(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180672
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】環境証書売却収益予測装置及び環境証書売却収益予測方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20231214BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094176
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
(72)【発明者】
【氏名】島村 敦司
(72)【発明者】
【氏名】親松 昌幸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】将来生まれる環境証書の売却収益を予想する。
【解決手段】環境証書売却収益予測装置は、環境性能管理情報を参照して、第1設備の環境改善効果の予測値を決定する。環境証書売却収益予測装置は、予測値に基づいて第1設備に対して認められる環境証書の量を推定する。環境証書売却収益予測装置は、環境証書将来価格管理情報を参照して、環境証書の量に基づいて、環境証書の将来の売却収益を予測し、売却収益に関する情報を出力する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境証書売却収益予測装置であって、
演算装置と、
記憶装置と、を含み、
前記記憶装置は、
設備の性能に関する情報を管理する、環境性能管理情報と、
環境証書の将来価格の予測に関する情報を管理する、環境証書将来価格管理情報と、を格納し、
前記演算装置は、
前記環境性能管理情報を参照して、第1設備の環境改善効果の予測値を、決定し、
前記予測値に基づいて前記第1設備に対して認められる環境証書の量を推定し、
前記環境証書将来価格管理情報を参照して、前記環境証書の量に基づいて、前記環境証書の将来の売却収益を予測し、
前記売却収益に関する情報を出力する、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記演算装置は、前記売却収益の現在価値を算出し、
前記売却収益に関する情報は、前記現在価値を含む、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記演算装置は、
前記売却収益の予測確率に基づいて割引率を決定し、
前記割引率に基づいて前記売却収益の現在価値を算出する、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項4】
請求項1に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記第1設備の環境改善効果の予測値、前記環境証書の量及び前記売却収益は、確率分布で表される、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記演算装置は、
前記売却収益の確率分布に基づき、売却収益予測値及び予測確率の組み合わせを決定し、
前記予測確率に基づき割引率を決定し、
前記売却収益予測値及び前記割引率に基づき、前記売却収益の現在価値を決定し、
前記売却収益に関する情報は、前記現在価値を含む、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項6】
請求項1に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記記憶装置は、環境証書が認められる条件を管理する証書認定条件管理情報を格納し、
前記演算装置は、前記第1設備の利用条件を取得し、前記利用条件及び前記証書認定条件管理情報に基づき、前記環境証書の量を決定する、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記環境性能管理情報は、互いに類似する設備を示し、
前記演算装置は、
前記環境性能管理情報を参照して、前記第1設備の類似設備の環境改善効果の予測値を、決定し、
前記類似設備の前記予測値に基づいて前記類似設備に対して認められる環境証書の量を推定し、
前記環境証書将来価格管理情報を参照して、前記類似設備の前記環境証書の量に基づいて、前記類似設備の前記環境証書の将来の売却収益を予測し、
前記類似設備の前記環境証書の前記売却収益に関する情報を出力する、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項8】
請求項1に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記演算装置は、
前記第1設備の運転開始前に前記将来の売却収益を予測し、
前記第1設備の運転開始後に、前記第1設備の実際の利用条件に基づいて、前記将来の売却収益の予測を更新し、
更新した前記売却収益の予測に関する情報を出力する、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項9】
請求項1に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記記憶装置は、補償条件及び補償料の情報を含む、保証料算出管理情報を格納し
前記演算装置は、前記保証料算出管理情報を参照して、前記売却収益に基づき保証料を決定し、
前記保証料を出力する、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項10】
請求項1に記載の環境証書売却収益予測装置であって、
