(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180741
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】固定金具
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
E04B2/74 541J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094288
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】591287819
【氏名又は名称】株式会社コクサイ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】村松 秀郁
(72)【発明者】
【氏名】村松 秀樹
(57)【要約】
【課題】隣り合う胴縁の間への配線用ボックスの取り付け作業の効率化を図ることができる固定金具を提供する。
【解決手段】並列する複数の胴縁1、1のうち隣り合う胴縁1と、その隣り合う胴縁1、1の間に架け渡されるレール4とを固定する固定金具であって、レール4の長さ方向の端部が嵌る枠体11と、枠体11から胴縁1の長さ方向両方向へ延び出す固定片12とを有し、枠体11はレール4の前面4aを受ける前面板部13と、レール4の両側面4bのそれぞれを受ける一対の側面板部14、15と、レール4の長さ方向の端縁部に対向する底面板部16とを有し、前面板部13がレール4の長さ方向外向きに延び出す係止片部13aを有するものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列する複数の胴縁のうち隣り合う前記胴縁と、その隣り合う前記胴縁の間に架け渡されるレールとを固定する固定金具であって、
前記レールの長さ方向の端部が嵌る枠体と、
前記枠体から前記胴縁の長さ方向両方向へ延び出す固定片とを有し、
前記枠体は前記レールの前面を受ける前面板部と、前記レールの両側面のそれぞれを受ける一対の側面板部と、前記レールの後面を受ける後面板部と、前記レールの長さ方向の端縁部に対向する底面板部とを有し、
前記前面板部と前記固定片との少なくとも一方が前記レールの長さ方向外向きに延び出す係止片部を有し、前記係止片部が、前記前面板部と前記固定片との少なくとも一方の前端部に位置しているものであり、
一対の前記側面板部のうち、一方の側面板部が前記レールに対する第一固定孔を有し、他方の側面板部が前記レールに対する第二固定孔を有している固定金具。
【請求項2】
前記第一固定孔が前記レールの長さ方向に沿って延びる長孔状に形成され、
前記第一固定孔の前側内縁部が、前記レールの長さ方向内側に向かうにつれて前方へ傾斜する状態であり、
前記第一固定孔の後側内縁部が、前記レールの長さ方向内側に向かうにつれて後方へ傾斜する状態である請求項1に記載の固定金具。
【請求項3】
一対の前記側面板部が前記胴縁の長さ方向内向きに膨らむ押圧部を有し、
一対の前記側面板部のうち、一方の前記側面板部の押圧部に前記第一固定孔が位置しており、他方の前記側面板部の押圧部に前記第二固定孔が位置しており、
前記枠体が一方の前記側面板部の押圧部と他方の前記側面板部の押圧部とで前記レールを挟む状態となっている請求項1または2に記載の切断用位置決め具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、構造物の外壁の下地材となる胴縁の間に、鋼材または木材からなるレールを架け渡す状態で固定する固定金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の柱や間柱の間には、外壁の下地材となる胴縁が複数並んで架け渡されており、この胴縁に壁材が固定される。構造物においては、床面の付近にはコンセントが配置され、出入口の手元付近には照明用のスイッチ等が設置されることが多い。このコンセントや照明用のスイッチ等の配線器具を収納する配線用ボックスは、胴縁の間に設置される場合がある。
【0003】
例えば、
