(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180667
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】冷凍麺類用冷凍焼け防止剤、ならびにそれを用いた冷凍麺類の製造方法および冷凍麺類
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20231214BHJP
【FI】
A23L7/109 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094164
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100150326
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 知久
(72)【発明者】
【氏名】西原 紗彩
(72)【発明者】
【氏名】安藤 為明
(72)【発明者】
【氏名】松元 一頼
【テーマコード(参考)】
4B046
【Fターム(参考)】
4B046LA06
4B046LB10
4B046LC09
4B046LG01
4B046LG02
4B046LG09
4B046LG29
4B046LG46
4B046LP01
4B046LP15
4B046LP22
4B046LP25
4B046LP41
4B046LP51
4B046LP69
(57)【要約】
【課題】 専用設備の設置を必要とすることなくかつ効果的に冷凍焼けを防止することのできる、冷凍麺類用冷凍焼け防止剤、ならびにそれを用いた冷凍麺類の製造方法および冷凍麺類を提供すること。
【解決手段】本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤は、食品用膨張剤を有効成分として含有する。本発明の冷凍焼け防止剤は、冷凍麺類の中に微細なポーラス構造を形成することができる。これにより、冷凍麺類の白化を防止するとともに麺類特有の弾力のある食感を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品用膨張剤を有効成分として含有する、冷凍麺類用冷凍焼け防止剤。
【請求項2】
前記食品用膨張剤が、4質量%の水溶液に調製されかつ該水溶液を85℃で3分間加熱した後のpHが6.2から7.8である性質を有する、請求項1に記載の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤。
【請求項3】
前記食品用膨張剤が、アルカリ性剤および酸性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤。
【請求項4】
前記食品用膨張剤が、炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニウム塩、有機酸、有機酸塩、無機酸、および無機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する、請求項1に記載の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤。
【請求項5】
さらに澱粉分解酵素を含有する、請求項1に記載の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤。
【請求項6】
前記澱粉分解酵素が、4-α-グルコシルトランスフェラーゼ、6-α-グルコシルトランスフェラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、およびプルラナーゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素である、請求項5に記載の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤。
【請求項7】
冷凍麺類の製造方法であって、
請求項1から6のいずれかに記載の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤と麺類素材とを合わせて麺生地を作製する工程、
該麺生地を加熱調理して調理麺類を得る工程、および
該調理麺類を冷凍する工程、
を含む、方法。
【請求項8】
内部にポーラス構造を有する調理麺類を含み、
該調理麺類の断面に現れる該ポーラス構造の断面積の割合が該調理麺類の断面における断面積を基準にして1%から2.5%である、冷凍麺類。
【請求項9】
前記調理麺類の断面に現われる前記ポーラス構造の個々の断面積の平均値が、12000μm2から17000μm2である、請求項8に記載の冷凍麺類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍麺類用冷凍焼け防止剤、ならびにそれを用いた冷凍麺類の製造方法および冷凍麺類に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今の生活様式の変化に伴って、個食または家庭内での食事のニーズが増加している。そのような中、冷凍食品は、保存性に富みかつ調理が簡単であるという点で、さらなる市場の拡大が期待されている。
