(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180661
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】土質推定装置、土質推定方法及び土質推定プログラム
(51)【国際特許分類】
E21D 9/12 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
E21D9/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094153
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山崎 啓三
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】西脇 也寸男
(72)【発明者】
【氏名】福武 健一
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC04
2D054DA03
2D054DA31
2D054GA17
2D054GA81
2D054GA95
(57)【要約】
【課題】効率的かつ的確に、搬送土の土質を推定するための土質推定装置、土質推定方法及び土質推定プログラムを提供する。
【解決手段】管理装置20は、撮影装置20aと、学習結果記憶部24と、制御部21と、を備える。撮影装置20aは、スクリューコンベヤ16からベルトコンベヤ17に搬送される搬送土を撮影する。学習結果記憶部24は、撮影装置20aによる搬送土の撮影画像において、土質毎にアノテーション枠を設定した教師情報を用いた機械学習により生成した予測モデルを記録する。制御部21は、学習結果記憶部24に記録された予測モデルを用いて、スクリューコンベヤ16からベルトコンベヤ17に搬送される搬送土の撮影画像から、搬送土の土質を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1搬送領域から第2搬送領域に搬送される搬送土を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置によって撮影された搬送土の撮影画像において、土質毎にアノテーション枠を設定した教師情報を用いた機械学習により生成した予測モデルを記録する学習結果記憶部と、
前記学習結果記憶部に記録された予測モデルを用いて、前記第1搬送領域から前記第2搬送領域に搬送される搬送土の撮影画像から、前記搬送土の土質を判定する制御部と、を備えることを特徴とする土質推定装置。
【請求項2】
前記アノテーション枠を、前記土質における柔らかさに応じて広げるように設定することを特徴とする請求項1に記載の土質推定装置。
【請求項3】
前記制御部が、前記撮影装置で撮影した撮影画像を取得し、
前記撮影画像を用いて、管理者によって特定された土質を取得し、
前記撮影画像において、前記土質に応じた前記アノテーション枠を設定した教師情報を生成することを特徴とする請求項1又は2に記載の土質推定装置。
【請求項4】
前記第1搬送領域と前記第2搬送領域とは、異なる種類のコンベヤにおける搬送領域であることを特徴とする請求項1に記載の土質推定装置。
【請求項5】
前記制御部は、基準時間内に判定した土質の頻度を算出することにより前記土質を推定することを特徴とする請求項1に記載の土質推定装置。
【請求項6】
前記制御部は、作業区切り毎に、前記判定した土質の履歴を出力することを特徴とする請求項5に記載の土質推定装置。
【請求項7】
撮影装置により、第1搬送領域から第2搬送領域に搬送される搬送土を撮影し、
前記撮影装置によって撮影された搬送土の撮影画像において、土質毎にアノテーション枠を設定した教師情報を用いた機械学習により生成した予測モデルを学習結果記憶部に記録し、
土質推定装置が、前記学習結果記憶部に記録された予測モデルを用いて、前記第1搬送領域から前記第2搬送領域に搬送される搬送土の撮影画像から、前記搬送土の土質を判定することを特徴とする土質推定方法。
【請求項8】
第1搬送領域から第2搬送領域に搬送される搬送土の撮影画像を記録する教師情報記憶部と、
前記教師情報記憶部に接続された制御部と、を備えた土質推定装置を用いて、搬送土の土質を推定するための土質推定プログラムであって、
前記制御部を、
前記教師情報記憶部に記録された撮影画像に、土質毎にアノテーション枠を設定した教師情報を用いて予測モデルを生成して、学習結果記憶部に記録し、
