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特開2023-180662画像形成装置、画像形成方法、及び画像形成プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180662
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、及び画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/355 20060101AFI20231214BHJP
   B41J 2/36 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B41J2/355 B
B41J2/36 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094155
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100152515
【弁理士】
【氏名又は名称】稲山 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】福地 功
(72)【発明者】
【氏名】南 明
(72)【発明者】
【氏名】西原 佳佑
【テーマコード(参考)】
2C066
【Fターム(参考)】
2C066AA03
2C066AB09
2C066AD01
2C066BF04
2C066CC01
2C066CC13
(57)【要約】
【課題】複数の色の混色からなる画像の周辺に、複数の色の何れかのみが発色した場合でも、印刷媒体に形成される画像の見栄えを良好に維持できる画像形成装置、画像形成方法、及び画像形成プログラムを提供する。
【解決手段】画像形成装置は、第1温度を超えた場合に第1色に発色する第1層と、第1温度よりも低い第2温度を超えた場合に第2色に発色する第2層と、第2温度よりも低い第3温度を超えた場合に第3色に発色する第3層と、が厚み方向にこの順で並んだ記録媒体に、記録媒体を搬送しつつ画像を記録する。画像形成装置は、第1層側から記録媒体にエネルギーを付与するヘッドと、ヘッドが記録媒体に付与するエネルギーを制御する制御部とを備える。制御部は、第2色又は第3色に発色させ(S31、S33)、その後、第1色に発色させる(S35)。これにより、第1色と第2色と第3色との混色の画像を記録媒体に形成させる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1温度を超えた場合に第1色に発色する第1層と、前記第1温度よりも低い第2温度を超えた場合に第2色に発色する第2層と、前記第2温度よりも低い第3温度を超えた場合に第3色に発色する第3層と、が厚み方向にこの順で並んだ記録媒体に、前記記録媒体を搬送しつつ画像を記録する画像形成装置であって、
前記第1層側から前記記録媒体にエネルギーを付与するヘッドと、
前記ヘッドが前記記録媒体に付与するエネルギーを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記記録媒体を前記第2色又は前記第3色に発色させた後に、前記記録媒体を前記第1色に発色させるように、前記ヘッドを制御して前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させる、
ことを特徴する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、
第1時間の間前記ヘッドに供給する電力の時間平均が第1平均電力以上となるように制御して前記記録媒体にエネルギーを付与することにより、前記第1色のみの画像を前記記録媒体に形成させ、
前記第1時間よりも長い第2時間の間前記ヘッドに供給する電力の時間平均が、前記第1平均電力よりも小さい第2平均電力以上となるように制御して前記記録媒体にエネルギーを付与することにより、前記第2色のみの画像を前記記録媒体に形成させ、
前記第2時間よりも長い第3時間の間前記ヘッドに供給する電力の時間平均が、前記第2平均電力よりも小さい第3平均電力以上となるように制御して前記記録媒体にエネルギーを付与することにより、前記第3色のみの画像を前記記録媒体に形成させ、
前記第1時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第1平均電力未満となるように制御し、且つ、前記第2時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第2平均電力以下となるように制御することにより、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1色はイエローであり、前記第2色はマゼンタであり、前記第3色はシアンであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1色はイエローであり、前記第2色はシアンであり、前記第3色はマゼンタであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第1平均電力未満となるように制御し、且つ、前記第2時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第2平均電力未満となるように制御することにより、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第1平均電力未満となるように制御し、且つ、前記第2時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第2平均電力と同一となるように制御することにより、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
第1温度を超えた場合に第1色に発色する第1層と、前記第1温度よりも低い第2温度を超えた場合に第2色に発色する第2層と、前記第2温度よりも低い第3温度を超えた場合に第3色に発色する第3層と、が厚み方向にこの順で並んだ記録媒体に、前記記録媒体を搬送しつつ画像を記録する画像形成方法であって、
前記記録媒体の前記第1層側からエネルギーを付与するヘッドから前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記記録媒体を前記第2色又は前記第3色に発色させる第1ステップと、
