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特開2023-180739はんだ付け装置およびはんだ付け方法
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  • 特開-はんだ付け装置およびはんだ付け方法 図1
  • 特開-はんだ付け装置およびはんだ付け方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180739
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】はんだ付け装置およびはんだ付け方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/34 20060101AFI20231214BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20231214BHJP
   B23K 1/008 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H05K3/34 507H
B23K1/00 A
B23K1/008 C
B23K1/00 330E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094284
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】江草 稔
(72)【発明者】
【氏名】中島 泰
(72)【発明者】
【氏名】滝下 裕基
(72)【発明者】
【氏名】浅地 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】勅使河原 一成
【テーマコード(参考)】
5E319
【Fターム(参考)】
5E319AA01
5E319BB05
5E319CC36
5E319CD52
5E319GG03
(57)【要約】
【課題】ワークの廃棄ロスを低減可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】はんだ付け装置は、はんだペーストが塗布されたワーク2をはんだペーストの融点以下に加熱する予熱部としての第1予熱部11および第2予熱部12と、ワーク2をはんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、ワーク2に塗布されたはんだペーストを溶融させる溶融部14と、はんだペーストの溶融中にはんだペーストの状態を検査し、異常がないかどうかを判定する検査部15と、検査部15において異常がないと判定された場合、ワーク2をはんだペーストの融点以下まで冷却することで、ワーク2に対するはんだ付けを行う冷却部16とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだペーストが塗布されたワークを前記はんだペーストの融点以下に加熱する予熱部と、
前記ワークを前記はんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、前記ワークに塗布された前記はんだペーストを溶融させる溶融部と、
前記はんだペーストの溶融中に前記はんだペーストの状態を検査し、異常がないかどうかを判定する検査部と、
前記検査部において異常がないと判定された場合、前記ワークを前記はんだペーストの融点以下まで冷却することで、前記ワークに対するはんだ付けを行う冷却部と、
を備えた、はんだ付け装置。
【請求項2】
前記検査部において、X線を用いて前記はんだペーストの状態を検査する、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記検査部において異常があると判定された場合、前記検査部内で減圧と複圧とを行う、請求項1または請求項2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記はんだペーストはフラックスを含んでおらず、
前記予熱部において前記ワークを前記はんだペーストの融点以下に加熱した後、還元ガスを導入し前記はんだペーストの表面に形成された酸化膜を除去する酸化膜除去部をさらに備えた、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
前記ワークは、基板と、前記基板上に前記はんだペーストを介して配置された電子部品とを含む、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項6】
(a)はんだペーストが塗布されたワークを前記はんだペーストの融点以下に加熱する工程と、
(b)前記ワークを前記はんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、前記ワークに塗布された前記はんだペーストを溶融させる工程と、
(c)前記はんだペーストの溶融中に前記はんだペーストの状態を検査し、異常がないかどうかを判定する工程と、
(d)前記工程(c)において異常がないと判定された場合、前記ワークを前記はんだペーストの融点以下まで冷却することで、前記ワークに対するはんだ付けを行う工程と、