前記学習結果記憶部に記録された予測モデルを用いて、前記第1搬送領域から前記第2搬送領域に搬送される搬送土の撮影画像から、前記搬送土の土質を推定することを特徴とする土質推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送土の土質を推定するための土質推定装置、土質推定方法及び土質推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルを構築するために、シールド掘進機を用いたシールド工法を採用することがある。このシールド工法では、カッターヘッドで掘削した土砂をチャンバ内に取り込んで充満させる。そして、チャンバ内の土圧により切羽の安定を図るとともに、スクリューコンベヤを介して排土を行なう。ここで、掘削土砂の流動性を判定するための技術が検討されている(特許文献1を参照)。この文献に記載された技術では、シールド掘進機から排出された土砂を搬送するベルトコンベヤにおける搬送方向の所定領域を撮像した土砂画像と、土砂画像に対応する土砂の塑性流動性の測定結果とからなる教師データセットを取得する。そして、教師データセットに基づいて学習された機械学習アルゴリズムを用いて、新たな土砂画像に対応する土砂である対象土砂の塑性流動性を推定することにより、土砂の流動性を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機械学習アルゴリズムを用いる場合、的確な判定を行なうためには、大量の教師データセットに基づいた学習が必要である。一方、トンネルを構築する現場は、環境がそれぞれ異なるため、個別に学習する必要がある。この場合、大量の教師データセットの準備に時間がかかり、学習のための作業の負荷が大きい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための土質推定装置は、第1搬送領域から第2搬送領域に搬送される搬送土を撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって撮影された搬送土の撮影画像において、土質毎にアノテーション枠を設定した教師情報を用いた機械学習により生成した予測モデルを記録する学習結果記憶部と、前記学習結果記憶部に記録された予測モデルを用いて、前記第1搬送領域から前記第2搬送領域に搬送される搬送土の撮影画像から、前記搬送土の土質を判定する制御部を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、効率的かつ的確に、搬送土の土質を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の土質推定装置の全体概略図である。
【
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
【
図3】実施形態のアノテーション枠の説明図であって、(a)は「Belt」、(b)は「Hard」、(c)は「Normal」、(d)は「Soft」、(e)は「Verysoft」の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図7に従って、土質推定装置、土質推定方法、土質推定プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、シールド工法で掘削された搬送土の土質を連続的に計測する。
図1に示すように、シールド掘進機10は地山を掘削しつつ、エレクタ10aによってセグメントSG1を順次組み立てて掘削内周面を覆う覆工体T1を形成する。
【0009】
シールド掘進機10は、スキンプレート11、隔壁12、カッターモータ13、カッターヘッド14、添加剤注入管15、スクリューコンベヤ16、ベルトコンベヤ17等を備えている。
【0010】
スキンプレート11は、シールド掘進機10の外殻部となる鋼製の筒状部材である。隔壁12は、スキンプレート11の掘進方向の前方にチャンバSP1を区画する。カッターヘッド14は、スキンプレート11の前方で、回転によって地中を掘削する。カッターモータ13は、支持アームを介してカッターヘッド14を回転させる駆動源である。
【0011】
添加剤注入管15は、掘削土砂を流動化(泥土化)させる添加剤を送り込むための管状部材である。この添加剤は、液体状の起泡材が発泡装置(図示せず)で発泡されることで得られたものである。そして、添加剤注入管15から吐出された添加剤は、カッターヘッド14の面上に注入される。なお、添加剤をチャンバSP1に注入してもよい。
【0012】
カッターヘッド14で掘削された掘削土砂は、このカッターヘッド14の回転によって添加剤と混合されることで、流動性が高められた混合土となってチャンバSP1に流入する。
【0013】
