(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180678
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】入浴方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20231214BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20231214BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20231214BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20231214BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/36
A61K8/86
A61Q19/10
A61K8/365
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094192
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】512083883
【氏名又は名称】株式会社ホットアルバム炭酸泉タブレット
(74)【代理人】
【識別番号】100114672
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 恵司
(72)【発明者】
【氏名】上田 豊
(72)【発明者】
【氏名】小星 重治
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB311
4C083AB312
4C083AC231
4C083AC232
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC661
4C083AC662
4C083AC791
4C083AC792
4C083AD041
4C083AD042
4C083CC25
4C083DD15
4C083EE07
4C083EE42
(57)【要約】
【課題】入浴剤を溶解した湯水に入浴する場合に、重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進などの入浴効果を最大限に発揮させることができる入浴方法の提供。
【解決手段】圧縮成型錠剤からなる入浴剤を溶解した湯水に入浴する入浴方法であって、前記圧縮成型錠剤は、重炭酸塩に対し1/10から1/3の有機酸及び1/100から1/5のポリエチレングリコール並びに1/100から1/10の無水物を含み、錠剤を溶解した直後の水溶液のpHが5.5から8.5であり、錠剤硬度がビッカース硬度29kg以上、錠剤の直径と厚さ方向のそれぞれが7mm以上であり、前記湯水に溶解した重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進のために、前記湯水の温度が29~43℃、前記湯水に溶解した重炭酸イオンの濃度が0.1~10mmol/Lの状態で、10分以上入浴する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮成型錠剤からなる入浴剤を溶解した湯水に入浴する入浴方法であって、
前記圧縮成型錠剤は、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)に対し1/10から1/3の有機酸及び1/100から1/5のポリエチレングリコール並びに1/100から1/10の無水物(無水炭酸ナトリウム又は無水炭酸カリウム)を含み、錠剤を溶解した直後の水溶液のpHが5.5から8.5であり、錠剤硬度がビッカース硬度29kg以上、錠剤の直径と厚さ方向のそれぞれが7mm以上であり、
前記湯水に溶解した重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進のために、前記湯水の温度が29~43℃、前記重炭酸イオンの濃度が0.1~10mmol/Lの状態で、10分以上入浴する、
ことを特徴とする入浴方法。
【請求項2】
前記湯水の温度が32~40℃、前記重炭酸イオンの濃度が0.2~5mmol/Lの状態で、20分以上入浴する、
ことを特徴とする請求項1に記載の入浴方法。
【請求項3】
前記湯水の温度が39℃、前記重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴した時、入浴者の血流量が入浴前の略4倍以上になる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の入浴方法。
【請求項4】
前記湯水の温度が39℃、前記重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、20分以上入浴した時、入浴者の血流量が入浴前の略5倍以上になる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の入浴方法。
【請求項5】
前記湯水の温度が39℃、前記重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴した時、前記入浴者の体温が、前記重炭酸イオンを含まない湯水に入浴した場合に比べて、略0.2℃以上高くなる、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の入浴方法。
【請求項6】
前記湯水の温度が39℃、前記重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、20分入浴した後、60分から120分経過した時の前記入浴者の体温が、前記重炭酸イオンを含まない湯水に入浴した場合に比べて、略0.1℃以上高くなる、
ことを特徴とする請求項5に記載の入浴方法。
【請求項7】
前記湯水の温度が39℃、前記重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴する入浴条件で4週間入浴した後のピッツバーグ睡眠質問票に対する回答のスコアが、前記入浴条件で入浴する前に比べて有意に低く、t検定で統計解析を行って求めたP値が0.001以下である、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一に記載の入浴方法。
【請求項8】
前記有機酸の一つがクエン酸である、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一に記載の入浴方法。
【請求項9】
前記圧縮成型錠剤に、n-(ノルマル)オクタンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウムの中から選択される少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一に記載の入浴方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴方法に関し、特に、重炭酸イオンが溶解した湯水に入浴する入浴方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)と有機酸とを含む混合物を打錠等によって成型した圧縮成型錠剤は、入浴剤や清浄剤等の製品に使用されている。これらの製品は、湯水に投入すると重炭酸塩が有機酸で中和されて炭酸ガスを発生し、速やかに溶解する利点を有すると共に、消費者に快適な使用感を与えることによって商品価値を高める効果があり、特に入浴剤においては、発生する炭酸ガスによる入浴効果があることから積極的に利用されている。