図9に示すように、柱や間柱(図示省略)の間に、複数の胴縁1、1が上下方向に並んで設けられ、その胴縁1、1の屋外側を向く側面1aには、複数の壁材Wが固定されている。上下方向に隣り合う胴縁1、1の屋内側を向く側面1bには、鋼材からなるレール4が上下方向に沿って固定されている。配線用ボックス5がレール4に対して、胴縁1、1の間となる位置に固定されている。胴縁1、1の側面1b間に掛け渡すようにレール4を固定する固定金具としては、種々提案されており、例えば、特許文献1に記載された技術を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般に、鋼材からなるレール4は規格長さを有しており、胴縁1、1の間隔に応じた長さに切断する必要がある。切断されたレール4の切断端部には、いわゆるバリが生じている。
図9に示すように、胴縁1、1の屋内側を向く側面1bの間に架け渡すように固定されるレール4はその切断端部が露出する状態となっている。このため、安全性の観点から、レール4の切断端部のバリ取りを行う必要がある。このバリ取りの作業時間が、レール4を胴縁1、1間へ固定する作業時間のうち、半分以上の時間を占めるという問題があった。
【0006】
さらに、レール4に固定されている配線用ボックス5は、胴縁1、1の側面1bに対して、レール4の前後方向の厚さ分だけ、屋内側に突き出す状態となっている。このため、レール4に配線用ボックス5を取り付ける際に、配線用ボックス5に接続されるケーブル5aを配線する際、ケーブル5aを内部に通した管材5bを下側の胴縁1の側面1bに向かって曲げる曲げ配管を別途行う必要がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、隣り合う胴縁の間への配線用ボックスの取り付け作業の効率化を図ることができる固定金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は、並列する複数の胴縁のうち隣り合う前記胴縁と、その隣り合う前記胴縁の間に架け渡されるレールとを固定する固定金具であって、前記レールの長さ方向の端部が嵌る枠体と、前記枠体から前記胴縁の長さ方向両方向へ延び出す固定片とを有し、前記枠体は前記レールの前面を受ける前面板部と、前記レールの両側面のそれぞれを受ける一対の側面板部と、前記レールの後面を受ける後面板部と、前記レールの長さ方向の端縁部に対向する底面板部とを有し、前記前面板部と前記固定片との少なくとも一方が前記レールの長さ方向外向きに延び出す係止片部を有し、前記係止片部が、前記前面板部と前記固定片との少なくとも一方の前端部に位置しているものであり、一対の前記側面板部のうち、一方の側面板部が前記レールに対する第一固定孔を有し、他方の側面板部が前記レールに対する第二固定孔を有している構成を採用することができる。
【0009】
なお、明細書中において、構造物の屋外から屋内に向かう側を「前、前側あるいは前方」と呼び、屋内から屋外へ向かう側を「後、後側あるいは後方」と呼ぶ。
【0010】
ここで、隣り合う胴縁の間隔よりも若干小さい長さに、規格長さを有する鋼材または木材を切断してレールを作製する。このレールの長さ方向の両端部、すなわち、レールの切断端部にはバリが生じている。
【0011】
上記構成では、レールの長さ方向両端部に枠体を嵌めると、レールの切断端部が枠体の底面板部で覆われる状態となる。また、レールの前面部、後面部および一対の側面部が、枠体の前面板部、後面板部および、一対の側面板部で囲われる状態となる。このレールを隣り合う胴縁の間に配置し、枠体の底面板部を隣り合う胴縁の対向面に対向する状態にする。この状態では、室内側からレールの切断端縁には触れることができなくなり、レールの切断端部に生じているバリ取りの作業を行う必要がなくなる。
【0012】
また、このレールを隣り合う胴縁の間に配置し、枠体の底面板部を隣り合う胴縁の対向面に対向する状態にする。この状態で前面板部の係止片部を隣り合う胴縁の前面に係合する。これにより、レールの前面は、隣り合う胴縁の前面に対して前方に突き出さない。
【0013】
さらに、枠体に前面板部、後面板部および一対の側面板部により囲まれる差し込み口が形成される。この差し込み口からレールの端部を差し込んで、レールの切断端部に枠体を容易に嵌めることができる。
【0014】