を備えた、はんだ付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、はんだ付け装置およびはんだ付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なはんだ付け方法には、液状のフラックスを用いて、はんだおよび電極の酸化物を除去して接合することが大半である。しかしながらフラックスは還元性の作用があるため、フラックスが接合部近傍に残存すると、酸化物を還元して金属イオンが生成される状態が維持される。電力用半導体装置では、電気的な絶縁を必要な箇所において確保する必要がある。電力用半導体装置は、電圧、電流、および交流直流の変換を実施する機能を有するが、これにはパルス状の電圧波形を発生させて変換する、いわゆるパワーエレクトロニクス技術を応用している。そのときに、電力用半導体装置内の電極間には電力系統から得たり、内部で変換して得た電位差、例えば600Vまたは1200Vなどの定格耐電圧の指標を満足する絶縁性の維持が必要となる。また対地でAC2500Vを1分間与えても絶縁破壊しない特性が求められている。
【0003】
ところで、はんだ付けした電極の周囲の絶縁領域にフラックスが付着したまま電圧が印加されると、イオン化した金属によりマイグレーションが起きて電流のリークが発生することになり、その回避のためにフラックスの除去が行われる。しかしながらフラックス除去のための洗浄工程は長い時間が必要であったり、洗浄液が産業廃棄物になるという課題がある。
【0004】
これに対して、フラックス洗浄を必要としないはんだ付け方法がある。例えば特許文献1には、還元性ガスである水素を含有した窒素水素混合ガスを用いてはんだ付けを行う前に電極およびはんだの酸化物を除去する方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ギ酸などのカルボン酸を含有させた混合ガスを導入してはんだ付け前に電極およびはんだの酸化物を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-157858号公報
【特許文献2】国際公開第2018/096917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、ワークに対するはんだ付けを行った後に検査を行うため、ワークの接合部に生じたボイドが基準を超える大きさであればワークを廃棄する必要があり、ワークの廃棄ロスが発生していた。
【0008】
そこで、本開示は、ワークの廃棄ロスを低減可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るはんだ付け装置は、はんだペーストが塗布されたワークを前記はんだペーストの融点以下に加熱する予熱部と、前記ワークを前記はんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、前記ワークに塗布された前記はんだペーストを溶融させる溶融部と、前記はんだペーストの溶融中に前記はんだペーストの状態を検査し、異常がないかどうかを判定する検査部と、前記検査部において異常がないと判定された場合、前記ワークを前記はんだペーストの融点以下まで冷却することで、前記ワークに対するはんだ付けを行う冷却部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、はんだ付け装置は、ワークに塗布されたはんだペーストの溶融中にはんだペーストの状態を検査した後、ワークに対するはんだ付けを行うため、はんだ付けを行う前にはんだペースト中に発生するボイドを除去することで、ワークの廃棄ロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係るはんだ付け装置の横断面図と温度プロファイルとを示す図である。
図2】実施の形態2に係るはんだ付け装置の横断面図と温度プロファイルとを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態1>
実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。図1は、実施の形態1に係るはんだ付け装置の横断面図と温度プロファイルとを示す図である。
【0013】
図1に示すように、はんだ付け装置はトンネル型のリフロー炉4と、リフロー炉4内における各処理を制御する制御部50とを備えている。図1ではトンネル型のリフロー炉4を示すが、同様の作用を実現できる設備であればバッチ式または固定式のリフロー炉でも構わない。
【0014】
リフロー炉4は、5つの隔壁4aにより6つの領域に区切られている。6つの領域は、第1予熱部11と、第2予熱部12と、温度均一化部13と、溶融部14と、検査部15と、冷却部16である。各隔壁4aには、ワーク2が通過可能な開口4bが設けられている。
【0015】