【0003】
しかし、冷凍食品は冷凍保管中に、温度変化を原因とする凍結・融解が繰り返されると、結果として乾燥や酸化による品質劣化を生じる。こうした劣化は冷凍焼けとも呼ばれる。冷凍食品のうち冷凍麺類は近年特に需要が高まっているものの、冷凍焼けの防止には麺の表面を有効成分で被覆するために噴霧や浸漬することが求められており、専用設備の設置等の観点から導入に躊躇するケースも散見されている。
【0004】
また冷凍焼けの防止のために、糖類(例えばマルトース、トレハロース)、多糖類(例えば、キサンタンガム、シロキクラゲ多糖体、不凍多糖など)、加工デンプン、または不凍タンパクの使用が提案されているが、未だ十分な効果は得られていない。
【0005】
さらに、冷凍食品の表面に単糖類または二糖類からなる糖成分の溶解液を凍結させることにより、糖成分を含む氷粒を食品表面に付着させること(特許文献1);イヌリンまたはデキストリンを含む組成物を冷凍食品の表面に付着させること(特許文献2);高アミロース米の炊飯米と油脂とを所定の質量比で混合して冷凍焼けを防止すること(特許文献3)も提案されているか、これらもまた未だ十分な効果は得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-255453号公報
【特許文献2】国際公開第2016/031525号
【特許文献3】特開2021-184777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、専用設備の設置を必要とすることなくかつ効果的に冷凍焼けを防止することのできる、冷凍麺類用冷凍焼け防止剤、ならびにそれを用いた冷凍麺類の製造方法および冷凍麺類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、食品用膨張剤を有効成分として含有する、冷凍麺類用冷凍焼け防止剤である。
【0009】
1つの実施形態では、食品用膨張剤は、4質量%の水溶液に調製されかつ該水溶液を85℃で3分間加熱した後のpHが6.2から7.8である性質を有する。
【0010】
1つの実施形態では、上記食品用膨張剤は、アルカリ性剤および酸性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有する。
【0011】
1つの実施形態では、上記食品用膨張剤は、炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニウム塩、有機酸、有機酸塩、無機酸、および無機酸塩からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する。
【0012】
1つの実施形態では、本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤はさらに澱粉分解酵素を含有する。
【0013】
さらなる実施形態では、上記澱粉分解酵素は、4-α-グルコシルトランスフェラーゼ、6-α-グルコシルトランスフェラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、およびプルラナーゼからなる群から選択される少なくとも1種の酵素である。
【0014】
本発明はまた、冷凍麺類の製造方法であって、
上記冷凍麺類用冷凍焼け防止剤と麺類素材とを合わせて麺生地を作製する工程、
該麺生地を加熱調理して調理麺類を得る工程、および
該調理麺類を冷凍する工程、
を含む、方法である。
【0015】
本発明はまた、内部にポーラス構造を有する調理麺類を含み、
該調理麺類の断面に現れる該ポーラス構造の断面積の割合が該調理麺類の断面における断面積を基準にして1%から2.5%である、冷凍麺類である。
【0016】
1つの実施形態では、上記調理麺類の断面に現われる上記ポーラス構造の個々の断面積の平均値は12000μm2から17000μm2である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷凍麺類の白化の発生を防止するとともに麺類特有の弾力のある食感を提供することができる。本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤を用いて冷凍麺類の製造には、特に専用設備を必要とせず、従来の麺類製造用の設備をそのまま使用することができる。また、白化の発生が防止されることにより、得られた冷凍麺類については長期間の保存が可能となり、長時間の冷凍状態の保持が必要とされる長距離輸送も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施例6および比較例1でそれぞれ得られた冷凍パスタの自然解凍後の断面と、冷凍サイクル試験開始後2週間が経過した段階での当該冷凍パスタの自然解凍後の断面とを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(冷凍麺類用冷凍焼け防止剤)
本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤は、有効成分として食品用膨張剤を含有する。
【0020】
ここで、本明細書中に用いられる用語について定義する。
【0021】
