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特開2023-18072安定したシリコンイオン液体界面のリチウムイオン電池
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018072
(43)【公開日】2023-02-07
(54)【発明の名称】安定したシリコンイオン液体界面のリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20230131BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230131BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230131BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230131BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20230131BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/134
H01M10/0569
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186597
(22)【出願日】2022-11-22
(62)【分割の表示】P 2020184856の分割
【原出願日】2015-10-30
(31)【優先権主張番号】62/072,957
(32)【優先日】2014-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】308032460
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ コロラド,ア ボディー コーポレイト
【氏名又は名称原語表記】THE REGENTS OF THE UNIVERSITY OF COLORADO,a body corporate
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】リー,セ-ヒー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ジェリー
(72)【発明者】
【氏名】ブハット,ヴィナイ
(72)【発明者】
【氏名】パイパー,ダニエラ,モリナ
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンス,テイラー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高エネルギー密度及び長いサイクル寿命を有する低コストな電池材料を提供する。
【解決手段】第1の電極402であって、複数のナノシリコン粒子を含む活物質と、前記活物質を結合させる環化ポリアクリロニトリルであって、粒子複数のナノシリコン粒子をコートする環化ポリアクリロニトリルと、を備える、第1の電極と、前記第1の電極上に形成された固体電解質中間膜であって、フッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む固体電解質中間膜と、第2の電極404と、前記第1の電極と前記第2の電極とを接触させるための室温イオン性液体電解質406と、を備える電気エネルギー貯蔵装置とする。
【選択図】図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極システムであって、
複数のナノシリコンを含む活物質と、
前記活物質を結合させて電気及びリチウムイオンを伝導させるポリアクリロニトリルポリマーであって、当該ポリアクリロニトリルポリマーが前記複数のナノシリコン粒子のそれぞれをコンフォーマル且つ個別にカバーするポリアクリロニトリルポリマーと、を備える、
電極システムと、
第2の電極と、
前記電極システムと第2電極とを接触させるための室温イオン性液体電解質であって、当該室温イオン性液体電解質がピロリジニウム及び1-エチル1-3-メチルイミダゾリウムからなる群から選択される陽イオン種を含む室温イオン性液体電解質と、
を備える電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記電極システムは、環化ポリアクリロニトリルシリコンのナノコンポジット(nSi-cPAN)を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電極システムは、nSi-cPANを含み、前記室温イオン性液体電解質は、PYR13FSIを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記電極システムは、バルク型複合電極を含む、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記バルク電極は、約5マイクロメートルより大きい厚さを有する、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ナノシリコン粒子は、1~500nmの範囲の大きさを有する、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記電極システムは、約70wt%のナノシリコン粒子と、約30wt%のポリアクリロニトリルポリマーとを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記電極システムは、10~50μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年10月30日付出願の米国出願第62/072,957号の利益を主張するものである。この出願の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、国立科学財団によって付与された助成金番号IIP1152040による政府の支援によってなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、エネルギー貯蔵装置に関する。より詳細には、本開示は、リチウムイオン電池を記載する。
【背景技術】
【0004】
リチオ化中のシリコンの体積膨張は、電池材料として使用するときに問題となる。市販されているグラファイト電極は、リチウムインターカレーションの間に約10-13%膨張するが、シリコンの膨張はほぼ300%に達し、固体電解質中間の構造的劣化及び不安定性を生じる。そのような不安定性は、最終的に電池寿命を不十分なレベルまで短くし、伝導路の破壊、活物質の分離、連続した固体電解質中間の改質、及び機械的に不安定な固体電解質界面を引き起こす。
【0005】
固体電解質中間層は、電池の充電中に電解質の還元分解によってアノード表面上に形成される。シリコンアノードは、リチオ化中の膨張が層を破壊させるので、サイクル毎に再形成する必要がある動的固体電解質中間の不足に見舞われる。固体電解質中間の形成は、Liを消費し、サイクルごとに電解質を消耗させる。実質的に無制限のLi供給量を有するLi金属の対電極を利用する半電池とは対照的に、フルセルは、カソードによって提供されるLiの限定された供給を受ける。固体電解質中間層の連続的な破壊及び改質により、電池のサイクル性能が急速に破壊されることになる。
【0006】
