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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180695
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20231214BHJP
   H02H 11/00 20060101ALI20231214BHJP
   B60L 3/04 20060101ALN20231214BHJP
   B60L 50/60 20190101ALN20231214BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02H11/00 150
H02J7/00 S
B60L3/04 E
B60L50/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094214
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土生 雅和
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA10
5G503EA08
5G503FA06
5G503FA19
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BB00
5H125BB05
5H125CD04
5H125EE24
5H125EE26
(57)【要約】
【課題】電源システムの稼働率を低下することなく、絶縁抵抗の低下部位の特定を行う。
【解決手段】電源システムPは、三相インバータを転用した複数の昇圧コンバータ2が、並列に、電力変換装置200に接続されている。昇圧コンバータ2の各相アーム21、22、23には、バッテリパック1が接続される。電源システムPの稼働中に絶縁抵抗低下検出器100で、電源システムPの絶縁抵抗の低下が検出されると、昇圧コンバータ2と電力変換装置200の接続を順々に遮断して、絶縁抵抗の低下が回復したか否かを判定し、絶縁抵抗の低下部位を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源システムであって、
バッテリの電圧を昇圧する昇圧コンバータと、
前記昇圧コンバータから出力された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、
前記電源システムを制御する制御装置と、を備え、
前記昇圧コンバータは、三相インバータを転用したものであり、
前記三相インバータの各相アームに、前記バッテリが接続され、
複数の前記昇圧コンバータが、並列に前記電力変換装置へ接続され、
前記制御装置は、
前記電源システムの稼働中に前記電源システムの絶縁抵抗が低下した場合、ひとつの前記昇圧コンバータと前記電力変換装置との接続を遮断し、前記電源システムの絶縁抵抗の低下が回復したとき、接続が遮断された前記昇圧コンバータを絶縁抵抗低下部位候補として特定する、第1特定手段と、
前記絶縁抵抗低下部位候補として特定された前記昇圧コンバータの各相アームと前記バッテリとの接続を遮断し、接続が遮断された前記バッテリの絶縁抵抗が低下している場合、接続が遮断された前記バッテリが絶縁抵抗低下部位であると特定するとともに、接続が遮断された前記バッテリのいずれも絶縁抵抗が低下していない場合、前記絶縁抵抗低下部位候補として特定された前記昇圧コンバータが絶縁抵抗低下部位であると特定する、第2特定手段と、を含み、
前記第1特定手段は、複数の前記昇圧コンバータと前記電力変換装置との接続を順々に遮断する、電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源システムに関し、特に、バッテリの電圧を昇圧する昇圧コンバータを備えた電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両(HEV:Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)などの電動車両の普及が進んでいる。これら車両の買い換え、解体等に伴って回収されるバッテリやPCU(Power Control Unit)を、リサイクルあるいはリユースすることが望まれる。たとえば、回収したPCUを、定置電源等の電源システムの電気回路に再利用することが考えられる。電源システムでは、絶縁抵抗の低下の発生を検知するため、電源システムの絶縁抵抗の低下を検出するとともに、絶縁抵抗が低下した部位を特定することが望まれる。
【0003】
