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特開2023-180758照明装置、撮像システム、及び評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023180758
(43)【公開日】2023-12-21
(54)【発明の名称】照明装置、撮像システム、及び評価方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20231214BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20231214BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G01N21/64 Z
G01N21/65
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022094313
(22)【出願日】2022-06-10
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA16
2G043CA05
2G043EA01
2G043EA03
2G043EA14
2G043FA01
2G043HA01
2G043HA03
2G043KA01
2G043KA02
2G043KA03
2G043KA09
2G043LA03
(57)【要約】
【課題】蛍光等を用いて、農作物の生育のモニタリング等の用途に適した照明を可能にする照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置11は、レーザ31、コリメートレンズ32、及び2軸ガルバノスキャナ33を備える。レーザ31は励起光21を出射する。コリメートレンズ32は、レーザ31から出射された励起光21を受け、励起光21を平行光にする。2軸ガルバノスキャナ33は、ガルバノミラー331によって、コリメートレンズ32を通過した励起光21の方向を制御する。照明装置11は平行な励起光21で対象物をスキャンする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から出射された光を受けるコリメータと、
前記コリメータから出射された光を照射する領域を移動させる照射領域移動機構と、を備え、
植物を生育するための場所に光を照射するように構成される、照明装置。
【請求項2】
対象物に、略平行な光を照射するように構成される、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記コリメータはコリメートレンズであり、
前記照射領域移動機構は、回転可能なミラーを有し、前記コリメータから出射された光を前記ミラーで反射する、請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光源は、光を受けて発光する発光体を有し、
前記コリメータは、前記発光体から放出された光を受ける反射型コリメータであり、
前記照射領域移動機構は、前記コリメータを取り付けられた移動体である、請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の照明装置と、
前記照明装置によって光を照射された対象物の画像を撮像により取得するカメラと、を備える、撮像システム。
【請求項6】
前記照明装置を複数備え、
前記複数の照明装置は、異なる位置に配置され、同じ領域をスキャンする、請求項5に記載の撮像システム。
【請求項7】
請求項5に記載の撮像システムを用いて対象物の画像を撮像により取得し、
前記撮像により取得された画像に基づいて、前記撮像された対象物の状態を評価する、評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、その照明装置を備える撮像システム、及びその撮像システムを用いた評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光を農作物に照射して撮像により取得された農作物の可視画像を用いて、ほ場の農作物の生育をモニタリングすることが一般に行われている。例えば、特許文献1には、白色光等を照射する照明光源と、ハウス内に発生する陰影部分を観察するための観察用広角カメラとを備え、観察データを用いてハウス内の農作物の栽培を管理する農作物栽培管理システムが開示されている。
【0003】
一方、比較的新しい技術として、紫外線等を農作物に照射して撮像により取得された農作物の蛍光画像を用いて、ほ場の農作物の生育をモニタリングすることが研究されている。蛍光画像を用いることで、可視光又は近赤外線で観察できない、農作物の光合成能力、病害虫の痕跡、異常部位等を検出できる可能性が報告されている。
【0004】
また、特許文献2には、収穫後の農作物の蛍光画像を用いて、その農作物の腐敗検査を行う検査装置が開示されている。特許文献3には、収穫後の農作物の蛍光画像を用いて、その農作物の変質を判定する画像解析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-23021号公報
【特許文献2】特開2015-184071号公報