スクリューコンベヤ16は、チャンバSP1に流入した混合土を、隔壁12よりも掘進方向後方側の作業空間に取り込む。チャンバSP1に流入した混合土の圧力は、土圧センサによって測定される。この土圧センサで測定された混合土の圧力に応じて、シールド掘進機10の推進力やスクリューコンベヤ16による掘削土砂の排出量が調整される。ベルトコンベヤ17は、スクリューコンベヤ16から排出された混合土を、さらに後方の立坑側へ搬送する。
【0014】
スクリューコンベヤ16の出口(第1搬送領域)であって、ベルトコンベヤ17の入口(第2搬送領域)の近傍には、土砂(搬送土)を撮影するために、管理装置20の撮影装置20aを配置する。撮影装置20aは、スクリューコンベヤ16からベルトコンベヤ17乗せ換える排土領域を視野範囲として固定されている。この撮影装置20aは、管理装置20に接続され、撮影した画像データを管理装置20に送信する。本実施形態では、撮影装置20aと管理装置20とを含めて土質推定システムと呼ぶ。
【0015】
(ハードウェア構成例)
図2は、管理装置20等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例である。
【0016】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0017】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0018】
入力装置H12は、管理者等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0019】
記憶装置H14は、管理装置20の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する装置である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0020】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、管理装置20における各処理(例えば、後述する制御部21における処理)を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、管理装置20のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0021】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0022】
(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサH15は、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスして利用可能なあらゆる媒体を含む。
【0023】
(システム構成)
図1に示すように、管理装置20は、制御部21、アノテーション情報記憶部22、教師情報記憶部23、学習結果記憶部24、計測情報記憶部25を備える。
【0024】
制御部21は、土質推定プログラムを実行することにより、取得部211、学習部212、管理部213として機能する。
取得部211は、撮影画像の取得処理や、教師情報の生成処理を実行する。
学習部212は、撮影画像に設定されたアノテーション枠を用いて、土質の予測モデルを生成する処理を実行する。
管理部213は、予測モデルを用いて、搬送土の土質を予測する処理を実行する。
【0025】
アノテーション情報記憶部22には、撮影画像において、アノテーション枠を設定するためのアノテーション管理情報が記録される。アノテーション管理情報は、学習時処理の実行時に記録される。このアノテーション管理情報には、ラベル、枠配置に関する情報が含まれる。
【0026】
ラベルは、撮影画像が示す土質等の画像内容を示す区分である。本実施形態では、ラベルとして、「Belt(搬送土なし)」、「Hard(固い)」、「Normal(通常)」、「Soft(柔らかい)」、「Verysoft(とても柔らかい)」の5種類を用いる。
【0027】
枠配置は、このラベルが付与される撮影画像において、アノテーション枠を配置する位置に関する情報である。本実施形態では、矩形のアノテーション枠を用いており、撮影画像上のローカル座標に対して、矩形の四個の角の各座標が記録される。
【0028】
図3は、各ラベルに対して、アノテーション枠の配置を示す。このアノテーション枠は、同じ視野の撮影画像において、各ラベルの特徴が発現しやすい場所に配置される。例えば、ラベル「Belt」については、
図3(a)に示すアノテーション枠F1を用いる。このアノテーション枠F1は、ベルトコンベヤ17のベルトが見える領域に設定される。ラベル「Hard」、「Normal」、「Soft」については、それぞれ