前記環境改善効果の予測値は、再生可能エネルギ発電量及び温室効果ガス削減量の少なくとも一つの予測値である、
環境証書売却収益予測装置。
【請求項11】
装置により実行される、環境証書売却収益予測方法であって、
前記装置は、
設備の性能に関する情報を管理する、環境性能管理情報と、
環境証書の将来価格の予測に関する情報を管理する、環境証書将来価格管理情報と、を格納し、
環境証書売却収益予測方法は、前記装置が、
前記環境性能管理情報を参照して、第1設備の環境改善効果の予測値を、決定し、
前記予測値に基づいて前記第1設備に対して認められる環境証書の量を推定し、
前記環境証書将来価格管理情報を参照して、前記環境証書の量に基づいて、前記環境証書の将来の売却収益を予測し、
前記売却収益に関する情報を出力する、
環境証書売却収益予測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境証書の売却収益予測に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、Jクレジット、グリーン電力証書等の、環境価値を取引する証書である、環境証書が利用されている。環境証書は、例えば、再生可能エネルギや省エネルギ由来のクレジットを示す。環境証書は、環境問題への取り組みを他者に示すことができる他、売却によって利益を創出することができる。
【0003】
本開示の関連技術として、例えば、特開2021-61733号公報(特許文献1)が知られている。特許文献1は、グリーン電力証書の作成に関して管理装置が実行する手順を開示している。特許文献1は、設備(住宅用太陽光発電)の導入後に、ある一定期間における当該設備の発電電力量を計測し、その値を基にグリーン電力証書を申請、獲得する。したがって、当該グリーン電力証書を販売して収益を得られるのは、設備を導入してからある期間が経過した後になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、一般に最も資金が必要となるのは、設備導入時である。しかし、特許文献1の技術は、設備導入後の発電電力量に基づきグリーン電力証書を申請及び獲得するため、設備導入のための資金の調達に寄与することができない。他の例として、特許文献1の技術は、新規設備の導入の有無を判定するための情報を提供することができない。したがって、設備によって将来生まれる環境証書の売却収益を適切に予想することができる技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の代表的な一例は、環境証書売却収益予測装置であって、演算装置と、記憶装置と、を含み、前記記憶装置は、設備の性能に関する情報を管理する、環境性能管理情報と、環境証書の将来価格の予測に関する情報を管理する、環境証書将来価格管理情報と、を格納し、前記演算装置は、前記環境性能管理情報を参照して、第1設備の環境改善効果の予測値を、決定し、前記予測値に基づいて前記第1設備に対して認められる環境証書の量を推定し、前記環境証書将来価格管理情報を参照して、前記環境証書の量に基づいて、前記環境証書の将来の売却収益を予測し、前記売却収益に関する情報を出力する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、将来生まれる環境証書の売却収益を予想することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の環境証書売却収益予測装置の論理構成例及びそれを利用するビジネススキームの例を模式的に示す。
【
図2】
図1に示すビジネススキームを実現するためのシステム構成例及び環境証書売却収益予測装置1のハードウェア構成例を示す。
【
図3】メモリに格納されているプログラムを実行することで、所定の機能部として動作するCPUを模式的に示す。
【
図4】補助記憶装置に格納されているデータの例を示す。
【
図9A】環境証書の単価(再エネ発電量)の確率分布の例を示す。
【
図9B】環境証書の単価(GHG削減量)の確率分布の例を示す。
【
図12A】環境証書売却収益予測部の動作例を示す。
【
図12B】環境証書の売買収益の確率密度の例を示す。
【
図14】銀行に対して送信される情報を示す画面の例を示す。
【
図15】銀行に対して送信される情報を示す画面の例を示す。
【
図16】実施例2の環境証書売却収益予測装置の論理構成例及びそれを利用するビジネススキームの例を模式的に示す。
【
図17】メモリに格納されているプログラムを実行することで、いくつかの機能部として動作するCPUを模式的に示す。
【
図19】銀行に対して送信される情報を示す画面の例を示す。
【
図20】実施例3の環境証書売却収益予測装置の論理構成例及びそれを利用するビジネススキームの例を模式的に示す。
【
図21】
図20に示すビジネススキームを実現するためのシステム構成例及び環境証書売却収益予測装置のハードウェア構成例を示す。
【
図22】メモリに格納されているプログラムを実行することで、いくつかの機能部として動作するCPUを模式的に示す。
【
図23】補助記憶装置に格納されているデータの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施例について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施例は請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施例の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
