IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新東工業株式会社の特許一覧 ▶ 藤和電気株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-注湯設備 図1
  • 特開-注湯設備 図2
  • 特開-注湯設備 図3
  • 特開-注湯設備 図4
  • 特開-注湯設備 図5
  • 特開-注湯設備 図6
  • 特開-注湯設備 図7
  • 特開-注湯設備 図8
  • 特開-注湯設備 図9
  • 特開-注湯設備 図10
  • 特開-注湯設備 図11
  • 特開-注湯設備 図12
  • 特開-注湯設備 図13
  • 特開-注湯設備 図14
  • 特開-注湯設備 図15
  • 特開-注湯設備 図16
  • 特開-注湯設備 図17
  • 特開-注湯設備 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180686
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】注湯設備
(51)【国際特許分類】
   B22D 47/00 20060101AFI20231214BHJP
   B22D 41/06 20060101ALI20231214BHJP
   B22D 41/12 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B22D47/00
B22D41/06
B22D41/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094201
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391020492
【氏名又は名称】藤和電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】西田 理
(72)【発明者】
【氏名】星野 正則
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 利幸
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014HA01
4E014LA04
(57)【要約】
【課題】溶湯を効率的に排湯できる注湯設備を提供する。
【解決手段】注湯設備は、鋳型を搬送する鋳型搬送装置と、排湯を貯留する排湯用容器と、鋳型搬送装置と排湯用容器との間に位置する搬送路を移動可能であり、第1方向に取鍋を傾動させて鋳型搬送装置に搬送される鋳型に注湯するとともに第1方向の逆方向である第2方向に取鍋を傾動させて排湯用容器へ排湯するように構成された注湯機と、を備える。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型を搬送する鋳型搬送装置と、
排湯を貯留する排湯用容器と、
前記鋳型搬送装置と前記排湯用容器との間に位置する搬送路を移動可能であり、第1方向に取鍋を傾動させて前記鋳型搬送装置に搬送される前記鋳型に注湯するとともに前記第1方向の逆方向である第2方向に前記取鍋を傾動させて前記排湯用容器へ排湯するように構成された注湯機と、
を備える、注湯設備。
【請求項2】
前記注湯機は、
前記取鍋を載置し、前記取鍋とともに傾動する傾動フレームと、
前記傾動フレームに前記取鍋を固定する固定部材と、
を有する、請求項1に記載の注湯設備。
【請求項3】
前記取鍋は、ピン受け部を有し、
前記固定部材は、
前記傾動フレームに設けられ、前記ピン受け部と係合するピンと、
前記ピンを上下方向に駆動させるピン駆動部と、
を含む、請求項2に記載の注湯設備。
【請求項4】
前記傾動フレームは、前記取鍋が突き当てられる壁部材を有し、
前記固定部材は、
前記傾動フレームに設けられ、前記取鍋を前記壁部材との間に挟み込むクランプ部材と、
前記クランプ部材を駆動させるクランプ駆動部と、
を含む、請求項2又は3に記載の注湯設備。
【請求項5】
前記取鍋から前記排湯用容器へと溶湯を案内する樋部材をさらに備える、請求項2又は3に記載の注湯設備。
【請求項6】
前記注湯機の位置に応じて前記樋部材を移動させる樋移動機構をさらに備える、請求項5に記載の注湯設備。
