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特開2023-180677ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物及びその利用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180677
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物及びその利用
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/64 20060101AFI20231214BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B29C33/64
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094186
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】杉本 元
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AA46
4F202AH20
4F202CA21
4F202CM46
4F202CU01
4F202CU12
4F202CZ04
4F202CZ20
(57)【要約】
【課題】 本発明の目的は、塗工性が良好で、ゴム製品の成型加硫工程時における離型性に優れ、さらに連続成型加硫できるゴム製品の成型加硫用離型剤組成物と、この成型加硫用離型剤組成物を使用して、効率よく行われるゴム製品の製造方法とを提供することにある。
【解決手段】 有機ケイ素化合物(A)と、前記有機ケイ素化合物(A)を除くシリコーン成分(B)を含むゴム製品の成型加硫用離型剤組成物であって、前記有機ケイ素化合物(A)が、RSiO2/2で示されるD単位及びRSiO3/2で示されるT単位から選ばれる少なくとも1種を有し、前記R~Rがそれぞれ独立して1価の有機基であり、前記有機ケイ素化合物(A)が加水分解性基を有する、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機ケイ素化合物(A)と、前記有機ケイ素化合物(A)を除くシリコーン成分(B)を含むゴム製品の成型加硫用離型剤組成物であって、
前記有機ケイ素化合物(A)が、RSiO2/2で示されるD単位及びRSiO3/2で示されるT単位から選ばれる少なくとも1種を有し、
前記R~Rがそれぞれ独立して1価の有機基であり、
前記有機ケイ素化合物(A)が加水分解性基を有する、
ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
【請求項2】
前記有機ケイ素化合物(A)の分子量に占める前記加水分解性基の分子量の合計の割合が2~50%である、請求項1に記載のゴム製品の成形加硫用離型剤組成物。
【請求項3】
前記成分(B)の含有量が、前記有機ケイ素化合物(A)100重量部に対して、10~250重量部である、請求項1又は2に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
【請求項4】
界面活性剤(C)をさらに含む、請求項1又は2に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
【請求項5】
水溶性高分子(D)をさらに含む、請求項1又は2に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物。
【請求項6】
未加硫ゴムを成型加硫してゴム製品を製造する方法であって、
請求項1又は2に記載のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物を、ブラダー表面のゴム及び/又は前記ブラダーと接触する側の前記未加硫ゴムの表面に付着させる工程1と、
前記工程1の後に、成形型内で前記未加硫ゴムに収容された前記ブラダーを加熱膨張させることにより、前記成形型内面に前記ブラダーと接触しない側の前記未加硫ゴムの面を押しつけ、前記未加硫ゴムを成型加硫する工程2を含む、ゴム製品の製造方法。
【請求項7】
前記ゴム製品がタイヤである、請求項6に記載のゴム製品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム製品の成型加硫に際して、ブラダー又はエアバッグと称するゴム製の袋(以下、ブラダーと称する場合がある。)を成型加硫前のゴム製品である原料ゴムの内側に挿入し、ブラダーの内部に高温高圧の気体(例えば、約180℃の蒸気等)や液体を導入することによって、ブラダーを膨張させて、原料ゴムを金型に押し付けて加熱加圧し、成型加硫を行ってゴム製品を製造する場合がある。
ゴム製品がタイヤの場合は、ブラダーを成型加硫前のタイヤ(以下、グリーンタイヤと称する場合がある。)の内側に挿入し、ブラダーを膨張させて、グリーンタイヤを金型に押し付けて加熱加圧し、成型加硫を行っている。この場合、ブラダーとグリーンタイヤ内面は、何れもゴムを素材としているために、両者の間に離型剤が必要である。
【0003】
従来、タイヤの成型加硫では、例えば、インサイドペイントと称する水系又は溶剤系の離型剤をグリーンタイヤの内面にその都度塗布する方法や、グリーンタイヤとブラダーの間の剥離を良くするためにブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法が行われてきた。
特許文献1には、例えば、インサイドペイントとして、有機珪素化合物との反応により表面が疎水化された無機珪酸塩が分散されている水性ジオルガノポリシロキサン乳濁液が提案されている。しかしながら、インサイドペイントをグリーンタイヤの内面にその都度塗布する方法は、工程が煩雑になるとともに、塗布時に機器周辺の汚れが発生するという問題がある。また、この問題点よりも大きな問題として、インサイドペイントがタイヤインナーライナーの接合部に入り込み、インナーライナー接合部の剥離を起こしてタイヤ不良が発生するといったトラブルが生じたり、インサイドペイント塗布後のタイヤを成型工程に投入するまでのストックポイントに膨大なスペースを要したりする、という問題がある。
【0004】
そこで、インサイドペイントとは異なる方法として、グリーンタイヤとブラダーの間の剥離を良くするために、ブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法がある。このような方法に用いられる離型剤としては、例えば、特許文献2には、オルガノポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、シリカ及び金属の有機酸塩を含有するシリコーン組成物である離型剤により表面処理された加硫用ブラダーを用いる方法が提案されている。また、特許文献3には、特定の反応性ポリシロキサンと、特定のHLBを示す非反応性ポリシロキサンと、界面活性剤とを特定量含み、特定の表面張力を示す離型剤組成物が提案されている。
しかしながら、ブラダー表面にシリコーン系の離型剤を塗布する方法においては、ブラダーとの接着性が不充分であるので成型加硫工程時の離型性が弱く、特に連続的に成型加硫する場合短時間で離型被膜が劣化し製造中のゴム製品に不良が発生するといった問題がある。また、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどの反応性ポリシロキサンを含む離型剤組成物においては、保管時に反応が進行して増粘・ゲル化するなど生産性が悪いという問題もある。