特開2014-36467号公報(特許文献1)には、電動車両おけるバッテリとモータジェネレータを含む電気系統の絶縁抵抗の低下部位を特定する、車両の制御装置が開示されている。この特許文献1に記載の制御装置では、イグニッションスイッチをオフにして車両システムが停止した際に、絶縁抵抗の低下を検出するとともに、昇圧コンバータや各インバータへの電力の遮断/接続(非遮断)を行うことにより、絶縁抵抗の低下部位を特定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-36467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術を電源システムに適用すると、絶縁抵抗低下部位の特定を行うために、電源システムの稼働を停止する必要があり、電源システムの稼働率が低下する。
【0006】
本開示は、電源システムの稼働率を低下することなく、絶縁抵抗の低下部位の特定を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電源システムは、バッテリの電圧を昇圧する昇圧コンバータと、昇圧コンバータから出力された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置と、電源システムを制御する制御装置と、を備える。昇圧コンバータは、三相インバータを転用したものであり、三相インバータの各相アームにバッテリが接続され、複数の昇圧コンバータが、並列に電力変換装置へ接続されている。制御装置は、第1特定手段と、第2特定手段とを含む。第1特定手段は、電源システムの稼働中に電源システムの絶縁抵抗が低下した場合、ひとつの昇圧コンバータと電力変換装置との接続を遮断し、電源システムの絶縁抵抗の低下が回復したとき、接続が遮断された昇圧コンバータを絶縁抵抗低下部位候補として特定する。第2特定手段は、絶縁抵抗低下部位候補として特定された昇圧コンバータの各相アームとバッテリとの接続を遮断し、接続が遮断されたバッテリの絶縁抵抗が低下している場合、接続が遮断されたバッテリが絶縁抵抗低下部位であると特定するとともに、接続が遮断されたバッテリのいずれも絶縁抵抗が低下していない場合、絶縁抵抗低下部位候補として特定された昇圧コンバータが絶縁抵抗低下部位であると特定する。第1特定手段は、複数の昇圧コンバータと電力変換装置との接続を順々に遮断する。
【0008】
この構成によれば、電源システムの昇圧コンバータは、三相インバータを転用したものであり、三相インバータの各相アームにバッテリが接続されている。複数の昇圧コンバータが、昇圧コンバータから出力された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置に、並列に接続されている。電源システムを制御する制御装置の第1特定手段は、電源システムの稼働中に電源システムの絶縁抵抗が低下した場合、ひとつの昇圧コンバータと電力変換装置との接続を遮断し、電源システムの絶縁抵抗の低下が回復したとき、接続が遮断された昇圧コンバータを絶縁抵抗低下部位候補として特定する。制御装置の第2特定手段は、第1特定手段によって絶縁抵抗低下部位候補に特定された昇圧コンバータの各相アームとバッテリの接続を遮断し、接続が遮断されたバッテリの絶縁抵抗が低下している場合、接続が遮断されたバッテリが絶縁抵抗低下部位であると特定するとともに、接続が遮断されたバッテリのいずれも絶縁抵抗が低下していない場合、絶縁抵抗低下部位候補として特定された昇圧コンバータが絶縁抵抗低下部位であると特定する。そして、第1特定手段は、複数の昇圧コンバータと電力変換装置との接続を順々に遮断して、いずれの昇圧コンバータが絶縁抵抗低下部位候補であるかを特定する。
【0009】
したがって、ひとつの昇圧コンバータと電力変換装置の接続を順々に遮断して、絶縁抵抗低下部位を特定するので、電源システムの稼働を停止することなく、絶縁抵抗低下部位を特定できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、電源システムの稼働率を低下することなく、絶縁抵抗の低下部位の特定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態の電源システムの全体構成を示す図である。
図2】電動車両の一例を説明する図である。
図3】制御装置400で実行される絶縁抵抗低下検出処理の概略を示すフローチャートである。
図4】変形例における電源システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
図1は、本実施の形態の電源システムの全体構成を示す図である。電源システムPは、バッテリパック1と、昇圧コンバータ2と、絶縁抵抗低下検出器100と、電力変換装置200と、制御装置400とを備える。本実施の形態において、バッテリパック1および昇圧コンバータ2は、電動車両に搭載されるバッテリパックおよびPCUを、電源システムPに転用したものである。バッテリパックおよびPCUを搭載した電動車両の構成の一例を説明する。