【特許文献3】特開2016-205839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、農作物の生育をモニタリングする場合、照明装置から農作物までの距離はほ場における農作物の位置によって異なる。また、農作物自体が成長することで、照明装置から農作物の部位までの距離が変化する。このため、従来のような広がった照明、即ち出射口からの光ビームの広がり角が例えば30°以上である照明を用いた蛍光観察では、農作物の位置によって、また農作物の成長によって、農作物又はその部位の表面上における励起光のエネルギー密度が変化してしまう。それ故、農作物の生育の状態を同じ条件で評価することができない。さらに、広がった照明を用いた蛍光観察では、農作物の位置が照明装置の位置から遠いほど、農作物の受ける励起光が弱くなるため、農作物の放出する蛍光自体も弱くなる。それ故、農作物の蛍光画像を取得することが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、農作物の生育のモニタリング等の用途に適した照明を可能にする照明装置、その照明装置を備える撮像システム、及びその撮像システムを用いた評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の照明装置は、光源と、前記光源から出射された光を受けるコリメータと、前記コリメータから出射された光を照射する領域を移動させる照射領域移動機構と、を備え、植物を生育するための場所に光を照射するように構成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、農作物の生育のモニタリング等の用途に適した照明が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は第1実施形態に係る撮像システム10の模式図である。
図2図2は照明装置11の模式図である。
図3図3(A)及び図3(B)は、照明装置が対象物に照射する略平行な光を説明するための模式図である。
図4図4(A)は、平行な励起光を蛍光体に照射して蛍光画像を撮像により取得する実験装置の模式図である。図4(B)は、広がった励起光を蛍光体に照射して蛍光画像を撮像により取得する実験装置の模式図である。
図5図5(A)は、図4(A)の実験装置によって取得された蛍光画像を示す図である。図5(B)は、図4(B)の実験装置によって取得された蛍光画像を示す図である。
図6図6は、照明装置11のスキャン可能な領域を例示する模式図である。
図7図7は照明装置11の配置を例示する模式図である。
図8図8はほ場で栽培されている農作物65の模式図である。
図9図9(A)は撮像及び画像処理方法の第1例を説明するための模式図である。図9(B)は撮像及び画像処理方法の第1例によって取得される蛍光画像の模式図である。
図10図10(A)は撮像及び画像処理方法の第2例を説明するための模式図である。図10(B)、図10(C)、及び図10(D)は、撮像及び画像処理方法の第2例によって取得される蛍光画像の模式図である。図10(E)は、撮像及び画像処理方法の第2例によって最終的に生成される蛍光画像の模式図である。
図11図11(A)は健全な葉の蛍光特性を示す励起-蛍光マトリクス図である。図11(B)は葉焼けした葉の蛍光特性を示す励起-蛍光マトリクス図である。
図12図12(A)は、白色光を照射された健全な葉の可視画像を示す図である。図12(B)は、365nmの波長の紫外線を照射された健全な葉の蛍光画像を示す図である。図12(C)は、白色光を照射された、葉焼けした葉の可視画像を示す図である。図12(D)は、365nmの波長の紫外線を照射された、葉焼けした葉の蛍光画像を示す図である。図12(E)は、白色光を照射された、モザイク病に罹患した葉の可視画像を示す図である。図12(F)は、365nmの波長の紫外線を照射された、モザイク病に罹患した葉の蛍光画像を示す図である。
図13図13はダイズの可視画像及び蛍光画像を示す図である。
図14図14(A)、図14(B)、及び図14(C)は、それぞれ、化学肥料、有機肥料、及び消石灰の蛍光特性を示す励起-蛍光マトリクス図である。
図15図15は、ほ場71の土壌に含まれる肥料の分布を例示する模式図である。
図16図16は第2実施形態に係る撮像システム80の模式図である。
図17図17は照明装置81の模式図である。
図18図18は第2実施形態の変形例に係る照明装置101の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以降、本発明の複数の実施形態を示す。それぞれの実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。それぞれの実施形態では、その実施形態以前に説明した点と異なる点について説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0012】
《第1実施形態》
図1は第1実施形態に係る撮像システム10の模式図である。撮像システム10は、複数の照明装置11及びカメラ12を備え、例えば農作物14が栽培されているほ場に設けられる。ほ場は本発明の「植物を生育するための場所」の一例である。農作物14は本発明の「対象物」の一例である。照明装置11は、例えば、支柱13で支持されて農作物14の上方に配置される。カメラ12は、例えば、別の支柱13に支持されて農作物14の上方に配置される。照明装置11は、ほ場の農作物14に、平行な励起光21を照射し、ほ場の農作物14をその励起光21でスキャンする。カメラ12は、特定の波長の光のみを通す光学フィルタを有し、農作物14から放出された蛍光を受け、農作物14の蛍光画像を撮像により取得する。複数の照明装置11は、異なる位置に配置され、同じ領域をスキャンする。