【0005】
このように、特許文献1~3の離型剤ではそれぞれについて問題がある。しかしながら、離型性の問題、作業性の問題などの問題を抱えつつも、従来のインサイドペイント離型剤やブラダー用離型剤組成物を使用せざるを得ないというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53-42243号公報
【特許文献2】特開昭62-275711号公報
【特許文献3】特開2017-24204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、塗工性が良好で、ゴム製品の成型加硫工程時における離型性に優れ、さらに連続成型加硫できるゴム製品の成型加硫用離型剤組成物と、この成型加硫用離型剤組成物を使用して、効率よく行われるゴム製品の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、特定の成分を含むゴム製品の成型加硫用離型剤組成物であれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、有機ケイ素化合物(A)と、前記有機ケイ素化合物(A)を除くシリコーン成分(B)を含むゴム製品の成型加硫用離型剤組成物であって、前記有機ケイ素化合物(A)が、RSiO2/2で示されるD単位及びRSiO3/2で示されるT単位から選ばれる少なくとも1種を有し、前記R~Rがそれぞれ独立して1価の有機基であり、前記有機ケイ素化合物(A)が加水分解性基を有する、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物である。
【0009】
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、前記有機ケイ素化合物(A)の分子量に占める前記加水分解性基の分子量の合計の割合が2~50%であると、好ましい。
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、前記成分(B)の含有量が、前記有機ケイ素化合物(A)100重量部に対して、10~250重量部であると、好ましい。
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、界面活性剤(C)をさらに含むと、好ましい。
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は、水溶性高分子(D)をさらに含むと、好ましい。
【0010】
本発明の製造方法は、未加硫ゴムを成型加硫してゴム製品を製造する方法であって、上記ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物を、ブラダー表面のゴム及び/又は前記ブラダーと接触する側の前記未加硫ゴムの表面に付着させる工程1と、前記工程1の後に、成形型内で前記未加硫ゴムに収容された前記ブラダーを加熱膨張させることにより、前記成形型内面に前記ブラダーと接触しない側の前記未加硫ゴムの面を押しつけ、前記未加硫ゴムを成型加硫する工程2を含む、ゴム製品の製造方法である。
本発明の製造方法は、前記ゴム製品がタイヤであると、好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は塗工性に優れ、ゴム製品の成型加硫工程時における離型性に優れ、さらにゴム製品を効率よく連続成型加硫することができる。また、本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物は製品安定性に優れる。
本発明のゴム製品の製造方法は、上記ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物を使用するため、ゴム製品を効率よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴム製品の成型加硫用離型剤組成物(以下、単に離型剤組成物ということがある)は、特定の有機ケイ素化合物(A)と、その有機ケイ素化合物(A)を除くシリコーン成分(B)を必須に含むものである。
まず、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物を構成する各成分を詳しく説明する。
【0013】
〔有機ケイ素化合物(A)〕
本発明の離型剤組成物は、特定の有機ケイ素化合物(A)(以下、単に成分(A)ということがある)を含む。成分(A)は、RSiO2/2で示されるD単位及びRSiO3/2で示されるT単位から選ばれる少なくとも1種を有し、さらに、加水分解性基を有するものである。D単位及びT単位はいずれもシロキサン単位であり、R~Rはそれぞれ独立して1価の有機基である。
本発明の離型剤組成物において、成分(A)は膜形成性や離型性を付与する成分である。
なお、以下では、「RSiO2/2で示されるD単位」を単に「D単位」ということがあり、「RSiO3/2で示されるT単位」を単に「T単位」ということがある。
【0014】
成分(A)が有する加水分解性基は加水分解されることにより、反応性を示すようになる。加水分解後の加水分解性基の反応性により、主には脱水縮合反応が起こり、成分(A)を介して膜形成がされ、離型性が付与されると考えられる。
また、成分(A)は硬化性を有する成分であると、成形される膜の強度を高めることができ、好ましい。
【0015】
成分(A)の成分(A)が有する加水分解性基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基の等アルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシ置換アルコキシ基;アセトキシ基、オクタノイロキシ基、ベンゾイロキシ基等のアシルオキシ基;ビニロキシ基、プロペニルオキシ基、イソプロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基、シクロヘキセニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等のケトオキシム基;N-メチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N-ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等の炭化水素基を有するアミノ基;N,N-ジメチルアミノオキシ基、N,N-ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基;N-メチルアセトアミド基、N-エチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基等の炭化水素基を有するアミド基等を挙げることができる。成分(A)の有する加水分解性基は、上記加水分解性基のうち1種であってもよく、2種以上であってもよい。
加水分解性基はアルコキシ基、アルコキシ置換アルコキシ基、アシルオキシ基、アルケニルオキシ基、ケトオキシム基及び炭化水素基を有するアミド基から選ばれる少なくとも1つであると、効率的に膜形成することができ好ましい。
【0016】
成分(A)はそれを構成する構成単位として、D単位及びT単位から選ばれる少なくとも1種を有する。また、D単位、T単位が有するR~Rはそれぞれ独立して1価の有機基である。