前記第1ステップにより前記第2色又は前記第3色に発色させた後、前記ヘッドから前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記記録媒体を前記第1色に発色させる第2ステップと
を備え、
前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させることを特徴する画像形成方法。
【請求項8】
第1温度を超えた場合に第1色に発色する第1層と、前記第1温度よりも低い第2温度を超えた場合に第2色に発色する第2層と、前記第2温度よりも低い第3温度を超えた場合に第3色に発色する第3層と、が厚み方向にこの順で並んだ記録媒体に、前記記録媒体を搬送しつつ画像を記録する画像形成装置のコンピュータに、
前記記録媒体の前記第1層側からエネルギーを付与するヘッドから前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記記録媒体を前記第2色又は前記第3色に発色させる第1ステップと、
前記第1ステップにより前記第2色又は前記第3色に発色させた後、前記ヘッドから前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記記録媒体を前記第1色に発色させる第2ステップと
を実行させ、
前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させることを特徴する画像形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、及び画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
発色する色の異なる複数の発色層を有する印刷媒体に印刷を行うことが可能な画像形成装置が知られている。特許文献1に記載の画像形成装置は、イエロー、マゼンタ、及びシアンに発色する3つの発色層を有する印刷媒体に対し、印刷ヘッドの加熱によりエネルギーを付与する。画像形成装置は、各色に対応する信号パターンを用いて印刷ヘッドを制御することにより、所望の発色層を発色させて印刷媒体に画像を形成させる。又、特許文献1に記載の画像形成装置では、ブラックの画像を印刷媒体に形成させる場合、イエロー、マゼンタ、及びシアンのそれぞれに対応する信号パターンを論理和した信号パターンを生成し、この信号パターンを用いて印刷ヘッドを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6806844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各発色層が発色するタイミングにずれが生じる場合がある。この場合、上記の方法で印刷ヘッドが制御されると、3つの発色層がすべて発色することにより形成されるブラックの画像の周辺に、イエローに発色した部分が形成される可能性がある。この場合、印刷媒体に形成される画像の見栄えが悪くなる場合があるという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、複数の色の混色からなる画像の周辺に、複数の色の何れかのみが発色した場合でも、印刷媒体に形成される画像の見栄えを良好に維持できる画像形成装置、画像形成方法、及び画像形成プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様に係る画像形成装置は、第1温度を超えた場合に第1色に発色する第1層と、前記第1温度よりも低い第2温度を超えた場合に第2色に発色する第2層と、前記第2温度よりも低い第3温度を超えた場合に第3色に発色する第3層と、が厚み方向にこの順で並んだ記録媒体に、前記記録媒体を搬送しつつ画像を記録する画像形成装置であって、前記第1層側から前記記録媒体にエネルギーを付与するヘッドと、前記ヘッドが前記記録媒体に付与するエネルギーを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記記録媒体を前記第2色又は前記第3色に発色させた後に、前記記録媒体を前記第1色に発色させるように、前記ヘッドを制御して前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させる、ことを特徴する。
【0007】
第1態様において、例えば、第1層がイエローに発色し、第2層がマゼンダに発色し、第3層がシアンに発色する記録媒体に対して、イエロー、マゼンタ、シアンの混色であるブラックの画像を記録媒体に形成させる場合において、ブラックの画像の周辺にイエローが発色することを抑制できる。従って画像形成装置は、例えば、第1色、第2色、及び第3色の混色の画像を記録媒体に形成させる場合において、画像の見栄えを良好に維持できる。
【0008】
第1態様において、前記制御部は、第1時間の間前記ヘッドに供給する電力の時間平均が第1平均電力以上となるように制御して前記記録媒体にエネルギーを付与することにより、前記第1色のみの画像を前記記録媒体に形成させ、前記第1時間よりも長い第2時間の間前記ヘッドに供給する電力の時間平均が、前記第1平均電力よりも小さい第2平均電力以上となるように制御して前記記録媒体にエネルギーを付与することにより、前記第2色のみの画像を前記記録媒体に形成させ、前記第2時間よりも長い第3時間の間前記ヘッドに供給する電力の時間平均が、前記第2平均電力よりも小さい第3平均電力以上となるように制御して前記記録媒体にエネルギーを付与することにより、前記第3色のみの画像を前記記録媒体に形成させ、前記第1時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第1平均電力未満となるように制御し、且つ、前記第2時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第2平均電力以下となるように制御することにより、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させてもよい。この場合、画像形成装置は、第2色又は第3色に発色させた後に、第1色に発色させるように、ヘッドを制御して記録媒体にエネルギーを付与できる。
【0009】
第1態様において、前記第1色はイエローであり、前記第2色はマゼンタであり、前記第3色はシアンであってもよい。この場合、記録媒体において、ブラックの画像の周辺で発色する色は、マゼンタとシアンとの混色であるブルーとなる。従って画像形成装置は、ブラックの画像の周辺で発色する色を目立ち難くできる。
【0010】