リフロー炉4内では、ワーク2はパレット1に載せて搬送され、基本的に窒素雰囲気中にて各処理が行われる。リフロー炉4内には、ベルト式の搬送部3が設けられている。制御部50は搬送部3を駆動し、パレット1に載置されたワーク2をステップ状、すなわち一回当たり決められた距離だけ移動させて各処理を行わせる。具体的には、制御部50は、第1予熱部11、第2予熱部12、温度均一化部13、溶融部14、検査部15、冷却部16の順にワーク2を移動させて各処理を行わせる。複数のワーク2は順次投入され、各処理を順番に経てワーク2に対するはんだ付けが行われる。
【0016】
ここで、ワーク2について説明する。ワーク2には、リフロー炉4に投入される前にはんだペースト(図示しない)が塗布されている。ワーク2は接合対象物と被接合物からなる。ワーク2が電力用半導体装置である場合を例に説明すると、接合対象物はチップなどの電子部品(図示しない)であり、被接合物はパターンが形成された基板(図示しない)である。そのため、リフロー炉4に投入されるワーク2は、基板上にはんだペーストを介して電子部品が配置されたものである。また、実施の形態1では、フラックスを含んでいるはんだペーストが使用される。
【0017】
リフロー炉4内にはワーク2を処理するための領域として、少なくとも3つ以上の領域が必要である。具体的には、予熱、溶融、および冷却を行うための領域が必要である。図1では、リフロー炉4内に6つの領域を設けた場合について示している。検査部15を除く各領域には、複数の熱源5とファン6が搬送部3を挟んで上下に1セットずつ設けられている。制御部50は、各領域に設けられた複数の熱源5とファン6を制御し、各領域内が所定の温度となるように熱風を循環させる。制御部50は、例えばCPU(中央処理装置)またはマイクロコントローラである。図1の下部には、ワーク2の温度変化の例を示す温度プロファイルが図示されている。
【0018】
第1予熱部11および第2予熱部12は、はんだペーストが塗布されたワーク2をはんだペーストの融点以下に加熱することで予熱を行う。温度均一化部13は、ワーク2全体の温度を均一化させて、ワーク2の品質を高めている。溶融部14は、ワーク2をはんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、ワーク2に塗布されたはんだペーストを溶融させる。
【0019】
検査部15は、チャンバー7a,7bと、チャンバー駆動部7cと、X線源8と、X線カメラ9と、ガス導入部10aと、減圧部10bとを備えている。チャンバー7a,7bは、検査部15内を気密するために搬送部3を挟んで上下に設けられている。チャンバー駆動部7cは、駆動モーター(図示しない)を含み、チャンバー7aを上下方向に移動させることで、チャンバー7a,7bを開状態と閉状態とに切り替える。チャンバー7a,7bが閉状態のとき、チャンバー7a,7bによりパレット1を挟み込んで気密を得ている。例えばゴム状のシール部をチャンバー7a,7bの合わせ面に設けておくことで、これらのシール部を密着させて気密を得ている。
【0020】
X線源8はチャンバー7aの上側に設けられ、X線カメラ9はチャンバー7bの下側に設けられている。制御部50は、X線源8とX線カメラ9に、溶融部14から検査部15に搬送されたワーク2に対してチャンバー7a,7bを通して透過X線画像撮影(X線検査)を行わせる。検査部15に搬送されたワーク2は、はんだペーストが冷却されておらず溶融状態である。制御部50は、はんだペーストの溶融中にはんだペーストの状態についてX線源8とX線カメラ9にX線検査を行わせて、検査結果に基づいて異常がないかどうかを判定する。
【0021】
減圧部10bは、真空ポンプ(図示しない)に接続されている排気管である。ガス導入部10aは、ガス供給源(図示しない)と接続されている供給管である。減圧部10bとガス導入部10aには共に、例えば開閉弁(図示しない)が設けられており、制御部50が開閉弁を開けることで、チャンバー7a,7b内からガスを排出させて、チャンバー7a,7b内にガスを導入させる。
【0022】
制御部50は、はんだペーストの状態に異常があると判定した場合、減圧部10bに、チャンバー7a,7b内からガスを排出させてチャンバー7a,7b内を減圧する。その後、制御部50は、ガス導入部10aに、ガスをチャンバー7a,7b内に導入させてチャンバー7a,7b内を複圧する。
【0023】
冷却部16は、検査部15において異常がないと判定された場合、ワーク2をはんだペーストの融点以下まで冷却することで、ワーク2に対するはんだ付けを行う。その後、ワーク2は排出される。図示しない洗浄設備において、はんだ付け後にはんだペーストに含まれているフラックスを洗浄して除去することで、良好な品質の製品を得ることができる。
【0024】
次に、検査部15での処理について詳細に説明する。検査部15では、制御部50は、ワーク2に塗布されたはんだペーストにボイドが発生していないかどうかを検査し、ボイドが発生している場合はボイドの面積を算出する。制御部50は、ボイドの面積が規定の閾値面積以上であれば、チャンバー7a,7b内の気体の圧力を例えば1/100気圧に下げると、ボイドの体積は100倍になり、はんだペースト外にボイドは排出される。
【0025】
その後、制御部50は、ガス導入部10aからガスを導入させてチャンバー7a,7b内を大気圧に複圧させる。好ましくは閾値面積以上のボイドがなくなるまで減圧と複圧を繰り返すことで不良のない状態でのはんだ付けを完了することが可能となる。