【請求項7】
前記取鍋は、前記鋳型に注湯するための第1出湯口と、前記排湯用容器に排湯するための第2出湯口とを有し、
前記取鍋の上方からみて、前記第1出湯口、前記取鍋の中心、及び前記第2出湯口は、直線的に並ぶように配置される、請求項2又は3に記載の注湯設備。
【請求項8】
前記注湯機は、
前記傾動フレームを前後方向に移動させる前後機構と、
前記傾動フレームを昇降させる昇降機構と、
前記傾動フレームを傾動させる傾動機構と、
を有する、請求項2又は3に記載の注湯設備。
【請求項9】
前記昇降機構は、
鉛直方向に延在し、前記傾動フレームを支持する少なくとも1つの支持部材と、
前記傾動フレームを前記少なくとも1つの支持部材に沿って移動させる少なくとも1つの昇降駆動部と、
を備える、請求項8に記載の注湯設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注湯設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、注湯設備を開示する。注湯設備は、鋳型を搬送する鋳型搬送装置、及び、搬送された鋳型に取鍋内の溶湯を注湯する注湯機を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6472899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の注湯設備は、溶湯を効率的に排湯する観点から改善の余地がある。本開示は、溶湯を効率的に排湯できる注湯設備を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る注湯設備は、鋳型搬送装置、排湯用容器、及び、注湯機を備える。鋳型搬送装置は、鋳型を搬送する。排湯用容器は、排湯を貯留する。注湯機は、鋳型搬送装置と排湯用容器との間に位置する搬送路を移動可能であり、第1方向に取鍋を傾動させて鋳型搬送装置に搬送される鋳型に注湯するとともに第1方向の逆方向である第2方向に取鍋を傾動させて排湯用容器へ排湯するように構成される。
【0006】
本開示の注湯設備では、取鍋は注湯機によって第1方向に傾動し、取鍋内の溶湯は鋳型搬送装置に搬送される鋳型に注湯される。取鍋は、注湯機によって第1方向の逆方向である第2方向にも傾動し得る。注湯機は鋳型搬送装置と排湯用容器との間に位置する搬送路を移動するため、第1方向の逆方向である第2方向には排湯用容器が存在する。つまり、取鍋は注湯機によって第2方向に傾動した場合、取鍋内の溶湯は排湯用容器に排湯される。このように、注湯設備は、取鍋を第1方向に傾動させて鋳型への注湯処理を実行し、取鍋を第2方向に傾動させて排湯用容器への排湯処理を実行できる。このため、注湯設備は、注湯機を注湯ゾーンから移動させることなく排湯できるので、溶湯を効率的に排湯できる。
【0007】
一実施形態においては、注湯機は、取鍋を載置し、取鍋とともに傾動する傾動フレームと、傾動フレームに取鍋を固定する固定部材とを有してもよい。この場合、注湯機は、傾動フレームを動作させることで、取鍋を傾動させることができる。
【0008】
一実施形態においては、取鍋は、ピン受け部を有し、固定部材は、傾動フレームに設けられ、ピン受け部と係合するピンと、ピンを上下方向に駆動させるピン駆動部とを含んでもよい。この場合、傾動フレームに設けられたピンが取鍋のピン受け部と係合する。これにより、固定部材は、取鍋を傾動フレームに固定できる。
【0009】
一実施形態においては、傾動フレームは、取鍋が突き当てられる壁部材を有し、固定部材は、傾動フレームに設けられ、取鍋を壁部材との間に挟み込むクランプ部材と、クランプ部材を駆動させるクランプ駆動部とを含んでもよい。この場合、壁部材に突き当たった取鍋は、傾動フレームの壁部材とクランプ部材との間に挟み込まれて固定される。これにより、固定部材は、取鍋を傾動フレームに固定できる。
【0010】
一実施形態においては、取鍋から排湯用容器へと溶湯を案内する樋部材をさらに備えてもよい。この場合、注湯設備は、取鍋内の溶湯を、桶部材を介して排湯用容器へ排湯できる。
【0011】
一実施形態においては、注湯機の位置に応じて樋部材を移動させる樋移動機構をさらに備えてもよい。この場合、注湯設備は、桶部材の位置を調節できるので、取鍋内の溶湯をより確実に排湯用容器へ排湯できる。
