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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180745
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20231214BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231214BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60R11/02 C
B60K35/00 Z
B60R16/02 640K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094294
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石橋 亮一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 至幸
【テーマコード(参考)】
3D020
3D344
【Fターム(参考)】
3D020BA04
3D020BE03
3D344AA19
3D344AA20
3D344AA27
3D344AD01
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】適切な順序で描画演算回路を起動する車両用表示装置を提供する。
【解決手段】車両情報を画像にて表示する表示器1と、この表示器1が表示する画像データを生成し表示器1へ出力する描画演算回路22と、この描画演算回路22への前記画像データの生成を制御する制御部21と、所定の駆動電圧を生成し駆動電力として描画演算回路22と制御部21とにそれぞれへ供給する電源回路2aと、この電源回路2aと描画演算回路22との間の前記駆動電力を供給する配線間に介在し、制御部21からの切り替え信号に基づいて、通電と非通電とを切り替えるスイッチ回路2bと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両情報を画像にて表示する表示部と、
この表示部が表示する画像データを生成し前記表示部へ出力する描画演算回路と、
この描画演算回路への前記画像データの生成を制御する制御部と、
所定の駆動電圧を生成し駆動電力として前記描画演算回路と前記制御部とにそれぞれへ供給する電源回路と、
この電源回路と前記描画演算回路との間の前記駆動電力を供給する配線間に介在し、前記制御部からの切り替え信号に基づいて、通電と非通電とを切り替えるスイッチ回路と、を備える
車両用表示装置。
【請求項2】
前記スイッチ回路は、前記駆動電力の突入電流を低減する突入電流抑制機能を有する
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記スイッチ回路は、前記非通電時に供給された前記駆動電力を放電する放電機能を有する
請求項1に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両情報を出力する車両用表示装置に関し、例えば、インストルメントパネルに搭載され、画像にて車両情報を表示する車両用計器に好適である。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用表示装置においては、液晶ディスプレイ等の表示器と、表示器へ映像信号を出力するグラフィックコントローラ(描画演算回路)と、グラフィックコントローラへ表示情報を出力するマイクロコンピュータ(制御部)と、を備えた車載用の車両用表示装置が提案されており、例えば、特許文献1に開示される。
【0003】
この種の車載表示装置では、車両が稼働していない際に省電力のために、低消費電力モードに移行し、マイクロコンピュータやグラフィックコントローラの作動を一時的に停止する。また、再び車両からの起動命令を受けた場合は、マイクロコンピュータ等の電子部品作動用の駆動電圧を生成する電源回路を作動させて、次いでマイクロコンピュータが起動して初期化処理等を経た後、マイクロコンピュータからグラフィックコントローラや表示器をオンする旨の起動コマンドが出力され、表示器などはその起動コマンドを受けて起動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-190014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両用表示装置のマイクロコンピュータは、初期化に時間を要してしまう。このことから条件によっては、グラフィックコントローラは、マイクロコンピュータが初期化を終えて適切な起動コマンドを出力する前に、必要な駆動電圧を揃えて、先に稼働してしまう虞があった。この場合、グラフィックコントローラは、マイクロコンピュータからの表示命令を適切に受け付けることができず、所望の表示出力ができない可能性があるため、適切な順序でグラフィックコントローラを起動する考慮が必要であった。