~Rは、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、好ましくは炭素数1~20、より好ましくは炭素数1~12、さらに好ましくは炭素数1~8の1価の有機基であると好ましい。R~Rの有機基が有する炭素数も、R~Rでそれぞれ独立するのがよい。
【0017】
D単位中のR~RとT単位中のRは、特に限定はないが、それぞれ独立して非置換の一価炭化水素基、置換の一価炭化水素基又は加水分解性基であると好ましい。
非置換の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、ビニルフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基等を挙げることができる。
また、上記の一価炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が他の原子や基で置換された基(置換基)を有するものを置換の一価炭化水素基として挙げることができる。そのような置換基としては、例えば、塩素原子、フッ素原子、臭素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、グリシジルオキシ基、メルカプト基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、カルボキシ基、シアノ基、イソシアネート基等を挙げることができる。
【0018】
成分(A)を構成する単位の全単位数に占めるD単位及びT単位の単位数の合計の割合は、特に限定はないが、好ましくは10~100%、より好ましくは20~100%、さらに好ましくは30~100%、特に好ましくは40~100%である。該割合が10%以上であると、得られる膜の柔軟性と強度が向上する傾向がある。
また、成分(A)は、特に限定はないが、T単位を必須に有すると、得られる膜の強度が向上する点で好ましい。成分(A)を構成する単位の全単位数に占めるT単位の単位数の合計の割合は、特に限定はないが、好ましくは10~100%、より好ましくは20~100%、さらに好ましくは30~100%、特に好ましくは40~100%である。
【0019】
成分(A)の分子量は、特に限定はないが、好ましくは200~50000である。該分子量が上記範囲内であると、膜形成性が向上する傾向がある。該分子量の上限は、より好ましくは25000、さらに好ましくは15000、特に好ましくは12500、最も好ましくは10000である。なお、成分(A)の分子量は重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
成分(A)としては、例えば、シリコーンレジン、シリコーンオリゴマー等が挙げられる。成分(A)は特に限定はないが、シリコーンオリゴマーを含むと好ましい。
【0020】
成分(A)の分子量に占める加水分解性基の分子量の合計(成分(A)が有する全加水分解性基の分子量)の割合は、特に限定はないが、好ましくは2~50%である。該割合が2%以上であると膜形成性が向上する傾向があり、50%以下であると得られる膜の強度が向上する傾向がある。該割合の上限は、より好ましくは45%、さらに好ましくは40%、特に好ましくは35%である。一方、該割合の下限は、より好ましくは3%、さらに好ましくは4%、特に好ましくは5%である。
【0021】
〔有機ケイ素化合物(A)を除くシリコーン成分(B)〕
本発明の離型剤組成物は有機ケイ素化合物(A)を除くシリコーン成分(B)(以下、単に成分(B)ということがある)を含む。本発明の離型剤組成物において、成分(B)は滑性を付与する成分である。
成分(B)は、シリコーンオイル、シリコーンゴム、シリコーンオリゴマー及びシリコーンレジンから選ばれる少なくとも1種である。
成分(B)としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン;メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン;3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
成分(B)は離型剤組成物の製造の際に、その乳化物を使用してもよい。成分(B)として乳化物を使用する場合、乳化物に含まれる界面活性剤の含有率は、後述する界面活性剤(C)の含有率に含ませるものとする。
【0022】
成分(B)は、特に限定はないが、未加硫ゴムとブラダーとの間に潤滑による滑性を付与する点で、常温で流動性を有するものであると好ましい。
成分(B)の25℃における粘度は、特に限定はないが、好ましくは100~200000mPa・sである。該粘度が上記範囲であると、塗工性と滑性が向上する傾向がある。該粘度の上限は、より好ましくは100000mPa・s、さらに好ましくは50000mPa・sである。一方、該粘度の下限は、より好ましくは300mPa・s、さらに好ましくは500mPa・sであり、特に好ましくは1000mPa・sである。
【0023】
成分(B)の含有量は、特に限定はないが、成分(A)100重量部に対して、好ましくは10~250重量部である。該含有量が10重量部以上であると滑性が向上する傾向があり、250重量部以下であると離型性が向上する傾向がある。該含有量の上限は、より好ましくは225重量部、さらに好ましくは200重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましく15重量部、さらに好ましくは20重量部はである。
【0024】
〔界面活性剤(C)〕
本発明の離型剤組成物は、特に限定はないが、界面活性剤(C)(以下、単に成分(C)ということがある)をさらに含んでもよい。成分(C)を含むことで、離型剤組成物において、未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムに対する濡れを向上させ、離型剤組成物をより均一に未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムに付着させることができ、好ましい。
ここで、「濡れ」とは、界面化学では固体又は液体の表面にある一つの流体を他の液体で置換する現象であり、例えば、固体/気体の界面が固体/液体の界面に置き換えられたとき、その固体は液体で濡れたといえる。したがって、本発明の離型剤組成物が、未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムに対して濡れたと表現するときは、未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムと空気の界面が、未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムと離型剤組成物の界面に十分に置き換えられたことを意味する。
【0025】
成分(C)としては、非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、これらの界面活性剤の1種又は2種以上を含んでいてもよい。成分(C)は、特に限定はないが、非イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種であると、未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムに対する濡れ性が向上する点で、好ましい。
【0026】