【0003】
しかしながら、重炭酸塩と有機酸とを組合わせて錠剤化すると、湯水に溶かした場合に溶解しながら激しく中和反応が起き、大きな径の炭酸ガスの泡が発生し、泡が合併して大きくなり、その浮力によって炭酸ガスは速やかに上昇して空気中に出てしまう。その結果、湯水に溶解する炭酸ガスが少なくなり、炭酸ガスによる入浴効果があまり得られないという問題が起こる。
【0004】
ここで、自然の炭酸泉は炭酸ガス濃度が1000ppm以上であることが条件とも言われているが、これは地下の高圧下で炭酸ガスが高濃度に溶解したものである。人工炭酸泉で炭酸ガス濃度1000ppmを実現しようとすると、高圧ガスボンベを使ってメンブランなど特殊な装置で炭酸ガスを溶解させなければならず、装置は高価となり、大掛かりで簡便には使えなくなってしまう。
【0005】
それゆえ、家庭で簡便に炭酸泉を利用する方法として、お風呂に入れるだけで炭酸ガスが発生しながら溶解する入浴剤がもてはやされ、重炭酸塩と有機酸とを使い中和反応で炭酸ガスを発泡させる入浴剤が主流となっていた。この場合、炭酸ガスがたくさん出て肌に泡がつく現象をもって良い炭酸泉とされることから、入浴剤は湯水に溶けた時にpH4~5.5程度の弱酸性になるように設計し、有機酸を酸性過剰で添加混合し、激しく中和反応を起こさせ、発泡する炭酸ガスを湯水中へ溶解させようとしていた。
【0006】
しかしながら、このような入浴剤では、見た目は炭酸ガスが大量に出ているように見えても、実際の湯水中の炭酸ガス濃度を高くすることはできない。すなわち、入浴剤が酸性では炭酸ガスは限りなくガスとして液外に揮散してしまう性質があり、最初の入浴で発泡を楽しみ、塩濃度などの効果によって多少の体の温まり効果などを享受できたとしても、発泡後に別の家族が入浴した時には、湯水中の炭酸ガスはほとんどないために体の温まり効果も得られず、入浴のたびに新しい入浴剤を入れなければならない。
【0007】
この問題に対して、本願発明者らは自然炭酸泉の効果を詳しく検討した結果、自然炭酸泉の弱酸性は、pH値が弱酸性を示しているだけで酸性成分によるものではなく、地下深くの高圧化で微量の鉱物イオンが溶解し、そのわずかなマイナスイオンの解離による力価のない弱酸性(有機酸過剰ではない酸性)であり、皮膚や毛髪などに付着していた体液に触れただけで炭酸ガスが中和されて中性になってしまう程度の弱酸性であることが分かり、市販の入浴剤がpH値だけ自然炭酸泉の値を真似して有機酸を過剰に入れ、炭酸ガスを発泡させやすく弱酸性にしても、全く意味がないことを突き止めた。
【0008】
一般に炭酸泉の効果の説明では、炭酸ガスが直接皮膚から経皮吸収されると記述されているが、これは全くの誤りである。血液や皮膚表面の体液のほとんどは中性でありpH7.2から7.4程度である。体液が中性であるとすれば、炭酸成分は化学的には重炭酸イオンとしてしか存在せず、血管に経皮吸収される成分は重炭酸イオンでなければならないはずである。
【0009】
すなわち、血管中では炭酸ガスではなく、pHから推定して重炭酸イオンとして溶解しているはずである。なぜなら、炭酸イオンは弱酸性では炭酸、中性では重炭酸イオンHCO3マイナス1イオン、アルカリでは炭酸イオンCO3マイナス2イオンとして形を変えて存在するのが正しい科学的な理解であり、中性である体液の中では必ず重炭酸イオンとなって溶解しているものである。
【0010】
それゆえ、炭酸ガスを発泡させさえすればよいという従来の入浴剤の常識では健康効果は得られず、多くの場合、炭酸ガスが経皮吸収されるという間違った理解により、重炭酸塩と過剰の有機酸とを組み合わせて中和反応による発泡だけを追い求めてしまい、効果のない入浴剤を設計していた。一方で、有機酸を少なくし、中性や弱アルカリ性の状態で錠剤や入浴剤を設計したとしても、十分な中和反応は起こらず、極めて弱く発泡する程度になり、単に重炭酸塩を湯水に溶かしただけの洗剤としての効果しか得られない入浴剤となってしまう。
【0011】
そこで、本願発明者らは、入浴剤の投入時は錠剤の内部で激しく中和反応が起こる環境となり、細かいミクロサイズの炭酸ガスを発生させるが、発泡反応が終わった後は湯水が中性もしくは弱アルカリ性になる、という理論的に極めて難しい入浴剤の設計が必要と考えた。言い換えれば、湯水中への炭酸ガスの発生は大量となるように反応サイトを酸性もしくは弱酸性とし、湯水中に炭酸ガスが大量に発生するような環境をつくり、入浴剤が溶解した後は、発生した炭酸ガスが皮膚や体液に触れたときに体液で中和されて重炭酸イオンとして経皮吸収されるように、湯水のpHは中性となる入浴剤の実現が理想であることを突き止めた。
【0012】
その際、入浴剤投入時の中和反応は激しいほどよいが、発泡が急激すぎると、泡の直径が大きくなり、泡が合併してさらに大きくなり、浮力が増大して空気中に逃げてしまうことから、泡の発生は激しいけれども合併せずにゆっくり長時間放出するように持続させ、かつ小さなサイズで安定的に多量発生させることが望ましい。この問題に対して、ポリエチレングリコール(PEG)などを大量に使って反応物の急激な接触を防止し、ゆっくり断続的に接触させて反応をコントロールする方法がある。
【0013】
例えば、下記特許文献1には、平均分子量950~3,700のポリエチレングリコール30~70質量%と他の発泡性成分70~30質量%とを配合した後、加熱してPEGを溶融せしめ、発泡成分をPEG中に埋め込む方法が提案されている。しかしながら、この方法では、互いが中和反応によらずに独立して溶解してしまうため、炭酸ガス量が少なくなり、結局は大量の錠剤を投入しなければ目的の炭酸ガスの溶解が得られず、コストが高くなってしまう。
【0014】
また、生産性の面からは、特に打錠される錠剤製品において、ポリエチレングリコールなどを大量に使うことにより、錠剤の機械的強度を得ることができない。また、打錠機の臼や杵への粉の付着が問題となり、結合剤(結着剤)や離型剤の使用が大量となり、これらの成分も、炭酸ガスの発生量の低下をもたらす一因となる。しかも、一般に使われる離型剤としての金属石鹸の微粉末は、水に不溶のために使用時に不快感を与える恐れさえ懸念される。
【0015】
そこで、本願発明者らは、炭酸ガス発生源としての化合物、すなわち重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)と中和反応をさせる化合物として、有機酸を用い、加えてポリエチレングリコールの存在下で、圧縮成型によって一定以上の高硬度で一定サイズの大きさの錠剤とする錠剤の製造方法と錠剤を提案している(特許文献2)。この方法で製造した錠剤内部では、激しく効率よく中和反応が起こり、可能な限り小さなサイズの炭酸ガス泡を一定時間継続的に放出させることによって、発生した炭酸ガスの大部分を空気中に逃がさず水中に溶解させることができる。また、溶解直後のpHが中性となるよう設計することで水中の重炭酸イオンを高濃度にし、その水溶液のpHから皮膚に触れた炭酸ガスは容易に重炭酸イオンとなって本来存在する重炭酸イオンと相まって高濃度になり、皮膚からの血管への重炭酸イオンの吸収を限りなく多くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開昭58-105910号公報