【0013】
照明装置11は光源としてレーザを備えてもよく、そのレーザは、ほ場内又は周辺に建てられた小屋に配置され、光ファイバーによって照明装置11の他の構成要素と接続され、複数の照明装置11で共用されてもよい。
【0014】
また、照明装置11は、農作物が植えられたほ場に限らず、農作物が植えられる前のほ場、山、森林、その他の植物を生育するための場所に励起光を照射してもよい。換言すれば、照明装置11は、ほ場の農作物に限らず、ほ場の土壌、管理されている樹木、その他の管理されている植物に励起光を照射してもよい。
【0015】
また、変形例において、1つの照明装置11が対象の領域をスキャンしてもよい。しかし、蛍光の検出性を高めるために、複数の照明装置11が同じ領域をスキャンすることが好ましい。
【0016】
また、励起光は、上記のように平行光であることが好ましいが、多少、広がってもよいし、集まってもよい。
【0017】
また、励起光は、例えば、紫外線、短波長の可視光線である。励起光が紫外線の場合、その波長は、例えば、200~380nmの範囲内にある。植物に含まれる蛍光物質、例えば、クロロフィル、アントシアニン(色素)、芳香族アミノ酸(例えば、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン)等は、200~380nmの範囲内の波長の励起光により励起することができる。
【0018】
また、撮像システム10は、蛍光に代えて、散乱光、特にラマン散乱光、中赤外線で励起された物質から放出される赤外発光、又は光を受けた物質から放出されるその他の光を検出して画像を撮像により取得してもよい。
【0019】
本明細書及び特許請求の範囲では、「光」は、電磁波一般を意味し、必ずしも可視光を意味するものではない。
【0020】
また、蛍光画像の撮像は、夜間に行われてもよいし、日中に屋外で行われてもよい。
【0021】
また、撮像により取得された蛍光画像に対して、積算処理、差分処理等を施してもよい。これにより、蛍光の高感度計測が可能になる。
【0022】
また、撮像システム10は、複数の異なる波長の励起光を照射し、それぞれの励起光を照射された対象物の蛍光画像を撮像により取得してもよい。それらの蛍光画像データを用いて、複数の種類の蛍光物質が現れた画像を生成することができる。
【0023】
照明装置11が複数の異なる波長の励起光を照射する場合、第1方法として、それぞれの照明装置11が複数の異なる波長の励起光を照射してもよい。あるいは、第2方法として、1つの照明装置11は単一波長の励起光しか照射しないが、複数の照明装置11が互いに異なる波長の励起光を照射してもよい。それぞれの場合について、照明装置11は、第3方法として、1回のスキャンの間に同時に複数の異なる波長の励起光を照射してもよく、又は、第4方法として、スキャン毎に励起光の波長を切り替えてもよい。即ち、照明装置11は、第1方法かつ第3方法、第1方法かつ第4方法、第2方法かつ第3方法、又は第2方法かつ第4方法を行ってもよい。カメラ12の構成又は動作は上記方法に応じて適宜変更される。
【0024】
農作物のような植物に含まれる蛍光物質は、例えば、トリプトファン(EX/EM:230nm/330nm、290nm/330nm)、NADH(EX/EM:320nm/440nm)、ポルフィリン(EX/EM:365nm/600nm、430nm/600nm)、リボフラビン(EX/EM:370nm/525nm、460nm/525nm)、ビタミンB6(EX/EM:320nm/380nm)、コラーゲン(EX/EM:350nm/470nm)、酸化生成物(EX/EM:380nm/470nm)である。ここで、A(EX/EM:X1/Y1、X2/Y2)という形式の記載は、蛍光物質Aは、波長X1の励起光により波長Y1の蛍光を放出し、波長X2の励起光により波長Y2の蛍光を放出することを意味する。同様に、A(EX/EM:X1/Y1)という形式の記載は、蛍光物質Aは波長X1の励起光により波長Y1の蛍光を放出することを意味する。
【0025】
図2は照明装置11の模式図である。照明装置11は、レーザ31、コリメートレンズ32、及び2軸ガルバノスキャナ33を備える。レーザ31は本発明の「光源」の一例である。コリメートレンズ32は本発明の「コリメータ」の一例である。2軸ガルバノスキャナ33は本発明の「照射領域移動機構」の一例である。
【0026】
レーザ31は励起光21を出射する。コリメートレンズ32は、レーザ31から出射された励起光21を受け、励起光21を平行光にする、即ち励起光21のビームの広がり角を実質的に0°にする、換言すれば励起光21のビーム内の全ての光線を互いに平行にする。2軸ガルバノスキャナ33は、互いに異なる方向の回動軸を有して回動し、互いに異なる方向のスキャンを担う2つのガルバノミラー331を有する。2軸ガルバノスキャナ33は、ガルバノミラー331によって、コリメートレンズ32を通過した励起光21の方向を制御する。即ち、2軸ガルバノスキャナ33は、回転可能なガルバノミラー331を有し、コリメートレンズ32から出射された励起光21をガルバノミラー331で反射する。これにより、2軸ガルバノスキャナ33は、コリメートレンズ32から出射された励起光21を照射する領域を移動させる。ガルバノミラー331は本発明の「ミラー」の一例である。このような構成によって、照明装置11は平行な励起光21で農作物をスキャンする。