前記第一固定孔が前記レールの長さ方向に沿って延びる長孔状に形成され、前記第一固定孔の前側内縁部が、前記レールの長さ方向内側に向かうにつれて前方へ傾斜する状態であり、前記第一固定孔の後側内縁部が、前記レールの長さ方向内側に向かうにつれて後方へ傾斜する状態である構成を採用することができる。
【0015】
レールの長さ方向の両端部にそれぞれ枠体が嵌められ、それぞれの枠体の前面板部が前向きとなる状態とする。そして、それぞれの枠体をレールに対して仮固定を行う。この仮固定は、一方の側面板部の第一固定孔での、レールの長さ方向の外側の端部からねじ部材をレールに締め付けることで行われる。この仮固定の作業は、ねじ部材の回転中心を第一固定孔の前後方向の中心線上に位置させた状態で、ねじ部材を締め付ける必要がある。このような仮固定の作業は、熟練を要し、経験の浅い作業員が行うと、ねじ部材の回転中心が第一固定孔の前後方向の中心線に対して前後方向のいずれか一方に偏心する状態で、ねじ部材が締め付けられる状態となる。その結果、ねじ部材のねじ軸部が、第一固定孔の前側内縁部または後側内縁部に噛み込んだ状態となる。
【0016】
上記構成によると、仮固定した後の枠体をレールに対して、そのレールの長さ方向の外向きに移動させると、ねじ部材のねじ軸部と、第一固定孔の前側内縁部または後側内縁部との噛み込みを解除することができる。そして、それぞれの枠体は、レールに対して、レールの長さ方向に容易に移動可能となり、それぞれの枠体の底面板部における、レールの長さ方向の間隔を調整することができる。
【0017】
一対の前記側面板部が前記胴縁の長さ方向内向きに膨らむ押圧部を有し、一対の前記側面板部のうち、一方の前記側面板部の押圧部に前記第一固定孔が位置しており、他方の前記側面板部の押圧部に前記第二固定孔が位置しており、前記枠体が一方の前記側面板部の押圧部と他方の前記側面板部の押圧部とで前記レールを挟む状態となっている構成を採用することができる。
【0018】
この構成では、レールの長さ方向の端部に嵌るそれぞれの枠体がレールに対して保持されるので、枠体を保持した状態でレールを隣り合う胴縁の間に配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、枠体の前面板部、一対の側面板部および底面板部で、レールの長さ方向の両端部が囲われるので、レールの切断端部が露出することがない。このため、レールの切断端部に生じているバリ取りの作業を行う必要がなく、胴縁の間に架け渡すレールの取り付け作業の作業性が向上する。
【0020】
また、レールの前面が隣り合う胴縁の前面に対して突き出さないため、レールの前面に取り付けた配線用ボックスは、これに接続するケーブルを内部に通した管材を胴縁の前面に向かって曲げる曲げ配管が不要となり、胴縁の間への配線用ボックスの取り付け作業の作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】この発明の固定金具に係る実施形態の使用状態を示す斜視図
【
図5】(a)固定金具を端部に嵌めたレールを隣り合う胴縁の間に配置した状態を示す断面図、(b)固定金具を胴縁に接近させるように移動している状態を示す断面図、(c)固定金具を胴縁に固定した状態を示す断面図
【
図6】
図5(b)中のC-C線における断面図、(b)
図5(c)中のD-D線における断面図
【
図8】(a)
図2に示す枠体の変形例の斜視図、(b)
図2に示す枠体の変形例の正面図、(c)
図2に示す枠体の他の変形例の正面図
【
図9】従来の隣り合う胴縁に対して架け渡すように固定したレールを示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施形態に係る固定金具を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、構造物の柱や間柱(図示省略)の間に、外壁の下地材となる胴縁1が上下方向に複数並んで架け渡されており、複数の胴縁1の屋外側(後側)に壁材Wが複数固定されている。複数の胴縁1のうち、上下方向に隣り合う上側の第一胴縁2と下側の第二胴縁3の間に、2つの固定金具10、20を介してレール4が固定されている。レール4の前面部4aには配線用ボックス5が取り付けられている。