【特許文献2】特許第00587778号
【非特許文献1】丸山修寛・小星重冶,「No.29 重炭酸イオンークエン酸入浴剤の開発と未病への対応」,日本温泉紀行物理医学会雑誌,第78巻,第1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本願発明者らが発明した特許文献2の錠剤を入浴剤として用いることにより、重炭酸塩と有機酸との中和反応により発生した炭酸ガスを効率的に湯水中に溶解させ、経皮吸収される重炭酸イオンの濃度を高め、重炭酸イオンの経皮吸収などによって血流を促進させ、体温を上昇させるなどの入浴効果を高めることができる。
【0018】
しかしながら、特許文献2の錠剤を入浴剤として用いたとしても、重炭酸イオンの経皮吸収に関係する入浴条件(例えば、入浴剤を溶かした湯水に入浴する時間、入浴剤を溶かす湯水の温度、重炭酸イオンの濃度など)を最適化しなければ、血流の促進などの入浴効果を最大限発揮させることができない。
【0019】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その主たる目的は、本願発明者らが発明した錠剤を入浴剤として用い、その入浴剤を溶解した湯水に入浴する場合に、重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進などの入浴効果を最大限に発揮させることができる入浴方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の一側面は、圧縮成型錠剤からなる入浴剤を溶解した湯水に入浴する入浴方法であって、前記圧縮成型錠剤は、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)に対し1/10から1/3の有機酸及び1/100から1/5のポリエチレングリコール並びに1/100から1/10の無水物(無水炭酸ナトリウム又は無水炭酸カリウム)を含み、錠剤を溶解した直後の水溶液のpHが5.5から8.5であり、錠剤硬度がビッカース硬度29kg以上、錠剤の直径と厚さ方向のそれぞれが7mm以上であり、前記湯水に溶解した重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進のために、前記湯水の温度が29~43℃、前記湯水に溶解した重炭酸イオンの濃度が0.1~10mmol/Lの状態で、10分以上入浴することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の入浴方法によれば、重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進などの入浴効果を最大限に発揮させることができる。
【0022】
その理由は、圧縮成型錠剤からなる入浴剤を溶解した湯水に入浴する際に、圧縮成型錠剤は、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)に対し1/10から1/3の有機酸及び1/100から1/5のポリエチレングリコール並びに1/100から1/10の無水物(無水炭酸ナトリウム又は無水炭酸カリウム)を含み、錠剤を溶解した直後の水溶液のpHが5.5から8.5であり、錠剤硬度がビッカース硬度29kg以上、錠剤の直径と厚さ方向のそれぞれが7mm以上であり、湯水に溶解した重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進のために、湯水の温度が29~43℃、湯水に溶解した重炭酸イオンの濃度が0.1~10mmol/Lの状態で、10分以上入浴、好ましくは、湯水の温度が32~40℃、湯水に溶解した重炭酸イオンの濃度が0.2~5mmol/Lの状態で、20分以上入浴するからである。
【0023】
そして、湯水の温度が39℃、湯水に溶解した重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴した時、入浴者の血流量が入浴前の略4倍以上になり、湯水の温度が39℃、湯水に溶解した重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、20分以上入浴した時、入浴者の血流量が入浴前の略5倍以上になる。
【0024】
また、湯水の温度が39℃、重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴した時、入浴者の体温が、重炭酸イオンを含まない湯水に入浴した場合に比べて、略0.2℃以上高くなり、湯水の温度が39℃、重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、20分入浴した後、60分から120分経過した時の入浴者の体温が、重炭酸イオンを含まない湯水に入浴した場合に比べて、略0.1℃以上高くなる。
【0025】
また、湯水の温度が39℃、重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴する入浴条件で4週間入浴した後のピッツバーグ睡眠質問票に対する回答のスコアが、その入浴条件で入浴する前に比べて有意に低く、t検定で統計解析を行って求めたp値が0.001以下になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施例に係る入浴時間と血流量との相関を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る入浴温度と血流量との相関を示す図である。
【
図3】本発明の一実施例に係る重炭酸イオン濃度と血流量との相関を示す図である。
【
図4】本発明の一実施例に係る入浴時間と体温との相関を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る入浴後の経過温度と体温との相関を示す図である。
【
図6】重炭酸イオンの経皮吸収による血流量増加のメカニズムを説明する模式図である。
【
図7】ピッツバーグ睡眠質問票の項目と判定基準である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一般的に、水に溶存した二酸化炭素は溶存無機炭素として存在するが、この溶存無機炭素は重炭酸塩平衡によって3種類の形態があり、溶液のpHに依存して形態が変化するとされている。pHによる3種類の溶存無機炭素の存在比は、溶液のpHが弱酸性以下の領域では重炭酸イオンの割合は低く炭酸が高くなり、中性から弱アルカリの領域では重炭酸イオンの割合が最も高く、アルカリ領域では対称的に重炭酸イオンは低く炭酸イオンが高くなることが知られている。
【0028】
また、二酸化炭素は皮膚の毛穴や汗腺などを経由する付属器官経路を経て皮膚表面から毛細血管に移行するとされているが、血液のpH域は重炭酸イオンの存在比が最も高いpH域と一致していることから、本願発明者らは、皮膚から血中に移行した二酸化炭素の多くが重炭酸イオンとして生理活性を発揮し、生体に対して有益な効果を与える可能性に着目し、重炭酸イオンの生体に与える効果について検討を行った(非特許文献1参照)。