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノラウレート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンひまし油;ポリオキシアルキレン硬化ひまし油;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグリセリンエーテル;ポリオキシアルキレンコレステリルエーテル;アルキルポリグルコシド;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンアルキルアミン;オキシエチレン-オキシプロピレンブロックポリマー等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
非イオン界面活性剤は、特に限定はないが、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種を含むと、未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムに対して濡れ性が向上する点で、好ましい。
【0027】
陰イオン界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩;ステアロイルメチルタウリンNa、ラウロイルメチルタウリンNa、ミリストイルメチルタウリンNa、パルミトイルメチルタウリンNa等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシンナトリウム等のN-アシルサルコシン塩;モノステアリルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩;ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸ナトリウム等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩;ジ-2-エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N-ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N-アシルグルタミン酸塩等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
陰イオン界面活性剤は、特に限定はないが、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩及び長鎖スルホコハク酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むと、未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムに対して濡れ性が向上する点で好ましい。
【0028】
陽イオン界面活性剤としては、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩;ジアルキルジメチルアンモニウム塩;トリアルキルメチルアンモニウム塩;アルキルアミン塩が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
両性界面活性剤としては、例えば、2-ウンデシル-N,N-(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)-2-イミダゾリンナトリウム、2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2-ヘプタデシル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アミドプロピルベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N-ラウリルグリシン、N-ラウリルβ-アラニン、N-ステアリルβ-アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0029】
本発明の離型剤組成物が成分(C)を含む場合、その含有量は特に限定はないが、成分(A)100重量部に対して、好ましくは5~50重量部である。該含有量が5重量部以上であると、未加硫ゴム及び/又はブラダー表面のゴムに対して濡れ性が向上する傾向があり、50重量部以下であると、起泡が抑制される傾向がある。該含有量の上限は、より好ましくは49重量部、さらに好ましくは48重量部、特に好ましくは47重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは6重量部、さらに好ましくは7重量部、特に好ましくは8重量部である。
【0030】
〔水溶性高分子(D)〕
本発明の離型剤組成物は、さらに水溶性高分子(D)(以下、単に成分(D)ということがある)を含んでいてもよい。成分(D)をさらに含むと、離型剤組成物の付着性を向上させる点で好ましい。
成分(D)としては、例えば、酸化でんぷん、酢酸でんぷん、燐酸でんぷん、カルボキシメチルスターチ、カルボキシエチルスターチ、ヒドロキシエチルスターチ、陽性でんぷん、シアノエチル化でんぷん、ジアルデヒドでんぷん等のでんぷん類;マンナン;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸類;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシエチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースとその塩等のセルロースエーテル類;タラカントガム、アラビアガム、グアーガム、キサンタンガム、ブリティッシュガム、グルコマンナン、ジェランガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギーナン等の天然ガム類;ポリアクリル酸ソーダ;ポリビニルアルコール;ポリエチレングリコール;ポリエチレンオキシド;水溶性アクリル樹脂;水溶性ウレタン樹脂;水溶性メラミン樹脂;水溶性エポキシ樹脂;水溶性ブタジエン樹脂;水溶性フェノール樹脂等が挙げられ、これらの成分(D)1種又は2種以上を併用してもよい。
成分(D)は、特に限定はないが、カルボキシメチルセルロースとその塩、グアーガム及びキサンタンガムから選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
【0031】
本発明の離型剤組成物が成分(D)を含む場合、その含有量は特に限定はないが、成分(A)100重量部に対して、好ましくは0.1~25重量部である。成分(D)の含有量が0.1重量部以上であると離型剤組成物の付着性が向上する傾向があり、25重量部以下であると離型剤組成物のハンドリング性が向上する傾向がある。該含有量の上限は、より好ましくは20重量部、さらに好ましくは15重量部、特に好ましくは10重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは0.2重量部、さらに好ましくは0.3重量部、特に好ましくは0.4重量部である。
【0032】
〔その他の成分〕
本発明の離型剤組成物は上記で説明した各成分以外に、無機粉体、金属石鹸、ワックス、ポリマー粒子、消泡剤、防腐剤、触媒等をさらに含有していてもよい。
【0033】