なお、以下の説明では、「aaaテーブル」の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、テーブル以外のデータ構造で表現されていても良い。データ構造に依存しないことを示すために「aaaテーブル」を「aaa情報」と呼ぶことができる。また、以下の説明では、計算機を主語として処理を説明する場合があるが、これらの処理は、計算機が備える制御デバイスが有するプロセッサ(例えば、CPU(Central Processing Unit))によって、実行されていることを示す。
【0011】
同様に、単に装置を主語として処理を説明する場合には、装置が備えるコントローラが実行していることを示す。また、上記制御デバイス及びコントローラのうちの少なくとも1つは、プロセッサそれ自体であっても良いし、制御デバイス又はコントローラが行う処理の一部又は全部を行うハードウェア回路を含んでもよい。プログラムは、プログラムソースから各計算機或いは装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は記憶メディアであってもよい。また、以下の説明では、要素の識別情報として、IDが使用されるが、それに代えて又は加えて他種の識別情報が使用されてもよい。
【0012】
実施例では、環境証書売却収益予測装置による、新たな設備により得られると予測される環境証書の量及びその環境証書の売却益の予測方法を開示する。環境証書売却収益予測装置は、設備の環境改善効果の予測値を決定し、予測値に基づいて設備に対して認められる環境証書の量を推定する。環境証書売却収益予測装置は、環境証書の量に基づいて環境証書の将来の売却収益を予測して、その情報を出力する。これにより、設備に対して与えられる環境証書の売却利益の予測についての情報を容易に取得することができる。以下において、環境改善効果を表す変数として、再生可能エネルギ発電量や温室効果ガス削減量などの環境変数が使用されるが、他の変数が使用されてよい。
【実施例0013】
図1は、本明細書の一実施例の環境証書売却収益予測装置の論理構成例及びそれを利用するビジネススキームの例を模式的に示す。本明細書に開示する環境証書売却収益予測装置による予測結果は、以下に開示されている及び開示されていない用途を含む様々な用途に使用することができる。
【0014】
図1において、個人/法人5は、新規設備の導入を予定している個人/法人である。環境証書売却収益予測装置1は、個人/法人5により導入予定の設備が将来生む環境証書の売却収益の、現在価値を決定する。
【0015】
環境証書売却収益予測装置1は、個人/法人5から、新規導入設備の利用条件、既存設備の利用パターン、新規導入する設備自体の情報、現行のGHG(Greenhouse Gas)排出量等を受信する。新規設備の利用条件は、業種、設置地域等の情報を含むことができる。環境証書売却収益予測装置1は、受信した情報に基づき、導入予定の設備が将来生む環境証書の売却収益の、現在価値を決定する。
【0016】
銀行7は、新規設備導入予定の個人/法人5に対して、当該設備が将来生む環境証書を担保に融資を行う金融機関である。銀行7は、環境証書売却収益予測装置1が決定した、将来の環境証書の売却収益の現在価値に基づき、個人/法人5に対する融資に関する判定を行う。銀行7は、融資を行うことを決定すると、将来生まれる環境証書を担保にした融資を行う。これにより、個人/法人5が新たな設備を導入しやすくなる。なお、現在価値の算出が省略され、売却収益が銀行7に提示されてもよい。
【0017】
設備監視装置4は、個人/法人5により導入された設備の稼働状況、再生可能エネルギ発電量、GHG(Greenhouse Gas)排出量等を、監視する。監視結果は、環境証書売却収益予測装置1及び環境証書取得装置2に送信される。環境証書売却収益予測装置1は、受信した情報に基づき、設備による再エネ発電量やGHG削減量等を予測する。
【0018】
環境証書取得装置2は、設備導入後に、当該設備の再生可能エネルギ発電量やGHGの削減実績量をもとに、当該設備が生んだ環境価値に関する環境証書の発行を申請し、取得する。環境証書発行の申請は、環境証書認証装置8に対して行われる。
【0019】
環境証書認証装置8は、環境証書の発行申請を受けて、申請内容をもとに認証し、環境証書を発行する。さらに、環境証書認証装置8は、環境証書売却収益予測装置1に対して、これまでの環境証書の売買価格の情報を提供する。環境証書売却収益予測装置1は、受け取った情報に基づいて、将来の環境証書の売却収益を予想する。
【0020】
環境証書売却収益予測装置1は、効果予測部1011、環境証書量予測部1012、環境証書売却収益予測部1013、売却収益現在価値換算部1014、環境性能学習・更新部1015、認定条件学習・更新部1016、将来価格学習・更新部1017を含む。さらに、環境証書売却収益予測装置1は、環境性能データベース(DB)1031、証書認定条件DB1032、及び環境証書将来価格DB1033を保持する。
【0021】
環境性能DB1031は、設備を導入した際の、再生可能エネルギ発電量やGHG発生量等に関する情報を管理する。証書認定条件DB1032は、設備に対して環境証書が認定される条件情報を管理する。環境証書将来価格DB1033は、将来の各年における、環境証書の単価予測の情報を管理する。
【0022】
効果予測部1011は、環境性能DB1031を参照し、導入予定の設備による、商業運転開始から耐用年数が経過するまでの期間における、再生可能エネルギ発電量やGHG削減量を予測する。環境証書量予測部1012は、証書認定条件DB1032を参照して、効果予測部1011の予測量をもとに、将来得られる環境証書の量を予測する。