【0029】
その結果、生体内試験において、対照群と比較して有意にマウスの血流を増加させ、その血液中の重炭酸イオン量や末梢血管における内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化を介した一酸化窒素(NO)産生量は増加傾向を認め、さらにヒト臍帯動脈内皮細胞を用いた試験管内試験では、中性重炭酸イオン水の存在下で内皮型一酸化窒素合成酵素のリン酸化の促進とNO産生の増加が検出され、中性重炭酸イオン水の活性酸素種消去活性は対照よりも有意に高い結果を得た。加えて、冷えの自覚症状のある中年の男女を対象に実施した二重盲検ランダム化比較試験では、中性重炭酸イオン水温浴による体温の上昇効果と冷え症状や睡眠の質に改善効果が認められた。
【0030】
これらのことから、重炭酸イオンは経皮的に吸収されることで血管内皮への直接作用により内皮型一酸化窒素合成酵素をリン酸化させ、NO産生の増加により血流を促進させることが明らかとなり、血行不良に伴う循環器領域における様々な臨床症状の改善への有用性が示唆された。
【0031】
この重炭酸イオンの経皮吸収を効率的に行うためには、錠剤が溶解した後の水溶液のpHは中性となり、かつ、湯水中の重炭酸イオンが高濃度になることが重要であることから、本願発明者らは、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム)と中和反応をさせる化合物として有機酸を用い、ポリエチレングリコールの存在下で、圧縮成型によって一定以上の高硬度で一定サイズの大きさの錠剤とする錠剤の製造方法と錠剤を発明した(特許文献2)。この方法で製造した錠剤内部では、激しく効率よく中和反応が起こり、可能な限り小さなサイズの炭酸ガス泡を一定時間継続的に放出させることによって、発生した炭酸ガスの大部分を空気中に逃がさず水中に溶解させることができ、また、溶解直後のpHが中性となるように設計することによって、水中の重炭酸イオンを高濃度にすることができる。
【0032】
上記錠剤を入浴剤として用いることにより、重炭酸塩と有機酸との中和反応により発生した炭酸ガスを効率的に湯水中に溶解させ、経皮吸収される重炭酸イオンの濃度を高め、重炭酸イオンの経皮吸収などによって血流を促進し、体温を上昇させるなどの入浴効果を高めることができるが、入浴効果を最大限に発揮させるためには入浴条件を最適化する必要がある。
【0033】
すなわち、入浴剤を溶かした湯水に入浴する時間が短すぎると、湯水中の重炭酸イオンを十分に経皮吸収させることができず、NO産生の増加により血流を促進させることができない。従って、入浴効果を最大限に発揮させるためには入浴剤を溶解した湯水に入浴する時間を最適化する必要がある。
【0034】
また、重炭酸イオンが経皮吸収されて血管にNOが発生し、このNOの作用によって血管が拡張して血流量が増加するが、後述するように、この一連の反応には酵素が関係しており、低温では酵素の働きが弱まるため、入浴剤を溶解する湯水の温度が低すぎると、血管が十分に拡張せずに血流を促進させることができない。一方、入浴剤を溶解する湯水の温度が高すぎると、中和反応が激しく起こるため、炭酸ガス泡を一定時間継続的に発生させることができず、湯水中の重炭酸イオンを所望の濃度で維持することが難しくなるし、交感神経が刺激されて血圧が急上昇するなど、健康上の弊害も生じる。従って、入浴効果を最大限に発揮させるためには入浴剤を溶解する湯水の温度を最適化する必要がある。
【0035】
また、重炭酸イオン濃度が低すぎると湯水中の重炭酸イオンを十分に経皮吸収させることができず、NO産生の増加により血流を促進させることができない。一方、重炭酸イオン濃度が高すぎると、重炭酸塩と有機酸との中和反応によって生じる炭酸ガスが増加して浴室内の二酸化炭素濃度が高くなったり、重炭酸塩が湯水に溶けずに残って浴槽に付着したり、入浴剤を無駄に消費したりする。従って、入浴効果を最大限に発揮させるためには、湯水中の重炭酸イオン濃度を最適化する必要がある。
【0036】
そこで、本願発明者は、入浴剤を溶解した湯水に入浴する時間と血流量との相関、入浴剤を溶解する湯水の温度と血流量との相関、湯水中の重炭酸イオン濃度と血流量との相関、入浴剤を溶解した湯水に入浴する時間と体温との相関、入浴後の経過時間と体温との相関を調べた。
【0037】
その結果、重炭酸イオンを溶解した湯水に入浴した場合、通常の湯水に入浴した場合に比べて、入浴時間の増加に伴って血流量が著しく増加し、入浴前を基準にすると、入浴時間10分で血流量は約5倍(通常の湯水では血流量は約2倍)になり、入浴時間20分で血流量は約6倍(通常の湯水では血流量は約2倍)になった。
【0038】
また、重炭酸イオンを溶解した湯水に入浴した場合、通常の湯水に入浴した場合に比べて、入浴温度の上昇に伴って血流量が増加し、入浴前を基準にすると、入浴温度29℃で血流量は約3.1倍(通常の湯水では血流量は約1.3倍)、入浴温度32℃で血流量は約5倍(通常の湯水では血流量は約1.4倍)、入浴温度40℃で血流量は約6.1倍(通常の湯水では血流量は約2.2倍)、入浴温度43℃で血流量は約6.2倍(通常の湯水では血流量は約2.4倍)になった。
【0039】
また、重炭酸イオン濃度の増加に伴って血流量が急激に増加し、入浴前を基準にすると、重炭酸イオン濃度0.1mmol/Lで血流量は約4.8倍、重炭酸イオン濃度0.2mmol/Lで血流量は約5.3倍、重炭酸イオン濃度5mmol/Lで血流量は約6.2倍、重炭酸イオン濃度10mmol/Lで血流量は約6.4倍になった。
【0040】
また、重炭酸イオンを溶解した湯水に入浴した場合、通常の湯水に入浴した場合に比べて、入浴時間の増加に伴って体温が大きく上昇し、入浴時間10分以上で、通常の湯水に入浴した場合との体温の差は約0.2℃以上になり、入浴時間20分で、通常の湯水に入浴した場合との体温の差は約0.4℃になった。
【0041】
また、重炭酸イオンを溶解した湯水に入浴した場合、通常の湯水に入浴した場合に比べて、入浴後の体温の低下は抑制され、入浴後60分から120分経過した時の、通常の湯水に入浴した場合との体温の差は約0.1℃以上になった。
【0042】
これらの結果から、重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進などの入浴効果を最大限に発揮させるための入浴条件として、湯水の温度が29~43℃、重炭酸イオンの濃度が0.1~10mmol/Lの状態で、10分以上入浴、好ましくは、湯水の温度が32~40℃、重炭酸イオンの濃度が0.2~5mmol/Lの状態で、20分入浴することが重要であることを見出した。
【実施例0043】
上記した本発明の一実施の形態についてさらに詳細に説明すべく、本発明の一実施例に係る入浴方法について、
図1乃至
図6を参照して説明する。
図1は、本実施例の入浴時間と血流量との相関を示す図、
図2は、本実施例の入浴温度と血流量との相関を示す図であり、
図3は、本実施例の重炭酸イオン濃度と血流量との相関を示す図である。また、
図4は、本実施例の入浴時間と体温との相関を示す図であり、
図5は、本実施例の入浴後の経過温度と体温との相関を示す図である。また、