【0012】
一実施形態においては、取鍋は、鋳型に注湯するための第1出湯口と、排湯用容器に排湯するための第2出湯口とを有し、取鍋の上方からみて、第1出湯口、取鍋の中心、及び第2出湯口は、直線的に並ぶように配置されてもよい。このような構成により、注湯設備は、溶湯の傾きの向きを制御するだけで、溶湯処理と排湯処理とを切り替えることができる。
【0013】
一実施形態においては、注湯機は、傾動フレームを前後方向に移動させる前後機構と、傾動フレームを昇降させる昇降機構と、傾動フレームを傾動させる傾動機構とを有してもよい。これにより、注湯機は、取鍋の姿勢を任意に変更できる。
【0014】
一実施形態においては、昇降機構は、鉛直方向に延在し、傾動フレームを支持する少なくとも1つの支持部材と、傾動フレームを少なくとも1つ支持部材に沿って移動させる少なくとも1つの昇降駆動部とを備えてもよい。この場合、注湯設備は、取鍋を支持部材に沿って昇降させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の種々の側面及び実施形態によれば、溶湯を効率的に排湯できる注湯設備が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】例示的な実施形態に係る注湯設備が備わる鋳造設備の一部を示す平面図である。
図2】例示的な実施形態に係る注湯機の側面図である。
図3】例示的な実施形態に係る注湯機の正面図である。
図4】取鍋を傾動フレームに固定するクランプ部材(開状態)を説明する平面図である。
図5】取鍋を傾動フレームに固定するクランプ部材(閉状態)を説明する平面図である。
図6】取鍋を傾動フレームに固定するピン及びピン受け部について説明する側面図である。
図7】取鍋を傾動フレームに固定するピン及びピン受け部について説明する正面図である。
図8】注湯機の注湯処理について説明する正面図である。
図9】注湯機の排湯処理について説明する正面図である。
図10】比較例に係る注湯設備が備わる鋳造設備の一部を示す平面図である。
図11】他の比較例に係る注湯設備が備わる鋳造設備の一部を示す平面図である。
図12図11に示される排湯装置の一例を示す図である。
図13図1の鋳造設備を簡略化して示す平面図である。
図14】変形例に係る注湯機の側面図である。
図15図14に示される注湯機の正面図である。
図16】昇降機構について説明する平面図である。
図17】他の変形例に係る注湯機の側面図である。
図18図17に示される注湯機の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本開示の例示的な実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0018】
[鋳造設備の概要]
図1は、例示的な実施形態に係る注湯設備が備わる鋳造設備の一部を示す平面図である。図1に示される鋳造設備100は、溶解炉で得られた元湯の一部を取鍋へ出湯し、溶湯を貯留する取鍋を注湯機へ搬送し、搬送された取鍋の溶湯を、注湯機を用いて鋳型に注湯する。図1に示されるように、鋳造設備100は、一例として溶解炉2を有する。溶解炉2は、溶解材料を熱で溶融して元湯を得る。溶解炉2は1台であってもよいし、複数台であってもよい。図1の例では、2台の溶解炉2が並設される。溶解炉2には、対応する溶解材料投入装置が並設されており、溶解材料投入装置によって溶解材料が炉内に投入される。溶解炉2は、後述する受湯取鍋へ複数回出湯できる程度の量の元湯を一度に得ることができる。
【0019】
溶解炉2で溶解された溶湯は、処理取鍋LD1に出湯される。処理取鍋LD1は、受湯台車4に載置され、受湯台車レールR1上に沿って移動する。受湯台車4は、受湯前に、元湯の成分を調整するために一次接種装置3の位置へ移動し、元湯の成分を調整する材料が一次接種装置3によって処理取鍋LD1に投入される。その後、受湯台車4は受湯位置へ移動し、溶湯が溶解炉2から処理取鍋LD1へ出湯される。受湯台車4は空替位置へ移動し、処理取鍋LD1の溶湯が注湯取鍋LD2へ空け替えられる。空け替えとは、溶湯を他の取鍋に移し替えることである。処理取鍋LD1から注湯取鍋LD2へ溶湯を空け替えるときに、注湯取鍋LD2には二次接種装置5によって添加材料が投入され、溶湯の成分が調整される。