無機粉体としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩;カオリン、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、クレー、タルク、マイカ、セリサイト、ベントナイト等のケイ酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の硫酸塩;シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、ホワイトカーボン、酸化鉄等の金属酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化鉄等の金属水酸化物;ベンガラ;カーボンブラック;グラファイト等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0034】
金属石鹸としては、例えば、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、トリオクタデカン酸アルミニウム、ジオクタデカン酸アルミニウム、モノオクタデカン酸アルミニウム、オクタデカン酸カルシウム、オクタデカン酸亜鉛、オクタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸バリウム等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0035】
ワックスとしては、例えば、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックス、合成炭化水素系ワックス、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸アミド、無水フタル酸イミド等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
植物系ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、ライスワックス、木蝋、ほほば油、シュガーワックス、ベイベリーワックス、オーキュリーワックス、エスパルトワックス等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
動物系ワックスとしては、例えば、みつろう、ラノリン、鯨蝋等、昆虫ろう、セラックろう等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
鉱物系ワックスとしては、例えば、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0036】
石油ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタンワックス、ペトロラクタム等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
合成炭化水素系ワックスとしては、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
変性ワックスとしては、例えば、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタンワックス誘導体等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
水素化ワックスとしては、例えば、硬化ひまし油、12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N-ヒドロキシエチル-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-エチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-ヘキサメチレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、N,N’-キシリレン-ビス-12-ヒドロキシステアリルアミド、メチル-12-ヒドロキシステアレート、プロピレングリコール-モノ-12-ヒドロキシステアレート、エチレングリコール-モノ-12-ヒドロキシステアレート等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0037】
ポリマー粒子としては、例えば、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート等からなる粒子が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
消泡剤としては、例えば、ヒマシ油、ゴマ油、アマニ油、動植物油等の油脂系消泡剤;ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸等の脂肪酸系消泡剤;ステアリン酸イソアミル、こはく酸ジステアリル、エチレングリコールジステアレート、ステアリン酸ブチル等の脂肪酸エステル系消泡剤;ポリオキシアルキレンモノハイドリックアルコールジ-t-アミルフェノキシエタノール、3-ヘプタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系消泡剤;ジ-t-アミルフェノキシエタノール3-ヘプチルセロソルブノニルセロソルブ3-ヘプチルカルビトール等のエーテル系消泡剤;トリブチルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート等のリン酸エステル系消泡剤;ジアミルアミン等のアミン系消泡剤;ポリアルキレンアミド、アシレートポリアミン等のアミド系消泡剤;ラウリル硫酸エステルナトリウム等の硫酸エステル系消泡剤;パラフィン系鉱物油;ナフテン系鉱物油等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0038】
防腐剤としては、例えば、チアゾール、2-メルカプトチアゾール等のチアゾール類;メチレンビスチオシアネート、アンモニウムチオシアネート等のチオシアネート類;o-ベンゾイックスルフィミド、フェニルマーキュリック-o-ベンゾイックスルフィミド等のスルフィミド類;メチルジメチルチオカルバメート、エチルジエチルジチオカルバメート等のアルキルジアルキルチオカルバメート類;テトラメチルチラウムスルフィド、テトラエチルチラウムスルフィド等のチラウムスルフィド類;テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド等のチラウムジスルフィド類;フェリックジエチルジチオカルバメート、リードジメチルジチオカルバメート等のジチオカルバメート類;o-トルエンスルホンアミド、ベンゼンスルフォンアニリド等のスルファミド類;1-アミノナフチル-4-スルホン酸、1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸等のアミノスルホン酸類;ペンタクロロフェノール、o-フェニルフェノール等のフェノール類及びこれらのアルカリ金属塩類;テトラクロロ-p-ベンゾキノン、2,3-ジクロロ-1,4-ナフトキノン等の塩化キノン類;ジニトロカプリルフェニルクロトネート、ジニトロ-o-クレゾール等のニトロ基含有化合物類;1,3,5-トリヒドロキシエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン1,3,5-トリエチルヘキサハイドロ-1,3,5-トリアジン等のトリアジン類;フェニルマーキュリックフタレート、o-ヒドロキシフェニルマーキュリッククロライド等の有機水銀化合物;1,3-ジヨード-2-プロパノール等のヨウ素含有化合物等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0039】