【0027】
レーザ31は、例えば、気体レーザ、固体レーザ、半導体レーザである。さらに、照明装置11は、レーザ31に代えて、別の光源を備えてもよい。
【0028】
また、照明装置11は、2軸ガルバノスキャナ33に代えて、2軸MEMSミラー、又はその他のビームステアリング機構を備えてもよい。
【0029】
また、コリメートレンズ32を通過した励起光21は、上記のように平行光であることが好ましいが、多少、広がってもよいし、集まってもよい。
【0030】
図3(A)及び図3(B)は、照明装置が対象物に照射する略平行な光を説明するための模式図である。照明装置は、その出射口から光ビームを出射し、光ビームの照射領域を所定の領域内で移動させる。照明装置が対象物に照射する略平行な光は、下記の式(1)~(3)で表される条件の全てを満たす。
【0031】
1≦S1/S≦2 (1)
1≦S2/S≦2 (2)
(1/1.5)≦S1/S2≦1.5 (3)
図3(A)に例示するように、S1は、照明装置の出射口から光ビームの光軸の方向に距離L1離れた位置における光ビームの光軸に垂直な光ビームの断面の面積である。S2は、照明装置の出射口から光ビームの光軸の方向に距離L2離れた位置における光ビームの光軸に垂直な光ビームの断面の面積である。Sは、照明装置の出射口から光ビームの光軸の方向に距離L離れた位置における光ビームの光軸に垂直な光ビームの断面の面積である。図3(B)に例示するように、距離L1は、照明装置の出射口から、上記所定の領域内で照明装置の出射口に最も近い位置P1までの距離に等しい。距離L2は、照明装置の出射口から、上記所定の領域内で照明装置の出射口から最も遠い位置P2までの距離に等しい。距離Lは(L1+L2)/2に等しい。
【0032】
照明装置11が照射する励起光はこのような略平行な光でもよい。また、照明装置11が照射する励起光は上記条件を満たす範囲内で可変でもよい。これは、例えば、コリメートレンズ32と2軸ガルバノスキャナ33の間の光路(図2参照)に配置された空間光変調器(SLM)によって実現される。
【0033】
図4(A)は、平行な励起光を蛍光体に照射して蛍光画像を撮像により取得する実験装置の模式図である。図4(B)は、広がった励起光、即ち出射口からの光ビームの広がり角が例えば30°以上である励起光を蛍光体に照射して蛍光画像を撮像により取得する実験装置の模式図である。図4(A)に示すように、照明装置411は、支持材43上の蛍光体44に、平行な励起光451を照射する。カメラ42は励起光451を照射された蛍光体44の蛍光画像を撮像により取得する。図4(B)に示すように、照明装置412は、支持材43上の蛍光体44に、広がった励起光452を照射する。カメラ42は励起光452を照射された蛍光体44の蛍光画像を撮像により取得する。
【0034】
図5(A)は、図4(A)の実験装置によって取得された蛍光画像を示す図である。図5(B)は、図4(B)の実験装置によって取得された蛍光画像を示す図である。図5(A)に示すように、平行な励起光が蛍光体に照射された場合、手前の蛍光体も後方の蛍光体も同じように蛍光画像に鮮明に現れている。一方、図5(B)に示すように、広がった励起光が蛍光体に照射された場合、手前の蛍光体も後方の蛍光体も蛍光画像にほとんど現れていない。このように、平行な励起光の場合、広がった励起光の場合と比較して、対象物の鮮明な蛍光画像を取得することができる。
【0035】
図6は、照明装置11のスキャン可能な領域を例示する模式図である。図6に示すスキャン可能な領域51は平面視で正方形である。より具体的に、照明装置11は、+x軸方向にa、+y軸方向にa/2、-y軸方向にa/2、照射領域を移動させることができる。
【0036】
図7は照明装置11の配置を例示する模式図である。照明装置11は、農作物14が栽培されているほ場55に設けられてもよい。ほ場55は複数の正方形のモニタリング区画56を有する。モニタリング区画56は、ほ場55の一部にのみ設定されており、ほ場で育成されている農作物14の一部のみがモニタリング対象とされる。
【0037】
複数の照明装置11は、例えば、それぞれのモニタリング区画56の正方形の辺の中央に配置され、そのモニタリング区画56内の農作物14をスキャンする。例えば、照明装置11をモニタリング区画56の正方形の頂点に配置すると、図6に示すような照明装置11のスキャン可能な領域の一部はモニタリング区画56に重ならない。一方、上記のように、照明装置11をモニタリング区画56の正方形の辺の中央に配置すると、図6に示すような照明装置11のスキャン可能な領域をモニタリング区画56に一致させることができる。このため、照明装置11をモニタリング区画56の正方形の辺の中央に配置することで、照明装置11のスキャン可能な領域をより有効にモニタリングに利用できる。
【0038】
カメラ12(図1参照)は、1つのモニタリング区画56毎に1つ割り当てられ、割り当てられたモニタリング区画56の蛍光画像を撮像により取得してもよい。あるいは、カメラ12は、幾つかのモニタリング区画56毎に1つ割り当てられ、割り当てられた全てのモニタリング区画56を含む蛍光画像を撮像により取得してもよい。