【0023】
環境証書売却収益予測部1013は、環境証書将来価格DB1033を参照して、環境証書量予測部1012の予測量をもとに、各年における、環境証書の売却収益を予測する。売却収益現在価値換算部1014は、環境証書売却収益予測部1013の予測値を、現在価値に換算する。
【0024】
環境性能学習・更新部1015は、商業運転開始後に、設備監視装置4から受信した設備の稼働実績データをもとに、環境性能DB1031の内容を学習・更新する。認定条件学習・更新部1016は、環境証書の発行後に、設備の稼働実績データ及び環境証書の発行実績データをもとに、証書認定条件DB1032の内容を学習・更新する。稼働実績データ及び発行実績データは、環境証書取得装置2から取得できる。稼働実績データは、設備監視装置4から取得してもよい。
【0025】
将来価格学習・更新部1017は、環境証書の売買価格のトレンド情報を、環境証書認証装置8から逐次取得して、将来の価格を学習し、環境証書将来価格DB1033の内容を更新する。
【0026】
図2は、
図1に示すビジネススキームを実現するためのシステム構成例及び環境証書売却収益予測装置1のハードウェア構成例を示す。環境証書担保融資支援事業者3は、環境証書売却収益予測装置1及び環境証書取得装置2を管理及び運用する。新たに設備を導入する個人/法人5は、設備監視装置4を管理及び運用する。銀行7において、通信端末6が使用される。環境証書認証装置8は、環境証書発行団体9によって管理及び運用される。
【0027】
環境証書担保融資支援事業者3は、銀行7が、個人/法人5に対して、新たな設備が将来生む環境証書を担保に融資をするにあたり、次の2つのサービスを提供する。第1のサービスは、担保価値を予測する。担保価値は、将来生まれる環境証書の売却収益の現在価値で表される。第2のサービスは、設備の商業運転開始後に、事業者である個人/法人5に代行して、環境証書の発行を申請して取得し、銀行7に送付する。
【0028】
環境証書売却収益予測装置1、環境証書取得装置2、設備監視装置4、通信端末6、及び環境証書認証装置8は、互いに、ネットワーク500を介して通信することができる。以下において、環境証書売却収益予測装置1のハードウェア構成例を説明するが、他の装置も同様の構成を有してもよい。
【0029】
環境証書売却収益予測装置1は、演算性能を有する演算装置であるCPU101と、CPU101が実行するプログラム及び処理対象データを格納する記憶領域を与える主記憶装置であるメモリ102と、を含む。CPU101は、1又は複数のコアを含むことができ、メモリ102は、例えば、揮発性記憶領域を含むRAMである。
【0030】
環境証書売却収益予測装置1は、さらに、他の計算機装置や外部記憶装置とデータ通信をおこなう通信インタフェース106と、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどを利用した不揮発記憶領域を与える補助記憶装置103と、を含む。
【0031】
環境証書売却収益予測装置1は、さらに、ユーザからの操作を受け付ける入力装置104と、各プロセスでの出力結果をユーザに提示する出力装置105と、を含む。入力装置104は、例えば、キーボードやマウスを含み、出力装置105は、例えばモニタやプリンタを含む。環境証書売却収益予測装置1のこれら構成要素は、内部バスを介して通信可能である。
【0032】
図1に示す環境証書売却収益予測装置1の機能部は、例えば、CPU101がプログラムに従って動作することによって実装することができる。
図3は、メモリ102に格納されているプログラムを実行することで、上記機能部1011~1017として動作するCPU101を模式的に示す。各プログラムは、例えば、補助記憶装置103からメモリ102にロードされ、CPU101により実行される。なお、機能部の少なくとも一部は、論理回路で構成されてよい。
【0033】
図4は、補助記憶装置103に格納されているデータの例を示す。本例において、補助記憶装置103は、環境性能DB1031、証書認定条件DB1032、及び環境証書将来価格DB1033を格納している。CPU101が実行するプログラム及び処理対象のデータは、例えば、補助記憶装置103からメモリ102にロードされる。
【0034】
環境証書売却収益予測装置1及び他の少なくとも一部の装置は、物理的な計算機システム(一つ以上の物理的な計算機)でもよいし、クラウド基盤のような計算リソース群(複数の計算リソース)上に構築されたシステムでもよい。計算機システムあるいは計算リソース群は、1以上のインタフェース装置、1以上の記憶装置(例えば、主記憶装置及び補助記憶装置を含む)、及び、1以上の演算装置を含む。
【0035】
プログラムが演算装置によって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置及び/またはインタフェース装置等を用いながら行われるため、機能は演算装置の少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、演算装置あるいはその演算装置を有するシステムが行う処理としてもよい。
【0036】
プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記憶媒体(例えば計算機読み取り可能な非一過性記憶媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0037】
図5は、環境性能DB1031の構成例を示す。環境性能DB1031は、設備について情報を管理する。環境性能DB1031は、設備ID欄311、利用業種欄312、設置地域欄313、利用パターン欄314、再生可能エネルギ(再エネ)発電量又はGHG発生量欄315、耐用年数欄316、及び類似設備欄317を含む。