図6は、重炭酸イオンの経皮吸収による血流量増加のメカニズムを説明する模式図である。
【0044】
まず、本発明の入浴方法に使用する入浴剤(本願発明者らが発明した特許文献2の錠剤)の製造方法について詳細に説明する。
【0045】
本実施例の入浴剤は、重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)に対し1/10から1/3の有機酸及び1/100から1/5のポリエチレングリコール並びに1/100から1/10の無水物(無水炭酸ナトリウム又は無水炭酸カリウム)を含む圧縮成型錠剤であって、圧縮成型錠剤を溶解した直後の湯のpHが5.5から8.5であり、錠剤硬度がビッカース硬度29kg以上、錠剤の直径と厚さ方向のそれぞれが7mm以上である。
【0046】
ここで、例えば重炭酸塩と有機酸(クエン酸)を上記比率で混合したとしても、粉末のままお風呂に投入すれば数秒で溶けてしまい、わずかな炭酸ガスしか発生させることができない。すなわち、中和反応での炭酸ガスの発生よりも、それぞれの成分が解けて薄まってしまう工程が瞬時に優先的に起こってしまい、炭酸ガスは液中にはほとんど溶解せず、単に重炭酸塩と有機酸が溶けた薄い中性液となってしまう。
【0047】
そこで、本実施例の入浴剤では、一定比率の重炭酸塩と有機酸を組み合わせ、一定硬度以上の錠剤として、直径および厚みをそれぞれ7mm以上、望ましくは10mm以上にして圧縮成形する。これによって、湯水に溶かした場合、中和反応が持続的に効率よく行われ、泡のサイズを微細で均一にして、炭酸ガスを効率よく湯水中に溶解させることができる。また、錠剤は完全に反応して固形成分がなくなるまで崩れず、浴槽の底に沈んだままで反応し続けるため、発生した炭酸ガスを効率よく液中に溶解させることができる。
【0048】
有機酸としてはクエン酸、コハク酸、リンゴ酸などが用いられるが、少なくともクエン酸を含む有機酸を用いることで、錠剤中の中和反応をより効果的に持続させ、微細な泡を発生させることができる。
【0049】
また、重炭酸塩を流動層で造粒して造粒物を得る場合、実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機を用いることによって、錠剤中の反応を効率的に高めることができる。機械式撹拌方式の流動層では、撹拌に空気を用いた流動を行わず、プロペラなどの機械式羽などを用いて粉体を流動させるため、造粒中に湿気のある空気から持ち込まれる水分が吸湿する事もない。
【0050】
実質的に空気を攪拌作用として使用しない機械式流動層造粒機は、横型ドラムの中にすき状ショベルを配し、遠心拡散及び渦流作用を起こさせ、三次元流動させる混合機であり、例えば、ドイツレーディゲ社製又は松坂技研社製として市場で販売されている。
【0051】
本造粒機には、減圧するための真空ポンプが付いていることがより好ましい。造粒中に減圧ポンプで真空にすることにより、ポリエチレングリコールの量を下げて造粒できるため、中和反応をより活発にしながら、発泡する泡の径を極めて小さくすることができる。更に、造粒した顆粒が冷却時に粗大粒子になるのを防止するためのチョッパーが付いていることが好ましい。即ち、チョッパーを冷却時に作動させて整粒することにより、炭酸ガス泡の径をミクロサイズより小さくする効果が発揮され、より好ましい造粒方法となる。
【0052】
本実施例の入浴剤では、重炭酸ナトリウムをポリエチレングリコールと機械式撹拌方式を用いた流動層造粒機によって造粒し、この造粒物に一定比率の量の有機酸と無水炭酸ナトリウム及びポリエチレングリコールを加え、混合後、高圧で圧縮成型し一定硬度以上一定サイズ以上の錠剤として得る。
【0053】
もちろん有機酸を主とする混合物もポリエチレングリコールを用いて造粒し、重炭酸塩を造粒せずにポリエチレングリコールと混合しただけで、有機酸造粒物と混合して圧縮成型し錠剤を得るようにしてもよく、造粒する化合物の量が相対的に少なく工程的な面からの製造方法としては好ましい。いずれにしろ、コストの面からは重炭酸塩もしくは有機酸のどちらか一方を造粒し、片方は混合するだけで製造することが望ましい。また、錠剤中での中和反応を長時間維持し溶解する炭酸ガスを増大させるには、重炭酸塩と有機酸塩の両方がいずれもポリエチレングリコールと混合もしくはコーテイングして使用することが好ましい製造方式となる。
【0054】
本実施例の入浴剤の製造方法で使用するポリエチレングリコールは、平均分子量が4000~8000のものが好ましい。ロータリー式打錠機の如き圧縮成形打錠機による成形安定性、杵付着耐性、キャッピング、錠剤成型速度の向上の点からは、平均分子量6000程度のポリエチレングリコールが好ましい。
【0055】
重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)の造粒物Aもしくは混合物A100質量部に対するポリエチレングリコールの比率は、1/100から1/5が好ましく、特に好ましくは1/100から1/10である。ポリエチレングリコールの比率が上記量よりも少ないと、炭酸ガス泡の径が大きくなり発泡時間も短くなり、湯水に溶解する炭酸ガス成分を大きくできないことがあり、一方、ポリエチレングリコールの量が上記よりも多くなると、発生する泡の量が抑えられ、同じように溶解する炭酸ガスの量が小さくなってしまうことがある。
【0056】
また、有機酸を造粒せず、造粒物Aと有機酸にポリエチレングリコールを加え混合するだけで圧縮成型する場合、ミクロサイズの泡を長時間発泡させ、湯水の中に溶解する炭酸ガス成分を大きくすることができる。この場合、工程を大幅に省略することができ、コスト的な効果も合わせて望ましい製造方法である。
【0057】
一方、有機酸をポリエチレングリコールで造粒し、重炭酸塩とポリエチレングリコールを一定温度で混合するだけで圧縮成型する場合も、ミクロサイズの泡を長時間発泡させ、湯水の中に溶解する炭酸ガス成分を最大にすることができる。この場合、工程を大幅に省略することができ、コスト的な効果も合わせて望ましい製造方法である。
【0058】
本実施例の入浴剤の製造方法における有機酸に対するポリエチレングリコールの使用比率は、有機酸100質量部に対して5から15質量部であることが好ましい。
【0059】
重炭酸塩の造粒物Aもしくはポリエチレングリコール混合物Aに対する有機酸もしくは有機酸混合物Bもしくは有機酸造粒物Bの添加量は、1/10から1/3であることが好ましい。
【0060】
有機酸は無水物の添加によって、特に造粒しなくても本発明の効果が得られるが、より好ましくは、ポリエチレングリコールと一緒に添加するか、ポリエチレングリコール造粒物Bとし、造粒物Aと混合して圧縮成型することが、好ましい中和反応性のある錠剤を製剤することができる。
【0061】
更に、本実施例の入浴剤では、前記造粒物Aもしくは混合物Aを作成する工程、又は造粒物Aと有機酸もしくは造粒物Bを混合する工程など圧縮成型前のいずれかの工程に無水物を添加することが好ましい。無水物の量は、多すぎる場合は発泡する泡の量が少なくなってしまい、一方、少なすぎると浴中での炭酸ガスの発生が激しくなり、好ましくない。
【0062】
