(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180720
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】造花の製作方法
(51)【国際特許分類】
A41G 1/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A41G1/00 W
A41G1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094257
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】井手 勇人
(72)【発明者】
【氏名】池之上 拓也
(57)【要約】
【課題】実際の生花に近い印象が得られる造花を簡便に製作する造花の製作方法を提供する。
【解決手段】木材を鉋掛けして削り花11を作成する削り花作成工程と、削り花を棒状部材2に巻き回し、削り花を花びら10に見立てて花部3を形成する花部形成工程と、棒状部材にテープ12を巻いて額部4を形成する額部形成工程と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材を鉋掛けして削り花を作成する削り花作成工程と、
前記削り花を棒状部材に巻き回し、前記削り花を花びらに見立てて花部を形成する花部形成工程と、
前記棒状部材にテープを巻いて額部を形成する額部形成工程と、を備えていることを特徴とする造花の製作方法。
【請求項2】
前記花部形成工程において、
前記棒状部材に前記削り花を巻き付けて花びらを形成した後、次の花びらは前記削り花を裏返しに折り曲げ、前の花びらよりも花びらが大きくなるように順次巻き付けることでバラの造花を形成する請求項1に記載の造花の製作方法。
【請求項3】
白色の造花を製作する場合は、前記木材に檜を使用し、
薄桃色の造花を製作する場合は、前記木材に杉を使用する請求項1または請求項2に記載の造花の製作方法。
【請求項4】
前記花びらを柔らかい風合いに仕上げる場合は、前記削り花の厚さを0.05mm以上0.07mm以下で作成し、
前記花びらをしっかりした風合いに仕上げる場合は、前記削り花の厚さを0.08mm以上0.1mm以下で作成する請求項1または請求項2に記載の造花の製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造花の製作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙や布、プラスチックの成型品などを用いて製作された造花が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1などに記載されている従来の紙や布、プラスチックの成型品で製作された造花は花びらの素材が厚く、実際の花びらとは風合いが異なっていた。そのため、リアルさに欠ける造花となっていた。また、従来の造花は、風合いを実際の花に近づけるために花びらの素材に着色した上で、ろうやシリコン樹脂を塗布したりしており、手間がかかっていた。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、実際の生花に近い印象が得られる造花を簡便に製作する造花の製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る造花の製作方法は、木材を鉋掛けして削り花を作成する削り花作成工程と、前記削り花を棒状部材に巻き回し、前記削り花を花びらに見立てて花部を形成する花部形成工程と、前記棒状部材にテープを巻いて額部を形成する額部形成工程と、を備えていることを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、鉋掛けして形成された木材の削り花を花びらに見立てることで、実際の質感に近い花部を形成することができる。つまり、実際の生花に近い印象が得られる造花を容易に製作することができる。
【0008】
また、本発明に係る造花の製作方法は、前記花部形成工程において、前記棒状部材に前記削り花を巻き付けて花びらを形成した後、次の花びらは前記削り花を裏返しに折り曲げ、前の花びらよりも花びらが大きくなるように順次巻き付けることでバラの造花を形成してもよい。
【0009】
この発明によれば、削り花を順次折り曲げながら、かつ、徐々に花びらが大きくなるように巻き付けていくことで、実際の生花に近い印象が得られるバラの造花を形成することができる。
【0010】
また、本発明に係る造花の製作方法は、白色の造花を製作する場合は、前記木材に檜を使用し、薄桃色の造花を製作する場合は、前記木材に杉を使用してもよい。
【0011】
この発明によれば、造花の色合いを着色料ではなく木材の色味をそのまま利用して製作することで、自然な風合いの造花を製作することができる。
【0012】
また、本発明に係る造花の製作方法は、前記花びらを柔らかい風合いに仕上げる場合は、前記削り花の厚さを0.05mm以上0.07mm以下で作成し、前記花びらをしっかりした風合いに仕上げる場合は、前記削り花の厚さを0.08mm以上0.1mm以下で作成してもよい。