【0006】
そこで本発明の目的とするところは、上述課題に着目し、適切な順序で描画演算回路を起動する車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用表示装置は、
車両情報を画像にて表示する表示部と、
この表示部が表示する画像データを生成し前記表示部へ出力する描画演算回路と、
この描画演算回路への前記画像データの生成を制御する制御部と、
所定の駆動電圧を生成し駆動電力として前記描画演算回路と前記制御部とにそれぞれへ供給する電源回路と、
この電源回路と前記描画演算回路との間の前記駆動電力を供給する配線間に介在し、前記制御部からの切り替え信号に基づいて、通電と非通電とを切り替えるスイッチ回路と、を備える。
【0008】
また、前記スイッチ回路は、前記駆動電力の突入電流を低減する突入電流抑制機能を有する。
【0009】
また、前記スイッチ回路は、前記非通電時に供給された前記駆動電力を放電する放電機能を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、適切な順序で描画演算回路を起動する車両用表示装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態における車両用表示装置の車載状態を示す図。
図2】車両用表示装置の要部の断面図。
図3】同上実施形態における要部のブロック図。
図4】同上実施形態における起動時の各信号の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態として、自動車に搭載される車両用表示装置に適用したものを例に挙げて、添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、車両用表示装置Aが、自動車(車両)Bに実装されたものを示す。車両用表示装置Aは、車両利用者が運転状態であっても表示を視認できるように、運転席に対向して設けられる。この場合、車両用表示装置Aは、車両の運転席に対向する位置でインストルメントパネルCに設けられ、運転席に着座した車両利用者は、ステアリングD越しに車両用表示装置Aが出力する表示を確認できる。また、車両用表示装置Aは、車両情報や経路案内、音響関連情報などの表示出力を行うことができる。また、車両利用者は、車両用表示装置Aによる表示内容に従って、ステアリングDに設けられるスイッチD1を操作することで、表示操作(画面切り換え)や各種設定を行うこともできる。
【0014】
図2は、車両用表示装置Aの筐体内に収容される本実施形態に関する主要部品を示し、表示器(表示部)1と、回路基板2と、保持部材3と、第1のケース(ケース)4と、第2のケース(ケース)5とを備え、インストルメントパネルCの開口箇所に設けられる。
【0015】
表示器1は、走行速度や積算走行距離などの車両情報を数値や、文字などの表示像を形成し、第1のケース4の窓部41を介して表示出力できる。表示器1は、透明電極を有する一対のガラス基板間に液晶を封入し、前後側に設けられる偏光膜によって構成される液晶表示素子を設けており、該透明電極を介して駆動電力が供給されるようにしている。なお、表示器1は、夜間等の暗い環境においても利用者が視認できるように、図示しないバックライトによって該液晶表示素子を透過照明できるようにしている。
【0016】
回路基板2は、ガラスエポキシ樹脂などの板材に銅箔の配線パターンやレジストなど絶縁層パターンが形成されてなり、車両用表示装置A外からの信号を入力し、表示器1の液晶表示素子や光源を駆動するためのマイクロコンピュータ(制御部)21やグラフィックコントローラ(描画演算回路)22、各種電子部品が実装されている。なお、回路基板2には、コネクタ23や通信用のケーブル24を介して、車載されるECU(電子制御ユニット)や各種センサからの情報(車両情報)を通信信号として制御部21へ伝送できるように構成されている。
【0017】
また、回路基板2は、警報などの注意喚起を行うためのブザーやスピーカなどの発音部25を実装している。発音部25は、該制御部からの制御信号に基づいて駆動し、例えば、シートベルトの未装着状態や、ドアの開放状態などを所定パターンの吹鳴音、または音声にて車両利用者に知らせることができる。
【0018】