第1態様において、前記第1色はイエローであり、前記第2色はシアンであり、前記第3色はマゼンタであってもよい。この場合、記録媒体においてブラックの画像の周辺で発色する色は、シアンとマゼンタとの混色であるブルーとなる。従って画像形成装置は、ブラックの画像の周辺で発色する色を目立ち難くできる。
【0011】
第1態様において、前記制御部は、前記第1時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第1平均電力未満となるように制御し、且つ、前記第2時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第2平均電力未満となるように制御することにより、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させてもよい。この場合、画像形成装置は、第1色、第2色、第3色の混色の画像の周辺で発色する色を、第3色、又は、第2色と第3色との混色とすることによって、第1色、第2色、第3色の混色の画像の周辺で発色する色を目立ち難くできる。
【0012】
第1態様において、前記制御部は、前記第1時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第1平均電力未満となるように制御し、且つ、前記第2時間の間前記ヘッドに供給される電力の時間平均が前記第2平均電力と同一となるように制御することにより、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させてもよい。この場合、画像形成装置は、第1色、第2色、第3色の混色の画像の周辺で発色する色を、第2色、又は、第2色と第3色との混色とすることによって、第1色、第2色、第3色の混色の画像の周辺で発色する色を目立ち難くできる。
【0013】
本発明の第2態様に係る画像形成方法は、第1温度を超えた場合に第1色に発色する第1層と、前記第1温度よりも低い第2温度を超えた場合に第2色に発色する第2層と、前記第2温度よりも低い第3温度を超えた場合に第3色に発色する第3層と、が厚み方向にこの順で並んだ記録媒体に、前記記録媒体を搬送しつつ画像を記録する画像形成方法であって、前記記録媒体の前記第1層側からエネルギーを付与するヘッドから前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記記録媒体を前記第2色又は前記第3色に発色させる第1ステップと、前記第1ステップにより前記第2色又は前記第3色に発色させた後、前記ヘッドから前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記記録媒体を前記第1色に発色させる第2ステップとを備え、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させることを特徴する。第2態様によれば、第1態様と同様の効果を奏する。
【0014】
本発明の第3態様に係る画像形成プログラムは、第1温度を超えた場合に第1色に発色する第1層と、前記第1温度よりも低い第2温度を超えた場合に第2色に発色する第2層と、前記第2温度よりも低い第3温度を超えた場合に第3色に発色する第3層と、が厚み方向にこの順で並んだ記録媒体に、前記記録媒体を搬送しつつ画像を記録する画像形成装置のコンピュータに、前記記録媒体の前記第1層側からエネルギーを付与するヘッドから前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記記録媒体を前記第2色又は前記第3色に発色させる第1ステップと、前記第1ステップにより前記第2色又は前記第3色に発色させた後、前記ヘッドから前記記録媒体にエネルギーを付与し、前記記録媒体を前記第1色に発色させる第2ステップとを実行させ、前記第1色と前記第2色と前記第3色との混色の画像を前記記録媒体に形成させることを特徴する。第3態様によれば、第1態様と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)カバー3が閉じられた状態のプリンタ1の斜視図であり、(B)カバー3が開かれた状態のプリンタ1の斜視図である。
図2】カセット6が装着されたカセット装着部8の、カセット装着部8の底面の図示を省略した平面図である。
図3】感熱テープMの斜視図である。
図4】プリンタ1の電気的構成を示すブロック図である。
図5】本実施形態において、サーマルヘッド15に電力を供給する為にドライバ73に出力される信号のパターンを示す図である。
図6】シアン、マゼンタ、イエローの順で発色することによりブラックの画像が形成される様子を示す図である。
図7】イエロー、マゼンタ、シアンの順で発色することによりブラックの画像が形成される様子を示す図である。
図8】メイン処理のフローチャートである。
図9】変形例において、サーマルヘッド15に電力を供給する為にドライバ73に出力される信号のパターンを示す図である。
図10】マゼンタ、シアン、イエローの順で発色することによりブラックの画像が形成される様子を示す図である。
図11】変形例におけるメイン処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載される装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。本実施形態の説明では、図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、下側を、各々、プリンタ1の左側、右側、前側、後側、上側、下側とする。
【0017】
<プリンタ1の概要>
図1図2を参照して、プリンタ1を説明する。プリンタ1は、感熱タイプ及び熱転写タイプのテープ印刷装置である。プリンタ1には、一例として、記録媒体として感熱テープMを含むカセット6が装着される。プリンタ1は、カセット6から感熱テープMを繰り出して搬送しながら、後述のサーマルヘッド15によって加熱することにより、印刷を行う。
【0018】
図1(A)及び図1(B)に示すように、プリンタ1は、筐体2、カバー3、表示部4、操作部5を備える。筐体2は、略直方体形状である。筐体2の左側面には、排出スリット10が形成される。排出スリット10は上下方向に延びる開口であり、印刷済みの感熱テープMを筐体2の外部に排出する。カバー3は、筐体2の後端部において、左右方向に延びる軸を中心に回動可能に支持される。図1(A)は筐体2に対しカバー3が閉じられた状態であり、図1(B)は筐体2に対しカバー3が開かれた状態である。カバー3は、例えば、カセット6の交換時に開閉される。以下の説明では、筐体2に対してカバー3が閉じられている状態を基準に、各部材の構成を説明する。