【0013】
この発明によれば、削り花の厚さを調整することで、異なる印象の造花を容易に製作することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、実際の生花に近い印象が得られる造花を簡便に製作する造花の製作方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態による造花の製作方法について、
図1~
図4に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の造花1は、芯棒2と、芯棒2の一端に設けられた花部3と、芯棒2に巻き回された額部4と、茎部5と、を備えている。
【0018】
芯棒2は、例えばアルミニウム製で直径2mmの細い針金状の棒状部材である。なお、芯棒2は、それ以外の素材や太さのものであってもよい。芯棒2の一端に花部3が設けられている。芯棒2は、額部4および茎部5の芯材として機能する。芯棒2は、湾曲させたり、折り曲げたりすることができることが望ましい。
【0019】
花部3は、白色のバラの花を模して形成されている。花部3は、木材の削り花11で形成されている。削り花11は、檜の角材から削り出されたものを用いている。花部3は、芯棒2に削り花11を巻き回しながら花びら10を内周側から外周側に向かって複数形成することで構成されている。
【0020】
額部4は、緑色の造花用紙テープ12が用いられている。額部4は、造花用紙テープ12を芯棒2に巻き回して形成されている。額部4は、花部3の下端に連なるように形成されている。額部4は、花部3から離れるにしたがって直径が細くなるように形成されている。
【0021】
茎部5は、額部4の下方に連続して形成されている。茎部5は、額部4と同じ緑色の造花用紙テープ12が用いられている。茎部5は、額部4よりも細くなるように、芯棒2に一重巻きまたは二重巻き程度巻き回されて形成されている。
【0022】
造花1の製作方法について説明する。
製作する花の大きさ・色・花びらの風合いを考慮して、檜や杉の30mm~60mmの角材を選定する。本実施形態では、白色のバラの造花1を製作する。角材は、檜の40mmの角材(40mm×40mm)を選定する。選定した角材から鉋を用いて、削り花11を作る。本実施形態では、厚さ0.05mm以上0.07mm以下で、長さ2mの削り花を2枚形成する(削り花作成工程)。
【0023】
次に、
図2、
図3に示すように、削り花11を芯棒2にスティック糊などを使用して芯棒2の一端が隠れるように巻いていく。バラの花の形状を考慮して、1周あたり3~5箇所で削り花11を裏側に折り返しながら体裁を整えて貼り付けることで花びら10を順次形成していく。例えば、
図3の点Pにおいて、削り花11を折り返している。最初は花びら10が小さいので5mm程度で折り曲げ、外側になるにしたがって花びら10が大きくなるように折り曲げる間隔を徐々に広げていく。花びら10の出入りについても、平面視の中心から外側に行くにしたがって、花びら10が後退するように、かつ、内側の花びら10よりも少しずつ下方に下げながら芯棒2に削り花11を巻き回していく。バラの花の形状に合わせて出入りを調整して削り花11を巻き付けるとともに、折り返しの間隔も少しずつ広げながら、外側の花びら10が大きい様を再現するように削り花11をバランスよく巻き付ける。花部3が所望の大きさになったところで削り花11の巻き付けを終了する(花部形成工程)。
【0024】
図4に示すように、花部3の下方の芯棒2に緑色の造花用紙テープ12を巻き付けて、額部4を形成する。額部4は、花部3の下端に重なるように造花用紙テープ12を巻き付け、花部3から離れるにしたがって徐々に細くなるように芯棒2に巻き付ける。つまり、額部4は、花部3に近いほど造花用紙テープ12の巻き付け回数を多くし、花部3から離れるにしたがって造花用紙テープ12の巻き付け回数を少なくしていく。額部4が形成できたら、連続して茎部5を形成する。茎部5は、額部4と同じ造花用紙テープ12を芯棒2に巻き付けることで形成する。茎部5は、略一定の太さになるように芯棒2に造花用紙テープ12を巻き付ける。茎部5は、芯棒2の他端まで造花用紙テープ12を巻き付けることで形成する。額部4と茎部5とを形成してバラの造花1の製作が完了する(額部形成工程)。
【0025】
バラの造花1を製作するにあたって、素材選定の考え方について説明する。
花部3の大きさ(平面視での花部3の直径)について、例えば、大型(直径100mm程度)のバラの花部3を製作する際は、60mm×60mmの角材を用いて削り花11を作成する。中型(直径70mm程度)のバラの花部3を製作する際は、40mm×40mmの角材を用いて削り花11を作成する。小型(直径50mm程度)のバラの花部3を製作する際は、30mm×30mmの角材を用いて削り花11を作成する。削り花11の長さも適宜調整する。このように、角材の大きさを使い分けることで、花部3の大きさを容易に調整することができる。