【0039】
複数の照明装置11は、同じモニタリング区画56に割り当てられたカメラ12との同期を介して互いに関連することを除いて、互いに独立してスキャンする。
【0040】
モニタリング区画は、例えば、約10m四方である。このような面積のモニタリング区画は、照明装置11を、農作物、土壌等の対象物から高さ2mの位置に配置し、スキャン角を±40°まで許容することで実現される。照明装置11を配置する高さをより高くすれば、より小さなスキャン角でも同じ面積のモニタリング区画をカバーできる。
【0041】
モニタリング区画は、ほ場の一部ではなく、ほ場の全体を覆うように定められてもよい。
【0042】
また、変形例において、複数の照明装置11は、略平面状の表面を形成するほ場の土壌に励起光を照射する場合、同じ場所に同時に励起光を照射して励起光の照射領域を重ねてもよい。そして、カメラ12は異なる励起強度でほ場の土壌の蛍光画像を撮像により取得してもよい。
【0043】
図8はほ場で栽培されている農作物65の模式図である。変形例において、図8に示すような背の高くなる農作物65の蛍光画像を撮像により取得する場合、農作物65の側方から励起光を照射して農作物65の蛍光画像を撮像により取得してもよい。
【0044】
次に、撮像及び画像処理方法について説明する。ここでは、説明を簡単にするために、1つの照明装置11のスキャンのみに着目する。
【0045】
図9(A)は撮像及び画像処理方法の第1例を説明するための模式図である。図9(B)は撮像及び画像処理方法の第1例によって取得される蛍光画像の模式図である。図9(A)に示すように、蛍光物質62を含む農作物61を夜間に撮像する場合を考える。励起光の照射領域63を移動させて農作物61をスキャンする間、カメラのシャッターを開けたままにし、1回のスキャンで1枚の蛍光画像を撮像により取得する。これにより、図9(B)に示すような蛍光画像が取得される。
【0046】
変形例において、次のような方法によって蛍光画像を取得してもよい。即ち、スキャン中一定時間カメラのシャッターを開けたままにして蛍光画像を撮像により取得することを繰り返すことで、1回のスキャンで複数枚の蛍光画像を取得する。次に、それらの蛍光画像に合成処理を施して、スキャンされた領域全体の蛍光画像を生成する。
【0047】
図10(A)は撮像及び画像処理方法の第2例を説明するための模式図である。図10(B)、図10(C)、及び図10(D)は、撮像及び画像処理方法の第2例によって撮像される蛍光画像の模式図である。図10(E)は、撮像及び画像処理方法の第2例によって最終的に生成される蛍光画像の模式図である。図10(A)に示すように、蛍光物質62を含む農作物61を夜間に撮像する場合を考える。まず、励起光の照射領域63を所定の距離移動させる毎に蛍光画像を撮像により取得する。即ち、励起光の照射領域63を移動させ、次にカメラのシャッターを一定時間開き、次にカメラのシャッターを閉じる。カメラのシャッターを開いてから閉じるまで間にカメラで蛍光を受けることで蛍光画像を取得する。励起光の照射領域63を移動させてから蛍光画像を取得するまでの動作を繰り返す。図10(A)に示す1番目、2番目、3番目の位置に励起光の照射領域63を移動させたときに蛍光画像を撮像により取得すると、図10(B)、図10(C)、図10(D)に示すような蛍光画像が撮像により取得される。次に、撮像により取得された蛍光画像に合成処理を施すことで、スキャンされた領域全体の蛍光画像を生成する。図10(B)、図10(C)、図10(D)に示すような蛍光画像に合成処理を施すと、図10(E)に示すような蛍光画像が生成される。
【0048】
蛍光画像を昼間に屋外で撮像により取得する場合、次のような方法によって行ってもよい。即ち、照明装置11側とカメラ12側の間で同期を取り、励起光を照射する直前の第1画像と、励起光を照射中の第2画像とを撮像により取得する。照射領域を移動させて第1画像及び第2画像を撮像により取得することを繰り返す。次に、第1画像と第2画像の間の差分を取り、第3画像を生成する。最後に、それぞれの照射領域における第3画像に合成処理を施し、スキャンされた領域全体の蛍光画像を生成する。このように、レーザを用いて強い励起光を照射して蛍光画像を撮像により取得し、蛍光画像の差分処理を行うことで、外乱光によって明るい時に蛍光画像を撮像により取得する場合でも、蛍光情報を抽出することができる。
【0049】
なお、第1実施形態のように、複数の照明装置11が同じ領域をスキャンする場合、上記のどの撮像及び画像処理方法でも、最終的に得られる蛍光画像には、複数の照明装置11からの励起光に起因する蛍光の検出量を足し合したものが現れる。
【0050】
次に、撮像システム10を用いた農作物の虫害又は病害の評価方法について説明する。まず、撮像システム10を用いて、対象の虫害又は病害の蛍光特性に応じた波長の励起光を照射し、その農作物の蛍光画像を撮像により取得する。次に、その農作物の蛍光画像において蛍光の観察される農作物の部位が虫害又は病害に罹患していると評価する。作業者は、例えば、評価結果に基づいて、虫害に罹患している農作物に農薬を散布する。
【0051】