触媒としては、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクチレート、ジブチル錫ジラウレート等の有機錫化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトン)アルミニウムトリス(アセトアセテートエチル)、アルミニウムジイソプロポキシ(アセトアセテートエチル)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウム(アセチルアセトン)、ジルコニウムトリス(アセチルアセトン)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジルコニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)等の有機ジルコニウム化合物;チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノメチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノエチルエーテル)、チタニウムテトラキス(エチレングリコールモノブチルエーテル)等の有機チタニウム化合物;塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等の鉱酸類;ギ酸、酢酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸類;アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基;エチレンジアミン、アルカノールアミン等の有機塩基;アミノシラン、シラザン、アミン類などのアミノ化合物等が挙げられ、1種又は2種以上を併用してもよい。これらの中でも、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機チタニウム化合物、鉱酸類、アミノ化合物から選ばれる少なくとも1種であると、好ましい。
【0040】
〔ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物及びその製造方法〕
本発明の離型剤組成物は上記のとおり、上記成分(A)と成分(B)を含むものであって、塗工性に優れ、ゴム製品の成型加硫工程時における離型性に優れ、さらに連続成型加硫できるものである。
【0041】
本発明の離型剤組成物の不揮発分濃度0.1重量%水分散液の20℃における表面張力は、特に限定はないが、好ましくは20~50mN/mである。該表面張力が上記範囲内であると、離型剤組成物の付着性が向上する傾向がある。該表面張力の上限は、より好ましくは45mN/m、さらに好ましくは40mN/m、特に好ましくは35mN/mである。一方、該表面張力の下限は、より好ましくは21mN/m、さらに好ましくは22mN/m、特に好ましくは23mN/mである。なお、離型剤組成物の不揮発分濃度0.1重量%水溶液の20℃における表面張力の測定方法は、ウィルヘルミー法にて測定する方法が挙げられる。また、離型剤組成物の不揮発分は離型剤組成物を110℃にて処理し、重量が恒量になった時の残留物である。
【0042】
本発明の離型剤組成物の不揮発分濃度1重量%水分散液の25℃におけるpHは、特に限定はないが、好ましくは3~12、より好ましくは3~11、さらに好ましくは3~10、特に好ましくは3~9である。該pHが上記範囲であると、離型剤組成物のハンドリング性が向上する傾向がある。
【0043】
本発明の離型剤組成物の25℃における粘度は、特に限定はないが、好ましくは0.1~20000mPa・s、より好ましくは0.1~5000mPa・s、さらに好ましくは1~1000mPa・s、特に好ましくは1~500mPa・sである。離型剤組成物の粘度が0.1mPa・s以上であると、離型剤組成物の濡れ性が向上する傾向がある。一方、離型剤組成物の粘度が20000mPa・s以下であると、離型剤組成物の塗工性が向上する傾向がある。なお、離型剤組成物の粘度の測定方法は、B型回転粘度計を用いて測定する方法等が挙げられる。
【0044】
本発明の離型剤組成物は水に乳化分散されてなるものであってもよい。離型剤組成物が水に乳化分散されてなるものであると、膜形成性が向上するため点で好ましい。
本発明の離型剤組成物が水に乳化分散されてなるものである場合、乳化物の平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.001~200μmである。該平均粒子径が0.001μm以上であると離型剤組成物の安定性が向上する傾向があり、該平均粒子径が200μm以下であると被膜形成性が向上する傾向がある。該平均粒子径の上限は、より好ましくは150μm、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは50μmである。一方、該平均粒子径の下限は、より好ましくは0.01μm、さらに好ましくは0.05μm、特に好ましくは0.1μmである。
【0045】
本発明の離型剤組成物が水に乳化分散されてなるものである場合、水の含有量は特に限定はないが、成分(A)の含有量100重量部に対して、好ましくは150~15000重量部である。該含有量が上記範囲内であると、塗工効率が向上する傾向がある。該含有量の上限は、より好ましくは5000重量部、さらに好ましくは3000重量部、特に好ましくは2000重量部である。一方、該含有量の下限は、より好ましくは180重量部、さらに好ましくは210重量部、特に好ましくは240重量部である。
【0046】
本発明の離型剤組成物について、その製造方法としては、例えば、成分(A)と、成分(B)と、必要に応じて成分(C)、成分(D)及びその他の成分を混合する方法等が挙げられる。離型剤組成物の製造方法において、混合順序等については特に限定はなく、全成分を同時に混合してもよく、成分ごとに順番に混合してもよく、予めいくつかの成分を混合し、得られた混合物に残りの成分やその混合物を添加、混合、分散してもよい。
混合については、特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。なかでも、ホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル、ラインミキサー等の混合装置を使用すると、効率よく離型剤組成物を製造することができる。
【0047】
〔ゴム製品の製造方法及びゴム製品〕
本発明のゴム製品の製造方法は、未加硫ゴムを成型加硫してゴム製品を製造する方法であって、上記の離型剤組成物をブラダー表面のゴム及び/又はブラダーと接触する側の未加硫ゴムの表面に付着させる工程1と、その工程1の後に、成形型内で未加硫ゴムに収容されたブラダーを加熱膨張させることにより、成形型内面にブラダーと接触しない側の前記未加硫ゴムの面を押しつけ、未加硫ゴムを成型加硫する工程2を含む方法であり、ゴム製品を効率よく製造することができる。
【0048】
ブラダーは、原料である未加硫ゴム(ゴム製品がタイヤの場合は、グリーンタイヤという)を成型加硫する際に、未加硫ゴムの内側(未加硫ゴムがブラダーと接触する側)に挿入して、ブラダーの内部に高温高圧の気体(例えば、約180℃の蒸気等)や液体を導入し、ブラダーを膨張させて、未加硫ゴムを金型に押し付けて加熱加圧し、成型加硫を行うのに用いられるゴム製の袋である。
ブラダーの形状等については特に限定はなく、例えば、シート状、フィルム状、ホース状、チューブ状、スポンジ状、パッキン、ベルト等を挙げることができる。ブラダーはまた、加硫成形時に空気を外に逃がすための溝を有していてもよい。
【0049】