保持部材3は、合成樹脂材を用いて成形され、表示器1と回路基板2との間に介在し、表示器1と回路基板2とが所定間隔おいて保持するためのスペーサとして作用する。保持部材3は、図示しない突起やビス止め用の孔、フックなどによって、回路基板2に対して位置決め保持される。
【0019】
第1のケース4は、表示器1の表示出力を透視して視認できるように、透明な窓部(光透過性部材)41を設け、この場合、平板状の窓部41と遮光性の合成樹脂とを一体成形されて設けられ、遮光箇所が第2のケース5に対して一部重なって、第2のケース5の外側から嵌め合わせできるような形状にて設けられる。
【0020】
第2のケース5は、遮光性の合成樹脂材からなり、図2に示すように、回路基板2に接続されたケーブル24を挿通する穴部51が形成される。第1のケース4に対して図示しないビス止めによって嵌め合わせて保持することで、表示器1や回路基板2の収容空間を得ることができる。
【0021】
また、第2のケース5には、発音部25に対向する箇所に、スリット52が形成されている。発音部25が発する音は、一部が第1,第2のケース4,5内から表示器1等を越してユーザー側へ届くとともに、音の大部分は、第2のケース5やスリット52を抜けて、車両用表示装置Aの裏側などインストルメントパネルC内を通ってユーザーに伝わる。
【0022】
次に、図3を用いて、本実施の形態に関する車両用表示装置Aの各構成について説明する。
【0023】
車両用表示装置Aは、制御部21と、描画演算回路22と、表示器1と、発音部25と、電源回路2aと、スイッチ回路2bとが、回路基板2に実装されている。
【0024】
制御部21は、端子21aや電源回路を介して車載バッテリーから供給される電力に基づいて駆動し、所定プログラムや各種データの格納、演算時の記憶領域などに用いる図示しないROMやRAM等のメモリと、前記所定プログラムに従って演算処理するためのCPUと、入出力インターフェース等を設けたマイクロコンピュータを適用できる。
【0025】
また、制御部21は、自動車Bに搭載される各種センサやECU(電子制御ユニット)からの車両情報を専用の通信ケーブル(多重通信ライン)23や端子21bを介して入力できるように接続し、これらの通信信号(車両情報)と所定プログラムを用いた演算によって表示器1や発音部25を制御するための制御信号を生成し出力する。また、制御部21は、自動車B側からの起動信号に基づいて、車両用表示装置Aの起動を開始したり、ECUからの命令信号によって、省電力モードへの移行を行うことができる。
【0026】
描画演算回路22は、グラフィックコントローラを適用でき、予め記憶媒体に格納されたフォントやアイコン等の描画用データを用いて、制御部21からの制御信号に基づく選択、加工、合成などの処理を行って、表示器1を駆動するための駆動信号(画像データ)を生成して、表示器1を駆動する。
【0027】
表示器1は、上述のように液晶表示素子を用いた画像表示デバイスを適用でき、描画演算回路22からの駆動信号に基づいて、画像を生成し表示出力する。なお、表示器1としては、有機EL素子を用いた画像表示デバイスなど他の形態を選択することもできる。
【0028】
発音部25は、上述のように警報音や効果音を出力するためのスピーカやブザーなどを適用でき、制御部21からの制御信号に基づいて作動する。発音部25は、制御部21の制御によって、表示器1による表示内容に対応する所定パターン音や音声などを表示に合わせたタイミングにて出力できる。なお、制御部21は、描画演算回路22を介して、発音部25を駆動制御することもできる。
【0029】
電源回路2aは、自動車Bに搭載されるバッテリー電源から供給される電力を入力し、制御部21や描画演算回路22が用いる駆動電圧に降圧して、それぞれに駆動電力として供給する。なお、制御部21や描画演算回路22は、複数種類の電圧の入力が必要であるが、その内、共通の電圧(例えば、3.3V電源)を生成する電源回路2aを挙げて説明し、他の電圧値を生成する電源回路や、表示器1や発音部25などへ供給する電源回路は、詳細な説明や図示を省略する。
【0030】
電源回路2aは、この場合、12V前後の電力を3.3Vの定電圧に降圧し、制御部21と、スイッチ回路2bを介して描画演算回路22へ供給できるように接続している。また、電源回路2aは、車両用表示装置Aが稼働していない際に別途回路によって作動停止し、自動車Bから端子21cを介して入力する起動信号に応じて作動開始する。なお、起動信号は、制御部21用の5V生成用の電源回路を介して供給される駆動電力であってもよく、この際、電源回路2aは、この駆動電力に基づいて、必要な電圧値(3.3V)の電力を生成するように接続することもできる。この場合、バッテリー電源から供給される12V前後の電力を別途電源回路にて5Vの電圧に降圧し、更に電源回路2aによって3.3Vの電圧へ降圧する構成を適用できる。