【0038】
設備ID欄311は、設備を一意に特定する情報を示す。設備を一意に特定する情報は、例えば、メーカの型番や環境証書売却収益予測装置1が付与した固有の数値である。利用業種欄312は、設備ID欄311が示す設備を利用する、個人/法人5の業種を示す。
【0039】
設置地域欄313は、設備ID欄311が示す設備を設置する地域、場所(施設内、野外など)を示す。利用パターン欄314は、設備ID欄311が示す設備を利用するパターンを示す。利用パターンは、例えば、日中や夜間などの利用時間を示すことができる。
【0040】
再エネ発電量又はGHG発生量欄315は、設備ID欄311が示す設備を導入することによる、商業運転開始から耐用年数迄の各年における、再生可能エネルギ発電量又はGHG発生量を示す。再エネ発電量又はGHG発生量欄315は、再生可能エネルギ発電量又はGHG発生量を、例えば、確率分布の形で持つことができる。これにより、より適切な予測結果を示すことができる。なお、再エネ発電量又はGHG発生量欄315は、確率分布に代えて、最頻値や他の統計値を使用してもよい。
【0041】
図6は、確率分布の例を示す。再エネ発電量又はGHG発生量欄315は、各設備の、商業運転開始から耐用年数迄の各年の確率分布を保持している。
図6に示すように、確率分布はグラフの形で表すことができる。グラフにおいて、横軸は再生可能エネルギ発電量又はGHG発生量を示し、縦軸は確率密度を示す。確率分布は、利用年数によって変化し得る。
【0042】
各設備を導入した際の再生可能エネルギ発電量又はGHG発生量について、過去に導入した際の実績値をもとに、母集団の確率分布が推定される。この分布は、設備、利用業種、設置地域、利用パターンごとに、作成される。母集団の確率分布の推定は、例えば、母集団が正規分布に従うと仮定し、実績値から、最尤法を活用して、正規分布のパラメータ(平均、分散)を推定する。各設備に仕様書に基づき決定されてもよい。
【0043】
図5に戻って、耐用年数欄316は、設備ID311が示す設備の耐用年数を示す。類似設備欄317は、設備ID311が示す設備において、類似する設備を示す。具体的には、類似設備欄317が示す設備において、類似する設備に対して同一のIDが付与されている。類似設備は、例えば、スペックは同じでメーカが異なる設備である。
【0044】
なお、各設備の再生可能エネルギ発電量又はGHG発生量を決める特徴量は、上記の利用業種、設置地域、利用パターンに限定されず、これらの一部が省略される又は他の特徴量が追加されてもよい。
【0045】
図7は、証書認定条件DB1032の構成例を示す。証書認定条件DB1032は、設備に対して環境証書が認定される条件を管理する。
図7に示す例において、証書認定条件DB1032は、条件番号欄321、対象設備種別欄322、及び認定条件欄323を含む。設備種類ごとに、環境証書の認定実績から、認定条件が抽出され、格納されている。
【0046】
条件番号欄321は、環境証書が認定されるための認定条件を一意に特定する番号を示す。対象設備種別欄322は、設備の種類を示す。認定条件欄323は、対象設備種別欄322が示す設備種類に対して、環境証書が認定される条件を示す。今回設備が属する設備種類に対して認定条件欄323が示す条件を、当該今回設備が満たす場合、当該今回設備に対して環境証書が認定されると判定できる。例えば、今回設備の種類がボイラである場合、今回設備が、条件番号1及び2の認定条件に合致すれば、証書が認定される。
【0047】
図8は、環境証書将来価格DB1033の構成例を示す。環境証書将来価格DB1033は、環境証書の将来の売却価格を予想するための参照情報を管理する。
図8の例において、環境証書将来価格DB1033は、対象年欄331、環境証書の単価予測(再エネ発電量)欄332、及び環境証書の単価予測(GHG削減量)欄333を含む。
【0048】
対象年欄331は、環境証書の売却年を示す。環境証書の単価予測(再エネ発電量)欄332は、対象年欄331が示す年における、環境証書の単価(再エネ発電量)の予測値を示す。予測値は、例えば、確率分布の形で表される。
図9Aは、環境証書の単価(再エネ発電量)の確率分布の例を示す。横軸は確率分布を示し、縦軸は確率密度を示す。
【0049】
図8に戻って、環境証書の単価予測(GHG削減量)欄333は、対象年欄331が示す年における、環境証書の単価(GHG削減量)の予測値を示す。予測値は、例えば、確率分布の形で表される。
図9Bは、環境証書の単価(GHG削減量)の確率分布の例を示す。横軸は確率分布を示し、縦軸は確率密度を示す。
【0050】
将来の各年における予測の確率分布は、過去の環境証書の売買価格をもとに、自己回帰和分移動平均(ARIMA)やガウス過程回帰等の時系列データの予測法を使い計算することができる。
【0051】
図10は、効果予測部1011の動作例を示す。効果予測部1011は、対象設備による、将来の再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量を予測する。以下に説明する例において、効果予測部1011は、設備及びその利用条件の情報を当該設備を利用する個人/法人5から取得し、当該設備の将来の複数年の再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値を計算する。予測値は、環境証書量予測部1012に送信される。なお、再生可能エネルギ発電量及びGHG削減量の双方が算出されてもよい。
【0052】