工程1において、離型剤組成物をブラダー表面のゴム及び/又はブラダーと接触する側の未加硫ゴムの表面に付着させる方法としては、例えば、ブラダー表面のゴムにスプレーガンを用いて射出して霧状にして塗布する方法、細流にてブラダー表面のゴムに吹きつける方法、刷毛でブラダー表面のゴムに塗布する方法、離型剤組成物にブラダー表面のゴム及び/又は未加硫ゴムを浸漬する方法等が挙げられる。
【0050】
工程1において、離型剤組成物をブラダー表面のゴム及び/又はブラダーと接触する側の未加硫ゴムの表面へ付着させた後に、得られたものを乾燥してもよい。
乾燥温度としては、特に限定はないが、好ましくは0~200℃、より好ましくは5~190℃、さらに好ましくは10~180℃、特に好ましくは15~170℃である。
【0051】
工程1において、離型剤組成物をブラダー表面のゴムに付着させた場合、工程1と工程2間で、ブラダー表面に被膜が形成されるまで養生を行ってもよい。被膜が形成されるまで養生する場合、その期間としては特に限定はないが、好ましくは0.01~168時間、さらに好ましくは0.01~120時間、特に好ましくは0.01~72時間、最も好ましくは0.01~24時間である。養生期間が上記範囲であると、効率的に膜成形する傾向がある。
また、被膜が形成されるまでにブラダー表面を養生させる雰囲気温度としては、特に限定はないが、好ましくは0~200℃、さらに好ましくは5~190℃、特に好ましくは10~180℃、最も好ましくは15~170℃である。雰囲気温度が上記範囲であると、効率的に膜成形する傾向がある。また、工程1において乾燥する場合は、乾燥を行った後に続けて上記養生を行ってもよく、乾燥を行うと同時に上記養生を行ってもよい。
【0052】
工程1において、離型剤組成物をブラダーと接触する側の未加硫ゴムの表面に付着させた場合、ブラダー表面のゴムと未加硫ゴムの接触の際に、離型剤組成物の一部又は全部が、ブラダー表面のゴムに移り、ブラダー表面に離型性を有する被膜を形成でき、ゴム製品を効率よく連続成型加硫できると考えられる。この場合、膜の形成は未加硫ゴムを成型加硫する際に行うこともできる。
【0053】
ブラダー表面に形成される被膜の厚みは、特に限定はないが、好ましくは0.01~1000μm、より好ましくは0.01~500μm、さらに好ましくは0.01~250μm、特に好ましくは0.1~100μmである。該厚みが上記範囲であると、ゴム製品の生産性が向上する傾向がある。
ブラダー表面に形成される被膜の単位面積当たりの重量は、特に限定はないが、好ましくは0.1~200g/m、より好ましくは0.5~150g/m、さらに好ましくは1~100g/m、特に好ましくは3~50g/mである。該単位面積当たりの重量が上記範囲であると、ゴム製品の生産性が向上する傾向がある。
【0054】
工程1にて付着させた離型剤組成物から形成される被膜を有するブラダーは、工程1の後に行われる工程2において、良好な離型性を発現し、さらにゴム製品を連続して成型加硫できる回数が増加し、ゴム製品の不良率を低減することができる。
工程2における成型加硫方法としては、例えば、カレンダーロールシート成形法、ローラーヘッドシート成形法、押出シート成形法、ラム押出成形法、スクリュー押出成形法、圧縮成形法、注入成形法、射出成形法等が挙げられる。
工程2における成型加硫時の温度としては、特に限定はないが、好ましくは100~300℃、より好ましくは110~260℃、さらに好ましくは120~220℃、特に好ましくは130~180℃である。
工程2における成型加硫時の圧力としては、特に限定はないが、好ましくは0.1~50kgf/cm、より好ましくは0.2~45kgf/cm、さらに好ましくは0.3~40kgf/cm、特に好ましくは0.5~35kgf/cmである。
【0055】
本発明の製造方法で得られるゴム製品としては、例えば、タイヤ、ホース、防振ゴム、自動車用ベルト、シール、防舷剤、コンベヤベルト、弾性まくらぎ、ゴムパッド、ゴムマット、免震ゴム、シーリング材、防水剤、ゴム電線、ゴムケーブル、コンドーム、ゴム手袋、ゴム風船、ガスケット、パッキン、ゴムボール等が挙げられ、これらのなかでもタイヤが好ましい。
タイヤとしては、例えば、乗用車向け自動車用タイヤ、トラック・バス向け自動車用タイヤ、スポーツ車向け自動車用タイヤ、レーシングカー用タイヤ、航空機用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、自転車用タイヤ、バギー用タイヤ、農業用タイヤ、ゴムクローラ等が挙げられる。
【実施例0056】
以下に、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物の実施例及び比較例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、以下では、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物を簡単のために「離型剤組成物」ということがあり、ゴム製品の成型加硫用離型剤組成物の水分散液を「離型剤水分散液」ということがある。
【0057】
〔保管時の安定性の評価〕
離型剤水分散液をポリ容器に入れ、5℃、25℃、40℃の恒温槽に1ヶ月間それぞれ静置し、状態の変化を確認した。保管時の安定性の評価を以下の基準で行った。
◎:いずれの温度においても状態の変化が確認されず、保管時の安定性に優れる。
○:いずれかの温度において増粘、分離はあるが、容易に再分散し、保管時の安定性にやや優れる。
△:いずれかの温度において増粘、分離し、容易に再分散せず、保管時の安定性にやや劣る。
×:いずれかの温度においてガスの発生によりポリ容器が膨張し、保管時の安定性に劣る。
【0058】
〔塗工性〕
乾燥後のブラダー(IIRゴム主体)表面のゴムに付着した離型剤組成物の重量が10g/mとなるよう、ゴム表面に離型剤水分散液をスプレーにて噴霧、室温(25℃)にて乾燥した。得られた処理済ブラダーゴムにおける離型剤組成物の塗工性を目視にて以下の基準にて評価した。
○:はじきやムラがなく、ゴム表面に90~100%均一に塗工され、塗工性に優れる。
△:はじきやムラはあるが、ゴム表面に70%以上90%未満で均一に塗工され、塗工性にやや劣る。
×:はじきやムラがあり、ゴム表面に均一塗工したのが70%未満で、塗工性に劣る。
【0059】
〔離型性の評価〕
乾燥後のブラダー(IIRゴム主体)表面のゴムに付着した離型剤組成物の重量が10g/mとなるよう、ゴム表面に離型剤水分散液をスプレーにて噴霧、室温(25℃)にて2時間養生し、処理済ブラダーを得た。
処理済ブラダーと未加硫ゴム(IIR主体)とを重ね合わせ、160℃、20kgf/cmの条件で20分間プレス加硫した。成型加硫済み評価ゴムとブラダーゴムシートを180度に引き剥がし、その際に必要な剥離荷重を引っ張り試験機で測定して、離型性を評価した。
離型性の評価は以下の基準で行い、◎及び○を合格とした。なお、加硫終了時に既に剥離している場合は、引っ張り試験はできないが、離型性は言うまでもなく優れているから、◎と評価した。
◎:0.5N未満の引っ張り荷重で剥離し、離型性に優れる。
○:0.5N以上1.0N未満の引っ張り荷重で剥離し、離型性にやや優れる。
△:1.0N以上1.5N未満の引っ張り荷重で剥離し、離型性にやや劣る。
×:1.5N以上の引っ張り荷重で剥離し、離型性に劣る。
【0060】
〔繰り返し離型性(連続成型加硫)の評価〕
上記離型性の評価にて使用した処理済ブラダーを用いて、上記離型性の評価と同様の方法で成型加硫を繰り返して行い、離型性が何回まで持続するかを測定した。繰り返して成型加硫できる回数が多いほど、繰り返し離型性に優れる。繰り返し離型性の評価は、以下の基準で行った。