上記無水物とは、無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムから選ばれる1又は2以上の無水物であり、この無水物を重炭酸塩量の1/100~1/5量、特に1/100~1/10量だけ使用することにより、本実施例の入浴剤の効果を好ましく発揮することができる。特に本実施例の入浴剤の効果を最大に発揮する無水物としては無水炭酸ナトリウムが挙げられる。
【0063】
また、本実施例の入浴剤では錠剤成形のための離型剤を使用することができ、この離型剤としては一般的にショ糖やステアリン酸マグネシウムなどが使われるが、特に、n-(ノルマル)オクタンスルホン酸ナトリウムやラウリルスルホン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ミリストイルメチルアラニンナトリウムなどから選ばれる1種を含むことで、錠剤を安定的かつ高速に圧縮成型することができるため好ましい。また、錠剤が湯水に溶解された際、ミクロサイズの発泡を行わせ、溶解後のこの湯水の透明性を維持する上でも、これらの離型剤が最も好ましく用いられる。なお、この離型剤の添加量は、公知公用の範囲であればよく、特別の制限はない。
【0064】
また、本実施例の入浴剤には、主成分に加えて、その他の成分(添加物)を必要に応じて混合することができる。その他の添加物として、ヒアルロン酸などの健康成分や香料、色素、界面活性剤、必要に応じて炭酸ナトリウムなどの無水物が挙げられる。また、有機酸もしくは有機酸の混合物Bや造粒物Bには、炭酸ナトリウムなどの無水物や、香料、色素、界面活性剤、ポリエチレングリコールなどが望ましい添加物として挙げられる。
【0065】
また、錠剤を作製する圧縮成形には、公知の圧縮成形機を特別の制限なく使用することができ、例えば、油圧プレス機、単発式打錠機、ロータリー式打錠機、ブリケッティングマシンなどを用いることができる。この打錠機などに用いる杵の大きさは、杵が円形である場合は直径が7mm以上であることが好ましく、杵が三角形や四角形の場合、円形杵に換算して直径が7mm以上となるものが好ましい。杵の厚みについても同様である。また、円形の打錠品を得る場合、錠剤の直径は7mm以上が望ましく、より望ましくは10mm以上とし、厚みも7mm以上、好ましくは10mm以上とし、三角形や四角形等の錠剤を得る場合、円形錠剤に換算して、直径及び厚みの各々を7mm以上とすることが好ましい。
【0066】
また、錠剤は必ずしも平面を持つ円形でなくてもよく、7mm以上の固形物であれば、楕円形でもタブレットでも球体でも、形は何ら制限されない。また、錠剤硬度は29kg以上が好ましく、硬度は高いほど錠剤中での炭酸ガスの発生がより効果的に起こり浴中への炭酸ガスの溶解が効率的に行われ、泡の径が細かくなり、好ましい結果を生じる。
【0067】
上記錠剤硬度は、多くの特許明細書の実施例で用いられている、硬さ試験機の一つである、マイクロビッカース硬さ試験機ミツトヨHM-221を用いて測定することができる。本実施例の入浴剤におけるビッカース硬さは、4回測定値であり、HV、kg/mm2単位である。4回程度の測定を行うことにより、その結果の平均値をとれば、相当に正しい測定が可能であることを確認している。
【0068】
本実施例の入浴剤では、液中で発生する炭酸ガスの泡径は目視で測定すると5mm以下であり、かつ泡の合併がなく均一に発生し、中和反応が終わって錠剤が解けきるまで錠剤は底に沈んだままで反応し、炭酸ガスを効率的に液中に溶解できることが好ましく、表面平均ビッカース硬さが15kg以上、好ましくは18kg以上(もっとも好ましくは25kg以上、特に29kg以上)であれば、上記要件を満たす錠剤となっていることが確認できた。
【0069】
次に、上記方法で製造した錠剤を入浴剤として用いた入浴方法について説明する。上述したように、本実施例の入浴剤を用いることにより、発生した炭酸ガスを効率的に湯水中に溶解させ、経皮吸収される重炭酸イオンの濃度を高めることができる。
図6は、人の血管の構造を模式的に示しており、表皮1の内側に真皮/皮下脂肪組織2があり、真皮/皮下脂肪組織2の内側に血管5がある。血管5は平滑筋7を有する血管壁6とその内側の血管内皮組織8とで構成され、血管内皮組織8の内部が血管内9である。ここで、重炭酸イオンが溶解した湯水に入浴すると、
図6に示すように、重炭酸イオンは汗孔4などを介して、血管内9に浸透して血管内皮組織8に存在する内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)をリン酸化し(P-eNOS)、L-アルギニン(L-Al)に作用して一酸化窒素(NO)を発生する。発生したNOはグアニル酸シクラーゼ酵素(sGC)によりグアノシン三リン酸(GTP)を介して環状グアイノシンリン酸(cGMP)を生成する。そして環状グアイノシンリン酸(cGMP)は血管壁6の平滑筋7を弛緩し、その結果、血管5が拡張して血流が増加する。
【0070】
従って、湯水中の重炭酸イオンの濃度を高めることにより、重炭酸イオンの経皮吸収によって血流を促進し、体温を上昇させるなどの入浴効果を高めることができるが、この入浴効果を最大限に発揮させるためには、重炭酸イオンの経皮吸収に関係する入浴条件(入浴剤を溶解した湯水に入浴する時間、入浴剤を溶解する湯水の温度、湯水中の重炭酸イオン濃度など)を最適化する必要がある。
【0071】
そこで、入浴効果を最大限に発揮させるための入浴条件を調べた。ここで、上述したように、重炭酸イオンが経皮吸収されると、血管に一酸化窒素(NO)が発生し、血管が一気に拡張して血流を早めることから、入浴時の被験者の血流量を測定することによって、入浴時間、入浴温度、重炭酸イオン濃度の最適値を調べた。この血流量の測定には、非接触型レーザードップラー血流計(株式会社アドバンス製のALF21N)を用い、レーザ光を生体組織に照射した際の組織からの反射光を電気信号に変換して処理することにより求めた。測定場所は、いわゆる「合谷(ごうこく)」に該当する手の背側の個所であり、皮膚に計測グローブを装着して測定した。なお、血流量の単位はmL/min/100g-組織であるが、ここでは入浴前の値に対する倍数として表記し、被験者が5日間実施したデータの平均値を使用した。
【0072】
まず、浴槽に210Lの湯を入れて入浴温度を39℃に調整し、その中に本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を2mmol/Lに調整し、被験者10名(20歳以上60歳以下の健康な女性)に入浴させた時の血流量の時間変化を測定した。また、比較のために、39℃の通常の湯水に被験者10名を入浴させた時の血流量の時間変化を測定した。その結果を表1及び
図1に示す。
【0073】
【0074】
図1は、入浴時間と血流量との相関を示す図である。
図1の破線に示すように、通常の湯水に入浴した場合は、入浴によって体温が上昇し、自律神経の作用によって一時的に血流量が約2倍に増加するが、10分程度で血流量の増加は止まり、その後は入浴時間を長くしても血流量はほとんど変化しなかった。一方、
図1の実線に示すように、本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を2mmol/Lに調整した湯水に入浴した場合は、時間の経過に伴って重炭酸イオンが経皮吸収されて血管に一酸化窒素が発生し、一酸化窒素から生成された環状グアイノシンリン酸が平滑筋を弛緩して血管が拡張する。その結果、10分経過後には血流量は入浴前の約5倍(通常の湯水に入浴した場合に血流量が約2倍に増加することを考慮すると、重炭酸イオンが経皮吸収されることによる血流量の増加は実質的に約4倍)に増加し、20分経過後には血流量は入浴前の約6倍(同様に、通常の湯水に入浴した場合に血流量が約2倍に増加することを考慮すると、重炭酸イオンが経皮吸収されることによる血流量の増加は実質的に約5倍)に増加し、その後も入浴時間の増加に伴って血流量が徐々に増加した。