代替の電解質組成物及び活物質の表面処理は、高容量アノード材料上のSEI形成を強化し、半電池のCEを改善するために研究されている。これらの努力にもかかわらず、サイクリング全体で達成されたCEは、長持ちするSi系フルセルには依然として不十分であり、又は、フルセルを製造するために使用される方法は、その真の性能を偽装するシステムに大過剰のLi(>200%)を導入する。次世代電解質材料を設計する試みの中で、室温イオン性液体(RTIL又はIL)は、揮発性が低く、蒸気圧が無視でき、熱安定性が高く、電圧安定性が高く、イオン導電性が十分であるため興味深い。RTILs、特にピロリジニウム(PYR n+)又は1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム(EMIM)のカチオン及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(TFSI)又はビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)のアニオンからなるものは、Siを含む一般的な負極材料で陰極安定している。これらの材料の電気化学的特性及び界面化学の明確な理解は、まだ深まっていない。RTIL電解質とSi系ナノコンポジット電極との相溶性の研究に関してほとんど研究がなされておらず、薄膜型電極のSi-RTILシステムの研究が行われている。
【0007】
これらの及び他の理由から、高エネルギー密度及び長いサイクル寿命を低コストで提供することができる電池材料が必要とされている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】PYR13FSI(1.2M LiFSI)及びEC/DEC(1M LiPF)におけるnSi-cPAN電極の容量及びクーロン効率を示す。
図1B】PYR13FSI(0.6M LiTFSI)及びEMIMFSI(1.2M LiFSI)電解質システムにおけるnSi-cPAN電極の容量及びクーロン効率を示す。
図2A-2H】Li13Si表面上の分解メカニズムの図を示す。
図3A-3G】Si-PYR13FSIシステムにおける固体電解質中間組成物のミクロ画像を示す。
図4A-4B】1回目の充放電サイクルにおけるnSi-cPAN電極の質量変化を示す。
図5A-5H】アノードの微細構造画像を示す。
図6A】PYR13FSI(1.2M LiFSI)及び従来のEC/DEC(1M LiPF)電解質で組み立てたnSi-PAN/L333のフルセルの充電容量及びクーロン効率を示す。
図6B】nSi-cPAN/PYR13FSI/L333のフルセルの比率試験及び長期サイクリングの結果を示す。
図6C】比較的薄いnSi-cPAN電極のためにより多くの電気活性材料を組み込む機会を示す市販の18650セルのモックアップを示す。
図7A】nSi-cPANを用いたEC/DEC(1M LiPF)の電圧プロファイルを示す。
図7B】nSi-cPANを用いたPYR13FSI(1.2M LiFSI)の電圧プロファイルを示す。
図7C】nSi-cPANを用いたPYR13FSI(0.6M LiTFSI)の電圧プロファイルを示す。
図7D】nSi-cPANを用いたEMIMFSI(1.2M LiFSI)の電圧プロファイルを示す。
図8A-8D】FSI及びTFSIのアニオンの単一電子還元を示す。
図9A-9E】サイクリングされた従来のSi系電極の固体電解質中間組成物の断面画像を示す。
図10A-10B】1回目の充放電サイクルにおける各電極の1電子あたりの質量変化を示す。
図11】EC/DECの電解質システムに対するPYR13FSIを有する従来のSi系電極の半電池の電気化学的性能を示す。
図12】フルセルの高温電気化学的性能を示す。
図13A】電極の容量とクーロン効率を示す。
図13B】フルセルの容量とクーロン効率を示す。
図14】フッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む膜を有する電極上に形成された膜を含む組成物を示す。
図15】ナノシリコンと、活物質を結着させ電気を伝導するポリマーと、ポリマーと活物質とを接触させる電解質とを含む活物質を含む基板を示す図を示す。
図16】ナノシリコンと、活物質を結合させて電気を通すためのポリアクリロニトリルと、活物質と接触する電解質とを含む活物質を含む基板を示しており、電解質は、LiFSI塩とLiFSI塩のビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)のアニオンとを含む。
図17】ナノシリコンを含む第1の電極と、第2の電極と、第1の電極及び第2の電極に接触する室温イオン性液体電解質とを含む装置のブロック図を示す。
図18】電解質を含む電池を充放電する工程と、フッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む固体電解質中間膜を電極上に形成する工程と含む方法を示すフロー図を示す。
図19】ポリアクリロニトリルでコーティングされたナノシリコンを含む電極を有する電池の充放電する工程と、電極上にフッ素、酸素、硫黄、炭素及びリチウムを含む固体電解質中間膜を形成する工程と、フッ素、酸素、及び硫黄でコンフォーマルにコーティングされたポリアクリロニトリルをカバーする工程とを含む方法のフロー図を示す。
図20】ナノシリコンを含む電極を有するセルを充放電する工程と、電極に実質的に機械的に安定な固体電解質インターフェースを形成する工程とを含む方法の流れ図を示す。
図21】ナノシリコンを含む第1の電極と、第2の電極と、第1の電極及び第2の電極と接触する室温イオン性液体電解質とを含む複数の電気的に結合されたセルを含むシステムのブロック図を示す。
【0009】
良好なSEIを形成することができる電解質と併合された機械的に弾力性のある電極構造を含むコンビナトリアルアプローチは、バルク型のSiアノードにおいて構造的完全性を安定した界面化学と統合する1つの選択肢である。この目的のために、非常に安定で弾力性のあるSEIを示し、Siアノードの欠点を解決したり、バルク型のナノSi系アノードを有するリチウムイオンのフルセルの長期動作を可能にするナノSi-RTILシステムを設計した。「ナノシリコン系電極」は、粒径/直径がナノメートルスケール(1-500nm)のシリコン活性材料を含む電極である。我々は、系統的かつ包括的な実験マトリックスによって、以前に報告された環化ポリアクリロニトリル(cPAN)系のSiナノコンポジット構造(nSi-cPAN)にFSI系ILによって形成されたSEIの組成及び構造を研究した。我々は、実験的及び理論的データを用いて、ナノ-Si-RTIL界面でSEIを形成するメカニズムを提案し、半電池の構成におけるCEの重要性を考察する。特に、この研究は、PYR13FSI(1.2M LiFSI)の電解質を用いて、nSi-cPAN/Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O-(L333)のフルセルの高度に可逆的なサイクリングの画期的なデモンストレーションによって強調されている。
【0010】