【0026】
バラの花びら10の色合いについて、白色の花びら10を再現したい場合は、檜の角材を用いて削り花11を作成する。薄桃色の花びら10を再現したい場合は、杉の赤身の角材を用いて削り花11を作成する。また、白色と薄桃色の削り花11を両方用いることでグラデーションを実現することも可能である。このように、使用する木材の種類を使い分けることで、花びら10の色合いを容易に調整することができる。
【0027】
バラの花の風合いについて、柔らかい風合いの花を再現したい場合は、削り花11の厚さを0.05mm以上0.07mm以下に設定して作成する。しっかりした風合いの花を再現したい場合は、削り花11の厚さを0.08mm以上0.1mm以下に設定して作成する。このように、削り花11の厚さを調整するだけで、花の風合いを容易に調整することができる。
【0028】
上述の方法にて製作された造花1は、従来からある紙や布で製作された造花よりも素材を薄く(0.05mm以上0.1mm以下程度)にすることで、本物の花に印象を近づけることができる。造花1の製作は簡易な方法であるため、高度な木工技術は必要なく、木工教室などでも製作が可能である。
【0029】
また、本実施形態の造花1は、削り花11を用いている。つまり、素材が自然由来であり、素材(檜や杉)の持つ効果(抗菌・防虫・消臭・リラックス)も期待できる。
【0030】
例えば、檜には、ヒノキチオール、ヒノキオール、αカジノール、αピネンといった成分が含まれている。αカジノール、ヒノキチオール、ヒノキオールには、抗菌効果がある。αカジノールには、防虫効果がある。αピネン(香り)には、消臭効果および鎮静(リラックス)効果がある。
【0031】
また、杉には、セドロール、セスキテルペン、フェノール性成分といった成分が含まれている。セドロールには、誘眠効果および殺虫・防虫効果がある。セスキテルペンには、鎮静(リラックス)効果がある。フェノール性成分には、抗腫瘍活性効果がある。
【0032】
また、本実施形態の造花1は、花部3が木質であるため、デスク廻りやインテリアとして部屋になじむフォルムを備えた製品を実現することができる。
【0033】
本実施形態によれば、木材を鉋掛けして削り花11を作成する削り花作成工程と、削り花11を芯棒2に巻き回し、削り花11を花びら10に見立てて花部3を形成する花部形成工程と、芯棒2に造花用紙テープ12を巻いて額部4を形成する額部形成工程と、を備え、削り花11は、0.05mm以上0.1mm以下の厚さで形成した。つまり、木材の削り花11を花びら10に見立て、当該削り花11の厚さを0.05mm以上0.1mm以下とすることで、実際の質感に近い花びら10および花部3を形成することができる。つまり、実際の生花に近い印象が得られる造花1を容易に製作することができる。なお、削り花11の厚さは、実際の質感に近い印象を与えるものであれば0.1mm以上の厚さで形成してもよい。
【0034】
また、花部形成工程において、芯棒2に削り花11を巻き付けて花びら10を形成した後、次の花びら10は削り花11を裏返しに折り曲げ、前の花びら10よりも大きくなるように順次巻き付けることでバラの造花1を形成した。つまり、削り花11を順次折り曲げながら、かつ、徐々に花びら10が大きくなるように巻き付けていくことで、実際の生花に近い印象が得られるバラの造花1を木材で形成することができる。
【0035】
また、白色の造花1を製作する場合は、木材に檜を使用し、薄桃色の造花1を製作する場合は、木材に杉を使用した。つまり、造花1の色合いを着色料ではなく木材の色味をそのまま利用して製作することで、自然な風合いの造花1を製作することができる。
【0036】
また、花びら10を柔らかい風合いに仕上げる場合は、削り花11の厚さを0.05mm以上0.07mm以下で作成し、花びら10をしっかりした風合いに仕上げる場合は、削り花11の厚さを0.08mm以上0.1mm以下で作成した。つまり、削り花11の厚さを調整することで、異なる印象の造花1を容易に製作することができる。
【0037】
以上、本発明に係る造花の製作方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0038】
例えば、本実施形態では、バラの造花1を製作したが、バラ以外の花(例えば、カーネーションやポピー)を製作することもできる。
【0039】
また、本実施形態では、額部4および茎部5に造花用紙テープ12を用いた場合の説明をしたが、それ以外の材料で製作してもよい。また、本実施形態では、額部4に使用する造花用紙テープ12と茎部5に使用する造花用紙テープ12とが同じである場合で説明したが、異なる色味・素材のものを用いてもよい。
【0040】
また、上記実施形態以外にも、木材の種類・角材の大きさ・削り花の厚さを適宜調整することで、様々な造花1を製作することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…造花
2…芯棒(棒状部材)
3…花部
4…額部
10…花びら
11…削り花
12…造花用紙テープ(テープ)