【0023】
複数の胴縁1は、例えば、一般にCチャンネルと称されるリップ溝形鋼が使用され、一対のリップ部2cの間に形成される溝部が下向きとなる状態となっている。第一胴縁2は、上側に位置するウェブ部2aと、ウェブ部2aの幅方向両端縁(前後方向両端縁)から下向きに延び出す一対のフランジ部2bと、それぞれのフランジ部2bの下端縁から前後方向内向きに延び出す一対のリップ部2cとを有する。第二胴縁3も第一胴縁2と同様に、ウェブ部3aとフランジ部3bとリップ部3cとを有する。なお、胴縁1として、H形鋼、山形鋼(アングル、L形鋼)、あるいは木材を使用することができる。
【0024】
図2に示すように、レール4はリップ溝形鋼が使用され、一対のリップ部4cの間に形成される溝部が後側に位置する状態となっている。レール4は、上下方向に延びる前面部4aと、前面部4aの幅方向両端縁から後ろ向きに延び出す一対の側面部4bと、それぞれの側面部4bの後端縁から、前面部4aの幅方向内向き、かつ前向きに延びるリップ部4cとを有する。レール4としては、前面部4aの幅寸法が、第一胴縁2のウェブ部2aの幅寸法よりも小さいものが使用される。レール4の長さは、第一胴縁2と第二胴縁3との上下方向の間隔よりも若干短い。レール4としては、例えば、断面矩形の角形鋼管、木材を使用してもよい。
【0025】
レール4に対してその長さ方向両端部にそれぞれ固定金具10、20が取り付けられる。レール4の長さ方向一端側(上端側)に取り付ける固定金具10は、鋼板の折り曲げ加工によって形成されている。固定金具10は枠体11と、枠体11から第一胴縁2の長さ方向両方向に延び出す固定片12とが一体に形成されたものである。枠体11は、矩形の前面板部13と、矩形の一対の側面板部14、15と、底面板部16とを有する。
【0026】
前面板部13は、第一胴縁2の前側のフランジ部2bに対して平行である。前面板部13の第一胴縁2の長さ方向(前面板部13の幅方向)の両端縁から一対の側面板部14、15が後方へ向かって直角に延び出している。前面板部13と一対の側面板部14、15とは、レール4の長さ方向の外端縁および内端縁(上端縁および下端縁)の位置が合致する状態となっている。
【0027】
前面板部13は、レール4の長さ方向外向きに延び出す係止片部13aを有する。係止片部13aは、前面板部13のレール4の長さ方向の外端縁(上端縁)に対して一体に形成されている。係止片部13aは、前面板部13の上端縁の中央部分に位置している。前面板部13と係止片部13aとは、同じ厚さであり、前側および後側の表面が同一面上に位置している。係止片部13aは、第一胴縁2の前面部(前側のフランジ部2b)に係止する。
【0028】
一対の側面板部14、15は、互いに対向する状態で平行に配置されている。一対の側面板部14、15のレール4の長さ方向の外端縁(上端縁)にそれぞれ固定片12が一体に形成されている。側面板部14の固定片12は、側面板部14に対して直角に配置されている。側面板部14の固定片12は前面板部13の幅方向外向きに延び出している。側面板部15の固定片12は、側面板部15に対して直角に配置されている。側面板部15の固定片12は、前面板部13の幅方向外向きに延び出している。
【0029】
図3に示すように、側面板部14は、前面板部13の幅方向内向きに膨らむ押圧部14aを有している。押圧部14aは楕円形をなしている。押圧部14aは、その周縁部が中央部分に向かうにつれて、前面板部13の幅方向内向きに傾斜している。押圧部14aの中央部分の前面板部13の幅方向の内面は、側面板部14と平行な平面となっている。
【0030】
押圧部14aの中央部分には貫通孔である第一固定孔14bが形成されている。第一固定孔14bは、レール4の長さ方向(上下方向)に沿って形成される長孔状に形成されている。第一固定孔14bの前後方向の開口幅が、レール4の長さ方向内側(下側)に向かうにつれて、前後方向外側に広がる状態となっている。
図4(a)に示すように、第一固定孔14bの開口部の前後方向の中央を通る中心線Oが、上下方向に沿った状態となっている。また、第一固定孔14bの前側内縁部14cがレール4の長さ方向内側(下側)に向かうにつれて前方へ傾斜する状態であり、第一固定孔14bの後側内縁部14dが、下側に向かうにつれて後方へ傾斜する状態となっている。