図3(b),(c)、(d)に示すアノテーション枠F2,F3,F4を用いる。アノテーション枠F2,F3,F4は、スクリューコンベヤ16の排出口が見える領域に設定される。ラベル「Verysoft」については、
図3(e)に示すアノテーション枠F5を用いる。アノテーション枠F5は、スクリューコンベヤ16からベルトコンベヤ17までの領域に設定される。
【0029】
図1に示す教師情報記憶部23には、機械学習に用いる教師情報が記録される。この教師情報は、後述する学習時処理時でアノテーション枠が設定されて記録される。この教師情報には、撮影画像に関して、ラベル、アノテーション枠が設定されている。
【0030】
撮影画像は、スクリューコンベヤ16からベルトコンベヤ17に、搬送土が落下する領域を撮影した画像である。
ラベルは、この撮影画像について、管理者によって指定された土質の区分である。
アノテーション枠は、撮影画像において、アノテーション管理情報を用いて設定されたアノテーション枠である。
【0031】
学習結果記憶部24には、土質を予測するための予測モデルが記録される。この予測モデルは、学習時処理の実行時に記録される。
【0032】
この予測モデルは、アノテーション枠が設定された撮影画像を入力層、ラベルを出力層とするネットワーク(中間層)によって構成された学習モデルである。この予測モデルは、例えば、深層学習によって生成される。なお、学習方法は、深層学習に限定されるものではない。
【0033】
計測情報記憶部25には、搬送土について推定した土質の計測情報が記録される。この計測情報は、推定時処理の実行時に記録される。この計測情報には、推定日時、ラベルが含まれる。
【0034】
推定日時は、評価対象の搬送土の撮影画像を用いて、搬送土の土質の推定を行なった年月日及び時刻である。
ラベルは、評価対象の搬送土の撮影画像を用いて、推定した土質の区分である。
【0035】
(学習時処理)
次に、
図4を用いて、学習時処理の処理手順を説明する。
まず、管理装置20の制御部21は、アノテーション枠の設定処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の取得部211は、アノテーション設定画面を表示装置H13に出力する。このアノテーション設定画面には、撮影装置20aを用いて撮影した撮影画像(初期画像)が表示される。この場合、管理者は、タグ毎にアノテーション枠を設定する。取得部211は、各タグのアノテーション枠の設定の完了入力を取得した場合、アノテーション管理情報をアノテーション情報記憶部22に記録する。
【0036】
次に、管理装置20の制御部21は、撮影画像の登録処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21の取得部211は、撮影装置20aから撮影画像(教師画像)を取得する。この教師画像は、初期画像の撮影位置と同じ位置で撮影される。この撮影画像には、「Belt」、「Hard」、「Normal」、「Soft」、「Verysoft」の各土質が含まれる多様な画像を用いる。本実施形態では、100枚程度の撮影画像を用いる。そして、取得部211は、取得した撮影画像を、教師情報記憶部23に記録する。
【0037】
次に、管理装置20の制御部21は、撮影画像毎に以下の処理を繰り返す。
ここでは、管理装置20の制御部21は、画像の識別処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の取得部211は、教師情報記憶部23に記録された撮影画像を表示装置H13に出力する。この場合、管理者は、撮影画像中の土質を判定したラベルを入力装置H12に入力する。取得部211は、出力した撮影画像に関連付けて、入力されたラベルを付与してメモリに記録する。
【0038】
次に、管理装置20の制御部21は、アノテーション枠の設定処理を実行する(ステップS14)。具体的には、制御部21の取得部211は、アノテーション情報記憶部22に記録された枠配置により、付与されたラベルに応じて、撮影画像にアノテーション枠を設定する。
【0039】
以上の処理をすべての撮影画像について終了するまで繰り返す。
次に、管理装置20の制御部21は、機械学習処理を実行する(ステップS15)。具体的には、制御部21の学習部212は、教師情報記憶部23に記録された教師情報を用いて、撮影画像からラベルを推定する予測モデルを生成する。この機械学習では、撮影画像に設定されたアノテーション枠を利用する。そして、学習部212は、生成した予測モデルを、学習結果記憶部24に記録する。
【0040】
(推定時処理)
次に、
図5を用いて、推定時処理の処理手順を説明する。この処理は、スクリューコンベヤ16、ベルトコンベヤ17の搬送土について連続的に実行する。