図11(A)は健全な葉の蛍光特性を示す励起-蛍光マトリクス図である。図11(B)は葉焼けした葉の蛍光特性を示す励起-蛍光マトリクス図である。図11(A)に示すように、健全な葉では、例えば365nmの励起波長に対して、蛍光はほとんど放出されない。一方、図11(B)に示すように、葉焼けした葉では、330nmの励起波長に対して、非常に強い蛍光が放出され、例えば365nmの励起波長に対しても、強い蛍光が放出される。このため、蛍光画像を用いて葉焼けを検出することができる。
【0052】
図12(A)は、白色光を照射された健全な葉の可視画像を示す図である。図12(B)は、365nmの波長の紫外線を照射された健全な葉の蛍光画像を示す図である。図12(C)は、白色光を照射された、葉焼けした葉の可視画像を示す図である。図12(D)は、365nmの波長の紫外線を照射された、葉焼けした葉の蛍光画像を示す図である。図12(E)は、白色光を照射された、モザイク病に罹患した葉の可視画像を示す図である。図12(F)は、365nmの波長の紫外線を照射された、モザイク病に罹患した葉の蛍光画像を示す図である。
【0053】
図12(A)及び図12(C)に示すように、葉焼けの初期段階において、健全な葉の可視画像と葉焼けした葉の可視画像との間には違いがあまり現れていない。このため、可視画像を用いて葉焼けを早期に発見することは難しい。一方、図12(B)及び図12(D)に示すように、葉焼けの初期段階においても、健全な葉の蛍光画像と葉焼けした葉の蛍光画像との間には違いがはっきり現れている。このため、蛍光画像を用いて葉焼けを早期に発見することができる。
【0054】
同様に、図12(A)及び図12(E)に示すように、可視画像を用いてモザイク病を早期に発見することは難しい。一方、図12(A)及び図12(F)に示すように、蛍光画像を用いてモザイク病を早期に発見することができる。
【0055】
次に、撮像システム10を用いた農作物の熟度の評価方法について説明する。まず、撮像システム10を用いて、農作物の熟度に応じた蛍光を放出させる励起光を農作物に照射し、その農作物の蛍光画像を撮像により取得する。次に、その農作物の蛍光画像に現れた蛍光強度に基づいて農作物の熟度を評価する。作業者は、評価結果に基づいて、農作物を適期に収穫し、生産物ロスを低減することができる。
【0056】
なお、変形例において、作業者は、収穫機に搭載された照明装置11及びカメラ12を用いて農作物の蛍光画像を撮像により取得しながら、適期の農作物を選別して収穫してもよい。
【0057】
図13はダイズの可視画像及び蛍光画像を示す図である。図13には、2021年10月4日、2021年10月11日、2021年10月18日に収穫されたダイズの可視画像及び蛍光画像が示されている。可視画像には、日が経っても、変化があまり現れていない。一方、蛍光画像には、日が経つにつれて、蛍光が強くなることが現れている。このように、農作物の熟度が増すにつれて、農作物の蛍光は強くなる。このため、農作物の蛍光画像を用いて農作物の熟度を評価することができる。
【0058】
次に、撮像システム10を用いたほ場の土壌の評価方法について説明する。まず、撮像システム10を用いて、対象の肥料の蛍光特性に応じた複数の異なる波長の励起光をほ場の土壌に照射し、それぞれの励起光を照射されたほ場の土壌の蛍光画像を撮像により取得する。次に、ほ場の土壌の蛍光画像においてそれぞれの蛍光の強い領域がその蛍光に対応した肥料の多い領域であると評価する。
【0059】
肥料を撒いた後にほ場の土壌の蛍光画像データを撮像により取得することで、対象の肥料をどこにどれぐらいの量で撒いたかを確認することができる。
【0060】
また、耕うん前と耕うん後のほ場の土壌の蛍光画像データを撮像により取得することで、土壌表面ではなく、土壌中の肥料量の分布を定性的に評価することもできる。
【0061】
さらに、肥料を撒いた直後のほ場の土壌の蛍光画像データと、肥料を撒いてから、ある程度の時間、例えば数ヶ月が経過した後のほ場の土壌の蛍光画像データとを、例えば数年間取りためることで、肥料が外部に流出しやすい場所等、ほ場の特性を把握できるようになり、環境負荷を低減することにつなげることもできる。
【0062】
肥料の分布の偏りを把握した場合、肥料の分布を均一にし、ほ場の土壌を改良することもできる。
【0063】
図14(A)、図14(B)、及び図14(C)は、それぞれ、化学肥料、有機肥料、及び消石灰の蛍光特性を示す励起-蛍光マトリクス図である。化学肥料は、励起波長320nm、発光波長396nmに蛍光スペクトルのピークを有する。有機肥料は、励起波長420nm、発光波長507nmに蛍光スペクトルのピークを有する。消石灰は、励起波長265nm、発光波長280nmに蛍光スペクトルのピークを有する。このため、対象の肥料の蛍光特性に応じた波長の励起光を照射されたほ場の土壌の蛍光画像を用いて、ほ場の土壌に含まれる肥料の分布を評価することができる。
【0064】
図15は、ほ場71の土壌に含まれる肥料の分布を例示する模式図である。図15には、有機肥料が過多な領域72、消石灰が過多な領域73、及び化学肥料が過多な領域74が示されている。このような分布は、それぞれの肥料に対応する蛍光画像データから生成することができる。
【0065】
また、撮像システム10は、農作物中の栄養成分、農作物中の残留農薬、又はその他の対象物の状態を評価する方法に使用されてもよい。
【0066】