【0031】
側面板部15は、前面板部13の幅方向内向きに膨らむ押圧部15aを有している。押圧部15aは円形をなしている。押圧部15aはその周縁部から中央部分に向かうにつれて、前面板部13の幅方向内向きに傾斜している。押圧部15aの中央部分の前面板部13の幅方向の内面は、側面板部15と平行な平面となっている。押圧部15aの中央部分には貫通孔である第二固定孔15bが形成されている。第二固定孔15bは円形である。第二固定孔15bは第一固定孔14bに対向する位置に設けられている。
【0032】
側面板部14の押圧部14aと側面板部15の押圧部15aとの間隔は、レール4の前面部4aの幅寸法よりもわずかに小さく形成されている。レール4の前面部4aと枠体11の前面板部13とを前向きとした状態で、枠体11内にレール4を嵌めることにより、レール4が側面板部14の押圧部14aと、側面板部15の押圧部15aとにより挟まれて、枠体11がレール4に保持される。
【0033】
側面板部14、15の固定片12は、第一胴縁2に対する取り付け孔12aを有する。取り付け孔12aは、前面板部13の幅方向の外側寄りであって、かつ前側寄りの位置に設けられている。固定片12の前端縁は、前面板部13の幅方向に対して平行である。固定片12の後端縁は、前面板部13の幅方向外側に向かうにつれて、前向きに傾斜する状態に面取りされている。
【0034】
底面板部16は、前側部分の中央部分に形成された矩形の切り欠き部16aを有し、一対の側面板部14、15の間に位置している。切り欠き部16aの第一胴縁2の長さ方向(前面板部13の幅方向)外側部分には、一対の連結片部16bが形成されている。底面板部16は、一対の連結片部16bを介して、前面板部13に対して一体にかつ後向きに延び出して形成されている。底面板部16は、後端縁からレール4の長さ方向内向き(下向き)に延び出す後面板部17を有する。後面板部17は、一対の側面板部14、15の間であって、レール4の長さ方向外側(上側)に位置している。
【0035】
レール4の長さ方向他端側(下端側)に取り付ける固定金具20は、レール4の長さ方向一端側に取り付ける固定金具10と同じ形状であって、レール4に対する取り付けの向きが反対向きであることのみが相違する。このため、固定金具20については、レール4の長さ方向一端側に取り付ける固定金具10と同じ符号を付して、その説明を省略する。固定金具20の前面板部13の係止片部13aが第二胴縁3の前側のフランジ部3bに係止する。固定金具20の一対の固定片12が第二胴縁3のウェブ部3aの前側に固定される。
【0036】
レール4の前面部4aに取り付けられる配線用ボックス5は、コンセントボックス、スイッチボックスなどのコンセントやスイッチ類などの配線機器を収納するものである。配線用ボックス5は配線機器に接続したケーブル5aが下方に延びている。ケーブル5aは、管材5bの内部に通されている。管材5bは、第二胴縁3の前側のフランジ部3bに対して既存のサドルベース5cおよびサドルバンド5dを用いて固定されている。
【0037】
この発明に係る固定金具10、20は以上のように構成される。次に、図面に基づいて、固定金具10、20を用いて、レール4の第一胴縁2と第二胴縁3との間への取り付け方法を説明する。
【0038】
まず、前準備として、所定の規格長さを有するリップ溝形鋼を第一胴縁2と第二胴縁3の間隔よりも若干短い長さに切断して、レール4を製作する。このレール4の長さ方向一端部に固定金具10の枠体11を嵌め、他端部に固定金具20の枠体11を嵌める。このとき、固定金具10、20は、枠体11の前面板部13とレール4の前面部4aとが前向きとなる状態となる。また、枠体11の底面板部16に対して、レール4の長さ方向端縁を突き当てている状態となる。さらに、固定金具10、20は、側面板部14の押圧部14aと側面板部15の押圧部15aとで、レール4の一対の側面部4b、4bを挟み、レール4に保持される。
【0039】