nSi-cPANアーキテクチャのシンプルな製造、スケーラビリティ、低容量拡張、及び構造的なロバスト性は、適切な電解質システムと融合する理想的な候補になる。安定したSi-電解質界面を追求するために、nSi-cPAN複合体は、種々の負極材料に反して陰極安定性で知られているカチオン-アニオンの組合せからなるRTILの中で定電流条件下でサイクルされた。PYR13FSI(1.2M LiFSI)、PYR13TFSI(0.6M LiTFSI)、及びEMIMFSI(1.2M LiFSI)を含むRTIL溶液中のナノSi系電極のサイクル性能は、市販のEC/DEC(1M LiPF)電解質における電極の性能と直接比較された。予備的なサイクル研究の結果が図1(A)及び図1(B)に示され、FSI系IL中のnSi-cPANアノードの強く予想外のサイクル安定性及びPYR13FSIシステムにおける予想外のCEを立証する。サイクルは、0.05-1V(対Li/Li)との間で動作する2032のコイン型半電池において室温で実行された。PYR13FSI(1.2M LiFSI)電解質に現れる高いCEは、100サイクル後の99.945%の平均的に安定したCE及び76.7%の充電容量保持率を用いて8サイクル後に安定する(図1(B))。安定した半電池サイクルを示す一方、EMIMFSI(1.2M LiFSI)電解質(図1(B))を用いて観察されたより低い平均のCE(98.451%)は、1.5V未満のEMIMカチオンの不安定性(Li/Liに対して)に起因すると考えられる。このようなデータは、従来の有機電解質における我々のnSi-cPAN電極のサイクル挙動と対照的であり、このサイクル挙動は、97.824%(図1(A))の平均的に安定したCE(図1(A))が図7に示されていることが原因で、100サイクル後の初期充電容量の45.2%のみ維持する。
【0011】
ナノ-Si-PYR13FSIシステムの予想外のCEは、非常に安定したSEIの形成に起因すると考えられる。我々は、電解質溶液中に存在するイオンの分解がRTILのイオン化メークアップに依存して変化するSEI組成をもたらすことを示唆する。我々は、FSI系ILの分解生成物によって形成された界面が、有機電解質で経験される連続SEI形成を緩和すると仮定し、この提案は、ナノ-Si-PYR13FSI半電池のより長いサイクル寿命によって立証され(図1(A))、200サイクルで99.97%の平均のCEを達成している。ナノ-Si-cPAN電極とTFSI系電解質との明確な違和感を考慮して、TFSI及びFSIからなるILから生じる分解メカニズム及びSEI組成物は、密度汎関数理論(DFT)の電子構造法を用いて調査された。
【0012】
図2は、Li13Siの表面ボール及びスティックモデル上のFSI--及びTFSI--系ILの分解メカニズムを示し、AはFSIのアニオンであり、Bは分解されたFSIのラジカル・ジアニオンであり、CはTFSIのアニオンであり、及び、Dは分解されたTFSIのジアニオンである。DFTのシミュレーションのEはLi13Si上での無傷のPYR/FSIのペアであり、FはLi13Si上での分解されたPYR/FSIのペアであり、GはLi13Si上での無傷のPYR/TFSIのペアであり、及び、HはLi13Si上での分解されたPYR/TFSIのペアである。E-Hでは、FSI又はTFSI上での過剰な電子は、明示的には追加されず、Li13Siによってもたらされる。Li、Si、C、O、N、S、及びF原子は、それぞれ銀、緑、灰色、赤色、青色、黄色、及び紫色の球として描かれている。PYR13 カチオンはバックグラウンドで灰色の線図として示されている。すべてのパネルは、T=350KでのAIMDのスナップショットであるF及びHを除いて最適化された形状である。
【0013】
2つの異なる環境における並列モデリング処理を介して、我々は両方のアニオンを含むIL中の潜在的なSEI形成経路を比較することができる。理論的研究の第1のタイプは、孤立したFSI図2(A))及びTFSI図2(C))のアニオン上のクラスタ系局部的基礎計算からなり、バルク液体電解質中の1電子還元経路を模倣する。第2の研究は、Li13Siのスラブ(010)表面におけるPYR/FSI及びPYR/TFSIのイオンペアの周期的境界条件シミュレーションからなる。両方のモデリング処理で同様の結果が得られるので、我々は、リチオ化されたシリコン表面のイオンペアの研究について以下の分析に注目するだろう。局部的な基礎計算(第1のモデリング研究)の詳細な説明は、以下に提供され、図8に示されている。初期のアノード表面と直接接触する電解質分子をモデル化するために、我々は、まずLi13Si表面上のPYR/FSI及びPYR/TFSIのイオンペアを最適化する(図2(E)及び2(G)にそれぞれ示す)。
【0014】
同じモデルの表面は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)分解の文脈で以前に研究されており、液体電解質に直接さらされたSiを有する低電位アノード表面を表し、その近傍の電解質分子を容易に還元することができる電子源としての機能を果たす。
【0015】
化学反応に至らない幾何学的最適化の後、350Kで非経験的分子動力学(AIMD)シミュレーションが開始された。FSIのアニオンは1.2ps内で急速に分解する(図2(F))。図2(B)に示すように、S-F結合が最初に破壊されてFを放出し、続いてアノード表面とさらに反応し、第2の電子を吸収することが予想されるSO基が脱離する。この迅速な反応カスケードは、Li金属表面上で予測されるFSI反応を連想させる。TFSIは、FSIよりもはるかに反応性が低いことが証明され、Li13Si表面上で21psの間そのままにしておくと分解する(図2(D))。2つの得られたフラグメントのいずれも、正味の磁気モーメントを有しておらず、2電子還元が生じ、電極表面にSOCF 及びNSOCF 2-を形成したことを示している(図2(H))。PYR13 は、前述のシミュレーションの全てにわたって不活性のままである。
【0016】
我々のモデリング研究を要約すると、FSIとTFSIは電気化学的還元の際に全く異なる分解メカニズムを経ることがわかる。FSIは、Fを急速に放出し、最も可能性が高いのはSEIにLiFを形成するが、TFSIははるかに遅い時間スケールで異なる生成物を形成する。後者の減少したフラグメントのいくつかは最終的にFを生じるが、有機電解質による遅いPF の分解と同様に、遅いF放出はTFSIによって起こり得る。我々は、Fの速い放出がナノ-Si-PYR13FSIシステムによって示される高いサイクル性能と相関し得ると推測している。この根拠は、FECが有機炭酸塩系電解質中の電解質添加剤としてFECを使用する場合の良好なSi半電池サイクル挙動を示す経験的データと同様に、Fを急速に放出してLiFを生成することを示すFEC分解の以前のモデリング研究と一致する。
【0017】
サイクリング中(16回目の脱リチオ化)にnSi-cPAN粒子の表面の元素組成を調べるために電子エネルギー損失分光法(EELS)を使用することにより、我々はDFT予測を確認し、提案されたSEIの元素組成についての知見を得る。図3は、シリコン(図3(B))、炭素(図3(C))、硫黄(図3(D))、フッ素(図3(E))、リチウム(図3(F))、及び酸素(図3(G))のEELSマッピングを用いて、サイクル/脱リチオ化のnSi-cPANの断面(図3(A))における高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)画像を示し、形成されたSEIの元素組成及び好ましい核形成部位を定義している。Liの存在と組み合わせて、Si粒子の表面をコーティングするFの明確なシルエットは、我々のDFTシミュレーションに見られるLiFベースのSEIを立証する。さらに、cPAN表面のコーティングに関して、Oの明確なマッピング及びSの証拠は、例えばLiOH及びSOなどの以前に決定されたFSIの分解生成物と相関する。従来の有機電解質においてサイクルされた従来のSi系電極の同様の分析は、サイクルされたSi粒子の周りの電解質分解生成物の特異的な付着を示さない(図9)。
【0018】
nSi-cPAN電極上に提案されたSEIの形成機構を調べるために、我々は、電気化学水晶振動子マイクロバランス(EQCM)を用いて最初の充放電サイクル中にこの界面の質量変化を調べる。SEIが基礎構造を形成する最初のサイクル中にリアルタイムで電極上の質量増減を監視することにより、我々は、従来の有機電解質ベースのシステムにおけるこの界面の脆弱性を認識しつつ、さらにナノ-Si-RTIL界面の機械的復元力をさらに示す。
【0019】