【0014】
図2は、電動車両の一例を説明する図である。図2において、電動車両Vは、電気自動車(BEV)であり、モータジェネレータ3と、電力制御装置(PCU:Power Control Unit)としてのインバータ20と、バッテリパック1と、制御ECU(Electronic Control Unit)50とを備える。電動車両Vは、ハイブリッド車両(HEV)やプラグインハイブリッド車両(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよい。
【0015】
モータジェネレータ3は、車両の駆動輪4を駆動するためのトルクを発生する駆動用電動機である。モータジェネレータ3は、交流回転電機であり、たとえば、ロータに永久磁石を埋め込んだIPM(Interior Permanent Magnet)同期電動機である。また、モータジェネレータ3は、発電機の機能をさらに備えてもよく、電動機および発電機の機能を併せ持つように構成されてもよい。
【0016】
バッテリパック1は、バッテリ(組電池)10と、監視ユニット15と、絶縁抵抗低下検出器16と、システムメインリレーSR1、SR2とを含む。バッテリ10は、ニッケル水素電池あるいはリチウムイオン電池等の二次電池によって構成される。二次電池は、正極と負極との間に液体電解質を有する電池であってもよいし、固体電解質を有する電池(全固体電池)であってもよい。バッテリ10は、複数のリチウムイオン電池等の単電池(電池セル)11を電気的に直列に接続した組電池として構成されている。
【0017】
バッテリ10には監視ユニット15が設けられている。監視ユニット15は、単電池11の電圧VB、バッテリ10の入出力電流IB、およびバッテリ10の温度TBを検出するセンサを備え、それらの検出結果を示す信号を制御ECU50に出力する。
【0018】
絶縁抵抗低下検出器16は、バッテリパック1、および、バッテリパック1に接続されている電気回路の絶縁抵抗の低下を検出する。絶縁抵抗低下検出器16は、特許文献1における「漏電検出器42」に相当し、同様な構成であり、パルス発信器、検出抵抗、バンドパスフィルタ、ピークホールド回路等から構成され、ピークホールド回路で検出したピーク電圧(波高値)が所定の閾値より小さいとき、絶縁抵抗が低下したことを示す信号を出力する。
【0019】
システムメインリレーSR1は、バッテリ10の正極端子および電力線PLの間に接続される。システムメインリレーSR2は、バッテリ10の負極端子および電力線NLの間に接続される。システムメインリレーSR1,SR2は、制御ECU50からの制御信号により開閉状態が切り替わる。
【0020】
インバータ20とバッテリ10の間には、電力線Plおよび電力線Nlの間に接続されたコンデンサCが設けられる。コンデンサCは、バッテリ電圧を平滑化してインバータ20に供給する。電圧センサ40は、コンデンサCの両端の電圧、すなわちバッテリ10とインバータ20とを結ぶ電力線Pl、Nl間の電圧(システム電圧)VHを検出し、その検出結果を示す信号を制御ECU50に出力する。
【0021】
インバータ20は、バッテリ10から供給される直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータ3に供給する。また、インバータ20は、モータジェネレータ3により発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ10に供給する。バッテリ10は、インバータ20を経由してモータジェネレータ3との間で電力を授受することができる。
【0022】
インバータ20は、U相アーム21と、V相アーム22と、W相アーム23とを含む、三相インバータである。各相アームは、電力線Plと電力線Nlとの間に互いに並列に接続されている。U相アーム21は、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q1、Q2を有する。V相アーム22は、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q3、Q4を有する。W相アーム23は、互いに直列に接続されたスイッチング素子Q5、Q6を有する。各スイッチング素子Q1~Q6のコレクタ-エミッタ間には、ダイオードD1~D6が逆並列にそれぞれ接続されている。なお、スイッチング素子Q1~Q6は、たとえば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってよい。
【0023】