【0041】
まず、管理装置20の制御部21は、画像取得処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部21の取得部211は、所定の時間間隔(例えば、数枚/秒)で撮影装置20aから撮影画像(評価対象画像)を取得する。この評価対象画像も、初期画像の撮影位置と同じ位置で撮影される。
【0042】
次に、管理装置20の制御部21は、土質の評価処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部21の管理部213は、撮影画像を、学習結果記憶部24に記録された予測モデルに入力して、ラベル毎に確からしさを算出する。そして、管理部213は、確からしさが最も高いラベルを特定し、メモリに仮記憶する。なお、基準値以上の確からしさのラベルがない場合には、「判定なし」を付与する。
【0043】
次に、管理装置20の制御部21は、基準時間の経過かどうかについての判定処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部21の管理部213は、処理開始からの経過時間(例えば、1秒)を算出する。
【0044】
基準時間を経過していないと判定した場合(ステップS23において「NO」の場合)、管理装置20の制御部21は、画像取得処理(ステップS21)以降の処理を繰り返す。
【0045】
基準時間を経過したと判定した場合(ステップS23において「YES」の場合)、管理装置20の制御部21は、出現頻度の算出処理を実行する(ステップS24)。具体的には、制御部21の管理部213は、メモリに仮記憶された各ラベルの出現頻度を算出する。そして、管理部213は、出現頻度が最も高いラベルを特定し、計測情報記憶部25に現在時刻に関連付けて記録する。そして、管理部213は、メモリをリセットする。
【0046】
次に、管理装置20の制御部21は、作業区切りかどうかについての判定処理を実行する(ステップS25)。具体的には、制御部21の管理部213は、シールド工法の掘削状況に応じて、作業区切りを判定する。例えば、一リング分の掘進作業を終了した場合や、先行の作業区切りからの経過時間に基づいて、作業区切りを判定する。
【0047】
作業区切りでないと判定した場合(ステップS25において「NO」の場合)、管理装置20の制御部21は、画像取得処理(ステップS21)以降の処理を繰り返す。
一方、作業区切りと判定した場合(ステップS25において「YES」の場合)、管理装置20の制御部21は、土質変化の履歴の出力処理を実行する(ステップS26)。具体的には、制御部21の管理部213は、計測情報記憶部25に記録された計測情報の履歴を表示装置H13に出力する。この場合、管理者は、計測情報を確認して、掘進条件や添加剤の注入量等を調整する。
【0048】
次に、管理装置20の制御部21は、終了かどうかについての判定処理を実行する(ステップS27)。具体的には、制御部21の管理部213は、入力装置H12をおいて、管理者による作業終了の入力を検知した場合には終了と判定する(ステップS27において「YES」)。
終了でないと判定した場合(ステップS27において「NO」の場合)、管理装置20の制御部21は、画像取得処理(ステップS21)以降の処理を繰り返す。
【0049】
(作用)
撮影時の視野範囲を固定した場合、撮影画像において搬送土の各性状は、所定の領域に発現しやすい。例えば、搬送土が比較的固い場合には、スクリューコンベヤでの搬送時に、その性状(形態)が発現しやすい。また、搬送土が柔らかくなった場合には、スクリューコンベヤのみならず、ベルトコンベヤ全体にも搬送土が広がって、その性状(形態)が発現しやすい。ラベルに応じてアノテーション枠を個別に設定することにより、性状の発現領域を考慮した予測モデルを生成することができる。
【0050】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、教師情報である撮影画像において、ラベルに応じてアノテーション枠を個別に設定する。これにより、搬送土の土質に応じた性状が発現しやすい領域を用いて機械学習を行なうことができる。
【0051】
この予測モデルの評価は、以下の処理によって行なった。
各ラベルの土質R1について以下の混合行列を作成した。
【0052】
【0053】
そして、推定結果に関する正解率、再現率、適合率、調和平均を算出する。
・正解率((TP+TN)/(TP+FP+TN+FN))
正解率は、すべての予測に対して正解した予測の割合であり、予測と目視が一致していたものの割合である。
【0054】
・再現率(TP/(TP+TN))