【0026】
なお、実施の形態1では減圧複圧を繰り返す例を示したが、はんだ溶融時間が長いと、電極の材料がはんだ中に溶解して品質を損なう可能性がある。そのため、所定の溶融時間になる前に減圧複圧の繰り返しを止めて、冷却部16に搬送してもよい。
【0027】
また、好ましくは、鉛直方向から視てワーク2と重なるチャンバー7a,7bの部位にAlの原子量の小さい軽金属を採用すると、X線検査のコントラスト比を大きくとることができるため、検査の精度が増す。
【0028】
また、チャンバー7a,7bとパレット1間には空気に対するシール機能が必要である。例えば耐熱パッキンがそのような用途には適する。リング状の耐熱パッキンをチャンバー7a,7bとパレット1の接触箇所に設けることで効率的に気密シールを形成することができる。このとき、チャンバー7a,7bとパレット1間のシール面に耐熱パッキンを設けることで、パレット1は複数用いるのに対してチャンバー7a,7bは一式でよいため経済的である。一方、各パレット1に耐熱パッキンを設けた場合は、メンテナンス性が高まる。耐熱パッキンをどちらに設けるかについては、ユーザの使用頻度によって使い分けることが肝要である。
【0029】
また、リフロー炉4に隔壁4aを設けたことで各領域における温度を精度良く制御することができるため、はんだ付け装置を小型化でき経済的である。隔壁4aを可動としシャッター動作が可能な駆動機構を設けることで更に温度を精度良く制御することが可能となる。
【0030】
以上のように、実施の形態1に係るはんだ付け装置は、はんだペーストが塗布されたワーク2をはんだペーストの融点以下に加熱する予熱部としての第1予熱部11および第2予熱部12と、ワーク2をはんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、ワーク2に塗布されたはんだペーストを溶融させる溶融部14と、はんだペーストの溶融中にはんだペーストの状態を検査し、異常がないかどうかを判定する検査部15と、検査部15において異常がないと判定された場合、ワーク2をはんだペーストの融点以下まで冷却することで、ワーク2に対するはんだ付けを行う冷却部16とを備えている。具体的には、検査部15において、X線を用いてはんだペーストの状態を検査している。
【0031】
したがって、はんだ付け装置は、ワーク2に塗布されたはんだペーストの溶融中にはんだペーストの状態を検査した後、ワーク2に対するはんだ付けを行うため、はんだ付けを行う前にはんだペースト中に発生するボイドを除去することで、ワーク2の廃棄ロスを低減することができる。
【0032】
また、検査部15において異常があると判定された場合、検査部15内で減圧と複圧とを行っている。従来、はんだペースト中にボイドが発生したワーク2を再加熱してはんだペーストを溶融しワーク2を分離した後、再度ワーク2に対するはんだ付けを行う、いわゆる手直し工程が必要であった。しかし、実施の形態1では、はんだペーストの溶融中に減圧と複圧とを実施してはんだペースト中のボイドを除去するため、ワーク2を再加熱する必要がなくなり、ボイドを経済的に除去することができる。また、はんだ付け装置の占有時間については、手直し工程を実施していた従来よりも低減できる。
【0033】
また、ワーク2は、基板と、基板上にはんだペーストを介して配置された電子部品とを含んでいる。このようなワーク2は、はんだ付け面積が大きくなることから、熱容量が大きく熱が伝わりにくく、はんだペースト中にボイドが発生しやすいが、実施の形態1に係るはんだ付け装置を用いることではんだペースト中に発生するボイドを除去し、接合面積とボイドの占有面積との割合であるボイド率を低減することができる。これにより、ワーク2の接合品質を向上させることができる。
【0034】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2に係るはんだ付け装置について説明する。図2は、実施の形態2に係るはんだ付け装置の横断面図と温度プロファイルとを示す図である。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0035】
実施の形態1では、ワーク2に対するはんだ付けを行うためにフラックスを含んでいるはんだペーストが用いられていたが、実施の形態2では、フラックスを含まないはんだペーストが用いられる。
【0036】
図2に示すように、リフロー炉4は、温度均一化部13に代えて酸化膜除去部23を備えている。
【0037】
酸化膜除去部23は、チャンバー21a,21bと、チャンバー駆動部21cと、還元ガス供給部22とを備えている。チャンバー21a,21bは、酸化膜除去部23内を気密するために搬送部3を挟んで上下に設けられている。チャンバー駆動部21cは、駆動モーター(図示しない)を含み、チャンバー21aを上下方向に移動させることで、チャンバー21a,21bを開状態と閉状態とに切り替える。チャンバー21a,21bが閉状態のとき、チャンバー21a,21bによりパレット1を挟み込んで気密を得ている。例えばゴム状のシール部をチャンバー21a,21bの合わせ面に設けておくことで、これらのシール部を密着させて気密を得ている。