各相アームの中間点は、モータジェネレータ3の各相コイルの各相端に接続されている。スイッチング素子Q1、Q2の中間点は、モータジェネレータ3のU相コイルの一方端に接続されている。スイッチング素子Q3、Q4の中間点は、モータジェネレータ3のV相コイルの一方端に接続されている。スイッチング素子Q5、Q6の中間点は、モータジェネレータ3のW相コイルの一方端に接続されている。モータジェネレータ3のU相、V相およびW相の3つのコイルの他方端は、中性点に共通接続されている。
【0024】
電流センサ60は、モータジェネレータ3に流れる三相電流(モータ電流)iu,iv,iwを検出し、その検出結果を示す信号を制御ECU50に出力する。
【0025】
回転角センサ(レゾルバ)65は、モータジェネレータ3の回転角θを検出し、その検出結果を示す信号を制御ECU50に出力する。回転角センサ65によって検出された回転角θの変化速度から、モータジェネレータ3の回転数(回転速度)NMを検出することができる。
【0026】
制御ECU50は、図示しない、CPU(Central Processing Unit)、メモリおよび入出力バッファを含み、図示しない各種センサ等からの信号により、トルク指令値Trqcomを演算するとともに、電圧センサ40によって検出されたシステム電圧VH、電流センサ60からのモータ電流iu,iv,iwおよび回転角センサ65からの回転角θに基づいて、モータジェネレータ3がトルク指令値Trqcomに従ったトルクを出力するように、インバータ20の動作を制御する。すなわち、制御ECU50は、インバータ20を制御するための制御信号S1~S6を生成して、インバータ20へ出力する。
【0027】
インバータ20は、システム電圧VH(バッテリ電圧)が供給されると、制御ECU50からの制御信号S1~S6に従って、直流電圧を交流電圧に変換してモータジェネレータ3を駆動する。これにより、モータジェネレータ3は、トルク指令値Trqcomに従ったトルクを発生するように、インバータ20により制御される。
【0028】
モータジェネレータ3のトルク指令値が正(Trqcom>0)の場合、インバータ20は、制御ECU50からの制御信号S1~S6に従ったスイッチング素子Q1~Q2のスイッチング動作により、直流電圧を交流電圧に変換して正のトルクを出力するようにモータジェネレータ3を駆動する。これにより、モータジェネレータ3は、正のトルクを発生するように駆動される。トルク指令値が負の場合(Trqcom<0)には、インバータ20は、制御ECU50からの制御信号S1~S6に従ったスイッチング動作により、モータジェネレータ3が発電した交流電圧を直流電圧に変換し、バッテリ10を充電する。
【0029】
図1を参照して、電源システムPにおいて、バッテリパック1および昇圧コンバータ2は、電動車両Vに搭載されたバッテリパック1とインバータ20を転用したものである。昇圧コンバータ2は、三相インバータであるインバータ20の各相アーム(U相アーム21、V相アーム22、W相アーム23)の上アームを、リレーr1を介して正極線PLに接続し、インバータ20の各相アームの下アームを、リレーr2を介して負極線SLに接続したものである。U相アーム21の中間点は、コイル(インダクタ)5を介してバッテリパック1のシステムメインリレーSR1に接続され、U相アーム21の下アームは、バッテリパック1のシステムメインリレーSR2に接続される。また、コイル5とシステムメインリレーSR1の間の電力線とU相アーム21の下アームは、コンデンサ6を介して接続される。V相アーム22の中間点は、コイル5を介してバッテリパック1のシステムメインリレーSR1に接続され、V相アーム22の下アームは、バッテリパック1のシステムメインリレーSR2に接続されとともに、コイル5とシステムメインリレーSR1の間の電力線とV相アーム22の下アームは、コンデンサ6を介して接続される。同様に、W相アーム23の中間点は、コイル5を介してバッテリパック1のシステムメインリレーSR1に接続され、W相アーム23の下アームは、バッテリパック1のシステムメインリレーSR2に接続されとともに、コイル5とシステムメインリレーSR1の間の電力線とW相アーム23の下アームは、コンデンサ6を介して接続される。
【0030】
上記のようにインバータ20の各相アームをバッテリパック1に接続することにより、インバータ20は、各相アームに接続されたバッテリパック1(バッテリ10)の電圧を昇圧する昇圧コンバータ2に転用されている。電源システムPには、インバータ20を転用した昇圧コンバータ2が、リレーr1およびリレーr2を介して、複数、並列に、正極線PLおよび負極線SLに接続されている。本実施の形態において、電源システムPは、n個(nは正の整数)の昇圧コンバータ2を備えており、たとえば、20個の昇圧コンバータ2を備えてよい。なお、図1において、符号2-nは、n番目の昇圧コンバータ2を表している。符号1-n-1は、n番目の昇圧コンバータ2のU相アーム21に接続されたバッテリパック1を表しており、符号1-n-2は、n番目の昇圧コンバータ2のV相アーム22に接続されたバッテリパック1を表しており、符号1-n-3は、n番目の昇圧コンバータ2のW相アーム23に接続されたバッテリパック1を表している。