図4は、第1の充放電サイクル中のnSi-cPAN電極の質量変化を示す。nSi-cPAN電極の初期SEI形成サイクル中に得られたEQCMの質量図は、Aが従来の有機電解質でサイクルされたもの、及び、BがPYR13FSI(1.2M LiFSI)電解質でサイクルされたものを、各システムに対応する電圧トレースと共に示す。より詳細には、図4は、有機電解質(図4(A))とFSI系IL(図4(B))の両方において、nSi-cPANの初期形成サイクルに対するEQCMの質量図を伝える。両方のシステムは、モデリング研究で示唆されているように、リチオ化中に2つの非常に異なる挙動を示す。両方のシステムにおけるリチオ化の最初の20%の間の約43μgcm-2の質量の漸増は、cPANによるリチウムの取り込み、他の非ファラデープロセス、及びLiとSiの最初の合金化に対応する。
【0020】
続いて、電極は、主に電解質の分解及び分解生成物の電極-電解質界面への堆積に起因して、急速な質量変化を受ける。これらの急速な質量変化の開始は、EQCM実験における電解質分解の既知のアーチファクトである「潜在的なオーバーシュート」現象を介して、各システムの電圧トレースに現れる。この急速な質量変化の発生は、従来の有機電解質においてより早く(20.5%のリチオ化)、且つかなり高い比率で(46.1%のリチオ化でeの73.1gmol-1に達すること)起こる。電子1モル当たりの質量変化(m.p.e., eのgmol-1)が、図10のデータから抽出された。これは、PYR13FSIシステムと比較して従来の有機電解質の電気化学的安定性が低いことによるものであり、PYR13FSIシステムは7.31Vの電圧安定性ウィンドウを有する。従来の電解質システムのより高い平均m.p.e.は、EC/DEC(1M LiPF)の分解中の非常に遅いFの放出とともに、主に分解された有機分子からなるSEIの形成を示唆している。逆に、この研究で先に立証されたように、リチオ化を通してPYR13FSI(1.2M LiFSI)電解質における制御された質量増加、より低い平均m.p.e.(56%のリチオ化でeの25gmol-1に達すること)及び高速Fの放出は、例えばLiFのような小さな無機分子からなるSEIの形成の予測を立証している。
【0021】
282μgcm-2の臨界質量に達した後、Si-従来の有機電解質システムの質量が崩壊する。質量の崩壊は、電極マトリックスの破壊を引き起こすこのシステムで起こることが知られている過酷な体積膨張、並びに不安定な界面層の蓄積及び破裂を含む多くの要因によって引き起こされる可能性がある。脱リチオ化中に、nSi-cPAN複合体の収縮は、電極マトリックスのさらなる破損及び材料損失をもたらす。このシステムが安定した質量変化を示すことができないことは、従来の電解質とのSiの非相溶性に相当する。対照的に、ナノ-Si-RTILシステムの質量図は、脱リチオ化後に初期のリチオ化中に得られた約73%の質量を用いて、より緩やかな質量増加及び損失を示す。我々は、この挙動がナノSi電極上の安定した界面層の不可逆的な形成に原因があると考え、優れたサイクル寿命を通して安定したサイクリング及び高いCEに現れる。
【0022】
説明された理論的及び実験的データは、提案されたSEIの形成機構及び組成についての洞察を提供するが、我々は、PYR13FSI電解質がナノ-Si系電極に与える形態学的影響を直接的に理解するために、より包括的な画像検査を行う。
【0023】
図5は、アノード上のnSi-cPANの微細構造及びPYR13FSI ILの形態学的効果を示す。(A)は、炭素とシリコンのEELSの元素マッピングであり、(B)は、元のnSi-cPAN電極のTEM顕微鏡写真が、非サイクル複合体全体にわたってナノSi粒子上にPANの薄くコンフォーマルなコーティングを示す。(C)、(D)は、わずか17%の電極体積膨張を示す、初期のリチオ化の前(C)及び後(D)の電極断面のFESEM画像である。E-Hは、機械的欠陥又は重大な形態変化を示さない、完全にリチオ化された(E、F)及び16回目の脱リチオ化された(G、H)nSi-cPAN電極のTEM顕微鏡写真である。
【0024】
さらに、我々は、EELS及びTEMが非サイクル複合体(図5(A)及び5(B))全体にわたってナノ-Si粒子上にPANの薄くコンフォーマルなコーティングを示すことを指摘する。cPANコーティングの機械的利点は、サイクル寿命の異なる段階で電極断面を分析することによって検証され、EC/DEC(1M LiPF)電解質による完全初期リチオ化の後にわずか40%の全体的な容積膨張を見出す。PYR13FSI(1.2M LiFSI)電解質において初期リチオ化の前(図5(C))及び後(図5(D))に取られた電極断面サンプルの同一の処理によって、我々はわずか17%であるnSi-cPAN複合体の体積膨張を見出す。この予期せぬ容積制御をさらに調べるために、TEM顕微鏡写真は、初期のリチオ化(図5(E)及び5(F))及び16回目の脱リチオ化(図5(G)及び5(H))の後に取られた。完全にリチオ化された電極及びサイクルされた電極の両方のTEM画像は、Si粒子又は複合構造内に機械的欠陥又は形態変化を示さない。最も注目すべきことに、Si-PYR13FSIシステムは、16回目の脱リチオ化後に、従来の電解質における同じ電極の比較的貧弱なナノ構造の保存と対照的であるナノ-Siの球形の顕著な保存と共に、Si粒子とcPANネットワークとの間の接続の切断を示さない。ナノ-Si-PYR13FSIシステムの印象的な構造的完全性は、システムのサイクル安定性に疑いなく関連しており、ナノ-Si-RTILインターフェースが同時に良好な電気化学及び構造的回復力を促進することを示唆している。
【0025】
前述のように、多くの電気化学物質研究の目標は、高容量電極をリチウムイオンのフルセルに組み込むことである。我々の研究のこの時点まで、我々は、ナノ-Si-PYR13FSIシステムの詳細な評価を示し、予期しないほど強力なSEIを介してシステムの安定性のメカニズムを提案している。安定したSEIの主張を立証する最も信頼できる手段は、ナノ-Si-PYR13FSIシステムを組み込んだフルセルの長期サイクリングを立証することである。この目的のために、我々は、非常に長いサイクル寿命のために高いエネルギー密度を維持することができるnSi-cPAN/PYR13FSI(1.2M LiFSI)/L333 LIBを構築した(フルセル製造の詳細については以下を参照)。
【0026】
図6(A)は、従来のEC/DEC(1M LiPF)及びPYR13FSI(12M LiFSI)電解質で組み立てられたnSi-cPAN/L333フルセルの性能を比較する。図2に示した両方のセルは、図6(A)は、カソードとアノードの両方に同じ電極質量負荷(10%以内)を含み、公正な比較のために同じパラメータの下で作動制御される。143.21mAhg-1及び127.10mAhg-1の初期充電容量(全てのフルセル比容量は、全活性材料質量に対して正規化される)は、EC/DEC(1M LiPF)及びPYR13FSI(1.2M LiFSI)LIBのC/5の比率でそれぞれ観察された。この制限が比類なきサイクル安定性に裏打ちされるが、初期容量の差は、RTIL電解質のより高い抵抗に起因すると考えられる。35サイクルの後、炭酸塩系電解質中の細胞周期は急速に低下する。低い半電池のCE及びサイクル当たり2.31%の平均不可逆的充電損失に起因する劣化は、システムが連続的なSEIの断線及び改造によってLiの供給を使い果たすときに生じる。対照的に、PYR13FSI(1.2M LiFSI)電解質においてサイクルされた電池は、無視できるLiの消費にしたがって最初の100サイクルで平均0.076%の不可逆電荷損失を用いて予想外の安定性を示し、C/2の比率で110.98mAhg-1の平均充電容量を提供する。ナノ-Si-PYR13FSIシステムのSEI安定性をさらに調べるために、フルセルは、短い比率試験で寿命に合わせてサイクルされた。図6(B)は、それぞれ、1C、4C、及び6Cの比率で107.33,74.70、及び58.26mAhg-1を送る1000サイクルのnSi-cPAN/PYR13FSI(1.2M LiFSI)/L333の電池運転を示す。