本明細書中に用いられる用語「冷凍麺類」とは、製造後の倉庫保管、輸送、店舗での陳列およびバックヤードでの保管、および/または消費者が購入後の保管の1つまたはそれ以上の場面において、冷凍下(例えば-18℃以下、好ましくは-25℃~-19℃;「凍結下」ともいう)にて貯蔵・運搬することを目的として製造された加工食品であって、原材料として小麦粉、蕎麦粉、米粉、豆粉などの穀類粉および/またはデンプンと、水とを含有し、所定の形状に成形され、予め熱処理(例えば、茹で、焼き、および蒸し、並びにそれらの組み合わせを包含する)された麺自体および皮自体;ならびに当該麺および/または皮と他の食品素材(例えばスープ、薬味、および具材、ならびにそれらの組み合わせを包含する)との組み合わせから構成される麺製品および点心製品;を包含して言う。
【0022】
さらに、本明細書中に用いられる用語「冷凍焼け」とは、冷凍下での貯蔵・運搬の結果、食品内の水分含量の低下や油脂成分の酸化を通じて、食品表面の色彩が白っぽくなること(「白化」ともいう)や、喫食した際の食感および/または風味が低下することを包含していう。また、本明細書中に用いられる用語「冷凍焼け(の)防止」とは、このような冷凍焼けの発生を時間の経過に伴って阻止、低減または遅延させることのいずれをも包含していう。
【0023】
食品用膨張剤(以下、単に「膨張剤」ということがある)は、他の物質(例えば水等)との反応を通じたガスの発生により生地を膨張させることができるものであって、いわゆる食品添加物として使用されるもの、あるいはそれに準じて食品分野において使用可能なものを指して言う。この膨張剤には、例えば、化学的膨張作用を利用したもの、および/または生物的膨張作用を利用したものが含有され得る。
【0024】
化学的膨張作用を利用した膨張剤は、化学膨張剤とも呼ばれ、加熱または常温(例えば20℃以上、好ましくは25℃以上)下で発生する、炭酸ガス、アンモニアガスなどの気体を利用した膨張剤である。化学的膨張作用を利用した膨張剤の例としては、アルカリ性剤および酸性剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
アルカリ性剤を構成する化合物としては、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、およびアンモニウム塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。酸性剤を構成する化合物としては、例えば、有機酸、有機酸塩、無機酸、および無機酸塩、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
化学的膨張作用を利用した膨張剤を構成する化合物のより具体的な例としては、アジピン酸、塩化アンモニウム、クエン酸カルシウム、DL-酒石酸、DL-酒石酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸マグネシウム、乳酸カルシウム、ピロリン酸二水素二ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、硫酸アルミニウムカリウム、DL-リンゴ酸、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二ナトリウム、L-アスコルビン酸、クエン酸、グルコノデルタラクトン、L-酒石酸、L-酒石酸水素カリウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、乳酸、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸四カリウム、フマル酸、ポリリン酸カリウム、メタリン酸カリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム、硫酸カルシウム、DL-リンゴ酸ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素カルシウム、およびリン酸水素二カリウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明においては、麺類生地中で炭酸ガスを適度に発生することができるとの理由から、炭酸水素ナトリウムおよびピロリン酸二水素二ナトリウムの組み合わせを用いることが好ましい。
【0027】
生物的膨張作用を利用した膨張剤は、発酵膨張剤とも呼ばれ、生地中に含まれる生物種の代謝産物として発生する炭酸ガス、アンモニアガスなど気体を利用した膨張剤である。生物的膨張作用を利用した膨張剤の例としてはイーストが挙げられる。
【0028】
本発明においては、取り扱いかつ入手が容易であり、かつ短時間で所望のガスを発生し得るとの理由から、食品用膨張剤として化学的膨張作用を利用した膨張剤を用いることが好ましい。
【0029】
本発明においては、食品用膨張剤はまた、水溶液中で所定のpHを有するものであることが好ましい。具体的には、食品用膨張剤は、4質量%の水溶液に調製されかつ当該水溶液を85℃で3分間加熱した後のpHが好ましくは6.2~7.8、より好ましくは6.8~7.7、さらにより好ましくは6.9~7.6である性質を有するものである。食品用膨張剤における当該水溶液のpHが6.2を下回ると、膨張後の麺生地または麺内のpHが弱酸性となり、麺生地内の澱粉の老化が促進することがある。食品用膨張剤における当該水溶液のpHが7.8を上回ると、膨張後の麺生地または麺内のpHがアルカリ性となり、麺の種類(例えばパスタ、うどん、そばなどの酸性麺)において麺の変色や風味の劣化を生じることがある。