図1の結果から、重炭酸イオンを溶解させた湯水に入浴した場合、通常の湯水に入浴した場合に比べて明らかに血流量が増加しており、通常の湯水に入浴した場合との血流量の有意差を考慮すると、入浴時間は10分以上、好ましくは20分以上が最適な入浴条件であると言え、10分以上入浴した場合、血流量は入浴前の約4倍以上、20分以上入浴した場合、血流量は入浴前の約5倍以上なることが分かった。
【0075】
次に、浴槽に210Lの湯を入れて入浴温度を変化させ、その中に本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を2mmol/Lに調整し、被験者10名(20歳以上60歳以下の健康な女性)に20分入浴させた時の血流量を測定した。また、比較のために、温度を変化させた通常の湯水に被験者10名を20分入浴させた時の血流量を測定した。その結果を表2及び
図2に示す。
【0076】
【0077】
図2は、入浴温度と血流量との相関を示す図である。
図2の破線に示すように、通常の湯水に入浴した場合、入浴温度の上昇に伴って体温が上昇し、自律神経の作用によって血流量は徐々に増加するが、血流量の増加は約2.4倍以下であった。一方、
図2の実線に示すように、本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を2mmol/Lに調整した湯水に入浴した場合は、入浴温度の上昇に伴って、酵素(内皮型一酸化窒素合成酵素やグアニル酸シクラーゼ酵素など)の働きが高まり、一酸化窒素や環状グアイノシンリン酸の生成量が増加し、平滑筋の弛緩作用が強まって血管が大きく拡張する。その結果、29℃で血流量は入浴前の約3.1倍、32℃で血流量は入浴前の約5倍、40℃で血流量は入浴前の約6.1倍になり、その後、血流量の変化は緩やかになるものの43℃で血流量は入浴前の約6.2倍になった。
図2の結果から、重炭酸イオンを溶解させた湯水に入浴した場合、通常の湯水に入浴した場合に比べて明らかに血流量が増加しており、通常の湯水に入浴した場合との血流量の有意差を考慮すると、入浴温度は29℃から43℃、好ましくは32℃から40℃が最適な入浴条件であると言える。
【0078】
次に、浴槽に210Lの湯を入れて入浴温度を39℃に調整し、その中に本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を変化させ、被験者10名(20歳以上60歳以下の健康な女性)に20分入浴させた時の血流量を測定した。その結果を表3及び
図3に示す。なお、重炭酸イオン濃度が0mmol/Lの血流量が入浴前の2倍になっているのは、表1より39℃の通常の湯水に20分入浴した場合の血流量の増加が入浴前の2倍であることによる。また、
図3では、重炭酸イオン濃度が低い(1mmol/L以下の)条件での血流量の変化を分かりやすくするために、グラフの左右で重炭酸イオンの濃度範囲で変えている。
【0079】
【0080】
図3は、重炭酸イオン濃度と血流量との相関を示す図である。
図3の実線に示すように、本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を変化させた湯水に入浴した場合は、経皮吸収される重炭酸イオンが少量でも十分な一酸化窒素が発生し、一酸化窒素から生成された環状グアイノシンリン酸が平滑筋を弛緩して血管が拡張する。その結果、0.1mmol/Lで血流量は入浴前の約4.8倍、0.2mmol/Lで血流量は入浴前の約5.3倍に急激に増加し、その後、5mmol/Lで血流量は入浴前の約6.2倍、10mmol/Lで血流量は入浴前の約6.4倍に緩やかに増加した。
図3の結果から、重炭酸イオン濃度は、血流量が大幅に増加している0.1mmol/Lから10mmol/L、好ましくは0.2mmol/Lから5mmol/Lが最適な入浴条件であると言える。
【0081】
重炭酸イオンの経皮吸収によって血流量が増加すると体温が上昇すると考えられることから、入浴時間と体温の相関を調べた。この体温の測定には、電子体温計や非接触体温計などの通常の体温計や深部体温計(GreenTEG社製のCORE)を用いることができる。本測定では、深部体温計を用い、熱流束(単位時間当たりに単位面積を流れる熱エネルギー量)を高感度センサーで測定し、アルゴリズムで処理することによって皮膚表面の体温から体の内部の体温(深部体温)を求めた。測定場所は手首であり、3cm×3cmのパッチ型センサーをバンドで手首に固定して測定した。なお、ここでは入浴前の値からの変化として表記し、被験者が5日間実施したデータの平均値を使用した。
【0082】
入浴時間と血流量との相関を調べた時と同様に、浴槽に210Lの湯を入れて入浴温度を39℃に調整し、その中に本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を2mmol/Lに調整し、被験者10名(20歳以上60歳以下の健康な女性)を入浴させた時の体温の時間変化を測定した。また、比較のために、39℃の通常の湯水に被験者10名を入浴させた時の体温の時間変化を測定した。その結果を表4及び
図4に示す。
【0083】
【0084】
図4は、入浴時間と体温との相関を示す図である。
図4の破線に示すように、通常の湯水に入浴した場合、自律神経の作用によって血流量は増加するが、体温はそれほど上昇していない。一方、
図4の実線に示すように、本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を2mmol/Lに調整した湯水に入浴した場合は、重炭酸イオンが経皮吸収されて血管に一酸化窒素が発生し、一酸化窒素から生成された環状グアイノシンリン酸が平滑筋を弛緩して血管が拡張し、血流量が増加する。その結果、10分経過後には体温は入浴前の値から約0.7℃(通常の湯水の場合は約0.5℃)上昇し、20分経過後には体温は入浴前の値から約1.5℃(通常の湯水の場合は約1.1℃)上昇し、その後も入浴時間の増加に伴って体温が徐々に上昇した。
図4の結果から、重炭酸イオンを溶解させた湯水に入浴した場合、通常の湯水に入浴した場合に比べて明らかに体温が高く、重炭酸イオンを溶解させた湯水に入浴することによって体が芯から温まっていることが分かった。
図4の結果からも、通常の湯水に入浴した場合との体温の有意差を考慮すると、入浴時間は10分以上、好ましくは20分以上が最適な入浴条件であると言え、その入浴条件で入浴した場合、体温は通常の湯水に入浴した場合に比べて約0.2℃以上高くなることが分かった。
【0085】
次に、体が芯から温まっていることを明確にするために、入浴後に体温がどのように変化するかを調べた。この体温の測定には、上記と同様に、電子体温計や非接触体温計などの通常の体温計や深部体温計(GreenTEG社製のCORE)を用いることができ、本測定では、深部体温計を用いた。なお、ここでは入浴直後の値からの変化として表記し、被験者が5日間実施したデータの平均値を使用した。