【0027】
PYR13FSI RTILが、PANを含むもの(図11)だけでなく、以前に開発されたSi系アノード構造の範囲の性能を強化することが挙げられる。さらに、ナノ-Si-RTILシステムの高温性能についての予備的研究も有望な結果をもたらしており(図12)、PYR13FSIによって形成されたSEIが高温でさえも安定であることを示唆している。LIBの全体的なエネルギー密度は、正極の容量によって制限されることが理解される。この研究は、LIBアノード材料の研究の進歩を示している。図6(c)に示すように、市販の18650のセル構成にナノ-Si-PYR13FSIシステムを導入することが、比較的薄いnSi-cPAN電極に起因してより多くの電気活性材料の混入を可能にすることを、我々は提示する。2mAhcm-2の面積容量を有する市販の電池に基づいて、従来のグラファイト電極の厚さの1/4未満であるnSi-cPAN電極を利用することは、はるかに高いエネルギー密度のLIBを許容するだろう。サイクルデータと理論的及び実験的結果の組み合わせによって検証されると、安定した高エネルギー密度のアノード電解質システムを開発する我々のアプローチは、より安全で高性能な二次LIBへの重要な進歩を表す。
【0028】
(方法-電極と電解質の準備)
nSi-cPAN及びLi(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O電極は、我々の手順に従って製造された。カソードとアノードの両方での活物質の質量負荷は、以前の研究の少なくとも2倍である。イオン性液体電解質は、Boulder Ionics Corporation(米国)によって提供され、ハロゲン化物不純物についてスキャンされた。不純物(F、CI、Br、SO )は、Dionex ICS-1100のクロマトグラフを用いて定量化され、1ppmの低感度で較正された。イオンクロマトグラフィーは、この研究で使用した全てのイオン性液体及びリチウム塩について実施され、各溶液の全不純物含有量は、電解質の全質量中の電解質成分の質量百分率に基づいて計算された。溶液は、20ppm(w/w)未満の水分と、10ppm(w/w)未満のハロゲン化物及び金属イオン不純物とを含有した。エチレンカーボネート:炭酸ジエチル(50:50、Soulbrain)中の1M LiPFは、従来の有機電解質として使用された。
【0029】
(電気化学的特性)
電気化学的測定は、Arbin(商標)のBT2000の電池試験ステーションを用いて行われた。すべての半電池は、準備したnSi-cPAN電極を作用電極として、リチウム金属箔を対電極として用いて組み立てられた。セパレータは、ガラスマイクロファイバーディスク(Whatman(商標)GF/F)であり、シェルは、ステンレス鋼CR2032のコインセル(プレッドマテリアル(Pred Materials))であった。使用された電解質系は、EC/DEC(1M LiPF)、PYR13FSI(1.2M LiFSI)、PYR13TFSI(0.6M LiTFSI)、及びEMIMFSI(1.2M LiFSI)であった。我々は、半電池をサイクルさせるための定電流(CC)の試験スキームを使用した。セルのクーロン効率の真の性能を明らかにするために、サイクリング中に保持が利用されなかった。半電池は、0.05と1V(対Li/Li)の間で様々なサイクル電流(C/10の比率が353.6μA/cm-2に等しい)で放電されたり(リチオ化される)、充電された(脱リチオ化される)。半電池の電気化学的測定は、各電極においてSi活物質の質量(典型的には1.1-1.3mg)に基づいてすべて標準化された。我々は、フルセルをサイクルさせるために定電流定電圧(CCCV)の試験方式を使用した。フルセルは、2と4.15V(対Li/Li)の間で、様々なサイクリング電流で充放電された(C/2の比率が、図6(A)のフルセルに対する502.9μA・cm-2及び図6(B)のフルセルに対する197.3μA・cm-2に相当する)。フルセルの電気化学的測定は、カソード電極とアノード電極の両方における電気活性材料の総質量(典型的には7-9mg)に関して全て平均化された。
【0030】
(電子構造計算)
2種類の計算は、上記のように行われた。また、静的クラスタ系計算やLi13のスラブを用いた非経験的分子動力学(AIMD)のシミュレーションの詳細な説明が、含まれている。
【0031】
(形態学的特性)
可動エアロックチャンバーを備えたFIB(FEI、NOVA200のデュアルビームシステム)は、TEMサンプルの調製に使用された。TEM及びEELS分析は、200keVで操作されるFEI Tecnai F20を用いて行われた。
【0032】
(電気化学水晶振動子マイクロバランス)
コインセル試験用の電極調製と同様に、nSi-cPAN膜は、直径1インチのPt5MHzの共鳴水晶(スタンフォード・リサーチ・システム(Stanford Research Systems);SRS)上にコーティングされた。セルにおける電気化学的活性領域は、結晶上のPtパターンに基づいて、1.359cmであると決定された。石英結晶上の厚膜を使用して周波数測定に伴う誤差を緩和するために、すべてのnSi-cPAN膜は、10μm未満の厚さで製造された。結晶は、SRS QCM200の結晶ホルダに入れられた。ホルダは、2.5mLの容量のスタンドアロンセルをふたで囲まれ得るように、PEEKの絶縁材で改造された。セルの天井は、Liのホイル対電極に並べられ、銅線に接続された。全ての電流及び潜在的パラメータは、コインセルの電気化学的特性と一致した。
【0033】
(フルセル作製)
フルセルは、送達可能な容量に基づいて選択された前処理された電極から作製された。活物質の質量から計算することで、nSi-cPANのアノードは、総アノード容量がカソード容量の約160%となるように製造されると共に、L333のカソードと合わせた。両方の電極は、前処理された:アノードは、半電池の構成で10回の充放電のサイクルで運転させることが許容され、完全リチオ化後にアノードを停止されたが、一方で、カソードは、半電池の構成で3回の充放電サイクルで運転されることが許容され、完全脱リチオ化後に停止された。次いで、半電池は、分解されると共に、電極を用いて2032のコインセル(Al被覆のカソードカップ)タイプのフルセルを作製するのに用いられた。この予備調整の方法は、システム内のリチウムの量を完全に制御することを可能にする。
【0034】
(モデリング研究1:バルク液体電解質中のFSI及びTFSIの単電子還元)
図8は、FSI及びTFSIのアニオンの単電子還元を示す。図(A)は、Li(TFSIを示す。図(B)は、過剰な電子を(A)に添加することが、得られたFSIのラジカル・ジアニオンを自発的に分解することを示す。図(C)は、Li(TFSIを示す。図(D)は、電子を(C)に添加することが、得られたTFSIのジアニオンを分解することを示す。理論的研究の第1のタイプは、孤立したFSI図8(A))やTFSI図8(B))のアニオンであって、Liに配位し、その周りのイオン性液体の影響を近似する誘電連続体に「溶媒和」したアニオン上のクラスタ系の局部的基礎計算からなる。これらは、バルク液体電解質中の1電子還元経路を模倣し、初期のSEI形成によって電子伝達速度が遅くなるときに起こるはずである。誘電的に溶媒和されたLi(TFSIのクラスタに過剰な電子を加えることは、自発的に幾何学的な最適化計算におけるFSI2-のラジカル・ジアニオンからFの損失をもたらす(図8(C))。Li(TFSIにeを注入し、幾何学的な最適化を実行することは、得られるTFSI2-を分解して、図9(d)に示された2つのフラグメント:SOCF 及びNSOCF をもたらす。後者はラジカル・アニオンである。TFSIに関する我々の予測は、Liなしの孤立したTFSIで行われた計算と一致する。予測は、ハイブリッドPBEO機能が使用される場合と同様である。これらの計算は、4配位のLiを与えるための2つのFSI又はTFSIで使用される。1つの過剰な電子をLiFSI又はLiTFSIのクラスタに加えることは、配位の低いLiの非物理的な還元をLiにもたらす。注:上記は、反応速度論又は電子移動速度には無関係な単一過剰電子系の静的計算である。