【0020】
注湯取鍋LD2は、搬送台車6に載置され、搬送台車レールR2に沿って搬送される。搬送台車6は、上述した空替位置の他に、注湯機10に注湯取鍋LD2を搬送する取鍋交換位置にも停止することができる。
【0021】
注湯取鍋LD2は、搬送台車レールR2に沿って搬送され、注湯設備1に到着する。注湯設備1においては、鋳型MDに溶湯が注湯される。溶湯の入った注湯取鍋LD2(実取鍋)は、注湯機10の前段(取鍋交換位置)において、搬送台車6から取鍋交換装置9へ受け渡される。取鍋交換装置9において、実取鍋と、注湯して空になった注湯取鍋LD2(空取鍋)との交換が実現する。例えば、注湯機10がスライドすることにより、実取鍋と空取鍋との交換が実現する。例えば、注湯機10がローラコンベア8の手前へスライドすることにより、空取鍋が注湯機10からローラコンベア8へ受け渡される。注湯機10がローラコンベア7の手前へスライドすることにより、ローラコンベア7から実取鍋が注湯機10へ受け渡たされる。
【0022】
注湯機10は、注湯取鍋LD2が貯留する溶湯を鋳型MDに注湯する。注湯機10は、注湯ゾーン14の側方に設けられる。注湯ゾーン14では、鋳型搬送装置が、造型機(不図示)によって造型された複数の鋳型MDを列状に並べて1鋳型分ずつ搬送する。注湯機10は、注湯ゾーン14において、搬送されている鋳型MDに対して注湯取鍋LD2内の溶湯を注湯する。
【0023】
注湯ゾーン14には、鋳型用のレールが敷設されており、レールの両端には、鋳型搬送装置である一組の鋳型送り装置11(プッシャ及びクッション)が配置される。鋳型送り装置11を構成するプッシャは、鋳型MDを押し出す機能を有し、鋳型送り装置11を構成するクッションは、押し出された鋳型MDを受ける機能を有する。プッシャ及びクッションにより鋳型MDを隙間なく送り出すことができる。鋳型送り装置11は、一鋳型分ずつ鋳型MDを送り出す。図1においては、レールの前端の鋳型送り装置(クッション)のみが図示されており、レールの後端に配置された鋳型送り装置(プッシャ)の図示は省略されている。
【0024】
注湯ゾーン14には、注湯機用の注湯レールR3(搬送路の一例)が敷設されている。注湯レールR3は、鋳型用のレールに沿って敷設されている。注湯機10は、注湯取鍋LD2を載置し、注湯レールR3に沿って移動可能である。注湯機10は、注湯レールR3上の任意の位置に移動し、注湯取鍋LD2を第1方向に傾動させ、鋳型MDに注湯する。第1方向は、鋳型MDに注湯する傾動方向である。
【0025】
注湯ゾーン14には、排湯を貯留する排湯用容器16が設置される。排湯用容器16は、注湯取鍋LD2の排湯を受ける容器である。排湯とは、溶湯温度が閾値以下に低下したり、鋳型MDへ注湯すべき溶湯の材質変更があったり、1枠分以下の溶湯が残ったりした場合に、注湯取鍋LD2内の溶湯を排出するこという。なお、残湯が多い場合は、湯返しが行われる。湯返しは、液状のまま、溶解炉に取鍋ごと溶湯を返送するこという。例えば、クレーンなどで注湯取鍋LD2を吊り出し、ラインアウト可能なローラコンベアに注湯取鍋LD2を移載することにより、注湯取鍋LD2は溶解炉2へと搬送される。排湯用容器16は、注湯レールR3に並設される。つまり、注湯機10は、鋳型搬送装置と排湯用容器16との間に位置する注湯レールR3を移動可能である。
【0026】
注湯機10は、排湯が必要になった場合には、排湯用容器16に対面する位置へ移動する。そして、注湯機10は、注湯取鍋LD2を第2方向に傾動させ、排湯用容器16に排湯する。第2方向は、第1方向の逆方向であり、排湯用容器16へ排湯する傾動方向である。排湯用容器16に貯留された溶湯は、固化した後に溶解炉2で再利用され得る。例えば、固化した排湯は、溶解炉の溶解開始時に、溶解材料とともに投入される。
【0027】