◎:15回以上繰り返し加硫を行っても、1.0N未満の引っ張り荷重で離型し、繰り返し離型性に優れる。
〇:10回以上15回未満の間で、1.0N未満の引っ張り荷重で離型し、繰り返し連続離型性にやや優れる。
△:5回以上10回未満の間で、1.0N未満の引っ張り荷重で離型し、繰り返し離型性にやや劣る。
×:5回未満の間で、1.0N未満の引っ張り荷重で離型し、繰り返し離型性に劣る。
【0061】
〔乗用車用タイヤの成型加硫評価〕
乗用車用タイヤの成型加硫用ブラダー表面(表面積:6000cm)のゴムに、乾燥後のブラダー(IIRゴム主体)表面のゴムに付着した離型剤組成物の重量が10g/mとなるよう、ゴム表面に離型剤水分散液をスプレーにて噴霧、室温(25℃)にて2時間養生し、処理済ブラダーを得た。
得られた処理済ブラダーを用いて、乗用車用タイヤの成型加硫を繰り返し行い、タイヤを不具合無く生産できる回数を計測した。乗用車用タイヤの成型加硫における繰り返し離型性の評価を以下の基準で行った。
◎:15回以上繰り返し成型加硫を行っても、密着が無く、良好な離型性が維持される。
○:10回以上15回未満の間、密着が無く、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
△:5回以上10回未満の間、密着が無く、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
×:5回未満の間、密着が無く、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
【0062】
〔自転車用タイヤの成型加硫評価〕
自転車用タイヤの成型加硫用ブラダー表面(表面積:1500cm)のゴムに、乾燥後のブラダー(IIRゴム主体)表面のゴムに付着した離型剤組成物の重量が10g/mとなるよう、ゴム表面に離型剤水分散液をスプレーにて噴霧、室温(25℃)にて2時間養生し、処理済ブラダーを得た。
得られた処理済ブラダーを用いて、自転車用タイヤの成型加硫を繰り返し行い、タイヤを不具合無く生産できる回数を計測した。自転車用タイヤの成型加硫における繰り返し離型性の評価を以下の基準で行った。
◎:15回以上繰り返し成型加硫を行っても、密着が無く、良好な離型性が維持される。
○:10回以上15回未満の間、密着が無く、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
△:5回以上10回未満の間、密着が無く、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
×:5回未満の間、密着が無く、良好な離型性で繰り返し成型加硫を行える。
【0063】
(実施例1)
11重量部の有機ケイ素化合物1、4重量部のシリコーン1を混合して離型剤組成物を得た。
次に、得られた離型剤組成物15重量部を水85重量部に加えて、よく撹拌し、離型剤水分散液を得た。
ブラダー表面のゴムに得られた離型剤水分散液を、乾燥後のブラダー(IIRゴム主体)表面のゴムに付着した離型剤組成物の重量が10g/mとなるよう、塗布し、室温(25℃)で2時間養生し、処理済みブラダーを得た。
得られた処理済ブラダーと未加硫ゴムとを重ね合わせ、160℃、20kgf/cmの条件で20分間プレス加硫した。成型加硫終了後に剥離しており、離型性に優れていた。その後続けて、処理済ブラダーを用いて繰り返して成型加硫を行った結果、15回以上離型性を持続することができ、繰り返し離型性に優れていた。
また、得られた離型剤水分散液をポリ容器に入れ、1ヶ月間5℃、25℃、40℃の恒温槽にそれぞれ静置したところ、いずれの温度においても状態の変化が確認されず、保管時の安定性に優れていた。
【0064】
(実施例2~11、比較例1~6)
実施例2~11及び比較例1~6では、実施例1において、表1~3に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に離型剤組成物と離型剤水分散液をそれぞれ得て、同様に評価した。その結果をそれぞれ表1~3に示す。
【0065】
(実施例12)
15重量部の有機ケイ素化合物1と、5重量部のシリコーン1と、3重量部のPOE(7)ラウリルエーテルと、77重量部の水を混合し、よく攪拌して、離型剤組成物を含む離型剤水分散液を得た。
ブラダー表面のゴムに得られた離型剤水分散液を、乾燥後のブラダー(IIRゴム主体)表面のゴムに付着した離型剤組成物の重量が10g/mとなるよう、塗布し、室温(25℃)で2時間養生し、処理済みブラダーを得た。
得られた処理済ブラダーと未加硫ゴムとを重ね合わせ、160℃、20kgf/cmの条件で20分間プレス加硫した。成型加硫終了後に剥離しており、離型性に優れていた。その後続けて、処理済ブラダーを用いて繰り返して成型加硫を行った結果、15回以上離型性を持続することができ、繰り返し離型性に優れていた。
また、得られた離型剤水分散液をポリ容器に入れ、1ヶ月間5℃、25℃、40℃の恒温槽にそれぞれ静置したところ、いずれの温度においても状態の変化が確認されず、保管時の安定性に優れていた。
【0066】
(実施例13~19)
実施例13~19では、実施例1において、表2に示すように組成をそれぞれ変更する以外は、実施例12と同様に離型剤水分散物をそれぞれ得て、同様に評価した。その結果をそれぞれ表2に示す。
【0067】
(実施例20)
乗用車用タイヤの成型加硫用ブラダーと自転車用タイヤの成型加硫用ブラダーの各々に、実施例1で得られた離型剤水分散液を乾燥後のブラダー表面のゴムに付着した離型剤組成物が10g/mとなるように塗布し、室温(25℃)で2時間養生し、各々の処理済みブラダーを得た。
各々の処理済ブラダーを用いて、乗用車用及び自転車用タイヤの成型加硫を繰り返し行ったところ、乗用車用タイヤ、自転車用タイヤともに15回以上良好な離型性が維持された(乗用車用及び自転車用タイヤの評価結果はともに、◎)。
【0068】
(実施例21)
乗用車用タイヤの成型加硫用ブラダーと自転車用タイヤの成型加硫用ブラダーの各々に、実施例11で得られた離型剤分散液を乾燥後のブラダー表面のゴムに付着した離型剤組成物が10g/mとなるように塗布し、室温(25℃)で2時間養生し、各々の処理済みブラダーを得た。
各々の処理済ブラダーを用いて、乗用車用及び自転車用タイヤの成型加硫を繰り返し行ったところ、乗用車用タイヤ、自転車用タイヤともに15回以上良好な離型性が維持された(乗用車用及び自転車用タイヤの評価結果はともに、◎)。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
表1および表2において、「POE(n)」とは、「オキシエチレン基の繰り返し数がnであるポリオキシエチレン」を意味し、「POE(7)ラウリルエーテル」とは、「オキシエチレン基の繰り返し数が7であるポリオキシエチレンラウリルエーテル」を意味する。
また、上記実施例及び比較例で使用した原料の詳細を表4に示す。
【0073】
【表4】
【0074】
表1及び2から分かるように、実施例1~19の離型剤組成物は、RSiO2/2で示されるD単位及びRSiO3/2で示されるT単位から選ばれる少なくとも1種を有し、前記R~Rがそれぞれ独立して1価の有機基であり、加水分解性基を有する有機ケイ素化合物(A)と、その有機ケイ素化合物(A)を除くシリコーン成分(B)を含むものであり、本願課題を解決でき、さらに保管時の安定性に優れている。
一方、比較例2~6のように成分(A)を含まない場合と、比較例1のように成分(B)を含まない場合は、本願の課題が解決できていない。