【0035】
図9は、サイクリングされた従来のSi系電極の固体電解質中間組成物を示す。電極の断面は、活物質(Si、50nm Alfa Aesar)、導電助剤(アセチレンブラック、AB)、及び結合剤(ポリビニリデンジフルオリド、PVDF)をそれぞれ60:20:20の比率で含み、EC/DEC(1M LiPF)の電解質を用いて0.05-1V(対Li/Li)からサイクルさせた。図9(A)は、EELS元素マッピングと共に、20回目の脱リチオ化されたサイクル式の従来のSi系電極部分のTEM顕微鏡写真を示し、(B)はシリコンであり、(C)はリンであり、(D)はフッ素であり、及び(E)はリチウムであり、形成されたSEIの可能性のある元素構成を定義し、Si粒子上に優位な付着を示さない。
【0036】
(電子構造計算方法)
2種類の計算が行われた。Li及び2つのFSI又はTFSIのアニオンを用いた静的クラスタ系計算は、ガウスの一連のプログラム、PBE及びPBE0関数の両方、最適化のための基底6-31+G(d、p)、及び誘電率εが40程度に設定されたSMDの誘電連続体を用いて実行された。クラスタが-2|e|の正味電荷と正味スピンを示すように、1つの過剰な電子はこれらの計算で加えられる。
【0037】
Li13Siのスラブ及びアニオンを含む非経験的分子動力学(AIMD)は、VASPコードのバージョン4.6におけるPAWの擬ポテンシャルを用いて実施され、スピン偏極したDFT/PBEの計算に基づいている。シミュレーションセルの寸法は、2×1×2のMonkhorst-Packのブリルアンサンプリング、波動関数については400eVのカットオフ、1fsのタイムステップ、及び時間ステップごとに10-6eVのエネルギー収束基準をさらした(010)面を有する15.84×34.00×13.32Aである。プロトンは既知のトリチウムの質量であり、NoseのサーモスタットはT=350Kでシミュレーション温度を維持する。そのため、報告された時間スケールは近似値であり、測定値と直接比較できない。Pyr13 /FSI及びPyr13 /TFSIのイオン対は、まずLi13Siの(010)表面上で最適化される。そのような計算に伴う電位(「電圧」)は、透過的に推定されないが、分解メカニズムは、大きな電位窓にわたって一般的に不変である。
【0038】
図10は、サイクルされたnSi-cPAN電極の初期のSEI形成サイクル中に得られたEQCMのm.p.e.データを示し、各システムに対応する電圧トレースと共に、Aでは従来の有機電解質を示し、BではPYR13FSI(1.2M LiFSI)の電解質を示す。m.p.e.データは、異なる質量変化率の開始点間でセグメント化されており(灰色の点線)、これらの平均値は各システムのプロット内に描かれている。従来の電解質及びFSI系ILの両方で観察された初期平均のm.p.e.値(eの13gmol-1)は、cPAN、他の非ファラデープロセス、及びLiとSiの初期合金化によるLiの取り込みに起因する。この初期状態の後、両システム間のm.p.e.値の差は、nSi-cPAN電極をリチオ化-脱リチオ化し、且つ安定した界面層を形成する各システムの能力の通りとなる。注目すべきは、RTILの電解質の放電トレースの低電圧領域に見られる平均25gmol-1 m.p.e.であり、これはLiF化合物の形成に対応する。
【0039】
(電気化学水晶振動子マイクロバランス(EQCM):潜在的なオーバーシュートと電子(m.p.e.)分析の1モルあたりの質量)
上述の「潜在的なオーバーシュート」現象は、コインセル及びEQCMの浸水セル構成において有機的及びIL系電解質の両方を使用する以前の研究で観察されている。ポリマーマトリックス内に埋め込まれた非晶質SiOスラリーと同様に、蒸着されたSiO膜に見られる。式Siのように、シリコン膜上の自然酸化膜が減少するので、オーバーシュートは、一般的に、LiO及び他の分解生成物の核形成に起因する。
【0040】
SiO+2xLi++2xe→xLiO+Si (SI)
【0041】
本文中で言及されているように、m.p.e.値は、反応生成物が電極上に吸着されていることを推測するために使用されることができる。以下の分析は、我々のEQCM実験及びm.p.e.データの機械的側面の仮説を提供する。m.p.e.値は、質量増加を通過した電荷で除算し、ファラデー定数を乗じることによって計算される。図2にプロットされたm.p.e.値は、SEI形成段階の間に定期的に取られた平均値である。既に酸化されたSi表面の場合、Liによる還元は、6.9gmol-1のm.p.e.(純Liの沈殿物又は挿入物)を与えるだろう。酸素が溶媒から引き出される場合、全体のm.p.e.は、14.9gmol-1(2モルの電子で分割されたLiOの分子量)である。有機電解質に対して、電圧トレースにおける電位の有意な増加として観察された、20%のリチオ化におけるオーバーシュートは、システム内の特定の応力が約58%のリチオ化の質量の突然の低下を生じるまで、m.p.e.においてさらに急速なスパイクを生じる。有機的な流入出に対するm.p.e.値は、電位がより負になるにつれて、分解経路がLiOの形成からエチレンカーボネートの吸着及び分解に移行し、最後にリン及びフッ化物種がLiPFから分解することを示唆している。
【0042】
RTIL電解質のLiOの形成に相関する潜在的なオーバーシュートは、実際には約0.12Vで存在する場合、電位が0.06Vに達したときに観察されたオーバーシュートよりも、はるかに小さいオーバーシュートであった。この時点で、またポテンシャルの有意な上昇は、質量増加の勾配(すなわち、m.p.e.値)の上昇を示した。上昇の直前に、m.p.e.値は、約9gmol-1以下に上昇した。続いて、m.p.e.値は、LiFの核形成を示唆する25gmolに向けて上昇すると共に、その周りは安定する。これは、FSIが分解されるときにS-F結合が最初に切断されることを示唆する計算シミュレーションと同様に、EELS測定を立証する。約20gmol-1までの小さな下落は、LiOHのような軽い製品やおそらくより多くのLi20と同様に、LiFの加重平均を示す可能性が高い。最後に、SEIの形成工程の終わりに向けて、m.p.e.値は、33gmol-1以下に上昇した可能性があり、分解フラグメントを含むSの取り込みを示している。FSIがLiと反応するときに残る最終的な分解生成物であると考えられるので、これは意味をなさない。
【0043】