【0019】
図1(A)に示すように、表示部4は、カバー3の上面に設けられる。表示部4は例えば液晶ディスプレイであり、各種情報を表示可能である。操作部5は、カバー3の前方、且つ、筐体2上面の前部に配設される。操作部5は、プリンタ1に各種指示を入力する場合に操作される。
【0020】
図1(B)、図2に示すように、プリンタ1は、筐体2とカバー3とによって囲まれた空間に、カセット装着部8、ヘッドホルダ16、サーマルヘッド15、プラテンホルダ13、プラテンローラ11、搬送ローラ12、モータ36、及び切断機構17を備える。
【0021】
カセット装着部8は、カセット6を装着可能な下方に凹む凹部である。ヘッドホルダ16は、カセット装着部8の前部に設けられた金属製の板状である。ヘッドホルダ16は、前面にサーマルヘッド15を搭載する。サーマルヘッド15は、複数の発熱素子を備える。
【0022】
プラテンホルダ13は、ヘッドホルダ16の前側に設けられたアーム状である。プラテンホルダ13の右端部は、上下方向に延びる軸14を中心に揺動可能に軸支される。プラテンローラ11及び搬送ローラ12は、プラテンホルダ13の左端部に、上下方向に延びる軸を中心に回転可能に軸支される。プラテンローラ11は、サーマルヘッド15に対向して、サーマルヘッド15と接離可能である。搬送ローラ12は、プラテンローラ11の左側に位置する。搬送ローラ12は、カセット6に設けられた搬送ローラ(非図示)と接離可能である。プラテンホルダ13は、カバー3の開閉に連動して待機位置と印刷位置とに揺動する。印刷位置は、プラテンホルダ13がカセット装着部8と近接した位置である。
【0023】
カバー3が開かれると、プラテンホルダ13は印刷位置から待機位置に向けて移動する。待機位置は、プラテンホルダ13がカセット装着部8から離隔した位置である。プラテンホルダ13が待機位置にある時、ユーザはカセット6をカセット装着部8に対して着脱可能である。カバー3が閉じられると、プラテンホルダ13は待機位置から印刷位置に向けて揺動する。カセット6がカセット装着部8に装着されている場合、プラテンローラ11は感熱テープMをサーマルヘッド15に押し付ける。搬送ローラ12は、カセット6の搬送ローラとの間に感熱テープMを挟む。
【0024】
モータ36はステッピングモータである。モータ36の回転駆動力は、プラテンローラ11及び搬送ローラ12に伝達される。カセット6がカセット装着部8に装着された状態でモータ36が駆動した場合、プラテンローラ11及び搬送ローラ12は平面視反時計回り方向に回転する。
【0025】
切断機構17は、カセット装着部8の左側、且つ排出スリット10(図1(B)参照)の右方に設けられる。切断機構17は、カセット6から排出された感熱テープMを切断する。切断機構17は、金属製の固定刃18及び移動刃19を有する。移動刃19は、固定刃18に対向して配置され、固定刃18に対し移動可能である。
【0026】
<感熱テープM>
感熱テープMは、カセット6の筐体60内に収容される。感熱テープMは長尺状の媒体であり、複数の層が積層されて構成される。感熱テープMは、多色印刷を行うことが可能である。
【0027】
図3に示すように、感熱テープMは、基材61と複数の発色層62と複数の遮熱層63とオーバーコート層64とを有する。複数の発色層62は、第1発色層621と第2発色層622と第3発色層623とを含む。複数の遮熱層63は第1遮熱層631と第2遮熱層632とを含む。
【0028】
オーバーコート層64、第1発色層621、第1遮熱層631、第2発色層622、第2遮熱層632、第3発色層623、及び基材61は、この順で感熱テープMの厚み方向に並んで積層される。複数の発色層62、及び複数の遮熱層63は、透明性を有する。プリンタ1による印刷時、感熱テープMの基材61側の表面にプラテンローラ11が接触する。感熱テープMの複数の発色層62のうち第1発色層621側、即ち、オーバーコート層64の表面にサーマルヘッド15が接触する。
【0029】
基材61は樹脂フィルムである。複数の発色層62の各層には、温度上昇時に発色する発色部が含まれる。第1遮熱層631は、隣接する第1発色層621と第2発色層622との間の熱の伝導を抑制する。第2遮熱層632は、隣接する第2発色層622と第3発色層623との間の熱の伝導を抑制する。オーバーコート層64は、複数の発色層62を保護する。
【0030】
第1発色層621は、所定の第1温度T1を超えた場合に透明性が低下する。これにより、第1発色層621は第1色に発色する。例えば、第1色はイエローである。第2発色層622は、所定の第2温度T2を超えた場合に透明性が低下する。これにより、第2発色層622は第2色に発色する。例えば、第2色はマゼンタである。第3発色層623は、所定の第3温度T3を超えた場合に透明性が低下する。これにより、第3発色層623は第3色に発色する。例えば、第3色はシアンである。第1温度T1よりも第2温度T2が低い(T1>T2)。第2温度T2よりも第3温度T3が低い(T2>T3)。
【0031】
なお本実施形態において、イエロー、マゼンタ、及びシアンの各色は、それぞれ、マンセル表色系において定義される。より具体的には、イエローは、マンセル表色系におけるYR、Yにて定義される色である。マゼンタは、マンセル表色系におけるRP、Pにて定義される色である。シアンは、マンセル表色系におけるB、PBにて定義される色である。
【0032】
<印刷動作の概要>
プリンタ1は、カセット6から感熱テープMを繰り出し、排出スリット10に向けて搬送する。感熱テープMは、サーマルヘッド15とプラテンローラ11との間を通過する過程で、プラテンローラ11によってサーマルヘッド15に押し付けられる。プリンタ1は、この状態でサーマルヘッド15の複数の発熱素子に電圧を印加する。複数の発熱素子には、電圧の印加により電流が流れることに応じ、電力が供給される。複数の発熱素子は、電力が供給されることにより発熱する。発熱した複数の発熱素子は、感熱テープMに対して第1発色層621側からエネルギーを付与する。これにより、感熱テープMの複数の発色層62が加熱されて発色し、感熱テープMに画像が印刷される。
【0033】
印刷済みの感熱テープMは、モータ36の駆動により回転するプラテンローラ11及び搬送ローラ12によって搬送され、排出スリット10を介してプリンタ1の外部に排出される。
【0034】
<電気的構成>
