置領域2における数よりも減少してもよい。例えば
図5に示すように、発電装置30に接続する主管41は1本だけであり、各取水装置10から個別に発電装置30まで配管を敷設する必要が無い。従って、パイプライン40の敷設に係るコストを抑制することができる。
【0040】
従来の風力発電システムは、ナセル内に発電機及びコンバータ等の発電設備を搭載している。従って、このシステムでは、発電施設である各風車から個別に変電施設まで高圧ケーブルを敷設する必要がある。しかしながら、本実施形態に係る風力発電システムでは、ナセルに発電設備を設置する必要がなく、それ故に各風車(即ち第1タービン15)から個別に変電施設まで高圧ケーブルを敷設する必要もない。高圧ケーブルは非常に高価であり、その敷設作業にも膨大なコストが掛かる。しかしながら、本実施形態では高圧ケーブルの敷設が必要なく、或いは、その規模を縮小できるため、風力発電のための設備コストを大幅に削減することができる。
【0041】
本実施形態に係る風力発電システムでは、取水装置10の設置領域2において取り込まれた水が、発電に用いられた後、同一水域に戻される。従って、過剰な取水などによる水位の低下などの環境破壊を避けることができる。
【0042】
本実施形態に係る風力発電システムでは、取水装置10を増設する場合、増設予定の水域に取水装置10を設置し、パイプライン40を延長するだけで増設が完了する。従って、高圧ケーブルの増設が必要な従来の風力発電システムと比べて、増設工事のコストを抑えることができる。
【0043】
図6は本実施形態に係る風力発電システム1Aの構成の変形例を示す図である。この図に示すように、枝管42は、取水装置10をパイプライン40の主管41に係留する係留索を兼ねてもよい。この場合、鎖又はロープなどによって構成される係留索の本数を削減することできる。また、支持基礎4の数も削減することができる。
【0044】
図7は本実施形態に係る風力発電システム1Aの構成の変形例を示す図である。この図に示すように、風力発電システム1Aは取水装置10又はパイプライン40の浮力を補助する補助浮力体49を備えてもよい。補助浮力体49は、パイプライン40を構成可能な配管の一部によって構成され、例えば
図7に示すように、主管41を構成可能な配管49aによって構成される。配管49aは、所定の取付具(図示せず)によって、主管41に取り付けられる。配管49aの内部は、配管49aの両端に取り付けられたカバー49b等によって密閉される。更に、配管49a内には所定の量の気体が充填され、所定の浮力を得ることができる。
【0045】
図7に示す例では、2本の配管49aがパイプライン40の主管41に取り付けられている。更に各配管49aは、係留索51を介して支持基礎4に係留される。なお、係留索51は、補助浮力体49が取り付けられた主管41に繋がれていてもよい。補助浮力体49はパイプライン40の主管41を水中に浮遊させ、例えば水底3(
図6参照)への主管41の設置が困難な環境でも、パイプライン40の敷設を可能にする。
【0046】
また、補助浮力体49は取水装置10に取り付けられてもよい。例えば、補助浮力体49は浮力構造体12によるタワー13の浮上、或いは後述する船体14B(
図9参照)の水中浮遊を補助する。この場合、補助浮力体49の浮力の調整によって、取水装置10の浮力を調整することができる。
【0047】
図8は本実施形態に係る風力発電システム1Aの構成の変形例を示す図である。風力発電システム1Aは、複数の取水装置のうちの1つの排水路22と、複数の取水装置のうちの他の1つの取水路21との間を連通又は当該連通を遮断する連絡路25を備えてもよい。
【0048】
説明の便宜上、
図8に示すように、複数の取水装置10のうちの1つを第1取水装置11Aと称し、複数の取水装置のうちの他の1つを第2取水装置11Bと称する。また、第1取水装置11Aの第1タービン、液圧ポンプ、取水路、排水路、及びストレーナの符号をそれぞれ、15A、16A、21A、22A、及び17Aと表記する。同様に、第2取水装置11Bの第1タービン、液圧ポンプ、取水路、排水路、及びストレーナの符号をそれぞれ、15B、16B、21B、22B、及び17Bと表記する。