図11は、EC/DECの電解質系に対するPYR13FSIを用いた従来のSi系電極の半電池の電気化学的性能を示す。60:20:20の比率で活物質(Si、50nm Alfa Aesar)、導電性添加剤(アセチレンブラック、AB)、及びバインダ(ポリビニリデンジフルオリド、PVDF)からなる電極は、300℃で熱処理され(PVDFのバインダの性能向上のため)、EC/DEC(1M LiPF)、黒色プロファイル、及びPYR13FSI(1.2M LiFSI)、オレンジプロファイルの電解質を用いて0.05-1V(対Li/Li)でサイクルされた。nSi-cPAN/PYR13FSIシステムで見られる結果と一致して、より速い容量安定性は、PYR13FSIの電解質に順応した従来のSi系電極に対する平均のCEの99.377%と共に、160サイクルで2065.77mAhg-1の平均安定充電容量を用いて観察される。これは、EC/DEC電解質に順応した従来のSiのアノードでの平均のCEの96.553%と共に、1092.19mAhg-1の平均安定比容量と比較する。PYR13FSI ILのシステムで達成された性能向上及び高いCEは、形成された安定したSEIに起因し、このことは、再び大容量を維持することを示し、サイクリング全体にわたって電極の機械的保存を示唆している。
【0044】
図12は、PYR13FSI RTILを有するnSi-cPAN/L333のフルセルの高温電気化学的性能を示す。nSi-PAN/L333のフルセルの特定の充電容量は、PYR13FSI(1.2M LiFSI)で組み立て、60℃でサイクルさせた。このセルは、室温(RT)において9サイクルでサイクルさせることで前処理し、その後のサイクルで60℃にした。この予備的なサイクリングデータは、PYR13FSIによって形成されたSEIが、高温でさえ安定していることを示唆する。
【0045】
このシステムを他のSiの活物質に適用することの裏付けとして、Siナノワイヤ(Ref.、W.Wantらにより合成されたSiNW、Applied Surface Chemistry、2012,258,8649)が実施されている。図13(A)及び(B)は、上述した図1(A)及び図6(A)に示すデータと同様に、PYR13FSI(1.2M LiFSI)の電解質やEC/DEC(LiPF)の電解質のシステムにおける半セル構成及びフルセル構成(L333のカソード)のSiNW-cPANの結果を提供する。
【0046】
図13(A)は、PYR13FSI(1.2M LiFSI)及びEC/DEC(1M LiPF)におけるSiNW-cPAN電極の比容量及びクーロン効率を示す。図13(B)は、PYR13FSI(1.2M LiFSI)及び従来のEC/DEC(1MLiPF)の電解質で組み立てられたnSi-PAN/L333のフルセルの比電荷容量及びクーロン効率を示す。PYR13FSI(1.2M LiFSI)を用いて組み立てたフルセルは、200サイクルで100%であり、300サイクルで97.5%の2サイクルに関する容量保持率を有する。
【0047】
図14は、膜102を含む組成物100の実例を示し、電極104上に形成された膜102は、フッ素106、酸素108、硫黄110、炭素112、及びリチウム114を含む。膜102は、例えばリチウムイオン電池の充放電中に電極104上に形成される。いくつかの実施形態では、膜102は、固体電解質中間膜である。固体電解質中間(SEI)膜は、電気化学的サイクル中に電極表面(電極内の粒子を含む全ての露出した粒子の表面)上に形成された膜である。電極表面に接触している電解質が分解すると(還元分解)、分解生成物は固体電解質中間膜を形成し、それは、さらに電荷移動を可能にしながらさらなる反応(還元分解)を不動態化するように作用する。フィルム102は、特定の厚さに限定されず、リチウムイオン電池の充放電中に厚さを変えるかもしれない。電極104は、電流が流れ得る導電性材料を含む。例示的な電極104は、シリコンを結合するナノシリコン及び電気化学的に不活性なポリアクリロニトリルを含むアノードである。別の例示的な結合剤は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)である。
【0048】
図15は、ナノシリコン204を含む活物質202、活物質202を結合して電気を伝導するポリマー206、並びにポリマー206及び活物質202に接触する電解質208を含む基板200の図を示す。電解質208は、塩210と塩212のアニオンとを含む。基板200は、他の材料が堆積又は形成されるベースを形成する。いくつかの実施形態では、基板200は、活物質202を含む電極である。活物質202は、いくつかの実施形態では、電気を伝導することができる材料を含む。活物質202は、電気化学的に活性な物質である。動作中、活物質202は、Liイオンなどのイオンと相互作用して電荷を蓄積する。いくつかの実施形態では、活物質はナノシリコンを含む。活物質202は、特定の形態に限定されない。いくつかの実施形態では、活物質202はシリコンナノワイヤを含む。いくつかの実施形態では、ナノワイヤは、約5ナノメートルと約20ナノメートルとの間の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノワイヤは、約20ナノメートルと約50ナノメートルとの間の直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノワイヤは、約50ナノメートルと約100ナノメートルとの間の直径を有する。活物質202の形成に関連して使用するのに適したシリコンは、Alfa Aesarから市販されている。いくつかの実施形態では、シリコン204、例えばシリコン粒子は、電極製造プロセス中にポリアクリロニトリル中にコーティングされる。したがって、「PANコーティング」は、電極を構成するすべてのシリコン粒子を覆う。
【0049】
図16は、ナノシリコン304を含む活物質302と、活物質302を結合し電気を伝導するポリアクリロニトリル306と、活物質302と接触する電解質308とを含む基板300を示す図であり、電解質308は、LiFSIの塩310と、LiFSIの塩310のビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)のアニオン312とを含む。いくつかの実施形態では、ポリアクリロニトリルは、導電剤である。活物質及びバインダに加えて、電極は、電流コレクターと活性材料との間で電子の高速輸送を可能にすることを目的とする電子伝導材料を含む。熱処理後、PANは電子伝導性になり、バインダと導電剤の両方として使用されるかもしれない。他の例示的な導電剤は、アセチレンブラック(AB)及び「Super-P」(別のタイプのカーボンブラック)及びSFG-6(グラファイト)を含む。
【0050】
図17は、ナノシリコン402、第2の電極404、並びに第1の電極402及び第2の電極404に接触する室温イオン性液体電解質406を含む第1の電極を含む装置400のブロック図を示す。室温イオン性液体電解質406は、特定の材料に限定されない。イオン性液体電解質は、室温イオン性液体(RTIL)に基づく電解質材料の一種である。室温イオン性液体電解質は、RTIL及び塩を含む。イオン性液体電解質406は、有機溶媒系電解質ではない。いくつかの実施形態では、室温イオン性液体電解質406は、ピロリジニウム、1-エチル1-3-メチルイミダゾリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びビス(フルオロスルホニル)イミドからなる群から選択される種を含む。いくつかの実施形態では、室温イオン性液体電解質406はリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドを含む。いくつかの実施形態では、室温イオン性液体電解質406は、イオンの分子量に基づいて58.4重量%のRTILを有する。次に、塩は、このRTILに1.2M(又は1.2mol/L、187.09g/molの重量のLiFSI塩...電解質中に224.508g/Lの塩が存在する)の濃度で加える。シリコン402を含む第1の電極は、様々な材料から形成されることができる。いくつかの実施形態では、ナノシリコン402を含む第1の電極は、環化ポリアクリロニトリルシリコンのナノコンポジットを含む。いくつかの実施形態では、第1の電極はnSi-cPANを含み、電解質材料、より具体的には室温イオン性液体電解質406は、PYR13FSI(1.2M LiFSI)電解質を含む。いくつかの実施形態では、ナノシリコン404を含む電極402は、30重量%のPAN、70重量%のシリコンの重量比を有する。ナノシリコン402を含む第1の電極は、特定の構造又は厚さに限定されない。いくつかの実施形態では、ナノシリコン402を含む第1の電極はバルク電極を含む。バルク電極の厚さは、薄膜電極の厚さを超える。いくつかの実施形態では、バルク電極は、約10マイクロメートルと約50マイクロメートルとの間の厚さ408を有する。動作中、装置400は、バルク電極を含むいくつかの実施形態では、約5000サイクルにわたって約99.994%を超える半電池のクーロン効率を維持する。いくつかの実施形態では、ナノシリコン406を含む第1の電極は、実質的に機械的に安定な固体電解質中間膜を含む。実質的に機械的に安定な固体電解質中間膜は、数千回の充放電サイクルにわたって実質的に一定の導電率を示す。