【0031】
電源システムPの電力変換装置200は、昇圧コンバータ2によって昇圧されたバッテリパック1(バッテリ10)の直流電力を交流電力に変換し、外部負荷300へ供給する。電力変換装置200は、たとえば、単相三線式インバータ装置であってよい。外部負荷300は、家庭内負荷であってよく、電力系統が含まれても良い。外部負荷300が電力系統を含む場合、電力系統から供給される交流電力を電力変換装置200によって直流電力に変換し、バッテリパック1(バッテリ10)の充電を行ってもよい。
【0032】
絶縁抵抗低下検出器100は、電源システムPの絶縁抵抗の低下を検出する。絶縁抵抗低下検出器100は、絶縁抵抗低下検出器16と同様な構成であってよく、パルス発信器、検出抵抗、バンドパスフィルタ、ピークホールド回路等から構成され、ピークホールド回路で検出したピーク電圧(波高値)が所定の閾値より小さいとき、絶縁抵抗が低下したことを示す信号を出力する。
【0033】
制御装置400は、図示しない、CPU、メモリおよび入出力バッファ等から構成され、昇圧コンバータ2、リレーr1、r2、システムメインリレーSR1、SR2、および、電力変換装置200等を制御することにより、電源システムPを制御する。制御装置400は、電源システムPの稼働時(運転時)、すべてのシステムメインリレーSR1、SR2を接続(閉成)するとともに、昇圧コンバータ2-1~2-nに対応するリレーr1およびリレーr2を閉成して、昇圧コンバータ2-1~2-nを作動し、バッテリ10の電圧を昇圧する。そして、電力変換装置200は、昇圧コンバータ2-1~2-nから出力された直流電力を交流電力に変換し、外部負荷300へ供給する。
【0034】
電源システムPの稼働中に絶縁抵抗の低下が発生すると、絶縁抵抗低下検出器100から、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力される。絶縁抵抗の低下部位を特定するため、電源システムPの稼働を停止すると、電源システムPの稼働率が低下する。
【0035】
本実施の形態では、電源システムPの稼働中に、絶縁抵抗低下検出器100から絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力された際、電源システムPの稼働を停止することなく、絶縁抵抗の低下部位を特定し、電源システムPの稼働率が低下することを抑制する。
【0036】
図3は、制御装置400で実行される絶縁抵抗低下検出処理の概略を示すフローチャートである。このフローチャートは、電源システムPの稼働中に、所定期間毎に繰り返し処理される。ステップ(以下、ステップを「S」と略す)10では、電源システムPの絶縁抵抗の低下が検出されたか否かを判定する。絶縁抵抗低下検出器100から、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力されている場合、S10で肯定判定されS11へ進む。絶縁抵抗低下検出器100から、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力されていない場合、S10で否定判定され、今回のルーチンを終了する。
【0037】
S11では、ひとつの昇圧コンバータ2と電力変換装置200の接続を遮断する。たとえば、昇圧コンバータ2-1に対応するリレーr1とリレーr2を開放することにより、昇圧コンバータ2-1と電力変換装置200の接続を遮断する。
【0038】
続くS12では、電源システムPの絶縁抵抗の低下が回復したか否かを判定する。S12において、絶縁抵抗低下検出器100から、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力されている場合、絶縁抵抗の低下が回復していないため、否定判定されS13へ進む。S12において、絶縁抵抗低下検出器100から、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力されていない場合、絶縁抵抗の低下が回復しているので、肯定判定されS16へ進む。
【0039】
S13では、S11で遮断したリレーr1とリレーr2を閉成する。たとえば、昇圧コンバータ2-1に対応するリレーr1とリレーr2を開放していた場合は、昇圧コンバータ2-1に対応するリレーr1とリレーr2を閉成し、昇圧コンバータ2-1と電力変換装置200を接続する。