【0030】
本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤はまた、さらに澱粉分解酵素を含有する。
【0031】
本発明において澱粉分解酵素は、冷凍麺類中の澱粉の老化を抑制する役割を果たし、上記食品用膨張剤と併用することにより、冷凍麺類の冷凍焼けを一層低下させることができる。澱粉分解酵素の種類は特に限定されないが、例えば、4-α-グルコシルトランスフェラーゼ、6-α-グルコシルトランスフェラーゼ、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、およびプルラナーゼ、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。冷凍麺類の冷凍焼けを一層効果的に防止し得るとともに、得られる冷凍麺類に対して適切な弾力を有する食感を提供できるとの理由から、4-α-グルコシルトランスフェラーゼが好ましい。本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤における澱粉分解酵素の含有量は特に限定されず、使用する酵素製剤の種類やその活性の程度に応じて適切な量が当業者によって選択され得る。
【0032】
本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤はまた、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。他の成分の例としては、必ずしも限定されないが、日持ち向上剤、pH調整剤、品質改良剤、食感改良剤、乳化剤、ゲル化剤、保存料、増粘剤、安定剤、甘味料、発色剤、着色料、調味料、酸化防止剤、糖類、および加工用助剤、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。これら他の成分のより具体的な例としては、必ずしも限定されないが、デンプン、加工デンプン、乾燥卵白、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルコール製剤、かんすい、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、焼成カルシウム、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、高級脂肪酸、増粘多糖類(例えば、キサンタンガム、グァーガム、ペクチン、カラギナン)、乳酸カルシウム、乳化油脂、クチナシ色素、カロチノイド色素、食塩、アスパラギン酸、グリシン、プロピレングリコール、マルトース、トレハロース、シロキクラゲ多糖類、不凍多糖、不凍タンパク、植物性たん白、植物性たん白分解物などが挙げられる。
【0033】
他の成分の含有量は、上記食品用膨張剤および必要に応じて含有される澱粉分解酵素による効果を低下させない範囲で当業者によって適宜選択され得る。
【0034】
本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤は、上記食品用膨張剤、ならびに必要に応じて含有される澱粉分解酵素および他の成分が予め一緒に混合された製剤組成物の形態を有していてもよく、あるいは上記食品用膨張剤、ならびに必要に応じて含有される澱粉分解酵素および他の成分の一部または全部がそれぞれ小分けされ、使用時に混合する製剤キットの形態を有していてもよい。
【0035】
本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤は、種々の冷凍麺類の製造のために使用される。使用可能な冷凍麺類の例としては、うどん、蕎麦、中華麺、パスタ(例えば、ロングパスタ、ショートパスタ、ラビオリ、ラザニア、ニョッキ等を包含する)、きしめん、ほうとう、ひやむぎ、素麺、沖縄そば、葛切り、ビーフン、フォー、糸こんにゃく、しらたき、春雨などの麺;餃子、春巻き、小籠包、シュウマイなどの点心の皮;ならびそれらと他の食品素材(例えばスープ、薬味、および具材、ならびにそれらの組み合わせを包含する)との組み合わせから構成される麺製品および点心製品;が挙げられる。
【0036】
本発明の冷凍麺類用冷凍焼け防止剤は、冷凍麺類の冷凍焼けを効果的に防止することができる。これにより、冷凍麺類の製造後の長期間に亘る冷凍保存が可能となり、一度に大量の製品を製造できることによる生産効率を向上させることができる。また、冷凍下による長時間の輸送も可能となることから、遠隔地への製品の提供も可能であり、さらに分散した製造拠点を集約化して冷凍食品の製造の効率化を図ることも可能である。
【0037】
(冷凍麺類の製造方法)
本発明において、冷凍麺類は例えば以下のようにして製造される。
【0038】
まず上記冷凍麺類用冷凍焼け防止剤と麺類素材とを合わせて麺生地が作製される。
【0039】