【0049】
連絡路25にはバルブ26が設けられ、連絡路25は第1取水装置11Aの排水路22Aと第2取水装置11Bの取水路21Bとの間を遮断可能に接続している。また、取水路21Bにおいて連絡路25との接続点よりも上流側の位置(即ち、当該接続点よりもストレーナ17Bに近い位置)には、逆止弁27が設けられている。逆止弁27は、ストレーナ17Bから液圧ポンプ16Bへの水流を許容する一方、その逆方向の水流を阻止する。
【0050】
バルブ26の開閉は、第1タービン15Aと第1タービン15Bのそれぞれの回転状態に応じて決定される。このようなバルブ26の開閉制御は、制御部50によって実行される。制御部50は、速度センサなどのセンサを用いて第1タービン15Aと第1タービン15Bの各回転数を計測し、それぞれの計測値に応じてバルブ26を開き又は閉じる。
【0051】
第1タービン15Aが回転し、第1タービン15Bも回転しているとき、バルブ26は閉じ、排水路22Aと取水路21Bの間の連通が遮断される。一方、第1タービン15Aが回転し、第1タービン15Bは停止しているとき、バルブ26は開き、排水路22Aと取水路21Bの間が連通する。
【0052】
ところで、排水路22内の水圧は、第1タービン15の回転、即ち液圧ポンプ16の稼働によって上昇する。従って、第1タービン15Aが回転し、且つ第1タービン15Bが停止している状態でバルブ26が開くと、排水路22A内の水圧が連絡路25を介して取水路21Bに伝達され、取水路21B内の水圧が上昇する。
【0053】
取水路21B内の水圧が、液圧ポンプ16Bの始動に必要なトルク(即ち起動トルク)が得られる値まで上昇すると、液圧ポンプ16Bは回転を開始し、その結果、第1タービン15Bが回転する。つまり、液圧ポンプ16Bは第1タービン15Bを回転させるモータとして機能する。このとき水は、
図8中の点線の矢印で示すように、排水路22Aから連絡路25を介して取水路21Bに流れ、液圧ポンプ16Bに供給される。
【0054】
例えば風速が、第1タービン15Bの起動トルクが得られるほど高くないが、第1タービン15Bの回転は維持できる値であった場合、バルブ26を開き、排水路22Aと取水路21Bの間を連通させることによって、液圧ポンプ16Bを駆動し、第1タービン15Bを回転させる。第1タービン15Bの回転速度の上昇具合、或いは風速センサによる風速の計測値などによって、第1タービン15Bの回転が維持できると判断したとき、制御部50は、バルブ26を閉じる。このような制御によって、比較的弱い風でも第1タービン15Bを始動させることができる。つまり、連絡路25を設けることによって、第1タービン15の稼働率を上げ、発電効率を向上させることができる。
【0055】
なお、連絡路25は、取水装置10の全てから想定される組み合わせのうちの全てに設置されてもよく、その一部でもよい。後者の場合は、例えば、設置領域の一部で風速が頻繁に弱まりやすいことが想定される場合、その区域の取水装置10と他の区域の取水装置10との間に連絡路25を設け、風速が弱まりやすい領域の第1タービン15を始動させやすくすることが考えられる。
【0056】
(第2実施形態)
本開示の第2実施形態について説明する。
第2実施形態に係る流体力発電システムは、第1タービンの回転力を得るために水流(例えば潮流)を用いる。即ち、第2実施形態に係る流体力発電システムは水流発電システム1Bである。流体力を得るための媒体は異なるものの、第2実施形態でも第1実施形態と同じく、液圧ポンプ16によって作動流体としての水が取り込まれ、発電装置30に供給され、発電装置30の発電に用いられる。また、発電に用いられた水は、取水した水域と同一の水域に戻される。
【0057】