上記のように、照明装置から農作物までの距離はほ場における農作物の位置によって異なる。特に、照明装置が中山間地にある段々畑、果樹園等、即ち起伏した土地にある広いほ場をスキャンする場合、照明装置から個々の農作物までの距離に差が生じやすい。また、照明装置から農作物の部位までの距離は農作物が成長することで変化する。
【0067】
第1実施形態によれば、照明装置11は平行な励起光でほ場の農作物をスキャンする。このため、照明装置11から農作物までの距離が異なっても、また照明装置11から農作物の部位までの距離が変化しても、農作物又はその部位の表面上における励起光のエネルギー密度は変化しない。このため、照明装置11から農作物又はその部位までの距離によらず、農作物の生育の状態を略同じ条件で評価することができる。
【0068】
また、農作物の位置が照明装置11の位置から遠くても、農作物の受ける励起光、従って農作物の放出する蛍光が弱くなることはない。それ故、農作物の蛍光画像が撮像により得られる可能性が高まる。
【0069】
撮像システム10が他の対象物の蛍光画像を撮像により取得する場合でも、同様に、対象物の状態を略同じ条件で評価することができ、また対象物の蛍光画像が撮像により得られる可能性が高まる。
【0070】
また、撮像システム10は、異なる位置に配置され、同じ領域をスキャンする複数の照明装置11を備える。これにより、励起光は、立体的な構造を有する農作物の異なる面に、例えばその一方側だけではなく反対側にも照射される。このため、農作物から放出される蛍光の検出性が高まる。それ故、農作物の虫害、病害等の検出性が高まる。
【0071】
撮像システム10が、立体的な構造を有する他の対象物、例えば、緑化、鑑賞等の目的で植えられた草木の蛍光画像を撮像により取得する場合でも、同様に、対象物から放出される蛍光の検出性が高まる。
【0072】
また、撮像システム10が略平面状の表面を形成するほ場の土壌の蛍光画像を撮像により取得する場合、地面に対する励起光の入射角によって、地面に照射される励起光の強度、従ってその励起光に起因する蛍光が変化する。第1実施形態では、複数の照明装置11が、異なる位置に配置され、同じ領域をスキャンする。これにより、大まかに言えば、ある照明装置11からある位置へ照射される励起光の入射角が、対象の地面に対する励起光の平均的な入射角より小さい場合、別の照明装置11から当該位置へ照射される励起光の入射角が、当該平均的な入射角より大きくなる。このため、ある照明装置11からある位置へ照射される励起光の強度が、対象の地面に照射される励起光の平均的な強度より高い場合、別の照明装置11から当該位置へ照射される励起光の強度が、当該平均的な強度より低くなる。蛍光画像上のそれぞれの位置には、それぞれの照明装置11からの励起光に起因する蛍光の検出量を足し合したものが現れる。それ故、励起光の入射角の違いに起因する蛍光画像上の蛍光の変化が軽減される。
【0073】
また、蛍光画像が夜間に撮像により取得される場合、励起光を受けて蛍光を放出した箇所のみが画像に現れる。このため、微弱な蛍光を検出しやすくなる。
【0074】
《第2実施形態》
図16は、第2実施形態に係る撮像システム80の模式図である。第2実施形態に係る撮像システム80は第1実施形態に係る撮像システム10と次の点で異なる。即ち、撮像システム80は、照明装置11に代えて、照明装置81を備える。
【0075】
照明装置81は、ドローン91を備え、例えば、農作物14の上方を水平方向に移動しながら、農作物14に、平行な励起光21を照射する。これにより、照明装置81は農作物14を平行な励起光21でスキャンする。ドローン91は本発明の「移動体」の一例である。
【0076】
照明装置81は、例えば、風の影響を受けにくい高度まで上昇し、そこから農作物14に励起光21を照射する。この場合でも、平行な励起光21が照射されるため、農作物14の表面上における励起光21のエネルギー密度はほとんど低下しない。
【0077】
また、照明装置81が上下に移動しても、平行な励起光21が照射されるため、農作物14の表面上における励起光のエネルギー密度はほとんど変化しない。
【0078】
照明装置81の光学系は、ドローン91に代えて、農業機械のような別の移動体に搭載されてもよい。この場合、撮像システム80は、土壌を管理するための土壌センサとして使用されてもよい。
【0079】
図17は照明装置81の模式図である。照明装置81は、ドローン91に加えて、レーザ92、反射型コリメータ93、及び発光体94を備える。レーザ92はドローン91の外部に配置される。反射型コリメータ93は、放物面ミラーを有し、ドローン91に取り付けられ、特にドローン91の下面に配置される。発光体94は反射型コリメータ93の放物面ミラーの焦点に配置される。
【0080】
レーザ92は反射型コリメータ93に向けてレーザ光を出射する。反射型コリメータ93はレーザ光の一部を発光体94に向けて反射する。発光体94はレーザ光を受けて発光する。反射型コリメータ93は、発光体94から放出された光を受け、その光を反射して平行光にする。これにより、励起光21が生成される。ドローン91は、励起光21で農作物をスキャンするように農作物の上方を水平方向に移動する。これにより、照明装置81は平行な励起光21で農作物をスキャンする。
【0081】
なお、反射型コリメータ93は、図17に示すような放物面ミラーを有してもよいし、軸外し放物面ミラーを有してもよい。
【0082】