麺生地の作製のために使用される麺類素材は、例えば、穀類粉(例えば、小麦粉、蕎麦粉、米粉、および豆粉、ならびにそれらの組み合わせ)および/またはデンプンで構成される原料粉と、水とを含む。麺類素材における原料粉の割合は特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
【0040】
水は、原料粉および冷凍麺類用冷凍焼け防止剤の「つなぎ」の一種として効果的に機能し得る。このような水は、例えば、水道水、ミネラル水、イオン交換水、純水の他、食品工業一般に使用され得る植物および/または動物のから得られた抽出物を含有する水溶液(例えば、だし汁)のような形態で含有されていてもよい。麺類素材における水の割合もまた特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
【0041】
麺類素材は、さらに食塩、食用油脂(例えばオリーブ油、サラダ脂、コーン油、大豆油、ごま油、米油、ベニバナ油、エゴマ油、アマニ油、魚油、ラード、ヘット、鶏油、および乳脂、ならびにそれらの組み合わせ)、加工デンプン、乾燥卵白、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルコール製剤、かんすい、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、アジピン酸、焼成カルシウム、増粘多糖類、乳酸カルシウム、乳化油脂、クチナシ色素、カロチノイド色素、食塩、アスパラギン酸、グリシン、プロピレングリコールなどの他の素材を含有していてもよい。麺類素材における他の素材もまた特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
【0042】
冷凍麺類用冷凍焼け防止剤および麺類素材は例えば市販の製麺機やミキサーを用いて混合されてもよい。冷凍麺類用冷凍焼け防止剤および麺類素材は、適度に混練することにより、最終的に得られる麺類に対して所定の食感を提供できる。
【0043】
こうして冷凍麺類用冷凍焼け防止剤および麺類素材から麺生地が作製される。
【0044】
次に、この麺生地が加熱調理され調理麺類が作製される。
【0045】
加熱調理にあたり、麺生地は、最終的に作製する冷凍麺類の種類に応じて、所定の麺の形状に細長く成形してカットされるか、あるいは薄くシート状に引き伸ばしてカットされることが好ましい。
【0046】
加熱処理は、麺生地を、例えば所定温度下での茹で、蒸し、または焼き、あるいはそれらの組み合わせにより行われる。あるいは、麺生地は、これらの処理に加えて、またはこれらの処理を行うことなく、マイクロ波を照射して加熱されてもよい。
【0047】
本発明においては、上記麺生地の作製からこの加熱処理の間にかけて、麺生地内に含まれる食品用膨張剤が所定の温度下で、炭酸ガスやアンモニアガスを発生して生地内に微細なポーラス構造を多数形成する。好ましくは、このポーラス構造は麺生地内に均一に分散して形成される。
【0048】
こうして麺生地から調理済の麺類(調理麺類)が作製される。
【0049】
その後、この調理麺類は冷凍される。
【0050】
冷凍にあたり、調理麺類はそれ単独で;またはスープや薬味、具材と一緒になって;あるいは必要に応じてこれらと合わせてさらなる調理が行われた後に;好ましくは-18℃以下、より好ましくは-40℃~-19℃の環境下に晒される。得られる冷凍麺類の食感や味覚を可能な限り製造直後のものと同様にするために、この冷凍は急速に行うことが好ましい。
【0051】
このようにして冷凍麺類が製造される。
【0052】
得られた冷凍麺類は、その本質を保持するためにその後も冷凍下(好ましくは-18℃以下、より好ましくは-25℃~-19℃)に貯蔵することが好ましい。また、他の場所への輸送が必要な場合も同様の冷凍下の状態が保持されることが好ましい。
【0053】
(冷凍麺類)
本発明の冷凍麺類は、内部にポーラス構造を有する調理麺類を含む。
【0054】
このポーラス構造は当該調理麺類内に微細な大きさのものが多数分散して形成されている。
【0055】
ここで、本発明の冷凍麺類において、調理麺類の断面に現れるポーラス構造の断面積の割合は調理麺類の断面における断面積を基準にして1%~2.5%、好ましくは1.1%~1.5%である。このようなポーラス構造の断面積の割合は、冷凍状態の調理麺類を取り出して麺軸に対して垂直な方向を例えばX線CTスキャンにより撮影し、得られた画像を画像解析することによって算出され得る。このようなX線CTスキャンには、例えば、X線CT装置(Nordson社製DAGE XD7600NT Diamond)が使用され、画像解析は、例えば画像解析ソフト「ImageJ」(National Institutes of Health,Maryland USA)が使用され得る。具体的には、ポーラス構造の断面積の割合は、X線CT装置で取得された画像において、調理麺類の断面を示す部分のピクセル数と、ポーラス構造の断面を示すピクセル数とを解析することにより算出できる。このポーラス構造の断面積の割合が1%を下回ると、調理麺類中に形成されるポーラス構造が小さすぎて、麺内部に含まれる空気の逃げ道が足りず、加熱時に空気が膨化して、比較例1のような大きな空洞になるおそれがある。このポーラス構造の断面積の割合が2.5%を上回ると、調理麺類中に形成されるポーラス構造が大きすぎて、麺の食感が軟化するおそれがある。