再現率は、実際に正(positive)であるものの中で予測が正のものの割合であり、目視がR1において、予測もR1の割合である。
【0055】
・適合率(TP/(TP+FP))
適合率は、実際に正(positive)であるものの中で実際に正のものの割合であり、予測がR1において、目視もR1の割合である。
【0056】
・調和平均(2*適合率*再現率/(適合率+再現率))
調和平均は、対照的な特徴を持つ適合率と再現率の調和平均である。この場合、FP、FNが多い場合には値が小さくなる。
【0057】
図6には、各ラベルで共通して設定されたアノテーション枠F0を示している。このアノテーション枠F0を用いて学習した予測モデルを用いた推定結果を、比較例として、本実施形態の推定結果と比較する。
【0058】
図7には、推定結果の比較を示す。比較例に比べて、本実施形態のように、アノテーション枠F1~F5を個別に設定することにより、正解率、再現率、適合率及び調和平均を向上させることができる。
【0059】
(2)本実施形態では、管理装置20の制御部21は、画像の識別処理(ステップS13)、アノテーション枠の設定処理(ステップS14)を実行する。これにより、効率的にアノテーション枠を設定した教師情報を生成することができる。工事現場毎に、搬送土の状態や、撮影条件等が異なるが、少ない教師情報を用いて、効率的に現場毎の予測モデルを作成することができる。
【0060】
(3)本実施形態では、基準時間を経過したと判定した場合(ステップS23において「YES」の場合)、管理装置20の制御部21は、出現頻度の算出処理を実行する(ステップS24)。これにより、推定結果に揺らぎが生じる場合にも、統計的に搬送土の土質を判定することができる。
【0061】
(4)本実施形態では、作業区切りと判定した場合(ステップS25において「YES」の場合)、管理装置20の制御部21は、土質変化の履歴の出力処理を実行する(ステップS26)。これにより、搬送土の状態に応じて、添加剤の注入量や掘進条件等を調整することができる。
【0062】
また、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。なお、本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0063】
・上記実施形態では、シールド掘進機10からの搬出土の土質を推定するが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではない。
・上記実施形態では、
図3に示すように、アノテーション枠F1~F5を個別に設定する。アノテーション枠の配置はこれに限定されるものではない。例えば、柔らかさに応じて、アノテーション枠を段階的に広げるようにしてもよい。
また、各レベルを付与した撮影画像において、特徴量が大きい領域を機械学習により特定してもよい。例えば、共通したアノテーション枠を設定した教師情報により説明可能な機械学習を用いて、ラベルを予測する予測モデルを作成する。そして、各ラベルが付与された教師情報において、特徴的な領域を特定し、ラベル毎にアノテーション枠を設定して、再学習を行なう。
【0064】
・上記実施形態では、5種類のラベルを用いる。ラベルの種類は複数であれば、5種類に限定されるものではない。
・上記実施形態では、スクリューコンベヤ16(第1搬送領域)からベルトコンベヤ17(第2搬送領域)への排土領域の撮影画像を用いる。撮影領域は、排出口に限定されるものではない。具体的には、搬送土の性状に変化を与えられる領域が望ましい。例えば、ベルトコンベヤ17に段差を設け、段差からの落下状況や落下直後の状況を、撮影装置20aで撮影して評価するようにしてもよい。
【0065】
また、ベルトコンベヤ17の上方に、搬送土の上部がぶつかる成形器を配置し、成形器によって堰き止められて蓄積された搬送土の形状の撮影画像を用いることも可能である。この場合にも、土質の区分に応じて、性状が発現しやすい領域に、それぞれのアノテーション枠を設定する。
【0066】
・上記実施形態では、管理装置20の制御部21は、基準時間の経過かどうかについての判定処理を実行する(ステップS23)。ここで、基準時間は、スクリューコンベヤ16や、ベルトコンベヤ17の搬送速度に応じて設定してもよい。
【符号の説明】
【0067】
10…シールド掘進機、11…スキンプレート、12…隔壁、13…カッターモータ、14…カッター、15…添加剤注入管、16…スクリューコンベヤ、17…ベルトコンベヤ、20…管理装置、20a…撮影装置、21…制御部、211…取得部、212…学習部、213…管理部、22…アノテーション情報記憶部、23…教師情報記憶部、24…学習結果記憶部、25…計測結果記憶部。