【0031】
スイッチ回路2bは、電源回路2aと描画演算回路22との間に設けられるスイッチ手段であり、制御部21からの制御信号(切り替え信号)に基づいて、通電(オン)/非通電(オフ)が切り換えられて、電源回路2aから描画演算回路22への電力供給の有無を制御する。
【0032】
また、スイッチ回路2bは、FET(電界効果トランジスタ)を含むスイッチ部の他に、通電開始時にサージ電流を抑制する突入電流制御部と、通電状態から非通電状態へ切り換えた際に、スイッチ回路2bに印加される電力を迅速に放電するための放電部とを備えた、集積回路を適用できる。
【0033】
スイッチ回路2bは、この突入電流制御部における駆動電力の突入電流を低減する突入電流抑制機能を有することによって、スイッチ回路2bは、サージ電流を考慮した大きなスイッチ部を用意する必要がなくなる作用がある。また、スイッチ回路2bは、放電部における非通電時に供給された駆動電力を放電する放電機能を有することによって、車両用表示装置Aの稼働停止時に速やかに放電を行うことが可能となり、車両用表示装置Aが省電力状態へ迅速に移行できる。
【0034】
次に、車両用表示装置Aの起動時の各回路の状態を図4を用いて説明する。
【0035】
車両用表示装置Aは、車両からの起動信号を入力する(オフ状態からオン状態へ変化する)ことで電源回路2aがバッテリー電源からの電力に基づいて必要な電圧値の生成を開始する(タイミングv)。電源回路2aは、生成した電力を制御部21とスイッチ回路2bへ出力開始する(タイミングw)。
【0036】
次に、制御部21は、電源回路2aからの電力供給に基づいて作動を許可する状態に移行し(タイミングx)、制御部21の初期化処理を実行する。制御部21は、初期化処理において描画演算回路22の通信準備が整った段階で、スイッチ回路2bに電源回路2aと描画演算回路22との接続を促す制御信号(オン信号)を出力する(タイミングy)。これにより、描画演算回路22は、電源回路2aからの駆動電力を得ることができる。
【0037】
この後、制御部21は、描画演算回路22の作動を許可する状態に移行する許可信号を発する(タイミングz)。描画演算回路22は、この許可信号に基づいて描画演算回路22の初期化を行うことが可能になる。従って、描画演算回路22の初期化(作動開始)は、制御部21からスイッチ回路2bへの信号、及びこの許可信号が起動条件となる。即ち、制御部21が描画演算回路22への駆動電力の供給や起動開始のタイミングを適切にコントロールできる。
【0038】
このため、制御部21の初期化に要する時間が変化したとしてもこれに関係なく、制御部21の準備が整った段階で描画演算回路22の起動条件(駆動電力)を整えることができる。車両用表示装置Aとして適切な順序で制御部21や描画演算回路22を起動することになる。また、電源回路2aから供給する制御部21用の駆動電力と、描画演算回路22用の駆動電力とを供給開始するタイミングに時間差を設けることで、制御部21から描画演算回路22への該許可信号を確実な電源状態で出力し、描画演算回路22を起動できる。
【0039】
斯かる車両用表示装置Aは、車両情報を画像にて表示する表示器1と、この表示器1が表示する画像データを生成し表示器1へ出力する描画演算回路22と、この描画演算回路22への前記画像データの生成を制御する制御部21と、所定の駆動電圧を生成し駆動電力として描画演算回路22と制御部21とにそれぞれへ供給する電源回路2aと、この電源回路2aと描画演算回路22との間の前記駆動電力を供給する配線間に介在し、制御部21からの切り替え信号に基づいて、通電と非通電とを切り替えるスイッチ回路2bと、を備える。
【0040】
従って、適切な順序で描画演算回路22を起動する車両用表示装置Aとなる。
【0041】
以上、本実施形態について説明したが、本発明は上述実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。本発明は、インストルメントパネルCに搭載される表示装置として好適であり、例えば、図1に示すインストルメントパネルCの上部位置に設けられるディスプレイEや、自動車Bの外を撮影した画像を表示するモニタや、後席の乗車者用のモニタに適用する構成であってもよく、上述実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0042】
また、本発明は、例えば、自動車やオートバイ、あるいは農業機械や建設機械を備えた移動体に搭載される車両用表示装置として好適である。
【符号の説明】
【0043】
1 表示器(表示部)
21 制御部
22 描画演算回路
2a 電源回路
2b スイッチ回路
A 車両用表示装置
図1
図2
図3
図4