【0056】
さらに本発明の冷凍麺類では、調理麺類の断面に現われるポーラス構造の個々の断面積の平均値が、好ましくは12000μm2~17000μm2、より好ましくは13000μm2~16000μm2である。このようなポーラス構造の個々の断面積の平均値もまた、上記と同様にして、冷凍状態の調理麺類を取り出して麺軸に対して垂直な方向を例えばX線CTスキャンにより撮影し、得られたCT画像を画像解析することによって算出され得る。このポーラス構造の個々の断面積の平均値が12000μm2を下回るものは、製造が複雑になるのみであり、得られる調理麺の品質に大きな変化が見られないおそれがある。このポーラス構造の個々の断面積の平均値が17000μm2を上回ると、調理麺類中に形成されるポーラス構造が大きすぎて、食感の軟化および氷結晶の粗大化を生じるおそれがある。
【0057】
本発明において、調理麺類に形成されるポーラス構造は、冷凍麺類(調理麺類)を冷凍した際に内部に微細な氷結晶が形成される。冷凍が継続されている間、この氷結晶は特に大きく成長することなく、ポーラス構造は冷凍直後と同様の大きさを保持し続けることができる。こうした微細なポーラス構造が形成され、その後の大きさの変化が乏しいことにより、冷凍麺類(調理麺類)の冷凍焼けが防止され、その弾力性や食感の変化も抑制され得る。
【実施例0058】
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(実施例1:冷凍焼け防止剤(E1)および冷凍パスタ(RE1)の作製)
炭酸水素ナトリウムとピロリン酸二水素二ナトリウムとを混合して食用膨張剤(a)を調製した。この食用膨張剤(a)の4質量%水溶液を調製し、85℃で3分間加熱して膨張剤(a)からガスを発生させた。ガス発生後の当該水溶液のpHをpHメータで測定したところ、6.5であることを確認した。この食用膨張剤(a)単独を冷凍焼け防止剤(E1)として以下にてそのまま使用することにした。
【0060】
100質量部のデュラム粉、1質量部の上記冷凍焼け防止剤(E1)、36質量部の水、および1質量部の食塩を万能撹拌機(株式会社品川工業所製5DM型)で低速にて8分間混合して生地を作製した。この生地を、押出し式のパスタマシンに投入し、直径1.9mmの生パスタを作製した。次いで、この生パスタを30cm長に切り揃え、歩留まりが175±5%になるまで沸騰水中で茹でて調理した。その後、得られた茹でパスタを流水で1分間水洗し、品温が約20℃になった段階で当該茹でパスタを150gずつ小分けし、-40℃で急速冷凍することにより冷凍パスタ(RE1)を得た。
【0061】
作製した冷凍焼け防止剤(E1)および冷凍パスタ(RE1)の組成を表1に示す。
【0062】
この冷凍パスタ(RE1)をポリエチレン製の袋に入れ、このポリエチレン製の袋を-20℃下にて2時間および-5℃下にて2時間に配置する操作(サイクル試験)を2週間(計75サイクル)行った。
【0063】
2週間のサイクル試験の後、冷凍パスタ(RE1)を1500Wの電子レンジで45秒加熱して、喫食用パスタを得た。この喫食用パスタの冷凍焼けの状態を目視で観察し、冷凍焼けによって麺表面が白化した部分の割合を10名のパネリストが以下の評価基準でそれぞれ評価し、その平均値を算出した。この平均値とともに、実際にパネリストが喫食して感じた代表的な感想を整理した。結果を表4に示す。
<冷凍焼けの評価基準>
5点 白化が喫食用パスタの表面積の5%未満に亘って生じていた。
4点 白化が喫食用パスタの表面積の5%以上10%未満に亘って生じていた。
3点 白化が喫食用パスタの表面積の10%以上20%未満に亘って生じていた。
2点 白化が喫食用パスタの表面積の20%以上30%未満に亘って生じていた。
1点 白化が喫食用パスタの表面積の30以上に亘って生じていた。
【0064】
(実施例2:冷凍焼け防止剤(E2)および冷凍パスタ(RE2)の作製)
炭酸水素ナトリウムとピロリン酸二水素二ナトリウムとを混合して食用膨張剤(b)を調製した。この食用膨張剤(b)の4質量%水溶液を調製し、85℃で3分間加熱して膨張剤(b)からガスを発生させた。ガス発生後の当該水溶液のpHをpHメータで測定したところ、7.0であることを確認した。この食用膨張剤(b)単独を冷凍焼け防止剤(E2)として以下にてそのまま使用することにした。
【0065】
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)の代わりに上記で作製した冷凍焼け防止剤(E2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして冷凍パスタ(RE2)を得た。作製した冷凍焼け防止剤(E2)および冷凍パスタ(RE2)の組成を表1に示す。
【0066】
さらにこの冷凍パスタ(RE2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0067】
(実施例3:冷凍焼け防止剤(E3)および冷凍パスタ(RE3)の作製)
炭酸水素ナトリウムとピロリン酸二水素二ナトリウムとを混合して食用膨張剤(c)を調製した。この食用膨張剤(c)の4質量%水溶液を調製し、85℃で3分間加熱して膨張剤(c)からガスを発生させた。ガス発生後の当該水溶液のpHをpHメータで測定したところ、7.5であることを確認した。この食用膨張剤(c)単独を冷凍焼け防止剤(E3)として以下にてそのまま使用することにした。