注湯ゾーン14において鋳型MDがレールの前端に至ると、トラバーサ13で隣の冷却ゾーン15へと移送される。冷却ゾーンでは、注湯後の製品を鋳型MD内で冷却させながら、鋳型ばらし装置(不図示)へと鋳型MDを搬送する。冷却ゾーン15には、鋳型MD用のレールが敷設されており、レールの両端には、注湯ゾーン14と同様に、一組の鋳型送り装置12(プッシャ及びクッション)が配置される。図1においては、レールの後端の鋳型送り装置(プッシャ)のみが図示され、レールの前端に配置された鋳型送り装置(クッション)の図示は省略されている。鋳型送り装置12の動作は、鋳型送り装置11の動作と同一である。鋳型送り装置12によって、冷却ゾーン15の鋳型MDは、注湯ゾーン14の鋳型MDの搬送方向とは逆方向へ搬送される。注湯された後の鋳型MDはレール上において時間を掛けて冷却され、溶湯は鋳型ばらし装置に至る前に固化して鋳物となる。
【0028】
[注湯機の詳細]
図2は、例示的な実施形態に係る注湯機の側面図である。図3は、例示的な実施形態に係る注湯機の正面図である。図2及び図3に示されるように、注湯機10は、注湯台車101を備える。注湯台車101は、注湯取鍋LD2を載置し、注湯レールR3に沿って走行する。
【0029】
注湯台車101は、走行用モータを備える。走行用モータM1の駆動によって注湯台車101の車輪が回転し、注湯台車101は注湯レールR3上を走行する(図中Y方向)。これにより、注湯取鍋LD2は、鋳型列に沿って移動可能となる。さらに、注湯取鍋LD2は、傾動機構ME1によって傾動可能に支持される。傾動機構ME1は、駆動源として傾動用モータSM1を備え、図中Y方向に延在する傾動軸Kを中心として、傾動フレームF1及び注湯取鍋LD2を傾動させる(図中θ方向)。
【0030】
傾動フレームF1は、注湯取鍋LD2を載置し、注湯取鍋LD2とともに傾動する部材である。傾動機構ME1は、鉛直方向を基準に前後方向に傾動フレームF1及び注湯取鍋LD2を傾動させることができる。前後方向とは、第1方向である+θ方向、及び、第2方向である-θ方向である。
【0031】
さらに、傾動フレームF1及び注湯取鍋LD2は、昇降機構ME2によって昇降可能に支持される。昇降機構ME2は、駆動源として昇降用モータSM2(昇降駆動部の一例)、及び、支持部材として昇降ポールPL1を備え、傾動機構ME1を昇降ポールPL1に沿って昇降させる(図中Z方向)。昇降ポールPL1には、ボールネジおよびリニヤガイドが設けられる。これにより、傾動フレームF1及び注湯取鍋LD2は、傾動機構ME1とともに昇降し、所定の高さから注湯可能となる。
【0032】
さらに、傾動フレームF1及び注湯取鍋LD2は、前後移動機構ME3(前後機構の一例)によって移動可能に支持される。前後移動機構ME3は、駆動源として移動用モータSM3を備え、昇降機構ME2を移動させる(図中X方向)。これにより、傾動フレームF1及び注湯取鍋LD2は、傾動機構ME1及び昇降機構ME2とともに、鋳型MDに近接又は離間する方向へ移動可能となる。
【0033】
以上、傾動フレームF1に搭載された注湯取鍋LD2は、図中のXYZ方向の任意の位置に移動し、任意の傾動角度で傾動することができる。傾動機構ME1、昇降機構ME2及び前後移動機構ME3によって、傾動フレームF1及び注湯取鍋LD2は所定の高さ及び姿勢から+θ方向に傾動し、溶湯が注湯取鍋LD2の第1出湯口P1から鋳型MDへと注がれる。なお、傾動用モータSM1、昇降用モータSM2及び移動用モータSM3は、一例としてサーボモータである。
【0034】
注湯機10は、排湯用容器16へ排湯するために、傾動フレームF1とともに注湯取鍋LD2を-θ方向へ傾動可能である。注湯機10は、注湯取鍋LD2を-θ方向に傾動するために、傾動フレームF1に注湯取鍋LD2を固定する固定部材を備える。
【0035】
(固定部材の詳細)
図4は、取鍋を傾動フレームに固定するクランプ部材(開状態)を説明する平面図である。図5は、取鍋を傾動フレームに固定するクランプ部材(閉状態)を説明する平面図である。注湯取鍋LD2は、図4に示されるように傾動フレームF1と離間した状態から矢印で示すようにX方向に前進し、図5に示されるように傾動フレームF1に載置されて固定される。
【0036】
図4に示されるように、傾動フレームF1は、注湯取鍋LD2が突き当てられる壁部材Faを有する。壁部材Faは、傾動フレームF1に立設された略板状の部材である。壁部材Faは、注湯取鍋LD2の位置決めストッパとして機能するとともに、注湯取鍋LD2が+θ方向に傾動するときに注湯取鍋LD2を支持する。
【0037】
