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  • 特開-半導体装置の制御回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180699
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】半導体装置の制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02H 3/027 20060101AFI20231214BHJP
   H03K 17/00 20060101ALI20231214BHJP
   H03K 17/60 20060101ALI20231214BHJP
   H02H 7/12 20060101ALI20231214BHJP
   H02H 7/20 20060101ALI20231214BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H02H3/027 A
H03K17/00 B
H03K17/60 Z
H02H7/12 B
H02H7/20 D
H02M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094223
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 政光
【テーマコード(参考)】
5G053
5G142
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5G053AA02
5G053BA01
5G053CA02
5G053DA02
5G053EC03
5G142AA15
5G142AC01
5G142BB08
5G142BC01
5G142EE03
5G142EE06
5G142GG09
5H740AA05
5H740AA08
5H740BA11
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM12
5J055AX36
5J055BX16
5J055CX07
5J055DX09
5J055DX61
5J055EY01
5J055EY21
5J055EZ10
5J055FX04
5J055FX13
5J055FX32
5J055GX01
5J055GX02
5J055GX04
(57)【要約】
【課題】
スイッチング素子の短絡保護動作を速やかに開始して短絡保護を行うことでスイッチング素子の短絡時の振動やサージを抑制できる半導体装置の制御回路を提供する。
【解決手段】
スイッチング素子1を駆動するゲート駆動回路5を有する半導体装置の制御回路において、スイッチング素子1の短絡を検出するバイパス用短絡検出回路17と、ゲート駆動回路5とスイッチング素子1のゲートとの間のノードとスイッチング素子1の基準電位20との間に設けられ、互いに直列接続されたバイパス用抵抗19およびバイパス用スイッチ18とを有し、バイパス用スイッチ18は、バイパス用短絡検出回路17が短絡を検出してから1μs以内にオンする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子を駆動するゲート駆動回路を有する半導体装置の制御回路において、
前記スイッチング素子の短絡を検出するバイパス用短絡検出回路と、
前記ゲート駆動回路と前記スイッチング素子のゲートとの間のノードと前記スイッチング素子の基準電位との間に設けられ、互いに直列接続されたバイパス用抵抗およびバイパス用スイッチとを有し、
前記バイパス用スイッチは、前記バイパス用短絡検出回路が短絡を検出してから1μs以内にオンすることを特徴とする半導体装置の制御回路。
【請求項2】
請求項1において、
前記バイパス用スイッチは、前記ゲート駆動回路から前記スイッチング素子をオンさせるオン信号が出力されている期間、かつ、前記バイパス用短絡検出回路が短絡を検出後にオンすることを特徴とする半導体装置の制御回路。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記スイッチング素子の短絡を検出するソフト遮断用短絡検出回路を有し、
前記ゲート駆動回路は、前記ゲート駆動回路の出力と前記スイッチング素子の基準電位との間に設けられ、互いに直列接続されたソフト遮断用抵抗およびソフト遮断用スイッチを有し、