【0068】
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)の代わりに上記で作製した冷凍焼け防止剤(E3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして冷凍パスタ(RE3)を得た。作製した冷凍焼け防止剤(E3)および冷凍パスタ(RE3)の組成を表1に示す。
【0069】
さらにこの冷凍パスタ(RE3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0070】
(実施例4:冷凍焼け防止剤(E4)および冷凍パスタ(RE4)の作製)
実施例1で作製した食用膨張剤(a)1質量部と、4-α-グルコシルトランスフェラーゼ(天野エンザイム株式会社製(グライコトランスフェラーゼ「アマノ」))0.05質量部とを混合して冷凍焼け防止剤(E4)を得た。
【0071】
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)1質量部の代わりに上記で作製した冷凍焼け防止剤(E4)1.05質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして冷凍パスタ(RE4)を得た。作製した冷凍焼け防止剤(E4)および冷凍パスタ(RE4)の組成を表1に示す。
【0072】
さらにこの冷凍パスタ(RE4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0073】
(実施例5:冷凍焼け防止剤(E5)および冷凍パスタ(RE5)の作製)
実施例2で作製した食用膨張剤(b)1質量部と、4-α-グルコシルトランスフェラーゼ(天野エンザイム株式会社製(グライコトランスフェラーゼ「アマノ」))0.05質量部とを混合して冷凍焼け防止剤(E5)を得た。
【0074】
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)1質量部の代わりに上記で作製した冷凍焼け防止剤(E5)1.05質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして冷凍パスタ(RE5)を得た。作製した冷凍焼け防止剤(E5)および冷凍パスタ(RE5)の組成を表1に示す。
【0075】
さらにこの冷凍パスタ(RE5)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0076】
(実施例6:冷凍焼け防止剤(E6)および冷凍パスタ(RE6)の作製)
実施例3で作製した食用膨張剤(c)1質量部と、4-α-グルコシルトランスフェラーゼ(天野エンザイム株式会社製(グライコトランスフェラーゼ「アマノ」))0.05質量部とを混合して冷凍焼け防止剤(E6)を得た。
【0077】
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)1質量部の代わりに上記で作製した冷凍焼け防止剤(E6)1.05質量部を用いたこと以外は実施例1と同様にして冷凍パスタ(RE6)を得た。作製した冷凍焼け防止剤(E6)および冷凍パスタ(RE6)の組成を表1に示す。
【0078】
さらにこの冷凍パスタ(RE6)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0079】
【0080】
(参考例1および2:噴霧液1および2の調製)
以下の表2に示す成分を混合することにより、冷凍焼け防止のための噴霧液1および2をそれぞれ調製した。
【0081】
【0082】
(比較例1:冷凍パスタ(RC1)の作製)
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)を含有させることなく、100質量部のデュラム粉、36質量部の水、および1質量部の食塩を用いたこと以外は実施例1と同様にして冷凍パスタ(RC1)を得た。作製した冷凍パスタ(RC1)の組成を表3に示す。
【0083】
さらにこの冷凍パスタ(RC1)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0084】
(比較例2:冷凍パスタ(RC2)の作製)
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)を含有させることなく、100質量部のデュラム粉、36質量部の水、および1質量部の食塩を用いたこと以外は実施例1と同様にして茹でパスタを得た。品温が約20℃になった段階で、この茹でパスタの表面に参考例1で得られた噴霧液1を、茹でパスタ100質量部に対して2質量部に相当する量で噴霧し、これを-40℃で急速冷凍することにより冷凍パスタ(RC2)を得た。得られた冷凍パスタ(RC2)の組成を表3に示す。
【0085】
さらにこの冷凍パスタ(RC2)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0086】
(比較例3:冷凍パスタ(RC3)の作製)