【0040】
続くS14では、すべての昇圧コンバータ2(昇圧コンバータ2-1~2-n)に対して、S11においてリレーr1およびリレーr2を開放し、S12で否定判定がなされ、S13においてリレーr1およびリレーr2を閉成する処理が行われたか否かを判定する。すべての昇圧コンバータ2に対して、S11、S12およびS13の処理が行われていない場合、否定判定されS11へ戻る。S11では、前回の処理時と異なる、ひとつの昇圧コンバータ2と電力変換装置200の接続を遮断する。たとえば、昇圧コンバータ2-2に対応するリレーr1とリレーr2を開放することにより、昇圧コンバータ2-2と電力変換装置200の接続を遮断する。このように、S11~S14が処理されることにより、昇圧コンバータ2-1~2-nと電力変換装置200との接続が順々に遮断され、S12において、いずれかの昇圧コンバータ2を電力変換装置200から遮断したとき、電源システムPの低下が回復したか否かを特定する。
【0041】
すべての昇圧コンバータ2(昇圧コンバータ2-1~2-n)に対して、S11、S12およびS13の処理が行われると、S14において、肯定判定されS15へ進む。S15おいて、昇圧コンバータ2およびバッテリパック1を含む電気回路では、絶縁抵抗の低下は発生しておらず、昇圧コンバータ2およびバッテリパック1を含む電気回路以外の部位(他部位)で絶縁抵抗の低下が発生していると特定し、今回のルーチンを終了する。
【0042】
S12において、電源システムPの絶縁抵抗の低下が回復し、絶縁抵抗低下検出器100から絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力されていない場合、肯定判定されS16へ進む。この判定は、S11で電力変換装置200との接続が遮断された昇圧コンバータ2を絶縁抵抗低下部位候補として特定したことに相当する。
【0043】
S16では、絶縁抵抗低下部位候補として特定した昇圧コンバータ2(S11で電力変換装置200との接続が遮断された昇圧コンバータ2)の各相アームのシステムメインリレーSR1およびシステムメインリレーSR2を開放し、バッテリパック1と各相アームの接続を遮断する。たとえば、S11において昇圧コンバータ2-1に対応するリレーr1とリレーr2を開放し、S12で肯定判定された場合、昇圧コンバータ2-1が絶縁抵抗低下部位候補として特定され、バッテリパック1-1-1、1-1-2、1-1-3のシステムメインリレーSR1およびシステムメインリレーSR2を開放する。
【0044】
続くS17では、S16において各相アームとの接続が遮断されたバッテリパック1の絶縁抵抗低下検出器16を作動する。上記の例では、バッテリパック1-1-1、1-1-2、1-1-3の絶縁抵抗低下検出器16が作動される。
【0045】
S18では、絶縁抵抗が低下したバッテリパック1があるか否かを判定する。S17で作動した絶縁抵抗低下検出器16から、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力された場合、S19へ進み、当該絶縁抵抗低下検出器16を含むバッテリパック1が絶縁抵抗低下部位であると特定し、今回のルーチンを終了する。たとえば、上記の例で、バッテリパック1-1-1の絶縁抵抗低下検出器16から、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力された場合、S19へ進み、バッテリパック1-1-1が絶縁抵抗低下部位であると特定され、今回のルーチンを終了する。
【0046】
S18において、S17で作動させた絶縁抵抗低下検出器16のすべてから、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力されない場合、S20へ進み、絶縁抵抗低下部位候補として特定した昇圧コンバータ2(S11で電力変換装置200との接続が遮断された昇圧コンバータ2)が絶縁抵抗低下部位であると特定し、今回のルーチンを終了する。たとえば、上記の例では、バッテリパック1-1-1、1-1-2、1-1-3の絶縁抵抗低下検出器16のすべてから、絶縁抵抗が低下したことを示す信号が出力されない場合、S20へ進み、昇圧コンバータ2-1が絶縁低下部位であると特定され、今回のルーチンを終了する。
【0047】
本実施の形態によれば、電源システムPの昇圧コンバータ2は、電動車両Vに搭載された三相インバータであるインバータ20を転用したものであり、インバータ20の各相アームにバッテリパック1が接続されている。そして、複数の昇圧コンバータ2が、昇圧コンバータ2から出力された直流電力を交流電力に変換する電力変換装置200に、並列に接続されている。
【0048】