さらに、傾動フレームF1には、固定部材の一例として、第1クランプ部材C1及び第2クランプ部材C2が設けられる。第1クランプ部材C1は、第1クランプシリンダCS1(クランプ駆動部の一例)によって駆動し、開状態(図4)又は閉状態(図5)に制御される。第2クランプ部材C2も同様に、第2クランプシリンダCS2(クランプ駆動部の一例)によって駆動し、開状態(図4)又は閉状態(図5)に制御される。第1クランプシリンダCS1及び第2クランプシリンダCS2は、一例としてエアシリンダである。
【0038】
図4に示されるように、注湯取鍋LD2が傾動フレームF1に載置されるまでは、第1クランプ部材C1及び第2クランプ部材C2は開状態を維持し、傾動フレームF1が第1クランプ部材C1と第2クランプ部材C2との間を通過可能な状態とする。注湯取鍋LD2は、X方向に前進して、第1クランプ部材C1と第2クランプ部材C2との間を通過し、壁部材Faに突き当たり、停止する。注湯取鍋LD2が停止した場合、図5に示されるように、第1クランプ部材C1及び第2クランプ部材C2は閉状態となる。第1クランプ部材C1及び第2クランプ部材C2は、閉状態となることで、注湯取鍋LD2を壁部材Faとの間に挟み込む。これにより、注湯取鍋LD2は、傾動フレームF1に固定される。
【0039】
注湯取鍋LD2は、図5に示されるように傾動フレームF1に載置された状態で、ピンによって傾動フレームF1にさらに固定される。図6は、取鍋を傾動フレームに固定するピン及びピン受け部について説明する側面図である。図6では、部材の重なりを考慮して、説明のために、破線で示す位置から矢印で示される位置まで注湯取鍋LD2を移動させている。図7は、取鍋を傾動フレームに固定するピン及びピン受け部について説明する正面図である。
【0040】
図4図6、及び図7に示されるように、注湯取鍋LD2の前面には、第1ピン受け部PH1及び第2ピン受け部PH2を有する。第1ピン受け部PH1及び第2ピン受け部PH2は、一例としてピンが係合可能な穴が形成された部材である。
【0041】
傾動フレームF1には、固定部材の一例として、第1ピン受け部PH1と係合する第1ピンPN1が設けられる。第1ピンPN1は、第1ピンシリンダPC1(ピン駆動部の一例)によって上下方向に駆動する。第2ピンPN2も同様に、第2ピンシリンダPC2(ピン駆動部の一例)によって上下方向に駆動する。第1ピンシリンダPC1及び第2ピンシリンダPC2は、一例としてエアシリンダである。図5に示されるように、注湯取鍋LD2が傾動フレームF1に載置されたときに第1ピンPN1が下降し、第1ピン受け部PH1と係合する。同様に、第2ピンPN2が下降し、第2ピン受け部PH2と係合する。これにより、注湯取鍋LD2は、傾動フレームF1にさらに固定される。
【0042】
(注湯取鍋)
図5に示されるように、注湯取鍋LD2は、第1出湯口P1及び第2出湯口P2を有する。第1出湯口P1は、注湯用の出湯口である。第2出湯口P2は、排湯用の出湯口である。注湯取鍋LD2の上方からみて、第1出湯口P1、取鍋の中心P、及び第2出湯口P2は、直線的に並ぶように配置される。
【0043】
(注湯機の動作)
図8は、注湯機の注湯処理について説明する正面図である。図8に示されるように、注湯機10は、注湯処理として、注湯ゾーン14において、第1方向(+θ方向)に注湯取鍋LD2を傾動させる。これにより、注湯取鍋LD2から鋳型MDに注湯される。ここで、注湯処理時に溶湯温度が閾値以下に低下したり、鋳型MDへ注湯すべき溶湯の材質変更があったり、1枠分以下の溶湯が残ったりした場合には、排湯処理を実施する。
【0044】
図9は、注湯機の排湯処理について説明する正面図である。図9に示されるように、注湯機10は、排湯処理として、注湯ゾーン14において、第2方向(-θ方向)に注湯取鍋LD2を傾動させる。これにより、注湯取鍋LD2から排湯用容器16に排湯される。ここで、注湯機10と排湯用容器16との間には、注湯取鍋LD2から排湯用容器16へと溶湯を案内する樋部材17が設けられてもよい。この場合、注湯取鍋LD2の溶湯は、樋部材17によって排湯用容器16に案内される。注湯設備1は、樋部材17を設けることで、排湯用容器16をレイアウトに自由度を持たせることができるとともに、排湯時の湯溢れを防止できる。
【0045】