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)を含有させることなく、100質量部のデュラム粉、36質量部の水、および1質量部の食塩を用いたこと以外は実施例1と同様にして茹でパスタを得た。品温が約20℃になった段階で、この茹でパスタの表面に参考例2で得られた噴霧液2を、茹でパスタ100質量部に対して10質量部に相当する量で噴霧し、これを-40℃で急速冷凍することにより冷凍パスタ(RC3)を得た。得られた冷凍パスタ(RC3)の組成を表3に示す。
【0087】
さらにこの冷凍パスタ(RC3)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0088】
(比較例4:冷凍パスタ(RC4)の作製)
実施例1で作製した冷凍焼け防止剤(E1)を含有させることなく、100質量部のデュラム粉、36質量部の水、1質量部の食塩、および0.1質量部の不凍タンパクを用いたこと以外は実施例1と同様にして冷凍パスタ(RC4)を得た。作製した冷凍パスタ(RC4)の組成を表3に示す。
【0089】
さらにこの冷凍パスタ(RC4)を用いたこと以外は実施例1と同様にして2週間のサイクル試験を行い、その後実施例1と同様にして喫食用パスタを作製しかつ評価した。結果を表4に示す。
【0090】
【0091】
【0092】
表4に示すように、実施例1~6で得られた冷凍パスタ(RE1)~(RE6)はいずれも、比較例1、2および4に記載の冷凍パスタ(RC1)、(RC2)および(RC4)と比較して、冷凍焼け評価の平均値が高くなる傾向にあった。特に酸性側よりも中性またはアルカリ性側のpHを示す膨張剤を用いた冷凍パスタ(RE5)および(RE6)を用いるほど、冷凍焼けによる白化の面積が小さくなり、解凍後の喫食パスタを食しても、弾力のある食感でみずみずしいものであった。
【0093】
他方、参考例2の噴霧液2を表面に噴霧した冷凍パスタ(RC3)(比較例3)では、冷凍焼け評価の平均値自体は高かったが、実際に喫食すると油っぽさを強く感じ、食品としての有用性は著しく低いものであった。これに対し、実施例1~6で得られた冷凍パスタ(RE1)~(RE6)はいずれも、冷凍焼け評価の平均値が比較例3の冷凍パスタ(RC3)の平均値に匹敵し得るものであり、かつ当該冷凍パスタ(RC3)で感じた油っぽさが全くなく、良好または著しく良好であった。
【0094】
(冷凍パスタ断面のポーラス構造の観察)
実施例6で得られた冷凍パスタ(RE6)および比較例1で得られた冷凍パスタ(RC1)について、作製しかつ冷凍直後のものと上記2週間のサイクル試験を行った直後のものとを用意し、それぞれ自然解凍した後、適切な長さに切り出しかつ軸方向をX線CT装置(Nordson社製DAGE XD7600NT Diamond)を用いてスキャンした。
【0095】
得られた画像について、画像解析ソフト「ImageJ」(National Institutes of Health,Maryland USA)を用い、冷凍パスタの切断に現われたポーラス構造(
図1中の白矢印が示す部分)の断面積(ピクセル数)の割合を、当該冷凍パスタにおける断面積(ピクセル数)を基準にして百分率で計算した。
【0096】
また、得られた画像について、上記画像解析ソフトを使用して冷凍パスタの切断に現われたポーラス構造(
図1中の白矢印が示す部分)の個々の断面積(ピクセル数)の平均値を、画像上のスケールバー(3mm)の長さ分のピクセル数に基づいて、各ポーラス構造が占めるピクセル数の面積をカウントし、その平均値を算出した。
【0097】
【0098】
【0099】
図1に示すように、比較例1で作製された冷凍パスタ(RC1)では、その断面に現われるポーラス構造が比較的大きく、2週間のサイクル試験を通じて、当該ポーラス構造が拡大するように成長する傾向にあった。一方、
図1に示すように実施例6で作製された冷凍パスタ(RE6)は、比較例1の冷凍パスタ(RC1)と比較して、その断面に現われるポーラス構造が比較的小さく、2週間のサイクル試験を通じても、ポーラス構造は大きく成長していなかった。
【0100】
また、表5に示すように、比較例1で得られた冷凍パスタ(RC1)では、「冷凍パスタの断面積に基づくポーラス構造の断面積の割合(%)」欄の結果から明らかなように、冷凍直後からサイクル試験2週間後までの期間にかけてポーラス構造の断面積の割合が増加する傾向にあり、「冷凍パスタの個々のポーラス構造の平均断面積(μm2)」の結果から明らかなように、個々のポーラス構造の断面積も、冷凍直後からサイクル試験2週間後までの期間にかけて1.8倍以上に増加していた。
【0101】
一方、実施例6で得られた冷凍パスタ(RE6)では、「冷凍パスタの断面積に基づくポーラス構造の断面積の割合(%)」および「冷凍パスタの個々のポーラス構造の平均断面積(μm2)」は、冷凍直後からサイクル試験2週間後までの期間にかけて大きく変動していなかった。
【0102】
このように、実施例6で得られた冷凍パスタ(RE6)は、ポーラス構造内に形成されると考えられる氷結晶が微細化されており、冷凍直後から次の試験の経過までの期間において当該氷結晶の成長がほとんど観察されなかった。このことから、実施例6の冷凍パスタ(RE6)は、白化、食感の悪化、および弾力性の低下のような観点からの冷凍焼けが防止できるものであったことがわかる。