【0086】
浴槽に210Lの湯を入れて入浴温度を39℃に調整し、その中に本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を2mmol/Lに調整し、被験者10名(20歳以上60歳以下の健康な女性)に20分入浴させた後、気温20~25℃の室内で通常に過ごした時の体温の時間変化を測定した。また、比較のために、39℃の通常の湯水に被験者10名を20分入浴させた後、気温20~25℃の室内で通常に過ごした時の体温の時間変化を測定した。その結果を表5及び
図5に示す。
【0087】
【0088】
図5は、入浴後の経過時間と体温との相関を示す図である。
図5の破線に示すように、通常の湯水に入浴した場合、自律神経の作用によって血流量はある程度増加するが、浴槽から出ると血流量は元に戻るため、体温は急速に低下している。一方、
図5の実線に示すように、本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオン濃度を2mmol/Lに調整した湯水に入浴した場合は、重炭酸イオンの経皮吸収による血管拡張によって血流量が増加して体温が上昇するため、入浴後60分経過しても体温の低下は入浴直後の値から約0.2℃(通常の湯水の場合は約0.3℃)、120分経過しても体温の低下は入浴直後の値から約0.3℃(通常の湯水の場合は約0.5℃)であった。
図5の結果から、重炭酸イオンを溶解させた湯水に入浴した場合、通常の湯水に入浴した場合に比べて明らかに体温の低下が抑制されており、重炭酸イオンを溶解させた湯水に入浴することによって体が芯から温まっていることが確認できた。
図5の結果からも、通常の湯水に入浴した場合との体温の有意差を考慮すると、入浴時間は20分以上が好ましい入浴条件であると言え、その入浴条件で入浴した場合、入浴後60分から120分経過した時の体温は通常の湯水に入浴した場合に比べて約0.1℃以上高くなることが分かった。
【0089】
次に、ピッツバーグ睡眠質問票を用いて、本発明の入浴方法を実施した場合の睡眠を評価した。このピッツバーグ睡眠質問票(PSQI:Pittsburgh Sleep Quality Index)は、最近1ヵ月間の睡眠について睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠困難、眠剤の使用、日中覚醒困難の項目から評価するもので、スコアが低いほど睡眠の質が高いことを示している。
図7は、ピッツバーグ睡眠質問票における質問する項目と質問に対する回答の判定基準とを示している。
【0090】
被験者に対して
図7に示す項目を質問し、その回答に対して
図7に示す判定基準に基づいてスコアを計算した。その結果を表6に示す。なお、被験者は33人の女性であり、その年齢は48.5±7.1歳である。また、使用前は、通常の湯水を用いて入浴していた場合の値、使用4週後は、本実施例の入浴剤を投入して重炭酸イオンを溶解させた湯水を用い、湯水の温度39℃、重炭酸イオン濃度2mmol/L、入浴時間10分以上の入浴条件で4週間入浴した場合の値であり、平均値±標準偏差である。また、P値は、統計的仮説検定において、帰無仮説の元で検定統計量がその値となる確率のことであり、一般的に、P<0.05で有意差有りと判断される。ここでは、使用前と使用4週後をWilcoxonの符号付き順位検定で統計解析を行ってP値を求めた。
【0091】
【表6】
*:P<0.05、**:P<0.01、***:P<0.001
【0092】
表6を、睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠効率、睡眠困難、睡眠薬の使用、日中覚醒困難の7要素に分類し、合計得点を計算した結果を表7に示す。なお、使用前と使用4週後の値は、平均値±標準偏差であり、P値は、使用前と使用4週後を対応のあるt検定で統計解析を行って求めた。
【0093】
【表7】
*:P<0.05、**:P<0.01、***:P<0.001
【0094】
表7より、本実施例の入浴剤を溶解した湯水に入浴するグループ(使用4週後)は、通常の湯水に入浴するグループ(使用前)に比べて、睡眠の質、入眠時間、睡眠時間、睡眠困難、日中覚醒困難、総合得点に関しては、スコアは大きく下がりP値は0.001よりも小さく、睡眠効率に関しても、スコアは下がりP値は有意差有りと判断される0.05よりも小さいことから、本発明の入浴方法を実施することにより、睡眠の質の向上に効果があることが分かった。
【0095】
以上説明したように、本願発明者らが発明した錠剤(重炭酸塩(炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウム)に対し1/10から1/3の有機酸及び1/100から1/5のポリエチレングリコール並びに1/100から1/10の無水物(無水炭酸ナトリウム又は無水炭酸カリウム)を含む圧縮成型錠剤であって、圧縮成型錠剤を溶解した直後の湯のpHが5.5から8.5であり、錠剤硬度がビッカース硬度29kg以上、錠剤の直径と厚さ方向のそれぞれが7mm以上)を入浴剤として用いた入浴において、湯の温度が29~43℃、重炭酸イオン濃度が0.1~10mmol/Lの条件で、10分以上入浴する、好ましくは、湯の温度が32~40℃、重炭酸イオン濃度が0.2~5mmol/Lの条件で、20分以上入浴することにより、重炭酸イオンの経皮吸収による血流の促進などの入浴効果を最大限に発揮させることができる。
【0096】
そして、湯水の温度が39℃、重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴した時、入浴者の血流量が入浴前の約4倍以上になり、湯水の温度が39℃、重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、20分以上入浴した時、入浴者の血流量が入浴前の約5倍以上になった。
【0097】
また、湯水の温度が39℃、重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴した時、入浴者の体温が、重炭酸イオンを含まない湯水に入浴した場合に比べて、約0.2℃以上高くなり、湯水の温度が39℃、重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、20分入浴した後、60分から120分経過した時の入浴者の体温が、重炭酸イオンを含まない湯水に入浴した場合に比べて、約0.1℃以上高くなった。
【0098】
また、湯水の温度が39℃、重炭酸イオンの濃度が2mmol/Lの状態で、10分以上入浴する入浴条件で4週間入浴した後のピッツバーグ睡眠質問票に対する回答のスコアが、その入浴条件で入浴する前に比べて有意に低く、t検定で統計解析を行って求めたP値が0.001以下になった。
【0099】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、その構成は適宜変更可能である。
【0100】
例えば、上記実施例では、本願発明者らが発明した錠剤を入浴剤として用いた場合の入浴条件について記載したが、湯水中に重炭酸イオンを同程度に溶解させることができる他の錠剤を入浴剤として用いた場合でも、本発明の入浴方法を同様に適用することができる。