前記ソフト遮断用スイッチは、前記ソフト遮断用短絡検出回路が短絡を検出後、かつ、前記ゲート駆動回路が前記スイッチング素子をオフさせる期間にオンすることを特徴とする半導体装置の制御回路。
【請求項4】
請求項3において、
前記バイパス用抵抗は、前記ソフト遮断用抵抗よりも小さいことを特徴とする半導体装置の制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の制御回路に関し、特に、半導体装置の短絡保護動作を行う制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の短絡保護回路としては、例えば、特許文献1がある。
【0003】
特許文献1の図1および要約には、「駆動回路1はIGBT4をオン,オフ制御する。スイッチ回路3は駆動回路1とIGBT4のゲートとの間の信号通路を開閉する。ANDゲート回路2はノード11,12を2入力とする。遅延回路7,8はANDゲート回路2の出力を遅延させそれぞれスイッチ回路3、IGBT4の短絡保護時にオンするスイッチ回路3に供給される。IGBT4のオフからオンの通常動作時、ANDゲート回路2の出力はノード12の変化で2回変化する。スイッチ回路3は一瞬オフするが、すぐオンに戻る。IGBT4の制御端子へのターンオン信号は問題なく供給される。短絡電流発生時では、スイッチ回路3はオフのままで、すぐスイッチ回路6がゲート電圧を放電する。」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-308717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている技術は、いわゆるソフト遮断と呼ばれる技術の一種であり、短絡検出後、ゲート駆動回路がIGBTなどのスイッチング素子をオフさせる期間に、所定の遅延時間が経過してからソフト遮断用スイッチをオンして、ソフト遮断用抵抗を介してゲート電圧を放電する。
【0006】
しかしながら、ソフト遮断では、特許文献1の段落0031に「短絡状態検出後、約6μsで保護動作を開始した後、約14μsでIGBT4をターンオフしている。」と記載されているように、保護動作を開始するまでに約6μsと時間がかかっていた。
【0007】
したがって、ソフト遮断により短絡保護動作が開始するまでの間に、スイッチング素子のコレクタ-エミッタ間の電圧および電流が振動し、大きなサージが発生する場合があるという問題があった。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、スイッチング素子の短絡保護動作を速やかに開始して短絡保護を行うことでスイッチング素子の短絡時の振動やサージを抑制できる半導体装置の制御回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の半導体装置の制御回路は、例えば、スイッチング素子を駆動するゲート駆動回路を有する半導体装置の制御回路において、前記スイッチング素子の短絡を検出するバイパス用短絡検出回路と、前記ゲート駆動回路と前記スイッチング素子のゲートとの間のノードと前記スイッチング素子の基準電位との間に設けられ、互いに直列接続されたバイパス用抵抗およびバイパス用スイッチとを有し、前記バイパス用スイッチは、前記バイパス用短絡検出回路が短絡を検出してから1μs以内にオンすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スイッチング素子の短絡保護動作を速やかに開始して短絡保護を行うことでスイッチング素子の短絡時の振動やサージを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の制御回路の回路図。
図2】従来の制御回路の動作を説明する波形図。
図3】実施例1の制御回路の動作を説明する波形図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略する。
【実施例0013】
図1は、実施例1の制御回路の回路図である。
【0014】
実施例1の制御回路100は、スイッチング素子1を駆動するゲート駆動回路5を有する。スイッチング素子1は、例えば電力変換装置に用いられるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を例に説明する。電力変換装置なので、スイッチング素子1に対して逆並列にダイオード2が接続されている。スイッチング素子1は、電流センス用端子3を有している。電流センス用端子3と基準電位20との間に、短絡検知用抵抗4が接続されている。基準電位20は、例えば設置電位である。電流センス用端子3は、例えば電流センス用IGBTである。なお、ここではスイッチング素子1の電流をエミッタで検知する例を示しているが、これに限られず、コレクタで検知してもよい。