図10に示すように、ステップS10111において、効果予測部1011は、新たに導入する設備の利用条件導入する設備の仕様等の設備自体の情報、現行のGHG排出量を取得する。利用条件は、環境性能DB1031の利用業種欄312、設置地域欄313、又は利用パターン欄314が示す情報の他、後述する環境証書の認定条件に対する情報を含む。
【0053】
ステップS10112において、効果予測部1011は、上記条件に合う、再生可能エネルギ発電量又はGHG発生量の確率分布を、環境性能DB1031から取得する。具体的には、新規導入設備のIDが、設備ID欄311が示すIDと一致し、その利用条件が、利用業種欄312欄、設置地域欄313、及び利用パターン欄314が示す値と一致するレコードが選択される。なお、利用条件及び利用パターンの条件が完全一致するレコードが存在しない場合、類似度が最も高い組み合わせが選択されてもよい。類似度は、これら項目の値からなるベクトル間の距離で定義してもよい。
【0054】
ステップS10113において、効果予測部1011は、効果予測部1011は、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値及び設備の利用条件を、環境証書量予測部1012に送信する。再生可能エネルギ発電量の予測値は、例えば、ステップS1012で選択した確率分布を、商業運転開始の年から耐用年数後の年までの各年に適用したものである。GHG削減量の予測値は、ステップS1012で選択した確率分布を現行のGHG排出量から減算する処理を、商業運転開始の年から耐用年数後の年までの各年に適用したものである。なお、導入設備が中古設備である場合、残存耐用年数について計算される。
【0055】
次に、環境証書量予測部1012の動作を説明する。
図11は、環境証書量予測部1012の動作例を示す。環境証書量予測部1012は、効果予測部1011による再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値に基づき、環境証書量を予測する。
【0056】
まず、ステップS10121において、環境証書量予測部1012は、効果予測部1011から、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値及び設備の利用条件を受信する。
【0057】
ステップS10122において、環境証書量予測部1012は、証書認定条件DB1032から、対象設備に関する環境証書の認定条件を取得する。具体的には、環境証書量予測部1012は、証書認定条件DB1032の対象設備種別欄322が示す種類が対象設備の種類と一致する全レコードを選択する。
【0058】
ステップ10123において、環境証書量予測部1012は、認定される環境証書の量を予測する。具体的には、対象設備の利用条件が、ステップS10122で選択した条件の一つでも満たさない場合、環境証書の量の予測値を0と決定する。全ての条件が満たされている場合、環境証書量予測部1012は、例えば、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値を、環境証書の量と決定する。
【0059】
ステップS10124において、環境証書量予測部1012は、決定した環境証書の量の予測値を、環境証書売却収益予測部1013に送信する。
図11に示す例において、環境証書量予測部1012は、環境証書の量の予測値と共に、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値を環境証書売却収益予測部1013に送信する。
【0060】
次に、環境証書売却収益予測部1013の動作を説明する。
図12Aは、環境証書売却収益予測部1013の動作例を示す。環境証書売却収益予測部1013は、環境証書量予測部1012から受け取った環境証書の量の予測値に基づき、環境証書売却収益を予想する。
【0061】
まず、ステップS10131において、環境証書売却収益予測部1013は、環境証書の量の予測値を、環境証書量予測部1012から取得する。本例においては、上述のように、環境証書の量の予測値と共に、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値が受信される。
【0062】
ステップS10132において、環境証書売却収益予測部1013は、環境証書将来価格DB1033から、環境証書の単価予測の確率分布を取得する。例えば、対象設備の商業運転開始年から耐用年数経過後の年までの各年の環境証書の単価予測の確率分布が取得される。環境証書の単価予測の確率分布は、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量のいずれかのためのものである。
【0063】
ステップS10133において、環境証書売却収益予測部1013は、環境証書の各年の売却により得られる収益を予測する。予測は、例えば、以下のように行うことができる。環境証書売却収益予測部1013は、環境証書の量の予測値の確率分布と、環境証書の単価予測の確率分布をもとに、環境証書の売却収益の確率分布を求める。
【0064】
例えば、環境証書売却収益予測部1013は、モンテカルロシミュレーションを活用し、環境証書の量の予測値の確率分布、環境証書の単価予測の確率分布、それぞれの分布に従う乱数を生成して、積を求める。上記を多数回試行することで、環境証書の売買収益の標本を求めることができる。そして、例えば、母集団が正規分布に従うと仮定し、標本値から、最尤法を活用して、正規分布のパラメータ(平均、分散)を推定する。これにより、環境証書の売買収益の確率密度を得ることができる。
図12Bは、環境証書の売買収益の確率密度の例を示す。