図18は第2実施形態の変形例に係る照明装置101の模式図である。照明装置101は、レーザ92に代えて、レーザ112を備える点で、照明装置81と異なる。レーザ112は、反射型コリメータ93の反射面に沿って配置され、発光体94に向けてレーザ光を照射する。発光体94はレーザ光を受けて発光する。反射型コリメータ93は発光体94から放出された光を反射して平行光にする。
【0083】
撮像システム80は、照明装置81に代えて、このような照明装置101を備えてもよい。
【0084】
第2実施形態によれば、照明装置81、101は、それ自体移動することで、ほ場の農作物又は土壌をスキャンする。このため、ほ場全体のような広域にわたる農作物又は土壌を管理する場合でも、多くの照明装置を配置することを必要としない。
【0085】
また、照明装置81、101は、励起光のビームが照射される位置にかかわらず、ほ場の地面に対して、一定の角度で、特に垂直に励起光のビームを照射する。このため、ほ場の農作物又は土壌が受ける励起光の強度は場所によって変化しにくい。
【0086】
さらに別の実施形態に係る照明装置は、植物工場に設けられ、蛍光観察のための励起光に代えて、農作物の光合成のために白色光を出射してもよい。この照明装置の構成は、光源の種類が異なることを除いて、本質的に第1実施形態に係る照明装置と同様である。照明装置は、平行なビームを出射し、そのビームスポットを移動させて農作物のみに光を照射する。これにより、農作物の光合成のための光の全体の照射面積を最小限し、農作物の生育に必要な電力を抑制することができる。
【0087】
また、さらに別の実施形態に係る照明装置は、蛍光観察のための励起光に代えて、特定の波長の光を所望の農作物に局所的に又は選択的に照射し、その農作物の成長を促してもよい。これにより、ほ場の農作物の成長を揃えることができる。この照明装置の構成は、光源の種類が異なることを除いて、本質的に第1実施形態に係る照明装置と同様である。
【0088】
なお、これらの実施形態に係る照明装置は、上記白色光又は特定の波長の光を出射するだけでなく、蛍光観察のための励起光を出射し、カメラと共に撮像システムを構成してもよい。
【0089】
さらに別の実施形態に係る照明装置は夜間の光のショーに使用されてもよい。この照明装置の構成は、本質的に第1実施形態に係る照明装置と同様であり、夜間の光のショーの用途に合うように適宜変更される。照明装置は、例えば、神社仏閣、広場等の木々に、平行光を照射する。例えば、観客が木々の側方から斜め下方向の範囲にいる場合、照明装置は、主として、略水平に又はある程度の仰角(例えば45°以内)で、木々に光を照射する。観客が、木々の上方に、例えば建築物の高い位置にいる場合、照明装置は、主として、木々にその上方から光を照射する。観客が上記のどちらにもいる場合、照明装置は木々に略水平方向と木々の上方の双方から光を照射してもよい。照明装置は、ショーの演出に従って、照射した光で特定の領域を高速にスキャンし、またその領域を変化させる。また、照明装置は、異なる波長の光を照射し、ショーの演出に従ってそれらの光を瞬時に切り替える。木々は、照明装置からの光を受けて、蛍光、散乱光等を放出する。これにより、観客は、特定の領域の木々の葉が光ったり、その領域が様々に変わったり、木々の葉が様々な色に瞬時に変わったりする様子を鑑賞することができる。特に、照明装置は、白色光でライティングアップされた木々に励起光を照射してもよい。これにより、観客は、木々の葉が緑色から様々な色に変わる様子を鑑賞することができる。即ち、この実施形態では、葉の蛍光を利用して、葉の色が変わるように見える視覚的効果を奏することができる。
【0090】
なお、この照明装置は、ショーの演出に従って、励起光のビームの断面形状を変化させることが可能でもよい。これは、例えば、図2に示すような照明装置の構成において、コリメートレンズと2軸ガルバノスキャナの間の光路にSLMを配置することよって実現される。
【0091】
上記のように、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能である。例えば、第1実施形態で示したような照明装置において、コリメートレンズを、第2実施形態で示したような反射型コリメータで置き換えてもよい。また、第2実施形態に示したような照明装置において、レーザ、反射型コリメータ、及び発光体で構成される光学系を、第1実施形態で示したような、レーザ及びコリメートレンズで構成される光学系に置き換えてもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…撮像システム
11…照明装置
12…カメラ
13…支柱
14…農作物
21…励起光
31…レーザ
32…コリメートレンズ
33…2軸ガルバノスキャナ
42…カメラ
43…支持材
44…蛍光体
51…スキャン可能な領域
55…ほ場
56…モニタリング区画
61…農作物
62…蛍光物質
63…照射領域
65…農作物
71…ほ場
72…有機肥料が過多な領域
73…消石灰が過多な領域
74…化学肥料が過多な領域
80…撮像システム
81…照明装置
91…ドローン
92…レーザ
93…反射型コリメータ
94…発光体
101…照明装置
112…レーザ
331…ガルバノミラー
411…照明装置
412…照明装置
451…励起光
452…励起光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18