樋部材17は、樋移動機構18によって移動可能に支持されてもよい。樋移動機構18は、例えば、樋部材17を旋回可能に支持する。樋移動機構18は、注湯機10の位置に応じて樋部材17を移動させる。例えば、樋移動機構18は、注湯機10が排湯用容器16の正面に位置する排湯処理時には、樋部材17を注湯レールR3の上方に移動させる。樋移動機構18は、注湯処理時には注湯レールR3の上方から退避させる。これにより、樋部材17が注湯機10に干渉することを回避できる。
【0046】
(実施形態のまとめ)
注湯設備1では、注湯取鍋LD2は注湯機10によって第1方向に傾動し、注湯取鍋LD2内の溶湯は鋳型搬送装置上の鋳型MDに注湯される。注湯取鍋LD2は、注湯機10によって第1方向の逆方向である第2方向にも傾動し得る。注湯機10は鋳型搬送装置上と排湯用容器16との間に位置する注湯レールR3を移動するため、第1方向の逆方向である第2方向には排湯用容器16が存在する。つまり、注湯取鍋LD2は注湯機10によって第2方向に傾動した場合、注湯取鍋LD2内の溶湯は排湯用容器16に排湯される。このように、注湯設備1は、注湯取鍋LD2を第1方向に傾動させて鋳型MDへの注湯処理を実行し、注湯取鍋LD2を第2方向に傾動させて排湯用容器16への排湯処理を実行できる。このため、注湯設備1は、注湯機10を注湯ゾーン14から移動させることなく排湯できるので、溶湯を効率的に排湯できる。
【0047】
以下、実施形態に係る注湯設備1の効果を詳細に説明すべく、比較例を説明する。
【0048】
図10は、比較例に係る注湯設備が備わる鋳造設備の一部を示す平面図である。第1比較鋳造設備50は、図1に示される鋳造設備100と比較して、注湯機10に替えて第1注湯機60を備える点、及び、排湯用容器16の配置位置が異なり、その他は同一である。以下では相違点を中心に説明し、重複する構成の説明は省略する。
【0049】
第1注湯機60は、注湯機10と比較して、第1方向のみに傾動可能な構成を有し、その他は同一である。つまり、第1注湯機60は、前傾しかできない注湯機である。この場合、図10に示されるように、排湯用容器16の配置位置は、注湯レールR3を注湯ゾーン14よりも延長させた位置となる。第1比較鋳造設備50においては、排湯のために第1注湯機60が注湯ゾーン14よりも長い走行距離を走行する必要があるため、サイクル遅延となるおそれがある。なお、注湯された排湯用容器16は、排湯レールR4によって搬送される。
【0050】
図11は、他の比較例に係る注湯設備が備わる鋳造設備の一部を示す平面図である。第2比較鋳造設備70は、図1に示される鋳造設備100と比較して、注湯機10に替えて第1注湯機60を備える点、排湯装置80を備える点、上述した湯返しのためのローラコンベアRC1を備える点、及び、排湯用容器16の配置位置が異なり、その他は同一である。以下では相違点を中心に説明し、重複する構成の説明は省略する。
【0051】
排湯用容器16の配置位置は、搬送台車レールR2の近傍に設けられる。残湯を有する注湯取鍋LD3は、第1注湯機60から搬送台車レールR2上を走行する搬送台車6へと搬送される。排湯装置80は、搬送台車6から注湯取鍋LD3を受け取り、排湯用容器16へと排湯する。図12の(A)~(C)は、図11に示される排湯装置の一例を示す図であり、(A)は排湯装置の平面図、(B)は排湯装置の正面図、(C)は排湯装置の側面図である。図12の(A)~(C)に示されるように、排湯装置80は、注湯取鍋LD3を前傾させるセクタギアGAを有する。第2比較鋳造設備70においては、排湯装置80を備える必要があるため、設備が増大するとともに、注湯取鍋LD3の受け渡しなどが必要になるため、サイクル遅延となるおそれがある。
【0052】
上述した比較例と対比して実施形態に係る鋳造設備100を説明する。図13は、図1の鋳造設備を簡略化して示す平面図である。図10に示される第1比較鋳造設備50と図13に示される鋳造設備100とを比較すると、鋳造設備100の方が、排湯のために注湯機が走行する走行距離が短い。このため、鋳造設備100は、第1比較鋳造設備50と比較してタイムサイクルを短縮できる。また、図11に示される第2比較鋳造設備70と図13に示される鋳造設備100とを比較すると、鋳造設備100の方が、構成される装置数を少なくすることができる。このため、鋳造設備100は、第1比較鋳造設備50と比較して構成を簡素化できる。