【0065】
環境証書の売却タイミングは、1年単位や、耐用年数迄運用した翌年など様々あり得るが、本実施例では、毎年、1年間で得られた環境証書を翌年に売却するものとする。環境証書の売却収益の確率分布から、例えば、次のような方法にて、売却収益の予測値と、その確率を求めることができる。
【0066】
第1の方法は、事前に設定した信頼区間における最小値を利用する。
図12Bに示す例において、95%の信頼区間における最小値は、135K円である。したがって、売却収益の予測値は135K円であり、確率は95%である。第2の方法は、最頻値の値と、その時の確率を利用する。
図12Bの例において、最頻値150K円であり、その確率は40%である。つまり、売却収益の予測値は150K円であり、確率は40%である。
【0067】
ステップS10134において、環境証書売却収益予測部1013は、環境証書の売却収益の予測値を、売却収益現在価値換算部1014に送信する。一例として、送信される環境証書の売却収益の予測値は、商業運転開始年から耐用年数経過までの各年の予測値を示す。各年の予測値は、例えば、売却収益の確率分布並びに売却収益の予測値及び確率を示す。
図12Aの例は、売却収益の予測値として信頼区間の最小値を示し、確率として信頼区間の割合を示す。また、本例において、環境証書の売却収益の予測値に加えて、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値及び環境証書の量の予測値が送信される。
【0068】
上記例は、毎年、1年間で得られた環境証書を翌年に売却するものとする。他の売却方法も可能であり、例えば、耐用年数迄運用した翌年に一括で環境証書を売却するとしてもよい。この場合、2046年にのみ売却収益が発生し、環境証書の単価予測は、2046年の確率分布を利用する。それ以外の年の売却収益はゼロとなる。なお、環境証書の有効期限が設定されている場合、その有効期限前に売却する条件で予測が実行される。複数の売却方法について予測を行うその中から最終的売却収益又はその現在価値が最も高いものを選択してもよい。
【0069】
次に、売却収益現在価値換算部1014の動作を説明する。
図13は、売却収益現在価値換算部1014の動作例を示す。売却収益現在価値換算部1014は、環境証書売却収益予測部1013による環境証書の売却収益の予測値に基づき、売却収益の現在価値を決定する。
【0070】
まず、ステップS10141において、売却収益現在価値換算部1014は、環境証書の売却収益の予測値を取得する。本例においては、
図12Aに示すように、環境証書の売却収益の予測値と共に、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量及び環境証書の量の予測値が受信される。環境証書の売却収益の予測値は、各年の売却収益予測値及び確率を示す。
【0071】
ステップS10142において、売却収益現在価値換算部1014は、割引率を計算する。割引率は、例えば、次の不確定性を考慮して計算される。これにより、より正確な現在価値を計算できる。
【0072】
本例において、(A)環境証書の売却収益の予測ずれリスクと、(B)設備の運用停止のリスクが考慮される。例えば、(A)環境証書の売却収益の予測ずれリスクは、(100%-環境証書の売却収益の予測確率の平均値)で表すことができる。(B)設備の運用停止のリスクは、当該企業のWACC(Weighted Average Cost of Capital)で表すことができる。これらを使用して、割引率は以下のように計算することができる。
割引率=(100%-各年の環境証書の売却収益の予測確率の平均値)
+(当該企業のWACC)
=5%+5%=10%
【0073】
ステップS10143において、売却収益現在価値換算部1014は、上記割引率を利用して、売却収益予測値の現在価値を計算する。計算は、例えば、次の式に従う。rは割引率(ex.10%(0.1))であり、nは設備の耐用年数(ex.20年)である。
【数1】
【0074】
ステップS10144において、売却収益現在価値換算部1014は、上述のように計算した将来生まれる環境証書の売却収益の現在価値を、銀行7のシステムに送信する。本例において、環境証書の売却収益の現在価値の情報と合わせて、環境証書売却収益予測部1013から受信した情報が送信される。上述のように、環境証書売却収益予測部1013から受信した情報は、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の予測値、環境証書の量の予測値、環境証書の売却収益の予測値を含む。
【0075】
図14は、ステップS10144において銀行7に対して送信される情報を示す画面の例を示す。銀行7の通信端末6の出力装置は、
図14に示す画面を、例えば融資担当者に提示する。融資担当者は、融資の有無及び融資額を決定することができる。なお、同様の情報を示す画面が、設備を導入する個人/法人5の通信端末において表示されてよい。
【0076】
図14に示す画面例は、環境証書売却収益に関する予測結果の情報を示す。設備導入先の個人/法人の情報1401、導入される設備の情報1402、及び環境証書売却収益に関する予測結果1403が示されている。予測結果1403は、
図13で説明した、売却収益現在価値換算部1014から銀行7に送信された情報を提示する。
【0077】
具体的には、予測結果1403は、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の各年の予測値の確率分布、環境証書の量の予測値の各年の確率分布、及び環境証書売却収益の予測結果を示す。環境証書売却収益の予測結果は、各年の、確率分布、予測値及び予測確率を示す。予測結果1403は、さらに、環境証書の売却想定年を示す。各セクションの確率分布がユーザにより入力装置を介してクリックされると、その分布の画面が表示される。