【0038】
還元ガス供給部22は、還元ガス供給源(図示しない)と接続されている供給管である。還元ガス供給部22には、例えば開閉弁(図示しない)が設けられており、制御部50が開閉弁を開けることで、チャンバー21a,21b内に還元性のガスを導入させる。
【0039】
制御部50は、第2予熱部12において予熱が完了したワーク2を酸化膜除去部23に搬送する。制御部50は、チャンバー駆動部21cを駆動させてチャンバー21a,21bによりワーク2を挟み込み、還元ガス供給部22から還元性のガスをチャンバー21a,21b内に導入させる。還元性のガスとして、例えば水素ガス、水素と窒素の混合ガス、またはギ酸を含有させた窒素ガスなどが好適である。予熱温度にて予備的にワーク2の表面に形成された酸化膜を除去することで、はんだペーストの濡れ性を改善し、ボイドおよびはんだの不濡れなどの不良の少ないはんだ付けが可能となる。
【0040】
次に、溶融部14は、ワーク2をはんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、ワーク2に塗布されたはんだペーストを溶融させる。次に、検査部15は、はんだペーストの溶融中にはんだペーストの状態を検査し、異常がないかどうかを判定する。検査部15において異常があると判定された場合、検査部15内で減圧と複圧とを行うことによって、はんだペースト中に発生するボイドを除去している。
【0041】
実施の形態2では、還元ガス供給部22においてギ酸を作用させる例を示している。ギ酸は150℃程度から還元作用が著しく強くなるが、180℃以上でギ酸の分解が始まる。ギ酸による還元においては一旦酸化膜があった箇所にギ酸塩が形成され、その後ギ酸塩は熱分解されて酸化されていない金属とガスになる。すなわち、ギ酸入り窒素ガスを作用させた後に、180℃以上でギ酸塩およびギ酸を分解し、ギ酸由来で発生するガスによって、ボイドが更に増える不具合を解消することが可能となる。
【0042】
以上のように、実施の形態2に係るはんだ付け装置では、はんだペーストはフラックスを含んでおらず、はんだ付け装置は、第1予熱部11および第2予熱部12においてワーク2をはんだペーストの融点以下に加熱した後、還元ガスを導入しはんだペーストの表面に形成された酸化膜を除去する酸化膜除去部23をさらに備えている。これにより、はんだペーストの濡れ性を改善し、ボイドおよびはんだの不濡れなどの不良の少ないはんだ付けが可能となる。
【0043】
また、実施の形態2では、フラックスを含まないはんだペーストが用いられるため、フラックスを洗浄する工程が不要となると共に、フラックスに起因するボイドが発生しないという効果が得られる。
【0044】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0045】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0046】
(付記1)
はんだペーストが塗布されたワークを前記はんだペーストの融点以下に加熱する予熱部と、
前記ワークを前記はんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、前記ワークに塗布された前記はんだペーストを溶融させる溶融部と、
前記はんだペーストの溶融中に前記はんだペーストの状態を検査し、異常がないかどうかを判定する検査部と、
前記検査部において異常がないと判定された場合、前記ワークを前記はんだペーストの融点以下まで冷却することで、前記ワークに対するはんだ付けを行う冷却部と、
を備えた、はんだ付け装置。
【0047】
(付記2)
前記検査部において、X線を用いて前記はんだペーストの状態を検査する、付記1に記載のはんだ付け装置。
【0048】
(付記3)
前記検査部において異常があると判定された場合、前記検査部内で減圧と複圧とを行う、付記1または付記2に記載のはんだ付け装置。
【0049】
(付記4)
前記はんだペーストはフラックスを含んでおらず、
前記予熱部において前記ワークを前記はんだペーストの融点以下に加熱した後、還元ガスを導入し前記はんだペーストの表面に形成された酸化膜を除去する酸化膜除去部をさらに備えた、付記1に記載のはんだ付け装置。
【0050】
(付記5)
前記ワークは、基板と、前記基板上に前記はんだペーストを介して配置された電子部品とを含む、付記1に記載のはんだ付け装置。
【0051】
(付記6)
(a)はんだペーストが塗布されたワークを前記はんだペーストの融点以下に加熱する工程と、
(b)前記ワークを前記はんだペーストの融点よりも高い温度に加熱することで、前記ワークに塗布された前記はんだペーストを溶融させる工程と、
(c)前記はんだペーストの溶融中に前記はんだペーストの状態を検査し、異常がないかどうかを判定する工程と、
(d)前記工程(c)において異常がないと判定された場合、前記ワークを前記はんだペーストの融点以下まで冷却することで、前記ワークに対するはんだ付けを行う工程と、
を備えた、はんだ付け方法。
【符号の説明】
【0052】
2 ワーク、11 第1予熱部、12 第2予熱部、14 溶融部、15 検査部、16 冷却部、23 酸化膜除去部。
図1
図2