【0053】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。の例えば、上述した実施形態では、昇降機構ME2は、昇降用モータSM2を1つ、昇降ポールPL1を1つ備える例を説明したが、昇降機構ME2は、昇降用モータSM2を少なくとも1つ、昇降ポールPL1を少なくとも1つ備えればよい。
【0054】
図14は、変形例に係る注湯機の側面図である。図15は、図14に示される注湯機の正面図である。図16は、昇降機構について説明する平面図である。図14及び図15に示されるように、注湯機10Aは、昇降ポールPL1に第1昇降用モータSM21及び第2昇降用モータSM22が設けられている。図16に示されるように、第1昇降用モータSM21及び第2昇降用モータSM22は、昇降ポールPL1に設けられたボールねじBLにタイミングベルトTBで接続される。これにより、第1昇降用モータSM21及び第2昇降用モータSM22の2つの駆動源で注湯取鍋LD2を昇降できる。
【0055】
図17は、他の変形例に係る注湯機の側面図である。図18は、図17に示される注湯機の正面図である。図17及び図18に示すように、注湯機10Bは、第1昇降ポールPL11及び第2昇降ポールPL12を備え、第1昇降ポールPL11に第1昇降用モータSM21が設けられ、第2昇降ポールPL12に第2昇降用モータSM22が設けられている。第1昇降ポールPL11及び第2昇降ポールPL12は、フレームF2で接続され、門型機構を構成する。これにより、第1昇降ポールPL11及び第2昇降ポールPL12の2つの昇降ポールで注湯取鍋LD2を安定に昇降できる。
【0056】
本開示は、以下の条項を含む。
[条項1]
鋳型を搬送する鋳型搬送装置と、
排湯を貯留する排湯用容器と、
前記鋳型搬送装置と前記排湯用容器との間に位置する搬送路を移動可能であり、第1方向に取鍋を傾動させて前記鋳型搬送装置に搬送される前記鋳型に注湯するとともに前記第1方向の逆方向である第2方向に前記取鍋を傾動させて前記排湯用容器へ排湯するように構成された注湯機と、
を備える、注湯設備。
[条項2]
前記注湯機は、
前記取鍋を載置し、前記取鍋とともに傾動する傾動フレームと、
前記傾動フレームに前記取鍋を固定する固定部材と、
を有する、条項1に記載の注湯設備。
[条項3]
前記取鍋は、ピン受け部を有し、
前記固定部材は、
前記傾動フレームに設けられ、前記ピン受け部と係合するピンと、
前記ピンを上下方向に駆動させるピン駆動部と、
を含む、条項2に記載の注湯設備。
[条項4]
前記傾動フレームは、前記取鍋が突き当てられる壁部材を有し、
前記固定部材は、
前記傾動フレームに設けられ、前記取鍋を前記壁部材との間に挟み込むクランプ部材と、
前記クランプ部材を駆動させるクランプ駆動部と、
を含む、条項2又は3に記載の注湯設備。
[条項5]
前記取鍋から前記排湯用容器へと溶湯を案内する樋部材をさらに備える、条項1~4の何れか一項に記載の注湯設備。
[条項6]
前記注湯機の位置に応じて前記樋部材を移動させる樋移動機構をさらに備える、条項5に記載の注湯設備。
[条項7]
前記取鍋は、前記鋳型に注湯するための第1出湯口と、前記排湯用容器に排湯するための第2出湯口とを有し、
前記取鍋の上方からみて、前記第1出湯口、前記取鍋の中心、及び前記第2出湯口は、直線的に並ぶように配置される、条項1~6の何れか一項に記載の注湯設備。
[条項8]
前記注湯機は、
前記傾動フレームを前後方向に移動させる前後機構と、
前記傾動フレームを昇降させる昇降機構と、
前記傾動フレームを傾動させる傾動機構と、
を有する、条項2~4の何れか一項に記載の注湯設備。
[条項9]
前記昇降機構は、
鉛直方向に延在し、前記傾動フレームを支持する少なくとも1つの支持部材と、
前記傾動フレームを前記少なくとも1つの支持部材に沿って移動させる少なくとも1つの昇降駆動部と、
を備える、条項8に記載の注湯設備。
【符号の説明】
【0057】
1…注湯設備、10…注湯機、16…排湯用容器、17…樋部材、18…樋移動機構、C1…第1クランプ部材(固定部材の一例)、C2…第2クランプ部材(固定部材の一例)、F1…傾動フレーム、PN1…第1ピン、PN2…第2ピン、PH1…第1ピン受け部、PH2…第2ピン受け部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18