【0015】
はじめに、ゲート駆動回路5の基本動作について説明する。
【0016】
ゲート駆動回路5は、駆動回路6からのオン信号、オフ信号が入力され、スイッチング素子1を駆動するためのゲート駆動信号をスイッチング素子1のゲートに出力する。そのために、ゲート駆動回路5は、電源電位Vccとゲート駆動回路5の出力との間に互いに直列に接続されたオン制御スイッチ7およびオン抵抗8と、基準電位20とゲート駆動回路5の出力との間に互いに直列に接続されたオフ制御スイッチ9およびオフ抵抗10とを有している。
【0017】
ゲート駆動回路5は、駆動回路6からのオン信号が入力されたとき、オン制御スイッチ7がオン、オフ制御スイッチ9がオフして、オン抵抗8を介してスイッチング素子1のゲートをオンさせるオン信号をゲート駆動信号として出力する。また、ゲート駆動回路5は、駆動回路6からのオフ信号が入力されたとき、オン制御スイッチ7がオフ、オフ制御スイッチ9がオンして、オフ抵抗10を介してスイッチング素子1のゲートをオフさせるオフ信号をゲート駆動信号として出力する。
【0018】
次に、ソフト遮断の機能について説明する。
【0019】
実施例1の制御回路100は、スイッチング素子1の短絡を検出するソフト遮断用短絡検出回路13を有する。ソフト遮断用短絡検出回路13は、例えば比較回路で構成され、電流センス用端子3の電位とソフト遮断用基準電位Vic1とを比較して短絡を検出する。ソフト遮断用短絡検出回路13の出力は、ノイズマスク回路14を介してソフト遮断制御回路15に入力される。
【0020】
ゲート駆動回路5は、ゲート駆動回路5の出力とスイッチング素子1の基準電位20との間に設けられ、互いに直列接続されたソフト遮断用抵抗12およびソフト遮断用スイッチ11を有する。ソフト遮断用スイッチ11は、ソフト遮断制御回路15によって制御され、ソフト遮断用短絡検出回路13が短絡を検出後、かつ、ゲート駆動回路5がスイッチング素子1をオフさせる期間にオンする。これにより、ソフト遮断用短絡検出回路13が短絡を検出後、所定時間経過してからソフト遮断が行われる。
【0021】
次に、実施例1で新たに追加された短絡保護の機能について説明する。
【0022】
実施例1の制御回路100は、短絡時バイパス回路16を有しており、短絡時バイパス回路16は、スイッチング素子1の短絡を検出するバイパス用短絡検出回路17と、ゲート駆動回路5とスイッチング素子1のゲートとの間のノードとスイッチング素子1の基準電位20との間に設けられ、互いに直列接続されたバイパス用抵抗19およびバイパス用スイッチ18とを有する。
【0023】
バイパス用短絡検出回路17は、例えば比較回路で構成され、電流センス用端子3の電位とバイパス用基準電位Vic2とを比較して短絡を検出する。バイパス用短絡検出回路17の出力は、バイパス用スイッチ18のゲートに入力される。
【0024】
バイパス用スイッチ18は、バイパス用短絡検出回路17が短絡を検出してからすぐに、例えば1μs以内にオンする。この時間は、例えば200nsから500ns程度に設定されることがより望ましい。
【0025】
バイパス用スイッチ18は、ソフト遮断の場合とは異なり、ソフト遮断よりも早いタイミング、すなわち、ゲート駆動回路5からスイッチング素子1をオンさせるオン信号が出力されている期間、かつ、バイパス用短絡検出回路17が短絡を検出後にオンする。
【0026】
バイパス用短絡検出回路17が短絡を検出してからすぐにバイパス用スイッチ18をオンすることで、スイッチング素子1のゲート電流を、バイパス用抵抗19を介して逃がすことができ、ソフト遮断により短絡保護動作が開始するまでの間に、スイッチング素子1のコレクタ-エミッタ間の電圧および電流が振動し、大きなサージが発生するという問題を抑制できる。
【0027】
バイパス用抵抗19は、ソフト遮断用抵抗12よりも小さいことが望ましい。これにより、より速くスイッチング素子1のゲート電流を、バイパス用抵抗19を介して逃がすことができ、スイッチング素子1の振動やサージを抑制できる効果が高まる。
【0028】
次に、波形図を用いて従来と実施例1の制御回路の動作を説明する。
【0029】
図2は、従来の制御回路の動作を説明する波形図であり、図3は、実施例1の制御回路の動作を説明する波形図である。