電源システムPを制御する制御装置400は、電源システムPの稼働中に、絶縁抵抗低下検出器100で、電源システムPの絶縁抵抗の低下を検出すると、ひとつの昇圧コンバータ2と電力変換装置200との接続を遮断し、電源システムPの絶縁抵抗の低下が回復すると、接続が遮断された昇圧コンバータ2を絶縁抵抗低下部位候補として特定する(S11、S12で肯定判定)。制御装置400は、いずれの昇圧コンバータ2が絶縁抵抗低下部位候補であるか特定するまで、ひとつの昇圧コンバータ2と電力変換装置200の接続を順々に接断する(S11~S14)。なお、いずれの昇圧コンバータ2も、絶縁抵抗低下部位であると特定できなかった場合(S14で肯定判定)、昇圧コンバータ2およびバッテリパック1を含む電気回路では、絶縁抵抗の低下は発生しておらず、昇圧コンバータ2およびバッテリパック1を含む電気回路以外の部位(他部位)で絶縁抵抗の低下が発生していると特定する(S15)。
【0049】
制御装置400は、絶縁抵抗低下部位候補に特定された昇圧コンバータ2の各相アームとバッテリパック1の接続を遮断する(S16)。絶縁抵抗低下検出器16で、接続が遮断されたバッテリパック1の絶縁抵抗の低下を検出すると、接続が遮断されたバッテリパック1が絶縁抵抗低下部位であると特定する(S17、S18で肯定判定)。接続が遮断されたバッテリパック1のいずれも絶縁抵抗が低下していないとき(S18で否定判定)、絶縁抵抗低下部位候補として特定された昇圧コンバータ2が絶縁抵抗低下部位であると特定する(S20)。そして、第1特定手段は、複数の昇圧コンバータと電力変換装置との接続を順々に遮断して、いずれの昇圧コンバータが絶縁抵抗低下部位候補であるかを特定する。
【0050】
本実施の形態によれば、電源システムPの稼働を停止することなく、絶縁抵抗低下部位を特定できるので、電源システムPの稼働率を低下することなく、絶縁抵抗の低下部位の特定を行える。
【0051】
本実施の形態では、電源システムPのバッテリパック1は、電動車両Vに搭載されたバッテリパック1を転用している。したがって、インバータ20に加えて、車載用のバッテリパック1のリユース(再利用)を促進することができる。
【0052】
上記実施の形態では、絶縁抵抗低下検出器100から出力される、絶縁抵抗が低下したことを示す信号によって、電源システムPの絶縁抵抗の低下を検出していた。しかし、制御装置400において、電源システムPの絶縁抵抗の大きさを検出する絶縁抵抗検出器の出力値(絶縁抵抗)を閾値と比較することにより、電源システムPの絶縁抵抗の低下を検出するようにしてもよい。絶縁抵抗低下検出器16についても、同様である。
【0053】
上記実施の形態において、S11~S14の処理が、本開示の「第1特定手段」に相当し、S16~S20の処理が、本開示の「第2特定手段」に相当する。
【0054】
(変形例)
上記実施の形態では、各々のバッテリパック1が、絶縁抵抗低下検出器16を備えていた。しかし、バッテリパック1の各々が絶縁抵抗低下検出器16を備えなくともよい。図4は、変形例における電源システムの全体構成を示す図である。この変形例では、ひとつの絶縁抵抗低下検出器160を、複数のバッテリパック1(バッテリパック1-1-1~1-n-3)で共有している。
【0055】
変形例の電源システムPにおいて、バッテリパック1-1-1~1-n-3は、絶縁抵抗低下検出器16を備えず、共通の絶縁抵抗低下検出器160に、リレー500を介して接続されている。リレー500は、絶縁抵抗低下検出器160側の接点を、バッテリパック1-1-1~1-n-3側の3×n個の接点のそれぞれに切り替え可能となっている。変形例において、絶縁抵抗低下検出器160の構成以外は、上記実施の形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0056】
この変形例によれば、絶縁抵抗低下検出器16を備えないバッテリパックを、電源システムPに用いることができる。
【0057】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 バッテリパック、2 昇圧コンバータ、3 モータジェネレータ、4 駆動輪、5 コイル、6 コンデンサ、10 バッテリ、11 単電池、15 監視ユニット、16 絶縁抵抗低下検出器、21 U相アーム、22 V相アーム、23 W相アーム、40 電圧センサ、50 制御ECU、60 電流センサ、65 回転角センサ、100 絶縁抵抗低下検出器、160 絶縁抵抗低下検出器、200 電力変換装置、300 外部負荷、400 制御装置、500 リレー、C コンデンサ、D1~D6 ダイオード、Nl 電力線、PL 正極線、Pl 電力線、Q1~Q6 スイッチング素子、r1 リレー、r2 リレー、SL 負極線、SR1 システムメインリレー、SR2 システムメインリレー。
図1
図2
図3
図4