図4を参照し、プリンタ1の電気的構成について説明する。プリンタ1は、プリンタ1全般の制御を司るCPU71を備える。CPU71は、記憶部72、表示部4、操作部5、モータ36、ドライバ73、計測部74と電気的に接続する。記憶部72には、CPU71が実行するプログラム、印刷データが記憶される。表示部4には、CPU71から出力される信号に応じて各種情報が表示される。操作部5に対して行われた入力操作を示す信号は、操作部5からCPU71に出力される。CPU71は、操作部5から出力された信号を検出することにより、操作部5に対して行われた入力操作を検出できる。
【0035】
モータ36は、CPU71から出力される信号に応じて駆動し、プラテンローラ11及び搬送ローラ12を回転させる。ドライバ73は、CPU71から出力される信号に応じ、サーマルヘッド15の複数の発熱素子に電力を供給する。計測部74は、サーマルヘッド15の複数の発熱素子に供給された電力を計測し、計測した電力を示す信号をCPU71に出力する。CPU71は、計測部74から出力された信号に基づき、サーマルヘッド15の複数の発熱素子に実際に供給された電力を検出できる。
【0036】
<印刷動作の詳細>
印刷動作の詳細について説明する。印刷動作時、ドライバ73は、CPU71から出力される信号に基づき、サーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力を周期的に供給する。図5は、CPU71がドライバ73に出力する信号の経時変化を示す。ドライバ73は、CPU71から出力される信号がHiレベルの時、サーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力を供給し、CPU71から出力される信号がLowレベルの時、サーマルヘッド15の複数の発熱素子に対する電力の供給を停止する。
【0037】
図5(a)に示すように、第1発色層621を発色させてイエローのみの画像を感熱テープMに形成させる場合、ドライバ73に対し、時間幅C1であるHiレベルの信号が1つ出力される。これにより、ドライバ73からサーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力が供給される。複数の発熱素子は発熱して感熱テープMにエネルギーを付与し、第1発色層621がイエローに発色する。
【0038】
イエローの画像を感熱テープMに形成させる為に電力が供給される時間を、第1時間t1と定義する。第1時間t1は、ドライバ73に対して出力されるHiレベルの信号の繰返し周期1個分と一致する。第1時間t1の間、サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、第1平均電力W1という。なお、第1発色層621は、第1時間t1の間供給される電力の時間平均が第1平均電力W1以上の場合、イエローに発色する。
【0039】
図5(b)に示すように、第2発色層622を発色させてマゼンタのみの画像を感熱テープMに形成させる場合、ドライバ73に対し、時間幅C2であるHiレベルの信号が、周期Tcで周期的に6個出力される。時間幅C2は、時間幅C1未満である(C1>C2)。これにより、ドライバ73からサーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力が供給される。複数の発熱素子は発熱して感熱テープMにエネルギーを付与し、第2発色層622がマゼンタに発色する。
【0040】
マゼンタの画像を感熱テープMに形成させる為に電力が供給される時間を、第2時間t2と定義する。第2時間t2は、ドライバ73に対して出力されるHiレベルの信号の繰返し周期6個分と一致する。第2時間t2は、第1時間t1よりも長い(t1<t2)。第2時間t2の間、サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、第2平均電力W2という。第2平均電力W2は、第1平均電力W1未満である(W1>W2)。なお、第2発色層622は、第2時間t2の間供給される電力の時間平均が第2平均電力W2以上の場合、マゼンタに発色する。
【0041】
図5(c)に示すように、第3発色層623を発色させてシアンのみの画像を感熱テープMに形成させる場合、ドライバ73に対し、時間幅C3であるHiレベルの信号が、周期Tcで周期的に15個出力される。時間幅C3は、時間幅C2未満である(C2>C3)。これにより、ドライバ73からサーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力が供給される。複数の発熱素子は発熱して感熱テープMにエネルギーを付与し、第3発色層623がシアンに発色する。
【0042】
シアンの画像を感熱テープMに形成させる為に電力が供給される時間を、第3時間t3と定義する。第3時間t3は、ドライバ73に対して出力されるHiレベルの信号の繰返し周期15個分と一致する。第3時間t3は、第2時間t2よりも長い(t2<t3)。第3時間t3の間、サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、第3平均電力W3という。第3平均電力W3は、第2平均電力W2未満である(W2>W3)。なお、第3発色層623は、第3時間t3の間供給される電力の時間平均が第3平均電力W3以上の場合、シアンに発色する。
【0043】
第1発色層621、第2発色層622、及び第3発色層623をすべて発色させ、イエロー、マゼンタ、及びシアンの混色であるブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合について説明する。この場合、図5(d)に示すように、ドライバ73に対し、時間幅C41であるHiレベルの信号が、周期Tcで周期的に15個出力される。時間幅C41は、時間幅C1、C2よりも小さく、時間幅C3よりも大きい(C1>C2>C41>C3)。ブラックの画像を感熱テープMに形成させる為に電力が供給される時間を、第4時間t41と定義する。第4時間t41は、ドライバ73に対して出力されるHiレベルの信号の繰返し周期15個分と一致する。第4時間t41は、第3時間t3と同一である(t3=t41)。
【0044】
ブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合において、ドライバ73に対してHiレベルの信号が最初に出力されてから第1時間t1の間、サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、平均電力W41という。平均電力W41は、第1平均電力W1未満である(W1>W41)。ブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合において、ドライバ73に対してHiレベルの信号が最初に出力されてから第2時間t2の間、サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、平均電力W42という。平均電力W42は、第2平均電力W2未満である(W2>W42)。