続いて、レール4に対して固定金具10、20の仮固定を行う。この仮固定は、側面板部14の第一固定孔14bでの、レール4の長さ方向の外端部(上端部)からねじ部材30をレール4に締め付けることで行われる。この仮固定の作業は、ねじ部材30の回転中心を第一固定孔14bの前後方向の中心線O上に位置させた状態で、ねじ部材30を締め付ける必要がある。このような仮固定の作業は、熟練を要し、経験の浅い作業員が行うと、ねじ部材30の回転中心が第一固定孔14bの前後方向の中心線に対して前後方向のいずれか一方(例えば、
図5(a)では、前方)に偏心する状態で、ねじ部材30が締め付けられる状態となる。その結果、ねじ部材30のねじ軸部31が、第一固定孔14bの前側内縁部14cに噛み込んだ状態となる。
【0040】
さらに、レール4に対して固定金具20の仮固定を行う。この固定金具20の仮固定の場合でも、固定金具10の場合と同様に、ねじ部材30のねじ軸部31が、第一固定孔14bの前側内縁部14cに噛み込んだ状態となる。
【0041】
次に、
図5(b)に示すように、長さ方向両端部に固定金具10、20が仮固定されたレール4を、第一胴縁2と第二胴縁3の間に配置する。このとき、固定金具20の枠体11を第二胴縁3のウェブ部3a上に載せ、係止片部13aを第二胴縁3の前側のフランジ部3bに係止する。さらに、固定金具10の係止片部13aを第一胴縁2の前側のフランジ部2bに係止する。この係止状態では、固定金具20の一対の固定片12は、第二胴縁3のウェブ部3aに接している。
【0042】
ここで、レール4の長さは、第一胴縁2と第二胴縁3の間隔よりも若干短く切断されている。このため、第一胴縁2のリップ部2cと、固定金具10の底面板部16との間には、上下方向の間隔が生じている。この間隔をなくすために、レール4に対して、固定金具10をレール4の長さ方向外向き(上向き)に移動させる必要がある。
【0043】
この実施形態の固定金具10、20は、
図5(a)に示すように、側面板部14には、長孔状の第一固定孔14bが形成されている。第一固定孔14bの前側内縁部14cが、レール4の長さ方向内側に向かうにつれて前方へ傾斜する状態であり、第一固定孔14bの後側内縁部14dが、レール4の長さ方向内側に向かうにつれて後方へ傾斜する状態である。
【0044】
ここで、上述した仮固定時においては、ねじ部材30のねじ軸部31が、第一固定孔14bの前側内縁部14cに噛み込んだ状態となっている。この噛み込み状態から、固定金具10をレール4の長さ方向外向き(上向き)に移動させる。
図5(c)に示すように、固定金具10を移動させると、ねじ部材30のねじ軸部31は、第一固定孔14bの下端に位置して、第一固定孔14bの前側内縁部14cとの噛み込みが解除される。また、この噛み込みが解除された状態でも、レール4が側面板部14の押圧部14aと、側面板部15の押圧部15aとにより挟まれて、枠体11がレール4に保持されている。
【0045】
続いて、さらに、固定金具10をレール4に対して上向きに移動させる。そして、
図6(b)に示すように、固定金具10の一対の固定片12を第一胴縁2のリップ部2cに接する状態とする。この状態で、本固定を行う。本固定は、固定金具10の側面板部15の第二固定孔15bからねじ部材30をレール4に締め付けることで行われる。この本固定は、固定金具20においても同様に行われる。
【0046】
その後、
図3、
図4に示すように、固定金具10の固定片12と第一胴縁2のリップ部2cとを、取り付け孔12aからねじ部材40を締め込んで固定する。同様にして、固定金具20の固定片12と第二胴縁3のウェブ部3aとを、取り付け孔12aからねじ部材40を締め込んで固定する。最後に、レール4の前面に配線用ボックス5を適宜、公知の手段により取り付ける。
【0047】
なお、レール4の第一胴縁2と第二胴縁3との間への取り付け方法においては、固定金具20の枠体11を第二胴縁3のウェブ部3a上に載せた後に、続いて、固定金具20の固定片12と第二胴縁3のウェブ部3aとを、取り付け孔12aからねじ部材40を締め込んで固定してもよい。
【0048】
この実施形態の固定金具10、20は、レール4の長さ方向両端に取り付けられる。そのレール4は、所定の規格長さのリップ溝形鋼を第一胴縁2と第二胴縁3の間隔よりも若干短く切断することにより製作されている。このため、レール4の長さ方向端部となる切断端部にはバリが生じている。
【0049】