【0051】
図18は、電解質を含む電池を充放電する工程(ブロック502)と、フッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む固体電解質中間膜を電極上に形成する工程(ブロック504)とを含む方法を示すフローチャート500を示す。
【0052】
図19は、ポリアクリロニトリルでコーティングされたナノシリコンを含む電極を有する電池を充放電する工程(ブロック602)と、フッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む固体電解質中間膜を電極上に形成する工程(ブロック604)と、ポリアクリロニトリルでコーティングされたナノシリコンを、フッ素、酸素、及び硫黄でコンフォーマルにカバーする工程(ブロック606)と、含む方法600のフローチャートを示す。例えば、ポリアクリロニトリルのコーティング又はカバーリングなどのコンフォーマルなコーティング又はカバーリングでは、ポリアクリロニトリルは、ナノシリコン又はシリコン粒子などのすべての活物質を、実質的に均等かつ実質的に均一に約5ナノメートルの厚さまでコーティングし、又はカバーする。
【0053】
図20は、ナノシリコンを含む電極を有するセルを充放電する工程(ブロック702)、電極に実質的に機械的に安定した固体電解質中間を形成する工程(ブロック704)を含む方法700の流れ図を示す。いくつかの実施形態では、ナノシリコンを含む電極を含むセルの充放電は、少なくとも約5000サイクルにわたってセルを充放電することを含む。いくつかの実施形態では、方法700は、少なくとも約5000サイクルにわたり約99.994%を超える半電池のクーロン効率を維持することをさらに含む。
【0054】
図21は、ナノシコン806を含む第1の電極804、第2の電極808、及び第1の電極804と第2の電極808に接触する室温イオン性液体電解質810を含む複数の電気的に結合されたセル802と、第1の電極804上に形成された膜812と、フッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む膜812と、複数の電気的に結合されたセル802に電気的に結合された電子装置814とを含むシステム800のブロック図を示す。システム800は、特定の電子装置814に関連した使用に限定されない。システム800に関連して使用するのに適した例示的な電子装置814は、プロセッサ816、モータ818、タービン820、太陽電池822、及び輸送装置824を含む。いくつかの実施形態では、輸送装置824は、トラック826を含む。
【0055】
装置及び方法は、いくつかの実施形態に関して記載されているが、当業者であれば、装置及び方法は記載された実施形態に限定されず、添付されたクレームの主旨及び範囲内の修正及び変更を用いて実施される得ることを認識するであろう。したがって、この説明は、限定するのではなく例示的なものとみなされるべきである。
〔付記1〕
活物質を含むアノードであって、前記活物質はナノシリコン粒子を含み、前記ナノシリコン粒子は環化ポリアクリロニトリルでコーティングされているアノードと、
室温イオン性液体電解質及び塩を含むイオン性液体電解質と、
前記アノードの全ての露出した表面に形成された膜であって、当該膜はフッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む膜と、
カソードと、
を備えた電気エネルギー貯蔵装置。
〔付記2〕
前記室温イオン性液体電解質は、ピロリジニウム、1-エチル-3-メチル-イミダゾリウム、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、及びビス(フルオロスルホニル)イミドからなる群から選択される、付記1に記載の装置。
〔付記3〕
前記イオン性液体電解質の前記塩が、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド塩(LiFSI)を含む、付記1に記載の装置。
〔付記4〕
前記イオン性液体電解質は、PYR13FSIを含む、付記1から3のいずれか一項に記載の装置。
〔付記5〕
前記アノードは、バルク型複合アノードを含む、付記1から4のいずれか一項に記載の装置。
〔付記6〕
前記バルク型複合アノードは、約5マイクロメートルより大きい厚さを有する、付記5に記載の装置。
〔付記7〕
電池を充放電する工程であって、前記電池は、
活物質を含むアノードであって、前記活物質はナノシリコン粒子を含み、前記ナノシリコン粒子は環化ポリアクリロニトリルでコーティングされているアノードと、
室温イオン性液体電解質及び塩を含むイオン性液体電解質と、
カソードと、を備える、工程と、
前記アノードの全ての露出した表面にフッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む固体電解質中間膜を形成する工程と、
を含む方法。
図1
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7-1】
図7-2】
図8-1】
図8-2】
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
【手続補正書】
【提出日】2022-11-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極であって、
複数のナノシリコン粒子を含む活物質と、
前記活物質を結合させる環化ポリアクリロニトリルであって、粒子複数のナノシリコン粒子をコートする環化ポリアクリロニトリルと、
を備える、第1の電極と、
前記第1の電極上に形成された固体電解質中間膜であって、フッ素、酸素、硫黄、炭素、及びリチウムを含む固体電解質中間膜と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを接触させるための室温イオン性液体電解質と、
を備える電気エネルギー貯蔵装置。
【請求項2】
前記室温イオン性液体電解質は、PYR 13 FSIを備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の電極は、約5マイクロメートルより大きい厚さを有する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の電極は、70wt%のナノシリコン粒子と、30wt%のポリアクリロニトリルポリマーとを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の電極は、10~50μmの範囲の厚さを有する、請求項1に記載の装置。