【0045】
図5(d)に示す信号がドライバ73に対して出力されることに応じ、ドライバ73からサーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力が供給され、複数の発熱素子は発熱して感熱テープMにエネルギーを付与する。この場合、図6に示すように、はじめに第3発色層623がシアン(C)に発色する(図6(a))。次に、第2発色層622がマゼンタ(M)に発色する(図6(b))。シアン(C)とマゼンタ(M)とが重なる部分は、それぞれの色の混色であるブルー(B)となる。次に、第1発色層621がイエロー(Y)に発色する(図6(c))。シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)が重なる部分は、それぞれの色の混色であるブラック(K)となる。以上により、ブラック(K)の画像が最終的に感熱テープMに形成される。
【0046】
なお、感熱テープMは、搬送されながらサーマルヘッド15により加熱される。このため、プリンタ1が上記のようにブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合、シアン、マゼンタ、イエローの発色タイミングが相違することに応じ、それぞれの色に発色する位置が、感熱テープMの搬送方向に僅かにずれる。例えば図6(b)に示すように、シアン(C)とマゼンタ(M)との混色であるブルー(B)の部分の周辺に、先に発色したシアン(C)の部分が隣接して形成される。又、例えば図6(c)に示すように、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の混色であるブラック(K)の部分の周辺に、シアン(C)とマゼンタ(M)との混色であるブルー(B)の部分が隣接して形成される。
【0047】
なお、上記とは異なり、例えば図7に示すように、はじめに第1発色層621がイエロー(Y)に発色し(図7(a))、次に第2発色層622がマゼンタ(M)に発色し(図7(b))、次に第3発色層623がシアン(C)に発色する(図7(c))場合を考える。この場合、例えば図7(b)に示すように、イエロー(Y)とマゼンタ(M)との混色であるレッド(R)の部分の周辺に、先に発色したイエロー(Y)の部分が隣接して形成される。又、例えば図7(c)に示すように、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の混色であるブラック(K)の部分の周辺に、イエロー(Y)とマゼンタ(M)との混色であるレッド(R)の部分が隣接して形成される。この場合、特にブラック(K)とイエロー(Y)の色差が大きいため、イエロー(Y)の部分が目立ちやすい。
【0048】
一方、図6に示すように、本実施形態の場合、ブラック(K)とシアン(C)との間の色差は、図7に示すブラック(K)とイエロー(Y)との間の色差よりも小さくなり、シアン(C)の部分は目立ち難くなる。このように、本実施形態によれば、ブラックの画像の周辺にイエローが発色することを抑制することで、感熱テープMに形成される画像の見栄えを良好に維持できる。
【0049】
<メイン処理>
図8を参照し、メイン処理について説明する。メイン処理は、印刷を開始するための入力操作を、CPU71が操作部5を介して検出した場合、記憶部72に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより開始される。
【0050】
CPU71は、記憶部72に記憶された印刷データを取得する(S11)。CPU71は、取得した印刷データに基づいて印刷される画像に含まれる色を特定する(S13)。CPU71は、感熱テープMを特定した色に発色させる為にドライバ73に出力する信号のパターン(図5(A)~図5(D)参照)を決定する(S15)。
【0051】
CPU71は、モータ36を駆動してプラテンローラ11及び搬送ローラ12の回転を開始させる。これによりCPU71は、カセット6から繰り出された感熱テープMの搬送を開始する(S17)。CPU71は、S15で決定したパターンに基づき、ドライバ73に対して信号を出力する(S19)。
【0052】
例えばブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合、CPU71は、図5(d)に示すパターンの信号をドライバ73に対して出力する。ドライバ73は、CPU71が出力した信号に基づき、サーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力を供給する。この場合、第1時間t1の間サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均は、第1平均電力W1未満である平均電力W41となり(W1>W41)、且つ、第2時間t2の間サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均は、第2平均電力W2未満である平均電力W42となる(W2>W42)。
【0053】
ドライバ73からサーマルヘッド15に対して電力が供給されることにより、サーマルヘッド15の複数の発熱素子は発熱し、感熱テープMにエネルギーを付与する。これにより、はじめに第3発色層623がシアンに発色する(S31、図6(a)参照)。次に、第2発色層622がマゼンタに発色する(S33、図6(b)参照)。シアンとマゼンタとが重なる部分は、それぞれの色の混色であるブルーとなる。次に、第1発色層621がイエローに発色する(S35、図6(c))。これにより、シアン、マゼンタ、及びイエローが重なる部分は、それぞれの色の混色であるブラック(K)となる。以上により、ブラック(K)の画像が感熱テープMに形成される。
【0054】
CPU71は、印刷データに基づく印刷が全て終了したか判定する(S21)。CPU71は、印刷が全て終了していないと判定した場合(S21:NO)、処理をS19に戻す。CPU71は、S11で取得した印刷データに基づき、S19の処理を繰り返す。CPU71は、印刷が全て終了したと判定した場合(S21:YES)、モータ36の駆動を停止してプラテンローラ11及び搬送ローラ12の回転を停止させる。これにより、CPU71は、S11で開始した感熱テープMの搬送を停止させる(S23)。CPU71は、メイン処理を終了させる。