本実施形態に係る水流発電システム1Bでは、取水装置10が、水流の流体力を利用する構成を有する。つまり、パイプライン40、発電装置30、及びその他の構成は上述した第1実施形態に係る構成(変形例も含む)を適用できる。そのため、これらについては同一の符号を付し、説明を省略する。
【0058】
図9は、本開示の第2実施形態に係る取水装置10の斜視図である。
図10は、取水装置10が係留された状態を示す側面図である。
図11は、取水装置10が係留された状態を示す斜視図であり、
図11(a)はその状態の第1例を示す斜視図、
図11(b)はその状態の第2例を示す斜視図である。
【0059】
本実施形態に係る取水装置10は水中に設置され、係留索24によって水中に浮遊している(
図10参照)。
図9に示すように、取水装置10は、一対の筐体としての一対の船体14B、14Bを有する。一対の船体14B、14Bは水流に対して左右に設けられ、その間に設けられたビーム28によって連結されている。係留索24の一端は各船体14Bに分岐して接続されている。一方、係留索24の他端は支持基礎4に接続されている。
【0060】
第1タービン15は水車として構成され、各船体14Bの尾部に設けられる。第1タービン15は船体14Bに回転可能に支持され、船体14B内に収容された液圧ポンプ16に駆動接続されている。2つの第1タービン15、15は、水流から見て互いに逆方向に回転する。このような回転により、発生し得る回転トルクを相殺し、取水装置10の不要なローリングを回避している。
【0061】
船体14Bは水の流入口29を有する。流入口29は例えば船体14Bの前側(即ち水流の上流側)に設けられ、取水路21を介して液圧ポンプ16の入口側に接続している。液圧ポンプ16の出口側は、排水路(図示せず)を介してパイプライン40の枝管42に接続する。
【0062】
第2実施形態では、船体14Bの前方から後方に流れる水流の一部を流入口29から取り込み、液圧ポンプ16が吸引する。吸引された水は液圧ポンプ16によって加圧され、パイプライン40を介して発電装置30(
図1)に供給される。
【0063】
船体14Bは、
図11(a)に示すように係留索24によって係留されてもよく、
図11(b)に示すように枝管42によって係留されてもよい。即ち、後者の場合は枝管42が係留索として機能してもよい。この場合、パイプライン40の主管41が支持基礎を兼ねる。
【0064】
なお、取水装置10は
図9に示す水中浮遊体に限られず、着床式の取水装置として水底3に固定されてもよい。さらに、1つの取水装置10当たりの第1タービン15及び液圧ポンプ16の各数は例示した2つに限られず任意である。
【0065】
第2実施形態でも、第1実施形態と同様の効果が得られる。即ち、船体内に発電機及びコンバータ等の発電設備を搭載する必要がなくなり、それ故に水車(即ち第1タービン15)から個別に変電施設まで高圧ケーブルを敷設する必要もなくなる。従って、発電機、コンバータ、高圧ケーブルなどの電気機器が必要な従来の水流発電施設と比べ、設備コストを大幅に削減することができる。
【0066】
本開示は、例えば持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に貢献することができる。
【0067】
また、本開示は上述の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0068】
1A…風力発電システム、1B…水流発電システム、2…設置領域、3…水底、4…支持基礎、10…取水装置、12…浮力構造体、13…タワー、14A…ナセル、14B…船体、15…第1タービン、16…液圧ポンプ、17…ストレーナ、18…ハブ(ロータ)、19…ブレード、20…ロータ軸、21…取水路、22…排水路、23…圧力計、24…係留索、25…連絡路、26…バルブ、27…逆止弁、28…ビーム、29…流入口、30…発電装置、31…発電ユニット、32…第2タービン、33…発電機、40…パイプライン、41…主管、42…枝管、43…配管、44…継手、45…配管、46…可動継手、47…合流点、48…交点、49…補助浮力体、50…制御部、51…係留索