【0030】
図2は、図1における短絡時バイパス回路16がない場合の波形図である。
【0031】
図2に示すように、正常動作時T1の期間では、時刻t1でオン制御スイッチ7のゲート電圧Vge7がLレベルとなり、オン制御スイッチ7がオンする。このとき、オフ制御スイッチ9のゲート電圧Vge9はオン制御スイッチ7と同時にオンしないように時刻t1より少し前にLレベルとなってオフするよう制御されている。オン制御スイッチ7がオンすることで、スイッチング素子1のゲート電圧Vge1が上昇し、閾値を超えるとスイッチング素子1がオンし、スイッチング素子1のコレクタ-エミッタ間が導通する。なお、スイッチング素子1のゲート電流Ig1、コレクタ-エミッタ間電圧Vce1、コレクタ電流Ic1は図2のように変化する。
【0032】
時刻t2では、オフ制御スイッチ9のゲート電圧Vge9がHレベルとなり、オフ制御スイッチ9がオンする。このとき、オン制御スイッチ7のゲート電圧Vge7はオフ制御スイッチ9と同時にオンしないように時刻t2より少し前にHレベルとなってオフするよう制御されている。オフ制御スイッチ9がオンすることで、スイッチング素子1のゲート電圧Vge1が低下し、閾値を下回るとスイッチング素子1がオフし、スイッチング素子1のコレクタ-エミッタ間が遮断される。
【0033】
短絡時T2の期間では、時刻t3において短絡が発生し、ソフト遮断用短絡検出回路13が短絡を検出する。そして、所定時間経過してから時刻t4において、ゲート駆動回路5はスイッチング素子1をソフト遮断でオフするためにオン制御スイッチ7とオフ制御スイッチ9をともにオフし、ソフト遮断用スイッチ11のゲート電圧をHレベルにしてソフト遮断用スイッチ11をオンし、ソフト遮断を行う。これにより、スイッチング素子1のゲート電圧Vge1は徐々に低下を始める。
【0034】
しかしながら、図2に示すように、短絡が発生した時刻t3からソフト遮断が開始される時刻t4までの間に、スイッチング素子1のコレクタ-エミッタ間電圧Vce1とコレクタ電流Ic1が振動し、サージが大きくなる可能性がある。
【0035】
そこで、図3に示すように、実施例1では、短絡時バイパス回路16によって、時刻t3から1μs以内の時刻t5において、オン制御スイッチ7がオンしたままで、バイパス用スイッチ18のゲート電圧Vge18をHレベルにしてバイパス用スイッチ18をオンし、スイッチング素子1のゲート電流Ig1をバイパスしてバイパス用抵抗19を介して逃がすことにより、スイッチング素子1のゲート電圧Vge1の上昇も緩やかとなり、スイッチング素子1のコレクタ-エミッタ間電圧Vce1とコレクタ電流Ic1の振動を抑制して、サージを小さくできる。
【0036】
なお、ソフト遮断が開始される時刻t4では、バイパス用スイッチ18のゲート電圧Vge18はLレベルとなり、バイパス用スイッチ18はオフする。
【0037】
以上説明した通り、実施例1によれば、スイッチング素子の短絡保護動作を速やかに開始して短絡保護を行うことでスイッチング素子の短絡時の振動やサージを抑制できる。
【実施例0038】
実施例2は実施例1の変形例である。
【0039】
実施例1の短絡時バイパス回路16によるスイッチング素子1の短絡時の振動やサージを抑制できる効果は、ソフト遮断の有無によれず得られる効果である。したがって、ソフト遮断を行わない制御回路に対して実施例1の短絡時バイパス回路16を適用してもよい。
【0040】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に記載された構成に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。また、各実施例で説明した構成の一部または全部を組み合わせて適用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 スイッチング素子
2 ダイオード
3 電流センス用端子
4 短絡検知用抵抗
5 ゲート駆動回路
6 駆動回路
7 オン制御スイッチ
8 オン抵抗
9 オフ制御スイッチ
10 オフ抵抗
11 ソフト遮断用スイッチ
12 ソフト遮断用抵抗
13 ソフト遮断用短絡検出回路
14 ノイズマスク回路
15 ソフト遮断制御回路
16 短絡時バイパス回路
17 バイパス用短絡検出回路
18 バイパス用スイッチ
19 バイパス用抵抗
20 基準電位
100 制御回路
T1 正常動作時
T2 短絡時
図1
図2
図3