【0055】
<本実施形態の作用、効果>
上記のように、プリンタ1は、はじめに感熱テープMをシアンに発色させ、次に感熱テープMをマゼンタに発色させ、次に感熱テープMをイエローに発色させるよう、サーマルヘッド15を制御する。これによりプリンタ1は、シアン、マゼンタ、イエローの混色であるブラックの画像を、感熱テープMに形成させる。この場合、プリンタ1は、ブラックとの色差が大きいイエローの部分がブラックの部分の周辺に形成されることを抑制できる。従って、プリンタ1は、感熱テープMに印刷されるブラックの画像の見栄えを良好に維持できる。
【0056】
感熱テープMにおいて、第1発色層621が発色する第1色はイエローであり、第2発色層622が発色する第2色はマゼンタであり、第3発色層623が発色する第3色はシアンである。又、感熱テープMは、サーマルヘッド15により第1発色層621側からエネルギーが付与され、発色する。この場合、プリンタ1は、サーマルヘッド15から感熱テープMに付与されるエネルギーを制御することにより、シアン、マゼンタ、イエローの順に発色させる制御を適切に行うことができる。
【0057】
プリンタ1は、ブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合において、第1時間t1の間サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、第1平均電力W1未満である平均電力W41とし、且つ、第2時間t2の間サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、第2平均電力W2未満である平均電力W42とする。これにより、プリンタ1は、感熱テープMを、シアン、マゼンタ、イエローの順に発色させることができる。又、この場合、感熱テープMにおいてブラックの部分の周辺で発色する色は、シアンとマゼンタとの混色であるブルー、又はシアンとなる。従ってプリンタ1は、ブラックの部分の周辺で発色する色とブラックとの間の色差を小さくすることができるので、ブラックの部分の周辺で発色する色を目立ち難くできる。
【0058】
<変形例>
図9図10図11を参照し、本実施形態の変形例について説明する。変形例は、イエロー、マゼンタ、及びシアンの混色であるブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合においてドライバ73に出力される信号のパターンが、図9(d)と相違する。図9(a)、図9(b)、図9(c)における信号のパターンは、それぞれ、図9(a)、図9(b)、図9(c)と同一である。
【0059】
図9(d)は、第1発色層621、第2発色層622、及び第3発色層623をすべて発色させ、イエロー、マゼンタ、及びシアンの混色であるブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合における信号のパターンを示す。ドライバ73に対し、はじめに時間幅C42であるHiレベルの信号が、周期Tcで周期的に6個出力され、次に、時間幅C43であるHiレベルの信号が、周期Tcで周期的に9個出力される。時間幅C42は、マゼンタに発色させる場合に出力されるHiレベルの信号の時間幅C2と同一である(C2=C42)。ブラックの画像を感熱テープMに形成させる為に電力が供給される第4時間t42は、シアンに発色させる場合の第3時間t3と同一である(t3=t42)。
【0060】
ドライバ73に対してHiレベルの信号が最初に出力されてから第1時間t1の間、サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、平均電力W43という。平均電力W43は、第1平均電力W1未満である(W1>W43)。ドライバ73に対してHiレベルの信号が最初に出力されてから第2時間t2の間、サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、平均電力W44という。平均電力W42は、第2平均電力W2と同一である(W2=W44)。
【0061】
ドライバ73からサーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力が供給され、複数の発熱素子は発熱して感熱テープMにエネルギーを付与する。この場合、図10に示すように、はじめに第2発色層622がマゼンタ(M)に発色する(図10(a))。次に、第3発色層623がシアン(C)に発色する(図10(b))。シアン(C)とマゼンタ(M)とが重なる部分は、それぞれの色の混色であるブルー(B)となる。次に、第1発色層621がイエロー(Y)に発色する(図10(c))。これにより、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)が重なる部分は、それぞれの色の混色であるブラック(K)となる。以上により、ブラック(K)の画像が最終的に感熱テープMに形成される。
【0062】
なお、感熱テープMが搬送されながらサーマルヘッド15により加熱されることに応じ、それぞれの色に発色する位置は、感熱テープMの搬送方向に僅かにずれる。例えば図10(b)に示すように、シアン(C)とマゼンタ(M)との混色であるブルー(B)の部分の周辺に、先に発色したマゼンタ(M)の部分が隣接して形成される。又、例えば図10(c)に示すように、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の混色であるブラック(K)の部分の周辺に、シアン(C)とマゼンタ(M)との混色であるブルー(B)の部分が隣接して形成される。
【0063】
変形例の場合、ブラック(K)とマゼンタ(M)との間の色差は、ブラック(K)とイエロー(Y)との間の色差(図7参照)よりも小さくなり、マゼンタ(M)の部分は目立ち難くなる。このように、変形例とした場合でも、ブラックの画像の周辺にイエローが発色することを抑制することで、感熱テープMに形成される画像の見栄えを良好に維持できる。
【0064】
図11を参照し、変形例におけるメイン処理について説明する。変形例におけるメイン処理は、図5のS19の代わりにS191が実行されるという点で、上記実施形態と相違する。その他の処理は、上記実施形態と同一であるので、共通する処理には図5と同一のステップ番号を付し、説明を省略する。
【0065】