【0078】
さらに、予測結果1403は、売却収益の現在価値の情報を示す。具体的には、売却収益総額の現在価値並びに現在価値の計算に使用された割引率及びその計算で使用されたリスクを示す。構成要素は、本例において、売却収益予測ずれリスクと設備の運用停止リスクである。なお、
図14に示す画面例の情報の一部が省略されてもよく、不図示の他の情報が提示されてもよい。
【0079】
上記構成例は、設備の導入効果(再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量)の全てを環境証書とすることを前提としている。しかし、事前に環境証書化する割合を決めておき、その分を環境証書化してもよい。例えば、設備導入者が法人の場合、法人は、自社の脱炭素の目標達成のために、目標を超えた余剰分のみ環境証書化して売却してもよい。一方、設備導入者が個人の場合、個人は、導入効果の全てを環境証書にして売却してもよい。
【0080】
環境証書売却収益の予測結果は、銀行7に代えて、設備メーカに提示されてもよい。例えば、メーカの担当者は、提示された情報を参照して、環境証書の売却を条件として設備の割引額を決定することができる。この他、銀行は、融資に代えて、融資枠(コミットメントライン)を、提示された情報に基づいて決定してもよい。
【0081】
環境証書売却収益予測装置1は、導入検討中設備の予測結果の他に、類似する他の設備の予測結果を提示してもよい。例えば、環境証書売却収益予測装置1は、予測現在価値が導入検討中設備より高い類似設備の予測結果を提示してもよい。他の例において、環境証書売却収益予測装置1は、予測精度が導入検討中設備より高い類似設備の予測結果を提示してもよい。銀行は、提示された情報を踏まえて、例えば、他メーカに変えたら融資可能であると提示してもよい。
【0082】
例えば、環境証書売却収益予測装置1は、環境性能DB1031の類似設備欄317が示す検討中設備の類似設備のそれぞれについて、上述のように、売却収益の現在価値を予測する。最も予測された現在価値が高い類似設備についての予測結果を、検討中設備の予測結果と共に提示する。例えば、検討中設備の予測現在価値が予め指定されている値より小さい場合に、類似設備についての予測処理を実行してもよい。
【0083】
例えば、導入検討中設備の環境証書による収益の予測確率の確率分布の分散が大きい場合、収益の予測精度が低くなりえる。例えば、環境証書の売却収益の予測値は最頻値であり、予測確率は最頻値の確率密度であってもよい。この例において、例えば、環境証書売却収益予測装置1は、環境性能DB1031の類似設備欄317が示す検討中設備の類似設備のそれぞれについて、上述のように、環境証書の売却収益の予測値及び売却収益の現在価値を予測する。
【0084】
予測確率及び売却収益の現在価値が検討中設備より高く、予測確率又は現在価値が最も高い類似設備の予測結果の情報を、検討中設備の予測結果の情報と共に提示してもよい。検討中設備の予測確率が閾値未満である場合に類似設備について予測を行ってもよく、予測確率が閾値以上の類似設備の情報を提示してもよい。
【0085】
図15は、銀行7に対して送信される情報を示す画面の例を示す。設備導入先の個人/法人の情報1501及び現在検討中の設備の情報1502、環境証書売却収益に関する予測結果1503、及び類似設備の情報1504が示されている。予測結果1503は、現在検討中の設備の環境証書についての予測結果の情報に加えて、類似設備の環境証書についての予測結果の情報を示す。予測結果1503が示す情報の種類は、
図14に示す画面例と同様である。実施例1と同様に、当該画面は、銀行以外の主体に提示されてよい。
以下において、他の実施例を説明する。以下においては、実施例1との相違を主に説明する。本実施例は、導入後の設備の運転状況を監視し、導入効果、例えば、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量の実績値を計測する。本実施例は、計測された導入効果に基づいて、環境証書の量及びその価格に関する予測を再度実行し、例えばその結果を銀行に提示する。銀行は、提示された更新情報を参照して、融資条件、例えば融資額を見直すことができる。
運用後効果再予測部1018は、設備導入後に、設備監視装置4から受信した運用実績値をもとに、再度、営業運転開始から耐用年数が経過するまでの期間における、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量を予測する。
ステップS10182において、運用後効果再予測部1018は、設備の利用条件の実績、及び、営業運転開始1年目における再生可能エネルギ発電量又はGHG排出量の実績値を、設備監視装置4から取得する。
ステップS10183において、上記条件に合う、再生可能エネルギ発電量又はGHG発生量の確率分布を取得する。設備の利用条件や利用パターンが、営業運転開始前の想定と異なっている可能性がある。したがって、運用後効果再予測部1018は、設備監視装置4から実績を取得して、それに即した確率分布を環境性能DB1031から取得する。
ステップS10184において、運用後効果再予測部1018は、再生可能エネルギ発電量又はGHG削減量について、営業運転開始1年目の実績値とそれ以降の年の予測値とを、環境証書量予測部1012に送信する。その後の処理は、1年目について実績値を使用し、2年目以降について予測値を使用する。