固定金具10、20は、枠体11の底面板部16によりレール4の切断端縁を覆っている。また、枠体11の前面板部13、一対の側面板部14、15および後面板部17により、レール4の切断端部の前面部4a、一対の側面部4bおよびリップ部4cを覆っている。このため、レール4の切断端部は露出していない状態となり、従来行っていたバリ取り作業が不要となる。
【0050】
また、上述の仮固定の際、ねじ部材30の回転中心を第一固定孔14bの中心線Oに対して前後方向に偏心した位置でねじ部材30を締め付けると、ねじ部材30のねじ軸部31が、第一固定孔14bの前側内縁部14cまたは後側内縁部14dに噛み込んだ状態となる。
【0051】
固定金具10、20では、レール4の長さ方向外向きに移動させることで、ねじ部材30のねじ軸部31と、前側内縁部14cまたは後側内縁部14dとの噛み込み状態を解除させることができる。よって、仮固定の後、レール4に対する固定金具10、20の位置を調整することができる。
【0052】
また、固定金具10、20は、レール4の長さ方向両端部に枠体11を嵌めると、一対の側面板部14、15の押圧部14a、15aにより、レール4の長さ方向両端部に保持される。また、この保持状態を維持しつつ、レール4に対する固定金具10、20の位置を、レール4の長さ方向に移動させることができる。
【0053】
また、固定金具10、20は、その枠体11が第一胴縁2と第二胴縁3の間に位置している状態となっている。そして、
図7に示すように、固定金具10の前面板部13の係止片部13aが第一胴縁2の前側のフランジ部2bに係止している。また、固定金具20の前面板部13の係止片部13aが第二胴縁3の前側のフランジ部3bに係止している。ここれにより、レール4の前面部4aが、隣り合う第一胴縁2および第二胴縁3の前側のフランジ部2b、3bに対して前方に突き出さない。このため、レール4の前面部4aに取り付けた配線用ボックス5は、これに接続するケーブル5aを下方へ真っ直ぐ配線することができ、第一胴縁2と第二胴縁3の間への配線用ボックス5の取り付け作業の作業性が向上する。
【0054】
さらに、固定金具10、20は、レール4の長さ方向端部に対して、レール4の長さ方向外向きに移動させることができる。このため、固定金具10の固定片12と、固定金具20の固定片12との間隔を、レール4の長さ寸法よりも、さらに大きく広げることができる。よって、レール4の長さが第一胴縁2と第二胴縁3の間隔よりも比較的短い場合であっても、レール4を第一胴縁2と第二胴縁3との間に取り付けることができる。これにより、第一胴縁2と第二胴縁3の間隔よりも比較的短く、従来では、レール4として利用することが難しい切断後のリップ形溝鋼を、レール4として利用することができる。
【0055】
上記実施形態では、
図2に示すように、固定金具10、20として、枠体11の前面板部13に係止片部13aが形成されている固定金具10、20を例に挙げて説明したが、
図8(a)、(b)に示すように、前面板部13に係止片部13aが形成され、さらに一対の固定片12のそれぞれに係止片部12bが形成された固定金具10、20を採用することができる。係止片部12bは、固定片12の前端部からレール4の長さ方向外向きに延び出す状態で形成されている。
【0056】
また、
図8(c)に示すように、固定金具10、20として、前面板部13に係止片部13aが形成されておらず、一対の固定片12にのみそれぞれ係止片部12bが形成された固定金具10、20を採用することもできる。
【符号の説明】
【0057】
1 胴縁
1a、1b 側面
2 第一胴縁
3 第二胴縁
2a、3a ウェブ部
2b、3b フランジ部
2c、3c リップ部
4 レール
4a 前面部
4b 側面部
4c リップ部
5 配線用ボックス
5a ケーブル
5b 管材
5c サドルベース
5d サドルバンド
10、20 固定金具
11 枠体
12 固定片
12a 取り付け孔
12b 係止片部
13 前面板部
13a 係止片部
14、15 側面板部
14a、15a 押圧部
14b 第一固定孔
15b 第二固定孔
14c 前側内縁部
14d 後側内縁部
16 底面板部
16a 切り欠き部
16b 連結片部
17 後面板部
30、40 ねじ部材
31 ねじ軸部
O 中心線
W 壁材