図11に示すように、CPU71は、S15で決定したパターンに基づき、ドライバ73に対して信号を出力する(S191)。例えばブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合、CPU71は、図9(d)に示すパターンの信号をドライバ73に対して出力する。ドライバ73は、サーマルヘッド15の複数の発熱素子に対して電力を供給する。この場合、第1時間t1の間サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均は、第1平均電力W1未満である平均電力W43となり(W1>W43)、且つ、第2時間t2の間サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均は、第2平均電力W2と同一である平均電力W44となる(W2=W44)。
【0066】
ドライバ73からサーマルヘッド15に対して電力が供給されることにより、サーマルヘッド15の複数の発熱素子は発熱し、感熱テープMにエネルギーを付与する。これにより、はじめに第2発色層622がマゼンタに発色する(S41、図10(a)参照)。次に、第3発色層623がシアンに発色する(S43、図10(b)参照)。シアンとマゼンタとが重なる部分は、それぞれの色の混色であるブルーとなる。次に、第1発色層621がイエローに発色する(S45、図10(c))。これにより、シアン、マゼンタ、及びイエローが重なる部分は、それぞれの色の混色であるブラック(K)となる。以上により、ブラック(K)の画像が感熱テープMに形成される。
【0067】
以上のように、プリンタ1は、ブラックの画像を感熱テープMに形成させる場合、第2時間t2の間サーマルヘッド15に供給される電力の時間平均を、第2平均電力W2と同一である平均電力W44とする。これにより、感熱テープMを、マゼンタ、シアン、イエローの順に発色させることができる。従ってプリンタ1は、ブラックの部分の周辺で発色する色を、マゼンタ、又は、シアンとマゼンタとの混色であるブルーとすることによって、ブラックの画像の周辺で発色する色を目立ち難くできる。
【0068】
<その他の変形例>
第1色(イエロー)、第2色(マゼンタ)、第3色(シアン)の各色は、上記実施形態に限定されず、少なくとも何れかは他の色でもよい。例えば、第1発色層621がイエローに発色し、第2発色層622がシアンに発色し、第3発色層623がマゼンタに発色してもよい。この場合、第1色がイエロー、第2色がシアン、第3色がマゼンタに対応する。この場合でも、感熱テープMにおいてブラックの部分の周辺で発色する色は、シアンとマゼンタとの混色であるブルーとなる。従ってプリンタ1は、ブラックの部分の周辺で発色する色を目立ち難くできる。
【0069】
カセット6は透明フィルムを更に有してもよい。プリンタ1は、サーマルヘッド15により印刷された感熱テープMに透明フィルムを貼付した後、排出スリット10から排出してもよい。感熱テープMは、複数の遮熱層63を有さなくてもよい。この場合、第1発色層621と第2発色層622とが境界部分で直接接触し、且つ、第2発色層622と第3発色層623とが境界部分で直接接触してもよい。感熱テープMの発色層は3層に限定されず、4層以上でもよい。
【0070】
プリンタ1は、第2発色層622と第3発色層623が同時に発色するように、サーマルヘッド15を制御して感熱テープMに電力を供給してもよい。
【0071】
図5図9に示す信号のパターンは、適宜変更されてもよい。例えば以下のようにしてもよい。
【0072】
第1発色層621を発色させる為に、ドライバ73に対して複数のHiレベルの信号が出力されてもよい。この場合、複数のHiレベルの信号の時間幅は、それぞれ同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。又この場合、Hiレベルの信号の周期は同一であってもよいし、ランダムに出力されてもよい。
【0073】
第1発色層621、第2発色層622、及び第3発色層623を発色させるためにドライバ73に出力されるHiレベルの信号の周期Tcは、互いに相違してもよい。
【0074】
第2発色層622を発色させる為にドライバ73に出力される複数のHiレベルの信号のそれぞれの時間幅C2は、互いに異なっていてもよい。第2発色層622を発色させる為にドライバ73に出力されるHiレベルの信号の周期は、第2時間t2の何れかのタイミングで切り替えられてもよい。第2発色層622を発色させる為にドライバ73に出力されるHiレベルの信号は、ランダムな間隔で出力されてもよい。
【0075】
第3発色層623を発色させる為にドライバ73に出力される複数のHiレベルの信号のそれぞれの時間幅C3は、互いに異なっていてもよい。第3発色層623を発色させる為にドライバ73に出力されるHiレベルの信号の周期は、第3時間t3の何れかのタイミングで切り替えられてもよい。第3発色層623を発色させる為にドライバ73に出力されるHiレベルの信号は、ランダムな間隔で出力されてもよい。
【0076】
第1発色層621、第2発色層622、及び第3発色層623を発色させる為にドライバ73に出力される複数のHiレベルの信号のそれぞれの時間幅C41、C42、C43は、互いに異なっていてもよい。第1発色層621、第2発色層622、及び第3発色層623を発色させる為にドライバ73に出力されるHiレベルの信号の周期は、第4時間t41、t42の何れかのタイミングで切り替えられてもよい。第1発色層621、第2発色層622、及び第3発色層623を発色させる為にドライバ73に出力されるHiレベルの信号は、ランダムな間隔で出力されてもよい。第4時間t41、t42は、第3時間t3と相違してもよい。
【0077】
<その他>
プリンタ1は、本発明の「画像形成装置」の一例である。感熱テープMは、本発明の「記録媒体」の一例である。第1発色層621は、本発明の「第1層」の一例である。第2発色層622は、本発明の「第2層」の一例である。第3発色層623は、本発明の「第3層」の一例である。CPU71は、本発明の「制御部」の一例である。サーマルヘッド15は、本発明の「ヘッド」の一例である。
【0078】
S31、S33、S41、S43の処理は、本発明の「第1ステップ」の一例である。S35、S45の処理は、本発明の「第2ステップ」の一例である。
【符号の説明】
【0079】
1 :プリンタ
15 :サーマルヘッド
71 :CPU
621 :第1発色層
622 :第2発色層
623 :第3発色層
M :感熱テープ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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